特許第5991954号(P5991954)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5991954
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】建設機械の燃料タンク装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/03 20060101AFI20160901BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20160901BHJP
   F02M 31/16 20060101ALI20160901BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
   B60K15/03 D
   E02F9/00 D
   F02M31/16 G
   F02M37/00 P
   F02M37/00 301Z
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-172724(P2013-172724)
(22)【出願日】2013年8月22日
(65)【公開番号】特開2015-39988(P2015-39988A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2015年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082670
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 民雄
(74)【代理人】
【識別番号】100180068
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 怜史
(72)【発明者】
【氏名】原本 英毅
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−144962(JP,A)
【文献】 実開平05−027266(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/00 − 15/10
F02M 37/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料が貯められる燃料タンクと、前記燃料タンクの底部に設けられ、前記燃料タンクの内部の異物や水を外部に排出する排出管とを備えた建設機械の燃料タンク装置において、
前記建設機械に搭載されたエンジンから前記燃料タンクに戻される戻り燃料を、前記排出管に接触させるジョイントを備え、
前記ジョイントは、内部に前記排出管が貫通される中空の胴部を有し、前記胴部の少なくとも2か所に、前記胴部の内側の空間に前記戻り燃料が流れる経路が接続されていることを特徴とする建設機械の燃料タンク装置。
【請求項2】
前記戻り燃料が流れる経路は、前記ジョイントを通過する第1経路と、前記ジョイントを通らずに前記燃料タンクに戻す第2経路とを備えるとともに、前記戻り燃料の流れを、前記第1経路または前記第2経路に切り替える経路切替器を、前記第1経路と前記第2経路とが分岐する部分に1つだけ備えたことを特徴とする請求項1に記載の建設機械の燃料タンク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建設機械の燃料タンク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベル等の建設機械には、エンジン等に供給される燃料(例えば、ガソリン、軽油等)が貯められる燃料タンクを備えている。
燃料タンクの内部には、燃料だけでなく、燃料供給時に混入した異物や、結露等によって発生した水が含まれている場合がある。
このような異物や水が燃料とともにエンジンに供給されると、エンジン等に悪影響を与えるおそれがある。
【0003】
異物や水は、燃料よりも比重が重いため、燃料タンクの内部では底部に溜まる。
そこで、燃料タンクの底部に、燃料タンクの下方の外部に開放された排出路に連なる排出ポート(ドレンポート)を形成し、排出路の途中に設けられた開閉弁を開放することで、燃料タンクの底部に溜まった異物や水を燃料タンクの外部に随時排出することが可能となっている。
【0004】
一方、燃料タンクの、エンジンに通じる供給路に連なる供給ポートは、排出ポートよりも高い位置に開口して形成されていて、燃料タンクの底部に溜まった異物や水が供給ポートから供給路に流入するのを防止している。
しかし、供給ポートの開口よりも低い液面になった燃料は供給路に供給されないため、供給ポートの開口位置は、排出ポートよりもわずかに高い位置(高さ数[cm]程度)となるように設定されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平4−22320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、気温が例えば摂氏マイナス10[度]を下回るような寒冷地では、燃料タンクの底部に溜まった水を適宜排出していないと、その水が凍結して排出ポートを塞いでしまうことがある。
排出ポートが塞がれると、燃料タンク内の水等が外部に排出できなくなるため燃料タンク内に溜まった水の水面位置(水位)が上がり、供給ポートまで達してしまう事態が起こり得る。
そして、供給ポートまで達した水が凍結すると、凍結した水(氷)により供給ポートが塞がれてエンジンに燃料が供給されず、エンジンが停止し、またはエンジンを始動できない、という事態に陥る。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、燃料タンクの底部に溜まった水を排出ポートから随時排出していない場合であっても、燃料タンクの供給ポートが凍結した水(氷)で塞がれるのを防止乃至抑制することができる、建設機械の燃料タンク装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る建設機械の燃料タンク装置は、燃料(ガソリンや軽油等)が貯められる燃料タンクと、燃料タンクの底部に設けられ、燃料タンクの内部の異物や水を外部排出する排出管とを備えた建設機械の燃料タンク装置において、前記建設機械に搭載されたエンジンから前記燃料タンクに戻される戻り燃料を、前記排出間に接触させるためのジョイントを備え、前記ジョイントは、内部に前記排出管が貫通される中空の胴部を有し、前記胴部の少なくとも2か所に、前記胴部の内側の空間に前記戻り燃料が流れる経路が接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る建設機械の燃料タンク装置によれば、燃料タンクの底部に溜まった水を排出ポートから随時排出していない場合であっても、燃料タンクの供給ポートが凍結した水(氷)で塞がれるのを防止乃至抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る建設機械の燃料タンク装置の一実施形態を示す模式図である。
図2図1に示した燃料タンク装置の詳細を示す図である。
図3図2に示した燃料タンク装置の縦断面を示す図である。
図4図3におけるA−A線に沿った断面を示す図である。
図5】変形例1を示す模式図である。
図6参考例1を示す模式図である。
図7参考例2を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る建設機械の燃料タンク装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1に示した建設機械の燃料タンク装置100は、建設機械のエンジン80(既存の熱源の一例)で温められ、燃料タンク10に戻る燃料F(媒体の一例)を、燃料タンク10の底部に設けられたドレン配管32(排出管)に接触させた構成である。
【0013】
燃料タンク10は、所定量の燃料F(ガソリンや軽油等)を内部に貯蔵するものであり、エンジン80に燃料Fを供給する供給配管22,23と、エンジン80で使用されずに燃料タンク10に燃料Fを戻す戻り燃料配管42,43とが接続されている。
燃料タンク10の内部には燃料Fの他に水Wや異物が溜まることがあり、この水W等を外部に排出するためのドレン配管32,33,34(排出管)が燃料タンク10に接続されている。
ここで、ドレン配管32,33,34のうち、燃料タンク10に直接接続されているドレン配管32は、燃料タンク10の底壁を貫通して、その上端は燃料タンク10の内部で開口した排出ポート31を形成している。
【0014】
排出ポート31は、燃料タンク10の底部に溜まる水Wや異物を効果的に排出できるように、燃料タンク10の内部の底面と同じか、または底面よりもわずかに高い位置で開口している。
【0015】
ドレン配管33はドレン配管32の下部に接続され、ドレン配管33の下部に開閉弁35が接続され、開閉弁35の下部にドレン配管34が接続されている。
ドレン配管33は、柔軟性のあるゴムや樹脂等の材料で形成された管33aと、金属製のパイプ33bとを有している。
【0016】
開閉弁35は、排出ポート31を通じてドレン配管32,33に流れ込んだ水Wや異物をドレン配管34に流す排水状態と流さない止水状態とを選択的に切り替えるものであり、図2に示すように、開放した排水状態と閉鎖した止水状態とが切り替えられる弁35aと、弁35aの開閉状態を切り替える操作が入力される操作レバー35bと、ドレン配管33の管33aが接続されるパイプ35cと、ドレン配管34が接続されるパイプ35dとを備えている。
操作レバー35bは図2の実線で示す水平方向に延びた位置と二点鎖線で示す鉛直方向に延びた位置との間で回動可能に設けられていて、実線で示した位置で弁35aを止水状態とし、二点鎖線で示した位置で弁35aを排水位置とする。
【0017】
ドレン配管34の、図示を略した最下端部は外部に開放されていて、排水状態の開閉弁35およびドレン配管34を流れた水Wや異物は、外部に排出される。
実際の排出作業は、ドレン配管34の下方にバケツ等の容器を設置して、水W等が周囲に飛散しないように行われる。
【0018】
供給配管22,23のうち燃料タンク10に直接接続されている供給配管22も燃料タンク10の底壁を貫通し、その上端は燃料タンク10の内部で開口した供給ポート21を形成している。
供給ポート21は、排出ポート31よりも高い位置で開口していて、燃料タンク10の底部に溜まる水Wや異物が供給ポート21に入りにくくしている。
【0019】
供給配管22と供給配管23との間には、供給配管22を流れた燃料Fに混じった異物等を濾し取る燃料フィルタ70が設けられており、この燃料フィルタ70で異物等が除去された後の燃料Fが、供給配管23を通じてエンジン(燃料噴射ポンプ等を含む)80に供給される。
エンジン80に供給された燃料Fは、エンジン80の駆動のために消費されるが、供給された燃料Fのうち一部は、エンジン80と燃料タンク10とを繋ぐ戻り燃料配管43,42を通じて燃料タンク10に戻る。
【0020】
戻り燃料配管43,42のうち燃料タンク10に直接接続されている戻り燃料配管42は、燃料タンク10の側壁を貫通して、燃料タンク10の内部に突き出た先端41は、供給ポート21や排出ポート31に比べて高い位置で開口している。
戻り燃料配管42,43の内部を流れる燃料Fは、エンジン80を通過したことで、その温度は比較的高く、大気温よりも50[度]程度高い温度になっている。
【0021】
戻り燃料配管42と戻り燃料配管43とは、加温手段の一例であるジョイント52を介して接続されている。
このジョイント52は、鉛直方向に延びた中心軸を有する短円筒状の胴部52aと、その胴部52aの2か所に別々に接続され、それぞれ水平方向に延びた中心軸を有する筒状の2つの接続部52b,52bとを有し、胴部52aのうち、各接続部52b,52bの筒の内部空間に面する部分は、開口している。
したがって、ジョイント52は、鉛直方向に沿って貫通した空間と、水平方向に沿って貫通した空間とを有し、鉛直方向に貫通した空間と水平方向に貫通した空間とは通じている。
【0022】
戻り燃料配管43は、柔軟性のあるゴムや樹脂等に材料で形成された管43aと、金属製のパイプ43bとを有し、このパイプ43bがジョイント52の一方の接続部52bに圧入されて、ジョイント52と戻り燃料配管43とが接続されている。
同様に、戻り燃料配管42は、柔軟性のあるゴムや樹脂等に材料で形成された管42aと、金属製のパイプ42bとを有し、このパイプ42bがジョイント52の他方の接続部52bに圧入されて、ジョイント52と戻り燃料配管42とが接続されている。
【0023】
胴部52aの鉛直方向に貫通した空間には、この空間を鉛直方向に貫く貫通管51が通されている。
貫通管51は、座付きボルトの中心軸に沿った中心部分が軸方向に貫通してくり抜かれた形状に形成されていて、この貫通管51が前述したドレン配管32を構成している。
貫通管51は、図2,3に示すように、ジョイント52の胴部52aの空間に下方から挿入されて、貫通管51のボルト頭部の座面51bが胴部52aの下端面52cに密着し、胴部52aの空間の下側の開口(下端部)が閉じられる。
【0024】
そして、胴部52aの上端面52dから上方に突出した貫通管51のボルトの雄ねじ51aが、燃料タンク10の底壁に形成された雌ねじ10bに締結されることで、ジョイント52の胴部52aの上端面52dは、燃料タンク10の下面10aに密着し、胴部52aの空間の上側の開口(上端部)が閉じられる。
これによって、ジョイント52の内部は、水平方向に延びた空間となり、この空間に、貫通管51であるドレン配管32の外周面32bが露出した状態となっている。
なお、図4に示すように、胴部52aの内周面52eと貫通管51の外周面51cの間には、燃料Fが通過しうる空間が形成されている。
【0025】
本実施形態の燃料タンク装置100においては、貫通管51の座面と胴部52aの下端面との間や、燃料タンク10の下面10aと胴部52aの上端面との間に、パッキンを配置して、各両面間の水密性を高めた構成を採ることもできる。
【0026】
以上のように構成された実施形態の燃料タンク装置100によれば、エンジン80によって温められた燃料F(戻り燃料)が、戻り燃料配管43、ジョイント52および戻り燃料配管42を通じて燃料タンク10に戻される。
ジョイント52の内部の空間にはドレン配管32が貫通していて、このジョイント52の内部を通過する戻り燃料Fが、ドレン配管32の外周面32bに直接接するため、ドレン配管32は戻り燃料Fによって温められる。
【0027】
したがって、この燃料タンク装置100の周囲が水Wを凍結させるような低温環境であっても、燃料タンク10の底部からドレン配管32に流れ込んだ水Wは、ジョイント52の内部で、ドレン配管32の外周面32bから伝わる戻り燃料Fの熱によって温められ、凍結されることがない。
この結果、燃料タンク10の底部に溜まった水Wも、ドレン配管32の内部の、温められた水Wによって凍結が防止乃至抑制される。
これにより、本実施形態の建設機械の燃料タンク装置100によれば、燃料タンク10の底部に溜まった水Wが凍結して供給ポート21を塞ぐのを防止乃至抑制することができる。
【0028】
また、ジョイント52の内部において、ジョイント52の内部とドレン配管32の内部とは完全に遮断されているため、ジョイント52の内部を流れる戻り燃料Fにドレン配管32を流れる水W等が混じることはなく、ドレン配管32を流れる水W等にジョイント52の内部を流れる戻り燃料Fが混じることもない。
【0029】
なお、本実施形態の建設機械の燃料タンク装置100は、内部を流れる戻り燃料Fによってジョイント52自体も温められる。
そして、ジョイント52は、その上端面52dが燃料タンク10の下面10aに接しているため、燃料タンク10の下面10aも、ジョイント52を通じて間接的に温められる。
したがって、燃料タンク10の底部に溜まった水Wは、燃料タンク10の下面10aを有する底壁を通じても温められ、凍結が一層抑制される。
【0030】
本実施形態に係る建設機械の燃料タンク装置100は、エンジン80という既存の熱源で温められた媒体である戻り燃料Fによって、燃料タンク10内の水Wを温めているため、新たに熱源を設置するものではなく、したがって、新たに熱源を設置するものに比べてコストの上昇を抑えることができるとともに、省エネルギに資するものである。
【0031】
(変形例1)
本実施形態の建設機械の燃料タンク装置100においては、図5に示すように、エンジン80からジョイント52に通じ戻り燃料配管43の途中に、経路切替弁44(経路切替器の一例)を設けて、戻り燃料配管43を、経路切替弁44よりも、戻り燃料Fの流れの上流側を戻り燃料配管43A、下流側を戻り燃料配管43Bの2つに分割する。
また、経路切替弁44に、他の戻り燃料配管45を接続し、この戻り燃料配管45を、戻り燃料配管42と同様に燃料タンク10に接続する。
【0032】
経路切替弁44は、戻りは燃料配管43Aを流れた戻り燃料Fの経路を、ジョイント52を通る戻り燃料配管43Bを通る経路(第1経路)またはジョイント52を通らない戻り燃料配管45を通る経路(第2経路)に切り替える。
例えば、燃料タンク10に溜まった水Wの凍結を防止乃至抑制しようとするときは、戻り燃料Fが第1経路を流れるように経路切替弁44を切り替えることで、燃料タンク10に溜まった水Wの凍結を防止乃至抑制することができる。
【0033】
一方、燃料タンク10に溜まった水Wが凍結のおそれがないとき(水Wがドレン配管32,33,34を通じて外部に排出されているときや、燃料タンク10の周囲の温度が高いとき等)や、最初は第1経路に切り替えられていたが、凍結していた水Wが解けた後は、戻り燃料Fが第2経路を流れるように経路切替弁44を切り替えることで、燃料タンク10の内部の燃料Fが温められ過ぎるのを防止する。
一般に、燃料Fの温度が高いと、燃料Fの密度は小さくなる。
密度の大きい燃料Fと密度の小さい燃料Fとでは、これらの燃料Fで駆動されるエンジンの出力に差が生じ、密度の小さい燃料Fで駆動されたエンジンの出力は密度の大きい燃料Fで駆動されたエンジンの出力よりも低い。
したがって、燃料タンク10の内部の燃料Fの凍結を防ぐ必要のない状況では、燃料タンク10の内部の燃料Fを、例え局所的であっても温めないことが好ましく、このように好ましい構成を採用した変形例1では、エンジンの出力が低下するのを防止することができる。
【0034】
なお、経路切替弁44による第1経路への切替え、または第2経路への切替えは、手動によるものであってもよいし、例えば、燃料タンク10の周囲の温度等に応じて自動的に行うものであってもよい。
自動的に行うものとするときは、燃料タンクの周囲の温度や燃料タンクの底部の温度などを検出する温度検出器を設けて、この温度検出器で検出された温度が、水Wが凍結するおそれのある温度以下のときは、経路切替弁44による第1経路への切替えを行い、温度検出器で検出された温度が、水Wが凍結するおそれのない温度以上のときは、経路切替弁44による第2経路への切替えを行えばよい。
【0035】
(参考例1)
上述した実施形態の燃料タンク装置100は、戻り燃料Fの経路上にジョイント52を設け、このジョイント52の内部で、温められた戻り燃料Fがドレン配管32に直接接するように構成したものであるが、本発明に係る建設機械の燃料タンク装置は、この形態のものに限定されるものではなく、温められた戻り燃料等の媒体によって、燃料タンクの底面を直接温めるものであってもよい。
すなわち、燃料タンク10の底を、例えば図6に示すように、外側(下側)の底壁13と内側(上側)の底壁12とからなる二重底とし、この2つの底壁12,13の間に形成された底空間14に、戻り燃料配管42,43を接続して、底空間14に、戻り燃料Fを通過させることで、温められた戻り燃料Fによって、燃料タンク10の底壁12を直接温め、実施形態と同様に、燃料タンク10の底部に溜まった水Wの凍結を防止乃至抑制することができる。
この場合、戻り燃料Fが通過する底空間14を形成している二重底(底壁12,13)が、本発明における加温手段の一例に該当する。
【0036】
(参考例2)
上述した実施形態や変形例の燃料タンク装置100は、エンジン80から燃料タンク10に戻る戻り燃料Fによって、燃料タンク10の底部の水Wを温めるものであるが、本発明に係る建設機械の燃料タンク装置は、これらの形態に限定されるものではなく、例えば、エンジン80を冷却して温められたエンジン冷却液L(LLC:ロングライフクーラント)や、建設機械のショベル等を作動させるモータによって温められた作動油などによって、燃料タンク10の底部の水Wを温めるものとしてもよい。
例えば、図7に示すように、エンジン80の内部を通って温められたエンジン冷却液Lは、エンジン冷却液配管82を通ってラジエータ81に送られ、ラジエータ81で多少冷やされ、エンジン冷却液配管83を通って、建設機械の車室90内に設けられた暖房装置の熱交換器91に送られ、エンジン冷却液配管84、ジョイント52およびエンジン冷却液配管85を通って、エンジン80に戻り、これらの間を循環している。
【0037】
そして、図1に示した実施形態と同様に、ジョイント52の内部をドレン配管32を貫通させて、ジョイント52の内部で、ドレン配管32の外周面32bにエンジン冷却液Lを直接接触させることで、上述した実施形態や変形例と同様に、燃料タンク10の底部に溜まった水Wの凍結を防止乃至抑制することができる。
なお、ジョイント52に入力されるエンジン冷却液Lは、暖房装置の熱交換器91を通過した後のものであるため、ジョイント52での水W(およびドレン配管32)との熱交換によって、暖房装置の暖房性能を低下させることがない。
【0038】
また、この形態のものにあっても、図5に示した経路切替弁44を設けた構成や、図6に示した燃料タンク10の二重底の間の底空間14にエンジン冷却液Lを通す構成などを適用することもできる。
【0039】
なお、ジョイント52に入力されるエンジン冷却液Lは、車室90の暖房装置に用いられたものに限定されるものではなく、車室90の暖房装置の有無に拘わらず、ラジエータ81を通過したエンジン冷却液Lをジョイント52に入力した構成を採用することもできる。
ただし、建設機械は、エンジン80と燃料タンク10とが比較的大きく離れて設置されていて、車室90と燃料タンク10とは比較的近い位置で設置されている場合が多いため、車室90まで配管されている既存の暖房装置用のエンジン冷却液配管83,84,85を利用することで、新規の配管の手間やコストを低減することができる。
【0040】
上述した実施形態や変形例の燃料タンク装置100は、温められた戻り燃料Fやエンジン冷却液Lを、ドレン配管32や燃料タンク10の底面に直接触れさせる構成により、戻り燃料Fやエンジン冷却液Lの熱をドレン配管32や燃料タンク10の底面に効率的に伝達するものであるが、本発明に係る建設機械の燃料タンク装置は、これらの形態に限定されるものではなく、戻り燃料が流れる戻り燃料配管(媒体)やエンジン冷却液が流れるエンジン冷却液配管(媒体)を、排出管や燃料タンクの底面に接触させた構成を採用することもできる。
この場合、戻り燃料配管自体やエンジン冷却液配管自体による熱損失があるため、温められた戻り燃料やエンジン冷却液を、排出管や燃料タンクの底面に直接触れさせるものに比べて、燃料タンクの底部に溜まった水に与えられる熱は低くなるが、燃料タンクの底部に溜まった水が凍結するのを防止乃至抑制することはできる。
【符号の説明】
【0041】
10 燃料タンク
22,23 供給配管
32,33,34 ドレン配管(排出管)
35 開閉弁
42,43 戻り燃料配管
52 ジョイント(加温手段)
80 エンジン
100 建設機械の燃料タンク装置
F 燃料
W 水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7