(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992280
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】関節窩アンカーガイド
(51)【国際特許分類】
A61B 17/17 20060101AFI20160901BHJP
【FI】
A61B17/17
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-207926(P2012-207926)
(22)【出願日】2012年9月21日
(65)【公開番号】特開2013-66715(P2013-66715A)
(43)【公開日】2013年4月18日
【審査請求日】2015年9月18日
(31)【優先権主張番号】13/242,404
(32)【優先日】2011年9月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507083478
【氏名又は名称】デピュイ・ミテック・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・コーノイヤー
【審査官】
木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2004/0073227(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0275453(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/17
A61B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の関節窩唇の端に隣接した該患者の関節窩の外縁にアクセスするための器具ガイドであって、
遠位開口部を含む軸線方向ルーメンを有する細長いガイドチューブと、
前記遠位開口部に隣接して前記細長いチューブに枢動的に取り付けられている縁係合部材であって、第1の接触表面及び第2の接触表面を有し、前記第1の接触表面及び第2の接触表面のそれぞれが、前記ガイドチューブの遠位方向にあり、互いに離間され、かつ前記ガイドチューブの対向する側面上に配置されて、前記縁係合部材が前記関節窩の縁を覆って配置されることを可能にし、続いて前記ガイドチューブを角度的に位置決めし、前記ルーメンを通して器具を前記唇へと通過させる、縁係合部材と、
を備えるガイド。
【請求項2】
前記縁係合部材が、前記ガイドチューブに関連した枢動軸を有し、更に、前記枢動軸から前記第1の接触表面に延びる第1のアームと、前記枢動軸から前記第2の接触表面に延びる第2のアームとを有するV字形を含む、請求項1に記載のガイド。
【請求項3】
無菌であり、耐細菌包装物内に包装されている、請求項2に記載のガイド。
【請求項4】
前記縁係合部材が、前記ガイドチューブに関連した枢動軸と、その軸を中心として−20〜20度の自由度とを有する、請求項1に記載のガイド。
【請求項5】
更に、前記縁係合部材がいつ前記ガイドチューブと枢動的に整合されたかを示す整合インジケーターを上部に備える、請求項1に記載のガイド。
【請求項6】
前記整合インジケーターが、前記縁係合部材と前記ガイドチューブとの間の戻り止めを含み、前記戻り止めが、前記縁係合部材が前記ガイドチューブと枢動的に整合された際に係合される、請求項5に記載のガイド。
【請求項7】
前記整合インジケーターが、前記縁係合部材及び前記ガイドチューブ上の可視指標を含み、前記可視指標が、縁係合部材が前記ガイドチューブと枢動的に整合された際に整合する、請求項5に記載のガイド。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本願は外科用ガイドに関し、より詳細には、関節窩手技用のドリル又はアンカー配置ガイドに関する。
【0002】
所定の手技においては、例えばバンカート修復術、及び上方関節唇(SLAP)損傷修復術を含む関節唇再建術のように、肩甲骨の関節窩の外側範囲を画定する骨の縁内に外科用アンカーを配置することが望ましい。縁は幾分細く、利用可能な骨の保持及び使用を最大限にするためには、アンカーを、軸線から外れる有意な変動を有することなく、縁のピークから骨内に真っ直ぐ配置することが望ましい。現在の手技では、歯状(toothy)遠位端、又は遠位端に一対のつかみ具(時には魚口(fish mouth)と称される)が形成された真っ直ぐな管状カニューレを使用し、前記カニューレは縁を覆って配置される。カニューレの適切な角度整合を達成して、軸線から外れたアンカー配置を防止することは、特に関節鏡下手技においては難しい場合がある。ガイドの軌道は、主に関節鏡検査カニューレの初期配置と、軟組織による拘束とにより決定される。湾曲したカニューレを使用してもよいが、これは穿孔とアンカー通過とを複雑にし、穿孔及びアンカー配置の間に真っ直ぐなカニューレを定位置に維持することよりも困難であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、単純かつ洗練された設計で、従来技術のこれらの制限及び他の制限を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明による器具は、患者の関節窩唇の端に隣接した患者の関節窩の外縁へのアクセスを提供する。ガイドは、遠位開口部を含む軸線方向ルーメンを有する細長いガイドチューブと、遠位開口部に隣接して細長いチューブに枢動的に取り付けられている縁係合部材とを備える。縁係合部材は、第1の接触表面及び第2の接触表面を有し、前記第1の接触表面及び第2の接触表面のそれぞれは、ガイドチューブの遠位方向にあり、互いに分離され、かつガイドチューブの対向する側面上に配置されて、関節窩の縁を覆って縁係合部材を配置することを可能にする。続くガイドチューブの角度的位置決めにより、器具を好ましい角度方向にてルーメンを通して唇へと適切に通過させる。
【0005】
縁係合部材は、ガイドチューブに関連した枢動軸を有し、更に、枢動軸から第1の接触表面に延びる第1のアームと、枢動軸から第2の接触表面に延びる第2のアームとを有するV字形を含むことが好ましい。
【0006】
ガイドは無菌にて提供され、耐細菌包装物内に包装されることが好ましい。
【0007】
縁係合部材は、ガイドチューブに関連した枢動軸と、その軸を中心とした−20〜20度の自由度とを有することが好ましい。
【0008】
縁係合部材がいつガイドチューブと枢動的に整合されたかを示す整合インジケーターを設けることが好ましい。本発明の一態様において、整合インジケーターは、縁係合部材とガイドチューブとの間の戻り止めを含み、前記戻り止めは、縁係合部材がガイドチューブと枢動的に整合された際に係合される。代替的に、整合インジケーターは、縁係合部材及びガイドチューブ上の可視指標を含み、前記可視指標は、縁係合部材がガイドチューブと枢動的に整合された際に整合する。戻り止め及び指標は、一緒に使用されてもよい。また指標は、係合部材の中立整合位置からのガイドチューブに関連した角度的変位を示す目盛りを含んでもよい。
【0009】
本発明による方法は、関節窩の縁内へのアンカーの配置を提供する。本方法は、軸線方向ルーメン及び遠位開口部を有する細長いガイドチューブを関節窩の縁に近接して配置するステップと、ガイドチューブの遠位端に枢動可能に接続されている縁係合部材を関節窩の縁を覆って係合させるステップと、ガイドチューブを枢動させてルーメンを関節窩の縁と整合させるステップと、器具をルーメン内に通過させて骨孔を形成し、アンカーを骨孔内に移植するステップと、を含む。
【0010】
器具は、ドリル又は突き錐を含んでもよい。
【0011】
本発明の一態様において、枢動させるステップは、ガイドチューブ上のマークを縁係合部材上のマークと整合させるステップを含む。
【0012】
縁係合部材は、縁係合部材上のマークがガイドチューブ上のマークと整合した際にルーメンが関節窩の縁と整合する方向で、関節窩の縁を受容する形状を有することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】縫合糸アンカーを用いた関節唇修復術を示す、関節窩及び関節窩唇内に受容された上腕骨頭の断面図。
【
図2】関節窩の縁にアクセスするための先行技術によるガイドを示す関節窩の断面図。
【
図3】関節窩の縁上への初期配置中の、本発明による改良されたガイドを示す関節窩の断面図。
【
図4】関節窩の縁と軸線方向に整合されたガイドを示す、
図3の関節窩及びガイドの断面図。
【
図4A】
図4の矢印付き線4A−4Aに沿った部分拡大断面図。
【
図5】ガイドを通って関節窩の縁にアクセスするドリルを示す、
図3の関節窩及びガイドの断面図。
【
図6】関節窩の縁内への縫合糸アンカーの配置を示す、
図3の関節窩及びガイドの断面図。
【
図7】完了した関節唇修復術を示す、
図3の関節窩の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、肩甲骨14の関節窩12内に受容された上腕骨頭10を示す。唇16と称される線維軟骨性の縁が関節窩12を包囲し、頭10を関節窩12内に納めるのを助けている。唇16が損傷した際、唇16下の骨14内に縫合糸アンカー17を配置し、アンカーから唇16を通して延びる縫合糸15を用いて唇16を骨14へと縛り付けることにより、修復術が行われてもよい。関節窩12は、唇16が付着する骨の縁18まで外方向に延びる。縫合糸アンカー17は、多くの場合、縁18の頂点20を通して骨内に配置されることが好ましい。アンカー17は一般に、縁18により画定される中心軸線19内へと配置されて、アンカーが健康な骨内にて骨壁から離れてしっかりと嵌まった状態を保つ必要がある。
【0015】
図2は、ドリル(
図2に示さず)を整合させ、アンカーを骨14内へと通過させるための先行技術によるガイド22を示す。ガイド22は、長手方向軸線25を画定する中心ルーメン26を有する細長いチューブ24と、縁18をまたいで、ルーメン26を縁18と整合させることができる一対の遠位脚28とを備える。適切な整合を得ることは困難であり得る。殆どの手技は関節鏡で行われ、カニューレ(図示せず)を通してガイド22を縁18へと通過させる。カニューレの角度的配置は、縁18へのガイド22の軌道に影響を与える。この範囲内の組織も軌道を妨げる場合がある。ガイド22の配置を誤ると、アンカーが骨壁に近すぎる場所に配置され、アンカー配置の失敗をもたらす可能性がある。
【0016】
図3は、縁18に関連したガイド30の適切な配置及び整合を容易にするアンカーガイド30を示す。ガイド30は、内部に中心ルーメン34を含む、長手方向軸線33を有する細長いチューブ32を備える。調整可能なストラドル36は、枢動軸42を規定する一対のピボット40を介して、チューブ32の遠位端38に取り付けられている。ストラドル36は第1の脚44及び第2の脚46を含み、これらは枢動軸42からV字状に延びて、それぞれ第1の遠位支持表面48及び第2の遠位支持表面50内で終結し、ルーメン34と整合した空間52を形成する。脚44又は46の一方は、魚口型のストラドルとして既知のように、他方よりも僅かに長く形成されることが好ましい。ストラドル36は先行技術によるガイド22の脚28と同様の様式で縁18上に適合するが、縁18上に配置されているときにその枢動能力によってガイド30上の周囲組織からの力が低減され、より容易かつより正確な配置が可能となる。その形状は、ストラドル36が縁18上に自己整合することを可能にする。配置後、チューブ32を回転させてストラドル36と整合させてもよい。ストラドル36及びチューブ32上の、それぞれの整合マーク54及び56は、ストラドル36がいつチューブ32と軸線方向に整合されたかを示す。これらのマーク54及び56は、レーザー・エッチングされかつ着色され、又は別様に強化されてそれらの視覚化を向上させてもよい。
【0017】
図4Aは、ストラドル36の内側表面からチューブ32に向かって外方向に延びる突起55を含む戻り止め機構53を示し、突起55は、ストラドル36とチューブ32とが軸線方向に整合した際、チューブ32上の窪み57と係合する。このことは、適切な整合を示す触知性フィードバックをユーザーに提供する。突起55と窪み57との係合は、縁18上のストラドル36の配置を妨げることなく係合することを可能にするよう十分に小さいが、それでも尚、ユーザーが感じることができる触知性応答を提供する。この目標を支援するために、突起55は、例えば一片のバネ金属59から形成され、又は一片のバネ金属59に装着される等、ある様式にてバネ負荷されてもよい。
【0018】
使用時、手術部位に隣接して、1つ以上の孔(portal)(図示せず)が患者の皮膚61を通して身体内に確立されることが好ましく、この部位は当業者が理解するように準備されるであろう。関節窩12に向かってアンカーガイド30を前進させ、アンカー配置に所望される位置にて縁18を覆ってストラドル36を配置する。
図3に示すように、ストラドル36を縁18上に適切に納まるまで押し込み、次に、
図4に示すように、マーク54と56が整合して、ストラドル36がチューブ32と軸線方向にて整合し、それ故、ルーメン34及びチューブ32の長手方向軸線33が、目下、縁18の軸線19と整合したことを示すまで、枢動軸42を中心としてチューブ30を回転させる。
【0019】
以下
図5〜7を参照すると、ルーメン34を通してドリル60を縁18の骨内に前進させて、骨孔62を形成する(
図5)。ドリル60を除去し、縫合糸66が取り付けられたアンカー64をルーメン34を通して配置し、骨孔62内に固定する(
図6)。縫合糸66を唇16に通し、締め付けて唇16を縁18に再び付着させる(
図7)。本発明は、主として、適切な整合と、骨孔62の形成とに関する。当業者は、多数の形態のアンカー及び縫合技術を、本発明の新規なガイド30と共に使用できることを理解するであろう。
【0020】
ガイド30を別個のアクセス孔(access portal)カニューレを通して使用する手技を記載してきたが、ガイド30が別個のアクセス孔カニューレを有することなく単独で皮膚を通してその役割を果たし得ることが想定される。ガイドは、ステンレス鋼等の生体適合性材料から形成され、無菌にて、また耐細菌パッケージ内で提供されることが好ましい。
【0021】
本発明について、その好ましい実施形態に関連して説明してきた。明らかに、先の詳細な説明を読み理解すると、修正及び変更が他者にも思いつくであろう。そのような修正及び変更が添付の特許請求の範囲及びその等価物の範疇に入る限り、本発明はそのような修正及び変更のすべてを含むと解釈されるものとする。
【0022】
〔実施の態様〕
(1) 患者の関節窩唇の端に隣接した該患者の関節窩の外縁にアクセスするための器具ガイドであって、
遠位開口部を含む軸線方向ルーメンを有する細長いガイドチューブと、
前記遠位開口部に隣接して前記細長いチューブに枢動的に取り付けられている縁係合部材であって、第1の接触表面及び第2の接触表面を有し、前記第1の接触表面及び第2の接触表面のそれぞれが、前記ガイドチューブの遠位方向にあり、互いに離間され、かつ前記ガイドチューブの対向する側面上に配置されて、前記縁係合部材が前記関節窩の縁を覆って配置されることを可能にし、続いて前記ガイドチューブを角度的に位置決めし、前記ルーメンを通して器具を前記唇へと通過させる、縁係合部材と、
を備えるガイド。
(2) 前記縁係合部材が、前記ガイドチューブに関連した枢動軸を有し、更に、前記枢動軸から前記第1の接触表面に延びる第1のアームと、前記枢動軸から前記第2の接触表面に延びる第2のアームとを有するV字形を含む、実施態様1に記載のガイド。
(3) 無菌であり、耐細菌包装物内に包装されている、実施態様2に記載のガイド。
(4) 前記縁係合部材が、前記ガイドチューブに関連した枢動軸と、その軸を中心として−20〜20度の自由度とを有する、実施態様1に記載のガイド。
(5) 更に、前記縁係合部材がいつ前記ガイドチューブと枢動的に整合されたかを示す整合インジケーターを上部に備える、実施態様1に記載のガイド。
(6) 前記整合インジケーターが、前記縁係合部材と前記ガイドチューブとの間の戻り止めを含み、前記戻り止めが、前記縁係合部材が前記ガイドチューブと枢動的に整合された際に係合される、実施態様5に記載のガイド。
(7) 前記整合インジケーターが、前記縁係合部材及び前記ガイドチューブ上の可視指標を含み、前記可視指標が、縁係合部材が前記ガイドチューブと枢動的に整合された際に整合する、実施態様5に記載のガイド。
(8) 関節窩の縁内にアンカーを配置する方法であって、
軸線方向ルーメン及び遠位開口部を有する細長いガイドチューブを前記関節窩の縁に近接して配置するステップと、
前記ガイドチューブの遠位端に枢動可能に接続されている縁係合部材を、前記関節窩の縁を覆って係合させるステップと、
ガイドチューブを枢動させて、前記ルーメンを前記関節窩の縁と整合させるステップと、
器具を前記ルーメン内に通過させて骨孔を形成し、前記アンカーを前記骨孔内に移植するステップと、
を含む、方法。
(9) 前記器具がドリルである、実施態様8に記載の方法。
(10) 前記器具が突き錐である、実施態様8に記載の方法。
【0023】
(11) 前記枢動させるステップが、前記ガイドチューブ上のマークを、前記縁係合部材上のマークと整合させるステップを含む、実施態様8に記載の方法。
(12) 前記縁係合部材が、前記縁係合部材上の前記マークが前記ガイドチューブ上の前記マークと整合した際に前記ルーメンが前記関節窩の縁と整合する方向で、前記関節窩の縁を受容する形状を有する、実施態様11に記載の方法。