(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリウレタン接着剤層の100%モジュラスが1〜5MPaの範囲であり、ポリウレタン表皮層の100%モジュラスが2〜10MPaの範囲であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の合成皮革。
【背景技術】
【0002】
乗用車等の車両に設置されるシート(座席)においては、その表面材として、ファブリック、本革、ポリ塩化ビニル製合成皮革(塩ビレザー)、ポリウレタン製合成皮革(ウレタンレザー)等が一般的に用いられている。特に、比較的高価な乗用車においては、シートに高級感を付与するために、皮革様の素材がよく用いられている。ただし、高級車であっても、シートの表面全てを本革で構成することは少ない。例えば、人が座る座面には本革、メインサイド材と称される部位には本革あるいは合成皮革、カマチ材や背裏材と称される部位には合成皮革、というように、一脚のシートでも部位によって素材を使い分けることが多く行われている。
すなわち、本革を使用することはユーザーの本物志向に起因することであるが、シートの表面材を全て本革にすると、コスト高となってしまう。そこで、シートの部位によって素材を使い分けることが行われており、例えば、人の目や手に触れにくい部位においては、塩ビレザーやウレタンレザーがよく用いられている。特に、燃費の向上や廃棄時の焼却処理の観点から、軽量でかつダイオキシン類を発生しないウレタンレザーを使用する傾向が強まっている。
【0003】
前記のように、車両用シートにおいて、ウレタンレザーはメインサイド材、カマチ材、背裏材等の、人の目や手に触れにくい部位に用いられることが多い。ところが、特にメインサイド材やカマチ材においては、人の乗降で素材自体が歪むことが多く、その歪みによってウレタンレザーが割れやすいという問題がある。そのため、ウレタンレザーに対して高い耐屈曲性が要求される傾向が強まっている。
【0004】
なお、ポリウレタン自体は耐屈曲性に比較的優れた素材であるが、車両用シートに用いる場合には、高い耐磨耗性、難燃性、および耐加水分解性が要求される。そのため、車両用シートのポリウレタンには、耐屈曲性に劣るが、耐加水分解性等の特性を優先してポリカーボネート系ポリウレタンがよく用いられている。また、法規制を満たすべく難燃性を付与することが求められ、ウレタンレザーを構成する少なくとも1つの層にハロゲン系、リン系、無機系等の粉体(難燃剤)を配合することが一般的である。しかし、粉体を配合すると耐屈曲性をさらに低下させることとなる(特許文献1,2)。結果として、車両用シートに用いられているポリウレタンについては、耐屈曲性の向上を図るには不利な条件が重なっている。
【0005】
特許文献3にはウレタンレザーの繊維基材に難燃剤を付与する技術が開示されているが、この技術ではポリウレタン層の難燃化がされておらず、法規制をクリアするには問題がある。さらに、使用するポリウレタンとしてポリカーボネート系ポリウレタンを主としており、耐屈曲性については考慮されていない。
【0006】
特許文献4には、熱可塑性ポリウレタン系エラストマーにリン酸エステル系難燃可塑剤を配合し、それをカレンダー成形にてシート化(薄板化)し、繊維基材と貼り合せる技術が記載されている。しかし、この技術においても耐屈曲性については考慮されておらず、耐屈曲性を改善するための工夫について記載されていない。
【0007】
また一般に、リン酸エステル系難燃可塑剤には、未反応のリン酸等の酸性成分が残留している。この酸性成分がポリウレタンの加水分解を促進してしまい、残留量によっては車両用シートに用いるための耐久性を保持できないおそれがある。さらに、リン酸エステル系難燃可塑剤の分子量やポリウレタンへの添加量によっては、リン酸エステル系難燃可塑剤が経時によって揮発し、車両のガラスを曇らせてしまうおそれがある。
このように、車両用シートの表面材については、耐屈曲性に着目した研究開発があまりされていないのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記現状に鑑み、本発明は、車両用シートの表面材として用いられる合成皮革であって、高い耐磨耗性と難燃性を保持しつつ、優れた耐屈曲性、霞度、および耐加水分解性を備えた合成皮革を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記した全ての特性を具備した合成皮革を得るべく鋭意検討した。その結果、ポリカーボネート系ポリウレタンからなる層に、特定の物性を有するリン酸エステル系難燃可塑剤を所定量添加することにより、高い耐磨耗性と難燃性を保持しつつ、優れた耐屈曲性、霞度、および耐加水分解性を備えた合成皮革を提供できることを見出した。上記した課題を解決するために提供される本発明は、以下のとおりである。
【0011】
請求項1に記載の発明は、車両用シートの表面材として用いられる合成皮革であって、繊維基材の少なくとも片面に、ポリウレタン接着剤層を介してポリウレタン表皮層を設けたものであり、ポリウレタン接着剤層とポリウレタン表皮層を構成するポリウレタンが、いずれもポリカーボネート系ポリウレタンであり、ポリウレタン接着剤層に、分子量が330以上
かつ600未満でかつ酸価が0.1 KOHmg/g以下のリン酸エステル系難燃可塑剤を、ポリウレタン接着剤層に対して5重量%以上の配合比率で含有させたことを特徴とする合成皮革である。
【0012】
本発明の合成皮革は車両用シートの表面材として用いられるものであり、繊維基材の少なくとも片面に、ポリウレタン接着剤層を介してポリウレタン表皮層を設けた構造を有している。また、ポリウレタン接着剤層とポリウレタン表皮層を構成するポリウレタンが、いずれもポリカーボネート系ポリウレタンであり、耐磨耗性に優れている。さらに、ポリウレタン接着剤層にはリン酸エステル系難燃可塑剤が含まれており、必要な難燃性が付与されている。
そして本発明では、ポリウレタン接着剤層に含まれるリン酸エステル系難燃可塑剤が、分子量が330以上
かつ600未満でかつ酸価が0.1 KOHmg/g以下のものである。またリン酸エステル系難燃可塑剤のポリウレタン接着剤層に対する配合割合が、5重量%以上である。かかる構成を備えることにより、本発明の合成皮革は、高い耐磨耗性と難燃性を保持しつつ、優れた耐屈曲性、霞度、および耐加水分解性を備えたものとなる。例えば、乗用車用のシートにおける歪みが生じやすい部位(メインサイド材やカマチ材等)に適用しても、耐屈曲性に優れているので割れにくい。
【0013】
請求項2に記載の発明は、車両用シートの表面材として用いられる合成皮革であって、
繊維基材の少なくとも片面に、ポリウレタン接着剤層を介してポリウレタン表皮層を設けたものであり、ポリウレタン接着剤層とポリウレタン表皮層を構成するポリウレタンが、いずれもポリカーボネート系ポリウレタンであり、ポリウレタン接着剤層に、分子量が330以上でかつ酸価が0.1 KOHmg/g以下のリン酸エステル系難燃可塑剤を、ポリウレタン接着剤層に対して5重量%以上の配合比率で含有させたものであり、リン酸エステル系難燃可塑剤が、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2−ナフチルジフェニルホスフェート、クレジルジ2,6−キシレニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、及びレゾルシノールビスジフェニルホスフェートからなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする合成皮革である。
【0014】
請求項1
又は2に記載の合成皮革において、JIS K 6542−1974に準拠した方法で測定した−20℃における耐屈曲性が、5千回以上であることが好ましい(請求項
3)。
【0015】
請求項
4に記載の発明は、ポリウレタン接着剤層におけるリン酸エステル系難燃
可塑剤の配合比率が、ポリウレタン接着剤層に対して7〜30重量%の範囲であることを特徴とする請求項1
〜3のいずれかに記載の合成皮革である。
【0016】
かかる構成により、耐屈曲性等の特性がさらに優れたものとなる。
【0017】
請求項1〜
4のいずれかに記載の合成皮革において、ポリウレタン接着剤層の厚みが20〜150μmの範囲であり、ポリウレタン表皮層の厚みが20〜100μmの範囲であることが好ましい(請求項
5)。
【0018】
請求項1〜
5のいずれかに記載の合成皮革において、ポリウレタン接着剤層の100%モジュラスが1〜5MPaの範囲であり、ポリウレタン表皮層の100%モジュラスが2〜10MPaの範囲であることが好ましい(請求項
6)。
【発明の効果】
【0019】
本発明の合成皮革は、耐磨耗性、難燃性、耐屈曲性、霞度、および耐加水分解性の全ての点において優れた特性を有し、車両用シートの表面材として特に適している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。ただし、本発明が以下の実施形態に限定されないことは当然である。また、発明の理解を容易にするために、図面において、各部材等の大きさや厚みについては一部誇張して描かれており、実際の大きさや比率等とは必ずしも一致しないことがある。
【0022】
本発明の一実施形態に係る合成皮革1は、
図1に示すように、繊維基材2の一方の面にポリウレタン接着剤層3とポリウレタン表皮層5が積層された構造を有している。すなわち、繊維基材2の一方の面に、ポリウレタン接着剤層3を介してポリウレタン表皮層5が設けられている。
【0023】
繊維基材2の種類等は特に限定されるものではなく、織物、編物、不織布、及びこれらの起毛品等、種々のものを使用することができる。構成繊維としては、綿,麻,絹などの天然繊維、レーヨン,キュプラ,テンセルなどの再生繊維、ポリエステル,ポリアミド繊維などの合成繊維、などを自由に選択することができる。さらに、これらの繊維を混紡または交織された繊維でもよい。なお、車両用シートのメインサイド材やカマチ材等、歪みの大きい部位に用いる場合は、力学的強度、縫製適性、歪みへの追従性の点から、ポリエステル繊維からなる編物が特に好ましい。
繊維基材2には、必要に応じて、公知の難燃剤、抗菌剤、抗アレルゲン剤等を付与してもよい。
繊維基材2の厚みとしては特に限定はないが、好ましくは150〜500μmであり、より好ましくは150〜400μm、さらに好ましくは150〜300μmである。
【0024】
ポリウレタン接着剤層3は、繊維基材2の片面に形成されている。ポリウレタン接着剤層3は、ポリカーボネート系ポリウレタンで構成されている。当該ポリカーボネート系ポリウレタンは、例えば、一般に2液型ポリウレタン樹脂と呼ばれるものを採用することができる。例えば、ポリカーボネートポリオールと、芳香族ジイソシアネート・脂肪族ジイソシアネート・脂環族ジイソシアネート、及び低分子鎖伸長剤を反応させて得られた、末端に水酸基を有する分子量1万〜5万の比較的低分子量のものである。当該ポリカーボネート系ポリウレタンは、溶剤系、エマルジョン系を問わず、多官能イソシアネートと反応触媒を配合して用いるものである。
【0025】
多官能性イソシアネートは、一般に架橋剤と呼ばれるものであり、ポリメリックジフェニルメタン−4,4’ジイソシアネート等の芳香族系のものや、ビウレット構造,イソシアヌレート構造,あるいはアダクト構造からなるヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系のものを用いることができる。このうち、反応が比較的温和で、光による変色が少ない脂肪族系多官能イソシアネートを用いることが好ましい。
【0026】
上記反応の反応触媒としては、有機錫系、有機チタン系、有機ジルコニウム系、有機鉄系、有機ビスマス系、N−メチルジシクロヘキシルアミン等のアミン系、などの各種触媒を用いることができるが、反応性、生殖異常毒性等の点から、有機チタン系、有機ジルコニウム系、有機鉄系、有機ビスマス系の触媒が好ましく用いられる。
【0027】
上記ポリカーボネート系ポリウレタンの構成成分には、ポリウレタン接着剤層3の耐加水分解性や耐熱性を損なわない範囲で、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール等を配合してもよい。
【0028】
ポリウレタン接着剤層3の100%モジュラスは、1〜5MPaの範囲であることが好ましく、より好ましくは1.5〜4MPa、さらに好ましくは1.5〜3MPaである。
【0029】
ポリウレタン接着剤層3の厚みとしては特に限定はないが、好ましくは20〜150μmであり、より好ましくは50〜100μm、さらに好ましくは70〜100μmである。
【0030】
ポリウレタン接着剤層3には、リン酸エステル系難燃可塑剤が含まれている。リン酸エステル系難燃可塑剤の詳細については後述する。
【0031】
ポリウレタン表皮層5は、ポリウレタン接着剤層3の上に形成されている。ポリウレタン表皮層5は、ポリカーボネート系ポリウレタンで構成されている。当該ポリカーボネート系ポリウレタンは、例えば、一般に1液型ポリウレタン樹脂と呼ばれるものを採用することができる。例えば、ポリカーボネートポリオールと、芳香族ジイソシアネート・脂肪族ジイソシアネート・脂環族ジイソシアネート、及び低分子鎖伸長剤を反応させて得られた、分子量10万以上の比較的高分子量のものである。当該ポリカーボネート系ポリウレタンは、溶剤系、エマルジョン系のいずれもが使用できる。
上記ポリカーボネートポリオール成分は、ポリウレタン表皮層5の耐磨耗性を向上させるために、シリコーン変性されたものであることが好ましい。また、上記イソシアネート成分は、耐光性と耐オレイン酸性に優れる脂環族ジイソシアネートであることが好ましい。
ポリウレタン表皮層5の100%モジュラスは、2〜10MPaの範囲であることが好ましく、より好ましくは3〜7MPa、さらに好ましくは4〜6MPaである。100%モジュラスが高すぎると、耐磨耗性は向上するが耐屈曲性が低下する。一方、100%モジュラスが低すぎると、耐屈曲性は向上するが耐磨耗性が低下する。
【0032】
ポリウレタン表皮層5の厚みとしては特に限定はないが、好ましくは20〜100μmであり、より好ましくは30〜70μm、さらに好ましくは40〜60μmである。
【0033】
ポリウレタン表皮層5には、目的に応じて、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、耐磨耗性向上剤、難燃剤、抗かび剤、抗菌剤、抗アレルゲン剤、吸放湿性アクリル系パウダー等の触感向上剤、レベリング剤、消泡剤、などの公知の添加剤を適宜配合して用いてもよい。
【0034】
さらに、意匠性付与、耐磨耗性の向上、異素材との擦れにより発生する異音対策、などを目的として、ポリウレタン表皮層5の上に表面処理層を設けてもよい。表面処理層は、例えば、グラビアコート法、スプレーコート法などによって設けることができる。表面処理層の厚みとしては特に限定はないが、好ましくは0.5〜5μm程度である。
【0035】
合成皮革1の全体としての厚みとしては特に限定はないが、一般的には150〜750μm、好ましくは150〜300μm、より好ましくは150〜250μm、さらに好ましくは200〜250μmである。
【0036】
前述したように、ポリウレタン接着剤層3にはリン酸エステル系難燃可塑剤が含まれている。詳細には、ポリウレタン接着剤層3には、分子量330以上でかつ酸価が0.1 KOHmg/g以下のリン酸エステル系難燃可塑剤が、ポリウレタン接着剤層3に対して5重量%以上の配合比率で含まれている。
【0037】
上記リン酸エステル系難燃可塑剤の分子量は330以上である。分子量が330未満であると、可塑効果には優れるが、可塑剤が経時に揮発してしまい、車両内のガラスを曇らせてしまう(霞度が高くなる)という安全上の問題がある。リン酸エステル系難燃可塑剤の分子量の上限としては特に限定されないが、好ましくは600未満である。分子量が600以上としても、耐屈曲性の向上はあまり期待できず、むしろ、可塑化効果が不十分となるおそれがあり、さらには、ポリウレタン接着剤層3との相溶性が悪く、可塑剤がブリードアウトするおそれがある。
【0038】
上記リン酸エステル系難燃可塑剤の酸価は0.1 KOHmg/g以下である。酸価は、未反応のリン酸等の酸性成分の残留度合いの指標となる。酸価が0.1 KOHmg/gを超えると、ポリウレタン接着剤層3の加水分解を促進してしまい、さらに、加水分解によって生成したカルボン酸がポリウレタン表皮層5にまで影響を及ぼすおそれがある。
【0039】
上記リン酸エステル系難燃可塑剤は、ポリウレタン接着剤層3に対して5重量%以上の配合比率で含まれている。好ましくは、ポリウレタン接着剤層3に対して7〜30重量%、より好ましくは7〜22重量%、さらに好ましくは14〜18重量%の範囲である。
【0040】
分子量が330以上のリン酸エステル系難燃可塑剤の例としては、トリクレジルホスフェート(分子量368)、クレジルジフェニルホスフェート(分子量340)、2−ナフチルジフェニルホスフェート(分子量376)、クレジルジ2,6−キシレニルホスフェート(分子量396)、ビフェニルジフェニルホスフェート(分子量402)、トリキシレニルホスフェート(分子量410)、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート(分子量574)、などが挙げられる。これらのリン酸エステル系難燃可塑剤は、1分子中に1個のリン原子を含むモノマータイプのものである。その他、1分子中に2個のリン原子を含む縮合タイプのリン酸エステル系難燃可塑剤を用いることができる。その他、分子中に塩素や臭素を含むハロゲン系リン酸エステル難燃可塑剤を用いることができる。その他、分子中に活性な水酸基を有し、ポリカーボネート系ポリウレタン接着剤と架橋剤との反応により、ポリウレタン接着剤層3の分子中に組み込まれるようなリン酸エステル系難燃可塑剤を用いることができる。
【0041】
上記リン酸エステル系難燃可塑剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。さらに、合成皮革1の耐屈曲性等を損なわない範囲で、分子量が330未満のリン酸エステル系難燃可塑剤や、リン酸エステル系以外の難燃可塑剤を併用してもよい。リン酸エステル系以外の難燃可塑剤の例としては、リン窒素系、リン酸金属塩系、ハロゲン系、無機物系などの各種難燃可塑剤が挙げられる。
【0042】
合成皮革1の耐屈曲性は、JIS K 6542−1974に準拠した方法で測定することができる。合成皮革1の耐屈曲性は、JIS K 6542−1974に準拠した方法で測定した−20℃における耐屈曲性が、5千回以上であることが好ましく、より好ましくは1万5千回以上、さらに好ましくは2万5千回以上である。
【0043】
本実施形態の合成皮革1は、例えば、以下のようにして製造することができる。まず、紋付き離形紙上に、ポリウレタン表皮層5用のポリカーボネート系ポリウレタン溶液を、コンマコート、ナイフコート、ロールコート等の公知の方法にて塗布する。これを乾燥し、ポリウレタン表皮層5を形成する。このポリウレタン表皮層5の上に、ポリウレタン接着剤層3用に調製した、リン酸エステル系難燃可塑剤、架橋剤、および反応触媒を配合したポリカーボネート系ポリウレタン溶液を、コンマコート、ナイフコート、ロールコート等の公知の方法にて塗布する。これを乾燥後、繊維基材2と圧着せしめる。さらに、イソシアネートの反応を完結させるために、60℃雰囲気下で24〜72時間熱処理を行う。熱処理後、離形紙から剥離し、合成皮革1を得る。
【0044】
本発明の合成皮革は車両用シートの表面材として用いられるものである。車両の例としては、乗用車、貨物車、特殊作業車等の自動車が挙げられる。
【0045】
以下、実施例をもって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0046】
以下の記載において「部」又は「%」とあるのは、特に断りのない限り重量基準である。
【0047】
〔実施例1〕
ポリウレタン表皮層用の塗料として、以下の処方からなる溶液を調製した。
<処方1>
・シリコーン変性ポリカーボネート系ポリウレタン(クリスボンNY−329FT,DIC株式会社製) 100部
・ジメチルホルムアミド 40部
・カーボンブラック顔料(セイカセブンBS−780(S)、大日精化株式会社製) 7部
【0048】
ポリウレタン接着剤層用の塗料として、以下の処方からなる溶液を調製した。
<処方2>
・ポリカーボネート系ポリウレタン2液型接着剤(クリスボンTA−205FT、DIC株式会社製、固形分濃度70%) 100部
・ジメチルホルムアミド 25部
・メチルエチルケトン 25部
・脂肪族系多官能性イソシアネート型架橋剤(レザミンNEカキョウザイ、大日精化株式会社製) 10部
・反応触媒(ラックスキンUY−5、セイコー化成株式会社製) 3部
・リン酸エステル系難燃可塑剤(#5 ビフェニルジフェニルホスフェート、大八化学株式会社製、分子量402、酸価0.02 KOHmg/g) 20部(ポリカーボネート系ポリウレタン2液型接着剤に対する配合比率:28.6%)
【0049】
革紋調の離形紙上に、コンマコーターを用いて、処方1のポリウレタン表皮層用溶液をWet付量170g/m
2になるように塗布した。その後、120℃のギアオーブンにて乾燥させた。これにより、厚み35μmのポリウレタン表皮層を得た。得られたポリウレタン表皮層の上に、処方2のポリウレタン接着剤層溶液をWet付量170g/m
2になるように、コンマコーターにて塗布した。110℃のギアオーブンにて90秒間乾燥した後、130℃、0.29MPaの熱プレスにて、繊維基材(ポリエステルトリコット布、糸構成:グランド84T36F、パイル84T/36F、ゲージ:28、編構成:グランド36W/inch、パイル52C/inch、厚み200μm)と圧着せしめた。次いで、60℃の雰囲気下に48時間置いてイソシアネートの反応を促進させた。その後、離形紙より剥離し、合成皮革を得た。接着剤層の厚みは65μm、合成皮革全体の厚みは300μmであった。
【0050】
〔実施例2〕
実施例1の<処方2>のリン酸エステル系難燃可塑剤の量を10部(ポリカーボネート系ポリウレタン2液型接着剤に対して14.3%の配合比率)とした以外は実施例1と同様にして、合成皮革を得た。
【0051】
〔実施例3〕
実施例1の<処方2>のリン酸エステル系難燃可塑剤を、クレジルジ2,6−キシレニルホスフェート(PX−110、大八化学株式会社製、分子量396、酸価0.10 KOHmg/g)とし、配合量を10部(ポリカーボネート系ポリウレタン2液型接着剤に対して14.3%の配合比率)とした以外は実施例1と同様にして、合成皮革を得た。
【0052】
〔実施例4〕
実施例1の<処方2>のポリカーボネート系ポリウレタン2液型接着剤を、ポリカーボネート−ポリエーテル系ポリウレタン2液型接着剤(レザミンUD−8373、大日精化株式会社製、固形分濃度70%)とした以外は実施例1と同様にして、合成皮革を得た。
【0053】
〔実施例5〕
実施例4で得られた合成皮革の上に、下記の<処方3>からなる表面処理剤をグラビアコーターにてWet付量15g/m
2となるように塗布し、合成皮革を得た。
<処方3>
・シリコーン変性ポリカーボネート系ポリウレタン(レザロイドLu889HM、大日精化株式会社製) 100部
・メチルエチルケトン 20部
【0054】
〔実施例6〕
実施例1の<処方2>のリン酸エステル系難燃可塑剤を、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート(分子量574):ビスフェノールA‐ビスジフェニルホスフェート(分子量692)=1:1の混合物(混合物での酸価0.10 KOHmg/g)とした以外は実施例1と同様にして、合成皮革を得た。
【0055】
〔比較例1〕
実施例1の<処方2>のリン酸エステル系難燃可塑剤を、トリフェニルホスフェート(TPP、大八化学株式会社製、分子量326、酸価0.03 KOHmg/g)とした以外は実施例1と同様にして、合成皮革を得た。
【0056】
〔比較例2〕
実施例1の<処方2>のリン酸エステル系難燃可塑剤を、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート(CR−733S、大八化学株式会社製、分子量574、酸価0.50 KOHmg/g)とした以外は実施例1と同様にして、合成皮革を得た。
【0057】
〔比較例3〕の<処方2>のリン酸エステル系難燃可塑剤に代えて、ハロゲン系難燃剤(ノンネンSAN−2、丸菱油化株式会社製、デカブロモジフェニルエタン/三酸化アンチモン)とした以外は実施例1と同様にして、合成皮革を得た。
【0058】
各合成皮革について、難燃性、耐屈曲性、霞度、耐加水分解性、および剥離強度を評価した。評価方法を以下に示す。
【0059】
<難燃性>
米国自動車安全基準FMVSS302の試験方法に準拠して評価した。長さ350mm、幅100mmに断裁した試験片の端部に、ガスバーナーで15秒間接炎させ、着火操作を行い、着火した炎が端部から38mmの位置に設けられた標線を越えてから消火するまでの距離と時間を測定し、燃焼速度を算出した。燃焼速度の最大値が80mm/min.を超えるか否かをもって合否を判定した。ただし、試験片に着火しなかったもの、及び試験片に着火したが標線前に消火したものは、0mm/min.とした。
【0060】
<耐屈曲性試験>
革の耐寒性試験方法JIS K 6542−1974に準拠して評価した。長さ70mm、幅45mmに断裁した試験片を、−20℃に調整した低温槽付フレキシオメーターに配し、5000回毎に割れの有無をチェックし、割れるまでに要した回数を記録した。
【0061】
<霞度>
直径80mmに断裁した試験片を、1Lのビーカーの底面に置き、さらに、ビーカーを100mm×100mmのガラス板で蓋をし、100℃に調整したオイルバス中に入れ、5時間処理を行った。オートマチックヘイズメーターを用い、以下の式から霞度(%)を算出した。
霞度(%)=試験前ガラスの平行光線透過率−試験後ガラスの平行光線透過率
【0062】
<剥離試験>
幅30mm、長さ100mmに断裁した試験片の表皮層に、ホットメルトテープ(商品名:メルコテープBW−11、25mm幅、サン化成株式会社製)の接着面が当たるように重ね合わせ、表面温度130℃に調整したアイロンにて、ホットメルトテープの生地面から加熱し、テープと試料を、長さ約70mmだけ接着した。冷却後、未接着部分を手で無理やり引き剥がし、試験片とホットメルトテープを、それぞれ振り子型引張試験機のつかみにセットし、200mm/min.の速度にて剥離し、このときの最大応力を測定し、これを剥離強度とした。
【0063】
<耐加水分解性試験>
加水分解後の剥離強度をもって評価した。すなわち、70℃、相対湿度90%に調整した恒温恒湿室に試験片を入れ、加水分解を促進させた。10週間後に取り出し、試験片の剥離強度を測定した。剥離強度の測定は上記剥離試験の手順によった。得られた剥離強度の値を試験開始前の剥離強度の値で除し、保持率(%)を算出した
【0064】
測定結果を表1に示す。
【表1】
【0065】
実施例1〜6の合成皮革は、耐屈曲性試験の結果がいずれも5千回以上であり、耐屈曲性に優れていた。また、霞度は最大でも12.9%(実施例3)に抑えられており、この点でも優れていた。さらに、加水分解後の剥離強度保持率が最低でも72.6%(実施例5)を保持しており、耐加水分解性についても優れていた。
一方、分子量が330以下のリン酸エステル系難燃可塑剤を用いた比較例1では、耐屈曲性には優れるものの、霞度が46.7%と極端に高くなり、車両用シートの表面材としては不適と考えられた。
また、酸価が0.1 KOHmg/gを超えるリン酸エステル系難燃可塑剤を用いた比較例2では、耐加水分解性が著しく劣り、加水分解後の剥離強度が測定不能であった。これは接着剤層の加水分解が著しく、表皮層まで加水分解が及んでいたためである。
ハロゲン系難燃可塑剤を用いた比較例3では、耐屈曲性試験の結果が5千回に満たず、耐屈曲性に劣っていた。
なお、難燃性についてはいずれの合成皮革とも合格であった。