特許第5992302号(P5992302)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992302
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/22 20060101AFI20160901BHJP
   H04N 13/04 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
   G02B27/22
   H04N13/04
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-259047(P2012-259047)
(22)【出願日】2012年11月27日
(65)【公開番号】特開2014-106354(P2014-106354A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】十二 紀行
【審査官】 山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−215444(JP,A)
【文献】 特開2011−070073(JP,A)
【文献】 特開2011−070074(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/161073(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/22
H04N 13/04
G09F 9/00
G09G 3/00
Scopus
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル状の結像光学素子と、フラットパネルディスプレイとを備え、上記結像光学素子の結像機能により、上記結像光学素子の一面側に配置されたディスプレイに表示された映像を、この結像光学素子の他面側の空間に、斜め状に立ち上がる空間像として結像させる表示装置であって、上記結像光学素子の他面と上記空間像との間に、この結像光学素子の平面形状に対応する開口を有するプレートが、上記結像光学素子に対して手前から奥側に向かって昇り傾斜した状態で配置され、上記空間像が、上記プレートの開口を通して浮かび上がるように構成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
上記パネル状の結像光学素子がマイクロミラーアレイである請求項1記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、写真等の二次元画像を、空間に浮かび上がった状態で投影することにより、奥行き感を持った映像を立体的に表示する表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
比較的簡単な構成で、写真等の二次元画像を、空間に浮かび上がった状態で擬似的な立体像として表示する手段として、平板状の結像光学素子(マイクロレンズアレイ)を用いた「画像表示装置」が提案されている(例えば、特許文献1等を参照)。
【0003】
この画像表示装置は、LCD等の画像表示面に平行して離間する位置に、両面にマトリクス状に互いに隣接して配列された複数の凸レンズ(単位光学素子)を備える一対のマイクロレンズアレイ(結像光学素子)が配設されており、このマイクロレンズアレイの結像作用により、上記画像表示面とは反対側の空間(上記結像光学素子の素子面に対して画像表示面とは反対側の位置)に、上記二次元画像の正立等倍像を結像するようになっている。
【0004】
しかしながら、上記画像表示装置においては、上記結像(空間像)が、マイクロレンズアレイの真正面に投影されるため、この空間像を適切に鑑賞するためには、鑑賞者とマイクロレンズアレイと画像表示面とを、一直線上に配置する必要があり、鑑賞可能な視野角が狭いという問題があった。また、上記画像表示装置は、鑑賞者から見た後方側に大きなスペースが必要なため、設置の自由度が低く、鑑賞者も、上記マイクロレンズアレイの正面に回りこんだ特定の位置から、アレイを覗き込むように鑑賞せねばならないという不自由を強いられていた。
【0005】
これに対して、本出願人は、特願2012−81248および特願2012−185198において、互いに直交する2つの鏡面(コーナーリフレクタ)を有する凹状単位光学素子または凸状単位光学素子を多数個配列した、平板状の結像光学素子(マイクロミラーアレイ,特許文献2を参照)と、LCD等のフラットパネルディスプレイとを備える表示装置を提案している。このものは、図8に示すように、フラットパネルディスプレイDを、その表示面Daが上記結像光学素子(マイクロミラーアレイM)の素子面Pに対して所定角度α(30°以上90°未満)傾斜した状態で、この結像光学素子の一面側(下方)に配設する構成をとる。これにより、上記表示装置は、装置上方の空間に、手前側(鑑賞者側)に向かって斜め状に立ち上がる空間像を、上記結像光学素子の上面から浮かび上がった状態で、鮮明に表示することができる。また、この表示装置は、装置全体をコンパクトに構成することが可能で、配置の自由度が高く、可搬性に優れるという特徴を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−98479号公報
【特許文献2】国際公開第WO2007/116639号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記表示装置は、前記従来の「画像表示装置」より鑑賞可能な視野角が広く、適正な鑑賞位置の範囲も広いものであるが、表示される空間像の周囲に比較対象物がないことから、鑑賞者の目の距離感(被写界深度)が実際の距離と一致せず、両眼視差が得られにくいため、空間像に立体感・浮遊感や臨場感等を感じにくいことが分かった。
【0008】
また、被験者を募り、上記空間像の見え易さを判定する実験の過程で、上記表示装置は、この種の立体表示装置(鑑賞装置)に不慣れな者の場合、装置をどの程度の高さ(方向,角度)から眺め、装置のどのあたりに目の焦点(ピント)を合わせたら良いのかが分かりにくく、直感的に操作(鑑賞)できない場合があることが分かった。これらの問題を解消すれば、より多くの人が、上記表示装置をもっと簡便に利用することができるようになる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、結像光学素子から離れた空間に浮かび上がる二次元画像を、奥行き感に富む立体的な空間像として、誰もが習熟等することなく、自然に適切な方向・位置から鑑賞することのできる表示装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の表示装置は、パネル状の結像光学素子と、フラットパネルディスプレイとを備え、上記結像光学素子の結像機能により、上記結像光学素子の一面側に配置されたディスプレイに表示された映像を、この結像光学素子の他面側の空間に、斜め状に立ち上がる空間像として結像させる表示装置であって、上記結像光学素子の他面と上記空間像との間に、この結像光学素子の平面形状に対応する開口を有するプレートが、上記結像光学素子に対して手前から奥側に向かって昇り傾斜した状態で配置され、上記空間像が、上記プレートの開口を通して浮かび上がるという構成をとる。
【0011】
すなわち、本発明者は、前記課題を解決するため研究を重ね、その結果、パネル状の結像光学素子の他面(鑑賞者側の上面)と、その上方に結像する空間像との間に、上記空間像の背景となる枠状のプレートを挿入することによって、この背景(プレート)と空間像との間に両眼視差が生まれ、空間像を、より立体的に感じることができるようになることを見出した。
【0012】
また、同時に、上記プレートは、上記結像光学素子の上面の一部を覆い隠すことにより、鑑賞者がこの結像光学素子を見下ろす(覗き込む)方向や頭部(眼)との位置関係を緩やかに規制(矯正)するため、このプレートが、鑑賞者の鑑賞方向を、空間像の鑑賞に最適な方向・位置に、自然に案内(誘導)することを見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0013】
本発明の表示装置は、上記パネル状の結像光学素子における鑑賞者側の他面と、この結像光学素子により結像する、斜め状に立ち上がる空間像との間に、上記結像光学素子の平面形状に対応する開口を有するプレートが、手前から奥側に向かう昇り傾斜状に配設されており、このプレートの開口を通して、その上方に、上記斜め状に立ち上がる空間像が、浮かび上がるようになっている。すなわち、上記表示装置では、上記結像光学素子の他面と上記空間像との間に、上記空間像の「背景」となる枠状のプレートが、上記空間像の傾斜と同じ方向に傾斜した状態で配置され、上記空間像が、上記枠状のプレートの開口を通じて、その上方に結像するように構成されている。
【0014】
そのため、上記表示装置は、結像する空間像の近傍(周囲)に、この空間像との視差を認識できる比較対象物(プレートの上面および開口の縁部等)が存在する。これにより、本発明の表示装置は、上記空間像の周囲にプレートのない従来の表示装置(図8参照)に比べ、上記空間像の立体感(奥行き),浮遊感や臨場感等を感じ易くなる。
【0015】
さらに、周囲の環境が明るい場所では、上記装置の手前(傾斜状の開口の正面)方向から覗き込んだ場合に、上記プレートと結像光学素子の上面(他面)との間に暗部(影)が形成され、この暗部が空間像の背景となって、空間像(映像)のコントラストが補強される。これにより、空間像の立体感(奥行き),浮遊感や臨場感等を、より強く感じることができる。
【0016】
また、本発明の表示装置は、上記空間像を鑑賞するのに適切な方向・位置(傾斜状のプレートの開口正面)から覗き込まない場合、上記プレートにより結像光学素子の上面の一部等が不自然(不均等)に覆い隠され、違和感を感じるようになっている。そのため、この表示装置を使用(鑑賞)する鑑賞者は、上記表示装置を持ち上げる等して適切な位置・角度にこれを回転させるか、あるいは、自身が上記開口に正対する正面位置に移動するかして、上記プレートの開口から結像光学素子の上面が左右均等の形状に臨める方向・位置に、無意識に視点を移動させる行動を起こし易くなっている。
【0017】
これにより、本発明の表示装置は、上記空間像に立体感等を感じる、鑑賞に適した方向・位置を、誰もが簡単に見つけ出すことができる。しかも、その鑑賞方向と位置は、上記表示装置において、空間像の立体感,浮遊感や臨場感等を、最も強く感じることができる位置になっている。したがって、上記表示装置は、この種の立体表示装置(鑑賞装置)に不慣れな者であっても、結像光学素子の上方空間に浮かび上がる二次元画像を、奥行き感に富む立体的な空間像として、容易に視認・鑑賞することができる。
【0018】
また、本発明の表示装置のなかでも、上記パネル状の結像光学素子として、マイクロミラーアレイを使用したものは、上記空間像に歪みがなく、鮮明な映像を投影(結像)することができて、好ましい。
【0019】
なお、本発明の表示装置における「手前」とは、鑑賞者が、上記斜め状に立ち上がる空間像の傾斜に正対する正面から装置を見た場合の装置前端位置に相当し、「手前側」とは、この装置から鑑賞者の視点位置に向かう方向の水平成分をいう。逆に、「奥」とは、上記斜め状に立ち上がる空間像の傾斜の裏側から装置を見た場合の装置後端位置に相当し、「奥側」とは、装置前端から後端に向かう方向、すなわち、この鑑賞者から上記装置を見た方向(視線方向)の水平成分をいう。また、「結像光学素子の平面形状に対応する」形状とは、厳密に一致する場合だけでなく、多少の大小差を含める趣旨である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態における表示装置の基本構成を説明する一部断面図である。
図2】上記表示装置に用いられるマイクロミラーアレイの構造を説明する図である。
図3】上記表示装置の基本構成を説明する斜視図である。
図4】第1実施形態の表示装置の構成を示す一部断面図である。
図5】第1実施形態の表示装置の外観斜視図である。
図6】本発明の表示装置の別の構成例を示す斜視図である。
図7】本発明の表示装置のさらに別の構成例を示す斜視図である。
図8】従来の表示装置の基本構成を説明する一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
つぎに、本発明の実施の形態を、図面にもとづいて詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0022】
図1図3は、本発明の表示装置の基本的な構成を説明する図であり、図2は、上記表示装置に用いられるマイクロミラーアレイMの詳細構造を説明する図である。なお、図1図3では、本発明の原理のみを簡潔に説明するために、ケース,ハウジング等の部材や、配線,電装品等の部品の図示を省略している。また、本例においては、フラットパネルディスプレイ(D)には、携帯電話(スマートフォン等)の液晶表示画面(LCD)を利用しており、その表示面Daに表示される画像Iおよび空間に投影される空間像I’(ともに、図1中の太線矢印)は、その厚みを強調して図示している。
【0023】
本実施形態における表示装置は、図1に示すように、パネル状のマイクロミラーアレイ結像光学素子(以下、マイクロミラーアレイM)と、フラットパネルディスプレイ(以下、ディスプレイD)とを備え、マイクロミラーアレイMに設けられた多数のマイクロミラー(コーナーリフレクタ)による光の反射により、マイクロミラーアレイMの一面(図では下面)側に配置されたディスプレイDに表示された映像(画像I)を、このマイクロミラーアレイMの他面(図では上面)側の空間に、斜め状に立ち上がる空間像I’として、浮かび上がるように結像させるものである。
【0024】
そして、この表示装置は、上記ディスプレイDが、その表示面DaをマイクロミラーアレイMの下面Maに対して所定角度αで傾斜させた状態で配置され、このマイクロミラーアレイMの上面Maと空間像I’との間に、マイクロミラーアレイMの平面形状に対応する開口Gaを有する鑑賞方向案内用のプレート(以下、案内プレートG)が、このマイクロミラーアレイMの上面Maに対して所定角度θで、手前から奥側に向かって昇り傾斜した状態で配設されており、上記各マイクロミラー(コーナーリフレクタ)で反射した光が、この案内プレートGの開口Gaを通して、空間像I’として結像するようになっている。これが、本発明の表示装置の特徴である。
【0025】
上記表示装置について、詳しく説明すると、この表示装置に使用する結像光学素子としては、フレネルレンズ等を含む各種レンズや、アフォーカル光学系のマイクロミラー,コーナーリフレクタ等の屈折型結像素子、マイクロレンズアレイ等の正立等倍型結像素子を用いることができる。なかでも、本実施形態においては、図2に示すような、素子面Pに対して面対称の位置に像を結ぶ、マイクロミラーアレイM(凸型コーナーリフレクタアレイ)が好適に使用される。このマイクロミラーアレイMは、図示しない固定部材等により、鑑賞者の視点(感覚)に対して略水平になるように配設されている。
【0026】
上記マイクロミラーアレイ(コーナーリフレクタアレイ)Mについて、より詳しく説明すると、このマイクロミラーアレイMは、図2に示すように、基板(基盤)11の下面(図1における下面Mb側)に、下向き凸状の多数の微小な四角柱状単位光学素子12(コーナーリフレクタ)が、斜め碁盤目状に並ぶように配列されている〔図2はアレイを下側から見上げた図である。〕。
【0027】
上記マイクロミラーアレイMの各四角柱状の単位光学素子12は、コーナーリフレクタを構成する一対(2つ)の光反射面(四角柱側方の第1の側面12a,第2の側面12b)が、それぞれ、「基板表面方向の横幅(幅w)に対する基板厚さ方向の縦長さ(高さh)の比」〔アスペクト比(h/w)〕が1.5以上の長方形状に形成されている。また、それぞれの単位光学素子12は、各コーナー12cを構成する一対の光反射面(第1の側面12a,第2の側面12b)が、鑑賞者の視点の方向(図1図3におけるE側)を向くようになっており、図3のように、その外縁(外辺)を鑑賞者の正面(E方向)に対して45°回転させて配設されている。
【0028】
また、画像Iを表示するフラットパネルディスプレイ(ディスプレイD)は、図1のように、上記マイクロミラーアレイMの下面Mbに対して、鑑賞者の手前側(正面E側)から奥側に向かって所定の傾斜角αで下向きに傾くように配置されており、上記マイクロミラーアレイMを介して投影される空間像I’が、鑑賞者の方向を向くようになっている。
【0029】
なお、上記画像Iの表示に用いるディスプレイDとしては、バックライトを備える液晶表示パネル(LCD)の他、プラズマディスプレイパネル,有機EL表示パネル等、全可視光波長にわたってなるべく偏りのない「白色」と、非表示時の「黒色」とを、コントラスト良く再現できるディスプレイパネルを使用することができる。さらに、ディスプレイDは、携帯電話または携帯情報端末等の表示部であってもよく、具体的には、上記ディスプレイDとして、スマートフォン,タブレット型PC,デジタルフォトフレームや、携帯型ゲーム機,携帯型ブックリーダー,PDA,電子辞書等のうち、表示部Daが常時露出する(カバーされていない)タイプのなかで、その表示面Daの寸法が、上記マイクロミラーアレイMの大きさ(平面形状)に対応するサイズのものを使用することができる。
【0030】
また、上記ディスプレイDの傾斜角αは、この表示装置を利用する鑑賞者の姿勢や距離等を考慮して、30°以上90°未満(30°≦α<90°)に設定される。
【0031】
つぎに、上記マイクロミラーアレイMと空間像I’との間に配置される鑑賞方向案内用のプレート(案内プレートG)は、全体として平板状で、図3に示すように、その略中央部に上記マイクロミラーアレイMの平面形状に対応する開口Gaが設けられている。この開口Gaの形状は、例えば図3のような六角形状の他、三角形,五角形等のその他の多角形状、あるいは、単純な円形や楕円形等としてもよく、開口Gaの大きさ(内縁形状)は、上記マイクロミラーアレイMの平面形状に近いものであれば、どのような開口形状でもよい。
【0032】
また、上記案内プレートGは、上記空間像I’の傾斜と同じ傾斜方向、すなわち、鑑賞者から見て、上記マイクロミラーアレイMに対して手前側から奥に向かって昇り傾斜した状態で、配置されている。なお、上記案内プレートGの傾斜方向は、画像Iを表示するディスプレイD(傾斜角α)を基準に見た場合、図1のように、このディスプレイDと上記マイクロミラーアレイMを挟んで鏡像関係になる方向、すなわち、投影される空間像I’と同じ傾き方向で、かつ、鑑賞者の手前側が低く、鑑賞者から離れるに従って奥側が高くなる傾斜方向に傾斜するように配設されている。
【0033】
そして、上記案内プレートGの、マイクロミラーアレイMの上面Maに対する傾斜角θは、上記ディスプレイDのマイクロミラーアレイMに対する傾斜角αの角度以下に設定されており、これら傾斜角αと傾斜角θとの間には、
0 < θ ≦ α (ただし、30°≦α<90°)
の関係が成り立つようになっている。
【0034】
なお、上記案内プレートGの大きさ(枠の外縁の大きさ)や形状は、最小限、鑑賞者から見てマイクロミラーアレイMの外縁の一部隠れる程度でも事足りる。しかしながら、先に述べたように、鑑賞者の視線や頭部(眼の)位置を、開口Ga正面の適正な位置に確実に誘導(案内)するためには、上記マイクロミラーアレイM縁部の上方を含めた、ある程度広い範囲を覆う必要がある。具体的には、後記する表示装置のケースやハウジング等の上面の形状に応じて、デザイン,バランス等を考慮して適宜決定される。また、開口Gaを除く平板部位の上面の色(空間像I’の背景)は、空間像I’の鑑賞の邪魔とならない、黒,グレー等の暗色や、光沢のないマット(つや消し)色とすることが好ましい。上記空間像I’の鑑賞の支障とならない範囲であれば、上記平板部位の表面に模様や凹凸等を付与してもよい。
【0035】
上記実施の形態の表示装置の構成によれば、斜め状に立ち上がる空間像I’の近傍(周囲)に、この空間像I’との視差を生じる比較対象物(案内プレートG)が存在する。これにより、上記表示装置は、上記空間像の周囲に何もない表示装置に比べ、上記空間像I’の立体感,浮遊感や臨場感等が向上する。さらに、上記案内プレートGとマイクロミラーアレイMとの間(隙間)に暗部(影)が形成され、この暗部が空間像I’の背景となって、映像や画像等のコントラストが強調される。これにより、空間像I’の奥行き,浮遊感や臨場感等を、より強く感じることができる。
【0036】
つぎに、より具体的な実施の形態(第1実施形態)について説明する。
図4は、本発明の第1実施形態の表示装置の構成を示す一部断面図であり、図5は、上記第1実施形態の表示装置の外観斜視図である。
【0037】
この第1実施形態の表示装置も、パネル状のマイクロミラーアレイ結像光学素子(マイクロミラーアレイ1)と、フラットパネルディスプレイ(ディスプレイ2)とを備え、マイクロミラーアレイ1に多数設けられたマイクロミラー(コーナーリフレクタ)による光の反射により、マイクロミラーアレイ1の一面(図では下面1b)側に配置されたディスプレイ2に表示された映像(画像I)を、このマイクロミラーアレイ1の他面(図では上面1a)側の空間に、斜め状に立ち上がる空間像I’として、空間に浮かび上がるように結像させるものである。そして、この表示装置は、上記ディスプレイ2が、その表示面2aをマイクロミラーアレイ1の下面1aに対して所定角度αで傾斜させた状態で載置台4上に載置され、上記マイクロミラーアレイ1の上面1aと空間像I’との間に、平坦部3aと斜面部3bとからなる鑑賞方向案内用のプレート(案内プレート3)が、このマイクロミラーアレイ1の上面1aに対して所定角度θで、手前から奥側に向かって昇り傾斜した状態で配設されている。
【0038】
上記表示装置は、図1に示す表示装置を具体化したものである。より詳しく説明すると、ディスプレイ2を載置するための載置面4aを備える載置台4は、上記載置面4aを兼用する板状部材4bと、基台4c,4cとからなり、箱状のケース5の内部に配設されている。上記板状部材4bは、図4のように、ケース5の底面5bおよびマイクロミラーアレイ1の下面1b(または素子面P)に対して所定角度α傾いた状態で、上記基台4c,4cに支持されており、その上面が、ディスプレイ2の載置面4aとなっている。そして、この載置台4の載置面4a上に、ディスプレイ2としてスマートフォン等を載置することにより、上記ディスプレイ2の表示面2aが、マイクロミラーアレイ1の素子面Pに対してα度傾いた状態で保持されるようになっている。なお、ケース5内における上記載置面4aの、マイクロミラーアレイ1の下面1b(素子面P)に対する傾斜角αは、マイクロミラーアレイ1による結像が最適となるように調整されており、通常30°以上90°未満、好ましくは40°以上80°以下に設定されている。
【0039】
なお、上記載置台4上へのスマートフォン等の載置は、ケース5の上部を持ち上げて上面を開放させて行うか、あるいは、ケース5の側面に設けられた挿入口(図示省略)を介して行うことができる。また、載置台4上に載置するフラットパネルディスプレイ(携帯電話やスマートフォン等)として、大きさの異なる複数種類ものを併用する場合は、この載置台4を可変(傾斜角度変更)式あるいは可動式,交換式とするか、もしくは、ケース5内に、各ディスプレイに対応する複数の載置台を設置してもよい。
【0040】
上記ディスプレイ2および載置台4を収容するケース5は、図5に示すように略箱形(ボックス状)で、その上面に設けられた開口5aに、略正方形状のマイクロミラーアレイ1が嵌め入れられている(図4参照)。また、このマイクロミラーアレイ1の上方には、鑑賞者の鑑賞方向(視線方向)を案内(誘導)するための枠状のプレート(案内プレート3)が配置されており、上記案内プレート3の平坦部3a,3aを介して、この案内プレート3がケース5の上面に載置されている。
【0041】
つぎに、上記マイクロミラーアレイ1と空間像I’との間に配置される案内プレート3は、図4図5に示すように、その斜面部3bの略中央部に上記マイクロミラーアレイ1の平面形状に対応する開口3c(この例では五角形)が設けられている。そして、上記案内プレート3の斜面部3b(開口3cを含む)は、前記実施の形態と同様、上記空間像I’の傾斜と同じ傾斜方向、すなわち、鑑賞者から見て、上記マイクロミラーアレイ1に対して手前側から奥に向かって昇り傾斜した状態で、配置されている。なお、上記案内プレート3の斜面部3bの傾斜方向は、画像Iを表示するディスプレイ2(傾斜角α)を基準にした場合、図4のように、このディスプレイ2と上記マイクロミラーアレイ1を挟んで鏡像関係になる方向、すなわち、投影される空間像I’と同じ傾き方向で、かつ、鑑賞者の手前側が低く、鑑賞者から離れるに従って奥側が高くなる傾斜方向に傾斜するように配設されている。
【0042】
また、上記案内プレート3の斜面部3bの、マイクロミラーアレイ1の上面1aに対する傾斜角θは、上記ディスプレイ2のマイクロミラーアレイ1に対する傾斜角αの角度以下に設定されており、これら傾斜角αと傾斜角θとの間には、
0 < θ ≦ α (ただし、30°≦α<90°)
の関係が成り立つようになっている。
【0043】
なお、上記案内プレート3の開口3cの形状は、上記五角形の他、その他の多角形状、あるいは、単純な円形や楕円形等としてもよく、開口3cの大きさ(内縁形状)が、上記マイクロミラーアレイMの平面形状に近似のものであれば、どのような開口形状でもよい。また、上記案内プレート3の斜面部3bの大きさ(枠の外縁の大きさ)や形状は、表示装置のケース5やハウジング等の上面の形状に応じて、デザイン,バランス等を考慮して、適宜変更することができる。さらに、開口3cを除く斜面部3bの上面の色(空間像I’の背景)は、空間像I’の鑑賞の邪魔とならない、黒,グレー等の暗色や、光沢のないマット(つや消し)色とすることが好ましい。上記空間像I’の鑑賞の支障とならない範囲であれば、上記斜面部3bの表面に模様や凹凸等を付与してもよい。
【0044】
また、上記第1実施形態においては、ディスプレイ2および載置台4を収容するケース5を、図5に示すような略立方体の箱形(閉鎖形のボックス状)としたが、このケース5は、多角注状や円柱状としてもよい。
【0045】
さらに、このケースは、開放形のハウジングとしてもよく、例えば、図6に示すような、横方向の壁面のない形状(ハウジング6)の場合、このハウジング6の1つの側面(斜面6a)を、ディスプレイ2の載置面(所定角αで傾斜する載置面)として利用することができる。
【0046】
また、このケースは、図7に示すように、ディスプレイ2の周囲に壁面が全くない形状(ハウジング7)としてもよい。この場合、ハウジング7の天面(天板7a)と底面(底板7b)との間に、所定角度αで傾く載置板7cを設け、ここをディスプレイ2の載置面として利用することができる。
【0047】
以上の第1実施形態の表示装置によっても、斜め状に立ち上がる空間像I’の近傍(周囲)に位置する案内プレート3が、この空間像I’との視差を生じる背景として機能し、空間像I’の立体感,浮遊感や臨場感等を感じることができる。さらに、上記案内プレート3とマイクロミラーアレイ1との間(隙間)の暗部(影)により、映像や画像等のコントラストが強調され、空間像I’の奥行き,浮遊感や臨場感等を、より強く感じることができる点も同様である。
【0048】
また、上記表示装置は、そのケースやハウジング等の方向によって、空間像I’を鑑賞するのに適切な方向や位置が分かりにくい場合があるが、この場合でも、上記第1実施形態の表示装置では、空間像I’を鑑賞するのに適切な方向・位置(傾斜状の案内プレート3の開口3cの正面)から覗き込まないと、この案内プレート3によりマイクロミラーアレイ1の上面1aの一部等が不自然(不均等)に覆い隠され、違和感を感じるようになっている。そのため、この表示装置を使用(鑑賞)する鑑賞者は、上記表示装置を持ち上げる等して適切な位置・角度にこれを回転させるか、あるいは、自身が上記開口3cに正対する正面位置に移動するかして、案内プレート3の開口3cからマイクロミラーアレイ1の上面1aが左右均等の形状に臨める方向・位置に、無意識に視点を移動させるようになる。
【0049】
これにより、上記第1実施形態の表示装置は、上記空間像I’に立体感等を感じる、鑑賞に適した方向・位置を、誰もが簡単に見つけ出すことができる。しかも、その鑑賞方向と位置は、上記表示装置において、空間像I’の立体感,浮遊感や臨場感等を、最も強く感じることができる位置になっている。したがって、上記表示装置は、この種の立体表示装置(鑑賞装置)に不慣れな者であっても、マイクロミラーアレイ1の上方空間に浮かび上がる二次元画像(空間像I’)を、奥行き感に富む立体的な空間像として、容易に視認・鑑賞することができる。
【実施例】
【0050】
つぎに、ケース5の上面に、マイクロミラーアレイ1の平面形状に対応する開口3cを有する案内プレート3を配設した表示装置(上記第1実施形態を参照)を用いて行った、空間像I’の「視認性」と「飛び出し感」(立体感・浮遊感)の評価試験について述べる。
【0051】
[実施例1]
供試用の実施例1の表示装置には、図4および図5に記載の第1実施形態の表示装置を用いた。なお、結像光学素子(マイクロミラーアレイ1,詳細構造は図2を参照)には、60mm角のものを使用し、フラットパネルディスプレイ(ディスプレイ2)には、対角4.65インチ(約11.8cm)のLCD(スマートフォンに搭載のもの)を使用した。また、上記ディスプレイ2は、マイクロミラーアレイ1の下面1bに対して55°(角α)傾けて載置し、ケース5上の案内プレート3は、開口3cを含む斜面部3bが、マイクロミラーアレイ1の上面1aに対して20°(角θ)傾くように設置した。ちなみに、鑑賞者から見た、ケース正面横方向のマイクロミラーアレイ1の幅(対角)が約85mmであるのに対し、これを覆う、上記案内プレート3の開口3cは、正面横方向の開口幅(最大)が110mmに、縦方向(手前−奥方向)の開口幅(最大)が60mmに設定されている。
【0052】
〈「視認性」と「飛び出し感」の評価試験〉
評価試験は、当該分野の研究に携わる者以外の者から、無作為に10名の被験者を募り、上記実施例1の表示装置を、テーブル上に無造作に放置した状態から始めた。
【0053】
「視認性」
各被験者が、上記テーブル上に無造作に放置した表示装置を手に取り、表示された空間像を覗き込んで認識するのに要する時間を計測した。なお、ブランク(比較例1)として、上記案内プレート3を装着していない表示装置を用意し、同様の試験を行って、結果をこれと比較した。
〈結果〉
・案内プレート3を装着した実施例1の表示装置は、被験者全員(10名)が、表示装置を手にしてから3秒以内に空間像を認識した。
・案内プレート3を装着していない比較例1の表示装置は、10名のうち6名が、表示装置を手にしてから3秒以内に空間像を認識できたが、残り4名は、空間像を認識するまでに5秒以上を要した。
【0054】
「飛び出し感」
各被験者が、実施例1の表示装置および比較例1の表示装置の空間像を認識した後、どちらの空間像が、より飛び出し感(立体感・浮遊感)を感じるかを、アンケート調査した。
〈結果〉
・被験者10名全員が、案内プレート3を装着していない比較例1の表示装置より、案内プレート3を装着した実施例1の表示装置の方が、より「飛び出し感」を感じる、と回答した。
【0055】
上記評価試験から、本発明の表示装置は、従来の(案内プレートを有さない)表示装置に比べ、表示(投影)される空間像の視認性が向上していることが分かる。また、空間像の立体感(奥行き),浮遊感や臨場感等を、より強く感じることができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の表示装置によれば、奥行き感に富むリアルな立体的二次元画像を、装置本体の上方に浮かび上がらせて表示することができる。
【符号の説明】
【0057】
D ディスプレイ
G 案内プレート
Ga 開口
M マイクロミラーアレイ
Ma 上面
I 画像
I’ 空間像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8