特許第5992213号(P5992213)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5992213プレキャスト型枠、プレキャスト型枠取付構造及びプレキャスト型枠取付方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992213
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】プレキャスト型枠、プレキャスト型枠取付構造及びプレキャスト型枠取付方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/86 20060101AFI20160901BHJP
   E04B 1/16 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
   E04B2/86 601E
   E04B2/86 601C
   E04B1/16 K
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-130166(P2012-130166)
(22)【出願日】2012年6月7日
(65)【公開番号】特開2013-253435(P2013-253435A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100092495
【弁理士】
【氏名又は名称】蛭川 昌信
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119220
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 武彦
(72)【発明者】
【氏名】大庭 光商
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 豊
(72)【発明者】
【氏名】日下 郁夫
【審査官】 佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−346407(JP,A)
【文献】 特開平08−199708(JP,A)
【文献】 特開平05−071163(JP,A)
【文献】 特開平08−199510(JP,A)
【文献】 特開2004−092098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/16
E04B 2/86
E04B 2/84
E01D 21/00
E04G 9/00
E04G 17/18
E04G 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の平面によって形成される底面部及び前記底面部の少なくとも1つの端部から立ち上がる壁部を含む底面パネルと、
板状の平面によって形成される側面部及び前記側面部の下方から段差を有して延設され前記底面パネルの前記壁部に取り付けられる取付部を含む側面パネルと、
板状の平面によって形成されて前記底面パネル及び前記側面パネルに取り付けられる妻面部を含む妻面パネルと、
を有し、
前記壁部に埋め込まれたインサート部材と前記取付部に埋め込まれたインサート部材とを、それぞれ固定部材を用いて結合する
ことを特徴とするプレキャスト型枠。
【請求項2】
前記底面部は、上面に開口して埋め込まれたインサート部材を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のプレキャスト型枠。
【請求項3】
前記妻面パネルは、前記妻面部の下方から段差を有して延設され前記底面パネルの前記壁部に取り付けられる取付部を含む
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプレキャスト型枠。
【請求項4】
対向する2つの前記側面パネルの側面部に対して取り付けられるターンバックルを有する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のプレキャスト型枠。
【請求項5】
架台と、
前記架台に設置され請求項2乃至4に記載された前記プレキャスト型枠を吊り下げる吊り下げ部材と、
を備え、
前記吊り下げ部材は、前記底面部に埋め込まれたインサート部材に取り付けられる
ことを特徴とするプレキャスト型枠取付構造。
【請求項6】
前記吊り下げ部材は、前記架台に対する前記底面パネルの高さを調節することが可能である
ことを特徴とする請求項5に記載のプレキャスト型枠取付構造。
【請求項7】
架台から吊り下げられた吊り下げ部材を底面パネルの底面部の上面に開口して埋め込まれたインサート部材に取り付ける底面パネル取付工程と、
前記底面パネル取付工程より後に、前記底面パネルの前記底面部から立ち上がる壁部に側面パネルの板状の平面によって形成される側面部の下方から段差を有して延設される取付部を取り付ける側面パネル取付工程と、
前記側面パネル取付工程より後に、前記底面パネル及び前記側面パネルに妻面パネルを取り付ける妻面パネル取付工程と、
前記妻面パネル取付工程より後に、対向する2つの前記側面パネルの側面部に対してターンバックルを取り付けるターンバックル取付工程と、
を有する
ことを特徴とするプレキャスト型枠の取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャスト型枠、プレキャスト型枠取付構造及びプレキャスト型枠取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、張り出し梁等の施工方法では、図16に示すように、埋め込み金具が組み込まれた平板状のプレキャスト型枠101を、セパレータ102及び支保工103等を用いて外側から支持した状態でコンクリート打設を行い、養生後、セパレータ102及び支保工103等を取り外すという手順で行われていた。例えば、このような工法でバルコニーを構築するものが特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−105680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の施工方法では、コンクリート打設のための型枠、鉄筋及びコンクリート等の重量物を支持するために、支保工や足場が必要であった。そのため、支保工や足場のための十分なスペースを必要としていた。また、これらの支保工や足場の架設工事には、多大な労力を要していた。さらに、型枠は、コンクリートと型枠の自重、打ち込み時の衝撃、積載荷重等に耐える強度と剛性を必要とするので、組み立てが大変であった。
【0005】
コンクリートの打設に際しては不安定な足場上で作業をしなければならず、作業性に欠けるという問題があった。また、コンクリートの養生後は支保工や足場を撤収する作業を行うため、時間がかかり、遅れを生じることにもなっていた。
【0006】
本発明の目的は、このような問題点を解決するためになされたものであり、支保工が不要で、施工が簡単であり、大幅な省力化を図ることができるとともに、作業の安全性が向上するプレキャスト型枠、プレキャスト型枠取付構造及びプレキャスト型枠取付方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態にかかるプレキャスト型枠は、板状の平面によって形成される底面部及び前記底面部の少なくとも1つの端部から立ち上がる壁部を含む底面パネルと、板状の平面によって形成される側面部及び前記側面部の下方から段差を有して延設され前記底面パネルの前記壁部に取り付けられる取付部を含む側面パネルと、板状の平面によって形成されて前記底面パネル及び前記側面パネルに取り付けられる妻面部を含む妻面パネルと、を有し、前記壁部に埋め込まれたインサート部材と前記取付部に埋め込まれたインサート部材とを、それぞれ固定部材を用いて結合することを特徴とする。
【0008】
また、前記底面部は、上面に開口して埋め込まれたインサート部材を有することを特徴とする。
【0009】
また、前記妻面パネルは、前記妻面部の下方から段差を有して延設され前記底面パネルの前記壁部に取り付けられる取付部を含むことを特徴とする。
【0010】
また、対向する2つの前記側面パネルの側面部に対して取り付けられるターンバックルを有することを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明にかかるプレキャスト型枠取付構造は、架台と、前記架台に設置され請求項2乃至4に記載された前記プレキャスト型枠を吊り下げる吊り下げ部材と、を備え、前記吊り下げ部材は、前記底面部に埋め込まれたインサート部材に取り付けられることを特徴とする。
【0012】
また、前記吊り下げ部材は、前記架台に対する前記底面パネルの高さを調節することが可能であることを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明にかかるプレキャスト型枠取付方法は、架台から吊り下げられた吊り下げ部材を底面パネルの底面部の上面に開口して埋め込まれたインサート部材に取り付ける底面パネル取付工程と、前記底面パネル取付工程より後に、前記底面パネルの前記底面部から立ち上がる壁部に側面パネルの板状の平面によって形成される側面部の下方から段差を有して延設される取付部を取り付ける側面パネル取付工程と、前記側面パネル取付工程より後に、前記底面パネル及び前記側面パネルに妻面パネルを取り付ける妻面パネル取付工程と、前記妻面パネル取付工程より後に、対向する2つの前記側面パネルの側面部に対してターンバックルを取り付けるターンバックル取付工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかるプレキャスト型枠は、板状の平面によって形成される底面部及び前記底面部の少なくとも1つの端部から立ち上がる壁部を含む底面パネルと、板状の平面によって形成される側面部及び前記側面部の下方から段差を有して延設され前記底面パネルの前記壁部に取り付けられる取付部を含む側面パネルと、板状の平面によって形成されて前記底面パネル及び前記側面パネルに取り付けられる妻面部を含む妻面パネルと、を有するので、支保工が不要で、施工が簡単であり、大幅な省力化を図ることができるとともに、作業の安全性が向上する。
【0015】
また、前記底面部は、上面に開口して埋め込まれたインサート部材を有するので、底面部の埋め直しをする必要がなくなり、大幅な省力化を図ることができ、時間を短縮させることが可能となる。
【0016】
また、前記妻面パネルは、前記妻面部の下方から段差を有して延設され前記底面パネルの前記壁部に取り付けられる取付部を含むので、位置合わせが容易にでき、施工性が向上する。
【0017】
また、対向する2つの前記側面パネルの側面部に対して取り付けられるターンバックルを有するので、側面パネルの間隔を調整することができ、各パネルの位置合わせを行うことが可能となると共に、コンクリートの打設時に、コンクリート打設圧を負担することができる。
【0018】
さらに、本発明にかかるプレキャスト型枠取付構造は、架台と、前記架台に設置され前記プレキャスト型枠を吊り下げる吊り下げ部材と、を備え、前記吊り下げ部材は、前記インサート部材に取り付けられるので、支保工が不要で、施工が簡単であり、大幅な省力化を図ることができるとともに、作業の安全性が向上する。
【0019】
また、前記吊り下げ部材は、前記架台に対する前記底面パネルの高さを調節することが可能であるので、作業の安全性が向上する。
【0020】
さらに、本発明にかかるプレキャスト型枠取付方法は、架台から吊り下げられた吊り下げ部材を底面パネルの底面部の上面に開口して埋め込まれたインサート部材に取り付ける底面パネル取付工程と、前記底面パネルの前記底面部から立ち上がる壁部に側面パネルの板状の平面によって形成される側面部の下方から段差を有して延設される取付部を取り付ける側面パネル取付工程と、前記底面パネル及び前記側面パネルに妻面パネルを取り付ける妻面パネル取付工程と、対向する2つの前記側面パネルの側面部に対してターンバックルを取り付けるターンバックル取付工程と、を有するので、支保工が不要で、施工が簡単であり、大幅な省力化を図ることができるとともに、作業の安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態のプレキャスト型枠の底面パネルを示す図である。
図2】本実施形態のプレキャスト型枠の側面パネルを示す図である。
図3】本実施形態のプレキャスト型枠の第1妻面パネルを示す図である。
図4】本実施形態のプレキャスト型枠の第2妻面パネルを示す図である。
図5】本実施形態のプレキャスト型枠の第1インサート部材を示す図である。
図6】本実施形態のプレキャスト型枠の第2インサート部材を示す図である。
図7】本実施形態のプレキャスト型枠の第3インサート部材を示す図である。
図8】本実施形態のプレキャスト型枠の底面パネル取付工程を示す図である。
図9】本実施形態の吊り下げ部材の一部を拡大した図である。
図10】本実施形態のプレキャスト型枠の側面パネル取付工程を示す図である。
図11】本実施形態のプレキャスト型枠の第1妻面パネル取付工程を示す図である。
図12】本実施形態のプレキャスト型枠の第1ターンバックル取付工程を示す図である。
図13】本実施形態のターンバックルを示す図である。
図14】本実施形態のプレキャスト型枠の第2ターンバックル取付工程を示す図である。
図15】本実施形態のプレキャスト型枠のコンクリート打設工程を示す図である。
図16】従来の技術を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本実施形態のプレキャスト型枠について、以下説明する。
【0023】
図1は、本実施形態のプレキャスト型枠の底面パネルを示す図である。 図1(a)は、底面パネルの平面図であり、図1(b)は、底面パネルの側面図である。
【0024】
底面パネル1は、板状の平面によって形成される底面部11と、底面部11の少なくとも1つの端部から垂直又は略垂直に立ち上がる壁部12と、を有する。底面部11は、第1インサート部材4が埋め込まれている。また、壁部12は、第2インサート部材5が埋め込まれている。本実施形態では、壁部12は、底面部11の向かい合う端部に対向して第1壁部12a及び第2壁部12bを持つ。
【0025】
図2は、本実施形態のプレキャスト型枠の側面パネルを示す図である。 図2(a)は、側面パネルの平面図であり、図2(b)は、側面パネルの側面図である。
【0026】
側面パネル2は、板状の平面によって形成される側面部21と、側面部21の下方から段差を有して延設され底面パネル1に取り付けられる取付部22と、を有する。側面部21は、第1インサート部材4及び第2インサート部材5が埋め込まれている。また、取付部22は、第3インサート部材6が埋め込まれている。なお、側面パネル2は、底面パネル1に対して左右対称に取り付けられるため、図2に示した側面パネル2の他に、第1インサート部材4が左右対称に埋め込まれた側面パネル2がある。
【0027】
図3は、本実施形態のプレキャスト型枠の第1妻面パネルを示す図である。図4は、本実施形態のプレキャスト型枠の第2妻面パネルを示す図である。 図3(a)は、第1妻面パネルの平面図であり、図3(b)は、第1妻面パネルの側面図である。図4(a)は、第2妻面パネルの平面図であり、図4(b)は、第2妻面パネルの側面図である。
【0028】
妻面パネル3は、底面パネル1及び側面パネル2に取り付けられる第1妻面パネル3aと、第1妻面パネル3a及び側面パネル2に取り付けられる第2妻面パネル3bを有する。
【0029】
図3に示すように、第1妻面パネル3aは、板状の平面によって形成される第1妻面部31を有する。第1妻面部31は、第1インサート部材4及び第2インサート部材5が埋め込まれている。なお、第1妻面パネル3aは、第1妻面部31の下方から段差を有して延設され底面パネル1に取り付けられる取付部を有してもよい。この場合、底面パネル1の第1妻面パネル3aが取り付けられる側に壁部を形成し、底面パネル1の壁部と第1妻面部31の取付部を結合するように形成する。
【0030】
図4に示すように、第2妻面パネル3bは、板状の平面によって形成される第2妻面部32と、第2妻面部32の下方から段差を有して延設され第1妻面パネル3aに取り付けられる取付部33と、を有する。第1妻面部31は、第1インサート部材4及び第2インサート部材5が埋め込まれている。また、取付部33は、第3インサート部材6が埋め込まれている。
【0031】
底面パネル1、側面パネル2及び妻面パネル3を持つプレキャスト型枠1は、軽量で高強度のビニロン繊維混入コンクリート又はポリマー含浸コンクリート等の材料を用いる。底面パネル1、側面パネル2及び妻面パネル3は、それぞれ人力で取り付けできる程度の重量である。
【0032】
次に、インサート部材について説明する。
【0033】
図5は、本実施形態の第1インサート部材を示す図である。図5(a)は、第1インサート部材の平面図であり、図5(b)は、第1インサート部材の側面図である。
【0034】
第1インサート部材4は、ネジ部に螺合するナット部41と、ナット部41に溶接等で固着された定着筋42と、を有する。図1図4に示すように、第1インサート部材4は、底面パネル1の底面部11、側面パネル2の側面部21、第1妻面パネル3aの第1妻面部31及び第2妻面パネル3aの第2妻面部32に、それぞれ所定の数だけ埋め込まれている。定着筋42を有することで、第1インサート部材4は、各パネル1,2,3に埋め込まれた後、所定の荷重で引っ張られたとしても、各パネル1,2,3から引き抜かれないようになっている。
【0035】
図6は、本実施形態の第2インサート部材を示す図である。 図6(a)は、第2インサート部材の平面図であり、図6(b)は、第2インサート部材の側面図である。
【0036】
第2インサート部材5は、ボルトを螺合するナット部51と、ナット部51に溶接等で固着された傘部52と、を有する。図1図4に示すように、第2インサート部材5は、底面パネル1の壁部12、側面パネル2の側面部21、第1妻面パネル3aの第1妻面部31及び第2妻面パネル3aの第2妻面部32に、それぞれ所定の数だけ埋め込まれている。傘筋52を有することで、第1インサート部材4は、各パネル1,2,3に埋め込まれた後、所定の荷重で引っ張られたとしても、各パネル1,2,3から引き抜かれないようになっている。
【0037】
図7は、本実施形態の第3インサート部材を示す図である。 図7(a)は、第3インサート部材の平面図であり、図7(b)は、第3インサート部材の側面図である。
【0038】
第3インサート部材6は、本体部61と、本体部61から階段状の段差を有して延びる脚部62と、を有する。本体部61には、ボルトを挿通するための孔部61aを有する。図1図4に示すように、第3インサート部材6は、側面パネル2の取付部22、第2妻面パネル3bの取付部33に、それぞれ所定の数だけ埋め込まれている。
【0039】
図5図7に示した第1インサート部材4,第2インサート部材5及び第3インサート部材6は、底面パネル1、側面パネル2及び妻面パネル3を貫通することない。したがって、各インサート部材4,5,6における穴埋めの後処理を省略することができ、施工性が向上する。また、各インサート部材は、可能であればどの箇所に使用してもよい。
【0040】
次に、本実施形態のプレキャスト型枠の取付方法について説明する。
【0041】
図8は、本実施形態のプレキャスト型枠の底面パネル取付工程を示す図である。
【0042】
プレキャスト型枠を取り付ける際には、架台7及び吊り下げ部材8を用いる。
【0043】
架台7は、支持架台部71と、吊り下げ架台部72と、を有し、門型を形成している。架台7を設けることで、現場における足場やサポート材の省力化が可能となる。
【0044】
図9は、本実施形態の吊り下げ部材8の一部を拡大した図である。
【0045】
吊り下げ部材8は、架台7の吊り下げ架台部72に支持される吊り下げ支持部81と、吊り下げ支持部81を架台7に固定するボルト及びナット等の支持固定部82と、吊り下げ支持部81に取り付けられる吊り下げ筒固定部83と、吊り下げ筒固定部83に支持される筒状の吊り下げ筒84と、吊り下げ筒84に対して貫通して移動可能であり下端に図示しないネジ部が形成される吊り下げ棒85と、吊り下げ筒84に対する吊り下げ棒85の移動を制限して位置決めする位置決め部86と、を有する。架台7の吊り下げ架台部72から吊り下げられている。
【0046】
本実施形態のプレキャスト型枠を取り付けるには、このような架台7と吊り下げ部材8に対して、まず、図8に示すように、底面パネル1を吊り下げる。底面パネル1は、底面部11の上面に開口して埋め込まれた第1インサート部材4に対して吊り下げ棒85を回転させて下端のネジ部を螺合することで、吊り下げられる。吊り下げ棒85は、吊り下げ筒84に対して位置を調整できるので、底面パネル1は、架台7に対して高さを調節することが可能である。
【0047】
図10は、本実施形態のプレキャスト型枠の側面パネル取付工程を示す図である。
【0048】
底面パネル1を取り付けた後、側面パネル2を取り付ける側面パネル取付工程を行う。まず、底面パネル1の壁部12に埋め込まれた第2インサート部材5と側面パネル2の取付部22に埋め込まれた第3インサート部材6を対向させる。その後、ボルト等の固定部材を用いて、第2インサート部材5及び第3インサート部材6を結合することによって、側面パネル2は、底面パネル1に対して固定され取り付けられる。
【0049】
このように、底面パネル1に壁部12を設け、側面パネル2に取付部22を設けたことで、側面パネル2を取りつける際に、底面パネル1と側面パネル2の位置合わせが容易にでき、施工性が向上する。
【0050】
図11は、本実施形態のプレキャスト型枠の第1妻面パネル取付工程を示す図である。
【0051】
底面パネル1に対して側面パネル2を取り付けた後、第1妻面パネル3aを取り付ける第1妻面パネル取付工程を行う。
【0052】
まず、第1妻面パネル3aを底面パネル1に対して固定する。底面パネル1の底面部11に埋め込まれた第1インサート部材4と第1妻面パネル3aの下方に埋め込まれた第1インサート部材4とに渡って垂直に折り曲げられた曲板部材91を配置する。その後、ボルト等の固定部材を用いて、曲板部材91を、底面パネル1の底面部11に埋め込まれた第1インサート部材4と第1妻面パネル3aの下方に埋め込まれた第1インサート部材4にそれぞれ固定することによって、第1妻面パネル3aは、底面パネル1に対して固定され取り付けられる。
【0053】
底面パネル1に対して第1妻面パネル3を固定した後、第1妻面パネル3aを側面パネル2に対して固定する。側面パネル2の側面部21に埋め込まれた第1インサート部材4と第1妻面パネル3aの上方に埋め込まれた第1インサート部材4とに渡って垂直に折り曲げられた曲板部材92を配置する。その後、ボルト等の固定部材を用いて、曲板部材92を、側面パネル2の側面部21に埋め込まれた第1インサート部材4と第1妻面パネル3aの上方に埋め込まれた第1インサート部材4にそれぞれ固定することによって、第1妻面パネル3aは、側面パネル2に対して固定され取り付けられる。
【0054】
図12は、本実施形態のプレキャスト型枠の第1ターンバックル取付工程を示す図である。図13は、ターンバックルを示す図である。
【0055】
図13に示すように、本実施形態のプレキャスト型枠で用いるターンバックル9は、通常のターンバックルを形成する胴部96と、ネジ部97と、を有し、ネジ部97の端部に板部98を溶接等によって取り付けたものである。
【0056】
ターンバックル9は、対向する2つの側面パネル2に対して取り付けられる。側面パネル2の側面部21に埋め込まれた第1インサート部材4に曲板部材93の孔部を対向させて配置する。その後、ボルト等の固定部材を用いて、曲板部材93を、内側に突出するように、側面パネル2の側面部21に埋め込まれた第1インサート部材4に固定する。次に、ターンバックル9の板部98の孔部を曲板部材93の孔部を対向させて配置する。その後、ターンバックル9の板部98の孔部と曲板部材93の孔部に、ボルト及びナット等の固定部材を通して、ターンバックル9を曲板部材93に固定する。そして、ターンバックル9は、対向する2つの側面パネル2に対して固定される。
【0057】
また、本実施形態のプレキャスト型枠では、1段目の側面パネル2及び妻面パネル3の上方に2段目の側面パネル2及び妻面パネル3を連結している。
【0058】
1段目の側面パネル2に埋め込まれた第2インサート部材5と2段目の側面パネル2の取付部22に埋め込まれた第3インサート部材6を対向させる。その後、ボルト等の固定部材を用いて、1段目の側面パネル2に埋め込まれた第2インサート部材5と2段目の側面パネル2の取付部22に埋め込まれた第3インサート部材6を結合することによって、2段目の側面パネル2は、1段目の側面パネル2に対して固定され取り付けられる。
【0059】
同様に、図3に示した1段目の第1妻面パネル3aの妻面部31に埋め込まれた第2インサート部材5と図4に示した2段目の第2妻面パネル3bの取付部33に埋め込まれた第3インサート部材6を対向させる。その後、ボルト等の固定部材を用いて、1段目の第1妻面パネル3aの妻面部31に埋め込まれた第2インサート部材5と2段目の第2妻面パネル3bの取付部33に埋め込まれた第3インサート部材6を結合することによって、2段目の第2妻面パネル3bは、1段目の第1妻面パネル3aに対して固定され取り付けられる。
【0060】
図14は、本実施形態のプレキャスト型枠の第2ターンバックル取付工程を示す図である。
【0061】
ターンバックル9は、対向する2つの2段目の側面パネル2に対して取り付けられる。2段目の側面パネル2の側面部21に埋め込まれた第1インサート部材4に曲板部材93の孔部を対向させて配置する。その後、ボルト等の固定部材を用いて、曲板部材93を、内側に突出するように、2段目の側面パネル2の側面部21に埋め込まれた第1インサート部材4に固定する。次に、ターンバックル9の板部98の孔部を曲板部材93の孔部を対向させて配置する。その後、ターンバックル9の板部98の孔部と曲板部材93の孔部に、ボルト及びナット等の固定部材を通して、ターンバックル9を曲板部材93に固定する。そして、ターンバックル9は、対向する2つの2段目の側面パネル2に対して固定される。
【0062】
ターンバックル9を取り付けることで、特に、側面パネルの間隔を調整することができ、各パネルの位置合わせを行うことが可能となる。
【0063】
図15は、本実施形態のプレキャスト型枠のコンクリート打設工程を示す図である。
【0064】
完成したプレキャスト型枠の内部には、鉄筋99が組み立てられて、コンクリートが打設される。
【0065】
コンクリートの打設に際しては、ターンバックル9がコンクリート打設圧を負担することができる。また、側面パネル2が取付部22を有するので、取付部22の部分の厚さが増し、コンクリート打設圧を負担することができる。
【0066】
本実施形態のプレキャスト型枠の取付工程では、底面パネル1を取り付けた後、作業者は、底面パネル1上に乗って作業を行うことができるので、省スペースで作業を行うことが可能となる。
【0067】
また、底面パネル1、側面パネル2及び妻面パネル3のいずれかのパネルに水抜き孔を設けることで、コンクリート打設前のプレキャスト型枠内の排水を行うことが可能となる。水抜き孔は、コンクリート打設時にボルト等によって塞げばよい。
【0068】
コンクリートを打設した後、プレキャスト型枠は、打設したコンクリートと共に設置される。
【0069】
このように、本実施形態にかかるプレキャスト型枠は、板状の平面によって形成される底面部11及び底面部11の少なくとも1つの端部から立ち上がる壁部12を含む底面パネル1と、板状の平面によって形成される側面部21及び側面部21の下方から段差を有して延設され底面パネル1の壁部12に取り付けられる取付部22を含む側面パネル2と、板状の平面によって形成されて底面パネル1及び側面パネ2ルに取り付けられる妻面部31を含む妻面パネル3と、を有するので、支保工が不要で、施工が簡単であり、大幅な省力化を図ることができるとともに、作業の安全性が向上する。
【0070】
また、底面部11は、上面に開口して埋め込まれたインサート部材4を有するので、底面部11の埋め直しをする必要がなくなり、大幅な省力化を図ることができ、時間を短縮させることが可能となる。
【0071】
また、妻面パネル3は、妻面部31の下方から段差を有して延設され底面パネル1の壁部12に取り付けられる取付部33を含むので、位置合わせが容易にでき、施工性が向上する。
【0072】
また、対向する2つの側面パネル2の側面部21に対して取り付けられるターンバックル9を有するので、側面パネル2の間隔を調整することができ、各パネルの位置合わせを行うことが可能となると共に、コンクリートの打設時に、コンクリート打設圧を負担することができる。
【0073】
さらに、本実施形態にかかるプレキャスト型枠取付構造は、架台7と、架台7に設置されプレキャスト型枠を吊り下げる吊り下げ部材8と、を備え、吊り下げ部材8は、インサート部材4に取り付けられるので、支保工が不要で、施工が簡単であり、大幅な省力化を図ることができるとともに、作業の安全性が向上する。
【0074】
また、吊り下げ部材8は、架台7に対する底面パネル1の高さを調節することが可能であるので、作業の安全性が向上する。
【0075】
さらに、本実施形態にかかるプレキャスト型枠取付方法は、架台7から吊り下げられた吊り下げ部材8を底面パネル1の底面部11の上面に開口して埋め込まれたインサート部材4に取り付ける底面パネル取付工程と、底面パネル1の底面部11から立ち上がる壁部12に側面パネル2の板状の平面によって形成される側面部21の下方から段差を有して延設される取付部22を取り付ける側面パネル取付工程と、底面パネル1及び側面パネル2に妻面パネル3を取り付ける妻面パネル取付工程と、対向する2つの側面パネル2の側面部21に対してターンバックル9を取り付けるターンバックル取付工程と、を有するので、支保工が不要で、施工が簡単であり、大幅な省力化を図ることができるとともに、作業の安全性が向上する。
【0076】
以上、本発明の種々の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態のみに限られるものではなく、それぞれの実施形態の構成を適宜組み合わせて構成した実施形態も本発明の範疇となるものである。
【符号の説明】
【0077】
1…底面パネル
2…側面パネル
3…妻面パネル
4…第1インサート部材
5…第2インサート部材
6…第3インサート部材
7…架台
8…吊り下げ部材
9…ターンバックル
図1
図2
図3
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