(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
長手方向前後2箇所に薄肉部をそれぞれ設けた上下一対の平行ビームの端部が固定部と可動部で接続されてロバーバル機構を構成する起歪体と、前記薄肉部に接着された歪ゲージとを備えたロバーバル型ロードセルにおいて、
前記可動部に下向き荷重が作用した場合には、前記全4箇所の薄肉部のうち、上ビームの可動部寄りの薄肉部および下ビームの固定部寄りの薄肉部には圧縮応力がそれぞれ作用し、上ビームの固定部寄りの薄肉部および下ビームの可動部寄りの薄肉部には引張応力がそれぞれ作用するが、
前記引張応力が作用する薄肉部2箇所のうちのいずれか一方、および前記圧縮応力が作用する薄肉部2箇所のうちのいずれか一方には、前記歪ゲージがそれぞれ接着されるとともに、前記歪ゲージを接着しない残りの薄肉部2箇所の幅方向中央部には、略円形の貫通孔がそれぞれ設けられたことを特徴とするロバーバル型ロードセル。
前記上ビームの2箇所の薄肉部には、前記歪ゲージがそれぞれ接着されるとともに、前記下ビームの2箇所の薄肉部には、前記略円形の貫通孔がそれぞれ設けられたことを特徴とする請求項1に記載のロバーバル型ロードセル。
前記下ビームの2箇所の薄肉部には、前記歪ゲージがそれぞれ接着されるとともに、前記上ビームの2箇所の薄肉部には、前記略円形の貫通孔がそれぞれ設けられたことを特徴とする請求項1に記載のロバーバル型ロードセル。
前記上下一対のビームの固定部寄りのそれぞれの薄肉部には、前記歪ゲージがそれぞれ接着されるとともに、前記上下一対のビームの可動部寄りのそれぞれの薄肉部には、前記略円形の貫通孔がそれぞれ設けられたことを特徴とする請求項1に記載のロバーバル型ロードセル。
前記上下一対のビームの可動部寄りのそれぞれの薄肉部には、前記歪ゲージがそれぞれ接着されるとともに、前記上下一対のビームの固定部寄りのそれぞれの薄肉部には、前記略円形の貫通孔がそれぞれ設けられたことを特徴とする請求項1に記載のロバーバル型ロードセル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のロードセルは、側面貫通孔を設けた矩形状ブロック体で構成されており、製造し易いことと実績があるという理由で、多少の大きさの違いが有るものの、昔から同じ様な形状のままであった。
【0005】
このため、ロードセルの性能も昔からわずかに向上しているに過ぎない。このわずかな性能の向上も、主に歪ゲージの性能、起歪体の素材の改良、ロードセル製造技術の進歩によるものであって、ロードセル(起歪体)の形状の工夫によるものではなかった。
【0006】
このように、ロードセル(起歪体)の形状を工夫することによってロードセルの性能を改善しようとする試みは、現在まで全くなされていなかった。
このような背景の下、ロードセルを備えた電子天秤では、秤量物を電子天秤の計量皿に載せた直後は測定値がふらつくものの、暫くして安定する。これは、薄肉部に発生する歪(応力)が安定するまで時間がかかるためであるが、この測定値が安定するまでの時間が短いほどロードセルが高性能といえる。
【0007】
そこで、発明者は、薄肉部の形状を工夫することで、測定値が安定するまでの時間(薄肉部に発生する応力が安定するまでの時間)を短縮できないか、と考えた。
【0008】
そして、発明者は、まず、上下2箇所ずつ全4箇所の薄肉部に歪ゲージを接着した従来構造のロードセル(起歪体)を用いて、ロードセルに荷重を負荷させた場合の薄肉部に発生する応力を有限要素法により解析した。
【0009】
すると、
図7(c)に示すように、薄肉部に発生する応力は、幅方向中央部付近では、ほぼ一定の大きさを示すのに対し、幅方向両端部では、中央部付近の値よりも大きな値を示す。薄肉部に発生する応力の値は、理屈上は幅方向に均一となるはずであるが、実際には、両端部において大きくなった。
【0010】
発明者が考察した結果、ロードセル(起歪体)の薄肉部の幅方向両端部に発生するこの大きな応力は、「ころ軸受け」業界では周知の「エッジロード」に相当すると考えられる。
【0011】
即ち、例えば、円筒状の「ころ」が内輪と外輪の間で転がるように構成されている「ころ軸受け」では、円筒状の「ころ」と内輪の接触応力は、「ころ」の幅方向で均一なはずであるが、実際には均一ではなく、「ころ」の両端部の応力が中央部付近の応力よりも大きくなることが知られており、「ころ」の両端部に発生するこの大きな応力は、「エッジロード」と呼ばれている。
【0012】
そして、ロードセル(起歪体)に荷重を負荷した場合の薄肉部にも、「ころ軸受け」と同様に、薄肉部の端部(以下、エッジ部という)に「エッジロード」が発生していると考えられる。
【0013】
このように、ロードセル(起歪体)に荷重を負荷したときの薄肉部に発生する応力は、薄肉部の両端部にエッジロードが発生するため、幅中央部付近と両端部付近で不均衡となる。このため、薄肉部中央部付近に接着されている歪ゲージが応力を感受するときに、エッジロードの影響を受けて、測定誤差となるし、薄肉部における幅方向の応力がバランスして安定するまで測定値も安定しない(測定値が安定するまで所定時間がかかる)、と考えられる。
【0014】
また、計量皿の四隅などに偏荷重を加えるとロードセル(起歪体)がねじられるが、この場合の薄肉部に発生する応力もエッジロードの影響を受けると考えられる。
【0015】
即ち、ロードセル(起歪体)がねじられる場合は、ロードセル(起歪体)の幅方向中央に前後に延びる仮想中立軸が存在し、ロードセル(起歪体)はこの仮想中立軸を中心として回転する。しかし、この仮想中立軸はロードセル(起歪体)の幅方向中央付近というだけで、その位置は明確に決まっているものではない。しかも薄肉部の幅方向両端部に発生したエッジロードがやはり中央部付近の応力に影響を及ぼすため、これが測定誤差となるし、薄肉部における幅方向の応力がバランスして安定するまで測定値も安定しない(偏荷重が負荷として作用する場合も、測定値が安定するまで所定の時間がかかる)、と考えられる。
【0016】
また、ロードセルが過負荷によって破損する実験を行なったところ、ロードセルの薄肉部に塑性変形が生じ、これによりロードセル(薄肉部)が破損した。
【0017】
このときの薄肉部の変形は、薄肉部の幅方向の一方の端部から変形が始まり、塑性変形が反対側端部まで伝わり、薄肉部中央付近に直線状の筋が発生する。即ち、筋は、薄肉部の幅方向の一方の端部を起点として発生し、反対側の端部に延びることも、薄肉部の幅方向の端部にエッジロードが発生していることを示唆している。
【0018】
このように、従来のロードセルでは、薄肉部に発生するエッジロードが「測定誤差」や「測定値が安定するまでの時間」といった、ロードセルの性能に関連することから、発明者は、薄肉部に発生するエッジロードを小さくできれば、ロードセルの性能を改善できるのではないかと考えた。
【0019】
そこで、発明者は、先ず、薄肉部に円形の貫通孔(以下、円孔という)を設けた場合に、薄肉部に発生するエッジロードがどのようになるか、薄肉部に発生する応力が安定するまでの時間はどう変わるか等を検討する過程で、従来構造のロードセルを構成する起歪体の下ビームの2箇所の薄肉部にだけ円孔を設けたロバーバル機構を試作した。
【0020】
即ち、起歪体の上ビームの2箇所の薄肉部(円孔を設けない薄肉部)には歪ゲージをそれぞれ接着し、歪ゲージを接着しない下ビームの2箇所の薄肉部の幅方向中央部には円孔をそれぞれ設けたロードセルを試作し、孔を設けた薄肉部および孔を設けない薄肉部にそれぞれ発生する応力を有限要素法により解析した。
【0021】
すると、孔を設けた薄肉部では、
図7(a)に示すように、孔周縁部の2箇所が新たな端部(エッジ部)となって、全4箇所の端部(エッジ部)においてエッジロードが発生した。このエッジロードの値H3は、従来のロードセル(起歪体)の薄肉部に発生するエッジロードの値H1(
図7(c)参照)よりも低い値(H3<H1)であった。
【0022】
一方、孔を設けない薄肉部では、
図7(b)に示すように、従来のロードセルにおける薄肉部で発生する応力分布(
図7(c)参照)と同じような応力分布となるが、端部(エッジ部)に発生するエッジロードの値H2が、従来のロードセルのエッジロードの値H1よりも僅かに低かった(H3<H2<H1)。
【0023】
これは、孔を設けることでエッジロードの値が小さくなる等、2箇所の薄肉部の特性が変化することで、孔を設けない他の2箇所の薄肉部の特性に影響を与えたものと推察される。
【0024】
そして、試作したロードセルでは、従来のロードセルに比べて測定誤差が少なく、測定値が安定するまでの時間も短縮される等、ロードセルの性能を改善する上で有効であることが確認されたことを受けて、この度の特許出願に至ったものである。
【0025】
本発明は、前記した従来の問題点および発明者の前記した知見に基づいてなされたもので、その目的は、ロードセルの4箇所の薄肉部のうちの2箇所に孔を設けることで、ロードセルの基本性能を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
前記した目的を達成するために、請求項1に係るロバーバル型ロードセルにおいては、長手方向前後2箇所に薄肉部をそれぞれ設けた上下一対の平行ビームの端部が固定部と可動部で接続されてロバーバル機構を構成する起歪体と、前記薄肉部に接着された歪ゲージとを備えたロバーバル型ロードセルにおいて、
前記可動部に下向き荷重が作用した場合には、前記全4箇所の薄肉部のうち、上ビームの可動部寄りの薄肉部および下ビームの固定部寄りの薄肉部には圧縮応力がそれぞれ作用し、上ビームの固定部寄りの薄肉部および下ビームの可動部寄りの薄肉部には引張応力がそれぞれ作用するが、
前記引張応力が作用する薄肉部2箇所のうちのいずれか一方、および前記圧縮応力が作用する薄肉部2箇所のうちのいずれか一方には、前記歪ゲージをそれぞれ接着するとともに、前記歪ゲージを接着しない残りの薄肉部2箇所の幅方向中央部には、略円形の貫通孔(以下、単に孔という)をそれぞれ設けるように構成した。
【0027】
(作用)従来のロードセル(起歪体)に荷重を負荷すると、薄肉部の両端部の2箇所にエッジロードが発生する(
図7(c)参照)。一方、従来のロードセル(起歪体)の薄肉部の幅方向中央部に略円形の孔を設けると、薄肉部の両端部と孔の周縁端部の全4箇所にエッジロードが発生し、従来のロードセルの薄肉部で発生するエッジロードよりもその値が小さくなる。
【0028】
即ち、本発明のロードセル(起歪体)における、歪ゲージが接着された2箇所の薄肉部(孔を設けない薄肉部)では、「薄肉部の両端部で相対的に値の大きいエッジロードが発生し、薄肉部の幅方向の応力がバランスして安定するまでの時間が相対的に長い」という本来の特性をもち、略円形の孔が設けられた残りの2箇所の薄肉部では、「薄肉部の両端部に加えて孔の周縁端部の4箇所でエッジロードが発生するものの、それぞれのエッジロードの大きさは相対的に小さく、薄肉部の幅方向の応力がバランスして安定するまでの時間が相対的に短い」という本来の特性をもつ。
【0029】
然るに、ロードセル(起歪体)は、4箇所の薄肉部を支点とするロバーバル機構を構成するため、4箇所の薄肉部が全てほぼ同一の特性となるように自動的に調整される。詳しくは、孔を設けた2箇所の薄肉部では、歪ゲージが接着された2箇所の薄肉部(孔を設けない薄肉部)の特性の影響を受けて、孔を設けた薄肉部本来の特性よりも、エッジロードの値が大きくなり、薄肉部の幅方向の応力がバランスして安定するまでの時間が延びるの対し、歪ゲージを接着した2箇所の薄肉部(孔を設けない薄肉部)では、孔を設けた2箇所の薄肉部の特性の影響を受けて、孔を設けない薄肉部本来の特性よりも、エッジロードの値が小さくなり、薄肉部の幅方向の応力がバランスして安定するまでの時間も短縮されたものとなる。
【0030】
この結果、第1には、従来のロードセル(起歪体)に比べて、歪ゲージを接着した薄肉部に発生するエッジロードの値が小さくなる(H2<H1)分、歪ゲージが応力を感受するときに、エッジロードの影響を受けにくく、測定誤差が少なくなる。
【0031】
第2には、従来のロードセル(起歪体)に比べて、歪ゲージを接着したエッジロードの値が小さくなる(H2<H1)分、薄肉部の幅方向の応力がバランスして安定するまでの時間が短縮される(測定を開始できるまでの時間が短縮される)。
【0032】
また、歪ゲージを接着した薄肉部の幅方向の応力がバランスして安定するまでの時間(測定を開始できるまでの時間)が短縮されることについては、以下のように説明することもできる。
【0033】
即ち、ロードセル(起歪体)の4箇所の薄肉部では、孔の有無によってエッジロードの大きさ、薄肉部の剛性および重さが異なる。このため、ロードセルに荷重が負荷された場合、孔の有無によって薄肉部がそれぞれ違う動きをし、相互の異なる動きが干渉し合って薄肉部の動き(ロバーバル機構の動き)を収束する力が働く。この結果、薄肉部の動き(ロバーバル機構の動き)が止まり、応力安定状態に達するまでの時間が短縮される、と考えられる。
【0034】
また、薄肉部は、横から見て、外側直線・内側円弧状に形成されて、内側円弧の頂点に最大応力が発生するように設計されて、ロバーバル変形の起点でもある。そして、薄肉部が変形する際の内側円弧の頂点に発生する応力は、内側円弧の頂点近傍では厚さがほほ同じであるため、薄肉部は内側円弧の頂点近辺を起点として変形していると考えられる。
【0035】
然るに、孔を設けた薄肉部では、薄肉部を平面視して起歪体の幅方向の中心に孔があるため、薄肉部における孔を挟んだ左右の領域であって孔の中心を通り左右に延びる、最小面積となる横断面に最大応力が発生する。さらにこの横断面位置は、薄肉部を横から見た場合の内側円弧の頂点と一致する。
【0036】
従って、内側円弧の頂点に一致するこの横断面には確実に最大応力が生じ、この横断面が確実にロバーバル変形の起点となる。そして、孔を設けた薄肉部2箇所の内側円弧のそれぞれの頂点が必ずロバーバル変形の起点となることで、歪ゲージを接着した2箇所の薄肉部(孔を設けない薄肉部)も、孔を設けた2箇所の薄肉部に倣うように、内側円弧のそれぞれの頂点を起点としてロバーバル変形する。即ち、全ての薄肉部に孔を設けていない従来のロードセル(起歪体)に比べて、ロバーバル変形の正確性および再現性も上がる。
【0037】
なお、薄肉部に設ける孔を略円形として説明したが、孔の形状は、矩形であっても、略円形の孔と同様の作用・効果が奏されるが、薄肉部に矩形の孔を設けることは可能ではあるが、加工が難しく、それだけ費用と時間がかかるため、略円形の孔が望ましい。そして、略円形の孔には、楕円形の孔は勿論、起歪体の幅方向に伸びる長孔も含まれる。
【0038】
また、起歪体の4箇所の薄肉部のうちのどの薄肉部2箇所に孔を設けるかによって、請求項2〜5に示す、以下の4つの形態がある。
【0039】
即ち、請求項2においては、請求項1に記載のロバーバル型ロードセルにおいて、前記上ビームの2箇所の薄肉部に前記歪ゲージをそれぞれ接着するとともに、前記下ビームの2箇所の薄肉部に前記略円形の孔をそれぞれ設けるように構成した。
【0040】
また、請求項3においては、請求項1に記載のロバーバル型ロードセルにおいて、前記下ビームの2箇所の薄肉部に前記歪ゲージをそれぞれ接着するとともに、前記上ビームの2箇所の薄肉部に前記略円形の孔をそれぞれ設けるように構成した。
【0041】
また、請求項4においては、請求項1に記載のロバーバル型ロードセルにおいて、前記上下一対のビームの固定部寄りのそれぞれの薄肉部に前記歪ゲージをそれぞれ接着するとともに、前記上下一対のビームの可動部寄りのそれぞれの薄肉部に前記略円形の孔をそれぞれ設けるように構成した。
【0042】
また、請求項5においては、請求項1に記載のロバーバル型ロードセルにおいて、前記上下一対のビームの可動部寄りのそれぞれの薄肉部に前記歪ゲージをそれぞれ接着するとともに、前記上下一対のビームの固定部寄りのそれぞれの薄肉部に前記略円形の孔をそれぞれ設けるように構成した。
【発明の効果】
【0043】
本発明のロバーバル型ロードセルによれば、測定誤差、測定開始可能時間、ロバーバル変形の正確性や再現性等の基本性能に優れたロードセルが提供される。
【0044】
また、本体ケース上に本発明に係るロバーバル型ロードセルが配設されるなど、本体ケースの外部にロードセルが露呈している電子天秤であって、ロードセルの周辺領域の水洗いが可能な電子天秤では、下ビームの薄肉部に設けた孔が排水孔として機能するので、ロードセル(起歪体)の下ビームに水が残りにくく、さらに、水洗いの際に歪ゲージに水がかかりにくいという点で、請求項2の発明が特に有効である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、添付図面に従って、本発明に係るロードセルの好ましい実施形態について説明する。
図1は、本発明が適用された第1の実施形態のロバーバル型ロードセル10を示す斜視図であり、
図2は、同ロードセルの分解斜視図、
図3は、同ロードセルの水平断面図(
図1のIII−III線に沿う断面図)、
図4は、底面側から見た同ロードセルの斜視図、
図5は、同ロードセルの縦断面図(
図2のV−V線に沿う断面図)、
図6は同ロードセル(起歪体)の薄肉部を拡大して示す図で、(a)は薄肉部の平面図(
図5のVI−VI線に沿う断面図)、(b)は薄肉部の側面図である。
【0047】
これらの図に示すように、ロードセル10は主として、起歪体12、歪ゲージ20、過荷重防止用ストッパ30で構成される。
【0048】
起歪体12は、アルミ等の金属材から成り、たとえば一定形状に押し出し成形したものを一定の幅で切断し、必要に応じて切削加工することによって製造される。この起歪体12には、幅方向(矢印α方向)に貫通する略眼鏡状の貫通孔13が形成されており、この貫通孔13が形成されることによって、起歪体12は、平行に配設された上ビーム14と下ビーム15、上下一対のビーム14,15の両端部をそれぞれ接続する固定部16と可動部17、上ビーム14と下ビーム15のそれぞれ対向する位置に設けられた2個所の薄肉部18を備えたロバーバル機構を構成している。薄肉部18は合計4個所形成されており、可動部17に負荷をかけて起歪体12が変形した際に2個の薄肉部18は引っ張られ、残りの2個の薄肉部18は圧縮される。
【0049】
図1において、引張側の薄肉部は18a、圧縮側の薄肉部は18bとして示されており、本実施の形態では、上ビーム14の引張側(図の右側)の薄肉部18(18a)および圧縮側(図の左側)の薄肉部18(18b)にそれぞれ2個の歪ゲージ20が貼り付けられている。歪ゲージ20は、電気的に接続されてブリッジ回路が構成されている。
【0050】
一方、固定部16は、ケース等の装置本体(不図示)に固定される部分であり、本実施の形態では、底面にネジ孔(不図示)が形成され、下側からネジ止めされて装置本体に固定される。起歪体12における固定部16の反対側には、可動部17が設けられている。可動部17は、秤量皿(不図示)が接続される部分であり、本実施の形態では上面にネジ孔21が形成され、秤量皿(不図示)の支持部材等が上側からネジ止めにより固定される。この可動部17の内側の側面(貫通孔13に臨む側面)には、起歪体12の幅方向に延びるストッパ係合用凹部19が形成されている。凹部19は、起歪体12の幅方向において一定の形状に形成されており、凹部19の内側には、ストッパ30の先端部32の一部が配置されている。
【0051】
過荷重防止用ストッパ30は、凹部19内に配置される先端部32と、起歪体12の固定部の側面に固定される基端部34を備え、起歪体12と同じ材質(たとえばアルミ材)によって一体的に形成されている。
【0052】
ストッパ先端部32は、貫通孔13の内側に非接触で配置可能な形状(例えば所定の厚みをもったプレート状)に形成されている。また、先端部32は、起歪体12の幅よりも大きい幅に形成されており、ストッパ30を起歪体12に固定した時に、
図3符号32bで示すように、可動部17の幅方向外側に突出する。さらにストッパ先端部32の先端32aは、可動部17の凹部19内に非接触で配置され、上面および下面が平行で平坦に形成された先端部32は、凹部19内に配置された際に、凹部19の上下面との間に所定のクリアランスが形成される。
【0053】
一方、ストッパ基端部34は、起歪体12の固定部16の外側面に面接触する部位である幅広板状の側板部36を備え、ストッパ先端部32の幅方向の一方端側に繋がっている。したがって、
図3に示すように、ストッパ30は全体として水平断面L型に形成されている。また、側板部36は、
図2に示すように、先端部32の厚さ(上下方向の寸法)よりも上下方向に大きく(幅広に)形成されるとともに、上下2箇所にネジ25用の挿通孔35が形成されている。この挿通孔35の位置に合わせて、固定部16の外側面にネジ孔22が形成されている。
【0054】
このように構成されたストッパ30は、まず、その先端部32を起歪体12の貫通孔13に挿通させるとともに、先端部32の先端32aを可動部17の凹部19内に配置し、側板部36を固定部16の外側面に面接触させる。このとき、ストッパ30の先端部32が起歪体12よりも幅広に形成されているので、ストッパ30の先端部32の左右の側縁部32bは、起歪体12の可動部17の両側に突出した状態になる。次に、突出部分である側縁部32b(
図3参照)に位置決め用の治具(不図示)を当てて、先端部32と凹部19の上下面とのクリアランスを調整した後、その状態を保ったまま、ネジ25を挿通孔35に挿通しネジ孔22に締め付ける。これにより、ストッパ30が起歪体12(の凹部19)に対し位置決めされた状態で固定される。
【0055】
次に、ストッパ30の作用について説明する。
【0056】
ロードセル10では、ストッパ30の先端部32が起歪体12の可動部17よりも幅広に形成されて、ストッパ先端部32の左右の側縁部32bが、
図3符号32bに示すように、可動部17の両外側に突出した形態になっている。このため、ロードセル10において、可動部17に垂直方向の過荷重が作用した場合、可動部17の凹部19の下面または上面がストッパ30の先端部32の上面または下面に当接し、起歪体12への過荷重の伝達が防止されて、薄肉部18の過剰変形が抑制される。
【0057】
また、このロードセル10において、可動部17にねじれ方向の過荷重が作用した場合には、起歪体12の幅方向端部である、凹部19の延在方向の端部(エッジ部)19aが最大に変位して、このエッジ部19aがストッパ先端部32に当接する位置に最大荷重が伝達されるが、エッジ部19aの上下に対向する位置では、ストッパ30の先端部32が面積を有している。即ち、エッジ部19aの上下に対向する位置には、ストッパ部30の先端部32の平面領域が延在している。このため、起歪体12にねじれ方向の過荷重が加わった場合には、エッジ部19aがストッパ30の先端部32(の平面領域)に必ず当接して、所定値以上の過過荷重が起歪体12に伝達されず、薄肉部18の過剰変形が抑制される。
【0058】
このように本実施の形態によれば、垂直方向の過荷重に対してだけでなく、ねじれ方向の過荷重に対しても、薄肉部の過剰変形を抑制する上で有効である。
【0059】
また、下ビーム15の薄肉部18(18a,18b)には、起歪体12の幅方向中央位置に該薄肉部18を上下方向に貫通する円孔100が設けられることで、ロードセル10のそれぞれの薄肉部18に発生するエッジロードの大きさが小さくなって、測定誤差、測定値が安定するまでの時間等のロードセル10の性能が改善されている。
【0060】
即ち、前記したように、上ビーム14の引張側の薄肉部18(18a)および圧縮側の薄肉部18(18b)には、それぞれ2個の歪ゲージ20が貼り付けられているが、歪ゲージ20を接着しない下ビーム15の引張側の薄肉部18(18a)および圧縮側の薄肉部18(18b)には、円孔100がそれぞれ設けられている。
【0061】
以下、下ビーム15の薄肉部18(18a,18b)に円孔100を設けることで、ロードセル10の性能が改善されるという作用について説明する。
【0062】
ロードセル(起歪体)10の4箇所の薄肉部18のうち、歪ゲージ20が接着された上側の2箇所の薄肉部(孔100を設けない薄肉部)18では、「薄肉部18の両端部には、
図7(c)の符号H1に示すように、相対的に大きい値のエッジロードが発生し、薄肉部18の幅方向の応力がバランスして安定するまでの時間は相対的に長い」という本来の特性もちち、一方、円孔100を設けた下側の2箇所の薄肉部18では、「薄肉部18の両端部に加えて円孔100の周縁端部の4箇所でエッジロードが発生するものの、それぞれのエッジロードの大きさは、上側の薄肉部18で発生するエッジロードの大きさよりも小さく、薄肉部18の幅方向の応力がバランスして安定するまでの時間は相対的に短い」という本来の特性をもつ。
【0063】
然るに、ロードセル10(起歪体12)は、薄肉部18を支点とするロバーバル機構を構成するため、4箇所の薄肉部18は全てほぼ同一の特性となるように自動的に調整される。詳しくは、孔100を設けた2箇所の薄肉部18では、歪ゲージ20が接着された2箇所の薄肉部18(孔100を設けない薄肉部18)の特性の影響を受けて、孔100を設けた薄肉部18本来の特性よりも、エッジロードの値が大きくなり、薄肉部18の幅方向の応力がバランスして安定するまでの時間が延びるの対し、歪ゲージ20を接着した2箇所の薄肉部(孔100を設けない薄肉部18)では、孔100を設けた2箇所の薄肉部18の特性の影響を受けて、孔100を設けない薄肉部18本来の特性よりも、エッジロードの値が小さくなり、薄肉部18の幅方向の応力がバランスして安定するまでの時間も短縮されたものとなる。
【0064】
詳しくは、歪ゲージ20を接着した上側2箇所の薄肉部18の本来の特性(エッジロードの値が相対的に大きく、薄肉部の幅方向の応力が安定するまでの時間が相対的に長い)と、円孔100を設けた下側2箇所の薄肉部18の本来の特性(エッジロードの値が相対的に小さく、薄肉部の幅方向の応力が安定するまでの時間が相対的に短い)が互いに影響を受けることで、上側2箇所の薄肉部18では、
図7(b)の符号H2に示すように、本来の特性(
図7(c)の符号H1参照)よりも、エッジロードの値が小さく(H2<H1)なり、薄肉部の幅方向の応力がバランスして安定するまでの時間も短くなる。
【0065】
即ち、従来のロードセル(起歪体)に比べて、第1には、上側の薄肉部18に発生するエッジロードの値がH1からH2に低下する分、歪ゲージ20が応力を感受するときに、エッジロードの影響を受けにくく、それだけ測定誤差が少なくなる。
【0066】
第2には、上側の薄肉部18に発生するエッジロードは、従来のロードセル(起歪体)に比べて各エッジロードの値H2が小さく(H2<H1)なる分、薄肉部の幅方向の応力がバランスして安定するまでの時間が短縮される。
【0067】
また、薄肉部18に発生する応力がバランスして安定するまでの時間(測定を開始できるまでの時間)が短縮されることについては、以下のように説明することもできる。
【0068】
即ち、ロードセル10の4箇所の薄肉部18では、円孔100の有無によってエッジロードの大きさ、薄肉部の剛性および重さが異なる。このため、ロードセル10に荷重が負荷された場合、円孔100の有無によって薄肉部18がそれぞれ違う動きをし、相互の異なる動きが干渉し合って薄肉部18の動き(ロバーバル機構の動き)を収束する力が働く。この結果、薄肉部18の動き(ロバーバル機構の動き)が止まり、応力安定状態に達するまでの時間が短縮される、とも考えられる。
【0069】
また、薄肉部18は、横(側方)から見て、外側直線・内側円弧状に形成されて、内側円弧Rの頂点Pに最大応力が発生するように設計されて、ロバーバル変形の起点でもある。そして、薄肉部18が変形する際の円弧Rの頂点Pに発生する応力は、内側円弧Rの頂点P近傍では厚さがほほ同じであるため、内側円弧Rの頂点P近辺を起点としてロバーバル変形していると考えられる。
【0070】
然るに、円孔100を設けた下側の薄肉部18では、
図6(a)に示すように、薄肉部18を平面視して起歪体12の幅方向の中心に円孔100があるため、薄肉部18における円孔100を挟んだ左右の領域であって円孔100の中心O1を通り左右に延びる最小面積となる横断面(符号L−Lで示す断面)に最大応力が発生する。さらにこの横断面位置L−Lは、薄肉部18を横(側方)から見た場合の内側円弧Rの頂点Pと一致する。
【0071】
従って、内側円弧Rの頂点Pに一致するこの横断面には確実に最大応力が生じ、この横断面が確実にロバーバル変形の起点となる。そして、下側の2箇所の薄肉部18の内側円弧Rのそれぞれの頂点Pが必ずロバーバル変形の起点となることで、上側の2箇所の薄肉部18も下側の2箇所の薄肉部18に倣うように、薄肉部18の内側円弧Rのそれぞれの頂点Pを起点としてロバーバル変形する。即ち、薄肉部に円孔100を設けていない従来のロードセル(起歪体)に比べて、ロバーバル変形の正確性および再現性も上がる、と考えられる。
【0072】
また、
図8は、第1の実施の形態のロードセル10を組み込んだ四隅誤差測定装置を示し、(a)は同装置の断面図、(b)は偏荷重の作用位置を示す同装置の平面図、
図9は、ロードセル10の四隅誤差を従来のロードセル(比較例)の四隅誤差と比較して示す図で、(a)はロードセル10の四隅誤差を示し、(b)は従来のロードセル(比較例)の四隅誤差を示す。
【0073】
これらの図において、四隅誤差測定装置は、
図8(a)に示すように、ロードセル10は、その固定部16がベースプレートに固定されて片持ち状に水平に配設され、ロードセル10の可動部17に平面視正方形状の秤量皿が固定された構造で、
図8(b)に示すように、秤量皿の中央部に荷重を作用させたときの値を基準として、符号A,B,C,Dで示す四箇所に荷重を作用させた場合のそれぞれの「ずれ量」をロードセル10で測定するように構成されている。
【0074】
従来のロードセルの場合は、
図9(b)に示すように、負荷荷重の増加に伴って、+方向のずれ,−方向のずれがいずれも略二次元的に増加するのに対し、本実施の形態のロードセル10では、
図9(a)に示すように、負荷荷重の増加に伴って、+方向のずれ,−方向のずれの増加の割合が、従来のロードセルの場合と比べて少ない。特に、1/3秤量までは、従来のロードセルとほぼ同じずれ量を示すが、2/3秤量,3/3秤量と順次秤量が増加すると、従来のロードセルでは、+方向、−方向いずれの方向の「ずれ」も急激に増加するのに対し、本実施の形態のロードセル10では、僅かに増加するにとどまる。
【0075】
即ち、本実施の形態のロードセル10では、偏荷重が作用した場合の四隅誤差が従来のロードセルに比べて圧倒的に少ない。
【0076】
この偏荷重が作用した場合の四隅誤差が従来のロードセルと比べて少なくなることは、以下のように説明できる。
【0077】
偏荷重が作用するとロードセル10(起歪体12)は、ロードセル10(起歪体12)の幅方向中央に前後に延びる仮想中立軸を中心として回転する。従来のロードセルでは、この仮想中立軸はロードセル(起歪体)の幅方向中央付近というだけで、その位置は明確に決まっているものではない。しかも薄肉部の幅方向両端部に発生したエッジロードが中央部付近の応力に影響を及ぼすため、これが測定誤差となるし、薄肉部における幅方向の応力がバランスして安定するまで測定値も安定しない(偏荷重が負荷として作用する場合も、測定値が安定するまで所定の時間がかかる)。
【0078】
然るに、ロードセル10(起歪体12)では、下側の前後方向の2箇所の薄肉部18(18a,18b)の幅方向中央部に円孔100をそれぞれ設けることで、従来のロードセルでは明確でなかった、ねじりの回転中心となる前後に延びる仮想中立軸がロードセル10(起歪体12)の幅方向中央に正確に位置決めされることとなって、偏荷重作用時のロードセル10(起歪体12)のねじり回転の正確性および再現性が上がり、誤差が低減する、と考えられる。
【0079】
図10,11は、第1の実施形態のロードセル10を適用した電子天秤を示し、
図10は同電子天秤の斜視図、
図11は同電子天秤の縦断面図(
図10に示すXI−XI線に沿う断面図)である。
【0080】
電子天秤90は、平面視略矩形状に形成された合成樹脂製の秤本体ケース102の上面にその固定部16が固定されて、水平に片持ち梁状に配設されたロードセル10と、ロードセル10の可動部17に連結された計量皿130と、秤本体ケース102に一体成形された中空立壁状の表示部105内に設けられて、ロードセル10で検出した出力を演算処理等する電子回路基板(図示せず)とを備えて構成されている。なお、符号131は、計量皿130(皿本体132)をロードセル10の可動部17に固定する固定ネジ、符号104は、ロードセル10の固定部16を秤本体ケース102上面壁に固定する固定ネジである。また、
図11において、過荷重防止用ストッパ30については、図示を省略している。
【0081】
ロードセル10(起歪体12)の固定部16には、ロードセル20と電子回路基板とを接続する電気配線110を挿通するための上下貫通孔16aが設けられ、該上下貫通孔16aは、秤本体ケース102内に連通している。
【0082】
即ち、ロードセル10(起歪体12)の上側の薄肉部18,18の上面には歪ゲージ20が貼り付けられるとともに、固定部16の上面には、歪ゲージ20と電気的に接続された、出力補償用抵抗等のブリッジ回路を構成するフレキシブルプリント配線板120が貼り付けられている。
【0083】
そして、フレキシブルプリント配線板120から導出する電気配線122が上下貫通孔16aを貫通して秤本体ケース102内に導出し、秤本体ケース102に一体化された中空の表示部50内の電子回路基板(図示せず)に接続されている。
【0084】
ロードセル10(起歪体12)の上面側には、電装部品(歪ゲージ20やフレキシブルプリント配線板120)や電気配線122を覆うシリコン絶縁被覆124が形成されて、これらの電装部品の導電部における絶縁と防水が確保されている。
【0085】
さらには、上下貫通孔16aには、密閉手段であるシリコン材124aが装填されて、秤本体ケース12内が確実に密閉されている。
【0086】
また、秤本体ケース102の正面側には、ロードセル10の一側面に沿って延在する中空立壁状の表示部105が該秤本体ケース102に一体的に設けられている。中空の表示部105の前面側には、液晶画面106が設けられ、表示部105内の液晶画面106裏面側には、ロードセル10で検出した出力を演算処理するとともに、液晶画面106に表示するデータを制御する電子回路基板(図示せず)が配置されている。
【0087】
一方、秤本体ケース102背面側のコーナ部には、左右一対の中空突出部107が中空の表示部105と同一高さに形成されて、秤本体ケース102の上面に、中空の表示部105と左右一対の中空突出部107,107に囲まれたロードセル収容室Sが形成されている。中空突出部105の外側面は、秤本体ケース102の外側面と面一に形成されて、電子天秤100の側方および後方からの外観意匠の統一が図られている。
【0088】
被測定物を載せる計量皿130は、ロードセル10の可動部17に連結される透明合成樹脂製の皿本体132と、皿本体132の上面側を覆う合成樹脂製の皿カバー134で構成されている。皿本体132は、段付きプレート状の天板部135と筒形状の透明カバー136が一体成形されている。天板部135は、ロードセル10の可動部17の上面に連結される。また、天板部135は皿カバー134と略同形状に形成されており、皿本体132(天板部135)に対し皿カバー134が着脱自在に被着されている。
【0089】
透明カバー136は、ロードセル配設空間Sに配設されるロードセル10の周りを余裕をもって囲むことのできる大きさに形成される。また、透明カバー136は、その下端が秤本体ケース102の上方に配置されるとともに秤本体ケース102の上面に対して所定のクリアランスを持って配置されている。
【0090】
このため、ロードセル配設空間Sが汚れた場合には、透明カバー136を通して外部から汚れが視認できるので、必要に応じて計量皿130(皿本体132)と一体に透明カバー136を取り外して、ロードセル配設空間S全体を開放し、ロードセル20周辺領域の汚れを水等で簡単に洗浄できる。
【0091】
また、下ビーム15の2箇所の薄肉部18には、それぞれ円孔100が設けられているが、この円孔100が洗浄水の排水孔として作用するので、ロードセル配設空間Sを水で洗浄する場合、薄肉部18の貫通孔13形成位置に水滴が残りにくい。
【0092】
また、防水を必要とする歪ゲージ20やフレキシブルプリント配線板120等は、ロードセル10(起歪体12)の上面に設けられているので、ロードセル20周辺領域を水等で洗浄する際に濡れるおそれもない。
【0093】
図12は、請求項3に対応する第2の実施形態のロードセルの縦断面図である。
【0094】
この第2の実施形態のロードセル10Aでは、下ビーム15の2箇所の薄肉部18(18a,18b)には、歪ゲージ20がそれぞれ接着されるとともに、上ビーム14の2箇所の薄肉部18(18a,18b)には、起歪体12の幅方向中央位置に円孔100がそれぞれ設けられている。
【0095】
その他の構造は、前記した第1の実施形態のロードセル10と同一であるので、同様の構成・作用を有する部材については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0096】
図13は、請求項4に対応する第3の実施形態のロードセルの縦断面図である。
【0097】
この第3の実施形態のロードセル10Bでは、上下一対のビーム14,15の固定部16寄りの薄肉部18(18a,18b)には、歪ゲージ20がそれぞれ接着されるとともに、上下一対のビーム14,15の可動部17寄りの薄肉部18(18a,18b)には、起歪体12の幅方向中央位置に円孔100がそれぞれ設けられている。
【0098】
その他の構造は、前記した第1の実施形態のロードセル10と同一であるので、同様の構成・作用を有する部材については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0099】
図14は、請求項5に対応する第4の実施形態のロードセルの縦断面図である。
【0100】
この第4の実施形態のロードセル10cでは、上下一対のビーム14,15の可動部17寄りの薄肉部18(18a,18b)には、歪ゲージ20がそれぞれ接着されるとともに、上下一対のビーム14,15の固定部16寄りの薄肉部18(18a,18b)には、起歪体の幅方向中央位置に円孔100がそれぞれ設けられている。
【0101】
その他の構造は、前記した第1の実施形態のロードセル10と同一であるので、同様の構成・作用を有する部材については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0102】
なお、前記した第1〜第4の実施の形態では、薄肉部18に設ける孔100を円形として説明したが、楕円などの「略円形」であればよい。
【0103】
また、薄肉部18に設ける孔100の形状は、矩形などの略円形以外の形状であっても、円孔100と同様の作用・効果が奏されるが、薄肉部18に矩形の孔等の「略円形」以外の孔を設けるための加工が難しく、それだけ費用と時間がかかるため、「略円形」の孔であることが望ましい。
【0104】
また、薄肉部18に設ける円孔100などの略円形の孔の幅方向の長さW1は、
図6(a)に示すように、歪ゲージ20を接着する薄肉部18に発生するエッジロードの値が小さくなって、ロードセル(起歪体12)のロバーバル機構としての適正な動作を保証できる大きさであればよく、例えば、起歪体12の幅Wに対し略0.1W〜略0.8Wの範囲が望ましい。
【0105】
略円形の孔の幅方向の長さW1が略0.1W未満では、孔が小さすぎて、孔の周縁端部にはエッジロードではなく、応力集中に伴う過大応力が発生し、ロバーバル機構が成立しない。一方、略円形の孔の幅方向の長さW1が略0.8Wを超えると、孔の周縁端部と薄肉部の左右の端部間の距離が接近し過ぎるため、接近して発生するエッジロード同士が重なり合って、薄肉部に応力集中に伴う過大応力が発生し、ロバーバル機構が成立しない。
【0106】
また、略円形の孔を設ける薄肉部18の厚さについては、薄肉部の強度を補うために、歪ゲージ20を接着する薄肉部(略円形の孔を設けない薄肉部)18よりも厚く形成してもよい。