(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992279
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】ヘッドホン
(51)【国際特許分類】
H04R 1/10 20060101AFI20160901BHJP
【FI】
H04R1/10 101B
H04R1/10 104Z
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-207911(P2012-207911)
(22)【出願日】2012年9月21日
(65)【公開番号】特開2014-64159(P2014-64159A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】池田 尚
【審査官】
大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−245119(JP,A)
【文献】
実開平05−031499(JP,U)
【文献】
特開2005−244823(JP,A)
【文献】
特開2011−211459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イヤーピースと、前記イヤーピースに連通するとともに、ドライバユニットを収容するハウジングと、前記ドライバユニットに接続されるリード線が引き出される引き出し部とを有するヘッドホンユニットを具備するヘッドホンであって、
前記引き出し部から引き出される前記リード線が外皮によって被覆されたケーブルと、前記ケーブルの所定位置において径方向に分断された前記外皮を繋ぐように該外皮の周囲を覆うと共に、該分断された位置において露出した前記リード線の周囲を覆う制振部材とを備え、
前記制振部材は、前記イヤーピースから離間した近傍に設けられ、
前記制振部材の材質は、前記外皮の材質とは異なることを特徴とするヘッドホン。
【請求項2】
前記制振部材は、前記ケーブルの先端側から左右一対のドライバユニット側にそれぞれ分岐して延びるケーブル上に設けられることを特徴とする請求項1に記載されたヘッドホン。
【請求項3】
前記外皮の分断された位置において、前記リード線は分断され、
前記分断されたリード線は、配線基板を介して電気的に接続され、
前記配線基板は、前記制振部材により覆われていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたヘッドホン。
【請求項4】
前記制振部材は、エラストマーからなる制振材、あるいは少なくとも一部にエラストマーを含む制振材により形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載されたヘッドホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドホンに関し、特に耳栓型(カナル型)のヘッドホンにおいて、ヘッドホンケーブルへの接触により発生するタッチノイズを低減するヘッドホンに関する。
【背景技術】
【0002】
耳栓型(以下、カナル型と称呼する)のヘッドホンは、例えば
図4に示すように、ドライバユニット(図示せず)を収容するハウジング2と、ハウジング2に連通するイヤーピース3とを有する。更に、前記ドライバユニットに接続されるリード線(図示せず)が引き出される引き出し部4と、引き出し部4から引き出されるリード線を被覆したケーブル5とを有している。そして、このヘッドホンは、イヤーピース3と共にハウジング2を使用者の外耳道内に挿入することにより密着して装着され、使用される。
【0003】
このようなカナル型のヘッドホンによれば、遮音性能が比較的良好であるため、周囲の騒音の影響を受けにくいというメリットがある。
尚、このようなカナル型ヘッドホンの構成については、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−182201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記のようにカナル型のヘッドホンにあっては、イヤーピース3を外耳道に密着させて使用される。そのため、例えば使用者の身体にヘッドホンケーブル5が接触すると、その振動が伝搬して耳に届き、所謂タッチノイズと呼ばれるノイズとなって使用者に不快感を与えていた。
【0006】
前記タッチノイズの課題に対し、従来は、使用者自身がイヤーピース装着時にケーブル5を耳裏に回す、或いは、ケーブルの途中をクリップで衣類等に留め、ケーブル5を伝搬するノイズ源を途中で遮断する工夫をして対処していた。即ち、従来構成のヘッドホンにあっては、使用者に対し煩わしさを与えてしまうという課題があった。
そのため、使用者に前記のような煩わしさを与えることなく、製品自体の構造により前記タッチノズルの課題を解決することが求められていた。
【0007】
本発明は、前記した点に着目してなされたものであり、ヘッドホンケーブルに接触した際の振動がイヤーピースに伝搬することを抑制し、タッチノイズを低減するこのとのできるヘッドホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するために、本発明に係るヘッドホンは、
イヤーピースと、前記イヤーピースに連通するとともに、ドライバユニットを収容するハウジングと、前記ドライバユニットに接続されるリード線が引き出される引き出し部とを有するヘッドホンユニットを具備するヘッドホンであって、
前記引き出し部から引き出される前記リード線が外皮によって被覆されたケーブルと、前記ケーブルの所定位置において径方向に分断された前記外皮を繋ぐように該外皮の周囲を覆うと共に、該分断された位置において露出した前記リード線の周囲を覆う制振部材とを備え、
前記制振部材は、前記ヘッドホンユニットから離間した近傍に設けられ、前記制振部材の材質は、前記外皮の材質とは異なることに特徴を有する。
尚、前記制振部材は、前記ケーブルの先端側から左右一対のドライバユニット側にそれぞれ分岐して延びるケーブル上に設けられることが望ましい。
このように構成されたヘッドホンによれば、ケーブルにおいてケーブル外皮が径方向に分断され、露出したリード線の周囲を覆うように、分断箇所が、外皮とは異なる材質の制振部材により連結される。これにより、ヘッドホンケーブルが使用者の身体に当たるなどして振動が生じても、ケーブル外皮とは材質の異なる制振部材において振動が分散され、タッチノイズの発生を大幅に低減することができる。
【0009】
また、前記外皮の分断された位置において、前記リード線は分断され、前記分断されたリード線は、配線基板を介して電気的に接続され、前記配線基板は、前記制振部材により覆われていることが望ましい。
このように外皮と共に、リード線も分断された構成としてもよく、その場合には、外皮だけではなく、リード線を伝わる振動を配線基板において分散させることができ、よりタッチノイズの発生を抑制することができる。
また、その場合、外皮及び各リード線の分断箇所において各リード線がそれぞれ被覆されていなくても、分断部分は配線基板を介して接続されるため、リード線同士の短絡を防止することができる。
【0010】
また、前記制振部材は、エラストマーからなる制振材、あるいは少なくとも一部にエラストマーを含む制振材により形成されていることが望ましい。
このようにエラストマーからなる制振材、あるいは少なくとも一部にエラストマーを含む制振材により制振部材を形成することにより、ケーブルを伝わる振動を効果的に分散させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ヘッドホンケーブルに接触した際の振動がイヤーピースに伝搬することを抑制し、タッチノイズを低減するこのとのできるヘッドホンを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明に係るヘッドホンの一部を拡大して示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のヘッドホンが備える制振部材の断面図である。
【
図3】
図3は、本発明に係るヘッドホンの他の実施形態を示す制振部材の断面図である。
【
図4】
図4は、従来のヘッドホンの一部を拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明に係るヘッドホンの一部を拡大して示す斜視図である。尚、
図1にはヘッドホン1が有する左右一対のヘッドホンユニット10のうち、一方のみを示すが、左右対称の同様の構造であるため他方の説明は省略する。また、
図1において、先に
図4に示した従来の構成と同一の部材、若しくは相当する部材については同じ符号で示し、その詳細な説明は省略する。
【0014】
本発明に係るヘッドホン1は、
図1に示すように、ドライバユニット(図示せず)を収容するハウジング2と、ハウジング2に連通するイヤーピース3とを有する。更に、前記ドライバユニットに接続されるリード線が引き出される引き出し部4と、引き出し部4から引き出されるリード線を被覆したケーブル5とを有している。
【0015】
また、ケーブル5の先端側から左右一対のヘッドホンユニット10(ドライバユニット)側にそれぞれ分岐して延びるケーブル5の所定位置(例えば、引き出し部4の端から3〜4cmの位置)には、ケーブル5の一部周囲を覆う俵形状の制振部材6が設けられている。
図2に前記制振部材6の断面図を示す。
図2に示すように、制振部材6の内部においては、ケーブル5の外皮9が径方向に分断され、この分断された外皮9を繋ぐように制振部材6が設けられている。前記外皮9は、例えばポリ塩化ビニル(PVC)により形成されている。
また、外皮9が分断された箇所においては、外皮9に覆われていたリード線7、8(ホット、コールド)が露出する(むき出される)が、それらを覆い、互いの隙間を埋めるように制振部材6が設けられている。尚、前記リード線7、8は、それぞれ絶縁材(例えばポリウレタン)により被覆されており、互いに交差して接触しても短絡しないようになっている。
【0016】
前記制振部材6は、外皮9とは異なる材質、例えば、エラストマーからなる制振材、あるいは少なくとも一部にエラストマーを含む制振材により形成されている。尚、前記少なくとも一部にエラストマーを含む制振材とは、エラストマーと他の合成樹脂材料を混合、成形したもの、及びエラストマーと他の合成樹脂材料を一体的に成形した、いわゆる二色成形されたものの両方を含むものである。また、エラストマー以外の制振材としては、制振ゴム(好ましくはノンボルネンゴム)も好適である。また、前記外皮9と異なる材質とは、単に材料が異なることを意味することに限らず、外皮9と同じ材料(例えば同じエラストマー)であっても、その物性が異なればよいことを含む(例えば弾性率が異なるなど)。
それにより、ケーブル5が使用者の身体に当たるなどして生じたケーブル5上の振動は、制振部材6において分散され、イヤーピース3側への伝搬が抑制される。
尚、ヘッドホン1の製造時において、前記ケーブル5の途中に前記制振部材6を設ける際には、
図2に示したように径方向に外皮9を径方向に分断し、露出した(むき出された)リード線7、8を覆うように中押し成型などにより前記制振部材6を形成すればよい。
【0017】
このように本発明に係る実施の形態によれば、ヘッドホンケーブル5においてイヤーピース3の近傍のケーブル外皮9が径方向に分断され、露出したリード線7、8を覆うように、分断箇所が、外皮9とは異なる材質の制振部材6により連結される。これにより、ヘッドホンケーブル5が使用者の身体に当たるなどしてケーブル5上に振動が生じても、外皮9とは材質の異なる制振部材6において振動が分散され、タッチノイズの発生を大幅に低減することができる。
【0018】
尚、前記実施の形態においては、外皮9の分断箇所において露出した(むき出された)リード線7、8は分断されていない構成を例に説明したが、本発明にあっては、その構成に限定されるものではない。
例えば、
図3(断面図)に示すように外皮9と共に、リード線7、8も分断された構成としてもよく、その場合には、分断されたリード線7、8を、プリント配線基板等の配線基板15を介して電気的に接続する構成とすればよい。それにより外皮9だけではなく、リード線7、8を伝わる振動を基板15において分散させることができ、よりタッチノイズの発生を抑制することができる。
【0019】
また、
図3の構成によれば、外皮9及びリード線7、8の分断箇所において各リード線がそれぞれ被覆されていない場合であっても、分断部分は配線基板15を介して接続され、各リード線及び配線基板15は制振部材6によって覆われるため、リード線同士の短絡を防止することができる。
【0020】
また、前記実施の形態において、前記制振部材6は、好ましくは、例えば、エラストマーからなる制振材、あるいは少なくとも一部にエラストマーを含む制振材により形成されているものとしたが、
図3の構成にあっては、外皮9だけでなく各リード線での振動の伝達を分散することができるため、ポリエチレン、ポリプロピレン等の材料を、前記制振部材として用いても充分にタッチノイズの発生を抑制することができる。
即ち、前記制振部材6として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂材料からなる制振材、あるいは少なくとも一部にポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂材料を含む制振材により形成しても良い。
【符号の説明】
【0021】
1 ヘッドホン
2 ハウジング
3 イヤーピース
4 引き出し部
5 ケーブル
6 制振部材
7 リード線
8 リード線
9 外皮
10 ヘッドホンユニット
15 配線基板