(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992242
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】注出キャップ及びそれを有する容器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/06 20060101AFI20160901BHJP
B65D 47/20 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
B65D47/06 G
B65D47/20 W
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-170563(P2012-170563)
(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公開番号】特開2014-28642(P2014-28642A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2015年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100179947
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 孝之
【審査官】
谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−249154(JP,A)
【文献】
特公昭46−037475(JP,B1)
【文献】
特開平04−215964(JP,A)
【文献】
特開2011−031932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/06
B65D 47/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口筒部を取り囲む装着筒を有して取出し口が天壁に形成された本体と、当該本体の天壁と口筒部の上端との間に固定される天壁に開口部が形成された中栓と、当該中栓と本体の天壁との間に配置されて前記開口部を開閉する逆止弁を備え、
中栓は、口筒部を取り囲むように伸びる筒壁を有し、当該筒壁の下端に、内向きに折り返し可能な爪部が設けられ、当該爪部の先端が口筒部に設けられた突出部に係止されるとともに、前記筒壁の外周面に突出部が設けられ、当該突出部に、前記装着筒の内側に設けた突出部が係止されることで、本体とともに抜け止め保持されるものであることを特徴とする注出キャップ。
【請求項2】
請求項1において、中栓の突出部を、折り返された爪部と整列する位置に配置し、当該爪部と前記突出部を口筒部と装着筒との間で挟持することを特徴とする注出キャップ。
【請求項3】
請求項1又は2において、逆止弁は、筒部材の内側に、複数の連結片を介して前記開口部を開閉する弁体が一体に設けられたものであることを特徴とする注出キャップ。
【請求項4】
請求項3において、逆止弁は、筒部材に、本体に形成された貫通孔を開閉する外気導入弁が一体に設けられたものであることを特徴とする注出キャップ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の注出キャップを容器本体に装着してなることを特徴とする容器。
【請求項6】
請求項5において、前記容器本体は、外気導入孔を有する外層体と、その内側に剥離可能に配置された内層体からなる二重容器であることを特徴とする容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体の口筒部を取り囲む装着筒を有して取出し口が形成された本体と、当該本体と口筒部との間に固定される開口部が形成された中栓と、当該中栓と本体との間に配置されて前記開口部を開閉する逆止弁を備える注出キャップ及びそれを有する容器であって、容器本体の口筒部に抜け止め保持するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
逆止弁を備える注出キャップには、計量キャップとして構成されたものがあり、その目的とするところは、容器に対する外気導入の阻止にある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−31932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、こうした注出キャップは、口筒部に対して強固に螺合させているものの、誤って容器から取り外されてしまう場合も想定される。このように、キャップが誤って取り外されてしまった場合、外気の遮断という本来の目的が没却されてしまうことが考えられる。
【0005】
本発明の目的とするところは、容器本体の口筒部に対して強固に抜け止め保持される注出キャップ及び、それを有する容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の注出キャップは、容器本体の口筒部を取り囲む装着筒を有して取出し口が天壁に形成された本体と、当該本体の天壁と口筒部の上端との間に固定される天壁に開口部が形成された中栓と、当該中栓と本体の天壁との間に配置されて前記開口部を開閉する逆止弁を備え、
中栓は、口筒部を取り囲むように伸びる筒壁を有し、当該筒壁の下端に、内向きに折り返し可能な爪部が設けられ、当該爪部の先端が口筒部に設けられた突出部に係止されるとともに、前記筒壁の外周面に突出部が設けられ、当該突出部に、前記装着筒の内側に設けた突出部が係止されることで、本体とともに抜け止め保持されるものであることを特徴とするものである。
【0007】
本発明では、中栓の突出部を、折り返された爪部と整列する位置に配置し、当該爪部と前記突出部を口筒部と装着筒との間で挟持することが好ましい。また、本発明では、逆止弁は、筒部材の内側に、複数の連結片を介して前記開口部を開閉する弁体が一体に設けられたものとすることができる。この場合、筒部材に、
本体に形成された
貫通孔を開閉する外気導入弁を一体に設けることができる。加えて、本発明は、上記注出キャップを容器本体に装着してなることを特徴とする容器である。この容器本体としては、外気導入孔を有する外層体と、その内側に剥離可能に配置された内層体からなる二重容器が挙げられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、先ず、中栓がその折り返し爪部によって容器本体の口筒部に対して係止されることで、当該口筒部に対して抜け止め保持される。次いで、本体が、その突出部によって中栓に対して係止されることで、当該中栓に対して抜け止め保持される。従って、本発明によれば、容器本体の口筒部に対して強固に抜け止め保持される注出キャップ及び、それを有する容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態であるヒンジキャップを二重容器に採用してなるスクイズ容器の要部を示す断面図である。
【
図2】同実施形態に係る、中栓の組み付け前の状態を一部断面で示す側面図である。
【
図3】同中栓の組み付け時の状態を一部断面で示す側面図である。
【
図4】同ヒンジキャップを一部断面で示す側面図である。
【
図5】同二重容器の要部を一部断面で示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態である固定式ヒンジキャップを、同ヒンジキャップを採用してなるスクイズ容器とともに詳細に説明する。
【0011】
図1中、符号1は、容器本体としての二重容器(剥離容器)である。符号2は、二重容器1を構成する外層体である。外層体2は、合成樹脂製等の可撓性材料で成形されており、変形及び復元が可能である。外層体2は、口筒部2aを有したボトル形状を有する。符号3は、外層体2とともに、二重容器1を構成する内層体である。内層体3は、外層体2の内側に剥離可能に設けられた薄肉の袋体である。内層体3の内側には、内容物を充填するための空間Sが形成されている。内層体3は、口筒部2aの上端側に固定されることで、内容物の減少とともに外層体2の内側から剥離する。内層体3は、口筒部2aに形成された貫通孔(外気導入孔)2hを通して、内層体3との間に外気が導入されることで剥離が促進される。
【0012】
符号10は、本発明の一実施形態であるヒンジキャップである。符号11は、ヒンジキャップ10を構成する本体である。本体11は、取出し口A1が形成された天壁11aとともに、天壁11aの外縁から一体に伸びる装着筒11bを有する。装着筒11bは、天壁11aから口筒部2aを取り囲むように垂下する。装着筒11bの下端部11b
1は、本体11が口筒部2aに装着されたとき、図示のように、外層体2に設けた頚部2bに密封保持される。なお、本実施形態では、下端部11b
1に環状のシール突起11sが設けられているとともに、このシール突起11sが嵌合する環状の凹部2sが頚部2bに設けられている。これにより、下端部11b
1と頚部2bとの間は強固に密封保持されている。
【0013】
また、本体11には、ヒンジ12を介して蓋体13が一体に設けられている。蓋体13は、天壁11aから間隔を置いて配置される天壁13aとともに、天壁13aの外縁から垂下する周壁13bが一体に設けられている。これにより、蓋体13は、本体11に対して閉じたときに、この本体11との間に空間を形成する。この空間には、天壁13aからシャフト13cが一体に垂下する。シャフト13cは、取出し口A1を形成する天壁11aに設けられた筒体部11dを密封する。
【0014】
符号14は、ヒンジキャップ10を構成する中栓である。中栓14は、開口部A2が形成された天壁14aとともに、天壁14aの外縁から一体に伸びる筒壁14bを有する。筒壁14bは、天壁14aから垂下する下側筒壁14b
1を有する。下側筒壁14b
1は、口筒部2aを取り囲むように垂下する。下側筒壁14b
1の下端14e
1には、
図2に示すように、複数の爪部15が一体に設けられている。爪部15は、軸線O周りに間隔を置いて配置されている。爪部15はそれぞれ、薄肉部15aを介して筒壁14bの下端14e
1に連結されている。これにより、
図3に示すように、爪部15はそれぞれ、薄肉部15aを基点に内向きに折り返すことができる。また筒壁14bは、天壁14aから起立する上側筒壁14b
2を有する。上側筒壁14b
2は、
図4に示すように、本体11に組み付けたとき、筒壁14bの上端14e
2が環状の凹所11c
1に接触するとともに、装着筒11bの内側に設けられた環状の膨出部11b
2に密封保持される。これにより、中栓14は、同図に示すように、爪部15を折り曲げた状態で本体11に組み付けることができる。
【0015】
さらに、筒壁14bの外周面には、突出部14pが設けられている。この突出部14pには、
図4に示すように、装着筒11bの内側に設けた突出部11pが引っ掛かる。これにより、中栓14が本体11に係止されることで、本体11とともに抜け止め保持される。また、本実施形態では、図示のように、中栓14の突出部14pを、折り返された爪部15と整列する位置に配置する。これにより、
図1に示すように、ヒンジキャップ10を二重容器1に固定すると、口筒部2aと装着筒11bとの間で爪部15と突出部14pが挟持される。
【0016】
符号16は、ヒンジキャップ10を構成する逆止弁である。逆止弁16は、合成樹脂製等の可撓性材料で成形されており、変形及び復元が可能である。逆止弁16は、本体の天壁11aと中栓の天壁14aとの間に配置されている。逆止弁16は、筒部材としての連結筒16aを有し、その下端部16a
1が中栓の天壁14aに設けられた環状の凹部14cに嵌合するとともに、その上端部16a
2が本体の天壁11aに設けられた環状の凹部11c
2に嵌合する。連結筒の下端部16a
1は、固定部C1によって凹部14cに強固かつ液密状態に固定されている。固定部C1としては、例えば、本実施形態のように、下端部16a
1に形成された環状凸部と、この凸部を嵌合させる凹部14cに形成された環状凹部が挙げられる。連結筒の上端部16a
2も、同様に、固定部C2によって凹部11c
2に固定されている。固定部C2としては、例えば、本実施形態のように、上端部16a
2に形成された環状凹部と、この凹部を嵌合させる凹部11cに形成された環状凸部が挙げられる。これにより、逆止弁16は、本体11及び中栓14に対して抜け止め保持される。なお、本実施形態では、本体の天壁11aからシール筒11eが一体に垂下する。シール筒11eは、上端部16a
2をより強固に液密状態に保持する。
【0017】
また、連結筒16aの内側には、開口部A2を開閉する弁体16bが配置されている。弁体16bは、軸線O周りに配置された複数の連結片16cを介して連結筒16aに一体に設けられている。これにより、二重容器1内の圧力が上昇すると、弁体16bは、連結片16cに抗して開口部A2を開放し、二重容器1内の圧力が低下すると、連結片16cの復元力によって開口部A2を封止する。
【0018】
これに対し、連結筒16aの外側には、本体の天壁11aに形成された貫通孔11hを封止する環状の弾性舌片16dが一体に設けられている。弾性舌片16dは、二重容器1内の圧力が低下しない状態では、
図1に示すように、弾性舌片16dの付勢力によって貫通孔11hを封止する。これに対し、内容物の排出により二重容器1(内層体3)内の圧力が減少すると、外層体2と内層体3との間に生じる負圧が口筒部2aに形成された貫通孔2hを通して弾性舌片16dの背面を引き離すことで、弾性舌片16dは、その付勢力に抗して貫通孔11hを開放する。これにより、貫通孔11hを通して外気が外層体2と内層体3との間に導入されることで、内層体3を外層体2に対して容易に剥離させることができる。すなわち、弾性舌片16dは、外気導入弁として機能する。なお、本実施形態では、中栓14の外周面に、装着筒11bとの間での外気導入を容易に行うために、切り欠き部14nが形成されている。
【0019】
ここで、ヒンジキャップ10の組み付け方法及び、そのヒンジキャップ10をスクイズ容器1に組み付ける方法の一例を説明する。
【0020】
本実施形態では、先ず、
図2に示す中栓14の爪部15を、
図3に示すに折り返して中栓14を組み付け状態に形成する。次いで、この中栓14を本体11の装着筒11bの内側に挿入することで、本体11との間に逆止弁16を組み付ける。これにより、
図4に示すように、ヒンジキャップ10が組み付けられる。
【0021】
一方、ヒンジキャップ10は、二重容器の口筒部2aに打栓されることで組み付けられる。口筒部2aには、
図5に示すように、環状の突出部2pが間欠的に設けられている。ヒンジキャップ10は、口筒部2aに打栓されることで、爪部の先端15eが突出部2pに引っ掛かることで、
図1に示すように、口筒部2aに係止される。また、本実施形態では、天壁14aからシール筒14sが一体に垂下する。シール筒14sは、口筒部2aの内側を更に、強固かつ液密状態に固定保持する。なお、本発明に従えば、ヒンジキャップ10は、口筒部2aに対して中栓14、逆止弁16及び本体11を順次、組み付けて形成することも可能である。
【0022】
上述のように、本実施形態では、先ず、中栓14がその折り返し爪部15によって口筒部2aに対して係止されることで、当該口筒部2aに対して抜け止め保持される。次いで、本体11が、その突出部11pによって中栓14に対して係止されることで、当該中栓14に対して抜け止め保持される。従って、このように本実施形態によれば、口筒部2aに対して強固に抜け止め保持される注出キャップ及び、それを有するスクイズ容器を提供することができる。
【0023】
また、本実施形態では、
図1のように、中栓の突出部14pを、折り返された爪部15と整列する位置に配置し、この爪部15と突出部14pを口筒部2aと装着筒11bとの間で挟持することで、爪部15を折り曲げることで生じる復元力を利用して、ヒンジキャップ10をより強固に固定することができる。
【0024】
上述したところは、本発明の一形態を示したにすぎず、本発明に従えば、種々の変更を加えることができる。例えば、本発明の注出キャップは、本体11と中栓14との間に逆止弁16を配置したものであるため、密閉性が要求される容器に採用されるのが好ましい。このため、スクイズ容器のような二重容器に採用することが好ましいが、密閉性が要求される容器であれば単層の容器に採用することもできる。このため、本発明に従えば、貫通孔2h,11h等の外気導入路は省略することができる。蓋体13は、ヒンジ式のものに限定されることなく、ねじ式等の様々なものを採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、容器本体の口筒部を取り囲む装着筒を有して取出し口が天壁に形成された本体と、当該本体の天壁と口筒部の上端との間に固定される天壁に開口部が形成された中栓と、当該中栓と本体の天壁との間に配置されて前記開口部を開閉する逆止弁を備える注出キャップであれば、様々なキャップに適用させることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 二重容器(容器本体)
2 外層体
2a 口筒部
2b 頚部
2h 貫通孔(外気導入孔)
2p 突出部
3 内層体
10 ヒンジキャップ
11 本体
11a 天壁
11b 装着筒
11b
1 下端部
11b
2 上端部
11c
1 凹所
11c
2 凹部
11d 筒体部
11h 貫通孔(外気導入路)
11p 突出部
12 ヒンジ
13 蓋体
14 中栓
14a 天壁
14b 筒壁
14b
1 下側筒壁
14b
2 上側筒壁
14e
1 下端
14e
2 上端
14n 切り欠き部(外気導入路)
14p 突出部
15 爪部
15a 薄肉部
15e 先端
16 逆止弁
16a 連結筒
16b 弁体
16c 連結片
16d 弾性舌片(外気導入弁)
A1 取出し口
A2 開口部
C1 固定部
C2 固定部