(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、排ガス規制が強化されたことを受けて、ガソリンエンジンにおける排ガス浄化装置(TWC:三元触媒)における未燃炭化水素浄化性能の故障診断や、ディーゼルエンジンにおける排気ガス浄化装置(DOC:ディーゼル酸化触媒)における未燃炭化水素浄化性能の故障診断の要望が高まっている。これらの用途のために、炭化水素ガスを検出し、その濃度を特定することができるガスセンサが求められている。
【0008】
本発明の発明者は、鋭意検討の結果、Au存在比を高めたPt−Au合金からなる検知電極において、炭化水素ガスに対する触媒活性が不能化させられ、炭化水素ガス濃度と相関のある混成電位が発現するという知見を得た。そして、係る知見に基づけば、炭化水素ガスを感度よく検知可能なガスセンサが実現されるものと思い至った。
【0009】
特許文献1においては、電極の合金組成と検出感度との関係が明確ではない。また特許文献2に開示された発明では、第1の電極および第2の電極が程度の差はあれともに触媒活性を有することを前提としてガス成分濃度を求めるものとなっている。
【0010】
特許文献3には、混成電位型のガスセンサであって、検知電極を単層のサーメット電極として形成するものについては(当然ながらその検知電極の不能化については)、何らの開示も示唆もなされてはいない。特許文献4には、限界電流型のガスセンサのポンピング電極を、Pt−Au合金にてAu存在比が0.01以上0.3以下となるように形成することで、ポンピング電極における酸素に対する選択的分解能が高めることができること、および、Au存在比が0.3を上回ると電極インピーダンスが増加して好ましくないことが開示されてはいるが、混成電位型のガスセンサについては(当然ながらその検知電極については)、何らの開示も示唆もなされてはいない。
【0011】
また、通常のディーゼルエンジンの運転時(定常運転時)に排出される排ガス中の炭化水素ガスの濃度はせいぜい、2000ppmC(ppmCは炭素換算の容量比百万分率を表す、以下同様)程度である。それゆえ、2000ppmC程度までの範囲で炭化水素ガス濃度の測定が行えれば、上述のようなガスセンサとしては十分であるという考え方もある。
【0012】
しかしながら、DPF(Diesel particulate filter;ディーゼル微粒子捕集フィルター)の再生処理を行うべく故意に燃料が噴射された際や、燃料噴射用のインジェクターが故障したときなどは、例えば4000ppmC以上など、2000ppmCを大きく上回る濃度にて炭化水素ガスが排出されることがあるため、このような高濃度範囲においても炭化水素ガス濃度を精度よく測定できるガスセンサに対するニーズは存在する。
【0013】
これに対して、特許文献1および特許文献3に開示されたガスセンサにおける炭化水素ガス濃度の測定範囲は、最大でも2000ppmC程度に過ぎず、係るガスセンサは上述したニーズに応えることはできない。また、特許文献2においてはせいぜい、アンモニアについて900ppm以下の範囲で測定を行う例が開示されているに過ぎず、炭化水素さらには一酸化炭素に関して、何ら記載されてはいない。
【0014】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、従来よりも高い濃度範囲で対象ガス成分の濃度を精度よく測定することができるガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、被測定ガス中の所定ガス成分の濃度を測定する混成電位型のガスセンサに設けられた、前記所定ガス成分を検知するための検知電極であって、貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、前記貴金属がPtとAuであり、前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.1以上0.3未満である、ことを特徴とする。
【0016】
本発明の第2の態様は、被測定ガス中の所定ガス成分の濃度を測定する混成電位型のガスセンサであって、酸素イオン伝導性の固体電解質を主たる構成材料とするセンサ素子と、前記センサ素子の表面に設けられた、第1の態様に係る検知電極と、Ptと酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなる基準電極と、を備え、前記検知電極と前記基準電極との間の電位差に基づいて前記所定ガス成分の濃度を求める、ことを特徴とする。
【0017】
本発明の第3の態様は、第2の態様に係るガスセンサであって、少なくとも前記検知電極を被覆する多孔質層である電極保護層、をさらに備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の第4の態様は、第2または第3の態様に係るガスセンサであって、前記センサ素子が、前記被測定ガスが存在する空間と隔絶されてなり、基準ガスが導入される基準ガス導入空間、をさらに備え、前記基準電極が前記基準ガスの雰囲気下に配置される、ことを特徴とする。
【0019】
本発明の第5の態様は、第4の態様に係るガスセンサであって、前記センサ素子が、前記基準ガス導入空間に連通する多孔質層である基準ガス導入層、をさらに備え、前記基準電極が前記基準ガス導入層に被覆されてなる、ことを特徴とする。
【0020】
本発明の第6の態様は、第4の態様に係るガスセンサであって、前記基準電極を前記基準ガス導入空間に露出させて配置してなる、ことを特徴とする。
【0021】
本発明の第7の態様は、第2または第3の態様に係るガスセンサであって、前記検知電極と前記基準電極が前記センサ素子の表面に配置されてなる、ことを特徴とする。
【0022】
本発明の第8の態様は、第7の態様に係るガスセンサであって、前記検知電極と前記基準電極とが電極保護層に被覆されてなる、ことを特徴とする。
【0023】
本発明の第9の態様は、第2ないし第8の態様のいずれかに係るガスセンサであって、前記所定ガス成分が炭化水素または一酸化炭素の少なくとも一種類である、ことを特徴とする。
【0024】
本発明の第10の態様は、第1の態様に係るガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを製造する方法であって、Pt粉末と、Auイオンを含む塩もしくは有機金属錯体を溶媒へ溶解させてなるイオン含有液体と、を出発原料に含むようにするとともに、前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が0.5wt%以上2wt%未満となるように、前記出発原料を作製する、ことを特徴とする。
【0025】
本発明の第11の態様は、第1の態様に係るガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを製造する方法であって、Pt粉末にAuをコーティングしたコーティング粉末を出発原料に含むようにするとともに、前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が0.5wt%以上2wt%未満となるように、前記出発原料を作製する、ことを特徴とする。
【0026】
本発明の第12の態様は、第2ないし第9の態様のいずれかに係るガスセンサの製造方法であって、前記検知電極を、第10または第11の態様に係る製造方法を用いて製造された導電性ペーストを用いて形成する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明の第1ないし第
12の態様によれば、8000ppmC〜16000ppmCという高い濃度範囲で未燃炭化水素ガスの濃度を測定することができるガスセンサを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<第1の構成>
図1は、本発明の第1の構成に係るガスセンサ100Aの構成の一例を概略的に示す断面模式図である。
図1(a)は、ガスセンサ100Aの主たる構成要素であるセンサ素子101Aの長手方向に沿った垂直断面図である。また、
図1(b)は、
図1(a)のA−A’位置におけるセンサ素子101Aの長手方向に垂直な断面を含む図である。
【0031】
本発明の第1の構成に係るガスセンサ100Aは、いわゆる混成電位型のガスセンサである。ガスセンサ100Aは、概略的にいえば、ジルコニア(ZrO
2)等の酸素イオン伝導性固体電解質たるセラミックスを主たる構成材料とするセンサ素子101Aの表面に設けた検知電極10と、該センサ素子101Aの内部に設けた基準電極20との間に、混成電位の原理に基づいて両電極近傍における測定対象たるガス成分の濃度の相違に起因して電位差が生じることを利用して、被測定ガス中の当該ガス成分の濃度を求めるものである。
【0032】
より具体的には、ガスセンサ100Aは、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関の排気管内に存在する排ガスを被測定ガスとし、該被測定ガス中の所定ガス成分の濃度を、好適に求めるためのものである。なお、本明細書においては、測定対象たる所定ガス成分が未燃炭化水素ガスである場合を例として、説明を行うものとする。係る場合において、未燃炭化水素ガスには、C
2H
4、C
3H
6、n−C8などの典型的な炭化水素ガス(化学式上、炭化水素に分類されるもの)に加えて、一酸化炭素(CO)も含むものとする。なお、被測定ガス中に複数種類の未燃炭化水素ガスが存在する場合は、検知電極10と基準電極20の間に生じる電位差はそれら複数種類の未燃炭化水素ガスの全てが寄与した値となるので、求められる濃度値も、それら複数種類の未燃炭化水素ガスの濃度の総和となる。
【0033】
また、センサ素子101Aには、上述した検知電極10および基準電極20に加えて、基準ガス導入層30と、基準ガス導入空間40と、表面保護層50とが主に設けられてなる。
【0034】
なお、本発明の第1の構成においては、センサ素子101Aが、それぞれが酸素イオン伝導性固体電解質からなる第1固体電解質層1と、第2固体電解質層2と、第3固体電解質層3と、第4固体電解質層4と、第5固体電解質層5と、第6固体電解質層6との6つの層を、図面視で下側からこの順に積層した構造を有し、かつ、主としてそれらの層間あるいは素子外周面に他の構成要素を設けてなるものとする。なお、それら6つの層を形成する固体電界質は緻密な気密のものである。係るセンサ素子101Aは、例えば、各層に対応するセラミックスグリーンシートに所定の加工および回路パターンの印刷などを行った後にそれらを積層し、さらに、焼成して一体化させることによって製造される。
【0035】
ただし、ガスセンサ100Aがセンサ素子101Aをこのような6つの層の積層体として備えることは必須の態様ではない。センサ素子101Aは、より多数あるいは少数の層の積層体として構成されていてもよいし、あるいは積層構造を有していなくともよい。
【0036】
以下の説明においては、便宜上、図面視で第6固体電解質層6の上側に位置する面をセンサ素子101Aの表面Saと称し、第1固体電解質層1の下側に位置する面をセンサ素子101Aの裏面Sbと称する。また、ガスセンサ100Aを使用して被測定ガス中の未燃炭化水素ガスの濃度を求める際には、センサ素子101Aの一方端部である先端部E1から少なくとも検知電極10を含む所定の範囲が、被測定ガス雰囲気中に配置され、他方端部である基端部E2を含むその他の部分は、被測定ガス雰囲気と接触しないように配置されるものとする。
【0037】
検知電極10は、被測定ガスを検知するための電極である。検知電極10は、Auを所定の比率で含むPt、つまりはPt−Au合金と、ジルコニアとの多孔質サーメット電極として形成されてなる。係る検知電極10は、センサ素子101Aの表面Saであって、長手方向の一方端部たる先端部E1寄りの位置に平面視略矩形状に設けられてなる。なお、ガスセンサ100Aが使用される際には、センサ素子101Aのうち、少なくとも係る検知電極10が設けられている部分までが、被測定ガス中に露出する態様にて配置される。
【0038】
また、検知電極10は、その構成材料たるPt−Au合金の組成を好適に定めることによって、所定の濃度範囲について、未燃炭化水素ガスに対する触媒活性が不能化されてなる。つまりは、検知電極10での未燃炭化水素ガスの分解反応を抑制させられてなる。これにより、ガスセンサ100Aにおいては、検知電極10の電位が、当該濃度範囲の未燃炭化水素ガスに対して選択的に、その濃度に応じて変動する(相関を有する)ようになっている。換言すれば、検知電極10は、当該濃度範囲の未燃炭化水素ガスに対しては、電位の濃度依存性が高い一方で、他の被測定ガスの成分に対しては電位の濃度依存性が小さいという特性を有するように、設けられてなる。
【0039】
より詳細には、本発明の第1の構成に係るガスセンサ100Aのセンサ素子101Aにおいては、検知電極10を構成するPt−Au合金粒子の表面におけるAu存在比を好適に定めることで、およそ8000ppmC〜16000ppmCという濃度範囲において電位の濃度依存性が顕著であるように、検知電極10が設けられてなる。詳細は後述するが、これはすなわち、検知電極10が、8000ppmC〜16000ppmCという濃度範囲において未燃炭化水素ガスを好適に検知できるように設けられていることを意味する。
【0040】
なお、本明細書において、Au存在比とは、検知電極10を構成する貴金属粒子の表面のうち、Ptが露出している部分に対する、Auが被覆している部分の面積比率を意味している。本明細書においては、XPS(X線光電子分光法)により得られるAuとPtとについての検出ピークのピーク強度から、相対感度係数法を用いてAu存在比を算出するものとする。Ptが露出している部分の面積と、Auによって被覆されてなる部分の面積が等しいときに、Au存在比は1となる。
【0041】
検知電極10の詳細については後述する。
【0042】
基準電極20は、センサ素子101Aの内部に設けられた、被測定ガスの濃度を求める際に基準となる平面視略矩形状の電極である。基準電極20は、Ptとジルコニアとの多孔質サーメット電極として形成されてなる。
【0043】
なお、基準電極20は、気孔率が10%以上30%以下であり、厚みが5μm以上15μm以下であるように形成されればよい。また、基準電極20の平面サイズは、
図1に例示するように検知電極10に比して小さくてもよいし、後述する第2の構成のように検知電極10と同程度でもよい(
図3参照)。
【0044】
基準ガス導入層30は、センサ素子101Aの内部において基準電極20を覆うように設けられた、多孔質のアルミナからなる層であり、基準ガス導入空間40は、センサ素子101Aの基端部E2側に設けられた内部空間である。基準ガス導入空間40には、未燃炭化水素ガス濃度を求める際の基準ガスとしての大気(酸素)が外部より導入される。
【0045】
これら基準ガス導入空間40と基準ガス導入層30は互いに連通しているので、ガスセンサ100Aが使用される際には基準ガス導入空間40および基準ガス導入層30を通じて基準電極20の周囲が絶えず大気(酸素)で満たされるようになっている。それゆえ、ガスセンサ100Aの使用時、基準電極20は、常に一定の電位を有してなる。
【0046】
なお、基準ガス導入空間40および基準ガス導入層30は周囲の固体電解質によって被測定ガスと接触しないようになっているので、検知電極10が被測定ガスに曝されている状態であっても、基準電極20が被測定ガスと接触することはない。
【0047】
図1に例示する場合であれば、センサ素子101Aの基端部E2の側において第5固体電解質層5の一部が外部と連通する空間とされる態様にて基準ガス導入空間40が設けられてなる。また、第5固体電解質層5と第6固体電解質層6との間においてセンサ素子101Aの長手方向に延在させる態様にて基準ガス導入層30が設けられてなる。そして、センサ素子101Aの重心の図面視下方の位置に、基準電極20が設けられてなる。
【0048】
表面保護層50は、センサ素子101Aの表面Saにおいて少なくとも検知電極10を被覆する態様にて設けられた、アルミナからなる多孔質層である。表面保護層50は、ガスセンサ100Aの使用時に被測定ガスに連続的に曝されることによる検知電極10の劣化を抑制する電極保護層として設けられてなる。
図1に例示する場合においては、表面保護層50は、検知電極10のみならず、センサ素子101Aの表面Saのうち先端部E1から所定の範囲を除くほぼ全ての部分を覆う態様にて設けられてなる。
【0049】
また、
図1(b)に示すように、ガスセンサ100Aにおいては、検知電極10と基準電極20との間の電位差を測定可能な電位差計60が備わっている。なお、
図1(b)においては検知電極10および基準電極20と電位差計60との間の配線を簡略化して示しているが、実際のセンサ素子101Aにおいては、基端部E2側の表面Saもしくは裏面Sbに図示しない接続端子がそれぞれの電極に対応させて設けられてなるとともに、それぞれの電極と対応する接続端子とを結ぶ図示しない配線パターンが表面Saおよび素子内部に形成されてなる。そして、検知電極10および基準電極20と電位差計60とは配線パターンおよび接続端子を通じて電気的に接続されてなる。以降、電位差計60で測定される検知電極10と基準電極20との間の電位差をセンサ出力とも称する。
【0050】
さらに、センサ素子101Aは、固体電解質の酸素イオン伝導性を高めるために、センサ素子101Aを加熱して保温する温度調整の役割を担うヒータ部70を備えている。ヒータ部70は、ヒータ電極71と、ヒータ72と、スルーホール73と、ヒータ絶縁層74、圧力放散孔75とを備えている。
【0051】
ヒータ電極71は、センサ素子101Aの裏面Sb(
図1においては第1固体電解質層1の下面)に接する態様にて形成されてなる電極である。ヒータ電極71を図示しない外部電源と接続することによって、外部からヒータ部70へ給電することができるようになっている。
【0052】
ヒータ72は、センサ素子101Aの内部に設けられた電気抵抗体である。ヒータ72は、スルーホール73を介してヒータ電極71と接続されており、該ヒータ電極71を通して外部より給電されることにより発熱し、センサ素子101Aを形成する固体電解質の加熱と保温を行う。
【0053】
図1に例示する場合であれば、ヒータ72は第2固体電解質層2と第3固体電解質層3とに上下から挟まれた態様にて、かつ、基端部E2から先端部E1近傍の検知電極10の下方の位置に渡って埋設されてなる。これにより、センサ素子101A全体を固体電解質が活性化する温度に調整することが可能となっている。
【0054】
ヒータ絶縁層74は、ヒータ72の上下面に、アルミナ等の絶縁体によって形成されてなる絶縁層である。ヒータ絶縁層74は、第2固体電解質層2とヒータ72との間の電気的絶縁性、および、第3固体電解質層3とヒータ72との間の電気的絶縁性を得る目的で形成されている。
【0055】
圧力放散孔75は、第3固体電解質層3を貫通し、基準ガス導入空間40に連通するように設けられてなる部位であり、ヒータ絶縁層74内の温度上昇に伴う内圧上昇を緩和する目的で形成されてなる。
【0056】
以上のような構成を有するガスセンサ100Aを用いて被測定ガスにおける未燃炭化水素ガス濃度を求める際には、上述したように、センサ素子101Aのうち先端部E1から少なくとも検知電極10を含む所定の範囲のみを、被測定ガスが存在する空間に配置する一方で、基端部E2の側は当該空間とは隔絶させて配置し、基準ガス導入空間40に対し大気(酸素)を供給する。また、ヒータ72によりセンサ素子101Aを適宜の温度400℃〜800℃に、好ましくは500℃〜700℃、より好ましくは500℃〜600℃に加熱する。
【0057】
係る状態においては、被測定ガスに曝されてなる検知電極10と大気中に配置されてなる基準電極20との間に電位差が生じる。ただし、上述のように、大気(酸素濃度一定)雰囲気下に配置されてなる基準電極20の電位は一定に保たれている一方で、検知電極10の電位は、被測定ガス中の未燃炭化水素ガスに対して選択的に濃度依存性を有するものとなっているので、その電位差(センサ出力)は実質的に、検知電極10の周囲に存在する被測定ガスの組成に応じた値となる。それゆえ、未燃炭化水素ガス濃度と、センサ出力との間には一定の関数関係(これを感度特性と称する)が成り立つ。以降の説明においては、係る感度特性につき、検知電極10についての感度特性などと称することがある。
【0058】
実際に未燃炭化水素ガス濃度を求めるにあたっては、あらかじめ、それぞれの未燃炭化水素ガス濃度が既知である相異なる複数の混合ガスを被測定ガスとしてセンサ出力を測定することで、感度特性を実験的に特定しておく。これにより、ガスセンサ100Aを実使用する際には、被測定ガス中の未燃炭化水素ガスの濃度に応じて時々刻々変化するセンサ出力を、図示しない演算処理部において感度特性に基づき未燃炭化水素ガス濃度に換算することによって、被測定ガス中の未燃炭化水素ガス濃度をほぼリアルタイムで求めることができる。
【0059】
<第1の構成の変形例>
図2は、ガスセンサ100Aの変形例であるガスセンサ100Bの構成の一例を概略的に示す断面模式図である。
図2(a)は、ガスセンサ100Bの主たる構成要素であるセンサ素子101Bの長手方向に沿った垂直断面図である。また、
図2(b)は、
図2(a)のB−B’位置におけるセンサ素子101Bの長手方向に垂直な断面を含む図である。
【0060】
ガスセンサ100Bは、ガスセンサ100Aのセンサ素子101Aの基準ガス導入空間40を検知電極10の下方にまで延在させる一方で、基準ガス導入層30を省略し、かつ、基準電極20を基準ガス導入空間40に露出させる態様にて設けたものである。それ以外の構成についてはガスセンサ100Aと同じである。それゆえ、センサ出力の生じ方も、ガスセンサ100Aの場合と同じである。すなわち、ガスセンサ100Bも、ガスセンサ100Aと同様に、いわゆる混成電位型のガスセンサである。
【0061】
よって、以上のような構成を有するガスセンサ100Bにおいても、ガスセンサ100Aによると同様にセンサ素子101Bを配置し、あらかじめ感度特性を特定しておくことで、被測定ガス中の未燃炭化水素ガス濃度を求めることができる。
【0062】
<第2の構成>
図3は、本発明の第2の構成に係るガスセンサ100Cの構成の一例を概略的に示す断面模式図である。
図3(a)は、ガスセンサ100Cの主たる構成要素であるセンサ素子101Cの長手方向に沿った垂直断面図である。また、
図3(b)は、
図3(a)のC−C’位置におけるセンサ素子101Cの長手方向に垂直な断面を含む図である。
【0063】
ガスセンサ100Cも、ガスセンサ100Aおよび100Bと同様に、いわゆる混成電位型のガスセンサである。ただし、ガスセンサ100Cのセンサ素子101Cは、上述したセンサ素子101Aやセンサ素子101Bとは異なり、検知電極10のみならず基準電極20についてもセンサ素子101Cの表面Saに配置してなるとともに表面保護層50で被覆してなる。なお、それぞれの電極の構成材料自体は、ガスセンサ100Aおよび100Bと同じである。
【0064】
その一方で、内部に基準ガス導入空間40(さらには基準ガス導入層30)および圧力放散孔75は備えていない。その他の構成要素についてはガスセンサ100Aおよび100Bと同様である。なお、
図3に示す場合においては、検知電極10と基準電極20とは、長手方向において同じ位置に設けられてなる(
図3(b)参照)が、これは必須の態様ではなく、長手方向に沿って配置されていてもよい。
【0065】
以上のような構成を有するガスセンサ100Cを用いて被測定ガスにおける未燃炭化水素ガス濃度を求める際には、ガスセンサ100Aおよび100Bとは異なり、検知電極10に加えて基準電極20もが被測定ガスに曝される態様にて、センサ素子101Cを配置する。それゆえ、検知電極10と基準電極20とは同じ雰囲気に曝されることになるが、両電極の構成材料はガスセンサ100Aおよび100Bと同じであるので、検知電極10の電位が未燃炭化水素ガス濃度に対して選択的に変動する点も同じである。一方で、Ptとジルコニアとの多孔質サーメット電極として形成されてなる基準電極20では、検知電極10とは異なり、特定のガス成分に対し触媒活性が抑制されているわけではないことから、結果として、未燃炭化水素ガス以外のガス成分に対する挙動は検知電極10と基準電極20とにおいて同じとなる。それゆえ、ガスセンサ100Cにおいても、センサ出力は実質的に、被測定ガス中に存在する未燃炭化水素ガスに応じて変動することになる。
【0066】
従って、ガスセンサ100Cにおいても、ガスセンサ100Aおよび100Bによると同様に、あらかじめ感度特性を特定しておくことで、被測定ガス中の未燃炭化水素ガス濃度を求めることができる。
【0067】
<検知電極の詳細>
上述のように、ガスセンサ100Aないし100Cにおいては、検知電極10を、未燃炭化水素ガスに対する触媒活性が所定の濃度範囲について不能化されるように形成する。これは、検知電極10の導電性成分(貴金属成分)として、主成分である白金(Pt)に加えて金(Au)を含有させることで実現される。
【0068】
なお、Au存在比が大きいほど、検知電極10を構成する貴金属粒子の表面にAuが濃化する傾向がある。より詳細には、PtリッチなPt−Au合金粒子の表面近傍に、AuリッチなPt−Au合金が形成された状態となる傾向がある。そして、係る傾向が大きいほど、検知電極10における触媒活性が不能化される傾向が大きくなる。
【0069】
図4は、検知電極10におけるAu存在比をそれぞれに違えた8種類のセンサ素子101Aにおける感度特性(炭化水素ガス濃度に対するセンサ出力の変化)を例示する図である。係る感度特性を得た際のセンサ出力の測定条件と、Au存在比の分析条件は以下の通りである。
【0070】
(センサ出力の測定条件)
素子制御温度:600℃;
ガス雰囲気:O
2=10%、H
2O=5%、C
2H
4=200−16000ppmC;
ガス流量:5L/min;
圧力:1atm;
電極保護層:気孔率40%、12μm。
【0071】
(Au存在比の分析条件)
分析装置:X線光電子分光装置(島津/KRATOS製 ACXIS−HS);
X線源:モノクロAl;
管電圧・管電流:15kV、15mA;
レンズ条件:Magnetic(分析面積120umφ);
分解能:Pass Energy80;
走査速度:200eV/min(1eVステップ)。
【0072】
図4によると、検知電極10におけるAu存在比が0の場合(つまりは検知電極における金属成分をPtのみとした場合)、グラフは横ばいであり、つまりは炭化水素ガス濃度が高くてもセンサ出力は全く得られない。
【0073】
しかしながら、Au存在比が0.1→0.2→0.3と大きくなるにつれ、高濃度側から徐々にグラフに傾きが生じ始める。そして、Au存在比が0.1の場合には8000ppmC以上の範囲で、Au存在比が0.2の場合には、4000ppmC以上の範囲で、線型に近い関係がみられるようになっている。
【0074】
ところが、Au存在比が0.3→0.5→0.7→1.1→3.4とさらに大きくなると、低濃度側でのグラフの傾きはさらに大きくなる一方で、高濃度側でセンサ出力は飽和する傾向が見られる。具体的には、Au存在比が0.3の場合には12000ppmC以下ではグラフの傾きは大きいものの、12000ppmC上ではほぼ横ばいとなっている。Au存在比が1.1および3.4の場合には、2000ppm以下でグラフの傾きは大きいものの、2000ppmC以上でセンサ出力はほぼ飽和してしまっている。
【0075】
測定精度の確保という観点からは、センサ出力が2000ppmCあたりおおよそ50mVの変化量で変化することが望ましいと経験的に考えられるが、
図4は、Au存在比が0.3以上の検知電極10を用いた場合、12000ppmC以下では優れた測定精度が得られるものの、Au存在比が0.3の場合であっても12000ppmCを超える範囲においては測定精度を確保することが難しくなることを示している。
【0076】
その一方で、Au存在比が0.2の検知電極10の場合、8000ppmC以下の範囲では、センサ出力値はほぼ0に近い値であるが、8000ppmC以上の範囲では、少なくとも16000ppmCに至るまで、2000ppmCあたりのセンサ出力の変化量が50mV程度となっている。このことは、係る検知電極10を用いた場合、8000ppmC以上の範囲について、センサ出力値から好適に未燃炭化水素ガス濃度を得ることが可能となることを示している。
【0077】
また、
図4からは、検知電極10におけるAu存在比が0.1の場合であれば、少なくとも8000ppmC〜16000ppmCの範囲で、センサ出力値から好適に未燃炭化水素ガス濃度を得ることが可能となることもわかる。
【0078】
このような、検知電極10のAu存在比とガスセンサの感度特性との関係を踏まえ、検知電極10におけるAu存在比を0.1以上0.3未満とすることで、8000ppmC〜16000ppmCという高濃度範囲での未燃炭化物濃度の測定を可能としたものが、上述したガスセンサ100A〜100Cである。好ましくは、検知電極10におけるAu存在比を0.1以上0.2以下とすることで、ガスセンサ100A〜100Cは、上述したように8000ppmC〜16000ppmCという濃度範囲について他の濃度範囲よりも未燃炭化水素ガスを優れた精度にて検知できるものとなる。
【0079】
なお、
図4に示すように、Au存在比が小さい場合は高濃度側でセンサ出力の濃度依存性が顕著となり、Au存在比が大きい場合には低濃度側でセンサ出力の濃度依存性が顕著となる理由としては、前者の場合、検知電極10中にPtが多いために、排ガス中の未燃炭化水素が三相界面に到達して電気化学反応を起こすまでの間にPtの触媒活性によって燃焼してしまうのに対し、後者の場合、排ガス中の一部の未燃炭化水素は燃焼せず、未燃のまま三相界面に到達するので、電気化学反応が起こって電位が発現するからであると考えられる。
【0080】
なお、検知電極10における貴金属成分とジルコニアとの体積比率は、4:6から8:2程度であればよい。
【0081】
また、ガスセンサ100Aないし100Cがその機能を好適に発現するには、検知電極10の気孔率が10%以上30%以下であり、検知電極10の厚みは、5μm以上であることが好ましい。
【0082】
また、検知電極10の平面サイズは適宜に定められてよいが、例えば、センサ素子長手方向の長さが2mm〜10mm程度で、これに垂直な方向の長さが1mm〜5mm程度であればよい。
【0083】
<センサ素子の製造プロセス>
次に、
図1ないし
図3に例示するような層構造を有する場合を例として、センサ素子101Aないし101Cを製造するプロセスについて説明する。概略的にいえば、
図1ないし
図3に例示するセンサ素子101Aないし101Cは、ジルコニアなどの酸素イオン伝導性固体電解質をセラミックス成分として含むグリーンシートからなる積層体を形成し、該積層体を切断・焼成することによって作製される。酸素イオン伝導性固体電解質としては、例えば、イットリウム部分安定化ジルコニア(YSZ)などが例示される。
【0084】
図5は、センサ素子101Aないし101Cを作製する際の処理の流れを示す図である。センサ素子101Aないし101Cを作製する場合、まず、パターンが形成されていないグリーンシートであるブランクシート(図示せず)を用意する(ステップS1)。具体的には第1ないし第6固体電解質層1〜6に対応する6枚のブランクシートが用意される。併せて、表面保護層50を形成するためのブランクシートも用意される。ブランクシートには、印刷時や積層時の位置決めに用いる複数のシート穴が設けられている。係るシート穴は、パンチング装置による打ち抜き処理などで、あらかじめ形成されている。なお、対応する層が内部空間を構成するグリーンシートの場合、該内部空間に対応する貫通部も、同様の打ち抜き処理などによってあらかじめ設けられる。また、センサ素子101Aないし101Cの各層に対応するそれぞれのブランクシートの厚みは、全て同じである必要はない。
【0085】
各層に対応したブランクシートが用意できると、それぞれのブランクシートに対して種々のパターンを形成するパターン印刷・乾燥処理を行う(ステップS2)。具体的には、検知電極10および基準電極20などの電極パターンや、基準ガス導入層30や、図示を省略している内部配線などが形成される。なお、第1固体電解質層1に対しては、後工程において積層体を切断するときに切断位置の基準とされるカットマークも印刷される。
【0086】
各々のパターンの印刷は、それぞれの形成対象に要求される特性に応じて用意したパターン形成用ペーストを、公知のスクリーン印刷技術を利用してブランクシートに塗布することにより行う。印刷後の乾燥処理についても、公知の乾燥手段を利用可能である。
【0087】
なお、センサ素子101Aないし101Cにおいては、検知電極10の形成に用いる導電性ペーストの調製態様が特徴的である。その詳細については後述する。
【0088】
パターン印刷が終わると、各層に対応するグリーンシート同士を積層・接着するための接着用ペーストの印刷・乾燥処理を行う(ステップS3)。接着用ペーストの印刷には、公知のスクリーン印刷技術を利用可能であり、印刷後の乾燥処理についても、公知の乾燥手段を利用可能である。
【0089】
続いて、接着剤が塗布されたグリーンシートを所定の順序に積み重ねて、所定の温度・圧力条件を与えることで圧着させ、一の積層体とする圧着処理を行う(ステップS4)。具体的には、図示しない所定の積層治具に積層対象となるグリーンシートをシート穴により位置決めしつつ積み重ねて保持し、公知の油圧プレス機などの積層機によって積層治具ごと加熱・加圧することによって行う。加熱・加圧を行う圧力・温度・時間については、用いる積層機にも依存するものであるが、良好な積層が実現できるよう、適宜の条件が定められればよい。
【0090】
上述のようにして積層体が得られると、続いて、係る積層体の複数個所を切断してセンサ素子101Aないし101Cの個々の単位(素子体と称する)に切り出す(ステップS5)。切り出された素子体を、所定の条件下で焼成することにより、上述のようなセンサ素子101Aないし101Cが生成される(ステップS6)。すなわち、センサ素子101Aないし101Cは、固体電解質層と電極との一体焼成によって生成されるものである。その際の焼成温度は、1200℃以上1500℃以下(例えば1400℃)が好適である。なお、係る態様にて一体焼成がなされることで、センサ素子101Aないし101Cにおいては、各電極が十分な密着強度を有するものとなっている。
【0091】
このようにして得られたセンサ素子101Aないし101Cは、所定のハウジングに収容され、ガスセンサ100Aないし100Cの本体(図示せず)に組み込まれる。
【0092】
<検知電極形成用の導電性ペースト>
次に、検知電極10の形成に用いる導電性ペーストについて説明する。検知電極形成用の導電性ペーストは、Auの出発原料としてAuイオン含有液体を用い、該Auイオン含有液体を、Pt粉末と、ジルコニア粉末と、バインダーとを混合することによって作製する。なお、バインダーとしては、他の原料を印刷可能な程度に分散させることができ、焼成によりすべて焼失するものを適宜選べばよい。係る態様での導電性ペーストの作製を、Au液体混合と称することとする。
【0093】
ここで、Auイオン含有液体とは、Auイオンを含む塩もしくは有機金属錯体を、溶媒へ溶解させたものである。Auイオンを含む塩としては、例えばテトラクロロ金(III)酸(HAuCl
4)、塩化金(III)ナトリウム(NaAuCl
4)、二シアノ金(I)カリウム(KAu(CN)
2)などを用いることができる。Auイオンを含む有機金属錯体としては、ジエチレンジアミン金(III)塩化物([Au(en)
2]Cl
3)、ジクロロ(1,10-フェナントロリン)金(III)塩化物([Au(phen)Cl
2]Cl)、ジメチル(トリフルオロアセチルアセトナト)金あるいはジメチル(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)金などを用いることができる。なお、NaやKなどの不純物が電極中に残留しない、取り扱いが容易である、あるいは溶媒へ溶解しやすい、などの観点からは、テトラクロロ金(III)酸やジエチレンジアミン金(III)塩化物([Au(en)
2]Cl
3)を用いることが好ましい。また、溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類の他、アセトン、アセトニトリル、ホルムアミドなどを用いることができる。
【0094】
なお、混合は、滴下などの公知の手段を用いて行うことができる。また、得られた導電性ペースト中においては、Auはイオン(もしくは錯イオン)の状態で存在しているが、上述した作製プロセスを経て得られたセンサ素子101Aないし101Cに形成されてなる検知電極10においては、Auは主として単体あるいはPtとの合金の状態で存在することになる。
【0095】
図6は、Au液体混合にて検知電極形成用の導電性ペーストを作製する場合の、出発原料における全貴金属元素の重量(PtとAuの重量の総和)に対するAuの重量比率(以下、Au添加率と称する)に対し、当該導電性ペーストを用いて形成した検知電極10におけるAu存在比をプロットした図である。なお、
図6(a)の部分拡大図が
図6(b)である。
【0096】
図6からは、Au存在比がAu添加率に対して単調に増加する傾向があること、および、Au添加率を0.5wt%以上2wt%未満とした場合にAu存在比が0.1以上0.3未満となる検知電極10が作製できることがわかる。すなわち、Au添加率を0.5wt%以上2wt%未満とした導電性ペーストを用いることで、Au存在比が0.1以上0.3未満となる検知電極10を好適に形成することができる。
【0097】
<導電性ペースト作製の別態様>
検知電極形成用の導電性ペーストを作製するにあたっては、上述のようにAu液体混合によって作製する代わりに、Ptの粉末にAuをコーティングしたコーティング粉末を出発原料として作製するようにしてもよい。係る場合、当該コーティング粉末と、ジルコニア粉末と、バインダーとを混合することによって、空所内ポンプ電極用の導電性ペーストを作製する。ここで、コーティング粉末としては、Pt粉末の粒子表面をAu膜にて被覆してなる態様のものを用いるようにしてもよいし、Pt粉末粒子にAu粒子を付着させてなる態様のものを用いるようにしてもよい。
【0098】
この場合も、Au存在比が0.1以上0.3未満となる検知電極10を好適に形成することができる。
【0099】
<変形例>
上述の実施の形態においては、検知電極10を、XPSによる測定結果に基づいて算出したAu存在比が0.1以上0.3未満となるように形成しているが、Au存在比の算出は、AES(オージェ電子分光)による測定結果を用いて行われる態様であってもよい。係る場合においては、検知電極10を構成する貴金属粒子の表面におけるAuの存在比率を表す指標として、検知電極10の表面における本実施の形態にて用いているAu存在比と実質的に等価な、あるいは該Au存在比との間で換算可能な指標値が用いられる態様であってもよい。なお、オージェ分析を行う場合は、センサ素子の破断面を分析対象としてAu存在比を求める態様であってもよい。
【0100】
上述の実施の形態においては、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関の排気管内に存在する排ガスを被測定ガスとし、該被測定ガス中の未燃炭化水素ガスの濃度を求める場合について説明しているが、ガスセンサ100Aないし100Cの測定対象は炭化水素ガスに限られるものではない。ガスセンサ100Aないし100Cによれば、NH
3およびNOxについても、上述の実施の形態において説明した態様と同様に、混成電位の原理に基づいて測定をすることが可能である。
【解決手段】被測定ガス中の所定ガス成分の濃度を測定する混成電位型のガスセンサに設けられる、所定ガス成分を検知するための検知電極を、貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、貴金属がPtとAuであり、当該検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうちPtが露出している部分に対するAuが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.1以上0.3未満となるようにする。