(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992117
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】非対称形クリンプを有するソーワイヤ
(51)【国際特許分類】
B24B 27/06 20060101AFI20160901BHJP
B28D 5/04 20060101ALI20160901BHJP
B24D 11/00 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
B24B27/06 E
B28D5/04 C
B24D11/00 G
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-561291(P2015-561291)
(86)(22)【出願日】2014年8月1日
(65)【公表番号】特表2016-509544(P2016-509544A)
(43)【公表日】2016年3月31日
(86)【国際出願番号】KR2014007142
(87)【国際公開番号】WO2015119343
(87)【国際公開日】20150813
【審査請求日】2015年3月27日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0012785
(32)【優先日】2014年2月4日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515084708
【氏名又は名称】ホンドク インダストリアル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イム, スン ホ
【審査官】
大山 健
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−121101(JP,A)
【文献】
特開2013−202743(JP,A)
【文献】
特開2004−276207(JP,A)
【文献】
特開2012−139743(JP,A)
【文献】
特開2010−023224(JP,A)
【文献】
特表2008−519698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 27/06
B24D 11/00
B28D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続したクリンプが形成されたソーワイヤにおいて、
第1領域11と、前記第1領域11から曲がって延長し、前記第1領域11の長さより長い第2領域12と、を有する非対称形単位クリンプ10が連続して形成されてジグザグ状をなし、
前記第1領域11と前記第2領域12との長さの比は、1:1.2ないし1:4であり、
前記ソーワイヤは、前記第1領域11から前記第2領域12の方向に進むことを特徴とする非対称形クリンプを有するソーワイヤ。
【請求項2】
前記第1領域11と前記第2領域12とが出合う頂点Pにおいて、前記ソーワイヤの長手方向に平行に延長される仮想線L1を考慮するとき、
前記第1領域11が、前記仮想線L1に対して傾いた角度は、前記第2領域12が、前記仮想線L1に対して傾いた角度より大きいことを特徴とする請求項1に記載の非対称形クリンプを有するソーワイヤ。
【請求項3】
連続して配置される前記非対称形単位クリンプ10は、前記ソーワイヤの長手方向に進むとき、一方向に回転するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の非対称形クリンプを有するソーワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非対称形クリンプを有するソーワイヤに係り、切削材の供給能を向上させ、切削材の維持力を向上させ、切断速度を改善し、削粉(cutting scrap)の排出を円滑にし、被切断体の切断面の質的低下を防止し、ウェーハのような最終生産物の生産性を向上させ、不良率を低下させる非対称形クリンプを有するソーワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
ソーマシンに利用されるソーワイヤは、一般的には、炭化ケイ素粉、ダイヤモンド粉などの研磨用粒子とオイルなどとが混合された切削材と共に、被切断体に適切な圧力で接触しながら走行し、前記被切断体を切断する。
【0003】
ソーワイヤを利用して、硬質材料、例えば、シリコンブロックを切断する方法は、次の通りである。複数の溝を有する複数のローラにワイヤを巻き付け、前記ワイヤの列を走行させながら、被切断体であるシリコンブロックを一定した力で押し付ける。このとき、ワイヤの列と被切断体との間に切削材を流し、研磨用粒子の切削作用によって、シリコンブロックをウェーハに切断する。切断工程の効率と、切断されたウェーハの厚み品質は、切断される硬質材ブロックの特性、及びソーワイヤの速度のような多くの因子によって左右される。そこにおいて、ソーワイヤが、切削材をいかに多く伴うかということが重要な因子である。
【0004】
シリコンブロックの切断に使用されるワイヤの各列は、ローラに、一般的に1,000〜3,000回ほど巻き付けられている。このようなワイヤは、硬質材料を切断するために設けられたローラの溝に沿って移動するが、硬質材料を切断する間、研磨材は、硬質材料だけではなく、ソーワイヤも共に摩耗させ、ワイヤの太さが細くなるという問題がある。また、切断初期には、表面に存在する軟質のメッキ層によって、研磨材を多く伴うことができたが、硬質材料の切断と共にメッキ層が除去され、素地層が露出されながら、研磨材を伴う能力が低下する。
【0005】
従って、ソーワイヤの使用中、切削材の同伴能を向上させる必要がある。特許文献1には、切削材をして、ソーワイヤに良好に伴わせるソーワイヤが開示されている。それは、ソーワイヤの外面を変更することによって達成される。その1つの実施形態によれば、マイクロキャビティ(micro−cavity)がソーワイヤの表面に配置される。他の実施形態によれば、ソーワイヤは、円周方向に多数個の溝を有する。たとえそのような解決策が切削材の同伴性を向上させるとしても、ワイヤの外面を変更することは、一般的に、多くの時間とコストとがかかるという短所がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第90/12670号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前述の問題点を解決するために創出されたものであり、特に、切削材の供給能を向上させ、切削材の維持力を向上させ、切断速度を改善し、削粉の排出を円滑にさせ、被切断体の切断面の質的低下を防止し、ウェーハのような最終生産物の生産性を向上させ、不良率を低下させる非対称形クリンプを有するソーワイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の目的を果たすための、本発明の非対称形クリンプを有するソーワイヤは、連続したクリンプが形成されたソーワイヤにおいて、第1領域と、前記第1領域から曲がって延長し、前記第1領域の長さより長い第2領域と、を有する非対称形単位クリンプが連続して形成されてジグザグ状をなし、前記第1領域と前記第2領域との長さの比は、1:1.2ないし1:4であることを特徴とする。
【0009】
また、前記第1領域の傾きは、前記第2領域の傾きより大きいことが望ましい。
【0010】
また、連続して配置される前記単位クリンプは、前記ワイヤの長手方向で進むとき、一方向に回転するように形成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明による非対称形クリンプを有するソーワイヤは、切削材の供給能を向上させ、切削材の維持力を向上させ、切断速度を改善し、削粉の排出を円滑にさせ、被切断体の切断面の質的低下を防止し、ウェーハのような最終生産物の生産性を向上させ、不良率を低下させる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態による非対称形クリンプを有するソーワイヤの側面図である。
【
図3】
図1の使用時、切削材の同伴性を概略的に示す図面である。
【
図4】本発明の他の実施形態による非対称形クリンプを有するソーワイヤの斜視図を概念的に図示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、ワイヤソーマシンに使用されるソーワイヤに係り、半導体、セラミックス、超硬合金などの硬質材料の切断用及びスライス用に利用される。
【0014】
以下、本発明による望ましい実施形態について、添付された図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態による非対称形クリンプを有するソーワイヤの側面図であり、
図2は、
図1の要部を抜粋した断面図であり、
図3は、
図1の使用時、切削材の同伴性を概略的に示す図面である。
【0016】
まず、
図1及び
図2を参照すれば、本発明の一実施形態による非対称形クリンプを有するソーワイヤ100は、単位クリンプ10が連続して形成されるソーワイヤにおいて、前記単位クリンプ10が非対称形になることを特徴とする。
【0017】
具体的には、前記単位クリンプ10は、第1領域11と第2領域12とを含む。
【0018】
前記第1領域11は、前記第2領域12より短い長さを有する区間である。前記第2領域12は、前記第1領域11から曲がって延長し、前記第1領域11の長さより長い。前記第1領域11と前記第2領域12との長さが互いに異なるように形成されるので、前記単位クリンプ10は、非対称形になる。
【0019】
前記単位クリンプ10は、連続して形成され、ジグザグ状をなす。本実施形態において、ソーワイヤ100に、連続した単位クリンプ10が形成されるということは、前記ソーワイヤ100自体がジグザグ状となるように加工されたということを意味する。
【0020】
本実施形態において、前記第1領域11の長さと、前記第2領域12の長さとの比は、1:1.2ないし1:4に形成される。
【0021】
第2領域12の長さが第1領域11の長さの1.2倍未満になるように形成される場合、第2領域12と被切削体とが接触する面積と、前記第1領域11と被切削体とが接触する面積との差が十分に確保されない。従って、接触面積差を誘導し、切削材20の供給量を向上させる効果が微々たるものになる。
【0022】
一方、前記第2領域12の長さが第1領域11の長さの4倍を超える場合には、相対的に、第1領域11の長さが過度に短くなり、実質的にクリンプによる効果が半減してしまうという短所がある。すなわち、ソーワイヤ100に、単位クリンプ10を連続して形成することは、屈曲した単位クリンプ10によって、被切断体の円滑な切削を誘導するものであるが、第2領域12の長さが第1領域11の長さの4倍を超えれば、クリンプとしての機能が効果的に発揮されなくなる。
【0023】
本実施形態によれば、前記第1領域11の傾きは、前記第2領域12の傾きより大きく形成される。
【0024】
具体的には、
図2に図示されているように、前記第1領域11と第2領域12とが出合う頂点Pにおいて、ソーワイヤ100の長手方向に平行して延長される仮想線L1を考慮するとき、前記第1領域11及び第2領域12の傾きは、前記仮想線L1から傾いた角度を意味する。従って、前記第1領域11の傾きは、θ1であり、前記第2領域12の傾きは、θ2として与えられる。
図2に図示されているように、本実施形態によれば、θ1がθ2より大きい。
【0025】
図3は、本発明の一実施形態によるソーワイヤ100を使用して切削を行うときの切削材20の同伴性を示す図面である。
図3に図示されているように、本実施形態によるソーワイヤ100が右側に移動しながら、被切断体、例えば、シリコンインゴットを切断する。前記ワイヤが走行しながら被切断体を加圧し、そのとき、ワイヤと被切断体との間に切削材20を流し、シリコンブロックをウェーハに切断する。前記切削材20は、一般的に、炭化ケイ素粉、ダイヤモンド粉などの研磨用粒子と、オイルなどとが混合して使用される。前記切削材20は、ソーワイヤ100の加圧力によって被切断体と接触し、前記被切断体を効果的に切断する。
【0026】
さらに
図3を参照すれば、本発明の実施形態によれば、第2領域12の長さは、第1領域11の長さより長く形成されており、ソーワイヤ100が右側に進むとき、第2領域12が被切断体を加圧する実質的な接触面が広く確保される。従って、前記第2領域12によって加圧される切削材20の量が多くなる。
【0027】
また、第1領域11の傾きは、第2領域12の傾きより大きく形成されるので、ソーワイヤ100が被切断体を切断するときに発生する削粉が迅速に排出される。具体的には、第1領域11と被切断体とが接触して発生する接触面圧が、相対的に、第2領域12と被切断体とが接触して発生する接触面圧より急激に低くなるので、低くなった接触面圧によって、削粉が効果的に排出されるのである。
【0028】
結果的として、第2領域12の長さが長く形成され、切削材20が被切断体によって広く接触されるので、ソーワイヤ100が被切断体を切断するために、ソーワイヤ100による切削材20の同伴性または維持力が向上し、被切断体の切断速度を向上させる。
【0029】
併せて、第2領域12の長さより短く形成される第1領域11は、その傾きが第2領域12の傾きより大きく形成され、ソーワイヤ100と被切断体とが接触して発生する接触面圧を、第1領域11の区間で相対的に低くし、削粉の迅速な排出を誘導する。
【0030】
そのような作用及び効果によって、被切断体を切断した後、最終的に生産される最終生産物、例えば、ウェーハの生産性を向上させ、ソーマーク(saw mark)のようなウェーハの不良を低減させるという効果を提供する。
【0031】
一方、
図4は、本発明の他の実施形態による非対称形クリンプを有するソーワイヤ100の斜視図を概念的に図示している。
図4において、
図1と同一の構成については、同一の参照番号を付す。
【0032】
図4に図示されているように、本実施形態による非対称形クリンプを有するソーワイヤ100は、連続して配置される前記単位クリンプ10が、前記ソーワイヤ100の長手方向に進むとき、一方向に回転するように形成される。
【0033】
図4のZ軸の端から原点に向け、前記ソーワイヤ100を見るとき、前記単位クリンプ10は、原点から前記Z軸の端に向かう長手方向に進むとき、反時計回り方向に回転する。具体的には、最初原点に存在する単位クリンプ10は、XZ平面上に形成され、前記単位クリンプ10に続いて2番目に連続して形成された単位クリンプ10は、YZ平面上に形成される。2番目に形成された単位クリンプ10は、最初の単位クリンプ10より90°ほど反時計回り方向に回転した状態である。
【0034】
次に、3番目の単位クリンプ10は、さらにXZ平面上に形成される。3番目に形成された単位クリンプ10は、2番目の単位クリンプ10より90°ほど反時計回り方向にさらに回転した状態である。そして、4番目の単位クリンプ10は、YZ平面上に形成される。4番目に形成された単位クリンプ10は、3番目の単位クリンプ10より90°ほど反時計回り方向にさらに回転した状態である。
【0035】
本実施形態において、前記単位クリンプ10が回転する形態で形成されるために、
図1のような状態のソーワイヤ100を形成し、
図1によるソーワイヤ100を一方向に捻って回転させ、結果として、前記単位クリンプ10が回転する形態に具現される。
【0036】
図4は、単位クリンプ10が一方向に回転するということを把握しやすくするために、図面を簡略にして図示したということは言うまでもない。すなわち、
図4によれば、単位クリンプ10は、XZ平面と、YZ平面とに相互に配置されるように図示されているが、単位クリンプ10が形成される平面は、それに限定されるものではない。
【0037】
図1のソーワイヤ100を一方向に捻って回転させることにより、前記単位クリンプ10が共に回転して具現される場合、実質的に、前記単位クリンプ10は、ソーワイヤ100の長手方向に進むとき、螺旋形に形成される。すなわち、第1領域11と第2領域12とが出合う頂点の軌跡が螺旋形をなす。
【0038】
そのように、本実施形態によれば、
図1の実施形態で提供する効果をそのまま提供すると共に、
図1の実施形態に比べ、切削材20の供給能と排出能とが向上し、ソーワイヤ100自体の偏磨耗現象を低減させるという効果を提供する。
【0039】
以上、本発明について、望ましい実施形態を挙げて詳細に説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範疇を外れない範囲内で、さまざまな多くの変形が提供されるのである。従って、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決められるのである。