(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
【0015】
以下、静電潜像現像用トナー、及び静電潜像現像用トナーの製造方法について順に説明する。
【0016】
≪静電潜像現像用トナー≫
本発明の製造方法を用いて製造される静電潜像現像用トナー(以下単にトナーともいう)は、結着樹脂を含む原料を溶融混錬して得られる混練物を粉砕して粉砕物を得た後、粉砕物を分級して得られる。このようにして得られるトナーに含まれる粒子径3μm以上10μm以下のトナー粒子の平均円形度は、0.960以上0.970以下とされる。
【0017】
トナーは、結着樹脂と共に、必要に応じて、着色剤、電荷制御剤、離型剤、及び磁性粉のような任意成分を含んでいてもよい。トナーには、その表面に、さらに外添剤を付着させることもできる。トナーは、必要に応じて、キャリアと混合して2成分現像剤として使用することもできる。以下、結着樹脂、着色剤、電荷制御剤、離型剤、磁性粉、及び外添剤と、トナー粒子の平均円形度と、トナーの粒子径の体積分布及び個数分布と、本発明の製造方法を用いて得られるトナーを2成分現像剤として使用する場合に用いるキャリアと、について説明する。
【0018】
[結着樹脂]
結着樹脂の種類は、従来からトナー用の結着樹脂として用いられている樹脂であれば特に制限されない。結着樹脂の具体例としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N−ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂のような熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂の中でも、トナー中の着色剤の分散性、トナーの帯電性、トナーの用紙に対する定着性の面から、スチレンアクリル系樹脂、及びポリエステル系樹脂が好ましい。以下、スチレンアクリル系樹脂、及びポリエステル系樹脂について説明する。
【0019】
スチレンアクリル系樹脂は、スチレン系単量体とアクリル系単量体との共重合体である。スチレン系単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレンのような物質が挙げられる。アクリル系単量体の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸iso−ブチルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0020】
ポリエステル系樹脂は、2価又は3価以上のアルコール成分と2価又は3価以上のカルボン酸成分とを縮重合や共縮重合することで得られるものを使用することができる。ポリエステル系樹脂を合成する際に用いられる成分としては、以下のアルコール成分やカルボン酸成分が挙げられる。
【0021】
2価又は3価以上のアルコール成分の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールのようなジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールAのようなビスフェノール類;ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンのような3価以上のアルコール類が挙げられる。
【0022】
2価又は3価以上のカルボン酸成分の具体例としては、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、あるいはn−ブチルコハク酸、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸のようなアルキル又はアルケニルコハク酸のような2価カルボン酸;1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸のような3価以上のカルボン酸が挙げられる。これらの2価又は3価以上のカルボン酸成分は、酸ハライド、酸無水物、低級アルキルエステルのようなエステル形成性の誘導体として用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数1から6のアルキル基を意味する。
【0023】
結着樹脂がポリエステル系樹脂である場合の、ポリエステル系樹脂の軟化点は、80℃以上150℃以下であることが好ましく、90℃以上140℃以下がより好ましい。
【0024】
結着樹脂のガラス転移点(Tg)は、50℃以上65℃以下が好ましく、50℃以上60℃以下がより好ましい。ガラス転移点が高すぎる場合、トナーの低温定着性が低下する傾向がある。結着樹脂のガラス転移点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定することができる。
【0025】
結着樹脂の質量平均分子量(Mw)は、20000以上300000以下が好ましい。結着樹脂の質量平均分子量(Mw)は、従来知られる方法に従って、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定できる。
【0026】
[着色剤]
トナーに含まれる着色剤は、トナーの色に合わせて、公知の顔料や染料を用いることができる。トナーに添加可能な着色剤の具体例としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、アニリンブラックのような黒色顔料;黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネープルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキのような黄色顔料;赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジGKのような橙色顔料;ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bのような赤色顔料;マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキのような紫色顔料;紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBCのような青色顔料;クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGのような緑色顔料;亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛のような白色顔料;バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイトのような体質顔料が挙げられる。これらの着色剤は、トナーを所望の色相に調整する目的で2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0027】
着色剤の使用量は、トナー全質量に対して、1質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0028】
[電荷制御剤]
電荷制御剤は、帯電レベルや、所定の帯電レベルに短時間で帯電可能か否かの指標となる帯電立ち上がり特性を向上させ、耐久性や安定性に優れたトナーを得る目的で使用される。トナーを正帯電させて現像を行う場合、正帯電性の電荷制御剤が使用され、トナーを負帯電させて現像を行う場合、負帯電性の電荷制御剤が使用される。
【0029】
トナーに用いることができる電荷制御剤としては、従来よりトナーに使用されている電荷制御剤から適宜選択できる。正帯電性の電荷制御剤の具体例としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オルトオキサジン、メタオキサジン、パラオキサジン、オルトチアジン、メタチアジン、パラチアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、及びキノキサリンのようなアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ−ンBH/C、アジンディ−プブラックEW、及びアジンディープブラック3RLのようなアジン化合物からなる直接染料;ニグロシン、ニグロシン塩、及びニグロシン誘導体のようなニグロシン化合物;ニグロシンBK、ニグロシンNB、及びニグロシンZのようなニグロシン化合物からなる酸性染料;ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩類;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルメチルヘキシルデシルアンモニウム、及びデシルトリメチルアンモニウムクロライドのような4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの正帯電性の電荷制御剤の中では、より迅速な帯電の立ち上がり性が得られる点で、ニグロシン化合物が特に好ましい。これらの正帯電性の電荷制御剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
【0030】
4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、又はカルボキシル基を官能基として有する樹脂も正帯電性の電荷制御剤として使用できる。より具体的には、4級アンモニウム塩を有するスチレン系樹脂、4級アンモニウム塩を有するアクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するポリエステル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン系樹脂、カルボン酸塩を有するアクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するポリエステル系樹脂、カルボキシル基を有するスチレン系樹脂、カルボキシル基を有するアクリル系樹脂、カルボキシル基を有するスチレンアクリル系樹脂、及びカルボキシル基を有するポリエステル系樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、オリゴマーであってもポリマーであってもよい。
【0031】
負帯電性の電荷制御剤の具体例としては、有機金属錯体、キレート化合物が挙げられる。有機金属錯体、及びキレート化合物としては、アルミニウムアセチルアセトナートや鉄(II)アセチルアセトナートのようなアセチルアセトン金属錯体、及び、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸クロムのようなサリチル酸系金属錯体又はサリチル酸系金属塩が好ましく、サリチル酸系金属錯体又はサリチル酸系金属塩がより好ましい。これらの負帯電製の電荷制御剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
【0032】
正帯電性又は負帯電性の電荷制御剤の使用量は、トナー全量を100質量部とした場合に、0.5質量部以上15質量部以下が好ましく、0.5質量部以上8.0質量部以下がより好ましく、0.5質量部以上7.0質量部以下が特に好ましい。
【0033】
[離型剤]
離型剤は、トナーの用紙への定着性や耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーに用いることができる離型剤としては、従来からトナー用の離型剤として使用されているものであれば特に限定されない。
【0034】
離型剤としてはワックスが好ましい。ワックスの例としては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フッ素樹脂系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、エステルワックス、モンタンワックス、ライスワックスのような物質が挙げられる。これらの離型剤は2種以上を組み合わせて使用できる。このような離型剤をトナーに添加することで、オフセットや像スミアリング(画像をこすった際の画像周囲の汚れ)の発生をより効率的に抑制することができる。
【0035】
離型剤の使用量は、トナーの全質量に対して、1質量%以上5質量%以下が好ましい。
【0036】
[磁性粉]
静電潜像現像用トナーを製造する際、必要に応じて、結着樹脂中に磁性粉を配合してもよい。このようにして製造される磁性粉を含むトナーは、磁性1成分現像剤として使用することができる。好適な磁性粉としては、フェライト、マグネタイトのような鉄;コバルト、ニッケルのような強磁性金属;鉄、及び/又は強磁性金属を含む合金;鉄、及び/又は強磁性金属を含む化合物;熱処理のような強磁性化処理を施された強磁性合金;二酸化クロムが挙げられる。
【0037】
磁性粉の粒子径は、0.1μm以上1.0μm以下が好ましく、0.1μm以上0.5μm以下がより好ましい。このような範囲の粒子径の磁性粉を用いてトナーを製造する場合、結着樹脂中に磁性粉を均一に分散させやすい。
【0038】
磁性粉の使用量は、トナーを1成分現像剤として使用する場合、トナー全量を100質量部とする場合に、35質量部以上60質量部以下が好ましく、40質量部以上60質量部以下がより好ましい。また、トナーを2成分現像剤として使用する場合、磁性粉の使用量は、トナー全量を100質量部とする場合に、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
【0039】
[外添剤]
トナーは、必要に応じて、外添剤を用いて処理されてもよい。以下、外添剤を用いて処理される粒子を、「トナー母粒子」とも記載する。
【0040】
好適な外添剤としては、シリカや、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、及びチタン酸バリウムのような金属酸化物が挙げられる。これらの外添剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
【0041】
外添剤の粒子径は、0.01μm以上1.0μm以下が好ましい。
【0042】
外添剤の使用量は、トナー母粒子100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、0.2質量部以上5質量部以下がより好ましい。このような範囲の量で外添剤を使用すると、流動性、及び保存安定性に優れるトナーを得やすい。
【0043】
[トナー粒子の平均円形度]
トナーに含まれる粒子径3μm以上10μm以下のトナー粒子の平均円形度は、0.960以上0.970以下に調整される。平均円形度が低すぎるトナー粒子は、丸みが乏しい。そのため、平均円形度が低すぎるトナーは、潜像担持体(感光体ドラム)との接触摩擦係数が高く、潜像担持体から被記録媒体へトナー像を転写する際に、トナーが潜像担持体表面から剥離しにくくなる。そうすると、形成画像に中抜けとよばれる画像不良が生じやすい。また、平均円形度が高すぎる場合、潜像担持体に付着した転写残トナーをクリーニングする際に、転写残トナーを除去するための装置をトナー粒子がすり抜けることがあり、それに伴った画像不良が、形成した画像に発生することがある。
【0044】
トナーの平均円形度を調整する方法は特に限定されないが、後述するように、混練物の粉砕時に、機械式粉砕機を用いる微粉砕の回数や、微粉砕後に得られる粉砕物の平均粒子径を適宜調整し、粉砕物の分級時に、気流式分級機の微粉側の除去量と、粗粉側の除去量とのバランスを調整することで調整できる。粒子径3μm以上10μm以下のトナー粒子の平均円形度は、以下の方法に従って測定できる。
【0045】
<平均円形度測定方法>
トナーの平均円形度は、フロー式粒子像分析装置(FPIA−3000(シスメックス株式会社製))を用いて測定される。23℃、60%RHの環境下で、円相当径0.60μm以上400μm以下の範囲のトナー粒子について、粒子像と同じ投影面積を持つ円の円周の長さ(L
0)と、トナー粒子投影像の外周の長さ(L)とを測定し、下式に従ってトナー粒子の円形度を求める。円相当径3μm以上10μm以下のトナー粒子の円形度の総和を、円相当径3μm以上10μm以下の測定したトナー粒子数で除した値を平均円形度とする。
(円形度算出式)
円形度=L
0/L
【0046】
[トナーの粒子径の体積分布、及び個数分布]
トナー粒子の形状や粒子径のバラつきや、中抜けとよばれる画像不良の原因となる小粒子径のトナー粒子の含有量を知るために、公知の測定装置を用いて、トナー粒子の体積基準の粒子径分布(粒子径の体積分布)、及び個数基準の粒子径分布(粒子径の個数分布)を測定することができる。トナーの粒子径の体積分布、及び個数分布は、以下の方法に従って測定できる。
【0047】
<トナーの粒子径の体積分布、及び個数分布の測定方法>
体積分布及び個数分布の測定は、コールターカウンターマルチサイザー3(ベックマンコールター社製)を用いて、標準の測定条件で行われる。電解液としてアイソトンII(ベックマンコールター社製)を用い、アパーチャーとして100μm径のアパーチャーを用いる。電解液10mL(アイソトンII)に少量の界面活性剤を添加した溶液に、トナー10mgを加え、超音波分散器を用いてトナー粒子を電解液中に分散させる。トナー粒子が分散した電解液を測定試料として用い、コールターカウンターマルチサイザー3を用いてトナーの粒子径の体積分布及び個数分布を測定する。
【0048】
トナーの粒子径の体積分布の標準偏差(SD)は、1.25μm以下であるのが好ましい。SDがこのような範囲であるトナーは、トナー粒子の形状や粒子径のバラつきが小さいため、所望する品質の画像を形成しやすく、トナーの保管時にブロッキングのような問題が生じにくい。
【0049】
SDが過大であるトナーを用いて画像を形成する場合、トナー粒子の形状や粒子径のバラつきに起因して、トナーの帯電量の分布がブロードとなる。その結果、長時間にわたり印刷を行う場合に形成画像の画像濃度が所望する値を下回ることがある。
【0050】
SDは、トナーの製造時に粉砕物を分級する際に、微粉及び粗粉の除去量を増加させることで小さくすることができる。
【0051】
トナーの粒子径の個数分布中の最大ピークの粒子径がPn[μm]であるとき、体積分布中の最大ピークの粒子径Pv[μm]からPnを減じた値の絶対値|Pv−Pn|は0.8μm以下であるのが好ましい。|Pv−Pn|がこのような範囲である場合、トナー粒子の形状や粒子径のバラつきが少ないため、所望する品質の画像を形成しやすく、トナーの保管時にブロッキングのような問題が生じにくい。
【0052】
|Pv−Pn|が過大であるトナーを用いて画像を形成する場合、トナー粒子の形状や粒子径のバラつきに起因して、帯電量の分布がブロードとなる。その結果、長時間にわたり印刷を行う場合に形成画像の画像濃度が所望する値を下回ることがある。
【0053】
|Pv−Pn|の値は、トナーの製造時に粉砕物を分級する際に、微粉及び粗粉の除去量を増加させることで小さくすることができる。
【0054】
[キャリア]
トナーは、所望のキャリアと混合して2成分現像剤として使用することもできる。2成分現像剤を調製する場合、キャリアとして磁性キャリアを用いるのが好ましい。
【0055】
トナーを2成分現像剤とする場合の好適なキャリアとしては、キャリア芯材が樹脂で被覆されたものが挙げられる。キャリア芯材の具体例としては、鉄、酸化処理鉄、還元鉄、マグネタイト、銅、ケイ素鋼、フェライト、ニッケル、及びコバルトのような粒子や、これらの材料とマンガン、亜鉛、及びアルミニウムのような金属との合金の粒子、鉄−ニッケル合金、及び鉄−コバルト合金のような粒子、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、チタン酸リチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、ニオブ酸リチウムのようなセラミックスの粒子、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、及びロッシェル塩のような高誘電率物質の粒子、並びに樹脂中に上記磁性粒子を分散させた樹脂キャリアが挙げられる。
【0056】
キャリアを被覆する樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体、オレフィン系重合体(ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレンのような物質)、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、及びポリフッ化ビニリデンのような物質)、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、及びアミノ樹脂が挙げられる。これらの樹脂は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0057】
キャリアの粒子径は、電子顕微鏡を用いて測定される粒子径で、20μm以上200μm以下が好ましく、30μm以上150μm以下がより好ましい。
【0058】
キャリアの見掛け密度は、キャリアの組成や表面構造で異なるが、2.4g/cm
3以上3.0g/cm
3以下が好ましい。
【0059】
トナーを2成分現像剤として用いる場合、トナーの含有量は、2成分現像剤の質量に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下が好ましい。2成分現像剤中のトナーの含有量をこのような範囲とすることで、形成画像の画像濃度を適度な水準に維持しやすく、現像装置からのトナー飛散の抑制によって画像形成装置内部のトナーによる汚染や、転写紙へのトナーの付着を抑制できる。
【0060】
≪静電潜像現像用トナーの製造方法≫
以上説明した静電潜像現像用トナーは、結着樹脂を含む原料を溶融混錬して得た混練物を粉砕して粉砕物を得た後、粉砕物を分級して得られる。そして、粉砕物の分級は、除去された微粉側の粉砕物の質量が、除去された粗粉側の粉砕物の質量よりも大きくなり、且つ、粉砕物の体積平均粒子径(Da)と、分級された粉砕物の体積平均粒子径(Db)との差(Db−Da)が、0.8μm以上となるように行われる。
【0061】
換言すると、本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法は、以下の工程(I)〜(III):
(I)結着樹脂を含む原料を溶融混錬して混練物を得る溶融混錬工程、
(II)混練物を粉砕して粉砕物を得る粉砕工程、及び、
(III)粉砕物を分級する分級工程、
を含む。以下、工程(I)〜(III)について説明する。
【0062】
[工程(I):溶融混錬工程]
工程(I)では、結着樹脂を含む原料を溶融混錬して混練物を得る。具体的には、結着樹脂と、着色剤、離型剤、電荷制御剤、磁性粉のような任意の成分とを、混合機を用いて混合した後、一軸又は二軸押出機のような混練機を用いて結着樹脂と結着樹脂に配合される成分とを溶融混練して混練物を得る。得られる混練物は、工程(II)の処理の前に、室温程度まで冷却するのが好ましい。
【0063】
[工程(II):粉砕工程]
工程(II)では、工程(I)で得られる混練物を粉砕して粉砕物を得る。粉砕物の調製方法としては、混練物を複数回に分けて粉砕する方法が好ましい。具体的には、工程(I)で得られる混練物を、粉砕機を用いて粗粉砕した後、得られる粗粉砕物を、機械式粉砕機を用いて微粉砕する方法が好ましい。機械式粉砕機を用いる微粉砕を行う場合、微粉砕も複数回に分けて行うのが好ましい。
【0064】
機械式粉砕機を用いて、1回で所望の粒子径まで微粉砕する場合、微粉砕工程の初期では、混練物の粒子の角や周囲が削られることに起因する粒子径変化が主に起こる。対して、微粉砕工程の後期では、粉砕された混練物の粒子の角が既に取れているため、粒子の割れに起因する粒子径変化が主に生じる。このため、微粉砕工程を複数回に分けて行うと、粉砕時の粒子の割れが抑制され、円形度の高いトナー粒子が得られると思われる。
【0065】
混練物の粉砕は、粉砕物の体積平均粒子径(Da)が5.5μm以上6.5μm以下となるように行われるのが好ましい。粉砕物の粒子の平均円形度について、粒子径が小さいほど低い傾向がある。一般的に、本発明のトナーの製造方法のように、混練、粉砕、及び分級する工程を含むトナーの製造方法では、分級される前の粉砕物の体積平均粒子径は、6.0μm以上8.0μm以下に設定されることが多い。これに対して、本発明のトナーの製造方法では、Daが5.5μm以上6.5μm以下となるように混練物が粉砕され、後述の分級工程を経ることで、円形度の高いトナーを製造することができる。従って、混練物の粉砕の際、Daをこのような範囲に調整することで、トナーに含まれる粒子径3μm以上10μm以下のトナー粒子の平均円形度が0.960以上0.970以下であるトナーを調製することができる。
【0066】
Daの値は、粉砕時間を延長することで小さくすることができる。ハンマーミルのような回転式の機械式粉砕機を用いる場合、粉砕機の回転数を上げることでも、Daの値を小さくすることができる。ジェットミルのような気流式の粉砕機を用いる場合、気流の流速を上げることで、Daの値を小さくすることができる。
【0067】
[工程(III):分級工程]
工程(III)では、工程(II)で得られる粉砕物を分級する。粉砕物の分級に用いる分級機としては、エルボージェット分級機のような気流式分級機を用いるのが好ましい。粉砕物の分級は、除去された微粉側の粉砕物の質量が、除去された粗粉側の粉砕物の質量よりも大きくなり、且つ、粉砕物の体積平均粒子径(Da)と、分級された粉砕物の体積平均粒子径(Db)との差(Db−Da)が、0.8μm以上となるように行われる。
【0068】
除去された微粉側の粉砕物の質量が、除去された粗粉側の粉砕物の質量よりも大きくなるように分級を行うことで、分級された粒子の平均円形度を高め、得られるトナーに含まれる粒子径3μm以上10μm以下のトナー粒子の平均円形度が0.960以上0.970以下であるようなトナーを調製することができる。
【0069】
一般に、トナーのような微粉体の分級は気流式分級機を用いて行われる。気流式分級機では、粒子径の大きな粒子と、粒子径の小さな粒子との、気流による移動のしやすさの違いに基づいて分級が行われる。気流による移動のしやすさの違いは、粒子の質量だけではなく、気流の移動方向に対して垂直方向の粒子の投影面積にも影響を受ける。このような投影面積が大きいほど、粒子が気流からうける力が増加する。このため、投影面積が大きいほど、気流により移動しやすい。ここで、トナーの粒子について、同一の質量の粒子であれば、円形度が低いものほど、気流の移動方向に対して垂直方向の粒子の投影面積が大きくなる。このため、円形度が低い粒子は、分級の際に、移動しやすく、実際の質量よりも質量の小さい粒子のようにふるまう。
【0070】
このような理由から、微粉を優先して分級すると、製品として回収されるトナーには、円形度の高いトナー粒子が多く含まれる。このため、上記の方法で分級を行うことで、トナーに含まれる粒子径3μm以上10μm以下のトナー粒子の平均円形度が0.960以上0.970以下であるようなトナーを調製することができる。
【0071】
このように、分級工程では微粉が優先的に除去されるため、分級前の粉砕物に比べて、分級された粉砕物では、粒子径の大きい粒子の割合が増加する。よって、分級された粉砕物の体積平均粒子径(Db)は、分級されていない粉砕物の体積平均粒子径(Da)に比べて大きくなる。
【0072】
粉砕物の分級は、DbとDaの差(Db−Da)が0.8μm以上になるように行われる。このため、分級工程での、微粉の除去量と、粗粉の除去量とは、(Db−Da)が0.8μm以上になるように調整される。分級工程での微粉の除去量と、粗粉の除去量の比率は、(Db−Da)が0.8μm以上になるように分級が行われる限り特に限定されないが、分級工程が、除去された粗粉の質量/除去された微粉の質量の値が、1/10以上1/50以下であるように行われるのが好ましく、1/20以上1/30以下であるように行われるのがより好ましい。
【0073】
(Db−Da)が0.8μm以上であるように分級が行われる場合、粉砕後の未分級の粒子から、粒子径3μm以下の超微粉が十分に除去される。このため、上記のような条件で分級を行うことで、粒子径3μm以下の超微粉による悪影響が軽減されたトナーを製造することができる。したがって、本発明のトナーの製造方法を用いて得られるトナーを用いて画像を形成する場合、超微粉の影響によって生じる、中抜けのような画像不良の発生と、現像スリーブへの超微粉の付着に起因する画像品質の低下とを抑制できる。
【0074】
上記工程(III)を経て得られる分級後の粉砕物をトナー母粒子として用いて、トナー母粒子を、さらに、外添剤を用いて処理してもよい。外添剤を用いるトナー母粒子の処理方法は特に限定されず、従来知られている方法に従ってトナー母粒子を処理できる。具体的には、外添剤の粒子がトナー母粒子中に埋没しないように処理条件を調整し、ヘンシェルミキサーやナウターミキサーのような混合機を用いて、外添剤を用いるトナー母粒子の処理が行われる。
【0075】
以上説明した本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法を用いると、中抜けやかぶりのような画像不良の発生と、現像スリーブへの超微粉の付着に起因する画像品質の低下とを抑制できる静電潜像現像用トナーを製造できる。このため、本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法を用いて製造される静電潜像現像用トナーは、種々の画像形成装置で好適に使用される。
【実施例】
【0076】
以下、実施例を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例の範囲に何ら限定されるものではない。
【0077】
[調製例1]
(ポリエステル樹脂の調製)
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物1960g、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物780g、ドデセニル無水コハク酸257g、テレフタル酸770g、及び酸化ジブチル錫4gを反応容器に仕込んだ。反応容器の内容物を、窒素雰囲気下に、撹拌しながら235℃まで昇温した。次いで、同温度で8時間反応を行った後、反応容器内を8.3kPaに減圧して1時間反応を行った。その後、反応混合物を180℃に冷却し、所望の酸化となるようにトリメリット酸無水物を反応容器に添加した。次いで、10℃/時間の速度で反応混合物を210℃まで昇温し同温度で反応を行った。反応終了後、反応容器の内容物を取り出し、冷却してポリエステル樹脂を得た。ポリエステルは、ガラス転移点が70℃、融点(Tm)が140℃、質量平均分子量(Mw)が55000であった。
【0078】
[実施例1〜
2、参考例1〜3及び比較例1〜5]
〔溶融混練工程〕
調製例1で得たポリエステル樹脂100質量部、カルナバワックス(カルナバワックス1号(加藤洋行株式会社製))5質量部、電荷制御剤(P−51(オリヱント化学工業株式会社製))2質量部、及びカーボンブラック(MA100(三菱化学株式会社製))を、混合機(ヘンシェルミキサー(FM−20B(日本コークス工業株式会社製)))を用いて混合し混合物を得た。次に、混合物を、二軸押出機(PCM−30(株式会社池貝製))を用いて溶融混練して混練物を得た。
【0079】
〔粉砕工程〕
混練物を、粉砕機(ロートプレックス(株式会社東亜機械製作所製))を用いて粗粉砕して粗粉砕物を得た。得られた粗粉砕物を、機械式粉砕機(ターボミル(ターボ工業株式会社製))を用いて微粉砕して、実施例1〜
2、参考例1〜3及び比較例1〜5で用いる粉砕後粒子を得た。機械式粉砕機内への粗粉砕物の投入速度を10kg/時とし、機械式粉砕機の回転数を表1に記載の条件にすることで、粉砕後粒子の体積平均粒子径(Da)を表1に記載の値に調整した。粉砕後粒子の粒子径の体積分布を下記方法に従って測定し、得られた粒子径の体積分布から粉砕後粒子の体積平均粒子径(Da)を算出した。
【0080】
<粒子径の体積分布の測定方法>
粒子径の体積分布の測定は、コールターカウンターマルチサイザー3(ベックマンコールター社製)を用いて、標準の測定条件で行った。電解液としてアイソトンII(ベックマンコールター社製)を用い、アパーチャーとして100μm径のアパーチャーを用いた。電解液(アイソトンII)に少量の界面活性剤を添加した溶液に、粉砕後粒子10mgを加え、超音波分散器を用いて粉砕後粒子を電解液中に分散させた。粉砕後粒子が分散した電解液を測定試料として用い、コールターカウンターマルチサイザー3を用いて粉砕後粒子の粒子径の体積分布を測定した。
【0081】
【0082】
[分級工程]
粉砕後粒子を、分級機(エルボージェット分級機、EJ−L−3(日鉄鉱業株式会社製))を用いて分級し、実施例1〜
2、参考例1〜3及び比較例1〜5で用いる分級後粒子を得た。分級機の分級条件を適宜調整することで、分級後粒子の体積平均粒子径(Db)を表2に記載の値に調整した。得られた分級後粒子について、粒子径の体積分布を、粉砕後粒子の体積平均粒子径の測定方法と同様の装置、及び同様の条件で測定した。得られた粒子径の体積分布からDbを算出した。
【0083】
粉砕後粒子1.0kgを、投入速度3.0kg/時で分級機に投入し、分級機の微粉側に除去される微粉ゾーンのゾーン幅(ΔF)と、粗粉側に除去される粗粉ゾーンのゾーン幅(ΔM)とが表2に記載の値になるように調整して分級を行った。実施例1〜5、及び比較例1〜5での、分級機のΔF及びΔMの設定を表2に記す。また、粉砕物の分級後、分級機の微粉側に除去された粉砕物と、粗粉側に除去された粉砕物とを回収した。各実施例及び比較例で回収された、微粉側に除去された粉砕物の質量(ΔFm)と、粗粉側に除去された粉砕物の質量(ΔMm)とを測定した。測定されたΔFmと、ΔMmとを表2に記す。
【0084】
【0085】
[外添処理工程]
得られた分級後粒子をトナー母粒子として用いた。トナー母粒子に、トナー母粒子の質量に対して1.8質量%の疎水性シリカ(REA200(日本アエロジル株式会社製))と、1.0質量%の酸化チタン(EC−100(チタン工業株式会社製))とを加え、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)を用いて、回転周速30m/秒の条件で5分間、撹拌及び混合してトナーを得た。
【0086】
<粒子径の体積分布、及び個数分布の測定>
実施例1〜
2、参考例1〜3及び比較例1〜5で得られたトナーについて、粒子径の体積分布、及び粒子径の個数分布を、粉砕後粒子の体積平均粒子径の測定方法と同様の装置、及び同様の条件で測定した。
【0087】
得られた粒子径の体積分布から、標準偏差(SD)と、最大ピークの粒子径(Pv)[μm]とを求めた。また、得られた粒子径の個数分布から、トナーの粒子径の個数分布中の最大ピークの粒子径Pn[μm]を求めた。Pv[μm]の値と、Pn[μm]の値とから、|Pv−Pn|の値を算出した。 得られたSD、Pv、Pn、及び|Pv−Pn|を表3、及び表4に記す。
【0088】
実施例1で得られたトナーについて、粒子径の体積分布を
図1に、粒子径の個数分布を
図2に示す。また、比較例1で得られたトナーについて、粒子径の体積分布を
図3に、粒子径の個数分布を
図4に示す。
【0089】
図1〜4の粒子径の体積分布、及び個数分布から、実施例1で得られたトナーの粒子径分布は、比較例1で得られたトナーの粒子径分布よりもシャープであることが分かる。また、実施例1で得られたトナーの|Pv−Pn|の値は、比較例1のトナーよりも小さいことが分かる。このように、実施例1で得られたトナーは、比較例1で得られたトナーに比べて、トナー粒子の形状や粒子径のバラつきが小さい。
【0090】
また、
図1〜4の粒子径の体積分布、及び個数分布から、実施例1で得られたトナーは、比較例1で得られたトナーに比べて、小粒子径のトナーの含有割合が少ないことが分かる。
【0091】
<平均円形度の測定>
実施例1〜
2、参考例1〜3及び比較例1〜5で得られたトナーに含まれる粒子径3μm以上10μm以下の粒子について平均円形度を測定した。各実施例及び比較例のトナーに含まれる粒子径3μm以上10μm以下の粒子の平均円形度を表3、及び表4に記す。
【0092】
フロー式粒子像分析装置(FPIA−3000(シスメックス株式会社製))を用いてトナーに含まれる粒子径3μm以上10μm以下のトナー粒子の平均円形度を測定した。23℃、60%RHの環境下で、円相当径0.60μm以上400μm以下の範囲のトナー粒子について、トナー粒子像と同じ投影面積を持つ円の円周の長さ(L
0)と、トナー粒子投影像の外周の長さ(L)とを測定し、下式に従って円形度を求めた。円相当径3μm以上10μm以下の測定したトナー粒子の円形度の総和を、円相当径3μm以上10μm以下の測定したトナー粒子数で除した値を平均円形度とした。
(円形度算出式)
円形度a=L
0/L
【0093】
≪評価≫
下記方法に従って、実施例1〜
2、参考例1〜3及び比較例1〜5で得られたトナーを用いて、画像濃度、かぶり、画像品質、及び転写性の評価を行った。評価結果を表3、及び表4に記す。評価に用いる評価機として、ページプリンター(FS−C5016(京セラドキュメントソリューションズ製))を用いた。評価には、下記[調製例2]で得た、2成分現像剤を用いた。2成分現像剤をページプリンターの現像器に充填し、さらに、トナーをページプリンターのトナーコンテナに充填した。
【0094】
[調製例2]
(2成分現像剤の調製)
キャリア(FS−C5016(京セラドキュメントソリューションズ製)用キャリア)と、キャリアの質量に対して10質量%のトナーとを、ボールミル(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製)を用い、回転数120rpmで30分間混合して2成分現像剤を調製した。
【0095】
<画像濃度評価>
画像濃度評価では、まず、評価機を用いて、25℃50%RH環境下で、評価用画像(初期の評価用画像)を出力した。次いで、25℃50%RH環境下、印字率5%で5000枚連続して印字した。その後、25℃50%RH環境下、印字率5%で評価用画像(耐刷後の評価用画像)を出力した。初期の評価用画像のソリッド部の濃度(初期濃度)と、耐刷後の評価用画像のソリッド部の濃度(耐刷後濃度)とを、グレタグマクベス反射濃度計(RD914(グレタグマクベス社製))を用いて測定し、以下の基準に従って評価した。実用上許容できる評価結果は5、及び4である。
5:初期濃度、及び耐刷後濃度が1.4以上。
4:初期濃度、及び耐刷後濃度が、1.3以上1.4未満。
3:初期濃度、及び耐刷後濃度が、1.2以上1.3未満。
2:初期濃度、及び耐刷後濃度が、1.0以上1.2未満。
1:初期濃度、及び耐刷後濃度が、1.0未満。
【0096】
<かぶり評価>
かぶり評価では、まず、評価機を35℃85%RH(高温高湿)環境に12時間静置した。その後、35℃85%RH環境下で評価用画像を出力した。評価用画像の画像評価パターンが形成された被記録媒体の非画像部をルーペ(15倍)で観察し、以下の基準に従ってかぶりを評価した。実用上許容できる評価結果は5、及び4である。
5:かぶりの発生が無い。
4:かぶりが軽微に発生しているが、画像品質は良好である。
3:かぶりが多く発生し、画像品質に影響がある。
2:かぶりが顕著に発生し、画像品質に問題がある。
1:かぶりが広範囲に顕著に発生し、画像が実用に耐えない。
【0097】
<画像品質評価>
画像品質評価は、評価機を用い、23℃60%RHの環境下、印字率5%で5000枚連続して印字した。次に、画像評価パターンを出力した。画像評価パターンのベタ画像、50%ハーフ画像、及び現像器の現像ローラーのスリーブの状態を目視で観察し、以下の基準に従って画像品質を評価した。実用上許容できる評価結果は5、及び4である。
5:現像スリーブ上に付着物が見られず、ベタ画像、50%ハーフ画像共に良好である。
4:現像スリーブ上に少量の付着物が見られるが、ベタ画像、50%ハーフ画像共に良好である。
3:現像スリーブ上に多量の付着物が見られ、ベタ画像、50%ハーフ画像に周期性を有する画像欠損(スリーブ層ムラ)がわずかに発生している。
2:現像スリーブ上に多量の付着物が見られ、ベタ画像、50%ハーフ画像に周期性を有する画像欠損(スリーブ層ムラ)が多数発生している。また、5000枚の耐久印刷の途中から現像スリーブ上の付着物の影響に起因する画像不良が発生し始める。
1:現像スリーブ上に多量の付着物が見られ、ベタ画像、50%ハーフ画像に周期性を有する画像欠損(スリーブ層ムラ)が多数発生している。また、初期画像形成時から現像スリーブ上の付着物の影響に起因する画像不良が確認される。
【0098】
<転写性評価(中抜け評価)>
転写性評価は、評価機を用い、25℃50%RH環境下で、評価用画像として細線画像を形成した。細線画像上の中抜けの有無を、ルーペ(15倍)を用いて観察して、下記の基準に従って転写性を評価した。実用上許容できる評価結果は5、及び4である。
5:中抜け発生が無い。
4:極わずかに中抜けが発生している。
3:少量の中抜けが発生している。
2:局所的に多くの中抜けが発生している。
1:広範囲にわたり顕著に中抜けが発生している。
【0099】
【0100】
【表4】
【0101】
実施例1
〜2によれば、結着樹脂を含む原料を溶融混錬して得た混練物を粉砕して粉砕物を得た後、除去された微粉側の粉砕物の質量が、除去された粗粉側の粉砕物の質量よりも大きくなり、且つ、粉砕物の体積平均粒子径(Da)と、分級された粉砕物の体積平均粒子径(Db)との差(Db−Da)が、0.8μm以上となるように、粉砕物を分級し、得られるトナーに含まれる粒子径3μm以上10μm以下のトナー粒子の平均円形度を0.960以上0.970以下となるようにして製造されたトナーを用いて画像を形成する場合、中抜けやかぶりのような画像不良の発生と、現像スリーブへの超微粉の付着に起因する画像品質の低下とを抑制できることが分かる。