【実施例】
【0015】
本発明の実施例は、車輪を回転自在に支持するフォーク部の旋回軸受けの環状の突起部の内径よりわずかに大きくて軸保持部の内径よりわずかに小さい外径の円筒状の胴体部と先端の抜止部と、突起部の内径よりわずかに小さい外径の環状の溝部を有する旋回軸を、鞄に固定される取付基盤に固定し、旋回軸受けに旋回軸を圧入して、旋回軸に旋回自在に結合させて取り付ける鞄用キャスターである。
【0016】
図1に、鞄用キャスターの断面を示す。
図2と
図3に、鞄用キャスターの外観を示す。
図4と
図5に、旋回軸と旋回軸受けの断面を示す。
図6に、鞄用キャスターの組立手順を示す。
【0017】
図1〜
図6において、取付基盤1は、鞄に固定されるベース部材である。旋回軸2は、取付基盤に固定されていて、車輪を旋回自在に保持する部材であり、先端の抜止部21と、抜止部に続く環状の溝部22と、溝部に続く円筒状の胴体部23と、胴体部に続く太い基部24と、基部に続く太くて薄い鍔部25とからなる。胴体部と抜止部の外径は、突起部の内径よりわずかに大きくて軸保持部の内径よりわずかに小さい。溝部の外径は突起部の内径よりわずかに小さい。フォーク部3は、車輪を回転自在に保持するとともに、旋回軸と旋回自在に結合する部材である。旋回軸受け4は、フォーク部のうち、旋回軸と旋回自在に結合する部分であり、胴体部を収容する円筒空洞状の軸保持部41と、溝部に対応する環状の突起部42とからなる。車輪5は、車軸51とリム52とタイヤ53からなり、フォーク部に回転自在に支持される部材である。
【0018】
上記のように構成された本発明の実施例における鞄用キャスターの機能と動作を説明する。最初に、
図1〜
図3を参照しながら、鞄用キャスターの概要を説明する。金属製の旋回軸2がインサート成型されて固定されている取付基盤1が鞄に固定されている。旋回軸2の先端には抜止部21があり、抜止部21に続いて環状の溝部22があり、溝部22に続いて円筒状の胴体部23があり、胴体部23に続いて太い基部24があり、基部24に続いて太くて薄い鍔部25がある。荷重は、旋回軸受け4の上面と旋回軸2の基部24の間にかかる。旋回軸2と旋回軸受け4の間には、曲げ荷重もかかる。
【0019】
フォーク部3は、旋回軸2と旋回自在に結合する旋回軸受け4を有する。旋回軸受け4は、胴体部23を収容する円筒空洞状の軸保持部41と、溝部22に対応する環状の突起部42とからなる。胴体部23と抜止部21の外径は、突起部42の内径よりわずかに大きくて軸保持部41の内径よりわずかに小さく、溝部22の外径は突起部42の内径よりわずかに小さい。わずかに大きいとかわずかに小さいとは、がたつきがなくて滑らかに回転する程度の隙間があることである。具体的には例えば、胴体部23と抜止部21の外径は10mmであり、突起部42の内径は9.4mmである。車軸51とリム52とタイヤ53からなる車輪5が、フォーク部3に回転自在に支持されている。
【0020】
次に、
図4を参照しながら、鞄用キャスターの旋回軸と旋回軸受けの構造を説明する。
図4(a)に、旋回軸と旋回軸受けの構造を概念的に示す。旋回軸2が取付基盤1にインサート成型されている。この構造のため、旋回軸2のブレが少なく静音である。旋回軸2は、特殊な治具が必要ないスナップフィット方式で、フォーク部3の旋回軸受け4に圧入組立てが可能である。旋回軸受け4上部の荷重支持部分に、ワッシャーやベアリングやベアリングホルダーを必要としない。そのため、ベアリングそのものの回転音が無くなり静音である。また、部品点数が少なく低コストである。
【0021】
旋回軸2の胴体部23と基部24との間に、通常の使用状態において旋回軸受け4の上端部のみが当接して軸方向の荷重を支持する平面部が有る。旋回軸2の平面部が、取付基盤1の底面よりわずかに高くなっており、旋回軸受け4は通常、旋回軸2の平面部を荷重支持部として回転している。摩擦部分の半径が小さいので、旋回時に接触して摩擦を生じる円周上の距離が短くなり、摩擦抵抗が小さくなる。また、金属と硬質プラスチックの間の摩擦抵抗は、金属同士や硬質プラスチック同士の間の摩擦抵抗より小さい。そのため、騒音が少なくて旋回軸受け4の回転も良く、動きがスムーズである。取付基盤1の車輪側に、異常な荷重がかかった際に旋回軸受け4の上端部が当接して旋回軸受け4の傾斜角度を制限する底面が有る。
【0022】
図4(b)に、旋回軸と旋回軸受けの撓み状態を概念的に示す。旋回軸2の軸方向と荷重方向がずれているので、軸方向荷重と横方向荷重がある。軸方向荷重は上記のように旋回軸2の平面部で支持しているが、横方向荷重は旋回軸2の撓みモーメントで支持することになる。斜めに衝撃が加わった際のように横方向に強い荷重が掛かったときは、取付基盤1の底面に旋回軸受け4の上端部が当たるようになっている。このように、斜め方向の荷重がある一定値以上になると、旋回軸2でなくて取付基盤1で直接支持することにより、旋回軸2が撓みモーメントで損傷しないようにしてある。
【0023】
次に、
図5を参照しながら、鞄用キャスターの旋回軸と旋回軸受けの具体的な構造を説明する。
図5(a)に、旋回軸2と旋回軸受け4の典型的なサイズを示す。旋回軸2の抜止部21の引掛り代は、片側0.3mm〜0.4mmである。この寸法で、圧入力と抜け耐力がともにバランスの良い値となり、組み立てやすくて壊れないものとなる。垂直方向(軸方向)の引き抜き力に対して、旋回軸2の抜止部21と旋回軸受け4の突起部42が0.3mm幅で当接して、抜けないように保持している。突起部42の軸方向の厚さに余裕を持たせて、旋回軸受け4の強度を維持している。横方向(軸に垂直な方向)の力に対しては、旋回軸2の溝部22と旋回軸受け4の突起部42内側が当接して、横方向の変形を防止している。突起部42の半径方向の厚さに余裕を持たせて、旋回軸受け4の強度を維持している。
図5(b)に、旋回軸2と旋回軸受け4の形状の具体例を示す。
【0024】
次に、
図6を参照しながら、鞄用キャスターの組立方法を説明する。
図6(a)に示すように、旋回軸2の先端に旋回軸受け4の上部を合わせる。
図6(b)に示すように、旋回軸2の先端の抜止部21を、旋回軸受け4の上部のテーパー部で案内させて挿入する。
図6(c)に示すように、旋回軸2の抜止部21と胴体部23を、旋回軸受け4の軸保持部41に挿入する。
図6(d)に示すように、旋回軸2の先端の抜止部21が、旋回軸受け4の突起部42に当たって止まる。
図6(e)に示すように、旋回軸受け4に力を加えて押すと、突起部42が弾性変形して、旋回軸2が圧入される。金属製の抜止部21はほとんど変形しない。旋回軸受け4にさらに力を加えて押すと、
図6(f)に示すように、抜止部21が突起部42を越えて、突起部42が溝部22に嵌って、安定的に保持される。抜止部21があるので、簡単には抜けない。大きな力を逆方向にかけると、
図6(e)に示すような状態になり、抜くことができる。あるいは、旋回軸受け4の突起部42を破壊しなければ抜けないようにして、使用中には決して脱落しないようにすることもできる。
【0025】
上記のように、本発明の実施例では、鞄用キャスターを、車輪を回転自在に支持するフォーク部の旋回軸受けの環状の突起部の内径よりわずかに大きくて軸保持部の内径よりわずかに小さい外径の円筒状の胴体部と先端の抜止部と、突起部の内径よりわずかに小さい外径の環状の溝部を有する旋回軸を、鞄に固定される取付基盤に固定し、旋回軸受けに旋回軸を圧入して、旋回軸に旋回自在に結合させて取り付ける構成としたので、鞄用キャスターの強度を低下させることなく、低コストで簡単に取り替えることができる。