特許第5991888号(P5991888)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5991888
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】電子部品装着方法及び電子部品装着装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20160901BHJP
【FI】
   H05K13/04 B
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-197910(P2012-197910)
(22)【出願日】2012年9月7日
(65)【公開番号】特開2014-53503(P2014-53503A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀田 真希夫
(72)【発明者】
【氏名】大山 和義
(72)【発明者】
【氏名】浜崎 主章
【審査官】 中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−031900(JP,A)
【文献】 特許第3574666(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着ヘッドに設けられて昇降可能な保持部材と、この保持部材の昇降を駆動する昇降駆動装置とを備え、窪んだ部品収納部に収納された電子部品を前記保持部材によって保持して上昇し基板上に装着する電子部品の装着方法において、電子部品を保持した後前記保持部材が上昇するとき、上昇する途中で減速してから再度加速して上昇するようにし、再度加速して上昇するのは立って吸着された当該電子部品の最大寸法の長さ分保持部材の下端が部品収納部より上昇した位置よりも下方の位置からであることを特徴とする電子部品装着方法。
【請求項2】
装着ヘッドに設けられて昇降可能な保持部材と、この保持部材の昇降を駆動する昇降駆動装置とを備え、窪んだ部品収納部に収納された電子部品を前記保持部材によって保持して上昇し基板上に装着する電子部品の装着方法において、電子部品を保持した後前記保持部材が上昇するとき、上昇する途中で減速し、正しい姿勢で保持された前記電子部品の全部が前記部品収納部よりも上の高さまで上昇して再度加速して上昇することを特徴とする電子部品装着方法。
【請求項3】
減速してから一端上昇を停止して再度上昇するよう加速することを特徴とする請求項1又は2に記載の電子部品装着方法。
【請求項4】
減速してから一端所定時間上昇を停止して再度上昇するよう加速することを特徴とする請求項1乃至の何れかに記載の電子部品装着方法。
【請求項5】
前記保持部材は、真空源に連通し、電子部品を真空吸着して保持する吸着ノズルであること特徴とする請求項1乃至の何れかに記載の電子部品装着方法。
【請求項6】
装着ヘッドに設けられて昇降可能な保持部材と、この保持部材の昇降を駆動する昇降駆動装置とを備え、窪んだ部品収納部に収納された電子部品を前記保持部材によって保持して上昇し基板上に装着する電子部品装着装置において、電子部品を保持した後前記保持部材が上昇するとき、上昇する途中で減速してから再度加速して上昇するように前記昇降駆動装置を制御する制御装置を備え、再度加速して上昇するのは立って吸着された当該電子部品の最大寸法の長さ分保持部材の下端が部品収納部より上昇した位置よりも下方の位置からであることを特徴とする電子部品装着装置。
【請求項7】
装着ヘッドに設けられて昇降可能な保持部材と、この保持部材の昇降を駆動する昇降駆動装置とを備え、窪んだ部品収納部に収納された電子部品を前記保持部材によって保持して上昇し基板上に装着する電子部品装着装置において、電子部品を保持した後前記保持部材が上昇するとき、上昇する途中で減速し、正しい姿勢で保持された前記電子部品の全部が前記部品収納部よりも上の高さまで上昇して再度加速して上昇するように前記昇降駆動装置を制御する制御装置を備えたことを特徴とする電子部品装着装置。
【請求項8】
前記保持部材の上昇ストロークを記憶する記憶手段を有し、前記制御装置は前記保持部材が上昇する途中で減速し、最下端位置から前記記憶手段に記憶されたストローク上昇すると減速を止めてから再度加速して上昇するように前記昇降駆動装置を制御することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の電子部品装着装置。
【請求項9】
前記保持装置の高さを記憶する記憶手段を有し、前記制御装置は前記保持部材が上昇する途中で減速し、前記記憶手段に記憶された高さまで上昇すると減速を止めてから再度加速して上昇するように前記昇降駆動装置を制御することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の電子部品装着装置。
【請求項10】
前記制御手段は前記保持部材が減速して一端停止してから再度上昇するよう加速するように前記昇降駆動装置を制御することを特徴とする請求項乃至9の何れかに記載の電子部品装着装置。
【請求項11】
停止している時間を記憶する停留時間記憶手段をさらに有し、前記制御手段は減速して前記保持部材が一端停止して前記停留時間記憶手段に記憶された時間が経過してから再度上昇するよう加速するように前記昇降駆動装置を制御することを特徴とする請求項10に記載の電子部品装着装置。
【請求項12】
前記保持部材は、真空源に連通し、電子部品を真空吸着して保持する吸着ノズルであること特徴とする請求項乃至11の何れかに記載の電子部品装着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着ヘッドに設けられた吸着ノズルにより部品供給装置から電子部品を保持して取り出し、保持された電子部品を基板上に装着する電子部品装着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品装着装置に配置された部品供給装置により送られて供給される供給テープに所定の間隔で形成された凹所である部品収納部に収納された電子部品を取り出し位置で吸着ノズルにより吸着して取出し、吸着ノズルを備えた装着ヘッドを移動させて電子部品を基板に装着する。このような電子部品装着装置(チップマウンタ)は、特許文献1等に開示されている。
【0003】
そして、この電子部品装着装置では、吸着ノズルが部品収納部に収納された電子部品を吸着すると、搬送高さ(レベル)まで、上昇し、装着位置へ水平方向に移動する。この吸着ノズルの上昇時には、まず、上昇が加速され、設定された速度である最高速度に達した後はその速度に維持され、その後、減速して設定高さに到達すると上昇は止まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−160525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】

しかし、上述した供給テープでは、電子部品が取出し位置に到達するまでに電子部品が部品収納部内で暴れることを極力回避するために、部品収納部の縦及び横寸法は電子部品の縦及び横の寸法より僅かに大きい寸法に抑えられている。この結果、吸着ノズルが電子部品を吸着した後、加速しながら上昇するとき、特に、電子部品が部品収納部の側壁または上縁を通過するときに、電子部品が部品収納部の側壁または上縁に当たる虞がある。そして特に、部品収納部の側壁が内側に変形して上縁が下部より内側に位置して場合には、電部部品が部品収納部の上縁に当たる可能性が増大し、電子部品が当たり引っ掛かった場合には、電子部品が斜めになり、吸着状態が不安定になる。このような状態で吸着ノズルが更に上昇すると、上昇に伴い電子部品が吸着ノズルに対して立った状態(縦立ち或いは横立ち等の状態)になり、その状態では電子部品を基板に装着することができない吸着異常が発生することがある。
【0006】
そこで本発明は、吸着ノズル等の保持部材により電子部品を保持して上昇するときに、保持状態の異常が発生することを極力回避することができる電子部品装着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため第1の発明は、装着ヘッドに設けられて昇降可能な保持部材と、この保持部材の昇降を駆動する昇降駆動装置とを備え、窪んだ部品収納部に収納された電子部品を前記保持部材によって保持して上昇し基板上に装着する電子部品の装着方法において、電子部品を保持した後前記保持部材が上昇するとき、上昇する途中で減速してから再度加速して上昇するようにしたことを特徴とする。
【0008】
第2の発明は、請求項1の発明において、再度加速して上昇するのは立って吸着された当該電子部品の最大寸法の長さ分保持部材の下端が部品収納部より上昇した位置よりも下方の位置からであることを特徴とする。
【0009】
第3の発明は、第2の発明において、上昇する途中で減速し、正しい姿勢で保持された前記電子部品の全部が前記部品収納部よりも上の高さまで上昇して再度加速して上昇することを特徴とする。
【0010】
第4の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の電子部品装着方法において、減速してから一端上昇を停止して再度上昇するよう加速することを特徴とする。
【0011】
5第の発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の電子部品装着方法において、減速してから一端所定時間上昇を停止して再度上昇するよう加速することを特徴とする。
【0012】
第6の発明は、請求項1乃至5の何れかに記載の電子部品装着方法において、前記保持部材は、真空源に連通し、電子部品を真空吸着して保持する吸着ノズルであること特徴とする。
【0013】
第7の発明は、装着ヘッドに設けられて昇降可能な保持部材と、この保持部材の昇降を駆動する昇降駆動装置とを備え、窪んだ部品収納部に収納された電子部品を前記保持部材によって保持して上昇し基板上に装着する電子部品装着装置において、電子部品を保持した後前記保持部材が上昇するとき、上昇する途中で減速してから再度加速して上昇するように前記昇降駆動装置を制御する制御装置を備えたことを特徴とする。
【0014】
第8の発明は、請求項7に記載の電子部品装着装置において、前記保持部材の上昇ストロークを記憶する記憶手段を有し、前記制御装置は前記保持部材が上昇する途中で減速し、最下端位置から前記記憶手段に記憶されたストローク上昇すると減速を止めてから再度加速して上昇するように前記昇降駆動装置を制御することを特徴とする。
【0015】
第9の発明は、請求項7に記載の電子部品装着装置において、前記保持装置の高さを記憶する記憶手段を有し、前記制御装置は前記保持部材が上昇する途中で減速し、前記記憶手段に記憶された高さまで上昇すると減速を止めてから再度加速して上昇するように前記昇降駆動装置を制御することを特徴とする。
【0016】
第10の発明は、請求項7乃至9の何れかに記載の電子部品装着装置において、前記制御手段は前記保持部材が減速して一端停止してから再度上昇するよう加速するように前記昇降駆動装置を制御することを特徴とする。
【0017】
第11の発明は、請求項10に記載の電子部品装着装置において、停止している時間を記憶する停留時間記憶手段をさらに有し、前記制御手段は減速して前記保持部材が一端停止して前記停留時間記憶手段に記憶された時間が経過してから再度上昇するよう加速するように前記昇降駆動装置を制御することを特徴とする。
【0018】
第12の発明は、請求項7乃至11の何れかに記載の電子部品装着装置前記保持部材は、真空源に連通し、電子部品を真空吸着して保持する吸着ノズルであること特徴とする
【発明の効果】
【0019】
本発明は、吸着ノズル等の保持部材により電子部品を保持して上昇するときに、保持状態の異常が発生することを極力回避することができる電子部品装着装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】電子部品装着装置の概略平面図である。
図2】装着ヘッドの構成示し、図1の紙面下側に示す装着ヘッドの側面図である。
図3】装着ヘッドに設けられた駆動モータの制御ブロック図である。
図4】部品ライブラリ情報を表した表の図である。
図5】基本のモータ駆動情報を表した表の図である。
図6】電子部品装着装置の電子部品吸着時の吸着ノズル上昇時の処理フローを示す図である。
図7】電子部品装着装置の電子部品吸着時の吸着ノズル上昇状態を説明するタイミングチャートの図である。
図8】部品収納部と吸着ノズルに吸着され上昇する前の電子部品との関係の簡略説明図である。
図9】吸着ノズルに保持された電子部品が上昇するときの電子部品の状態の簡略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1乃至図6に基づいて本発明の実施形態の第1の実施例について説明する。
【0022】
図1は電子部品装着装置1の平面図であり、装置本体の前部及び後部の2つのブロックに第1部品供給装置3Aと、第2部品供給装置3Bとが設けられている。前記第1部品供給装置3Aには、例えば所定間隔毎に窪んで形成された部品収納部に電子部品が収納された供給テープを所定間隔で間欠的に部品取出位置に送ることにより電子部品を供給する複数の部品供給ユニット3が載置されている。また、第2部品供給装置3Bには、碁盤目状に部品収納部が形成されたトレイが積載され、このトレイから電子部品が供給される。
【0023】
なお、電子部品が装着される被装着部材はプリント基板に限定されるものではなく、例えば、リードフレームやフレキシブル基板などでもよい。
【0024】
そして、対向する前記第1部品供給装置3A及び3Bの間には、基板搬送機構4を構成する供給コンベア5a、中央の位置決め部7に設けられた位置決めコンベア7a及び排出コンベア5bが設けられている。前記供給コンベア5aは上流側装置より受けた複数のプリント基板Pを前記位置決め部6に搬送し、位置決め部7で図示しない位置決め機構により位置決めされた該基板P上に電子部品が装着された後、排出コンベア5bに搬送され、その後下流側装置に搬送される。
【0025】
そして、2本のビーム10、10が独立して後述するY軸方向の駆動源であるリニアモータ9の駆動によりガイドレール1A、1Bに沿ってY軸方向に移動する構成であり、各ビーム10、10には後述するX軸モータであるリニアモータによりX軸方向に移動する装着ヘッド6が設けられる。
【0026】
以下、装着ヘッド6について、図2に基づいて説明する。
【0027】
X軸可動子11によってビーム10上の2本の走行レール12上を移動するヘッドベース13を有している。ヘッドベース13の上部には、ヘッド制御装置を格納する制御筐体14が固定されている。
【0028】
また、ヘッドベース13の前面、即ちプリント基板P側には、電子部品を吸着し、保持して上昇する保持部材である吸着ノズル2を昇降させるノズル昇降軸21が固定されている。ノズル昇降軸21の駆動モータ22が回転することによってボールネジ23が回転し、それに伴いヘッドベース13に沿って移動するスライダ24に固定されたナット25が昇降する。ナット25のスライダ24の反対側には吸着ノズル2が固定されたノズルベース26が固定されている。この結果、吸着ノズル2はノズル昇降軸21により昇降する。なお、図2は吸着ノズル2を下降させた状態を示す。なお、保持部材は吸着ノズル2に限定されるものではない。
【0029】
さらに、ノズルベース26には、図示しない真空源に連通して電子部品を吸着するためのノズル配管27と、この配管でのエアの流れを制御するバルブ28と吸着ノズル2を垂直軸線回りに回転させるためのノズル回転軸30が固定されている。
【0030】
また、吸着ノズル2のX軸方向の移動は、X軸可動子11によりビーム10に沿って装着ヘッド6を移動させて行う。
【0031】
図1に記載した8はプリント基板Pの位置確認用の認識マークを撮像するときなどに使用される基板認識カメラで、各装着ヘッド6に搭載されている。31は装置本体に前記装着ヘッド6に対応して設けられる部品認識カメラで、部品供給ユニット3から吸着ノズル2に吸着され取り出され保持された電子部品を撮像して、図示しない認識処理装置により吸着ノズル2に対する電子部品の位置が認識処理される。
【0032】
図3は電子部品装着装置1の吸着ノズル2の昇降に係る制御のための制御ブロックであり、以下説明する。
【0033】
吸着ノズル2の昇降は、例えばCPU(セントラルプロセッシングユニット)である制御装置33が制御しており、この制御装置33には、例えばHDD(ハードディスクドライブ)である第1の記憶装置34と、例えばROM(リードオンリーメモリ)である第2の記憶装置が接続されている。
【0034】
第1の記憶装置34には、図4(a)に示したような部品ライブラリ情報が電子部品の種類毎に格納されている。この部品ライブラリ情報は、吸着ノズル2が部品供給テープの部品収納部に収納されている電子部品を吸着して上昇を開始する吸着ノズル2の高さ(吸着下限高さ)から上昇を一端停止して停留する一端停止(停留)高さ(位置)迄の第1の上昇ストローク(以下、上昇1ストローク:S1で示す。)、吸着ノズル2が上昇1ストロークを上昇するとき、基本加速度を減速するための減速率(以下、上昇1減速率:Dc1で示す。)、一端停止高さで吸着ノズル2が停止して停留している停留時間(以下、上昇1停留時間:T1で示す。)、吸着ノズル2が一端停止高さから上昇を開始して、吸着上限高さ(位置)迄上昇して停止するときの吸着ノズル2の基本加速度を減速するための減速率(以下、上昇2減速率:Dc2で示す。)から構成され、第1の記憶装置34は、停留時間記憶手段としても働く。部品ライブラリ情報は、外部のパソコンで作成され第1の記憶装置34のハードディスクに格納されるが、電子部品装着装置内で設定され作成されるようにもなっている。
【0035】
なお、図4の(b)は、上昇1ストロークS1、上昇1減速率Dc1、上昇1停留時間T1及び上昇2減速率Dc2のそれぞれの値であるs1、dc1、t1及びdc1が、第1の記憶装置34に格納されているライブラリ情報の表である。また、図4の(c)は、上昇1ストロークの値であるs1が0のときの部品ライブラリ情報の表であり、吸着ノズル2が電子部品を吸着して上昇を開始してから後述する吸着上限高さに到達するまでの間に停止しないで上昇するときの部品ライブラリ情報の表である。
【0036】
また、第2の記憶装置35には、装着ヘッド6毎に設けられた複数の吸着ノズル2の昇降用の駆動モータ22毎に、基本モータ駆動情報が格納されている。この基本モータ駆動情報は、基本加速度:Ab、基本減速度:Db、及び基本定速度時間:Tcから構成されている(図5参照)。
【0037】
制御装置33はコントローラ36を介して駆動モータ22のドライバ回路37に接続され、このドライバ回路37が駆動モータ22及びこの駆動モータに設けられ駆動モータ22の回転位置を検出するエンコーダ38に接続されている。また、コントローラ36は駆動モータ22のみもしくは装着ヘッド6の各吸着ノズルのノズル回転軸モータ等の他の数個の駆動モータのみを制御する。
【0038】
以上の構成により、以下、電子部品装着装置1の動作について説明する。先ず、プリント基板Pが図示しないコンベアにより上流装置より供給コンベアを介して位置決め部6に搬送され、位置決め機構により位置決め固定される。
【0039】
次に、第1の記憶装置34に格納されたプリント基板Pの装着すべきXY座標位置、鉛直軸線回りへの回転角度位置及び各部品供給ユニットの配置番号等が指定された装着データに従い、装着順序に従い電子部品40の部品種に対応した各吸着ノズル2が装着すべき電子部品40を部品供給ユニット3から吸着して取出す。
【0040】
即ち、Y方向はリニアモータ9が駆動して一対のガイドレール1A、1Bに沿ってビーム10が移動し、X方向はリニアモータ66が駆動して各装着ヘッド6が衝突することなく移動し、順次装着すべき電子部品を収納する部品供給ユニット3上方に位置するよう移動する。
【0041】
そして、既に所定の供給ユニット3は駆動されて供給テープが送られて、部品吸着位置にて部品が取出し可能状態にあるため、一方の装着ヘッド6の選択された吸着ノズル7が駆動モータ22により下降して部品収納部から電子部品を吸着し取出し、次に吸着ノズル7は上昇すると共に他方の装着ヘッド6の吸着ノズル7が次に装着すべき電子部品を収納する部品供給ユニット上方に移動し、同じく前記吸着ノズル7が下降して電子部品を吸着し取出す。
【0042】
更に、各装着ヘッド6を上昇させ、水平方向に移動させ、位置決め部6上のプリント基板P上方に移動し、各装着ヘッド6の各吸着ノズル7を下降させてプリント基板P上にそれぞれ電子部品を装着する。
【0043】
以下、吸着ノズル2が下降して電子部品を吸着し取出して上昇するときの動作について、図6に示したフローチャートの図及び図7に示したタイミングチャートの図に基づいて詳細に説明する。
【0044】
先ず、吸着ノズル2が上昇を開始する前に、制御装置33は第1記憶装置34から吸着している電子部品についての上昇1ストロークS1の値であるs1を取得する(ステップS1)。次に、制御装置33は、取得した上昇1ストロークの値のs1が0mmを超えているか、0mm以下かを判定する(ステップS2)。このとき、図8に示したように、例えば電子部品の高さの寸法L1が0.16mm、電子部品40が収納されている供給テープ41の部品収納部42の深さが0.3mmであり、上昇1ストロークs1が、0.4mmであり、0mmを超えている場合には、電子部品40の下端が一端停止高さSc迄上昇するときの加速度である上昇1加速度:A1を、第2の記憶装置35に格納されている以下の式1、基本加速度:Ab、上昇1減速率:Dc1(パーセント)に基づいて算出する(ステップS3)。
【0045】
なお、電子部品を吸着した後吸着ノズル2が加速して上昇し、減速して一端停止する高さであり、再度加速して上昇を開始する高さが一端停止高さScである。例えば図9に実線で示した電子部品40のように、吸着ノズル2に正しい姿勢で吸着されている電子部品40の全体が部品収納部42よりも少し上の高さまで上昇した位置を一端停止高さScにすべく、上昇1ストロークS1を設定している。この一端停止高さScと、吸着ノズル2が電子部品40を吸着したときの吸着下限高さ(図7を参照)とを部品ライブラリに設定し、第1の記憶装置34に格納し、電子部品40を吸着した後吸着ノズル2が加速して上昇し、減速して一端停止する迄のストロークである上昇1ストロークS1を算出するようにしてもよい。また、一端停止高さScを例えば吸着ノズル2に吸着された電子部品40の最大寸法の長さ分(例えば図8に示した電子部品40の底面の長辺の長さL2分)吸着ノズル2の下端が部品収納部42より上昇した位置よりも下方の高さ(位置)としてもよい。前述の図9の実線の電子部品40を吸着している吸着ノズル2の下端の高さは部品収納部42より電子部品40の最大寸法の長さ分高い位置よりは下方の位置である。一端停止高さScがこの高さより低ければ図9の点線で示すように斜めの姿勢の電子部品40が実線で示す正しい水平の位置に戻る可能性があるからである。また、吸着ノズル2に正しい姿勢で吸着された電子部品40の全部が(電子部品40の下面が全部)部品収納部42より上昇した位置に一端停止高さScを設定することがよいが、これより下に一端停止高さScを設定しても少しだけ下方であるならば吸着ノズル2の上昇を一端停止または減速することによって、部品姿勢を正しくする効果が期待できる。
【0046】
A1=Ab×(1−Dc1/100)・・・式1
例えば、基本加速度:Abの値がab(mm/sec)であり、上昇1減速率:Dc1の値が例えば60パーセントのときには、上昇1加速度A1は、ab×(1−0.6)であり、
0.4ab(mm/sec)になる。
【0047】
次に、制御装置33は、電子部品を吸着した後吸着ノズル2が一端停止高さSc迄上昇するとき、上述したように加速し、その後一定の速度で上昇した後に一端停止高さScに到達するまでに減速する際の減速度である上昇1減速度:D1を、第2の記憶装置35に格納されている以下の式2、基本減速度:Db、上昇1減速率:Dc1(パーセント)に基づいて算出する(ステップS4)。
【0048】
D1=Db×(1−Dc1/100)・・・式2
例えば、基本減速度:Dbの値がdb(mm/sec)であり、上述したように上昇1減速率:Dc1の値が例えば60パーセントのときには、上昇1減速度D1の値d1は、db×(1−0.6)であり、
0.4db(mm/sec)になる。
【0049】
次に、制御装置33は、電子部品を吸着した後吸着ノズル2が一端停止高さSc迄上昇するときの上述した吸着ノズル2を加速するときとその後に減速するときとの間の速度であり、吸着ノズル2を一定の速度で上昇させるときの上昇速度である上昇1速度V1を算出する(ステップS5)。
【0050】
即ち、制御装置33は、第1の記憶装置34に格納されている上昇1ストロークS1の値であるs1、第2の記憶装置35に格納されている基本定速時間Tcの値であるtc、算出した上昇1加速度の値であるa1、上昇1減速度の値であるd1を用い、第2の記憶装置35に格納されている式に基づいて、上昇1速度V1を算出する。ここで、上昇1速度のV1は、吸着ノズル2が上昇を開始してから上昇1速度のV1に達するまでの時間が求められ、その時間の間に上昇する距離とV1から0まで減速する時間の間に上昇する距離と上昇1速度のV1で基本定速時間であるTc秒上昇する距離との和が上昇1ストロークであるS1になるように求められる。
【0051】
次に、制御装置33は算出した上昇1加速度、上昇1減速度、及び上昇1速度の情報、即ち、それぞれの値a1、d1及びv1をコントローラ36に出力して設定する(ステップS6)。
【0052】
次に、制御装置33は第1の記憶装置34から上昇1停留時間T1の値であるt1を取得し(ステップS7)、取得した上昇1停留時間:t1をコントローラ36に出力して設定する(ステップ8)。
【0053】
なお、上述したステップS2での制御装置33による、取得した上昇1ストロークの値であるs1が0mmを超えているか、0mm以下かの判定で、第1の記憶装置34に格納されている部品ライブラリの上昇1ストロークs1が、例えば図4の(c)に記載したように、0mmであり、0mmを超えていない場合には、上述したステップS3〜ステップS8に至る上昇1加速度a1等の算出及びコントローラ36への設定は行われない。
【0054】
上述したステップS3〜ステップS8に至る上昇1加速度a1等の算出及びコントローラ36への設定が行われた後、次に、制御装置33は、吸着ノズル2が一端停止高さSc迄上昇した後再び上限の高さ(以下、吸着上限高さS0という。)迄上昇するときの上昇距離:S2を、第2の記憶装置35に格納されている以下の式3に基づいて、上昇1ストローク:S1、吸着上限高さS0から吸着下限高さSb迄の距離(吸着ノズル2のストローク:(Sb−S0))を用いて算出する(ステップS9)。
【0055】
S2=(Sb−S0)−S1・・・式3
尚、吸着上限高さS0及び吸着下限高さSbは第1の記憶装置34に格納され、吸着上限高さS0及び吸着下限高さSbは部品種によらず一定としているが、部品種毎に変えてもよい。また、吸着上限高さS0及び吸着下限高さSbを、第1の記憶装置34の図示していないRAMに格納してもよい
次に、制御装置33は、吸着ノズル2が電子部品を吸着して上昇し、一端停止高さScから再び上昇するときの加速度である上昇2加速度:A2を、第2の記憶装置35に格納されている以下の式4に基づいて、基本加速度:Ab、上昇2減速率:Dc2(パーセント)を用いて算出する(ステップS10)。
【0056】
A2=Ab×(1−Dc2/100)・・・式4
例えば、基本加速度:Abの値がa1(mm/sec)であり、上昇2減速率:Dc2の値であるdc2が例えば40パーセントのときには、上昇2加速度A2の値であるa2は、a1×(1−0.4)の値である0.6a1(mm/sec)になる。
【0057】
次に、制御装置33は、電子部品を吸着した後、吸着ノズル2が一端停止高さScに達し、一端停止高さScから再び上昇を開始し、その後一定の速度で上昇した後に吸着上限高さS0に到達する迄に減速する際の減速度である上昇2減速度:D2を、第2の記憶装置35に格納されている以下の式5、基本減速度:Db、上昇2減速率:Dc2(パーセント)に基づいて算出する(ステップS11)。
【0058】
D2=Db×(1−Dc2/100)・・・式5
例えば、基本減速度:Dbの値がdb(mm/sec)であり、上昇2減速率:Dc2が40パーセントのときには、上昇2減速度D2の値d2は、db×(1−0.4)であり、0.6db(mm/sec)になる。
【0059】
次に、制御装置33は、電子部品を吸着した吸着ノズル2が一端停止高さScから上昇したとき、吸着ノズル2を加速するときと減速するときとの間であり、吸着ノズル2を一定の速度で上昇させるときの上昇速度である上昇2速度V2を算出する(ステップS12)。
【0060】
即ち、上述したように算出した上昇2ストロークS2の値であるs2、第2の記憶装置35に格納されている基本定速時間Tcの値であるtc、算出した上昇2加速度の値であるa2、上昇2減速度d2を用い、第2の記憶装置35に格納されている式に基づいて、上昇2速度V2を算出する。ここで、上昇2速度のV2は、吸着ノズル2が上昇を開始してから上昇2速度のV2に達するまでの時間が求められその時間の間に上昇する距離とV2から0まで減速する時間の間に上昇する距離と上昇2速度のV2で基本定速時間であるtc秒上昇する距離との和が上昇2ストロークであるS2になるように求められる。
【0061】
その後、制御装置33は算出した上昇2ストロークS2、上昇2加速度A2、上昇2減速度D2及び上昇2速度のV2の値の情報、即ち、それぞれの値であるs2、a2、d2及びv2をコントローラ36に出力して設定する(ステップS13)。
【0062】
コントローラ36での設定が終了すると、次に、コントローラ36はドライバ36を介して駆動モータ22に駆動信号を出力し、駆動モータ22は運転を開始する。
【0063】
以下、駆動モータ22の運転による吸着ノズル2の上昇について、図7及び図6に基づいて説明する。
【0064】
コントローラ36からの信号に基づき、また、エンコーダからの駆動モータ22の位置に基づいて、駆動モータ22は運転され、吸着下限高さSbから上昇1加速度a1で速度を増加させながら上昇する。その後、吸着ノズル2の速度が上昇1速度v1に到達すると、到達した時点の上昇速度v1で吸着ノズル2は予め設定されている基本定速度時間tc上昇する。この基本定速度時間tcが経過すると。コントローラ36からの制御信号に基づいて駆動モータ22の回転速度は次第に低下し、吸着ノズル2は上昇1減速度d1で減速しながら上昇する。
【0065】
そして、吸着ノズル2が上昇1段目ストローク(図7の上部の速度波形における左側の台形波形に囲まれた部分)s1上昇して、一端停止高さScに到達し、エンコーダ38が上昇1段目ストロークs1上昇したことを検出すると(即ち、一端停止高さScに到達したことを検出すると)、その後は、吸着ノズル2は、予め設定され第1の記憶装置34に格納されている上昇1停留時間t1の間は上昇せずに、一端停止高さscに停留する。この結果、図9に記載したように、吸着ノズル2が電子部品40を吸着して保持し、上昇するとき、電子部品40が部品収納部42の上縁或いは側壁等に接触する等して引っ掛かり、吸着ノズル2の上昇により、電子部品40が破線で記載したように、斜めになった場合でも上昇1停留時間T1の間に、電子部品40は吸着ノズル2による吸引により、矢印で示したように回転し、再び吸着ノズル2の上面が下端に吸着され、吸着姿勢を水平に戻すことができ、電子部品が縦立ち或いは横立ち等の状態で吸着ノズル2に吸着された状態で基板の上方へ移動することを回避できる。エンコーダ38で検出せずに指令波形に従ってドライバがモータ22を駆動するようにしてもよい。また、停留時間T1は0と設定されていてもよい。あるいは部品ライブラリにT1の項目がなく常に、停留時間が0となるようにしてもよい。
【0066】
また、加速して速度V1になった後減速するが速度を0とせずある程度の低速度まで例えば上昇1減速度D1で減速したら、ストロークs1上昇した位置で再度例えば上昇2加速度a2で加速するようにしても図9に示すように吸着姿勢を部品収納部の上で正しく水平に戻す効果が期待できる。
【0067】
このように吸着姿勢が修正された電子部品を保持した吸着ノズル2は、上昇1停止時間が経過すると、駆動モータ22の運転により再び上昇を開始する。コントローラ36からの信号に基づいて駆動モータ22は運転され、一端停止高さS0から上昇2加速度a2で速度を増加させながら上昇する。その後、吸着ノズル2の速度が上昇2速度v2に到達すると、到達した時点の上昇2速度v2で吸着ノズル2は基本定速度時間Tc上昇する。この基本定速度時間Tcが経過すると。コントローラ36からの制御信号に基づいて駆動モータ22の回転速度は次第に低下し、吸着ノズル2は上昇2減速度d2で減速しながら上昇する。
【0068】
そして、吸着ノズル2が上昇2段目ストローク(図7の上部の速度波形における右側の台形波形に囲まれた部分)S2上昇して、吸着上限高さS0に到達して駆動モータ22の位置決めが完了すると(ステップS15)、上昇速度がゼロになり、吸着上昇が完了する(ステップS16)。
【0069】
そして、同様にその他の吸着ノズル2が電子部品の吸着を完了すると、装着ヘッド6は基板上に移動する。
【0070】
このように、吸着ノズル2での吸着異常の発生を回避することができ、この結果、電子部品を確実に基板に装着することができる。
【0071】
以上のように本発明の実施態様について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【符号の説明】
【0072】
1 電子部品装着装置
2 吸着ノズル
6 装着ヘッド
22 駆動モータ
33 制御装置
34 第1の記憶装置
35 第2の記憶装置
40 電子部品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9