(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992180
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】リード線の接続方法およびリード線の溶接装置
(51)【国際特許分類】
H02K 15/04 20060101AFI20160901BHJP
H01F 41/10 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
H02K15/04 E
H01F41/10 C
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-38480(P2012-38480)
(22)【出願日】2012年2月24日
(65)【公開番号】特開2013-176198(P2013-176198A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2015年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】596008817
【氏名又は名称】ナグシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】長嶺 秀政
(72)【発明者】
【氏名】和田 圭司
【審査官】
柿崎 拓
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−019046(JP,A)
【文献】
米国特許第05111015(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0295409(US,A1)
【文献】
特開2009−038938(JP,A)
【文献】
特開2010−124542(JP,A)
【文献】
特開2000−348785(JP,A)
【文献】
米国特許第05484976(US,A)
【文献】
特開2010−206998(JP,A)
【文献】
特開2010−213441(JP,A)
【文献】
特開2009−259713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/04
H01F 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子基端と端子先端との間に屈曲部を設けてJ字形に屈曲成形された接続端子の前記屈曲部にリード線を挟み込んで接続するリード線の接続方法であって、
前記屈曲部の内側で前記リード線を挟み込む第1のステップと、
前記リード線を挟持した前記屈曲部の両端を端子屈曲方向内側に向けて相対的に加圧しながら前記屈曲部の両端間に通電する第2のステップと、
前記第2のステップによる加圧通電処理を実施しながらもしくは実施後に、前記端子基端と前記端子先端とを端子屈曲方向内側に向けて相対的に加圧しながら前記端子基端と前記端子先端との間に通電する第3のステップと、
を含み、
前記第2のステップでは、前記屈曲部の端子基端側端部に第1の電極を、前記屈曲部の端子先端側端部に第2の電極をそれぞれ配置したうえで、前記第1、第2の電極によって前記屈曲部を端子屈曲方向内側に向けて相対的に加圧しながら、前記第1、第2の電極の間で通電し、
前記第3のステップでは、前記端子基端に第3の電極を、前記端子先端に第4の電極をそれぞれ配置したうえで、前記第3、第4の電極によって前記端子基端と前記端子先端とを端子屈曲方向内側に向けて相対的に加圧しながら、前記第3、第4の電極の間で通電する、
ことを特徴とするリード線の接続方法。
【請求項2】
前記リード線は、絶縁樹脂層で覆われており、
前記第2のステップでは、通電により、前記屈曲部を発熱させて前記絶縁樹脂層を加熱軟化させたうえで、加圧により、加熱軟化状態の前記絶縁樹脂層を前記屈曲部から押し出し、
前記第3のステップでは、加圧により、前記屈曲部内部と前記リード線との間にある隙間を可及的に消滅させたうえで、通電により前記端子基端と前記端子先端とを溶接する、
請求項1に記載のリード線の接続方法。
【請求項3】
前記第2、第3のステップでは、前記第1の電極と前記第3の電極とを一体化した状態、もしくは前記第2の電極と前記第4の電極とを一体化した状態で、加圧通電処理を行う、
請求項1に記載のリード線の接続方法。
【請求項4】
前記第3のステップは、加圧処理と通電処理とのうちの少なくとも加圧処理を前記第2のステップとを同時に実施する、
請求項1ないし3のいずれかに記載のリード線の接続方法。
【請求項5】
端子基端と端子先端との間に屈曲部を設けてJ字形に屈曲成形された接続端子の前記屈曲部にリード線を挟み込んで溶接するリード線の溶接装置であって、
前記屈曲部の端子基端側端部の外側に当接する第1の電極と、
前記屈曲部の端子先端側端部の外側に当接する第2の電極と、
前記端子基端の外側に当接する第3の電極と、
前記端子先端の外側に当接する第4の電極と、
前記第1、第2の電極で前記屈曲部を端子屈曲方向内側に向けて相対的に加圧しながら、前記第1、第2の電極を介して前記屈曲部に通電する第1の加圧通電部と、
前記第1の加圧通電部による加圧通電処理を実施しながらもしくは実施後に、前記第3、第4の電極で前記端子基端と前記端子先端とを端子屈曲方向内側に向けて相対的に加圧しながら前記第3、第4の電極を介して前記端子基端と前記端子先端とに通電する第2の加圧通電部と、
を備えることを特徴とするリード線の溶接装置。
【請求項6】
前記リード線は絶縁樹脂層で覆われており、
前記第1の加圧通電部は、通電により、前記屈曲部を発熱させて前記絶縁樹脂層を加熱軟化させたうえで、加圧により、加熱軟化状態の前記絶縁樹脂層を前記屈曲部から押し出し、
前記第2の加圧通電部は、加圧により、前記屈曲部内部と前記リード線との間にある隙間を可及的に消滅させたうえで、通電により前記端子基端と前記端子先端とを溶接する、
請求項5に記載のリード線の溶接装置。
【請求項7】
前記第1の電極と前記第3の電極とを一体化する、もしくは前記第2の電極と前記第4の電極とを一体化する、
請求項5または6に記載のリード線の溶接装置。
【請求項8】
前記第1の加圧通電部と前記第2の加圧通電部とは、通電部を共有している、
請求項5ないし7のいずれかに記載のリード線の溶接装置。
【請求項9】
前記第2の加圧通電部は、加圧処理と通電処理とのうちの少なくとも加圧処理を、前記第1の加圧通電部の加圧通電処理と同時に行う、
請求項5ないし8のいずれかに記載のリード線の溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機等に組み込まれるリード線の接続方法およびリード線の溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、電動機において整流子のライザとロータの巻線とを接続するといったように、接続端子にリード線を接続する作業は、接続端子の一端をJ字形に屈曲させたうえで、リード線を接続端子の一端に係合させ、その状態で接続端子とリード線とをヒュージング(熱カシメ)することで行われていた。
【0003】
ヒュージングの際には、
図6に示すように、リード線200の一端を係合したJ字形の接続端子201が一対の電極202、203で挟み込まれる。すると、これら一対の電極202、203によって接続端子201とリード線200の一端とが圧着されて仮固定されるとともに、一方の電極202−接続端子201−他方の電極203という第1の電流路が形成される。この状態で一対の電極202、203を介して接続端子201に電流を流す(第1の電流供給)。すると接続端子201が発熱してリード線200の一端を加熱する。そうすると、リード線200を被覆している被覆樹脂(絶縁体)204が、リード線200の一端で気化して放散する、もしくは被覆樹脂204が軟化して加圧状態のリード線200の一端から押し出される。これにより、リード線200の一端の導線本体(銅線等)205と接続端子201とが互いに圧着した状態で直接接触することで、一方の電極202−接続端子201−リード線200の一端−接続端子201−他方の電極203という第2の電流路が形成される。第1の電流路に加えて第2の電流路が形成されることにより一対の電極202、203の間での許容電流量が増加するので、この状態になったことを見定めて、一対の電極202、203間にさらに大きな電流を流す(第2の電流供給)ことで、接続端子201とリード線200の一端とを溶接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−206998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来例には次の課題がある。J字形の接続端子201を一対の電極202、203で挟み込んで接続端子201とリード線200とを仮固定する際に、接続端子201の屈曲部201aの内奥にリード線200を確実に位置決めすることができず、リード線200の仮固定位置がばらつく。そのため、リード線200を溶接する際(第2の電流供給時)におけるリード線200の位置が溶接毎に変動する。すると、第2の電流供給によってリード線200の一端に伝わるエネルギー量が溶接毎に変動して溶接にばらつきが生じて接合強度が安定しない。
【0006】
さらには、従来の方法では、接続端子201とリード線200とを挟持によって仮固定するものの、接続端子201とリード線200との間に生じる隙間αを完全に消滅させることはできない。このような隙間が残存した状態で上記溶接を行うと、リード線一端から被覆樹脂を除去する際に生じる溶融被覆樹脂や被覆樹脂の気化物(主に炭化物)といった樹脂変性物204aが、上記隙間に入り込んで残存してしまう。これらの樹脂変性物204aは、リード線200と接続端子201との接続部位における電気特性に悪影響を及ぼすうえに、接続部位の耐久性を悪化させてしまう。
【0007】
振動の少ない設置場所に設置される装置に組み込まれるリード線200の接続においては、上述した従来の方法であってもそれほど支障はない。しかしながら、車載装置(駆動用電動機等)といったように、振動の激しい場所等に設置される装置では、リード線200の接続部位には、より高い接続強度や耐久性が要求されるが、従来のリード線の接続方法では、このような装置に要求される接続強度や耐久性を満足させることができない。
【0008】
なお、このような溶接のばらつきを防止して接合強度を高めるためには、接続端子201を一対の電極202、203で挟み込む力を増加させることも考えられる。しかしながら、そうすると、電極202、203の挟み込みによってリード線200の一端が押し潰されて変形してしまう。リード線200の変形はリード線200と接続端子201との接続部位における電気特性や耐久性に悪影響を及ぼすため、このような解決策(挟持力増加)を実行することはできない。
【0009】
したがって、本発明は、接続端子とリード線とを確実に接続することができるようにすることを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明は、端子基端と端子一端との間に屈曲部を設けてJ字形に屈曲成形された接続端子の前記屈曲部にリード線を挟み込んで接続するリード線の接続方法において次の構成を採る。
【0011】
すなわち、本発明のリード線の接続方法は、
前記屈曲部の内側で前記リード線を挟み込む第1のステップと、
前記リード線を挟持した前記屈曲部の両端を端子屈曲方向内側に向けて相対的に加圧しながら前記屈曲部の両端間に通電する第2のステップと、
前記第2のステップによる加圧通電処理を実施しながらもしくは実施後に、前記端子基端と前記端子先端とを端子屈曲方向内側に向けて相対的に加圧しながら前記端子基端と前記端子先端との間に通電する第3のステップと、
を含む。
【0012】
さらに、本発明のリード線の接続方法では、
前記第2のステップでは、前記屈曲部の端子基端側端部に第1の電極を、前記屈曲部の端子先端側端部に第2の電極をそれぞれ配置したうえで、前記第1、第2の電極によって前記屈曲部を端子屈曲方向内側に向けて相対的に加圧しながら、前記第1、第2の電極の間で通電し、
前記第3のステップでは、前記端子基端に第3の電極を、前記端子先端に第4の電極をそれぞれ配置したうえで、前記第3、第4の電極によって前記端子基端と前記端子先端とを端子屈曲方向内側に向けて相対的に加圧しながら、前記第3、第4の電極の間で通電する、
のが好ましい。
【0013】
また、本発明のリード線の溶接装置は、次の構成を備える。すなわち、
端子基端と端子先端との間に屈曲部を設けてJ字形に屈曲成形された接続端子の前記屈曲部にリード線を挟み込んで溶接するリード線の溶接装置であって、
前記屈曲部の端子基端側端部の外側に当接する第1の電極と、
前記屈曲部の端子先端側端部の外側に当接する第2の電極と、
前記端子基端の外側に当接する第3の電極と、
前記端子先端の外側に当接する第4の電極と、
前記第1、第2の電極で前記屈曲部を端子屈曲方向内側に向けて相対的に加圧しながら、前記第1、第2の電極を介して前記屈曲部に通電する第1の加圧通電部と、
前記第1の加圧通電部による加圧通電処理を実施しながらもしくは実施後に前記第3、第4の電極で前記端子基端と前記端子先端とを端子屈曲方向内側に向けて相対的に加圧しながら前記第3、第4の電極を介して前記端子基端と前記端子先端とに通電する第2の加圧通電部と、
を備える。
【0014】
以上説明した本発明は、好ましくは次の構成を有する。すなわち、本発明のリード線の接続方法では、
前記リード線は、絶縁樹脂層で覆われており、
前記第2のステップでは、通電により、前記屈曲部を発熱させて前記絶縁樹脂層を加熱軟化させたうえで、加圧により、加熱軟化状態の前記絶縁樹脂層を前記屈曲部から押し出し、
前記第3のステップでは、加圧により、前記屈曲部内部と前記リード線との間にある隙間を可及的に消滅させたうえで、通電により前記端子基端と前記端子先端とを溶接する。
【0015】
本発明のリード線の溶接装置では、
前記リード線は絶縁樹脂層で覆われており、
前記第1の加圧通電部は、通電により、前記屈曲部を発熱させて前記絶縁樹脂層を加熱軟化させたうえで、加圧により、加熱軟化状態の前記絶縁樹脂層を前記屈曲部から押し出し、
前記第2の加圧通電部は、加圧により、前記屈曲部内部と前記リード線との間にある隙間を可及的に消滅させたうえで、通電により前記端子基端と前記端子先端とを溶接する。
【0016】
本発明の方法や装置によれば、リード線の絶縁樹脂層が加熱軟化されて屈曲部から押し出され、この状態で、屈曲部内部とリード線との間にある隙間が消滅した状態で端子基端と端子先端とが溶接される。そのため、リード線本体と屈曲部とが密着した状態で、端子基端と端子先端とが強固に溶接される。
【0017】
以上の作用効果を得るうえで、本発明は次の構成を備えるのがさらに好ましい。すなわち、前記第1の電極と前記第3の電極とを一体化した状態、もしくは前記第2の電極と前記第4の電極とを一体化した状態で、加圧通電処理を行う。この構成によれば、電極数を削減することが可能となる。
【0018】
また、本発明のリード線の溶接装置では、前記第1の加圧通電部と前記第2の加圧通電部とは、通電部を共有するのが好ましく、そうすれば、通電部の構成を簡略化することが可能となる。
【0019】
また、本発明のリード線の接続方法では次の構成を備えるのがさらに好ましい。すなわち、前記第3のステップは、加圧処理と通電処理とのうちの少なくとも加圧処理を前記第2のステップとを同時に実施する。この構成によれば、第3のステップによる加圧処理により巻線を屈曲部の内奥に押し込めた状態で第2のステップを行うことが可能となって巻線の位置決めがさらに確実となる。
【0020】
また、本発明のリード線の溶接装置では次の構成を備えるのがさらに好ましい。すなわち、前記第2の加圧通電部は、加圧処理と通電処理とのうちの少なくとも加圧処理を、前記第1の加圧通電部の加圧通電処理と同時に行う。この構成によれば、第2の加熱通電部による加圧処理により巻線を屈曲部の内奥に押し込めた状態で第1の加熱通電部の処理を行うことが可能となって巻線の位置決めがさらに確実となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、接続端子とリード線とを確実に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明のリード線溶接装置やリード線接続方法を実施可能な装置の一例である直流モータの構成を示す断面図である。
【
図2】本発明のリード線溶接装置やリード線接続方法の実施対象である直流モータのライザと巻線との接続構成を示す要部拡大平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態のリード線溶接装置の構成を示す図である。
【
図4】一実施形態のリード線溶接装置を用いたリード線接続方法の処理途中の状態を示す要部拡大図である。
【
図5】本発明のリード線溶接装置の変形例のリード線溶接装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
まず、本発明のリード線の溶接装置やリード線の接続方法により、リード線である巻線を接続端子である整流子に接続する直流モータ(電動機)1の構造を
図1、
図2を参照して説明する。直流モータ1は、ケース2と、ケース2の内に固定される永久磁石3と、ケース2の開口部を閉塞する環状のキャップ6と、ケース2内に回転自在に装着されるロータ9と、ロータ9の一端に設けられた接続端子の一つである整流子4と、整流子4に摺接するブラシ5とを備えている。
【0024】
永久磁石3は、内周側の磁極がケース2の周方向でN極とS極とが交互に表れる様にケース2に固定されている。ロータ9は、シャフト12と、シャフト12の外周に固定されたロータコア13と、ロータコア13のスロットに巻回される巻線14とを備える。リード線の一つである巻線14は、整流子4に接続されている。巻線14は、
図2(a)に示すように、銅線からなる巻線本体14aと、巻線本体14aを被覆するポリアミドイミド等の熱可塑性の絶縁樹脂からなる絶縁樹脂層14bとを備える。ブラシ5は整流子4の外周に摺接するとともに図外の外部電源に接続されており、接触している整流子4を介して巻線14に電流を供給する。
【0025】
整流子4は、シャフト12の外周に嵌合して固定されるフェノール樹脂等で形成される円筒状の絶縁層16の外周に配置されている。整流子4は、銅製であって、ブラシ5に対向して配置されてブラシ5に摺接する導通バー17と、導通バー17の一端から伸びるライザ18とを備える。ライザ18は整流子
4の接続端子であって、巻線14はライザ18に溶接により接続されている。具体的には、ライザ18は、
図2(a)、(b)に示すように、端子基端18aと端子先端18bとの間に屈曲部18cを設けてJ字形に屈曲成形されており、巻線14の一端は、屈曲部18cの内側で挟持された状態でライザ18に溶接されている。
【0026】
次に、上述した巻線14をライザ18に溶接する本発明の溶接装置1を
図3を参照して説明する。溶接装置100は、電極部101と、第1の加圧通電部102Aと、第2の加圧通電部102Bとを備える。電極部101は、端子基端側電極101aと、第1の端子先端側電極101bと、第2の端子先端側電極101cとを備えている。第1の端子先端側電極101bと第2の端子先端側電極101cとは並列配置されている。さらにこれら第1、第2の端子先端側電極101b、101cと端子基端側電極101aとは、所定の間隙を空けて対向配置されている。第1の端子先端側電極101bの先端面101b
1は平坦面となっており、先端面101b
1の大きさ(長さ寸法W1および図示しない幅)はライザ18の屈曲部18cの端子先端側端部18c
1を覆う大きさとなっている。第2の端子先端側電極101cの先端面101c
1は平坦面となっており、先端面101c
1の大きさ(長さ寸法W2および図示しない幅)はライザ18の端子先端18bを覆う大きさとなっている。端子基端側電極101aの先端面101a
1は平坦面となっており、先端面101a
1の大きさ(長さ寸法W3および図示しない幅)は屈曲部18cの端子基端側端部18c
2とライザ18の端子基端18aとを覆う大きさとなっている。
【0027】
第1の加圧通電部102Aは、第1の加圧部103Aと第1の通電部104Aとを備える。第2の加圧通電部102Bは、第2の加圧部103Bと第2の通電部104Bとを備える。第1の加圧部103Aは、第1の端子先端側電極101bを端子基端側電極101aに向けて押圧するものである。第2の加圧部103Bは、第2の端子先端側電極101cを端子基端側電極101aに向けて押圧するものである。第1の加圧部103Aと第2の加圧部103Bとは、第1の端子先端側電極101bと第2の端子先端側電極101cとを個別に押圧するものであって、それぞれ押圧力を制御可能なエアシリンダ等の駆動体から構成されている。
【0028】
第1の通電部104Aは、第1の端子先端側電極101bと端子基端側電極101aとの間に第1の定電流を供給するものである。第1の通電部104Aは、第1の端子先端側電極101bと端子基端側電極101aとの間に第1の定電流を供給する第1のトランス105Aと、第1のトランス105Aで発生させる第1の定電流を所定の値に調整する第1の通電コントローラ106Aとを備える。第2の通電部104Bは、第2の端子先端側電極
101cと端子基端側電極101aとの間に第2の定電流を供給するものである。第2の通電部104Bは、第2の端子先端側電極
101cと端子基端側電極101aとの間に第2の定電流を供給する第2のトランス105Bと、第2のトランス105Bで発生させる第2の定電流を所定の値に調整する第2の通電コントローラ106Bとを備える。
【0029】
以下、溶接装置100を用いた巻線14とライザ18との溶接作業を
図3、
図4を参照して説明する。
【0030】
(第1のステップ):屈曲部18cによる巻線14の挟み込み処理
まず、直流モータ1から整流子4を取り外したうえで、取り外した整流子4を、
図3に示すように、端子基端側電極101aと第1、第2の端子先端側電極101b、101cとの間に載置する。整流子4は次の向きに配置される。すなわち、ライザ18の端子基端18aが端子基端側電極101aに対向し、
屈曲部18cの端子先端側端部18c
1が第1の端子先端側電極101bに対向し、端子先端18bが第2の端子先端側電極101cに対向する向きに整流子4は配置される。このようにして第1、第2の端子先端側電極101b、101cとの間に載置された整流子4のライザ18の屈曲部18cの内側に巻線14の一端を挟み込む。なお、先に屈曲部18cの内側に巻線14の一端を挟み込んだうえで、ライザ18を第1,第2の端子先端側電極101b、101cとの間に載置してもよい。
【0031】
(第2のステップ):第1の加圧通電処理
次に、
図4(a)に示すように、第1の加圧部103Aにより第1の端子先端側電極101bを端子基端側電極101aに向けて相対的に加圧しながら、第1の通電部104Aにより、第1の端子先端側電極101bと端子基端側電極101aとを介して屈曲部18cに第1の定電流を供給する。このとき、第1の通電部104Aは、通電により屈曲部18cを発熱させて屈曲部18cで挟持している巻線14を加熱することで絶縁樹脂層14bが軟化もしくは溶融する程度の電流を第1の定電流として屈曲部18cに供給する。さらに、第1の加圧部103Aは、巻線本体14aには加圧による圧縮変形が生じないものの、屈曲部18cにはさらなる屈曲変形が生じる程度の力で第1の端子先端側電極101bを端子基端側電極101aに向けて加圧する。これにより、屈曲部18cは発熱して熱可塑性絶縁樹脂からなる絶縁樹脂層14bは加熱されて軟化もしくは溶融する。また、屈曲部18cは巻線14を挟持した状態でさらに屈曲する。それに伴い、屈曲部当接部位の巻線14において、絶縁樹脂層14bが屈曲部18cの外側にはみ出して、巻線本体14aが屈曲部18cの内面に直接当接するようになる。これにより、巻線本体14aとライザ18とは電気的に強固に接続される。
【0032】
(第3のステップ):第2の加圧通電処理
上述した第1の加圧通電処理を継続しながら、さらに、以下に説明する第2の加圧通電処理を行う。すなわち、
図4(b)に示すように、第2の加圧部103Bにより第2の端子先端側電極101cを端子基端側電極101aに相対的に加圧する。さらに第2の通電部104Bにより第2の端子先端側電極101cと端子基端側電極101aとを介して、端子基端18aと端子先端18bとに第2の定電流を供給する。
【0033】
なお、上述した説明では、第1の加圧通電処理を継続しながら第2の加圧通電処理を行うと述べたが、ベストモードの処理時には、第1の加圧通電処理と第2の加圧通電処理とは同時に実施される。そうすることにより、第2の加圧通電処理による加圧処理により巻線14を屈曲部18cの内奥に押し込めた状態で第1の加圧通電処理を行うことが可能となって巻線14の位置決めがさらに確実となる。なお、巻線14を屈曲部18cの内奥に押し込める効果を得るためには、第1の加圧通電処理において、第2の加圧通電処理の加圧処理だけを行ってもよい。
【0034】
一方、逆に第2の加圧通電処理時には、第1の加圧通電処理を停止してもよく、また第2の加圧通電処理時には、第1の加圧通電処理における加圧処理または通電処理だけを継続してもよく、そのような状態においても第2の加圧通電処理を行うことができる。
【0035】
第2の加圧通電処理を行う際には、第2の加圧部103Bは、端子先端18bが屈曲部内方に向かって変形して端子基端側18aに当接する程度の力で第2の端子先端側電極101cを端子基端側電極101aに向けて加圧する。さらに第2の通電部104Bは、通電により端子先端18bと端子基端18aとが溶接する程度の第2の定電流(第2の定電流≧第1の定電流)を第2の端子先端側電極101cと端子基端側電極101aとの間に供給する。これにより、端子先端18bおよび屈曲部18cの端子先端側端部18c
1は変形して端子基端側18aに強固に当接する。このとき、屈曲した端子先端18bおよび屈曲部18cの端子先端側端部18c
1は巻線本体14aにも当接して巻線本体14aに沿って湾曲変形する。そのため、端子先端18bと端子基端18aと巻線本体14aとの間に形成されている隙間αは、巻線本体14aに沿って湾曲変形する端子先端18bおよび屈曲部18cの端子先端側端部18c
1によって閉塞されて可及的に消滅する。そのため、隙間αに残存している軟化もしくは溶融状態の絶縁樹脂層14bは隙間αから外部に押し出され、端子先端18bと端子基端18aと巻線本体14aとは、強固に密着するようになる。
【0036】
この状態で、第2の通電部104Bが第2の端子先端側電極101cと端子基端側電極101aとの間に第2の定電流を供給しているので、端子先端18bと端子基端18aとは、巻線本体14aに密着して隙間αが可及的に消滅した状態で強固に溶接される。
【0037】
上述した溶接装置100では、それぞれ別々の定電流(第1の定電流、第2の定電流)を供給するために、第1の通電部104Aと第2の通電部104Bとを個別に設けていたが、
図5に示すように、これら第1の通電部104Aと第2の通電部104Bとを一つの通電部104(トランス105、通電コントローラ106)にしてもよい。そうすれば、部品点数が削減されてコストダウンを図ることができる。この場合、電流供給路107に、電流路切換回路108を設けて、第1の定電流の電流供給と、第2の定電流の電流供給とを切り換える。そうすれば、電流値が相違する第1の定電流と第2の定電流とを同時に供給することはできないものの、ライザ18と巻線14との溶接部位に、異なる電流値の定電流(第1の定電流、第2の定電流)を単一の通電部104から供給することが可能となる。
【0038】
さらには、通電部を一つにした構成(通電部104)においては、第1の定電流と第2の定電流とを同一値にしたうえで、通電部104から同一値の第1、第2の定電流を同時に巻線14とライザとの接続部位に供給してもよい。そうすれば、第1、第2の加圧通電処理に厳密に適した電流値を設定することはできないものの、第2の加圧通電処理による加圧処理により巻線14を屈曲部18cの内奥に押し込めた状態で第1の加圧通電処理を行うことが可能となって巻線14の位置決めが確実となる。さらには電流切換回路108を省略することもできる。
【0039】
なお、上述した実施の形態では、端子基端側電極101aから第1、第3の電極を構成し、第1の端子先端側電極101bから第2の電極を構成し、第2の端子先端側電極101cから第4の電極を構成している。しかしながら、端子基端側電極101aを二つに分割することで、第1、第3の電極を個別に設ける構成としてもよいのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0040】
1 直流モータ 2 ケース 3 永久磁石 4 整流子
5 ブラシ 6 キャップ 9 ロータ 12 シャフト
13 ロータコア 14 巻線 14a 巻線本体 14b 絶縁樹脂層
16 絶縁層 17 導通バー 18 ライザ
18a 端子基端 18b 端子先端 18c 屈曲部
18c1 端子先端側端部 18c2 端子基端側端部
100 溶接装置 101 電極部
101a 端子基端側電極 101a1 先端面
101b 第1の端子先端側電極 101b1 先端面
101c 第2の端子先端側電極 101c1 先端面
102A 第1の加圧通電部 102B 第2の加圧通電部
103A 第1の加圧部 103B 第2の加圧部
104A 第1の通電部 104B 第2の通電部
105A 第1のトランス 105B 第2のトランス
106A 第1の通電コントローラ 106B 第2の通電コントローラ
107 電流供給路 108 電流路切換回路
α 隙間