(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在されるとともに、前記透液性表面シートの表面側に略長手方向に沿う左右一対の表面エンボス溝が付与された吸収性物品において、
前記表面エンボス溝は、溝底面に、低圧搾部と、この低圧搾部より溝深さが相対的に深く形成され、且つ該表面エンボス溝に沿って所定の間隔で配置された高圧搾部とが設けられ、
前記吸収体の表面側であって、前記表面エンボス溝の幅方向両側の領域にそれぞれ、吸収性物品の幅方向に沿うとともに、前記表面エンボス溝の高圧搾部を通る吸収性物品の幅方向線と同一線上に配置されたコアエンボスが付与されていることを特徴とする吸収性物品。
前記コアエンボスは、前記表面エンボス溝の高圧搾部を通る吸収性物品の幅方向線と同一線上に配置されるとともに、隣接する前記高圧搾部同士の中間部を通る吸収性物品の幅方向線と同一線上に配置されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
前記表面エンボス溝の幅方向両側の領域に配置され、吸収性物品の幅方向線と同一線上に配置される前記コアエンボスは、前記表面エンボス溝が付与される領域に跨って連続的に形成され、前記表面エンボス溝を跨ぐ部分は、前記表面エンボス溝の両側に配置される部分より相対的にエンボス深さが浅く形成されている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品。
【背景技術】
【0002】
従来より、生理用ナプキン、パンティライナー、おりものシート、失禁パッドなどの吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンラミネート不織布などからなる不透液性裏面シートと、不織布または透孔性プラスチックシートなどからなる透液性表面シートとの間に綿状パルプなどからなる吸収体を介在させたものが知られている。
【0003】
この種の吸収性物品では、体液漏れを防止するための手段が種々講じられている。これら体液漏れ防止手段の一つとして、透液性表面シートの表面側から熱エンボスによって凹状の表面エンボス溝を形成する技術が存在する。例えば、下記特許文献1では、吸収体が上層吸収体と下層吸収体とから形成され、前記上層吸収体は、少なくとも該上層吸収体の中央部において、多数の深い凹部により前記下層吸収体と接合一体化されており、前記下層吸収体には、前記上層吸収体が積層されている部分を除いて、多数の浅い凹部が形成されており、前記下層吸収体は、前記上層吸収体における吸収性物品の長手方向の両側縁それぞれの外側に、長手方向に延びるエンボス溝が形成されており、該エンボス溝により、前記表面シートと前記下層吸収体とが接合一体化されている吸収性物品が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2では、吸収性コアは、その幅方向に沿って延びる複数の離間部があり、前記吸収性コアの離間部がさらに該吸収性コアの長手方向に沿っても形成されており、前記吸収性コアが縦横に独立した小さな吸収部の集合体で形成されており、該吸収性コアには離間部の1つ以上を横断して長手方向に沿って延びる前記表面シートとともに該表面シート側から圧搾された防漏溝が形成されている吸収性物品が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1記載の吸収性物品では、エンボス溝によって上層吸収体と下層吸収体との一体性を高め、上層吸収体に吸収された体液を、該上層吸収体と密着性が高く一体化された下層吸収体へ速やかに移動させ、その後下層吸収体に形成された凹部によって圧密化された繊維の毛管力に従い液の移行を制御している。また、上記特許文献2記載の吸収性物品では、防漏溝によって圧密化された吸収部の毛管力により、外方への液の拡散を妨げ横漏れを防止している。このように、透液性表面シートの表面側から付与された表面エンボス溝は、液の拡散を制御し、漏れを防止するという点で大変有効である。
【0007】
しかしながら、前記表面エンボス溝は、圧搾によって繊維が圧密化され、高密度化された部分であるので、表面エンボス溝の底面と他の表面部分との高低差が大きくなり、装着時の違和感や、吸収体の厚みを感じる要因となっていた。更に、表面エンボス溝によって繊維が急激に圧密化されるため、溝部分とその周辺との剛性差が大きくなり、この剛性差によって吸収体にヨレが生じやすく、身体へのフィット性が低下する問題が発生していた。
【0008】
また、表面シートの表面側から圧搾された長手方向に沿って延びる表面エンボス溝は、吸収体を身体の前後方向の丸みに沿って湾曲させる際の大きな抵抗となるとともに、吸収性物品を身体の前後方向に湾曲させた際、湾曲に伴って吸収体に複数形成される幅方向に沿う折り線が、前記表面エンボス溝の抵抗によって不規則な間隔で発生するため、吸収性物品の身体へのフィット性が低下し、装着時の違和感が生じやすかった。
【0009】
そこで本発明の主たる課題は、装着時に吸収体の厚みを感じにくくするとともに、フィット性を向上させ、装着感が良好な吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在されるとともに、前記透液性表面シートの表面側に略長手方向に沿う左右一対の表面エンボス溝が付与された吸収性物品において、
前記表面エンボス溝は、溝底面に、低圧搾部と、この低圧搾部より溝深さが相対的に深く形成され、且つ該表面エンボス溝に沿って所定の間隔で配置された高圧搾部とが設けられ、
前記吸収体の表面側であって、前記表面エンボス溝の幅方向両側の領域にそれぞれ、吸収性物品の幅方向に沿うとともに、前記表面エンボス溝の高圧搾部を通る吸収性物品の幅方向線と同一線上に配置されたコアエンボスが付与されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0011】
上記請求項1記載の発明では、前記吸収体の表面側であって、前記表面エンボス溝の幅方向両側の領域にそれぞれ、吸収性物品の幅方向に沿うとともに、前記表面エンボス溝の高圧搾部を通る吸収性物品の幅方向線と同一線上に配置されたコアエンボスが付与されている。従って、前記コアエンボスによって、表面エンボス溝の幅方向両側の領域が圧縮されるため、表面エンボス溝付近の吸収性物品表面の高低差が小さくなり、装着時に吸収体の厚みを感じにくく、装着感が良好となる。
【0012】
また、前記コアエンボスを付与することによって、表面エンボス溝付近の吸収体の剛性が増加するため、表面エンボス溝の溝部分とその周辺部分との剛性差が緩和し、急激な剛性差による吸収体のヨレの発生や、身体へのフィット性の低下が防止できるようになる。
【0013】
更に、かかる吸収性物品を身体の前後方向の丸みに沿って湾曲させた場合、吸収体は、前記表面エンボス溝においては低圧搾部より高圧搾部の方が相対的に高剛性であるため、この高圧搾部が可撓点となって折れ曲がりやすくなるとともに、幅方向に配置された前記コアエンボスが可撓軸となって折れ曲がりやすくなる。このとき、前記コアエンボスは、前記表面エンボス溝の高圧搾部を通る吸収性物品の幅方向線と同一線上に配置してあるため、吸収性物品を湾曲させた際、表面エンボス溝の可撓点と、コアエンボスによる可撓軸とが一致し、吸収体の折れ線が吸収性物品の幅方向に沿って綺麗に一直線上に形成されるようになる。このため、コアエンボスによって吸収体の剛性が増加したとしても、身体へのフィット性が向上し、装着時の違和感が生じにくくなる。
【0014】
請求項2に係る本発明として、前記コアエンボスは、吸収性物品の幅方向に対し間欠パターン又は連続パターンで形成されている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0015】
上記請求項2記載の発明では、吸収体を圧縮して装着時の吸収体の厚みを感じにくくするとともに、吸収体の可撓軸となって折り曲げやすくするため、前記コアエンボスは、吸収性物品の幅方向に対し、間欠パターンで付与してもよいし、連続パターンとしてもよい。
【0016】
請求項3に係る本発明として、前記コアエンボスは、前記表面エンボス溝の高圧搾部を通る吸収性物品の幅方向線と同一線上に配置されるとともに、隣接する前記高圧搾部同士の中間部を通る吸収性物品の幅方向線と同一線上に配置されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0017】
上記請求項3記載の発明では、コアエンボスを付与する位置として、表面エンボス溝の高圧搾部に対応する幅方向線と同一線上に配置するものに加えて、隣接する前記高圧搾部同士の中間部を通る幅方向線と同一線上に配置してもよいことを規定している。これにより、吸収体を更に圧縮することができ、装着時の厚みをより一層感じにくくできるとともに、吸収体の可撓性が向上し、より身体にフィットしやすくなる。
【0018】
請求項4に係る本発明として、前記表面エンボス溝の幅方向両側の領域に配置され、吸収性物品の幅方向線と同一線上に配置される前記コアエンボスは、前記表面エンボス溝が付与される領域に跨って連続的に形成され、前記表面エンボス溝を跨ぐ部分は、前記表面エンボス溝の両側に配置される部分より相対的にエンボス深さが浅く形成されている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0019】
上記請求項4記載の発明では、コアエンボスを付与するに際して、前記表面エンボス溝の幅方向両側の領域に配置され、吸収性物品の幅方向線と同一線上に配置される前記コアエンボスとして、前記表面エンボス溝が付与される領域に跨って連続的に形成するようにしている。このように表面エンボス溝部分に跨って連続的に付与することによって、コアエンボスと表面エンボス溝との圧搾部分の連続性が確保されるようになり、表面エンボス溝の幅方向中心側に配置されたコアエンボスから表面エンボス溝への体液移行が良好となり、吸収体のより広い範囲で体液を吸収保持できるようになる。
【0020】
請求項5に係る本発明として、前記吸収体の表面側であって、前記吸収体の両側部にそれぞれ、長手方向に沿う第2のコアエンボスが付与されている請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0021】
上記請求項5記載の発明では、吸収体の側部まで達した体液の横漏れを防止するため、吸収体の表面側であって、吸収体の両側部にそれぞれ、長手方向に沿う第2のコアエンボスを付与するようにしている。
【発明の効果】
【0022】
以上詳説のとおり本発明によれば、装着時に吸収体の厚みが感じにくくなるとともに、フィット性が向上でき、装着感が良好になる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0025】
〔生理用ナプキン1の基本構成〕
本発明に係る生理用ナプキン1は、
図1に示されるように、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなどを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介在された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、この吸収体4の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4を囲繞するクレープ紙5と、表面両側部にそれぞれ長手方向に沿って配設されたサイド不織布7,7とから構成されている。前記吸収体4の周囲において、そのナプキン長手方向の前後端縁部では、前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4の端縁よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、外周に吸収体4の存在しない外周フラップ部が形成されている。
【0026】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シートなどの少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他にポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0027】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法及びエアスルー法は嵩高でソフトである点で優れている。この透液性表面シート3の表面側からは、各種エンボスが付与されるが、これについては後段で詳述する。
【0028】
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえばフラッフ状パルプと吸水性ポリマーとにより構成されている。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。前記吸収体4の目付は、100〜600g/m
2が好ましく、150g/m
2程度がより好ましい。この吸収体4には、各種エンボスが付与されるが、これについては後段で詳述する。
【0029】
本例のように、吸収体4を囲繞するクレープ紙5を設ける場合には、結果的に透液性表面シート3と吸収体4との間にクレープ紙5が介在することになり、吸収性に優れる前記クレープ紙5によって体液を速やかに拡散させるとともに、これら経血等の逆戻りを防止するようになる。
【0030】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0031】
一方、本生理用ナプキン1の表面がわ両側部にはそれぞれ、長手方向に沿ってかつナプキン1のほぼ全長に亘ってサイド不織布7,7が設けられ、このサイド不織布7,7の一部が側方に延在されるとともに、同じく側方に延在された不透液性裏面シート2の一部とによってウイング状フラップW、Wが形成されている。
【0032】
前記サイド不織布7としては、重要視する機能の点から撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。たとえば、体液が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの機能を重視するならば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いることが望ましい。また、前記ウイング状フラップW、Wにおける体液の吸収性を重視するならば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた親水処理不織布を用いるようにすることが望ましい。
【0033】
〔各種エンボスについて〕
本生理用ナプキン1においては、前記透液性表面シート3の表面側から前記吸収体4に至る深さで表面エンボス溝10〜13が施されている。前記表面エンボス溝としては、体液排出部Hの両側にそれぞれ、生理用ナプキン1の略長手方向に沿うとともに、ナプキン長手方向中心線CL側に曲率中心を有する弧状曲線によって左右一対の表面エンボス溝10が形成されている。また、この表面エンボス溝10より前側に離間して、生理用ナプキン1の略幅方向に沿う左右一対の表面エンボス溝11が形成されている。一方、前記表面エンボス溝10より後側に離間して、長手方向中心線CL近傍の位置から後側に向けて両側に漸次拡大する略逆V字状を有するとともに、その先端部が長手方向中心線CL側に湾曲する左右一対の表面エンボス溝12が形成されている。更に、前記表面エンボス溝11の前側には、生理期間中の陰鬱な気分を紛らわせることなどを目的として、前側に向けて漸次拡大するとともに、その前端部が内側に湾曲する全体としてハート形などの形状で左右一対の表面エンボス溝13が形成されている。
【0034】
前記表面エンボス溝10〜13は、溝底面に、低圧搾部15(図中の白抜き部分)と、この低圧搾部15より溝深さが相対的に深く形成され、且つ該表面エンボス溝10〜13に沿って所定の間隔で配置された高圧搾部16(図中の●部分)とが設けられている。
【0035】
一方、
図2に示されるように、前記吸収体4の表面側(透液性表面シート3側、肌側)であって、少なくとも体液排出部Hの両側に形成される表面エンボス溝10から所定の間隔をあけて幅方向外側及び幅方向中心側の所定の領域にそれぞれ、生理用ナプキン1の幅方向に沿うとともに、表面エンボス溝10の高圧搾部16を通る生理用ナプキン1の幅方向線Lと同一線上に配置されたコアエンボス20、20…が付与されている。また、前記コアエンボス20、20は、前記表面エンボス溝10の前側及び後側にも設けられ、これらの領域では、表面エンボス溝11、12、13より生理用ナプキン1の幅方向外側の領域に、生理用ナプキン1の幅方向に沿うとともに長手方向に所定の間隔で配置されている。前記コアエンボス20は、吸収体4の幅方向端縁の近傍まで形成されるとともに、吸収体4の前後方向端縁の近傍まで形成されている。一方、体液排出部Hに対応する吸収体4の中央部には、前記コアエンボス20は形成されていない。また、後側の表面エンボス溝12、12で囲まれた領域及び前側の表面エンボス溝13、13で囲まれた領域にも、前記コアエンボス20は形成されていない。
【0036】
前記表面エンボス溝10の幅方向両側の領域にコアエンボス20を付与することによって、次のような効果が発揮される。即ち、
図3(A)に示されるように、コアエンボス20を付与しない場合の表面エンボス溝10の底面と吸収体表面との高低差はD’であり、同
図3(B)に示されるように、コアエンボス20を付与した場合の前記高低差はDとなる。これら高低差DとD’を比較すると、コアエンボス20を付与した場合にはエンボスによって繊維が圧縮され、厚みが薄くなるので、D<D’の関係となる。このため、表面エンボス溝10とその近傍のナプキン表面の段差が小さくなるため、装着時に吸収体の厚みが感じにくくなり、装着感が良好となる。
【0037】
また、コアエンボス20を施さずに、表面エンボス溝10のみを施した場合には、表面エンボス溝10によって溝部分の繊維が急激に圧密化されるため、溝部分とその近傍との剛性差が大きくなり、吸収体のヨレの発生や身体へのフィット性の低下が問題とされていたが、本生理用ナプキン1では、表面エンボス溝10の幅方向両側の領域に前記コアエンボス20を施してあるため、表面エンボス溝10とその近傍の吸収体の剛性の変化が緩やかとなり、吸収体のヨレや身体へのフィット性低下の問題が防止できるようになる。
【0038】
更に、本生理用ナプキン1を身体の前後の丸みに沿って湾曲させた場合(ナプキン長手方向に湾曲させた場合)、吸収体4は、表面エンボス溝10においては低圧搾部15より高圧搾部16の方が相対的に高剛性であるため、この高圧搾部16を可撓点としてナプキン幅方向に沿った折れ線が形成されやすいとともに、幅方向に沿って配置されたコアエンボス20を可撓軸としてナプキン幅方向に沿った折れ線が形成されやすくなる。ここで、前記コアエンボス20は、表面エンボス溝10の高圧搾部16を通るナプキン幅方向線Lと同一線上に配置してあるため、ナプキンを湾曲させた際、表面エンボス溝10の可撓点とコアエンボス20による可撓軸とが一致し、吸収体4の折れ線がナプキン幅方向に沿って綺麗に一直線上に形成されるようになる。このため、コアエンボス20によって吸収体の剛性が増加したとしても、吸収体の可撓性が向上するため、身体へのフィット性が良好で、装着時の違和感が生じにくくなる。
【0039】
前記吸収体4の剛性は、表面エンボス溝10部分の剛性をB、コアエンボス20が付与された領域の剛性をA、コアエンボス20が付与されない体液排出部Hに対応する吸収体中央部の剛性をCとすると、B>A>Cの関係となるようにすることが好ましい。表面エンボス溝10部分の剛性Bは、表面エンボス溝10、10で囲まれた領域に余計なシワやヨレを生じさせずに着用者の体液排出部Hにフィットさせるため、剛性を最も高く設定する必要がある。コアエンボス20の付与領域の剛性Aは、表面エンボス溝10部分とエンボスを付与しない領域との剛性差を緩やかにするとともに、吸収体4の両側部から脚圧がかかったときに、脚周りに適度にフィットする程度の柔軟性を残しておくように前記剛性Bよりも低く設定する。吸収体中央部の剛性Cは、着用者の体液排出部Hにフィットする部分なので、装着感を向上するために剛性を最も低く設定する。
【0040】
前記高圧搾部16は、前記低圧搾部15の底面より、0.5mm〜3mm程度溝深さを相対的に深く形成した部分である。前記高圧搾部16の平面形状は、
図1などに示されるように、円形としても良いし、表面エンボス溝10のエンボス幅を横断する四角形状に配置したり(
図8参照。)、表面エンボス溝10の一方側側壁に偏奇させた半円形や四角形などの図形及び他方側側壁に偏奇させた半円形や四角形などの図形を交互に配置したりすることも可能である。
【0041】
次に、前記表面エンボス溝10とコアエンボス20の寸法について、
図4に基づいて説明する。表面エンボス溝10とコアエンボス20との間隔S1は、1mm〜D×2mm(Dは、
図3(B)の表面エンボス溝10の底面と吸収体4表面との高低差)程度が好ましい。D×2mmより大きな間隔をあけると、表面エンボス溝10とコアエンボス20との間に、これらエンボスによって厚みが低下しない見かけ上表面側に突出した部分が残存するようになり、表面エンボス溝10と突出部表面との高低差が大きくなって、吸収体4の厚みを感じやすく、装着感が悪化する。一方、間隔S1が1mmより小さいと、製造時の高度な位置決め精度が要求され製造コストが嵩むとともに、表面エンボス溝10とコアエンボス20が重なりやすくなり、エンボスの機能が損なわれるおそれがある。
【0042】
前記コアエンボス20のナプキン長手方向のエンボス長さS2は、表面エンボス溝10の高圧搾部16のナプキン長手方向長さと同程度、又は若干大きく形成することが好ましい。
【0043】
ナプキン幅方向に沿って配列されたコアエンボス20、20…のナプキン長手方向ピッチS3(ナプキン長手方向の中心間距離)は、2.5mm〜10mmとするのが好ましく、5mm程度がより好ましい。前記ピッチS3は、表面エンボス溝10の高圧搾部16、16の間隔と同程度とすることが好ましいが、高圧搾部16、16間の間隔が小さい場合(2.5mmより小さい場合)、全ての高圧搾部16毎にコアエンボス20を配置しなくてもよい。一方、前記ピッチS3が前述の範囲内であれば、隣接する高圧搾部16、16同士の中間部を通るナプキン幅方向線Lと同一線上に配置してもよい。この中間部に配置するコアエンボス20は、1列でも2列以上の複数列でも構わない。
【0044】
前記コアエンボス20をナプキン幅方向に間欠的なパターンで形成する場合、ナプキン幅方向のピッチS4(ナプキン幅方向の中心間距離)は、1mm〜5mm程度とするのが好ましい。また、間欠パターンの1つ当たりのナプキン幅方向のエンボス幅S5は、1mm〜5mm程度とするのが好ましい。
【0045】
また、表面エンボス溝10の高圧搾部16を
図4に示されるように溝幅の中央部に配置するパターンとした場合、前記高圧搾部16、16のナプキン長手方向の間隔S6は、少なくとも5mm以上とし、前記コアエンボス20のナプキン長手方向ピッチS3の整数倍とすることが好ましい。
【0046】
更に、コアエンボス20の配設領域のうち、表面エンボス溝10より幅方向外側領域のナプキン幅方向長さS7は、5mm以上確保することが好ましい。この幅方向長さS7が5mmより小さいと、吸収体4を圧縮する効果が十分に得られず、吸収体4の厚みを感じやすくなる。一方、表面エンボス溝10より幅方向中心側領域のナプキン幅方向長さS8は、3mm〜10mm、好ましくは5mm程度とするのがよい。幅方向中心側に広くしすぎると、体液排出部Hに近くなり、装着感を悪化させるおそれがある。
【0047】
前記コアエンボス20を間欠パターンで形成する場合の平面パターンは、
図4などに示されるように、円形としてもよいし、
図5に示されるように、(A)菱形、(B)正方形、(C)長方形、(D)ナプキン長手方向に長い楕円形、(E)ナプキン幅方向に長い楕円形、(F)波形など種々のパターンで形成することができる。
【0048】
また、前記コアエンボス20は、
図6に示されるように、ナプキン幅方向に対し連続する連続パターンで形成してもよい。コアエンボス20を連続パターンとすることによって、コアエンボス20に沿った可撓軸がはっきりと形成されるようになる。
【0049】
ところで、前記吸収体4には、該吸収体4の表面側であって、吸収体4の両側部にそれぞれ、ナプキン長手方向に沿う第2のコアエンボス21が付与されている。前記第2のコアエンボス21は、体液が吸収体の側部まで達した際に体液を堰き止め、横漏れを確実に防止するためのものである。
図1に示されるように、前記第2のコアエンボス21をナプキン長手方向に対して間欠的なパターンで形成する場合、少なくとも前記高圧搾部16を通るナプキン幅方向線Lと同一線上にエンボス部分が位置するように配置することが好ましい。これにより、ナプキン長手方向に沿って第2のコアエンボス21を形成した場合でも、吸収体4をナプキン長手方向に湾曲させる際の抵抗が生じにくくなる。
【0050】
以上の構成からなる生理用ナプキン1の製造に当たっては、パルプ繊維に吸水性ポリマー等を混合したものを積繊等することによって吸収体4を成形した後、クレープ紙5によって囲繞し、エンボス凸部が形成されたエンボスロールとこれに対向配置されたアンビルロールとの間を通過させることによって、吸収体4(クレープ紙5)の表面側の所定位置に前記コアエンボス20及び第2のコアエンボス21を付与する。その後、前記コアエンボス20等を付与した面側に透液性表面シートを接着し、エンボス凸部が形成されたエンボスロールとこれに対向配置されたアンビルロールとの間を通過させることによって、透液性表面シート3の表面側から所定位置に前記表面エンボス溝10〜13を付与する。しかる後、不透液性裏面シート2上に接着し、周縁のシール工程や裁断工程等を経て製品が完成する。
【0051】
前記コアエンボス20の付与に当たっては、
図7に示されるように、前記表面エンボス溝10から間隔をあけて幅方向両側の領域に配置され、ナプキン幅方向線Lと同一線上に配置されるコアエンボス20、20として、前記表面エンボス溝10が付与される領域に跨って連続的に形成し、前記表面エンボス溝10を跨ぐ中間部20aは、前記表面エンボス溝10の両側に配置されるコアエンボス20、20部分より相対的にエンボス深さを浅く形成するようにしてもよい。即ち、エンボスロールに備えられるエンボス凸部30として、
図7(A)に示されるように、コアエンボス20、20部分に相当する両側部30a、30aが相対的に高く、前記コアエンボスの中間部20aに相当する中間部30bが相対的に低く形成されたものを用いることにより、前記コアエンボス20を施している。このように、コアエンボス20を表面エンボス溝10部分に跨って幅方向に連続的に付与することによって、コアエンボス20と表面エンボス溝10との圧搾部分の連続性が確保されるようになり、幅方向中心側に配置されたコアエンボス20から表面エンボス溝10への体液の拡散が良好となり、吸収体4の広い範囲で体液を吸収保持できるようになる。前記中間部30bのエンボス高さを低く設定することにより、表面エンボス溝10が均一に圧搾できるようにしている。
【0052】
〔他の形態例〕
(1)
図1に示されるように、左右一対の前記表面エンボス溝10、10の間、12、12の間及び13、13の間にそれぞれ、これらの領域の吸収体を圧縮することなどを目的として、前記表面エンボス溝10〜13より溝長さが短く形成された複数の表面エンボス溝14、14…を離散的に配置することができる。
(2)上記形態例では、表面エンボス溝10は、体液排出部Hの両側にそれぞれ略長手方向に沿う左右一対で設けられていたが、
図8に示されるように、体液排出部Hを囲むように閉合する線によって形成するようにしてもよい。このとき、コアエンボス20は、表面エンボス溝10の前後にナプキン幅方向に沿って形成される部分においては、表面エンボス溝10の高圧搾部16を通るナプキン長手方向線と同一線上に配置されたナプキン長手方向に沿うように配置してもよい。