特許第5992212号(P5992212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992212
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】小型成形品の搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/28 20060101AFI20160901BHJP
【FI】
   B65G47/28 B
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-127955(P2012-127955)
(22)【出願日】2012年6月5日
(65)【公開番号】特開2013-252911(P2013-252911A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年4月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000209751
【氏名又は名称】池上通信機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】及川 隼人
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−020713(JP,A)
【文献】 特開2003−128233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/00−47/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小型成形品を搬送しながら整列させ、次段の処理装置に供給する小型成形品の搬送装置において、
前記処理装置に向けて前記小型成形品を搬送する搬送ベルトと、
搬送される前記小型成形品を前記処理装置での処理に適した目標姿勢に転換するよう、前記搬送ベルトの搬送面から所定の間隙をもって配置される高さ規制部材と、
前記搬送ベルトをその下面から支持する支持部材であって、少なくとも前記高さ規制部材に沿った範囲に凹部を有する支持部材と、を備え、前記目標姿勢に転換されない小型成形品との当接に応じて前記高さ規制部材が弾性変形および/または変位して前記間隙を拡張することで、当該小型成形品の通過を許容するとともに、当該通過時に前記搬送ベルトが前記凹部内に撓むようにしたことを特徴とする小型成形品の搬送装置。
【請求項2】
小型成形品を搬送しながら整列させ、次段の処理装置に供給する小型成形品の搬送装置において、
前記処理装置に向けて前記小型成形品を搬送する搬送ベルトと、
搬送される前記小型成形品を前記処理装置での処理に適した目標姿勢に転換するよう、前記搬送ベルトの搬送面から所定の間隙をもって配置される高さ規制部材と、
前記搬送ベルトの一側部の側に配置され、前記小型成形品を整列させるべく前記搬送ベルトによる搬送路を前記処理装置に向けて漸次狭めるガイド部材と
記搬送ベルトを挟んで前記ガイド部材と対向する対向側壁と、
を備え、
前記高さ規制部材は、前記小型成形品の搬送方向の相対的に下流において前記ガイド部材側に位置づけられる一端と、前記搬送方向の相対的に上流において前記対向側壁側に位置づけられる他端とを有して前記搬送路を斜めに跨ぐように延在して配置されていることを特徴とする小型成形品の搬送装置。
【請求項3】
前記高さ規制部材は弧形状を有し、前記上流に向って凸となるように配置されることを特徴とする請求項に記載の小型成形品の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤などの小型成形品を整列させて次段の処理装置に供給するように搬送を行う搬送装置に関する。特に、本発明は、搬送ベルト上での小型成形品の整列性の向上を図り、搬送能力ひいては次段での処理の効率を高めるように改良された小型成形品の搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小型成形品の処理装置、例えば小型成形品の外観検査を行うための検査装置においては、すべての小型成形品について一様で安定した検査が行われることが必要である。そのためには個々の小型成形品が重なり合うことなく整列し、かつ一定の目標姿勢にされた状態で検査装置に供給されることが重要である。しかし検査対象となる小型成形品の供給部から検査装置に至る搬送路上では、小型成形品同士が全体的または部分的に重なり合った状態となっていることがある。また、扁平な円柱形状の小型成形品では、端面が搬送面に接した目標姿勢となっているほか、周側面部分が搬送面に接した姿勢(立った姿勢)となっていることがある。そこで、従来の搬送装置として、例えば特許文献1に開示されたもののように、小型成形品を載置して搬送する搬送ベルトの搬送路を下流に向って次第に狭めることで小型成形品を整列させる整列ガイドと、搬送路の途中に配置されて搬送ベルトの搬送面との間で高さを規制することにより小型成形品を目標姿勢とする高さ規制ゲートと、が設けられたものがある。また、かかる搬送装置では、さらに、整列させることができなかった小型成形品を搬送路の上流側の位置に戻すためのリターン路が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−128233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
小型成形品の検査装置、搬送装置および供給装置を含めたシステムの小型化や、搬送ないし検査効率の向上が求められており、そのためには各装置の適切な配置、搬送速度の向上、小型成形品の滞留や詰まりの抑制、および上流側に戻される小型成形品の数の低減が強く要望される。しかしながら、特許文献1に開示されるような従来の搬送装置は、特に高さ規制ゲートの構成、形状および配置に由来してそれらの要望に十分に応え得るものではなかった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑み、システム全体の小型化並びに搬送の効率ないしは検査等次段での処理の効率の向上に資するべく、高さ規制ゲートの構成、形状および配置を適切に定めることにより上記要望に応えることのできる搬送装置を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明の他の目的は、高さ規制ゲートと目標姿勢とならなかった小型成形品との接触に伴ってそれらに作用する負荷を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために、本発明は、小型成形品を搬送しながら整列させ、次段の処理装置に供給する小型成形品の搬送装置において、
前記処理装置に向けて前記小型成形品を搬送する搬送ベルトと、
搬送される前記小型成形品を前記処理装置での処理に適した目標姿勢に転換するよう、前記搬送ベルトの搬送面から所定の間隙をもって配置される高さ規制部材と、
前記搬送ベルトをその下面から支持する支持部材であって、少なくとも前記高さ規制部材に沿った範囲に凹部を有する支持部材と、を備え、前記目標姿勢に転換されない小型成形品との当接に応じて前記高さ規制部材が弾性変形および/または変位して前記間隙を拡張することで、当該小型成形品の通過を許容するとともに、当該通過時に前記搬送ベルトが前記凹部内に撓むようにしたことを特徴とする。
【0009】
また本発明の他の形態では小型成形品を搬送しながら整列させ、次段の処理装置に供給する小型成形品の搬送装置において、
前記処理装置に向けて前記小型成形品を搬送する搬送ベルトと、
搬送される前記小型成形品を前記処理装置での処理に適した目標姿勢に転換するよう、前記搬送ベルトの搬送面から所定の間隙をもって配置される高さ規制部材と、
前記搬送ベルトの一側部の側に配置され、前記小型成形品を整列させるべく前記搬送ベルトによる搬送路を前記処理装置に向けて漸次狭めるガイド部材と
記搬送ベルトを挟んで前記ガイド部材と対向する対向側壁と、
を備え、
前記高さ規制部材は、前記小型成形品の搬送方向の相対的に下流において前記ガイド部材側に位置づけられる一端と、前記搬送方向の相対的に上流において前記対向側壁側に位置づけられる他端とを有して前記搬送路を斜めに跨ぐように延在して配置されていることを特徴とする
【0010】
この形態において、前記高さ規制部材は弧形状を有し、前記上流に向って凸となるように配置されるものとすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高さ規制部材が目標姿勢に転換されない小型成形品との当接に応じて弾性変形および/または変位して間隙を拡張すること、さらには、目標姿勢に転換されない小型成形品の通過時に搬送ベルトが支持部材の凹部内に撓むようにすることで、小型成形品の円滑な通過を許容し、小型成形品と高さ規制部材との当接に伴う負荷を軽減することができる。また、搬送路を斜めに跨ぐように延在して高さ規制部材を配置し、且つその延在方向が搬送方向下流に向かってガイド部材に近づいてゆくように定めたことにより、目標姿勢とならなかった小型成形品が高さ規制部材に沿って移動する場合、当該小型成形品はリターン路等に排除されるのではなくガイド部材の側に誘導されるので、上流側に戻される小型成形品の数が低減し、また誘導の過程で目標姿勢に転換される可能性も高まる。さらに、高さ規制部材を弧形状とし、これを搬送方向上流に向って凸となるように配置することで、高さ規制部材と立った姿勢の小型成形品との接触点または接触面積が限局され、錠剤を目標姿勢とする効果を一層高めることができる。
【0012】
以上のことから、小型成形品の搬送速度の向上を許容しつつも、小型成形品の滞留や詰まりの抑制、および上流側に戻される小型成形品の数の低減が可能となり、小型成形品の検査等を行う処理装置、搬送装置および供給装置を含めたシステムの小型化や、搬送の効率ないしは検査等次段での処理の効率の向上に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明小型成形品の搬送装置の一実施形態を示す斜視図である。
図2図1の搬送装置と小型成形品供給部との接続部分を示す斜視図である。
図3】(a)〜(d)は小型成形品の例としての錠剤の4形態を示す図である。
図4】(a)および(b)は、それぞれ、本発明の一実施形態に係る高さ規制ゲートおよびその周辺の搬送路の構成を示す平面図および側面図である。
図5】高さ規制ゲートの好ましい構成、形状および配置を説明するための説明図である。
図6】(a)および(b)は高さ規制ゲートの図5に示した配置による効果を説明するための説明図である。
図7】(a)〜(c)は、目標姿勢とならなかった小型成形品が高さ規制ゲートを通過するときの状態を示す説明図である。
図8】本発明搬送装置の他の実施形態を示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明搬送装置の一実施形態を示す斜視図、図2図1の搬送装置と小型成形品供給部との接続部分を示す斜視図である。図3(a)〜(d)は小型成形品としての錠剤の形状の例を示す図であり、以下の実施形態においては、平錠と称される錠剤、すなわち図3(a)に示すように扁平な略円柱形状の錠剤Tを小型成形品として搬送する場合を例示するが、本発明は図3(b)、(c)および(d)にそれぞれ示されるようなR付き錠、糖衣錠および異形錠の搬送にも適用できるものである。
【0016】
図1および図2に示すように、小型成形品としての錠剤Tを搬送する本実施形態に係る搬送装置1は、錠剤Tを整列させて不図示の検査装置に供給する搬送路10と、その側方に並置されるリターン路80とを備える。搬送路10は、供給部Fから供給される錠剤Tを矢印Xで示す主搬送方向に搬送する搬送ベルト11と、本実施形態の主要部に係る高さ規制ゲート100(後に詳述する)と、錠剤Tを案内するガイド側面21が形成されているガイド部材20とを含む。搬送ベルト11は無端式のベルトコンベアの形態であり、錠剤Tの搬送面が前段の供給部Fから次段の小型成形品の検査処理装置(不図示)にまで延在するように、2つのプーリブロック30,30間に張架され、駆動される。供給部Fは搬送路10の上流側の側部において搬送路10の搬送面よりも高い位置に配設され、錠剤Tは供給部Fと搬送路10とを接続するように配置された斜面部205上を滑落することで搬送ベルト11に受容される。従って、図2において矢印Cで示すように、当該受容時に錠剤Tはほぼ90度向きを変えて主搬送方向Xに搬送されて行くことになる。
【0017】
ガイド部材20は搬送ベルト11の直上に配置され、上述したように錠剤Tを案内するガイド側面21を有する。このガイド側面21は、下流に向かって搬送ベルト11を斜めに遮って横断するように形成されている。すなわち、ガイド部材20のガイド側面21は、錠剤Tの主搬送方向上流側の錠剤受容部では搬送ベルト11の幅にほぼ等しい搬送路10を画成する一方、下流に行くに従ってリターン路80側に近づき、結果として錠剤Tの搬送路10の幅を漸次狭めて行く。さらにガイド側面21は、不図示の検査装置に連続するゲート部40の入口近傍において搬送路10の幅が最も狭くなり、搬送される錠剤Tの直径にほぼ等しい幅となるように搬送路10を画成する。
【0018】
ガイド部材20は、水平方向であって且つ主搬送方向Xに対して直交する方向に移動可能であり、位置調整ツマミ16によりガイド部材20ひいてはガイド側面21を移動させることで、搬送される錠剤Tの大きさに対応して搬送路10の幅を調整できるように構成されている。符号17は所望の調整位置においてガイド部材20を基台に固定するためのクランパである。
【0019】
ゲート部40は、搬送装置1の最下流側に配置され、搬送されてくる錠剤Tの幅および高さを最終的に規制し、目標姿勢となって整列した錠剤のみの通過を許容する一方、その他の錠剤をリターン路80側に排除する機能を果たす。ゲート部40は、搬送ないし検査の対象となる錠剤Tの寸法に応じ、規制する幅および高さを調整可能な調整ツマミ42および44を有する。
【0020】
リターン路80は、無端式のベルトコンベアの形態のリターンベルト81によって画成され、ゲート部40の側方にあって搬送路10の搬送面よりも低い位置から、搬送路10の搬送面よりも高位の搬送方向上流側の位置まで延在する。従って、排除された錠剤Tはリターンベルト81上に落下し、図2において矢印R1で示す方向に戻されて行き、ガイド部材83によって矢印R2で示す方向に向きを変えられ、斜面部85上を滑落して搬送ベルト11に受容されることになる。なお、図2において符号87で示すものは、リターン路80側から受容された錠剤Tの進行方向を主搬送方向Xに速やかに一致させ、供給部F側から受容した錠剤Tと円滑に合流させるためのガイド部材である。従って、リターン路80側から戻される錠剤Tの進行方向はほぼ180度変わることになる。
【0021】
搬送装置を含むシステムの小型化の要望から、本実施形態においては、供給部Fは搬送路10の上流側の側部に配設され、錠剤Tは供給部Fと搬送路10とを接続する斜面部205を介して搬送ベルト11に受容されるようにしている。また、搬送ないし検査の効率の向上の観点から搬送速度の向上が要望されているが、供給部Fから供給される錠剤およびリターン路80を介して戻される錠剤の進行方向が急激に変わるため、搬送速度の増大に伴って錠剤が雑然としたままの状態、すなわち図1に示すように、錠剤同士が全体的または部分的に重なり合っている状態や、周側面部分が搬送面に接した姿勢(立った姿勢)となっている状態で搬送される蓋然性が高まる。特許文献1に開示された高さ規制ゲート(同文献の図2において符号13,14で示されるもの)は、搬送路10のほぼ中流域、すなわちガイド側面21によって搬送路10が狭まり、錠剤Tの搬送密度が相当に高くなった位置に配置され、且つガイド部材から下流側に向うに従ってリターン路に近づくよう延在するものであった。そのため、搬送速度が高速化するほど高さ規制ガイドとしての機能が十分に働かず、且つ上流側に戻される錠剤の数を増大させる可能性があった。
【0022】
そこで、本実施形態では、効果的に錠剤同士の重なりを解き、且つ立った姿勢の錠剤を横転させることで、目標姿勢(端面が搬送面に接した姿勢)を得るための高さ規制ゲート100が設けられる。本実施形態の高さ規制ゲート100は、以下に説明するように、搬送速度の向上、錠剤の滞留や詰まりの抑制、および上流側に戻される錠剤の数の低減の要望に応え、搬送の効率ないしは次段で行われる処理の効率の向上に資するべく、構成、形状および配置を適切に定めたものである。
【0023】
図4(a)および(b)は本発明の一実施形態に係る高さ規制ゲートおよびその周辺の搬送路を示す平面図および側面図である。また、図5は高さ規制ゲートの好ましい構成、形状および配置を説明するための説明図、図6(a)および(b)は高さ規制ゲートの図5に示した配置による効果を説明するための説明図である。
【0024】
高さ規制ゲート100は、チューブ状の高さ規制部材101と、ガイド部材20上に配置されて高さ規制部材101の一端を支持する支持部103と、ガイド部材20のガイド側面21と搬送路10を挟んで対向する搬送路側壁上に配置されて高さ規制部材101の他端を支持する支持部105と、を有する。高さ規制部材101は、搬送路10の比較的上流域すなわち錠剤Tの搬送密度が比較的低い位置に、搬送面から所定の間隙Gをもって搬送路10を斜めに跨ぐように延在して配置される。
【0025】
所定の間隙Gは、図3(a)に示す錠剤Tの厚みt(すなわち目標姿勢にあるときの搬送面からの高さ)より大で且つ錠剤Tの直径d(すなわち立った姿勢にあるときの搬送面からの高さ)未満とされ、具体的には直径dよりも0.5mm〜1mm程度少ない距離に設定される。これにより、錠剤同士の全体的または部分的な重なりを解き、また立った姿勢の錠剤を横転させることで、錠剤Tを目標姿勢とすることができる。なお、搬送対象となる錠剤Tが種々の寸法を持ち得ることを考慮し、間隙Gを調整可能な手段を支持部103および105に付加してもよいし、あるいは錠剤Tの寸法に合わせ、望ましい間隙を設定する支持部103および105ないしは高さ規制部材101を交換して取り付け可能としてもよい。
【0026】
本実施形態では、高さ規制部材101は搬送路10の比較的上流域すなわち錠剤Tの搬送密度が比較的低い位置に、搬送路10を斜めに跨ぐように配置されている。このため、搬送路10に直交して高さ規制部材を配置する場合や、特許文献1に開示されたものよりも多数の錠剤の高さ規制を行うことが可能となる。また、本実施形態の高さ規制部材101は、ガイド部材20上に配置される支持部103が搬送方向下流側、ガイド側面21と対向する側壁上に配置される支持部105が搬送方向上流側に位置している。後述のように、本実施形態の高さ規制ゲート100は、立った姿勢の錠剤Tの大部分を効果的に横転させるか、あるいは円滑に通過させるものであるが、一部の錠剤は立った姿勢のまま高さ規制部材101に沿って移動して行くことが考えられる。高さ規制部材101の延在方向を本実施形態のように定めることは、そのような錠剤をガイド側面21の側に積極的に案内して行くことになり、その過程で横転が生じることも期待できる。
【0027】
加えて、本実施形態の高さ規制部材101は弧形状を有し、上流に向って凸となるように取り付けられている。これは、図5に示すように、支持部105による支持部分における高さ規制部材101の接線方向が搬送方向に直交する方向に対して成す角θ1と、支持部103による支持部分における接線方向が搬送方向に直交する方向に対して成す角θ2とが、θ1≦θ2の関係にあることを意味する。
【0028】
図6(a)および(b)を用いてその効果を説明する。なお、これらの図において、符号101’は錠剤Tに最初に接触する高さ規制部材101の部分、T’は当該部分101’に接触する錠剤Tの部分をそれぞれ示す。同図(a)に示すように、高さ規制部材101が搬送方向上流に向って凸の弧をなすように配置される場合、高さ規制部材の部分101’に対する錠剤の部分T’の接触点(ないしは接触面積)が限局され、錠剤の厚み方向のいずれか一方に偏倚した位置でのみ接触する。このため錠剤Tを横転させる力が有効に働き、錠剤を目標姿勢とする効果が一層高まる。これに対し、同図(b)に示すように、高さ規制部材101が搬送方向上流に向って凹の弧をなすように配置される場合、高さ規制部材の部分101’に対して錠剤の部分T’は対称の2点で接触し、このため錠剤Tを横転させる力が有効に働かない可能性が生じるのである。
【0029】
さて、本実施形態のように弧状の高さ規制部材101を搬送方向上流に向って凸となるように配置した場合でもなお、錠剤同士の重なりを解き、また立った姿勢の錠剤を横転させる力が有効に働かないことも考えられる。そのような場合、例えば立った姿勢の錠剤Tは、高さ規制部材101に当接した以降、それ以上搬送されることなくその位置で回転を続けたり、あるいは高さ規制部材101と搬送面との間隙に噛み込んだりすることで、自身のみならず後続の錠剤Tをも滞留させ、詰まりを生じさせる要因となってしまう可能性がある。また、噛み込みにより生じる負荷によって、錠剤Tの破損や高さ規制部材101の歪みなどがもたらされることも考えられる。
【0030】
そこで本実施形態では、高さ規制部材101を例えば弾性変形可能な材料で形成する。すなわち、図7(a)に示すように立った姿勢のまま間隙Tに進入してくる錠剤Tとの当接に応じ、同図(b)に示すように弾性変形し、間隙Gを拡張して錠剤Tを円滑に通過させ、その通過後には同図(c)に示すように復原するように高さ規制部材101を構成する。あるいは、図7(b)および(c)の二点鎖線で示すように、立った姿勢のまま間隙に進入してくる錠剤Tとの当接に応じて高さ規制部材101が上方に変位し、錠剤Tの通過後に元の位置に復帰するような構成が採用されてもよい。この場合は、錠剤との当接に応じて高さ規制部材101の上方への変位を許容し、当接の解除後には自重により元の位置に復帰できるよう、高さ規制部材101の支持部103および105を構成することができる。また、例えばばねにより高さ規制部材101を懸架するように支持部103および105を構成することもできる。
【0031】
また、立った姿勢の錠剤Tの通過を、高さ規制部材101の変形または変位によって許容することに加え、高さ規制部材101が存在する範囲に対応して搬送ベルト11の支持部材120に凹部121を設け、錠剤Tの通過時に搬送ベルト11の撓みを許容することで、通過が一層円滑に行われるようにすることができる。なお、図4(a)、(b)および図7(a)〜(c)に示す例では、高さ規制部材101の上流側の端部から下流側の端部にわたる搬送ベルト11の下部全体に凹部121を設けているが、高さ規制部材101に沿った範囲に限局して凹部が設けられるものでもよい。
【0032】
高さ規制部材101の弾性変形によって間隙Gを拡張する構成を採用するか、あるいは高さ規制部材101を変位可能に支持することで間隙を拡張する構成を採用するかに応じて、高さ規制部材101の形成材料および断面形状を適切に選択することができる。
【0033】
高さ規制部材101の弾性変形によって間隙Gを拡張する構成を採用する場合、高さ規制部材の好ましい形成材料は例えば硬度ショアA40のシリコーンゴムが挙げられる。例えば外径4mm、内径2mm、断面二次モーメント11.8mm、ヤング率4MPaのシリコーンゴムのチューブであれば、曲げ剛性は47.2N・mmとなる。
【0034】
また、高さ規制部材101を変位可能に支持する構成を採用する場合、例えば硬度ショアA100の樹脂材料や、ステンレスなどの材料を用いて高さ規制部材101を形成することができる。例えば外径12mm、内径9mm、断面二次モーメント696mm、ヤング率550MPaのフッ素樹脂製のチューブであれば、曲げ剛性は383×10N・mmとなる。また、外径12mm、断面二次モーメント1.02×10mm、ヤング率206GPaのステンレスの中実棒を用いるのであれば、曲げ剛性は210×10N・mmとなる。
【0035】
以上のように、高さ規制部材101との接触によっても目標姿勢とはならなかった錠剤Tを円滑に通過させる構成を採用したことにより、錠剤の滞留や詰まりを効果的に抑制することができ、これにより、滞留や詰まりを解消するために搬送路を開放する等の処理を大幅に軽減できる。また、高さ規制ゲートと、目標姿勢とならなかった錠剤との接触に伴ってそれらに作用する負荷を軽減することができる。
【0036】
なお、以上の実施形態においては、円形の横断面を有する中空または中実の高さ規制部材101について説明した。しかし搬送される小型成形品同士の重なりの解除または前記小型成形品の横転を促進して前記小型成形品を目標姿勢に転換するという所期の目的を達成し得るのであれば、高さ規制部材101の断面形状は任意所望に選択し得るものである。また、高さ規制部材101の形成材料についても適宜の選択が可能である。そして、高さ規制部材の曲げ剛性に応じた変形の程度が十分でないのであれば、さらにこれを変位可能に支持するようにすることも可能である。
【0037】
さらに、上述の実施形態では、1つの搬送路10と1つのリターン路80とを備えた構成について説明したが、本発明は、図8に示すように2つの搬送路10と1つのリターン路80とを備えた構成に適用されるものであってもよいし、その他の組み合わせに適用されるものであってもよい。
【0038】
加えて、上述の実施形態では、小型成形品として図3(a)に示すような扁平な略円柱状の錠剤が搬送される場合を例示したが、図3(b)、(c)および(d)にそれぞれ示されるようなR付き錠、糖衣錠および異形錠の搬送にも有効に適用できる。特に、図3(c)に示される錠剤であっても、周囲の錠剤に支えられていたり、搬送ベルト上を転動していたりするときには立った姿勢となっていることも考えられるので、本発明の適用は有効である。また、本発明は、錠剤のみならず粒状の菓子その他の小型成形品の搬送装置にも適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0039】
1 搬送装置
10 搬送路
11 搬送ベルト
20 ガイド部材
21 ガイド側面
80 リターン路
81 リターンベルト
100 高さ規制ゲート
101 高さ規制部材
103、105 支持部
120 搬送ベルト支持部材
121 凹部
T 錠剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8