(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992011
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】温室シート複層化支持材
(51)【国際特許分類】
A01G 9/14 20060101AFI20160901BHJP
【FI】
A01G9/14 H
A01G9/14 P
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-81220(P2014-81220)
(22)【出願日】2014年4月10日
(65)【公開番号】特開2015-202054(P2015-202054A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2015年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000218362
【氏名又は名称】渡辺パイプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】野間 明
【審査官】
本村 眞也
(56)【参考文献】
【文献】
実用新案登録第3155526(JP,Y2)
【文献】
実用新案登録第3147733(JP,Y2)
【文献】
特開昭59−187718(JP,A)
【文献】
実開昭58−065851(JP,U)
【文献】
米国特許第04736563(US,A)
【文献】
特開平06−014656(JP,A)
【文献】
特開平05−123059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/14−9/26
E04F 10/00−10/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台部、柱状部、シート受部を備えた複層化支持材であって、
複層化支持材は横断面形状において、
基台部が、下方に湾曲空間を備えた板状の拡幅部材からなり、
柱状部が、基台部上に立ち上がり片を対向して立設され、中央部に溝が形成された左右の板状の壁材からなり、
シート受部が、柱状部を形成する左右の壁材から連続しており、中央部の溝より大きな間隔を有し、上端部がシートを支持する受け部を構成しており、
基台部の湾曲空間は、温室の既存のシート固定具のシート押さえ材を被覆する大きさに形成されているとともに、既存のシート固定具のシート押さえ材の表面に突出したビス頭を収納する大きさに形成された中央湾曲部と、該中央湾曲部に連続して形成された既存のシート押さえ材の側縁に当接する受け湾曲部を備えていることを特徴とする複層化支持材。
【請求項2】
湾曲空間を構成する基台部の内面には、複数本の浅い溝が形成されていることを特徴とする請求項1記載の複層化支持材。
【請求項3】
シート受部の間隔はビスの頭部の幅よりも大きく、柱状部の溝はビスのねじ部の径よりも小さく設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の複層化支持材。
【請求項4】
アルミニウム押し出し成形材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の複層化支持材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の複層化支持材と、該支持材の上方を被冠するシート押さえ材とを備えたシート固定具であって、
シート押さえ材は、横断面形状において、複層化支持材のシート受け部の外形よりも大きな下面を備え、両側が下方に屈曲した脚部を備えていることを特徴とするシート固定具。
【請求項6】
既設のシート張設温室の上に新たにシートを張設する温室の改造方法であって、
既存のシート押さえ材の上に、請求項1〜4のいずれかに記載の支持材をビスで固定し、該支持材の上に新しいシートを載せ、その上に請求項5記載のシート押さえ材を被せ、該シート押さえ材の上からビスで固定することを特徴とする温室の改造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培用温室に関する技術である。特に、農業用温室の屋根などに張るシートの張設技術に関する。
【背景技術】
【0002】
温室栽培は、施設農業として、注目されており、普及している。
特に、日本農業の抱える構造的課題、農業の再生、競争力強化が求められている。農商工連、六次産業化、TPP、企業の参入など変革点にある。市場から農業の産業化として、品質の安定化、出荷数量の安定化、周年供給など要素の充足が求められている。農産物を生産し供給サイドから見ると、このような3要素を充足することができれば、安定した売り先(市場)を確保でき、経営の安定化を計ることができるようになって、家業から事業へ転換でき、産業として成長することが期待できる。
温室栽培は、天候変動の影響を緩和して、栽培環境をコントロールし、計画栽培、出荷の手段として有効である。農業の課題を解決する技術的に有効な手段の1つである。
【0003】
従来、シート状の温室用フィルムを張設して構成する温室は、その骨組にフィルム受部材を設け、このフィルム受部材上に温室用フィルムを押さえ部材により押さえ込んで固定している。
温室用フィルムとして、ポリエステルフィルム、フッ素フィルムなどの硬質フィルム又は塩化ビニルフィルム、PETフィルム等のポリオレフィン系フィルムなどの軟質フィルムがある。それぞれ特質に応じて使用されている。
【0004】
フィルムシートを一重あるいは二重、三重に張設した温室が提案されている。フィルムシートの張設手段は各種提案されている。
たとえば、ビニールハウスの骨組であるC型チャンネル上にこれとクロスする方向に水平フレームが載置されており、この水平フレームは突出した2片によって形成された溝を備えたシート止め具を構成し、このシート止め具に硬質シートを載せ、その上から押さえ材を載せ、ビスを用いて止め具に固定するシート張設方法が用いられている。
特許文献1(特開平5−123059号公報)には、シート受部材のシート受面より広幅とした挟着部と、シートの挟着時、シートを押圧する押圧脚部とから構成して、押圧脚部の挟着部に対する突 出高さを、シートの挟着時、シートに0.7%以上の伸び率を与える高さとすることにより、シートの挟着時、シート5に0.7%以上の伸びを与えることができ、シートを冬期に張設した場合でも、夏期において前記シートが熱膨張により伸びる伸びを、シートの張設時シートに与えた伸びにより吸収 し、シートに皺やたるみが生じるのを防止する温室用シートの押さえ部材を用いた固定具が開示されている。この押さえ部材によって、太陽の自然光線を十分通し、かつ、耐候性のよいフッ素系樹脂フィルムから成るシートを用いながら、使用温度範囲で気温上昇があってもシートに皺やたるみが生じるのを防止できると記載されている。
特許文献2(特開平6−14656号公報)には、施設園芸用ハウスの骨組に取付けられるフイルム固定治具のフィルム固定部材の断面構造において、巾長/深長の比率が1〜10の範囲にあるフィルム固定部材が開示されている。このフィルム固定部材によって、長期間に渡って、農業用フィルム全体に皺が発生することなく均一に展張固定することが可能である旨記載されている。
これら紹介したシートの張設は、主にフッ素樹脂シートなどの硬質シートに適した方法である。季節の温度変化に伴う伸びを吸収するために、施工時に強制的に伸ばす脚片をもった押さえ材を用い、高温による伸びを吸収する固定手段を採用している。
【0005】
特許文献3(実用新案登録3151889号公報)には、下層と上層に2層のフィルムシートを張設する発明が開示されている。一層に形成する場合は上層のフィルムシート固定機構を採用し、下層フィルムシート層は、別構造のフィルムシート固定機構を採用している。すなわち、特許文献3の
図3に係る二層構成は次のようになっている。
チャンネル材の上に上部開口部を狭く形成した断面略凹形状の下部フィルム固定具をビスで固定し、この上に透明なフィルム7を張り渡し、レール溝内にフィルム7を挿入して、波形の押えスプリングで押えて下層のフィルム層を形成する。この後、上部フィルム固定具をビスで下部フィルム固定具の上に取付けてから、レールの上を覆うように透明なフィルムを張り渡し、レール溝内にフィルムを挿入して、波形の押えスプリングで押えて上層のフィルム層を形成する。この後、押えカバーを被せて上部フィルム固定具に係止する。この構造は、上、下層のフィルム層の2層構造にして、この間に断熱空間部23が形成されているので、気温の高い夏期でも断熱効果が優れており、小型の冷房機器を設置しても十分な冷房効果が得られ、また気温の低い冬期間においても、大幅に省エネルギー化を図ることができる。更に断熱空間部 が形成されていることにより、上層のフィルム層の内面での結露の発生が少なくなり、太陽光線の入射が妨げられにくくなる。また図示しないポンプから 断熱空間部内に空気を供給する場合、内圧の上昇による押えカバーの外れを防止することができる。更に屋根面が1層フィルムの既設のハウスも、上部フィルム押さえ材を取付けることにより容易に2層構造に改造することができる。
特許文献4(特開2007−330213号公報)には、フィルムシートを調節した屋根の上方に、先行するフィルムシート固定具に下部側が開口した「コ」字状支持材を取り付け、その支持材に3層にフィルムを張った方形ユニットパネルを設けて、複層化した発明が開示されている。この特許文献に記載された先行発明を
図5として示す。なお、この
図5は、特許文献4の掲載を引用したものであって、符号は当該文献表示そのままであり、本発明の符号とは関係ない
【0006】
特許文献5(実用新案登録3155526号公報)には、母屋材、桟材に対してネジ止め固定された垂木材と、この垂木材の上部にネジ止め固定される複層用押さえ材と、この複層用押さえ材の上にネジ止め固定される押さえ材とからなる二重張り固定部材を用いて、硬質フィルムを二重張りする発明が開示されている。既存の一重張りは、複層押さえ材が無く、垂木材の上にフィルムシートを載置し押さえ材をネジ止めする構造であり、既存のハウスを複層化するときは、押さえ材を取り外して複層押さえ材を介して内面側のフィルムを張設し、外面側のフィルムをセットして押さえ材と複層押さえ材とで張設することが開示されている。この特許文献に記載された先行発明を
図6として示す。なお、この
図6は、特許文献5の掲載を引用したものであって、符号は当該文献表示そのままであり、本発明の符号とは関係ない
【0007】
このような二重、三重にフィルムシートを張って形成した層の間の空間は、断熱の機能を発揮し、エネルギー効率や環境コントロール、結露対策となる。
特許文献6(特開2010−124717号公報)には、フィルムシートを3層に張って、断熱層を2層形成した温室が開示されている。屋根などの骨組みとなるフレームの上にフィルムシートを支持する固定レールを3段に設け、各段にフィルムシートを張り、一番上にフィルム押さえカバーを設けてビスで止める。この文献には、新設の温室以外に既設の温室にも適用できる旨記載されているが、フィルム押さえカバーを一旦はずし、その上に、下の層と同じ構造の固定レールを直に取り付ける構造である。
特許文献4、5、6には、既存の温室を改造できる旨も記載されているが、これらは、少なくとも、既設のシート張りの一番上のフィルムシート押さえカバーを取り外す作業が必要である。
【0008】
既存の温室のシートを二重化する技術は、シート押さえ材を外し、その上に構築するものが提案されている。フィルムシート押さえカバーをはずす作業は、不安定な足場作業が増え、既存のフィルムシートを破損する危険がある。取り外し作業は、作業工程が必要になるのみならず、損傷の危険があり、工期、費用のなどの面でも増加要因である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−123059号公報
【特許文献2】特開平6−14656号公報
【特許文献3】実用新案登録3151889号公報
【特許文献4】特開2007−330213号公報
【特許文献5】実用新案登録3155526号公報
【特許文献6】特開2010−124717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、既存の温室のフィルムシートの上に新たにフィルムシートを張設する際に使用する支持材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1.基台部、柱状部、シート受部を備えた複層化支持材であって、
複層化支持材は横断面形状において、
基台部が、下方に湾曲空間を備えた板状の拡幅部材からなり、
柱状部が、基台部上に立ち上がり片を対向して立設され、中央部に溝が形成された左右の板状の壁材からなり、
シート受部が、柱状部を形成する左右の壁材から連続しており、中央部の溝より大きな間隔を有し、上端部がシートを支持する受け部を構成しており、
基台部の湾曲空間は、温室の既存のシート固定具のシート押さえ材を被覆する大きさに形成されている
とともに、既存のシート固定具のシート押さえ材の表面に突出したビス頭を収納する大きさに形成された中央湾曲部と、該中央湾曲部に連続して形成された既存のシート押さえ材の側縁に当接する受け湾曲部を備えていることを特徴とする複層化支持材。
2.湾曲空間を構成する基台部の内面には、複数本の浅い溝が形成されていることを特徴とする
1.記載の複層化支持材。
3.シート受部の間隔はビスの頭部の幅よりも大きく、柱状部の溝はビスのねじ部の径よりも小さく設定されていることを特徴とする1.
または2.に記載の複層化支持材。
4.アルミニウム押し出し成形材であることを特徴とする1.〜
3.のいずれかに記載の複層化支持材。
5.1.〜
4.のいずれかに記載の複層化支持材と、該支持材の上方を被冠するシート押さえ材とを備えたシート固定具であって、
シート押さえ材は、横断面形状において、複層化支持材のシート受け部の外形よりも大きな下面を備え、両側が下方に屈曲した脚部を備えていることを特徴とするシート固定具。
【0012】
6.既設のシート張設温室の上に新たにシートを張設する温室の改造方法であって、
既存のシート押さえ材の上に、1.〜
4.のいずれかに記載の支持材をビスで固定し、該支持材の上に新しいシートを載せ、その上に5.記載のシート押さえ材を被せ、該シート押さえ材の上からビスで固定することを特徴とする温室の改造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の複層化支持材を用いることにより、既存の温室のフィルムシートの上に新たにフィルムシートを張設することができる。特に、既設の構造物を取り外すことなく、新設することができる。
本発明の複層化支持材の下縁が湾曲部に形成されているので、既存の各種のシート固定具に被冠でき、左右の当接部とビスにより、3点で固定され、強固で安定した固定が実現できる。中央の湾曲とその外側に受け湾曲を形成されたことにより、サイズの異なる既存のシート押さえ材に対応できる。さらに、複数の浅い溝形成された下縁は、既存のシート押さえをしっかりホールドできる。溝の形成範囲は、下縁の一部から全体まで任意に設定できる。
すなわち、本発明は、基台部の中央部は、既存のシート固定具の表面に現れているビス頭を収容でき、その両側に形成された湾曲部は、大きさの異なる既存のシート押さえ材の側辺に当接することができ、多種のシート固定具に対応できる。
特に、シートを1層備えた旧式の温室を2層化して、断熱層を形成し、省エネ、結露の解消、環境コントロールが容易な温室に改造される。例えば、硬質シートでは寿命が10年程あって、この張り替えに時期に合わせて、複層化していたが、本発明は、10年未満であっても改造できる術を提供する。この結果、栽培コストの低減、周年栽培化を促進し、日本の農業の産業化、競争力強化に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】
図3は、本発明の複層化支持材の使用例を示す。
【
図4】
図4は、シートを敷設する施工の一般例を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、従来例である特許文献4に開示された複層構成の例を示す。
【
図6】
図6は、従来例である特許文献5に開示された複層構成の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、既存の温室のシートの上に新しいシート敷設する際に用いる新設シートの受けフレームとなる複層化支持材である。基台部、柱状部、シート受部の3つの部分から構成される。この複層化支持材は横断面形状を共通する垂木状の長尺材である。
基台部は、既設のシート固定具の上に被冠して、既設の固定具の上面にビス頭が突出していても収容する空間と固定具の上面に載置されるシート押さえ部材の幅よりも大きな間隔を持った湾曲拡幅部を形成している。全体的にアーチ状の湾曲面であり、既設の固定具の形状や大きさに違いや変形があっても、柔軟に対応でき、両側で当接することができる。また、上方からビスを打ち込み、既設の固定具に固着される。この両側の当接とビスによる3点支持により、本発明の複層化支持材は強固に安定した支持力を発揮する。
柱状部は、基台部の上に設けられており、形成する断熱層の厚さを確保する高さを備えた連続壁である。2枚の板状体が間隔を空けて配置されている。間隔は、ビスのネジ部の径よりも小さく、外幅は打ち込まれたビスのネジ部の径よりも大きくなるように設定される。
シート受部は、柱状部から連続した2枚の板状材で構成され、柱状部の上端から屈曲して広がった間隔を持った上方が開口しており、上面がシート受け部を構成する。開口部の間隔は打ち込むビスの頭を収容する幅に設定されている。この開口にビスを打ち込み頭部を屈曲部に当接させる。ビスのネジ部は柱状部の溝間を通過して既設のシート固定具を貫通させることにより、複層化支持材を既存の固定具に固着する。シート受部は、シートを傷つけないように滑らかに形成されており、アール面、面取り平坦面など適宜の形状である。
さらに、両側に下方に屈曲した脚部を備えたシート押さえ材(シートカバー)と組み合わせて、新設するシート固定具を構成する。複層化支持材に新しいシートを載せて、シート押さえ材を被冠し、その上からビスを打ち込んでシート押さえ材を複層化支持材と一体化する。シート押さえ材の中央下部は飛び出した円弧状部を備えることができる。この飛出し円弧状部によって複層化支持材のシート受面に当接したシートは、下方に傾斜し、シートの通過ラインは「M」字状となる。シートは複層化支持材の上端で屈曲し、下方に向かうこととなって、シートに摩擦係止力が大きく働き、シートを保持し固定する機能を発揮する。伸縮の調整機能は、シート押さえ材の脚部による引き伸ばしによって発揮される。
既存の固定具において、幅や上方の形状が大きく異なる種類を類型化して、類型化別に本発明の支持材の態様を揃えることにより、少ない種類で既存のシート固定具に対応できる。
【0016】
複層化支持材の材質は、アルミニウムやステンレスなどの鉄系が用いられる。アルミニウムは押し出し成形による型材を用いることができる。鉄系は、折り曲げ加工による成形を用いることができる。アルミニウムは精度が良好である。鉄系の素材は、現場加工性が高く、既存のシート固定具に変形などがあっても、現場でその部分の開きを大きくするなど加工して対処することができる。
シート材料は、温室に通常使用するフィルムシートを使用することができる。本発明の複層化支持材および固定具は硬質系シートに適した構造に形成されている。一般的に使用されている温室用フィルムシートとして、具体的には、ポリエステルフィルム、フッ素フィルムなどの硬質フィルム又は塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム等のポリオレフィン系フィルムなどの軟質フィルムなどがある。
【実施例】
【0017】
本発明の一実施例を示す
図1乃至
図3を参照して、本発明の複層化支持材および固定具、使用方法について詳細に説明する。
図1は、複層化支持材1の例である。複層化支持材1は、基台部12とその上に設けられている柱状部11と柱状部11に連続して外方向に屈曲して上方に延出したシート受部14から構成される。複層化支持材1は、共通の断面形状を有する長尺材である。温室のサイズ、使用箇所に応じて切断あるいは直接に並べて使用される。以下の説明は、主に横断面に基づいて説明する。
【0018】
基台部12は、下方に開放空間を形成する湾曲状の板状部材である。湾曲部は2段に形成され、下部張り出し部17と下部張り出し部17から下方に屈曲して伸びる下片18によって中央湾曲空間51が形成され、下片18から側方に張り出した基礎部13によって受け湾曲空間52が形成される。中央湾曲空間51は、既設のシート固定具の上面に突出しているビスの頭を収容する間隔を備えている。中央湾曲空間51に連続して左右に設けられている受け湾曲空間52a、52bによって形成される空間は、既設の固定具の上側縁に当接する間隔を備えている。基礎部13の受け湾曲空間に面する拡幅下縁部15には、鋸歯状の凹凸を設けると、係止力が大きくなる。凹凸は長手方向に平行に設けると位置決めに有効である。鋸歯状の凹凸は、湾曲している下縁部の一部あるいは全体に設けることができる。既存のシート押さえの側縁部に接触する部分に存在すると係止力が強い。例えば、特許文献1に開示された発明で使用されている上端に突起を備えたシート押さえ材のような既存の押さえ材に対しても、しっかりと係止することができる。
【0019】
柱状部11は、基台部12の上面に2つの板状材が間をあけて立設されている。2つの板状材の間隔はビスのネジ部の径よりもやや狭い幅の溝53を形成している。柱状部の外幅はビスの溝53に挿入されたネジ部の径よりも大きく設定される。柱状部は断熱層の間隔を確保してシートを支える機能とビスを固定する機能を果たしている。なお、この溝に侵入するビスは、複層化支持材を既存のシート固定具に固定するために打ち込まれるビスと、本発明の複層化支持材を利用して新たに敷設するシートのシート押さえ材を固定するために打ち込まれるビスの2種類がある。
【0020】
シート受け部14は、柱状部11から連続して上方に延出している。柱状部11の上端から外側へ屈曲した上部張り出し部16、さらに上部張り出し部16から屈曲して上方に伸びる上片19から構成されている。上片19の上面はシート受面20を形成する。上部張り出し部16は、ビスの頭を受け止める段部を構成する。柱状部から連続する板状材によって形成される間には上部拡幅空間54が形成されている。この上部拡幅空間54の間隔は、ビスの頭の径よりも大きく形成される。 シート受面20は、シートにダメージを与えないような滑らかな面に仕上げられる。シート受面は、曲面、あるいは、面取りされた平坦面に形成されても良い。
【0021】
複層化支持材1は、全体が一体化形成されることが望ましい。左右対称の横断面に形成されている。左右の部材をそれぞれ「○○a」、「○○b」と枝符号を付与して表現する。
複層化支持材1は、アルミニウム材を押し出し成形して作成する。あるいは、ステンレスなどの鉄系の板材を折り曲げ加工して作成することができる。アルミニウム製は高精度や変形耐性に優れている。鉄系は柔軟性が高く、現場加工性に優れている。既存のシート固定具に変形などがあった場合、基台部を変形させて対処することも可能である。
【0022】
本実施例の複層化支持材1を使用した例を
図3に示す。
図2に示す既存のシート固定の上に新たにシートを張った状態が
図3に示されている。
図2に示す既存の温室は、垂木状の固定部材2の上方にシートA71を載置し、その上にシートカバーA3を被冠してビスA61にて固定した固定構成である。固定部材2は、取り付けられる屋根部材に固定する水平に伸びる取付片部21と該取付片部21から垂直に上方に屈曲した立ち上がり片部22、立ち上がり片部22の上面をシート受部23に形成し、立ち上がり片部22の他方の下端から斜めに係止片部24を開くように設ける。係止片部24の下端は取付片部21の下面と同水準に設定される。立ち上がり片部22には、上方が開口した溝が形成されており、該溝にビスAのネジ部が挟圧係止される。
シートカバーA3は、便宜上本発明で使用されるシートカバーB4と同じ構造を示している。水平部の両側に下方に垂下する脚部を備えており、脚部の下端でシートA71に対して強制引き伸ばし作用を与えている。水平部の下面中央に凸状部を設けて、シートの方向を下方に変更している。このシートカバーA3の上方からビスAを打ち込み、固定する。ビスA頭61aがシートカバーA3の上面に飛び出た状態となる。
【0023】
この既設のシート張設状態の上に、新たにシートB72を張った状態が
図3に示されている。
このシートカバーA3の上に、本実施例の複層化支持材1を載せ、ビスB62を上部拡幅空間54から溝53を通過させてシートカバーA3及び固定部材2に達するようにネジ部を打ち込み、複層化支持材1を既存のシート固定具に固着する。ビスB頭62aは、上部張り出し部16に圧接される。
この複層化支持材の上にシートB72を載せ、シートカバーB4を被冠し、その上からビスC63を複層化支持材1の溝53に向けて打ち込み固定する。ビスC頭63aは、シートカバーB4の上面に飛び出ている。
シートカバーB4は、平板部41の両側に下方に屈曲する脚部42を有している。
図2、
図3には、平板部11の中央に飛び出した円弧状部43が形成された例が示されているが、必ずしも必要はない。円弧状部43は、やや下方の通過ラインを形成して、シート受部の摩擦係止力を向上させることができる。
平板部41の下面はシート受部の上片19a、19bの上面に形成されたシート受面20を収容する幅を備えている。脚部42の下端は外方向に湾曲してシートB72を案内する面を形成している。脚部が下方に垂下する長さは、シートBに与える強制引き伸ばし量にとなる。引き伸ばし量に必要な長さを脚長によって適宜設定できる。
シートカバーB4の上面中央には、ビスC頭63cを支える台座部を形成することができる。
シートB72は、脚部の下面から上方に屈曲して複層化支持材1のシート受け面20に向けて案内され平板部を経る通過ラインが形成される。
シートA71とシートB72の間に断熱層8が形成される。
【0024】
既存の1層のシート層温室を、断熱層を備えた2層のシート層の温室に改造することができる。さらに、3層のシート層温室に改造することも可能である。
本実施例の複層化支持材は、基台部の下面が外側に開いた湾曲状を形成しているので、幅の異なる既存のシートカバー(シート押さえ材)に対しても、被着することができる。特に、鋸歯状の平行溝を形成してあるので、ずれずにしっかりとした位置固定ができる。複層化支持材に上部拡幅空間を設け、ビスBの頭を収容できるようにしたので、ビスBの頭が飛び出さずに複層化支持材を固定でき、シートBの敷設の障害とならない。
【符号の説明】
【0025】
1 複層化支持材
11 柱状部
12 基台部
13 基礎部
14 シート受部
15 拡幅下縁部
16 上部張り出し部
17 下部張り出し部
18 下片
19 上片
20 シート受面
2 固定部材(垂木)
21 取り付け片部
22 立ち上がり片部
23 シート受け部
24 係止片部
3 シートカバーA
31 平板部
32 脚部
33 円形凸部
4 シートカバーB
41 平板部
42 脚部
43 飛出し円弧状部
51 中央湾曲空間
52 受け湾曲空間
53 溝
54 上部拡幅空間
61 ビスA
61a ビスA頭
62 ビスB
62a ビスB頭
63 ビスC
63a ビスC頭
71 シートA
72 シートB
8 断熱層