特許第5991941号(P5991941)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5991941p−tert−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂組成物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5991941
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】p−tert−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 81/02 20060101AFI20160901BHJP
   C08L 45/00 20060101ALI20160901BHJP
   C08G 75/0268 20160101ALI20160901BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
   C08L81/02
   C08L45/00
   C08G75/0268
   C08L21/00
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-79041(P2013-79041)
(22)【出願日】2013年4月5日
(65)【公開番号】特開2014-201662(P2014-201662A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2015年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000216243
【氏名又は名称】田岡化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山元 貴文
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸行
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/031340(WO,A1)
【文献】 特開2011−074154(JP,A)
【文献】 特開2013−203742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 81/00
C08L 45/00
C08L 21/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒存在下、p−tert−オクチルフェノール1モルに対して一塩化イオウ1.2〜1.5モルを反応させ、得られたp−tert−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合物に対し、クマロン樹脂をp−tert−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂とクマロン樹脂との混合物中に、5〜50重量%含有するように添加した後溶媒を除去することを特徴とするクマロン樹脂を含有するp−tert−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
ゴム100重量部に対して、請求項1記載の製造方法にて製造されたクマロン樹脂を含有するp−tert−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂組成物を0.5〜50重量部使用することを特徴とするゴム組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムの樹脂架橋剤として使用可能なクマロン樹脂を含有するp−tert−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂及びその応用に関する。
【0002】
従来から硫黄に変わるゴム用架橋剤としてアルキルフェノール・塩化硫黄共縮合樹脂が使用されており、この中でも、p−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂は、加工性能や接着性に優れていることが知られている。(特許文献1)
【0003】
また、近年、環境保護の観点から、自動車の燃費向上(すなわち、低燃費化)が求められている。自動車の燃費向上には様々な手法が知られているが、この中の一つとしてタイヤの特性を変化させるといった手法があり、その為にはタイヤに使用するゴムの粘弾性特性を向上させることが求められ、その中でも損失正接(tanδ)と呼ばれる値が注目され、この値を低減させることが行われている。(例えば特許文献2、3)これら特許文献中には、tanδを低減させる為に、架橋剤として硫黄の代わりに、アルキルフェノール・塩化硫黄共縮合樹脂が使用されているが、本願発明者らがアルキルフェノール・塩化硫黄共縮合樹脂を使用したゴムの物性を確認した所、加工性能を表す指標の一つであるスコーチタイム(未加硫ゴムの加硫が開始する為に要する時間)が短く、加硫が開始するまでの時間が長く取れないため、安定した製品生産が困難となる場合があることを確認した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58−13648号公報
【特許文献2】特開2009−138148号公報
【特許文献3】特開2010−95670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では、ゴム用架橋剤としてゴムに添加した際、従来公知のp−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂よりもスコーチタイムがより長く、かつ粘弾性特性が低下せず、さらには耐ブロッキング性や分散性といったゴム用架橋剤としての基本性能は従来公知のものと同程度の性能を示し、更には昨今問題となっている揮発性有機化合物の残存量を大幅に低下した、p−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂を主成分としたゴム用架橋剤及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来公知のp−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂の製造方法に着眼し種々検討した結果、p−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂を製造する際に使用する一塩化イオウの使用比率を増やし、前記共樹脂中の硫黄含量を増加させることにより従来公知のp−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂よりもスコーチタイムを長くすることが可能であることを見出した。しかしながら、得られるp−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂の軟化点が非常に高く、工業的に製造しようとした場合、反応で使用した溶媒、即ち多量の揮発性有機化合物を残存させなければ工業的に製造困難であることも併せて判明した為、耐ブロッキング性や分散性といったゴム用架橋剤の性能を落とさず、かつ揮発性有機化合物を低減させる為には、製造過程でクマロン樹脂を添加し、その後残存溶媒を除去することによりこれらの問題が解決可能であることを見出した。具体的には以下の発明を含む。
〔1〕
溶媒存在下、p−tert−オクチルフェノール1モルに対して一塩化イオウ1.2〜1.5モルを反応させ、反応後、p−tert−オクチルフェノール1重量部に対しクマロン樹脂を5〜50重量部添加した後溶媒を除去することを特徴とするクマロン樹脂を含有するp−tert−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂組成物の製造方法。
〔2〕
軟化点が70〜140℃であり、かつクマロン樹脂の含有量が5〜50重量%であることを特徴とする〔1〕記載のクマロン樹脂を含有するp−tert−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂組成物。
〔3〕
〔2〕記載のクマロン樹脂を含有するp−tert−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂組成物を0.5〜50重量部含むことを特徴とするゴム組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ゴム用架橋剤としてゴムに添加した際、従来公知のp−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂よりもスコーチタイムがより長く、かつ粘弾性特性が低下せず、さらには耐ブロッキング性や分散性といったゴム用架橋剤としての基本性能は従来公知のものと同程度の性能を示し、更には昨今問題となっている揮発性有機化合物の残存量を大幅に低下した、p−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂を主成分としたゴム用架橋剤及びその製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明で使用するオクチルフェノールは、様々な異性体が存在する中で、p−tert−オクチルフェノールを指す。o位やm位が置換されたオクチルフェノールの場合、一塩化硫黄と反応せず、あるいは反応したとしても本願発明の目的とする共縮合樹脂が得られず好ましくない。
【0009】
本発明で使用する塩化硫黄は、一塩化硫黄(SCl)を指す。二塩化硫黄(SCl)を使用した場合、得られたp−tert−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂中の硫黄含量が少なく、本願効果であるスコーチタイムを長くすることができず好ましくない。また、一塩化硫黄はp−tert−オクチルフェノール1モルに対し、1.2〜1.5モル使用し、好ましくは1.2〜1.4モル使用する。1.2モルより少ない場合、得られた共縮合樹脂組成物を架橋剤としても、スコーチタイムを長くすることができず、また、1.5モルより多い場合、粘弾性特性が低下する。
【0010】
p−tert−オクチルフェノールと一塩化硫黄との反応において、溶媒を用いて反応を行う。この時使用する有機溶媒は、p−tert−オクチルフェノールや一塩化硫黄と副反応を起さず、反応を阻害しないものであればどのようなものでも良いが、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ヘプタン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン等が使用可能であり、好ましくはトルエン、キシレンが使用される。また、使用量はp−tert−オクチルフェノール1重量部に対し0.5〜2重量部、好ましくは0.5〜1.8重量部使用する。0.5重量部より少ない場合、反応系の粘度が高くなりすぎてp−tert−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂が製造できず、2重量部より多い場合、本発明のp−tert−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂は製造可能であるが、容積効率が悪くなったり、あるいは反応終了後、溶媒を除去する為に長時間必要であることから経済的有利にp−tert−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂が製造できず、好ましくない。
【0011】
p−tert−オクチルフェノールと一塩化硫黄との反応は通常、(1)p−tert−オクチルフェノール及び(2)溶媒を反応容器に投入した後、(3)一塩化硫黄を一定時間かけながら反応容器へ添加し、(4)その後一定時間保温攪拌をすることにより実施される。以下、これらの反応条件及び手順について詳述する。
【0012】
一塩化硫黄を添加する際の温度は通常40〜180℃、好ましくは70〜120℃である。40℃より低ければ反応の進行が遅く経済的に不利であり、180℃以上であると分解が生じる傾向がある。また、ここで言う添加とは、滴下のように間欠的に反応系へ投入する操作、流量を制御しながら連続的に反応系へ投入する操作の両方を包含する。添加時間は反応スケールにより異なるが、通常0.1〜12時間要する。なお、添加時間は添加時の温度変化を逐次確認することにより、当業者であれば容易に設定可能である。
【0013】
一塩化硫黄添加後の反応は、通常40〜180℃、好ましくは70〜120℃で実施する。40℃より低ければ反応の進行が遅く経済的に不利であり、180℃以上であると分解が生じる傾向がある。反応時間は温度によって異なるが、通常1〜10時間である。なお、反応時間は未反応p−tert−オクチルフェノールの残量を測定するか、反応系の粘度変化を測定する等により、当業者であれば容易に設定可能である。
【0014】
こうして得られた溶媒を含むp−tert−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂にクマロン樹脂を添加した後、反応で使用した溶媒を除去する。溶媒除去工程に入る前に必要に応じて、水洗や中和等、p−tert−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂中の不純物等を除去する操作を行っても良い。ここで言うクマロン樹脂とは、その骨格構造にクマロン残基を含む平均重合度4〜8の共重合体のことを示し、クマロン残基の他にインデン,スチレン残基を有しているものが一般的である。このようなクマロン樹脂として具体的に、日塗化学株式会社社製のニットレジン クマロン、神戸油化学工業(株)のプロセスレジン、Rutgers社製NovaresC series等が例示される。
【0015】
クマロン樹脂の軟化点はその重合度や構造により様々であるが、通常5〜150℃、好ましくは5〜120℃のものが使用される。150℃より高いものを使用した場合、溶媒を除去する過程で反応マスの粘度が高くなりすぎて工業的に製造不可能となる恐れがあり、5℃より低いものを使用した場合、得られるクマロン樹脂を含むp−tert−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂が保存中にブロッキング(溶融固着)する恐れがあり好ましくない。また、クマロン樹脂は通常、樹脂架橋剤中に5〜50重量%含有するよう使用し、好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは5〜20重量%使用する。5重量%より少ない場合、溶媒を除去する過程で反応マスの粘度が高くなりすぎて工業的に製造不可能となる恐れがあり、50重量%より多い場合、得られるクマロン樹脂を含むp−tert−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂が保存中にブロッキング(溶融固着)する恐れがあり好ましくない。
【0016】
溶媒の除去工程は、前述のクマロン樹脂を添加後、溶媒の沸点に併せて一般的に行われる方法で実施可能である。このような方法として例えば、溶媒を含むp−tert−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂及びクマロン樹脂を反応器に投入し、内温を溶媒の沸点以上として反応器から溶媒を除去させる方法が例示される。この際、反応器を必要に応じ減圧系とし、より低い温度で溶媒を除去しても良い。溶媒除去時の内温及び圧力は溶媒の種類に応じて当業者であれば適宜選択可能である。
【0017】
溶媒の除去工程の終点は、クマロン樹脂を含有するp−tert−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂中の残溶媒量によって決定する。残溶媒量は所望する性能によって異なるが、通常、5重量%以下とし、好ましくは1重量%以下とする。5重量%より多い場合、溶媒が揮発性有機化合物として環境に影響を与える可能性がある。
【0018】
こうして得られたクマロン樹脂を含有するp−tert−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂は必要に応じ、軟化点が70〜140℃、好ましくは80〜130℃となるようにクマロン樹脂を更に追加・混合し調整することが可能である。得られた樹脂の軟化点が70℃より低い場合、保存中にブロッキング(溶融固着)する恐れがあり好ましくなく、140℃より高い場合、樹脂架橋剤としてゴムに添加した際、分散性不良を発現する恐れがあり、その結果十分な性能を有するゴム組成物が得られなくなり好ましくない。なお、本発明で言う軟化点とは、JIS ゜K5902に準拠した環球法にて測定した軟化点のことを示す。
【0019】
本発明中の樹脂組成物を前述の軟化点範囲を有するように調整した結果、クマロン樹脂を含有するp−tert−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂組成物に含まれるクマロン樹脂は通常5〜50重量%であり、好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは5〜20重量%となる。なお、クマロン樹脂はその蒸気圧が非常に低く、通常、溶媒の除去工程にて殆ど除去されることがない為、溶媒除去工程で添加したクマロン樹脂と、溶媒除去工程後に必要に応じ追加したクマロン樹脂の使用量の合計が、そのまま本発明の樹脂組成物中のクマロン樹脂含有量となる。
【0020】
こうして得られたクマロン樹脂を含有するp−tert−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂組成物は硫黄架橋可能な全てのゴムに適用可能であり、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、イソプレン−イソブチレン共重合ゴム(IIR)、エチレン−プロピレンターポリマー(EPDM)、等が例示される。この中でも天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、に好適に使用される。また、クマロン樹脂を含有するp−tert−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂組成物をゴムに使用する際の使用量は、ゴム100重量部に対して、本発明のクマロン樹脂を含有するp−tert−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂組成物を通常0.5〜50重量部、好ましくは1〜30重量部、さらに好ましくは1〜20重量部使用する。0.5重量部より少ない場合、架橋密度が低くなり粘弾性特性が悪化する傾向があり、50重量部より多い場合、破断特性や耐磨耗性が悪化する傾向がある。
【0021】
本発明のクマロン樹脂を含有するp−tert−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂組成物をゴムに配合し使用する際は、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、カーボンブラック等の充填剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、オイル類等を、本発明の目的を阻害しない範囲内で適宜選択して配合することができ、これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
【0022】
本発明におけるクマロン樹脂を含有するp−tert−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂組成物を0.5〜50重量部含むゴム組成物は、タイヤ、ホース、チューブ、ガスケット、家電部品等に使用されるゴム製品に好適に使用される。
【実施例】
【0023】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
(各樹脂の製造)
各樹脂の製造においては以下の分析条件に基づき分析を行った。
【0025】
<軟化点>
軟化点はJIS ゜K5902に基づいた環球法にて測定した。
【0026】
<残存溶媒>
「残留モノマー、残留溶媒の測定」
残留モノマー及び残留溶媒については、以下の条件に基づくガスクロマトグラフィーにより定量を行った。
使用機器 :島津製作所社製 ガスクロマトグラフ GC−14B
カラム :ガラスカラム外径5mm×内径3.2mm×長さ3.1m
充填剤 :充填剤 Silicone OV−17 10% Chromosorb WHP 80/100mesh, max.temp.340℃
カラム温度:80℃→280℃
気化室温度:250℃
検出器温度:280℃
検出器 :FID
キャリアー:N(40ml/min)
燃焼ガス :水素(60kPa), 空気(60kPa)
注入量 :2μL
樹脂架橋剤1g、標品としてアニソール0.05gをアセトン10mLに溶解させ上記条件にて分析した。内部標準法(GC−IS法)により、樹脂中の残留溶媒、残留モノマーの含有量(%)を測定した。
なお、実施例および比較例の本文中に記載した含有量(%)は、特に断りのない限り重量パーセントとして表すものとする。
【0027】
<実施例1 樹脂Aの合成>
還流冷却機および温度計を備えた4つ口フラスコにp−tert−オクチルフェノール800g(3.8モル)とトルエン500gを仕込み、一塩化イオウ630g(4.7モル)をフラスコ内の内温を70〜80℃に保持しつつ5時間で滴下し、滴下終了後内温を120℃に上昇させ3時間保温した。得られた反応液にクマロン樹脂としてRutgers社製NovaresC10を94gを加えたのち減圧下において溶媒及び未反応モノマーを除去し、p−tert−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂組成物(樹脂Aと称する)1170gを得た。得られた樹脂の軟化点、残存溶媒量、残存モノマー量について表1に示す。
【0028】
<実施例2 樹脂Bの合成>
還流冷却機および温度計を備えた4つ口フラスコにp−tert−オクチルフェノール1000g(4.8モル)とトルエン1000gを仕込み、一塩化イオウ864g(6.4モル)をフラスコ内の内温を70〜80℃に保持しつつ5時間で滴下し、滴下終了後内温を120℃に上昇させ3時間保温する。得られた反応液にクマロン樹脂としてRutgers社製NovaresC100,173gを加えたのち減圧下において溶媒及び未反応モノマーを除去し、p−tert−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂組成物(樹脂Bと称する)1530gを得た。得られた樹脂の軟化点、残存溶媒量、残存モノマー量について表1に示す。
【0029】
<比較例1 樹脂Cの合成>
還流冷却機および温度計を備えた4つ口フラスコにp−tert−オクチルフェノール800g(3.8モル)とトルエン500gを仕込み、一塩化イオウ630g(4.67モル)をフラスコ内の内温を70〜80℃に保持しつつ5時間で滴下し、滴下終了後内温を120℃に上昇させ3時間保温した。得られた反応液にパラフィン系プロセスオイル94gを加えたのち減圧下において溶媒及び未反応モノマーを除去し、p−tert−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂(樹脂Dと称する)1190gを得た。得られた樹脂の軟化点、残存溶媒量、残存モノマー量について表1に示す。
【0030】
<比較例2 樹脂Dの合成>
還流冷却機および温度計を備えた4つ口フラスコにp−tert−オクチルフェノール800g(3.9モル)とトルエン470gを仕込み、一塩化イオウ970g(7.2モル)をフラスコ内の内温を70〜80℃に保持しつつ5時間で滴下し、滴下終了後内温を120℃に上昇させ3時間保温した。得られた反応液にクマロン樹脂を添加することなく減圧下において溶媒及び未反応モノマーを除去し、p−tert−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂(樹脂Eと称する)1250gを得た。得られた樹脂の軟化点、残存溶媒量、残存モノマー量について表1に示す。
【0031】
<比較例3 樹脂Eの合成>
還流冷却機および温度計を備えた4つ口フラスコにp−tert−オクチルフェノール800g(3.8モル)とトルエン500gを仕込み、一塩化イオウ630g(4.67モル)をフラスコ内の内温を70〜80℃に保持しつつ5時間で滴下し、滴下終了後内温を120℃に上昇させ3時間保温した。その後、減圧下において溶媒及び未反応モノマーを除去しようとした所、除去中に反応マスが固化し完結できなかった。
【0032】
<参考例 樹脂F>
市販されているp−tert−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂として、田岡化学工業株式会社製V−200を樹脂Fとしてそのまま使用した。
【0033】
<ブロッキング性評価>
ブロッキング試験は、各実施例、比較例及び参考例で得られた固形樹脂を一片約0.5cm程度のフレーク状粉末に粉砕したものを試料として、ポリエチレン製容器底から1cm程度になるように充填し、容器蓋を開放した状態で温度40℃、湿度95%RHの条件下で168時間放置し、以下評価基準に基づき評価を行った。
【0034】
<ブロッキング性評価基準>
樹脂微粉末同士のブロッキング状態を目視で観察し、次の評価基準に基づきブロッキング性を評価した。結果を表1に示す。
◎:ブロッキングなし、○:指先で潰せば軽くほぐれる程度のブロッキング、△:一部ブロッキングが認められる、×:全体的にブロッキングが認められる。
【0035】
<評価用未加硫ゴムシートの作成>
下記配合のゴムコンパウンド400gを 関西ロール社製の6インチオープンロールを用いて設定温度0℃、10分混練で作成した。
<配合>
スチレン・ブタジエンゴム(SBR)(JSR社製 JSR1502)70重量部
ブタジエンゴム(BR)(宇部興産社製 BR150B) 30重量部
シリカ(東ソー・シリカ社製 VN3) 50重量部
カーボンブラック(昭和キャボット社製 N330) 5重量部
シランカップリング剤(デグザ社製 Si69) 5重量部
老化防止剤(大内新興化学工業社製 ノクラック6C) 2重量部
酸化亜鉛(堺化学社製) 3重量部
ステアリン酸(日本油脂製) 2重量部
加硫促進剤(大内新興化学工業社製 CZ−G) 3重量部
不溶性硫黄(フレキシス社製 クリステックスHS OT−20) 2重量部
p−tert−オクチルフェノール塩化硫黄共縮合樹脂(樹脂A〜F)2重量部
【0036】
<スコーチタイム>
東洋精機製作所製ムーニー粘度計(Lローター)にて、評価用未加硫ゴムシートの130℃におけるtをスコーチタイムとして測定した。
【0037】
<ゴム物性評価方法>
(転がり抵抗;tanδ(70℃))
ゴム物性評価用加硫試験片は160℃で20分間加圧し作成した厚さ2mmの加硫ゴムシートより、50mm×5mmを切り出して作成した。
加硫試験片の動的粘弾性を、セイコーインスツルメンツ(株)製動的粘弾性測定装置にて、初期歪み1%、振幅±0.2%、周波数10Hzで測定し、温度70℃(昇温速度:2℃/分)におけるtanδを求めた。
【0038】
<ゴム物性評価基準>
参考例である樹脂Fの各評価結果に対して、それぞれの樹脂架橋剤を使用した際の評価結果を、次の評価基準に基づき、評価結果を相対評価した。
tanδ(粘弾性特性に関する値。値が低いほうが粘弾性特性が良好となる。)
参考例に比べ上昇:×
5%未満の低下:○
5%以上の低下:◎
【0039】
【表1】