(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992009
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】コンクリート枡
(51)【国際特許分類】
E03F 1/00 20060101AFI20160901BHJP
E03F 5/10 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
E03F1/00 A
E03F5/10 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-71886(P2014-71886)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-194008(P2015-194008A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2014年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】513085916
【氏名又は名称】株式会社ニュー・メソッド
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 貴
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 薫
【審査官】
竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−124895(JP,A)
【文献】
実開昭60−004684(JP,U)
【文献】
特開平08−296271(JP,A)
【文献】
実開昭60−165576(JP,U)
【文献】
特開昭63−114735(JP,A)
【文献】
実開平03−125886(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00−5/10
E02D 29/045−37/00
E03B 1/00−11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水枡、集水枡又は溜枡等のコンクリート枡において、
底面は、対向する両側の側壁内面の中央又は中央近傍に最も低く形成された底面中央部と、この底面中央部から両側の側壁内面に向かって傾斜して設けられた両側底面部と、を有し、
前記底面に、最も低く形成された中央部に沿って湾曲状に形成された受皿底面を備え、前記受皿底面のうち4隅又は両側2箇所に取付部が設けられた土砂受皿を有することを特徴とするコンクリート枡。
【請求項2】
前記底面は、両側底面部から側壁内面に滑らかに連続して形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート枡。
【請求項3】
さらに、前記コンクリート枡の上面に、両側面の端部近傍に回転軸を有し、この回転軸を軸に開閉可能に設けられたグレーチングが設けられており、
前記グレーチングの回転軸より開閉側の一部と前記土砂受皿とを架設する架設部材が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート枡。
【請求項4】
前記底面中央部は、先端が角度を有するように折れ曲がって形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のコンクリート枡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水枡、集水枡又は溜枡等のコンクリート枡に関する。
【背景技術】
【0002】
雨水枡の底面近傍に土砂等を受ける容器を配した技術して枡本体の内側に周壁に多数の排水孔を有する有底の内かごが上方の開口より出し入れ可能に挿通されて設けられた雨水浸透枡において、上記枡本体の排水孔と内かごの排水孔の直径は下方側が小さく、上方にいくに従って徐々に大きくなり、且つ、枡本体の排水孔と内かごの排水孔とは、下方側が互いにずれた位置に配設され、上方側が重なる位置に配設されているものが提案されている(特許文献1)。
【0003】
かかる枡によれば、雨水と一緒に流入した泥やゴミは内かご及び升本体の周壁部に堰き止められて直接地中に排出されにくくなる。従って、ます本体の泥溜め部の下部にはほぼ確実に泥やゴミが集積され、上澄水が上方のます本体と内かごの合致した大きい排水孔より抵抗なく地中に排出されてゆくことになり、地中の排水経路の目詰まりが大幅に改善され、雨水の地中への長期的な浸透性能の維持が可能であるという効果がある。
【0004】
しかし、内かごを有する枡を長期間使用すると、内かごの周囲又は底部に堆積した土砂が隙間に食い込み、この食い込んだ土砂が強く押し固められることによって、内かごを取り外すことができなくなるという問題がある。また、仮に内かごを強引に引き上げた場合であっても、底部に硬く締め固まった土砂は、概ね400mm以下四方と狭い開口部で作製され、開口に対して深く形成されていることから、平面でありかつ角も有する底面から土砂を除去することが大変困難であるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−189065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、内部に土砂受皿を有するコンクリート枡において、長期間使用して土砂が硬化した場合であっても、容易に土砂受皿を取り出すことができ、かつ底部に堆積した土砂を容易に排出することができるコンクリート枡を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明にかかる雨水枡、集水枡又は溜枡等のコンクリート枡において、
底面は、対向する両側の側壁内面の中央又は中央近傍に最も低く形成された底面中央部と、この底面中央部から両側の側壁内面に向かった傾斜又は湾曲して設けられた両側底面部と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明にかかるコンクリート枡によれば、底面の中央又は中央近傍が低く形成されており、中央から側壁内面に向かって傾斜又は湾曲して設けられているので、スコップを側壁内面に沿って下方に押し下げることによって、角型スコップの先端は、傾斜又は湾曲している面に沿って力が底面に加わった状態で底面中央部に滑らせることができるので、硬く締まった土砂であっても容易に剥がし取ることができる。また、底面中央部に沿ってスコップを移動させることによって、剣先型スコップであっても土砂を取ることができる。
【0010】
また、本発明にかかるコンクリート枡において、前記底面は、両側底面部から側壁内面に滑らかに連続して形成されていることを特徴とするものであってもよい。かかる構成を採用することによって、スコップを側壁内面から滑らかに滑らせることができるので、コンクリート枡の底面を損傷することを防止することができる。
【0011】
さらに、本発明にかかるコンクリート枡において、底面に土砂受皿を有することを特徴とするものであってもよい。かかる構成を採用することによって、まず底面に土砂が堆積する前に土砂受皿で土砂を排出することができるので、底面に堆積する土砂を減少させることができる。
【0012】
さらに、本発明にかかるコンクリート枡において、両側面の端部近傍に回転軸を有し、この回転軸を軸として開閉可能に前記コンクリート枡の上面に設けられたグレーチングと、前記グレーチングの前記回転軸より開閉側の一部と前記土砂受皿とを架設する架設部材と、を備えていることを特徴とするものであってもよい。かかる構成を採用することによって、グレーチングを開けることによって同時に土砂受皿を引き上げることができる。その際に、てこの原理を利用して引き上げることができるので、締め固まった土砂によって強固に固定された土砂受皿であっても容易に引き上げることができる。
【0013】
さらに、本発明にかかるコンクリート枡において、前記土砂受皿の受皿底面は、コンクリート枡の底面の形状と同様の形状に作製されていることを特徴とするものであってもよい。かかる構成を採用することによって、土砂受皿とコンクリート枡の底面との位置決めが可能になり、土砂受皿を定位置に配置することができる。また、土砂受皿とコンクリート枡の底面都の隙間を最小限にすることができ、土砂等の堆積物の噛みを最小限にすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかるブレード誘導部材及び側溝ブロックによれば、容易に土砂受皿を取り出すことができ、かつ底部に堆積した土砂を容易に排出することができるコンクリート枡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施形態にかかるコンクリート枡100の一方側面方向から視認した断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかるコンクリート枡100の
図1に対して水平方向に90°の方向から視認した断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかるコンクリート枡100の底面12の別実施形態を示す断面図である。
【
図4】
図4Aは、実施形態にかかるコンクリート枡100の土砂受皿30を示す斜視図である。
図4Bは、実施形態にかかるコンクリート枡100の土砂受皿30の別実施形態を示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態にかかるコンクリート枡100から堆積土砂を剥がし取る状態を示す模式図である。
【
図6】
図6は、実施形態にかかるコンクリート枡100から堆積土砂を剣先スコップで剥がし取る状態を示す模式図である。
【
図7】
図7は、従来型コンクリート枡110を敷設する状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態にかかるコンクリート枡100について詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号が付されている。
【0017】
実施形態にかかるコンクリート枡100が
図1及び
図2に示されている。
図1は、コンクリート枡100の一方側面から視た断面図であり、
図2は一方側面に隣接する隣接側面から視た断面図である。本実施形態にかかるコンクリート枡100は、主として、コンクリートブロック本体10と、グレーチング20と、土砂受皿30と、を備えている。
【0018】
コンクリートブロック本体10は、雨水枡、集水枡又は溜枡等の縦長の立方体形状の枡からなり、内部に底付きかつ上面開口の縦穴11が形成されている。底面12は、一方側面側から視認した場合に、
図1に示すように、底面中央部12aが最も低く形成されてなり、底面中央部12aに対して両側底面部12bは、両側の内側壁13に向かって徐々に高くなるような斜面で形成されている。底面中央部12aは、先端が角度を有するように折れ曲がって形成されていてもよいし、
図3に示すように、丸みを帯びるように形成してもよい。また、底面中央部12aは、両側の内側壁13に対して完全に中央という意味ではなく、中央又は中央近傍であってもよい。両側底面部12bは、
図1に示すように、中央から両側の内側壁13に向かって、傾斜した平面から円弧状に湾曲した湾曲面を経由して内側壁13に対して滑らかに連続して移行するように形成されている。なお、全体が湾曲面に形成されていてもよい。内側壁13と底面12との境目は、滑らかに移行しているように形成することが好ましいが、必ずしも完全に滑らかとなるように形成しなくても構わない。また、一方側面方向に対し、水平方向へ90°の方向から視認した場合は、
図2に示すように、底面12は、水平に形成されている。しかしながら、一方側面方向に対し、水平方向へ90°の方向から視認した場合の底面12は必ずしも水平面である必要はなく、中央が若干低くなるように形成してもよいし、その他の形態を採用することができる。一方、コンクリートブロック本体10の上面側は、グレーチング20の厚さとほぼ同様の厚さ低く形成されたグレーチング載置領域15が内側に設けられており、グレーチング載置領域15の側面15aのうち、いずれかの対向する側面15a端面には、後述するグレーチング20の両側面端部を回転可能に支持する回転軸16が設けられている。その他、コンクリートブロック本体10には、雨水枡、集水枡又は溜枡として機能させるために、任意に側面水路との連結部を設けたり、
図2に示すように、水抜孔18を設けたり、その他必要な構成を採用することができる。
【0019】
グレーチング20は、既知のグレーチングと同様に、ベアリングバーとクロスバーを有する鋼鉄製のものであり、その一方端部には、グレーチング20を持ち上げるための把持部21が設けられており、反対側端部近傍の両側面22、23には、前述したコンクリートブロック本体10の回転軸16と回転可能に嵌合する嵌合部24が設けられており、この回転軸16と嵌合部24が嵌合することによって、
図2に示すように、グレーチング20を回転軸16を中心に回動するように開閉可能に設けられる。
【0020】
さらに、土砂受皿30が、コンクリートブロック本体10の底面12に配置されている。土砂受皿30は、雨等で流れてくる土砂等を受けるための皿であり、受皿底面31が、
図4Aに示すように、コンクリートブロック本体10の底面12とほぼ同様の形状に形成され、
図1に示すように、コンクリートブロック本体10の底面12に沿うように配置できるように形成されている。受皿底面31には、雨水等の水分を下方に流下させる雨水用貫通孔33が複数設けられており、雨水を下方へ流下して比較的大きな土砂を上面に堆積できる。また、土砂受皿30には、後述するグレーチング20と土砂受皿30を架設する架設部材40を取り付けることができる取付部34を備えている。取付部34は、特に限定するものではなく、
図4Aのように貫通孔であってもよいし、その他の取付手段を設けても良い。また、取付部34の位置や数も特に限定するものではなく、実施形態のように、引き上げた場合に水平状態を保持することができるように4隅に設けても構わないし、両側2箇所でも構わないし、中央に1箇所であっても構わない。
【0021】
さらに、架設部材40がグレーチング20と土砂受皿30との間に設置されている。架設部材40は、例えば、鎖、棒状体又は紐等の長尺部材からなり、柔軟な素材であっても硬質のものであってもよく、架設部材40を引き上げることによって、土砂受皿30を引き上げることができるものであれば、その形態、本数、素材等を自由に選択することができる。架設部材40の一方端部41は、前述した土砂受皿30の取付部34を介して取り付けられる。他方端部42は、
図2に示すように、回転軸より開閉側のグレーチング20のベアリングバー等に回動可能に取り付けられる。これにより、グレーチング20を開くことによって、土砂受皿30を持ち上げることができる。他方端部42を取り付ける位置については、グレーチング20の把持部21に近い方に取り付ければ、より土砂受皿30を高くまで持ち上げることができ、把持部21より遠い位置に設ければ、てこの原理により弱い力で土砂受皿30を持ち上げることができる。なお、他方端部42はグレーチング20に対して取り外し自在に設ければ、土砂受皿30を完全に取り外す際に便利である。
【0022】
以上のように作製されたコンクリート枡100は、
図1に示すように、基礎砕石によって基礎50を敷設した後、空練りモルタル60を敷き、この空練りモルタル60の上にコンクリート枡100を載置することで設置される。その後、周囲を土砂で埋設して道路等に敷設される。この際に、一般的な従来型コンクリート枡110は、底がない筒状の状態のコンクリートを使用しているので、
図7に示すように、まず、基礎砕石によって基礎150を敷設し、この基礎150の上にベースとなるベースコンクリート160を打設した後、空練りモルタル170を敷き、従来型コンクリート枡110を設置した後、インバートコンクリート180を枡内に打設して底部を形成するという工程で敷設される。これに対し、本実施形態にかかるコンクリート枡100では、ベースコンクリート160及びインバートコンクリート180が不要であるため、現場のコンクリートを削減できる上、工期を大幅に短縮することができ、即日開放することも可能である。
【0023】
こうして路面に敷設されたコンクリート枡100は、通常の雨水枡、集水枡又は溜枡等と同様に使用される。一定期間使用すると、
図1に示すように、必然的にコンクリート枡100の底面12に土砂が体積するので、一定量の土砂等が堆積したら、土砂受皿30を引き上げて堆積した土砂を除去する。この際に、土砂受皿30の周囲や受皿底面31の裏側には体積した土砂が締め固まっていることから、単純に人間の力で引き上げるには不可能であるか、困難である。しかし、本実施形態にかかるコンクリート枡100は、グレーチング20を回転軸16を軸に開くことによって、てこの原理によって弱い力で容易に土砂受皿30を引き上げることができる。また、土砂受皿30の受皿底面31が湾曲状に形成されていることに加え、両側に取り付けられている取付部34が引っ張られるため、土砂受皿30はわずかに撓むことによって、両側端部から徐々に引き剥がすように剥がされていくことになる。そのため、背景技術のように底面全体を一気に引き剥がすことになる形態と比較して弱い力で引き剥がすことができる。このように、てこの原理と引き剥がしにより、容易に押し固まった土砂から土砂受皿30を引き剥がすことができる。一旦固められた土砂等から土砂受皿30が引き上げられれば、その後は人間の力でも容易に土砂受皿30を持ち上げることができ、土砂受皿30内の土砂を廃棄することができる。この状態で、土砂の多くを回収することができる。さらに、コンクリートブロック本体10の底面12にも非常に硬く締め固められた土砂がへばりついている。こうした土砂は、容易に剥がすことができない。特に従来型のように、底面が四角形の従来型コンクリート枡110では、角の土砂が取りづらい上、水平面は狭い縦穴内では力が入りづらいため土砂が取りづらいという問題点がある。これに対し、本実施形態では、
図5に示すように、コンクリート枡100の底面12に角がなく、また水平面を有していないため、平型スコップ90を側壁内面に沿って上から下方へ押し込むように力を加えることで、底面12に大きな力を加えた状態で土砂を剥ぎ取りようにして取り除くことができる。中央が最も低く形成されているので平型スコップ90が底面中央部12aに達するまで剥がし取った後、反対側の内側壁13から同様の操作を行なうことで容易に土砂を取り除くことができる。また、一般家庭においては、平型スコップ90を持っておらず、より普及している市販品の剣先スコップ91しか所有していない場合も多い。このような場合においても本実施形態においては、
図6に示すように、剣先スコップ91を入れる方向を90°回転して差し込むことによって、先端が剣先スコップ91にも適合するようになるので、だれでも、特殊な機材なしに土砂等を取り出すことができ、コンクリート枡100内部の清掃を行なうことができる。
【0024】
なお、本発明は上述した各実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
上述した実施の形態で示すように、雨水枡、集水枡又は溜枡等として利用することができる。
【符号の説明】
【0026】
10…コンクリートブロック本体、11…縦穴、12…底面、
12a…底面中央部、12b…両側底面部、13…内側壁、
15…グレーチング載置領域、15a…側面、16…回転軸、
18…水抜孔、20…グレーチング、21…把持部、22…両側面、
24…嵌合部、30…土砂受皿、31…受皿底面、33…雨水用貫通孔、
34…取付部、40…架設部材、41…一方端部、42…他方端部、
50…基礎、60…モルタル、90…平型スコップ、91…剣先スコップ、
100…コンクリート枡、110…従来型コンクリート枡、
150…基礎、160…ベースコンクリート、170…モルタル、
180…インバートコンクリート