(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992023
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】インサイドペイントの塗布方法と塗布装置
(51)【国際特許分類】
B05D 1/02 20060101AFI20160901BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20160901BHJP
B05D 7/22 20060101ALI20160901BHJP
B05B 13/06 20060101ALI20160901BHJP
B05B 12/08 20060101ALI20160901BHJP
B29C 33/58 20060101ALN20160901BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20160901BHJP
【FI】
B05D1/02 A
B05D3/00 D
B05D7/22 Z
B05B13/06
B05B12/08
!B29C33/58
B29L30:00
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-194085(P2014-194085)
(22)【出願日】2014年9月24日
(65)【公開番号】特開2016-64348(P2016-64348A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2015年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(72)【発明者】
【氏名】廣末 瑛介
【審査官】
富永 久子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−083633(JP,A)
【文献】
特開平11−277642(JP,A)
【文献】
特開昭57−008144(JP,A)
【文献】
実開昭53−125768(JP,U)
【文献】
特開2011−011189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D
B05B12/00−13/06
B29C33/00−33/76
B29C44/00;67/20−67/24;B29D30/00−30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出口からインサイドペイントを噴射するスプレーガンを、ローカバーの内腔に挿入して前記ローカバーの周方向に沿って回転させることにより、前記ローカバーの内面に位置するインナーライナーに前記インサイドペイントを塗布するインサイドペイントの塗布方法であって、
前記ローカバーの内腔にセンサーを挿入して、前記インナーライナーのジョイント部の段差の向きを検出し、
検出された前記ジョイント部の段差の向きに基づいて、前記ジョイント部の段差の側壁に前記インサイドペイントが直接噴射されないように前記スプレーガンの回転方向および前記吐出口の向きを設定し、
その後、前記吐出口から前記インサイドペイントを噴射させて、前記インナーライナーに前記インサイドペイントを塗布する
ことを特徴とするインサイドペイントの塗布方法。
【請求項2】
前記ローカバーの幅に基づいて、前記ローカバーの幅方向に対する前記スプレーガンの停止位置を調整する請求項1に記載のインサイドペイントの塗布方法。
【請求項3】
前記ローカバーの径に基づいて、前記吐出口から噴射される前記インサイドペイントの噴射圧力を調整する請求項1または請求項2に記載のインサイドペイントの塗布方法。
【請求項4】
前記インサイドペイントの噴射圧力を、0.1〜0.4MPaに調整することを特徴とする請求項3に記載のインサイドペイントの塗布方法。
【請求項5】
前記ローカバーが、リム径10〜22インチ、呼称幅145〜245mmのタイヤを作製するためのローカバーであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のインサイドペイントの塗布方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のインサイドペイントの塗布方法に用いられるインサイドペイントの塗布装置であって、
吐出口からインサイドペイントを噴射するスプレーガンと、
前記スプレーガンを前記ローカバーの周方向に沿って回転させる回転機構と、
前記インナーライナーのジョイント部の段差の向きを検出するセンサーと、
前記センサーの検出結果に基づいて前記スプレーガンの回転方向および前記吐出口の向きを設定する設定手段と
を備えていることを特徴とするインサイドペイントの塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫成形前のローカバーの内面に離型剤等のインサイドペイントを塗布するインサイドペイントの塗布方法とその際に使用されるインサイドペイントの塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの加硫成形工程においては、加硫用ブラダーとローカバーの内面とが密着することを防止するため、従来より、加硫成形前のローカバー内面に離型剤等のインサイドペイント(以下、単に「ペイント」ともいう)を塗布することが行われている(例えば、特許文献1〜4)。
【0003】
例えば、横倒しにセットされたローカバーの内腔に、水平方向に向いた吐出口を有する一対のスプレーガンを挿入し、スプレーガンの吐出口からペイントを噴射させながらローカバーの周方向に沿って回転させることにより、ローカバー内面のインナーライナーにペイントを塗布する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−57218号公報
【特許文献2】特開平11−277642号公報
【特許文献3】特開2009−24119号公報
【特許文献4】特開2011−11189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インナーライナーはローカバーの成形時、円筒状に巻回されて端部がジョイントされることにより段差が形成されているため、インサイドペイントを塗布する際、この段差の側壁に向けてペイントが直接噴射されると、ジョイント部の隙間に離型剤が入り込んでインナークラックを発生させる恐れがある。
【0006】
このため、ローカバーのセットに際しては、ジョイント部の段差の向きを一定にしてペイントが直接噴射されないようにローカバーをセットする必要があり、従来より、写真や絵などにより作業者に正しいセット方向についての注意を促していたが、セット方向を間違えてインナークラックの発生を招くことがあり、生産性の低下を招いていた。
【0007】
そこで、本発明は、ローカバーにインサイドペイントを塗布する際、ローカバーのセット方向を間違えても、インナークラックの発生を招くことがないインサイドペイントの塗布技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、以下に記載する発明により上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
請求項1に係る発明は、
吐出口からインサイドペイントを噴射するスプレーガンを、ローカバーの内腔に挿入して前記ローカバーの周方向に沿って回転させることにより、前記ローカバーの内面に位置するインナーライナーに前記インサイドペイントを塗布するインサイドペイントの塗布方法であって、
前記ローカバーの内腔にセンサーを挿入して、前記インナーライナーのジョイント部の段差の向きを検出し、
検出された前記ジョイント部の段差の向きに基づいて、前記ジョイント部の段差の側壁に前記インサイドペイントが直接噴射されないように前記スプレーガンの回転方向および前記吐出口の向きを設定し、
その後、前記吐出口から前記インサイドペイントを噴射させて、前記インナーライナーに前記インサイドペイントを塗布する
ことを特徴とするインサイドペイントの塗布方法である。
【0010】
請求項2に係る発明は、
前記ローカバーの幅に基づいて、前記ローカバーの幅方向に対する前記スプレーガンの停止位置を調整する請求項1に記載のインサイドペイントの塗布方法である。
【0011】
請求項3に係る発明は、
前記ローカバーの径に基づいて、前記吐出口から噴射される前記インサイドペイントの噴射圧力を調整する請求項1または請求項2に記載のインサイドペイントの塗布方法である。
【0012】
請求項4に係る発明は、
前記インサイドペイントの噴射圧力を、0.1〜0.4MPaに調整することを特徴とする請求項3に記載のインサイドペイントの塗布方法である。
【0013】
請求項5に係る発明は、
前記ローカバーが、リム径10〜22インチ、呼称幅145〜245mmのタイヤを作製するためのローカバーであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のインサイドペイントの塗布方法である。
【0014】
請求項6に係る発明は、
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のインサイドペイントの塗布方法に用いられるインサイドペイントの塗布装置であって、
吐出口からインサイドペイントを噴射するスプレーガンと、
前記スプレーガンを前記ローカバーの周方向に沿って回転させる回転機構と、
前記インナーライナーのジョイント部の段差の向きを検出するセンサーと、
前記センサーの検出結果に基づいて前記スプレーガンの回転方向および前記吐出口の向きを設定する設定手段と
を備えていることを特徴とするインサイドペイントの塗布装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ローカバーにインサイドペイントを塗布する際、ローカバーのセット方向を間違えても、インナークラックの発生を招くことがないインサイドペイントの塗布技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係るインサイドペイントの塗布装置を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1のインサイドペイントの塗布装置のジョイントセンサーがインナーライナーのジョイント部の段差を検出する様子を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係るインサイドペイントの塗布方法を説明する模式図である。
【
図4】本発明の第2の実施の形態に係るインサイドペイントの塗布方法を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。
【0018】
[1]第1の実施の形態
1.インサイドペイントの塗布装置
図1は第1の実施の形態に係るインサイドペイントの塗布装置を模式的に示す斜視図である。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態に係るインサイドペイントの塗布装置(以下、単に「塗布装置」ともいう)は、ローカバー5を搬送するベルトコンベア1、チェーンコンベア2と、ローカバー5の内面のインナーライナーのジョイント部の段差の向きを検出するセンサーであるジョイントセンサー3と、吐出口4aからペイントを噴射するスプレーガン4とを備えている。
【0020】
さらに、図示を省略しているが、本実施の形態に係る塗布装置は、ローカバー5の周方向に沿ってスプレーガン4を正逆自在に回転させる回転機構と、スプレーガン4の回転方向およびスプレーガン4の吐出口4aの向きを設定する設定手段とを備えている。
【0021】
本実施の形態に係る塗布装置は、上記において、ジョイントセンサー3および設定手段を備えている点において従来の塗布装置と異なっている。
【0022】
ジョイントセンサー3は、前記したように、ローカバー5の内面のインナーライナーのジョイント部の段差の向きを検出するために設けられており、ペイントの塗布に先立ってジョイント部の段差の向きを検出し、その検出結果に基づいて、設定手段がスプレーガン4の回転方向およびスプレーガン4の吐出口4aの向きを、ジョイント部の段差の側壁にペイントが直接噴射されないように設定するように塗布装置が構成されている。
【0023】
これにより、ローカバー5のセット方向を間違えた場合であっても、ジョイントセンサー3がこれを検出して、この検出結果に基づいて、設定手段がスプレーガン4の回転方向およびスプレーガン4の吐出口4aの向きを設定するため、ジョイント部の段差の側壁にペイントが直接噴射されず、インナークラックの発生を確実に防止することができる。
【0024】
2.インサイドペイントの塗布方法
上記した塗布装置を用いたインサイドペイントの塗布は、具体的には以下のように行われる。
【0025】
まず、成形されたローカバー5を横倒しにした状態で、ベルトコンベア1上をチェーンコンベア2に向けて搬入する。そして、搬入されてきたローカバー5がチェーンコンベア2上に載置されると、ローカバー5の搬入を停止する。
【0026】
次に、フレーム10内に収容されたジョイントセンサー3を上昇させて、チェーンコンベア2上に載置されたローカバー5の内腔にジョイントセンサー3を挿入し、ローカバー5内面のインナーライナーのジョイント部の段差の向きを検出する。
【0027】
図2は
図1のインサイドペイントの塗布装置のジョイントセンサーがインナーライナーのジョイント部の段差を検出する様子を模式的に示す図である。
図2に示すように、本実施の形態においては、ジョイントセンサー3として、ローラー3aが先端に取付けられた接触式センサーが用いられている。
【0028】
このジョイントセンサー3は、ローラー3aをローカバー5の内面に位置するインナーライナーに接触させた状態で走行させることにより、ジョイント部6の段差7における走行状態の変化を検出してジョイント部6の段差7の向きを検出することができる。
【0029】
ジョイントセンサー3は、段差7の向きの検出結果を設定手段に送信した後、下降してフレーム10内に収容される(
図1参照)。そして、スプレーガン4がフレーム10内から上昇してローカバー5の内腔に挿入される。このとき、検出された段差7の向きに応じて設定手段がスプレーガン4の回転方向と吐出口4aの向きを設定する。
【0030】
図3は第1の実施の形態に係るインサイドペイントの塗布方法を説明する模式図である。
図3(a)に示すように、ジョイントセンサー3の検出結果よりジョイント部6の段差7が右側を向いていると判別された場合、設定手段は、スプレーガン4の回転方向15を時計回りに設定すると共に、吐出口4aの向きをスプレーガン4の回転方向とは逆向きに設定する。これにより、右側を向いたジョイント部6の段差7の側壁にペイント16が直接噴射されることを防止することができる。
【0031】
一方、
図3(b)に示すように、ローカバー5が
図3(a)とは逆向きにセットされた場合、ジョイント部6の段差7が左側に向けられる。この場合に、段差7が右側を向いている場合と同様に、スプレーガン4を時計回りに回転させ、その逆方向に吐出口4aを向けると、左側を向いた段差7にペイント16が直接噴射されるため、ジョイント部6にペイントが入り込んでインナークラックが発生する。
【0032】
このため、本実施の形態においては、
図3(c)に示すように、ジョイント部6の段差7が左側を向いていることが検出された場合、設定手段が、スプレーガン4の回転方向15を反時計回りに設定すると共に、この回転方向15とは逆の方向にスプレーガン4の吐出口4aの向きを設定する。これにより、左側を向いたジョイント部6の段差7の側壁にペイント16が直接噴射されることを防止することができる。
【0033】
そして、ペイントの塗布が終了した後は、チェーンコンベア2とベルトコンベア1を再び稼働させてローカバー5を次工程に搬出する。
【0034】
以上のように、本実施の形態によれば、ローカバーが何れの方向にセットされた場合でも、段差7の側壁にペイント16を直接噴射せずに、ローカバー5内面にペイント16を塗布することができるため、インナークラックが発生することを確実に防止することができる。
【0035】
また、本実施の形態においては、吐出口4aの向きとスプレーガン4の回転方向とが逆になるように設定するため、吐出口4aから噴射されたペイント16から離れるようにスプレーガン4が回転していき、スプレーガン4の汚れや吐出口4aの詰まりを適切に防止することができる。
【0036】
なお、本実施の形態では、上記したように、センサーとしてローラー3aが先端に取付けられた接触式センサーが用いているが、センサーはこれに限定されず、例えば、センサーとローカバーとの距離を測定して、インナーライナーのジョイント部の段差の向きを検出する非接触式のレーザーセンサーを用いることもできる。
【0037】
[2]第2の実施の形態
図4は第2の実施の形態に係るインサイドペイントの塗布を模式的に説明する図であり、
図4(a)は塗布対象のローカバーの外観、
図4(b)はローカバー内部に位置する塗布装置を模式的に示す図である。第2の実施の形態に係る塗布装置は、ローカバー5の径Rに基づいてペイント16の噴射圧力を調整する圧力調整手段をさらに備えている。
【0038】
インサイドペイントの塗布において、従来のように、ペイントの噴射圧力が一定に設定されていると、ローカバーの径が小さい場合には噴射圧力が強くなり過ぎて塗布後のペイントがダマになり、製品タイヤの内観不良の原因になる恐れがある。また、ローカバーの径が大きい場合にはペイントが十分に塗布されないため、十分な塗布厚を確保することができず、加硫成形時に加硫ブラダーとローカバー内面が密着する恐れがある。
【0039】
これに対して、本実施の形態においては、ローカバー5の径Rに基づいてペイント16の噴射圧力を調整するようにしているため、ローカバーの径に応じた適切な量のペイント16をローカバー5の内面に塗布することができる。この結果、過剰なペイントの塗布による製品タイヤの内観不良や、ペイントの不足による加硫ブラダーとローカバー内面との密着などの不具合の発生を適切に防止することができる。
【0040】
なお、ローカバー5の径Rは、加硫成形後の製品タイヤのリム径との間に相関関係があるため、製品タイヤのリム径に基づいて噴射圧力を調整することもできる。
【0041】
また、本実施の形態においては、ローカバー5の幅Wに基づいて、ローカバー5の幅方向に対するスプレーガン4の停止位置を調整する位置調整手段(図示省略)が設けられている。これにより、ローカバー5の幅Wに応じて、スプレーガン4の停止位置を適宜調整することができ、ローカバー5内面に均一にペイント16を噴射させることができる。
【0042】
このとき、異なる高さのスプレーガン4が回転軸11に一対取り付けられている場合には、2つのスプレーガン4の平均高さ13をもって、それぞれのスプレーガン4の位置とする。
【0043】
なお、ローカバー5の幅Wは、加硫成形後の製品タイヤの呼称幅との間に相関関係があるため、製品タイヤの呼称幅に基づいてスプレーガンの高さを調整することもできる。
【0044】
上記した第1および第2の実施の形態は、リム径10〜22インチ、呼称幅145〜245mmの製品タイヤの製造に適用した場合、特に顕著な効果をすることができる。
【0045】
また、上記した第1および第2の実施の形態においては、ローカバーを横倒しにセットした場合について説明したが、ローカバーをセットする状態は特に限定されず、例えば、縦置きにセットしてもよい。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を用いて本発明を説明する。
【0047】
1.第1の試験
(1)試験例1〜9
上記した第1の実施の形態に係る塗布装置を用い、検出したジョイント部の段差の向きに基づいて、スプレーガンの回転方向と吐出口の向きを設定しながら、表1に示すサイズの各ローカバーの内面に、表1に示す噴射圧力でペイントの塗布を行った(試験例1〜9)。なお、ペイントの塗布にあたっては、各試験例で20本のローカバーにペイントの塗布を行い、半数のローカバーについてはセットする向きを逆にしてペイントの塗布を行った。
【0048】
表1におけるリム径とサイズは、加硫後の製品タイヤにおける寸法であり、前記したように、製品タイヤのリム径と、加硫前のローカバーの径との間には相関関係があることが予め確認されている。
【0049】
(2)評価
(a)インナークラックの観察
試験例1〜9のそれぞれにおいて、塗布後のインナーライナーのジョイント部にインナークラックが発生しているか否かを目視にて確認した。結果を表1に示す。
【0050】
(b)ローカバー内観の観察
ペイント塗布後のローカバー内面を目視にて確認して、ローカバー内観をその状態に応じて良好なものから順に「A」、「B」、「C」の3段階で評価した。結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
表1より、試験例1〜9の何れにおいても、ローカバーを逆向きにセットしても、インナーライナーのジョイント部にインナークラックの発生が認められなかった。このことから、センサーによるジョイント部の段差の向きの検出結果に基づいて、スプレーガンの回転方向と吐出口の向きを設定することにより、インナークラックの発生を確実に防止できることが確認できた。
【0053】
また、表1より、製品タイヤのリム径に対して噴射圧力が大きすぎる場合(試験例2、試験例3、試験例6、試験例9)にはペイントのダマが発生しやすくなり、少なすぎる場合(試験例4、試験例7)にはペイントが薄くなることが分かる。そして、リム径に対して適切な噴射圧力を設定した場合(試験例1、試験例5、試験例8)には内観が非常に優れたローカバーを得られることが分かる。
【0054】
このことから、ペイントの噴射圧力には、ローカバーの径と相関関係にあるリム径との関係で適切な値が有ることが分かり、リム径に基づいて噴射圧力を調整することにより、内観に優れた製品タイヤを製造できることが確認できた。
【0055】
2.第2の試験
(1)試験例10〜17
第1の試験と同様に、第1の実施の形態に係る塗布装置を用いて、表2に示すように、ローカバーの幅とスプレーガンの高さ位置がそれぞれ異なる試験例10〜17のローカバーの内面にインサイドペイント(離型剤)を塗布した(各20本)。
【0056】
なお、表2における呼称幅は、加硫後の製品タイヤにおける寸法であり、前記したように、製品タイヤの呼称幅と、加硫前のローカバーの幅との間には相関関係があることが予め確認されている。また、表2中の「スプレーガン高さ」は、2つのスプレーガン4の平均高さ13を示している(
図4(b)参照)。
【0057】
(2)評価
上記した第1の試験と同様に、ペイント塗布後のローカバー内面を目視にて確認して、ローカバー内観をその状態に応じて良好なものから順に「A」、「B」、「C」の3段階で評価した。結果を表1に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
表2より、製品タイヤの呼称幅に対して、スプレーガンの高さが低すぎる場合(試験例10、試験例13)にはローカバー内面の上側の塗布量が少なくなり、高すぎる場合(試験例12、試験例15、試験例17)には下側の塗布量が少なくなったりムラが生じたりすることが分かる。そして、呼称幅に対してスプレーガンを適切な高さに設定した場合(試験例11、試験例14、試験例16)には内観が非常に優れたローカバーを得られることが分かる。
【0060】
このことから、スプレーガンの高さには、ローカバーの幅と相関関係にある呼称幅との関係で適切な値が有ることが分かり、この呼称幅に基づいてスプレーガンの高さを調整することにより、内観に優れた製品タイヤを製造できることが確認できた。
【0061】
以上、本発明を実施の形態に基づき説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 ベルトコンベア
2 チェーンコンベア
3 ジョイントセンサー
3a ローラー
4 スプレーガン
4a 吐出口
5 ローカバー
6 インナーライナーのジョイント部
7 ジョイント部の段差
10 フレーム
11 回転軸
13 2つのスプレーガンの平均高さ
15 スプレーガンの回転方向
16 インサイドペイント(ペイント)
R ローカバーの径
W ローカバーの幅