(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記伸縮手段及び前記検出手段は、前記第1取付部と前記第2取付部に端部がそれぞれ接合された平板状の基板と、前記基板の両側面に固着され、印加電圧に応じて前記基板を伸縮させる又は前記基板の伸縮量に応じた電圧を出力する膜型圧電素子と、を有している請求項1に記載の制振構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事実に鑑み、コンパクトで、アクティブ制振が可能な制振
構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明に係る制振構造は、他の構造部材に回転可能に接合された一の構造部材に設けられ、前記一の構造部材の振動時に発生する伸縮量を検出する検出手段と、前記一の構造部材に設けられた第1取付部に一方の端部が接合され、前記他の構造部材に設けられた第2取付部に他方の端部が接合され、伸縮して、前記一の構造部材に前記他の構造部材との接合部を中心とした回転力を付与する伸縮手段と、前記検出手段で検出された伸縮量に基づいて、前記伸縮手段を伸縮させ、前記一の構造部材の振動を打ち消すように前記一の構造部材を変形させる制御手段と、を有し、
前記一の構造部材は、大梁又は小梁であり、前記他の構造部材は、前記大梁の端部が回転可能に接合された柱、又は前記小梁の端部が回転可能に接合された大梁であり、前記伸縮手段は、前記一の構造部材としての前記大梁又は前記小梁の前記端部に回転力を付与することを特徴としている。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、検出手段により、一の構造部材の
振動時に発生する伸縮量が検出され、制御手段により、検出手段で検出された伸縮量に基づいて、
一の構造部材の振動を打ち消すように一の構造部材を変形させるように伸縮手段の伸縮が制御される。
ここに、伸縮手段の一方の端部は、一の構造部材に設けられた第1取付部に接合され、他方の端部は、他の構造部材に設けられた第2取付部に接合されているので、伸縮手段を伸縮させることにより、一の構造部材に、他の構造部材と回転可能に接合された接合部を中心とした回転力を付与し
、一の構造部材を変形させることができる。
【0010】
この結果、制御手段で伸縮手段を伸縮させ、一の構造部材に接合部を中心とした回転力を加えて変形させ、一の構造部材の振動を抑制することが可能となる。即ち、一の構造部材をアクティブに変形させ、振動を制振する制振構造を提供することができる。
ここで、一の構造部材は、大梁又は小梁であり、他の構造部材は、大梁の端部が回転可能に接合された柱、又は小梁の端部が回転可能に接合された大梁である。そして、伸縮手段は、一の構造部材としての大梁又は小梁の端部に、当該一の構造部材の振動を打ち消すように回転力を付与する。これにより、一の構造部材としての大梁又は小梁の振動を低減することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の制振
構造において、前記伸縮手段及び前記検出手段は、前記第1取付部と前記第2取付部に端部がそれぞれ接合された平板状の基板と、前記基板の両側面に固着され、印加電圧に応じて前記基板を伸縮させる又は前記基板の伸縮量に応じた電圧を出力する膜型圧電素子と、を有していることを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、伸縮手段は、基板の両側面に固着された膜型圧電素子に電圧を印加することより基板を伸縮させることができる。また、検出手段は、基板の伸縮量に応じた電圧を膜型圧電素子から出力させることができる。
【0013】
これにより、第1取付部と第2取付部の間に設けられた基板を伸縮させることにより、一の構造部材の変形を抑制することができる。また、基板の伸縮により、第1取付部と第2取付部の間の伸縮を検出することができ、膜型圧電素子を検出手段として利用することができる。更に、圧電素子は膜型とされており、コンパクトな伸縮手段を提供することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の制振構造において、前記第1取付部は、前記一の構造部材の
前記端部の下辺を切り欠いた角部であり、前記第2取付部は、前記他の構造部材から突出された突出部材であることを特徴としている。
【0015】
請求項3に記載の構成とすることにより、一の構造部材の
端部の下辺の角部と他の構造部材の突出し部材との間で伸縮手段が伸縮される。この結果、一の構造部材に、一の構造部材と他の構造部材の間の接合部を中心とした回転力を付与することができる。
この結果、一の構造部材をアクティブに制振することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の制振構造において、前記第1取付部は、前記一の構造部材の
前記端部の下辺から前記一の構造部材と直交する方向へ突出された腕部材であり、前記第2取付部は、前記他の構造部材から突出された突出部材、又は前記他の構造部材の端部であることを特徴としている。
【0017】
請求項4に記載の構成とすることにより、一の構造部材の腕部材と他の構造部材の突出部材との間、又は一の構造部材の腕部材と他の構造部材の端部との間で伸縮手段が伸縮される。この結果、一の構造部材の
端部に、一の構造部材と他の構造部材の間の接合部を中心とした回転力を付与することができる。
この結果、一の構造部材をアクティブに制振することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の制振構造において
、前記他の構造部材
には、前記一の構造部材の前記端部の上辺が回転可能に接合されたことを特徴としている。
【0019】
これにより、
他の構造部材としての大梁と
一の構造部材としての小梁の接合部において、伸縮手段を伸縮させることができる。この結果、接合部を中心とした回転力を
一の構造部材としての小梁に付与し、小梁の変形を抑制することができる。
又は、他の構造部材としての柱と一の構造部材としての大梁の接合部において、伸縮手段を伸縮させることができる。この結果、接合部を中心とした回転力を一の構造部材としての大梁に付与し、大梁の変形を抑制することができる。
【0022】
請求項
6に記載の発明は、請求項1〜
5のいずれか1項に記載の制振構造において、
前記一の構造部材の両側には、前記他の構造部材がそれぞれ配置され、前記一の構造部材の両側の前記端部は、前記他の構造部材にそれぞれ回転可能に接合され、前記伸縮手段は、前記一の構造部材の
両側の前記端部にそれぞれ設けられ、一方の前記伸縮手段は前記検出手段として機能し、他方の前記伸縮手段は、前記一の構造部材を軸線方向に伸縮させるアクチュエータとして機能することを特徴としている。
【0023】
請求項
6に記載の発明によれば、一方の端部に設けられた伸縮手段を検出手段として機能させることにより、一の構造部材の軸線方向の伸縮量を検出することができる。
また、他方の端部に設けられた伸縮手段をアクチュエータとして機能させることにより、一の構造部材に、一の構造部材と他の構造部材の間の接合部を中心とした回転力を付与することができる。
これにより、伸縮量を検出する専用の検出手段を別途設けなくても、同じ構成の伸縮手段だけで、外力による一の構造部材の変形を検出し、同時に一の構造部材の振動を抑制することができる。
【0024】
請求項
7に記載の発明は、請求項1〜
5のいずれか1項に記載の制振構造において、
前記一の構造部材の両側には、前記他の構造部材がそれぞれ配置され、前記一の構造部材の両側の前記端部は、前記他の構造部材にそれぞれ回転可能に接合され、前記一の構造部材の
両側の前記端部には、複数個の前記伸縮手段がそれぞれ並列に設けられ、複数個の前記伸縮手段の少なくとも1個は前記検出手段として機能し、残りの前記伸縮手段は、前記一の構造部材を軸線方向に伸縮させるアクチュエータとして機能することを特徴としている。
【0025】
請求項
7に記載の発明によれば、一の構造部材の
両側の端部に並列に設けられた複数個の伸縮手段うち、少なくとも1個の伸縮手段は、検出手段として機能し、残りの伸縮手段はアクチュエータとして機能する。
この結果、検出手段により、外力を受けて伸縮する一の構造部材の軸線方向の伸縮量が検出される。同時に、アクチュエータにより、検出結果に基づいて一の構造部材に、一の構造部材と他の構造部材の間の接合部を中心とした回転力を付与することができる。
即ち、同じ構成の検出手段とアクチュエータを同じ場所に配置することで、一の構造部材の正確な伸縮量の把握と、一の構造部材の迅速な伸縮制御ができる。
【0028】
請求項
8に記載の発明に係る構造物の制振方法は、他の構造部材に回転可能に接合された一の構造部材に設けられ、伸縮量に応じた電圧を出力する検出手段が、前記一の構造部材の振動時に発生する伸縮量を検出するステップと、制御手段が、前記検出手段からの検出結果に基づいて、前記一の構造部材の振動を打ち消すように前記一の構造部材を変形させる信号を出力するステップと、前記一の構造部材に一方の端部が接合され、前記他の構造部材に他方の端部が接合され、前記制御手段からの出力に応じて伸縮する伸縮手段が、前記一の構造部材に、前記他の構造部材との接合部を中心とした回転力を付与し、前記一の構造部材の振動を打ち消すように前記一の構造部材を変形させるステップと、を有
し、前記一の構造部材は、大梁又は小梁であり、前記他の構造部材は、前記大梁の端部が回転可能に接合された柱、又は前記小梁の端部が回転可能に接合された大梁であり、前記伸縮手段は、前記一の構造部材としての前記大梁又は前記小梁の前記端部に回転力を付与することを特徴としている。
【0029】
請求項
8に記載の発明によれば、最初の伸縮量を検出するステップにおいて、他の構造部材に回転可能に接合された一の構造部材に設けられ、伸縮量に応じた電圧を出力する検出手段が、一の構造部材の振動時に発生する伸縮量を検出する。
次の信号を出力するステップにおいて、制御手段が、検出手段からの検出結果に基づいて、一の構造部材の振動を打ち消すように一の構造部材を変形させる信号を出力する。
【0030】
最後の回転力を付与するステップにより、一の構造部材に一方の端部が接合され、他の構造部材に他方の端部が接合され、制御手段からの出力に応じて伸縮する伸縮手段が、一の構造部材に、前記他の構造部材との接合部を中心とした回転力を付与し、一の構造部材の振動を打ち消すように一の構造部材を変形させる。
以上の構造物の制振方法を実行することにより、コンパクトな制振
構造を用いて、一の構造部材をアクティブに制振できる。
ここで、一の構造部材は、大梁又は小梁であり、他の構造部材は、大梁の端部が回転可能に接合された柱、又は小梁の端部が回転可能に接合された大梁である。そして、伸縮手段は、一の構造部材としての大梁又は小梁の端部に、当該一の構造部材の振動を打ち消すように回転力を付与する。これにより、大梁又は小梁の振動を低減することができる。
【0031】
請求項
9に記載の発明に係る制振構造の施工方法は、一の構造部材の端部に伸縮手段の一方の端部を接合する第1取付部を設け、他の構造部材に前記伸縮手段の他方の端部を接合する第2取付部を設ける工程と、前記一の構造部材の端部を、前記他の構造部材へ回転可能に接合する工程と、前記伸縮手段の一方の端部を前記第1取付部に接合し、他方の端部を前記第2取付部に接合する工程と、前記一の構造部材の振動時に発生する伸縮量を検出する検出手段を、前記一の構造部材に設置する工程と、前記検出手段により検出された前記伸縮量に基づいて、前記伸縮手段を伸縮させ、前記一の構造部材の振動を打ち消すように前記一の構造部材を変形させる制御手段を設置する工程と、を有
し、前記一の構造部材は、大梁又は小梁であり、前記他の構造部材は、前記大梁の端部が回転可能に接合された柱、又は前記小梁の端部が回転可能に接合された大梁であり、前記伸縮手段は、前記一の構造部材としての前記大梁又は前記小梁の前記端部に回転力を付与することを特徴としている。
【0032】
請求項
9に記載の発明によれば、制振構造の施工方法は、最初の工程により、一の構造部材の端部に伸縮手段の一方の端部を接合する第1取付部を設け、他の構造部材に前記伸縮手段の他方の端部を接合する第2取付部が設けられる。
次の工程により、一の構造部材の端部が他の構造部材へ回転可能に接合される。
次の工程により、伸縮手段の一方の端部が第1取付部に接合され、他方の端部が第2取付部に接合される。
【0033】
次の工程により、外力を受けて変形する一の構造部材の振動時に発生する伸縮量を検出する検出手段が、第1取付部と第2取付部の間に設置される。
最後の工程により、伸縮量に基づいて、伸縮手段を伸縮させ、一の構造部材の振動を打ち消すように一の構造部材を変形させる制御手段が設置される。
以上の制振構造の施工方法を実行することにより、コンパクトで、一の構造部材のアクティブ制振が可能な制振
構造を提供できる。
ここで、一の構造部材は、大梁又は小梁であり、他の構造部材は、大梁の端部が回転可能に接合された柱、又は小梁の端部が回転可能に接合された大梁である。そして、伸縮手段は、一の構造部材としての大梁又は小梁の端部に、当該一の構造部材の振動を打ち消すように回転力を付与する。これにより、大梁又は小梁の振動を低減することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、上記構成としてあるので、コンパクトで、アクティブ制振が可能な制振
構造を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1(A)の側面図、
図1(B)の接合部の拡大図に示すように、第1の実施の形態に係る制振
構造は、制振装置10を有している。制振装置10は、大梁14と小梁12の接合部に、アクチュエータ24を取り付けた構成である。
大梁14と小梁12はいずれもH形鋼で形成され、面一とされた上フランジの上にはコンクリート製のスラブ34が設けられている。
【0037】
大梁14と小梁12の接合部は、ガセットプレート52で回転可能に接合(ピン接合)されている。大梁14のウェブには、大梁14のフランジの幅で、小梁12が接合される部位に鋼材製のガセットプレート52が溶接接合されている。ここに、ピン接合とは、いわゆる「設計上のピン接合」を意味し、厳密には、ガセットプレート52により、曲げモーメントM1の一部は吸収される。
【0038】
小梁12の両端部は下辺側(下フランジ12F側)が斜めにカットされ、ウェブ12Wの下部及び下フランジ12Fの端部が三角状に切り欠かれている。下フランジ12Fの切り欠かれた角部13は、後述するアクチュエータ24の取付部とされ、角部13にはアクチュエータ24を取り付けるための貫通孔が設けられている。
小梁12の上部は切り残され、ガセットプレート52の端面と隙間dを開けて突き合わされている。ガセットプレート52と切り残されたウェブ12Wは、接合プレート16で接合されている。
【0039】
ガセットプレート52の端面と小梁12の切り欠かれた端面の間には、隙間部22が形成され、隙間部22には、切欠き端部13に向けて取付金具18がせり出している。
取付け金具18の下部にはフランジ18Fが設けられ、フランジ18Fには、アクチュエータ24を取り付けるための貫通孔が開口されている。取付け金具18は、連結金物20でガセットプレート52に取り付けられ、取付け金具18のフランジ18Fは、小梁12の下フランジ12Fの延長線上に設けられている。
【0040】
小梁12の下フランジと取付け金具18のフランジの間には、伸縮機能を有するアクチュエータ24が配置されている。アクチュエータ24の一方の端部は、小梁12の下フランジ12Fに貫通孔を用いてボルト34で接合され、アクチュエータ24の他方の端部は、取付け金具18のフランジ18Fに貫通孔を用いてボルト35で接合されている。
【0041】
小梁12の下フランジ12Fには、歪センサ25が設けられている。歪センサ25は、小梁12の下フランジの上面に固定され、小梁12の振動時に発生する伸縮量(歪量)を検出する。検出された伸縮量はリード線39でコントローラ28に送信される。
また、アクチュエータ24もリード線39でコントローラ28に接続されおり、コントローラ28は、歪センサ25で検出された伸縮量に基づいてアクチュエータ24を伸縮させる。
【0042】
この構成とすることにより、歪センサ25で検出された小梁12の下フランジ12Fの歪量に基づいて、コントローラ28がアクチュエータ24を矢印Hの方向に伸縮させる。アクチュエータ24は、小梁12の下フランジ12Fの角部13と、取付金具18の間に取り付けられており、アクチュエータ24の伸縮により、接合プレート16を中心とした回転力M1が発生し、小梁12を変形させる。
【0043】
この結果、例えば、地震時に発生した小梁12の振動を検出し、小梁12に逆位相の振動を発生させるよう、アクチュエータ24を伸縮させることで、小梁12の振動を抑制することができる。
これにより、コントローラ28でアクチュエータ24を伸縮させ、小梁12に接合プレート16を中心とした回転力を加えて変形させ、振動を抑制することが可能となる。即ち、小梁12をアクティブに変形させ、小梁12の振動を制振する制振装置を提供することができる。
【0044】
次に、アクチュエータ24について説明する。
図2(A)の側面図、(B)の平面図に示すように、アクチュエータ24は、鋼板で形成された基板30の両側面に膜型圧電素子32を固着した構成である。膜型圧電素子32には、リード線39を介して電力が供給される。
【0045】
図2(C)の斜視図に示すように、膜型圧電素子32は、繊維状に形成された圧電セラミック37を平面状に配置し、圧電セラミック37の両側面に電極が印刷されたポリイミドフィルム38を配置し、それらをエポキシ樹脂36で接合した構成である。
【0046】
この膜型圧電素子32は、圧電セラミック37の両側面に、リード線39を介してコントローラ28から電圧を印加すれば、印加された電圧値に従った歪が圧電セラミック37に生じ、膜型圧電素子32が矢印Pの方向に変形する。
【0047】
これにより、基板30の両側面の膜型圧電素子32に、同時に同じ印加電圧を印加することで、基板30を両側面から矢印Pの方向に伸縮させることができる。即ち、基板30の一端を小梁12切欠かれた角部13に、他端を大梁14の取付金具18に固定することで、印加電圧に応じて小梁12を伸縮させるアクチュエータ24として機能させることができる。また、膜型圧電素子32は、薄膜状とされており、コンパクトなアクチュエータ24を提供できる。
【0048】
更に、膜型圧電素子32は、圧電セラミック37が伸縮され歪が生じると、歪量に比例した電圧を発生させる特性を有している。即ち、膜型圧電素子32は、外力を受けて変形され、基板30の伸縮量に応じた電圧を出力するため、例えば、基板30の一端を小梁12に、他端を大梁14に固定することで、小梁の軸線方向の歪量を検出する歪センサとして機能させることができる。
【0049】
次に、アクチュエータ24の電気特性について説明する。
図3(A)は、印加電圧と発生出力の関係を示す特性図である。横軸は印加電圧(V)であり、縦軸は発生力(N)である。
実験に使用したアクチュエータ24は、厚さ0・4mmの鋼板(基板)の両側面に、膜型圧電素子32を固着させた構成である。
実験結果は、特性PVで示すように、印加電圧(V)が正(特に鋼板の引張側)の範囲では、特性PVはほぼ直線となっており、印加電圧(V)に比例した発生力(N)が得られていることが分かる。
【0050】
図3(B)は、アクチュエータ24の加速度信号と、印加電圧との位相差との関係を示している。横軸は周波数(Hz)であり、縦軸は位相差(度)である。
実験は、
図2に示す膜型圧電素子32にAC電圧を印加し、鋼板30の先端に取り付けた加速度ピックアップ58から検出される加速度信号と、印加電圧との位相差との関係を測定した。
【0051】
実験結果は、特性Qに示すように、周波数(Hz)が高くなるにつれて位相差がほぼ直線状に大きくなり、100Hzで約30度の遅れ位相となっている。実際に発生する梁の振動は10〜20Hz程度であることが既に把握されており、位相遅れは5度から15度程度となり、実用上問題とはならないことが確認された。
【0052】
次に、梁の制振原理について説明する
原理モデルを
図4(A)の側面図に示す。梁60をH形鋼とし、長さをL(mm)、高さ(上フランジ部62と下フランジ部64の鉛直距離)をh(mm)とする。梁60の両端部の上フランジ位置62(上部支持部)をピン接合とし、下フランジ位置(下部支持部64)に、水平方向に引張力F(N)を加える。
このとき、梁60の中央部の静的変位量δ1(mm)は、下式で求められる。
δ1=(2ML
2)/(16EI)
ここに、
E:梁の材料のヤング係数(Pa)
I:梁の断面2次モーメント(mm
4)
M:回転モーメント(N・mm)
L:梁の長さ(mm)
【0053】
一方、梁60の中央部に、鉛直方向の力F(N)を加えた時の変位量δ2(mm)は、下式で求められる。
δ2=(2FL
3)/(48EI)
よって、静的変位量δ1と変位量δ2の比は下式となる。
δ1/δ2=6h/L
【0054】
通常の建築物では、h=L/20mm程度の梁を用いることから、梁60の下端部に引張力F(N)を加えた場合は、梁60の中央に力F(N)を加えた場合と比較して、δ1/δ2=6/20程度の変形を生じさせることができる。
【0055】
次に、シミュレーション結果について説明する。
図4(B)の模式図に示すように、アクチュエータ24に求められる引張力F(N)の大きさを把握するため、梁12の両端部の上部支持部62をピン支持とし、下部支持部64に引張力F=1000Nで、水平方向に引っ張った場合についてシミュレーションを行った。梁60はH形鋼(H400−200−8−13)であり、梁60の長さL=8000mmとした。
【0056】
結果は、梁60の中央部で最大の変化を生じ、鉛直方向の伸縮量δ1-=10μm程度であった。この梁60を共振周波数で加振したとき、中央部変位は最大10倍程度となることが想定される。共振周波数を10Hzとすると、このときの振動加速度は約40gal(cm/s
2)となる。膜型圧電素子32の特性から、膜型圧電素子32を2枚使用すれば、梁60の制振に必要な力F=1000Nを確保することができる。
以上、説明したように、本実施の形態によれば、小梁12のアクティブ制振が可能な、コンパクトな制振装置10を提供することができる。
【0057】
即ち、従来のAMD(Active Mass Damper)やTMD(Tuned Mass Damper)方法に比べ、大きな質量やバネ等を用いる必要がなくなり、これらの搬入や設置のためのコストを軽減できる。また、従来のAMDやTMDが梁上部の中央部に設置されるのに対して、本実施の形態では、梁端部の下フランジ部分に設置する構成である。このため、梁60の上部に設置スペースを必要としない長所も有する。
【0058】
次に、構造物を制振する制振方法について、
図1を用いて説明する。なお、各ステップの詳細は説明済みであり省略する。
先ず、伸縮量を検出するステップを実行する。即ち、小梁12の下フランジ12Fに取り付けた歪センサ25で、小梁12の振動(歪量)を検出する。ここに、歪センサ25は、外力を受けて変形され伸縮量に応じた電圧をコントローラ28に出力する。
【0059】
次に、制御信号を出力するステップを実行する。即ち、コントローラ28が、歪センサ25から入力された検出結果に基づいて、アクチュエータ24に制御信号を出力する。このとき、アクチュエータ24は、一方の端部が大梁14に回転可能に接合された小梁12の角部13に接合され、他端が大梁14に取り付けられた取付金具18に接合されており、検出された小梁12の伸縮と逆位相の伸縮を与えるよう、コントローラ28からアクチュエータ24に制御信号を出力する。
【0060】
最後に、接合部に回転力を付与するステップを実行する。即ち、アクチュエータ24は、平板状の基板30の端部を、小梁12と大梁14にそれぞれ固定されており、基板30の両側面に固着され印加電圧に応じて伸縮する膜型圧電素子32で、基板30を伸縮させる。この基板30の伸縮により、小梁12を伸縮させ、小梁12に大梁14との接合部を中心とした回転力を付与する。
以上のステップを実行することにより、コンパクトなアクチュエータ24を用いて、小梁12のアクティブ制振ができる。
【0061】
次に、制振構造の施工方法について、
図1を用いて説明する。各工程の詳細は説明済みであり省略する。
先ず、伸縮手段を取り付ける工程を実行する。即ち、小梁12の端部を切り欠いてアクチュエータ24の一方の端部を接合する角部13を形成する。また、大梁14のガセットプレート52に取付金具18を接合する。
次に構造部材を接合する工程を実行する。即ち、小梁12の端部を、大梁14へ回転可能に接合プレート16で接合する。
【0062】
次に、アクチュエータを接合する工程を実行する。即ち、アクチュエータ24の一方の端部を、小梁12の角部13に接合する。また、アクチュエータ24の他方の端部を、大梁14の取付金具18に接合する。ここに、アクチュエータ24は、平板状の基板30の両側面に、印加電圧に応じて基板30を伸縮させる膜型圧電素子32が固着された構成とされている。アクチュエータ24は、印加電圧に対応して伸縮され、小梁12に、大梁14との接合部を中心とした回転力を付与する。
【0063】
次に、歪センサを設置する工程を実行する。即ち、歪センサ25を、小梁12の下フランジの上面に設置する。ここに、歪センサ25は、外力を受けて変形され小梁12の伸縮量をコントローラ28に出力する。
【0064】
最後に、コントローラを取付ける工程を実行する。即ち、コントローラ28を設置し、コントローラ28と歪センサ25、及びコントローラ28とアクチュエータ24を、リード線39で連結する。これにより、小梁12の伸縮量に基づいて、コントローラ28からアクチュエータ24に、小梁12を伸縮させる信号を出力させることができる。
以上の工程により、コンパクトなアクチュエータ24を用いた、小梁12のアクティブ制振が可能な、制振構造が提供できる。
【0065】
(第2の実施の形態)
図5に示すように、第2の実施の形態に係る制振装置60は、第1の実施の形態に係る制振装置10と歪センサ26の構成が相違する。相違点を中心に説明する。
制振装置60は、小梁12の両端部のアクチュエータ24の設置位置に、アクチュエータ24と並行に歪センサ26を配置した構成である。ここに、歪センサ25は歪センサ26に置換した構成であり、第1の実施の形態で説明した歪センサ25は不要となる。
【0066】
歪センサ26は、アクチュエータ24と同じ構成であり、上述したように、平板状の鋼製の基板30の両側面に、基板30の伸縮量に応じた電圧を出力する膜型圧電素子32を固着した構成とされている。
これにより、アクチュエータ24の位置で小梁12の伸縮量を検出することができる。また、専用の歪センサ25を必要とせず、アクチュエータ24と歪センサ26の部品の共用が図れる。
【0067】
なお、図示は省略するが、アクチュエータ24と並行に、他のアクチュエータ24を更に追加して設けても良い。これにより、アクチュエータ24の伸縮力を、アクチュエータ24が1個の場合より強くすることができる。
他の構成は、第1の実施の形態に係る制振装置10と同一であり、説明は省略する。
【0068】
(第3の実施の形態)
図6(A)に示すように、第3の実施の形態に係る制振装置62は、第1の実施の形態に係る制振装置10と制振装置の設置場所が相違する。相違点を中心に説明する。
第3の実施の形態は、
図6(B)の柱梁接合部の拡大図に示すように、柱梁架構70の柱梁接合部64へ、制振装置62を展開した構成である。
【0069】
即ち、柱66と大梁68の上部との接合部を、接合プレート69で接合している。大梁68の両端部は下辺が切り欠かれ、切り欠かれた角部47には、アクチュエータ24の一方の端部がボルト34で取り付けられている。また、柱66の側壁(フランジ66Fの表面)には、取付金具67が設けられ、アクチュエータ24の他方の端部がボルト35で取り付けられている。
【0070】
これにより、図示しない歪センサの検出出力に基づいて、アクチュエータ24により、大梁68に接合プレート69回りの回転モーメントM2を出力させ、大梁68の振動を抑制することができる。
この結果、例えば、
図6(A)に示すように、従来は、鉛直な柱66と水平な大梁68で構成された実線で示す柱梁架構70が、地震時には、1点鎖線で示す柱梁架構72のごとく変形していた。
【0071】
しかし、地震時の大梁68の伸縮量を歪センサで検出し、大梁68の変形を抑制する方向に、それぞれの柱梁接合部64で回転モーメントM2を発生させることで、大梁68の変形を抑制することができる。この結果、1点鎖線で示す柱梁架構72の変形は抑制され、実線で示す柱梁架構70の形状が維持される。
なお、歪センサは、第1の実施の形態で説明した歪センサ25でも、第2の実施の形態で説明した歪センサ26でもよい。
他の構成は、第1の実施の形態に係る制振装置10と同一であり、説明は省略する。
【0072】
(第4の実施の形態)
図7(A)に示すように、第4の実施の形態に係る制振装置40は、第1の実施の形態で説明した制振装置10と歪センサの構成が相違する。相違点を中心に説明する。
なお、
図7(A)は、後述する制振特性の実証実験用の実験装置を示しており、大梁の構造や梁に荷重を載せた点が第1の実施の形態と相違している。
【0073】
図7(A)に示すように、制振装置40は、梁42の一方の端部に歪センサ26が取り付けられ、梁42の他方の端部にアクチュエータ24が取り付けられた構成である。ここに、歪センサ26の外観は、アクチュエータ24と同じである。なお、第1の実施の形態で説明した専用の歪センサ25は不要となる。
【0074】
歪センサ26の取り付けは、
図7(B)に示すアクチュエータ24の取り付けと同じである。即ち、歪センサ26の一方の端部は、梁42の下フランジ12Fの切り欠かれた角部94に取り付けられ、歪センサ26の他方の端部は、取付金具96に取り付けられている。
【0075】
本構成とすることにより、歪センサ26で検出された梁42の端部の歪量に基づいて、図示しないコントローラがアクチュエータ24を伸縮させる。また、アクチュエータ24の伸縮により、接合部98を中心とした回転力が発生され、梁42を変形させる。
【0076】
この結果、例えば、地震時に発生した梁42の振動を検出し、梁42に逆位相の振動を発生させるようアクチュエータを伸縮させることで、梁42の振動を抑制することができる。
即ち、専用の歪センサを使用しなくても、梁の軸線方向の歪量を検出することができる。他の構成は、第1の実施の形態に係る制振装置10と同一であり、説明は省略する。
【0077】
次に、制振装置40の実証実験について説明する。
図7(A)は実験装置41の側面図であり、
図7(B)は接合部であるE部の拡大図であり、
図7(C)は、
図7(B)のアクチュエータ24の取り付け部を矢印Xの方向から見た平面図である。
【0078】
実験装置41における梁42は、H形鋼(H−100×50×5×7)であり、長さは3000mmとした。梁42の両端部は、上フランジとウェブにおいて、鉄骨の支柱54の側壁に隅肉溶接で接合されている。両端部の下フランジとウェブは斜めに切り欠かれ、下フランジの位置において、長さが約200mmに渡り隙間部73が形成されている。
【0079】
一方の隙間部73にはアクチュエータ24が固定され、他方の隙間部73には歪センサ26が固定されている。なお、アクチュエータ24と歪センサ26の基板30は、厚さ1mmの鋼板とした。また、基板30の下フランジへの取り付けは、伸張させた状態で固定した。
【0080】
梁42には、スラブの重量(2000N/m)に相当する錘75を上フランジの上に載置した。梁42の中央部には、外乱振動を発生させるための起振機74が設置されている。また、起振機74の直下には、起振機74の振動を計測する振動計76が設置されている。
ここに、実験装置41の固有振動数は、起振機74を振動させて計測した結果、12.5Hzであり、減衰特性は2.0%であった。
【0081】
また、実験装置41の伝達関数は、アクチュエータ24側の膜型圧電素子32に入力した電圧信号から、歪センサ26側の膜型圧電素子32で得られた電圧信号までの実測結果から、12.5Hz、27.5Hzにピークが生じていることが確認された。このため、図示しないノッチフィルターを用いて、27.5Hzの2次固有振動数のピークを下げ、ローパスフルターを用いて、他の振動数に対してもコントローラのゲインを下げた。
【0082】
実験結果を
図8に示す。
図8(A)は、正弦波加振時における、制御前後の梁試験体中央部の鉛直加速度波形を示している。横軸が時間(秒)で、縦軸が加速度(gal)である。
図8(A)において、1点鎖線で示す特性P1が、制御前の特性であり、実線で示す特性P2が、制御後の特性である。
図8(A)の実験結果から、制振制御を行うことにより、最大加速度振幅が約15galから約5galに低減(約1/3に低減)されているのが分かる。本実証実験により、本実施の形態における震動抑制効果が検証されたといえる。
【0083】
図8(B)は、Sweep加振によって確認された梁42の共振曲線を示す。横軸は周波数(Hz)で、縦軸は振幅(gal)である。1点鎖線で示す特性Q1が、制御前の特性であり、実線で示す特性Q2が、制御後の特性である。
結果から、制振制御を行うことにより、他の周波数における振幅を大きく増幅させることなく、12.5Hzにおける加速度振幅のピークが、約0.7galから約0.25galに低減(約1/3に低減)されており、本実証実験により、本実施の形態における震動抑制効果が検証されたといえる。
【0084】
(第5の実施の形態)
図9の側面図に示すように、第5の実施の形態に係る制振装置100は、第1の実施の形態で説明した制振装置10と小梁102の両端部に切欠きを設けない点で相違する。相違点を中心に説明する。なお、
図9ではスラブの記載は省略した。
【0085】
小梁102は、大梁14と接合プレート104で連結されている。大梁14の上フランジの上面と、小梁102の上フランジの上面は面一とされ、ガセットプレート52の端面と小梁102の端面は所定の隙間dを開けて取り付けられている。
接合プレート104の一方の端部は、大梁14に設けられたガセットプレート52に取り付けられ、接合プレート104の他方の端部は、小梁12のウェブ102Wに取り付けられている。小梁102の両端部には、下辺の切欠きは設けられていない。
【0086】
小梁102の下フランジ102Fには、ブラケット106が固定されている。ブラケット106は、側面視が略直角三角形に形成され、小梁102の下フランジ102Fの下面に下方へ向けて突出されている。ブラケット106の直角を挟む一辺は下フランジ102Fの下面に溶接接合され、ブラケット106の直角を挟む他辺は下フランジ102Fの下面と直交する方向に突出されている。ブラケット106の先端部(下端部)106Eは、大梁14の下フランジ14Fとほぼ同一高さとされている。
【0087】
ブラケット106の先端部106Eには、アクチュエータ24の一方の端部がボルト34で固定され、大梁14の下フランジ14Fには、アクチュエータ24の他方の端部がボルト35で固定されている。
【0088】
上述したブラケット106を用いることで、大梁14と小梁102の接合部である接合プレート104とブラケット106の先端部106Eの距離Lを大きくすることができる。この結果、小梁102に作用させることができる曲げモーメントを大きくでき、より大きな振動に対する制御が可能となる。
更に、ある大きさの振動に対してアクチュエータ24の制御出力を小さく押さえることができるため、アクチュエータ24の寿命を長くすることができる。
【0089】
上述した構成とすることにより、アクチュエータ24を伸縮させることにより、ブラケット106の先端部106Eと大梁14の下フランジ14Fとの間を伸縮させることができる。この結果、小梁102に、小梁102と大梁14の間の接合プレート104を中心とした回転力を付与することができる。
この結果、小梁102をアクチュエータ24でアクティブに制振することができる。
【0090】
次に、本実施の形態における小梁102のシミュレーション結果について説明する。
図10(A)の解析モデル120に示すように、解析は両端の変位を固定した小梁122の上に暑さ150mmのスラブ124を形成し、小梁122の下部に先端部126Eまでの高さが200mmのブラケット126を設けた。ブラケット126の先端部126Eに荷重Pを作用させ、小梁122の変位量を計算した。
【0091】
小梁122は、長さ6mのH形鋼(H−300×200×8×12)とし、小梁122の軸方向周りの回転を拘束した状態で、1000Nの荷重Pをブラケット126の先端部126Eに作用させた。変位量の計算は、汎用の有限要素解析ソフトを用い、荷重Pを5つの異なる方向に作用させた場合について、それぞれ計算を行なった。
【0092】
図10(B)に小梁102の変位量の解析結果のまとめ表を示す。
図10(B)は、アクチュエータ24の配置角度を変化させた場合における、アクチュエータ24の配置角度と梁102の中央での最大変位量(mm)との関係を示している。結果から、アクチュエータ24の配置角度が水平の場合に梁中央での変位量が最も大きくなり、このときの変位量は5.348×10
-3mmであった。
【0093】
図11(A)〜(C)は、小梁102の変形状態を、計算に使用したメッシュごとに例示している。ここに、
図11(A)は、1000Nの荷重Pをブラケット126の先端部126Eに水平方向に作用させた場合の結果であり、
図11(B)は、1000Nの荷重Pをブラケット126の先端部126Eに水平方向に対して45度で作用させた場合の結果であり、
図11(A)は、1000Nの荷重Pをブラケット126の先端部126Eに鉛直方向に作用させた場合の結果である。
【0094】
上述したように、荷重Pをブラケット126の先端部126Eに水平方向に作用させた場合に、梁122の中央での変位量が最も大きくなる(δ
A>δ
B>δ
C)ことが確認できた(具体的な変位量は
図10(B)参照)。本解析結果に基づいて、アクチュエータ24の配置角度を
図9の方向に決定した。
他の構成は、第1の実施の形態に係る制振装置10と同一であり、説明は省略する。
【0095】
(第6の実施の形態)
図12の側面図に示すように、第6の実施の形態に係る制振装置110は、第5の実施の形態で説明した制振装置100とは、大梁14を柱66に変更し、小梁102を大梁130に変更した点において相違する。相違点を中心に説明する。
【0096】
柱128と大梁130はいずれもH形鋼で形成され、柱128のフランジ128Fの表面と大梁130の両端部は、接合プレート112で連結されている。接合プレート112の一方の端部は、柱128に取り付けられ、接合プレート112の他方の端部は、大梁130のウェブ130Wに取り付けられている。
柱128の端面と大梁130の端面は所定の隙間dを開けて取り付けられている。
【0097】
大梁130の下フランジ130Fには、ブラケット106が固定されている。ブラケット106は、側面視が略直角三角形に形成され、大梁130の下フランジ130Fの下面に下方へ向けて突出されている。ブラケット106の直角を挟む一辺は下フランジ130Fの下面に溶接接合され、ブラケット130の直角を挟む他辺は下フランジ130Fの下面と直交する方向に突出されている。ブラケット106の先端部(下端部)130Eは、柱128の側壁に固定された取付金具114とほぼ同一高さとされている。
【0098】
ブラケット106の先端部106Eには、アクチュエータ24の一方の端部がボルト34で固定され、柱128の側壁の取付金具114には、アクチュエータ24の他方の端部がボルト35で固定されている。これにより、アクチュエータ24を伸縮させることにより、大梁130に、大梁130と柱28の間の連結金物112を中心とした回転力を付与することができる。この結果、大梁130をアクティブに制振することができる。
【0099】
上述した構成とすることにより、柱梁接合部においても、第5の実施の形態で説明した効果を得ることができる。
他の構成は、第5の実施の形態に係る制振装置100と同一であり説明は省略する。
【0100】
(第7の実施の形態)
第7の実施の形態に係る制振装置44は、
図12に示すように、コンクリート製の基礎部48の上に建てられたピン柱46を有している。ピン柱46の振動抑制の基本的な考え方は第1の実施の形態と同じであり、相違点を中心に説明する。
【0101】
ピン柱46は、例えば鉛直に建てられた木製の柱であり、軸線N上の底面には、ピン柱46を支点で支持する凸部50が設けられている。凸部50は、横方向の移動は禁止された状態で、軸線N回りの回転が自在とされ、基礎部48で支持されている。ピン柱46の底面と基礎部48の上面は、隙間部78が設けられ、ピン柱46が凸部50を中心に傾斜しても、ピン柱46の底面と基礎部48の上面が当接しない構成とされている。
【0102】
ピン柱46の下端部は外周面が斜めにカットされ、カット部には、凸部50を囲んで、アクチュエータ24が複数設けられている。アクチュエータ24の下端部は基礎部48に固定され、上端部はピン柱46の外周面に固定されている。また、アクチュエータ24と並列に、アクチュエータ24と同じ構成の歪センサ26が複数個取り付けられている。
【0103】
また、歪センサ26からの出力に基づいて、アクチュエータ24に制御信号を出力するコントローラ28が設けられ、歪センサ26とアクチュエータ24が、リード線39でそれぞれコントローラ28に接続されている。
【0104】
本構成とすることにより、歪センサ26から出力された、ピン柱46の傾斜情報出力に基づいて、コントローラ28によりアクチュエータ24を伸縮させることができる。アクチュエータ24により、ピン柱46の周面に凸部50回りのモーメントを発生させることで、ピン柱46の外力による傾斜を抑制することができる。