特許第5992310号(P5992310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マン・ディーゼル・アンド・ターボ・エスイーの特許一覧

<>
  • 特許5992310-タービン 図000002
  • 特許5992310-タービン 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992310
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】タービン
(51)【国際特許分類】
   F01D 3/04 20060101AFI20160901BHJP
   F01D 5/06 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
   F01D3/04
   F01D5/06
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-266086(P2012-266086)
(22)【出願日】2012年12月5日
(65)【公開番号】特開2013-119860(P2013-119860A)
(43)【公開日】2013年6月17日
【審査請求日】2015年7月21日
(31)【優先権主張番号】10 2011 087 824.6
(32)【優先日】2011年12月6日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・ディーゼル・アンド・ターボ・エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ビョルン・ラインホルト
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・シャーケ
【審査官】 山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−520063(JP,A)
【文献】 特開平05−156902(JP,A)
【文献】 特開2010−169091(JP,A)
【文献】 特開2001−140604(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0247211(US,A1)
【文献】 特開昭56−138405(JP,A)
【文献】 特開昭61−218704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 3/04
F01D 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン(1)であって、
ステータ(10)およびこのステータ(10)内に回転可能にベアリング支持されたローター(20)と、
複数のタービン段(30)であって、前記ローター(20)およびステータ(10)によって形成され、かつ、前記タービン(1)の長手方向(LR)に沿って連続的に配置され、かつ、それを経て、作動流体の流動経路が、前記ローター(20)を回転駆動するために延在している複数のタービン段(30)と、
軸方向スラストバランスピストン(40)であって、前記ローター(20)に配置されており、かつ、前記作動流体を第1の流体圧力によって第1のピストンチャンバー(41)内に一つのタービン段(30.1)から輸送できるように第1の流体ライン(51)を介して前記タービン段の一つ(30.1)に対して接続された前記第1のピストンチャンバー(41)を第1の軸方向ピストン側に、そして、前記タービン段(30)を通過する前記作動流体の流動方向と逆向きの軸方向スラストを前記軸方向スラストバランスピストン(40)によって前記ローター(20)に加えることができるように前記第1の流体圧力よりも低い反対圧力を有するよう構成された第2のピストンチャンバー(42)を前記第1のピストン側から離れた第2の軸方向ピストン側に有する軸方向スラストバランスピストン(40)と、
圧力制御デバイス(60)であって、前記軸方向スラストバランスピストン(40)の前記第2のピストンチャンバー(42)に対して接続され、かつ、前記反対圧力を変化させるよう構成された圧力制御デバイス(60)と、を具備し、
前記圧力制御デバイス(60)は、前記第2のピストンチャンバー(42)からの流体の制御された取り出しによって前記反対圧力を変化させるよう構成されており、前記圧力制御デバイス(60)は、流体ポンプとして構成され、かつ、第2の流体ライン(52)によって前記第2のピストンチャンバー(42)に対して接続された吸引サイド(61)を有し、かつ、前記圧力制御デバイス(60)は、スチームジェットエジェクターとして構成されており、かつ、前記スチームジェットエジェクターを駆動するために原動サイド(63)に対して前記作動流体を供給できるように、第4の流体ライン(54)によって前記作動流体の前記流動経路に対して接続された前記原動サイド(63)を有することを特徴とするタービン(1)。
【請求項2】
前記圧力制御デバイス(60)は、前記第2のピストンチャンバー(42)からの流体の制御された吸引によって前記反対圧力を変化させるよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載のタービン(1)。
【請求項3】
前記圧力制御デバイス(60)は、前記流動経路内でタービン段(30.1)の下流側に配置された前記タービン段(30)のさらなるタービン段(30.2)において、前記作動流体の前記流動経路に対して第3の流体ライン(53)によって接続された供給サイド(62)を有し、前記さらなるタービン段(30.2)は、前記第1の流体圧力よりも低い作動流体の第2の流体圧力を有するよう構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタービン(1)。
【請求項4】
前記第4の流体ライン(54)は、前記作動流体を前記第1の流体ライン(51)から前記原動サイド(63)に対して供給できるように、前記第1の流体ライン(51)に対して接続されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のタービン(1)。
【請求項5】
サーボバルブ(70)が、前記圧力制御デバイス(60)の前記原動サイド(63)に対して供給できる作動流体の量を変更できるように、前記第4の流体ライン(51)中に配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のタービン(1)。
【請求項6】
前記圧力制御デバイス(60)は、前記第2のピストンチャンバー(42)から取り出された流体の量が、前記圧力制御デバイス(60)の原動サイド(63)に対して供給される作動流体の量の略2倍であるように構成されていることを特徴とする請求項に記載のタービン(1)。
【請求項7】
前記タービン(1)の少なくとも一つの状態パラメーターを検出するセンサーデバイス(90)に接続された少なくとも一つの信号入力部(81)と、前記サーボバルブ(70)に接続された信号出力部(82)と、を有する制御デバイス(80)を備えた請求項または請求項に記載のタービン(1)であって、前記制御デバイス(80)は、前記タービン(1)の前記少なくとも一つの状態パラメーターに依存して、前記サーボバルブ(70)の開度を、前記信号出力部(82)を介して制御するよう構成されていることを特徴とするタービン(1)。
【請求項8】
前記センサーデバイス(90)は、前記ローター(20)のスラストベアリングの温度を検出するための温度センサー(91)を有し、かつ、前記制御デバイス(80)は、前記ローター(20)の前記スラストベアリングの温度に依存して、前記サーボバルブ(70)の開度を制御するよう構成されていることを特徴とする請求項に記載のタービン(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプレアンブルに記載のタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
上記タイプのタービンは、たとえば特許文献1から公知である。作動領域の対向流れを伴う高圧領域および中圧領域を有する、このタービンにおいては、中圧領域の軸方向スラストおよび軸方向スラストバランスピストンの実質的に一定の軸方向スラストが高圧領域の軸方向スラストに抗するので、高圧領域および中圧領域によって形成される軸方向スラストは、タービンの通常運転の間、バランスさせられる。タービンの一時的な運転の間にバルブによって可能となる中圧領域への作動領域供給の停止によって、非常に小さな反対圧力が軸方向スラストバランスピストンのピストンチャンバー内に強制的にもらされるが、このピストンチャンバーは中圧領域と関連付けられ、したがって、高圧領域を通過する作動流体の流動方向と逆向きに軸方向スラストバランスピストンによって加えられるローターへの軸方向スラストの増大が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第3,614,255号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、軸方向スラストバランスピストンの軸方向スラストをタービンの通常運転中に変化させることができるような、請求項1のプレアンブルに記載のタービンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は請求項1に記載のタービンによって解決される。本発明のさらなる展開は従属請求項に記載されている。
【0006】
本発明によれば、タービンは、ステータおよびこのステータ内に回転可能にベアリング支持されたローターと;複数のタービン段であって、ローターおよびステータによって形成され、かつ、タービンの長手方向に沿って連続的に配置され、かつ、それを経て、作動流体の流動経路がローターを回転駆動するために延在している複数のタービン段と;軸方向スラストバランスピストンであって、ローターに配置されており、かつ、作動流体を第1の流体圧力によって第1のピストンチャンバー内に一つのタービン段から輸送できるように第1の流体ラインを介してタービン段の一つに対して接続された第1のピストンチャンバーを第1の軸方向ピストン側に、そして、タービン段を通過する作動流体の流動方向と逆向きの軸方向スラストを軸方向スラストバランスピストンによってローターに加えることができるように第1の流体圧力よりも低い反対圧力を有するよう構成された第2のピストンチャンバーを第1のピストン側から離れた第2の軸方向ピストン側に有する軸方向スラストバランスピストンと;圧力制御デバイスであって、軸方向スラストバランスピストンの第2のピストンチャンバーに対して接続され、かつ、反対圧力を変化させるよう構成された圧力制御デバイスとを具備する。本発明に基づくタービンは、圧力制御デバイスが、第2のピストンチャンバーからの流体の制御された様式での取り出しによって反対圧力を変化させるよう構成されることを特徴とする。
【0007】
タービンの通常運転中に制御された様式で第2のピストンチャンバーから流体を取り出すことによって反対圧力を変化させることができ、したがって第1の流体圧力と反対圧力との圧力差を変化させることができる。したがって、今度は、軸方向スラストバランスピストンの軸方向スラストをタービンの通常運転中に変化させることができる。本発明によれば、反対圧力を減少あるいは増大させることができ、この結果、圧力差、したがって軸方向スラストバランスピストンの軸方向スラストを増大あるいは減少させることができる。
【0008】
上記タービンは、好ましくは、タービン段を通過する作動流体の流動方向における非常に強力な軸方向スラストを伴う反動タービン型として構成される。さらに、作動媒体は、好ましくは蒸気であり、したがってタービンは蒸気タービンとして構成される。反動タービンあるいは蒸気タービンの非限定的な例は、独国特許出願公開第197 01 020号明細書に開示されている。さらに、第2のピストンチャンバーから吸い出される流体は、作動流体からなる。
【0009】
本発明のある実施形態によれば、圧力制御デバイスは、第2のピストンチャンバーからの流体の制御された吸引によって反対圧力を変化させるよう構成される。
【0010】
吸引によって第2のピストンチャンバーから流体を積極的に取り出すことによって、さもなければ可能である程度をはるかに超えて、反対圧力を著しく低減することが可能であり、この結果、圧力差、したがって軸方向スラストバランスピストンの軸方向スラストは著しく増大させられる。したがって、たとえば、ローターを軸方向に支持するスラストベアリングは、通常よりも小さな寸法を有することができ、この結果、コストを節減できる。
【0011】
圧力制御デバイスは、好ましくは、流体ポンプとして構成され、かつ、第2の流体ラインによって第2のピストンチャンバーに対して接続された吸引サイドを有する。さらに、圧力制御デバイスは、好ましくは、流動経路内でタービン段の下流に配置されたタービン段のさらなるタービン段において作動流体の流動経路に対して第3の流体ラインによって接続された供給サイドを有し、このさらなるタービン段は、第1の流体圧力よりも低い作動流体の第2の流体圧力を有するよう構成される。
【0012】
このように、吸い出される流体が、好ましい作動流体である場合、この吸い出された流体はタービンプロセスへと戻るように供給され、この結果、タービンの効率が高められる。
【0013】
本発明のさらに別な実施形態によれば、圧力制御デバイスは、スチームジェットエジェクターとして構成され、かつ、スチームジェットエジェクターを駆動するために原動サイドに対して作動流体を供給できるように、第4の流体ラインによって作動流体の流動経路に対して接続された原動サイドを有する。
【0014】
こうすることで、別個の媒体を流体ポンプを駆動するために供給する必要がなくなり、この結果、追加的コストが節減され、かつ、タービンの複雑さが軽減される。ここでは、第4の流体ラインは、好ましくは、第1の流体ラインに対して接続され、この結果、作動流体は第1の流体ラインから原動サイドに対して供給できる。蒸気ジェットエジェクターおよびタービン内でのその使用法の非限定的な例は、たとえば、スイス国特許出願公開第88025号明細書(CH 88025 A)ならびに独国特許出願公開第36 16 797号明細書(DE 36 16 797 A1)に開示されている。
【0015】
本発明の別な実施形態によれば、サーボバルブが、圧力供給デバイスの原動サイドに対して供給できる作動流体の量を変更できるように、第4の流体ライン中に配置される。
【0016】
タービンの通常運転中に、制御された様式で圧力制御デバイスの原動サイドに対して供給される作動流体の量を変化させることによって、蒸気ジェットエジェクターの吸引力は制御された様式で変更される。よって、第1の流体圧力と反対圧力との間の圧力差、したがって軸方向スラストバランスピストンの軸方向スラストは、今度は、簡単かつ頑強に、制御された様式で変更される。
【0017】
本発明のさらなる実施形態によれば、圧力制御デバイスは、適切な原動蒸気パラメーターおよび直径の選択によって、第2のピストンチャンバーから取り出された流体の量が、圧力制御デバイスの原動サイドに対して供給される作動流体の量の約2倍であるように構成される。言い換えれば、原動蒸気の量は、逆に、好ましくは、実現される吸引蒸気の量の半分である。蒸気ジェットエジェクターのこの形態の結果、軸方向スラストバランスピストンの第2の軸方向ピストンサイドへの反対圧力は、圧力制御デバイスの原動サイドに対して供給される作動流体の量あるいは原動蒸気の量によって半分にできる。
【0018】
本発明のさらに別な実施形態によれば、タービンは、このタービンの少なくとも一つの状態パラメーターを検出するセンサーデバイスに対して接続された少なくとも一つの信号入力部と、サーボバルブに対して接続された信号出力部とを有する制御デバイスを有する。制御デバイスは、タービンの少なくとも一つの状態パラメーターに依存して、サーボバルブの開度を、信号出力部を介して制御するよう構成される。
【0019】
このようにして、軸方向スラストバランスピストンの軸方向スラストは、タービンの一つ以上の状態パラメーター(たとえば、蒸気流量、速度、温度、ベアリング状態など)に依存して、変更、特に調整することができる。
【0020】
センサーデバイスは、好ましくは、ローターのスラストベアリングの温度を検出するための温度センサーを有し、かつ、制御デバイスは、ローターのスラストベアリングの温度に依存してサーボバルブの開度を調整するよう構成される。
【0021】
最後に、本発明の一実施形態によれば、たとえばバランスピストンが非常に低い低圧レベルに接続される場合に可能であるよりも、さらに、反動タービンの軸方向スラストバランスを増大させることが可能である。ここで、蒸気ジェットエジェクターは、接続されたパイプラインのレベルの下まで、バランスピストンの背後の圧力を低下させる。
【0022】
本発明はまた、明らかに、特許請求の範囲の明示的言及からの特徴の組み合わせによって与えられない実施形態にも及び、したがって、本発明の開示された特徴は、技術的な意味がある限り、いかようにでも互いに組み合わせることができる。
【0023】
以下、好ましい実施形態および図面を参照して、本発明についてさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】軸方向スラストバランスピストンを備えたタービンの実施形態を示す図である。
図2】本発明の実施形態に基づくタービンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
先ず、軸方向スラストバランスピストン40'を有するタービン1'における軸方向スラストの作用について、図1を参照して説明する。
【0026】
タービン1'は、ステータ10'(大まかに示す)およびこのステータ10'内で回転可能にベアリング支持されたローター20'と、複数のタービン段30.1'〜30.5'(以下では、その全体を30'で示す)と、軸方向スラストバランスピストン40'とを有する。
【0027】
ローター20'およびステータ10'によって形成されたタービン段30'は、タービン1'の長手方向LR'に沿って連続的に配置されており、ローター20'を回転駆動するための作動流体の流動経路は、タービン段30'を経て延在している。この実施形態によれば、作動流体は蒸気からなり、したがってタービン1'は蒸気タービンとして構成される。図1において、タービン段30'を通過する作動流体の流動方向は長手方向LR'に対応する。
【0028】
さらに、この実施形態によれば、タービン1'は、タービン段30'を通過する作動流体の流動方向に、非常に強力な軸方向スラストを伴う反動タービン型として構成される。タービン段30'と作動流体との相互作用によってもたらされる、この軸方向スラストは、右向き太矢印によって図1に示されている。
【0029】
軸方向スラストバランスピストン40'はローター20'に配置されており、かつ、第1の軸方向ピストンサイドに第1のピストンチャンバー41'を有し、この第1のピストンチャンバー41'は、第1の流体ライン51'によってタービン段30'の第1のタービン段30.1'に対して流体的に接続されており、この結果、第1の流体圧力によって、タービン1'の作動中、作動流体は第1のタービン段30.1'から第1のピストンチャンバー41'内へと輸送される。
【0030】
軸方向スラストバランスピストン40'はさらに、第1のピストンサイドから離れた第2の軸方向ピストンサイドに第2のピストンチャンバー42'を有し、この第2のピストンチャンバー42'は、第2の流体ライン52'によってタービン段30'の第2のタービン段30.2'に対して流体的に接続されているが、この第2のタービン段30.2'は流動経路内で第1のタービン段30.1'の下流に配置されている。タービン1'の作動中、第2のタービン段30.2'は、第1の流体圧力よりも低い作動流体の第2の流体圧力を有する。したがって、タービン1'の作動中、第2のピストンチャンバー42'は、第1の流体圧力よりも低い反対圧力(第2の流体圧力)を有する。
【0031】
この圧力比のために、タービン1'の作動中、軸方向スラストバランスピストン40'は、タービン段30'を通過する作動流体の流動方向(長手方向LR)とは反対に、ローター20'に軸方向スラスト(図1の左向き太矢印)を加える。
【0032】
タービン段30'を通過する作動流体の流動方向(長手方向LR)と逆向きの、この軸方向スラスト(図1の左向き太矢印)の結果、タービン段30'と作動流体の相互作用によってもたらされる軸方向スラスト(図1の右向き太矢印)は部分的に補償される。長手方向LRの残留軸方向スラストは、ローター20'のためのスラストベアリング(図示せず)によって吸収される必要がある。これに関して、ローター20'のためのスラストベアリングは、長手方向LRにおける残留軸方向スラストが大きくなればなるほど、より大きくかつより安定したものとなるように設計される必要がある。
【0033】
全軸方向スラストおよびスラストベアリングによって吸収すべき残留軸方向スラストは、第2のピストンチャンバー42'内の圧力レベルを低減することによって低減できることを本発明者が見出した。図1の実施形態によれば、これは、第2の流体ライン52'をタービン1'内のより低い圧力レベルに対して接続することによって達成できる。
【0034】
だが、軸方向スラストを、たとえば目下の状態パラメーター(蒸気流量、速度、温度、ベアリング状態など)に適合させることができるように、タービンの通常運転の間、軸方向スラストバランスピストンの軸方向スラストを変更可能であるならば有利であろうことを本発明者は、さらに見出した。
【0035】
ここで、この種の解決策を、図2を参照して説明するが、この図は本発明の一実施形態に基づくタービン1を示している。(アポストロフィーを持たない)同一あるいは類似の参照数字は、図2の以下の説明において、同一あるいは類似のコンポーネントを示している。
【0036】
図2に示すタービン1は、ステータ10(大まかに示す)およびこのステータ10内で回転可能にベアリング支持されたローター20と、複数のタービン段30.1ないし30.5(以下では、その全体を30で示す)と、軸方向スラストバランスピストン40と、圧力制御デバイス60とを有する。
【0037】
ローター20およびステータ10によって形成されたタービン段30は、タービン1の長手方向LRに沿って連続的に配置されており、そしてローター20を回転駆動するための作動流体の流動経路はタービン段30を通って延びている。本発明のこの実施形態によれば、作動流体は蒸気からなり、したがってタービン1は蒸気タービンとして構成される。図2において、タービン段30を通る作動流体の流動方向は長手方向LRに対応する。
【0038】
さらに、本発明のこの実施形態によれば、タービン1は、(図2の右側に向かって)タービン段30を通過する作動流体の流動方向における非常に強力な軸方向スラストを伴う反動タービン型として構成されている。作動流体のタービン段30との相互作用によってもたらされる、この軸方向スラストは、右向き太矢印によって図1に示される軸方向スラストに対応する。
【0039】
軸方向スラストバランスピストン40はローター20に配置されており、かつ、第1の軸方向ピストンサイドに第1のピストンチャンバー41を有し、この第1のピストンチャンバー41は、第1の流体ライン51によってタービン段30の第1のタービン段30.1に対して流体的に接続されており、これによって、第1の流体圧力によって、タービン1の作動中、作動流体は第1のタービン段30.1から第1のピストンチャンバー41内へと輸送される。
【0040】
軸方向スラストバランスピストン40はさらに、第1のピストンサイドから離れた第2の軸方向ピストンサイドに、第2のピストンチャンバー42を有し、この第2のピストンチャンバー42は、タービン1の作動中、第1の流体圧力よりも低い反対圧力を有する。
【0041】
圧力制御デバイス60は、蒸気ジェットエジェクターの形態の流体ポンプとして構成されており、かつ、(吸引蒸気接続部を備えた)吸引サイド61を有するが、これは、第2のピストンチャンバー42からの作動流体の制御された取り出しによって(特にこの例におけるように吸引によって)タービン1の運転中に反対圧力が第2のピストンチャンバー42内に形成され、そして必要に応じて変更できるように、第2の流体ライン52によって第2のピストンチャンバー42に対して流体的に接続される。
【0042】
圧力制御デバイス60はさらに、第3の流体ライン53によってタービン段30の第2のタービン段30.2において作動流体の流動経路に対して流体的に接続されている(出力蒸気接続部を備えた)供給サイド62を有するが、この第2のタービン段30.2は、流動経路における第1のタービン段30.1の下流に配置される。タービン1の作動中、第2のタービン段30.2は、第1の流体圧力よりも低い作動流体の第2の流体圧力を有する。
【0043】
さらに、圧力制御デバイス60は、(原動蒸気接続部を備えた)原動サイド63を有し、これは、第4の流体ライン54によって作動流体の流動経路に対して流体的に接続されており、これによって、作動流体を圧力制御デバイス60を駆動するために原動サイド63に対して供給することができる。さらに正確には、第4の流体ライン54は、第1の流体ライン51に対して流体的に接続されており、これによって、作動流体を第1の流体ライン51から原動サイド63に対して供給することができる。
【0044】
上記圧力比のために(反対圧力<第1の流体圧力)、タービン1の作動中、軸方向スラストバランスピストン40は、ローター20に左向きに軸方向スラスト(図1の左向き太矢印に対応する)を加えるが、この軸方向スラストは、タービン段30を通る作動流体の流動方向(長手方向LR)と反対である。
【0045】
タービン段30を通過する作動流体の流動方向(長手方向LR)と反対の、この左向き軸方向スラストの結果、作動媒体のタービン段30との相互作用によってもたらされる右向き軸方向スラストは、ある程度まで補償される。(右に向かう)長手方向LRにおける残留軸方向スラストは、ローター20のためのスラストベアリング(図示せず)によって吸収される必要がある。
【0046】
軸方向スラストバランスピストン40によって提供される左向き軸方向スラストを制御、特に調整するために、サーボバルブ70が第4の流体ライン54内に配置され、これによって、圧力制御デバイス60の原動サイド63に対して供給できる作動流体の量を変更することができる。
【0047】
タービン1の通常運転中に制御された様式で圧力制御デバイス60の原動サイド63に対して供給される作動流体の量を変更することによって、圧力制御デバイス60(蒸気ジェットエジェクター)の吸引力は、制御された様式で変更される。よって、第1の流体圧力と反対圧力との間の圧力差、したがって軸方向スラストバランスピストン40の左向き軸方向スラストが、今度は、簡単かつ頑強に、制御された様式で変更される。
【0048】
圧力制御デバイス60は、好ましくは、第2のピストンチャンバー42から取り出される作動流体の量が、圧力制御デバイス60の原動サイド63に対して供給される作動流体の量の略2倍であるように構成される。言い換えれば、原動蒸気の量は、逆に、好ましくは、実現される吸引蒸気の量の半分である。圧力制御デバイス60のこの形態の結果、軸方向スラストバランスピストン40の第2の軸方向ピストンサイドへの反対圧力は、圧力制御デバイス60の原動サイド63に対して供給される作動流体の量あるいは原動蒸気の量によって、半分にすることができる。
【0049】
さらに、タービン1は、このタービン1の少なくとも一つの状態パラメーターを検出するセンサーデバイス90に対して信号接続された少なくとも一つの信号入力部81と、サーボバルブ70に対して接続されかつ二方向接続によってサーボバルブ70のポジションを検出できる二方向信号出力部82とを有する制御デバイス80を有する。
【0050】
制御デバイス80は、タービン1の少なくとも一つの状態パラメーターに依存して、信号出力部82を介して、サーボバルブ70の開度を制御するよう構成される。
【0051】
このようにして、タービン1の一つ以上の状態パラメーター(たとえば、蒸気流量、速度、温度、ベアリング状態など)に依存して、軸方向スラストバランスピストン40の軸方向スラストを変更することが、特に調整することができる。
【0052】
図2に示す本発明の実施形態によれば、センサーデバイス90は、ローター20のスラストベアリングの温度を検出するための温度センサー91を有し、かつ、制御デバイス80は、ローター20のスラストベアリングの温度に依存して、サーボバルブ70の開度を制御するよう構成される。
【0053】
最後に、本発明によれば、たとえば軸方向スラストバランスピストン40が非常に低い圧力レベルに対して接続される場合に可能であるよりも、さらに、特に反動タービンなどのタービン内の軸方向スラストバランスを向上させることが可能である。このために、圧力制御デバイス、好ましくは蒸気ジェットエジェクターが、流体の制御された取り出しによって、接続流体ラインのレベルの下まで、軸方向スラストバランスピストン40の背後の圧力を低減させる。
【符号の説明】
【0054】
1;1' タービン
10;10' ステータ
20;20' ローター
30;30' タービン段(全体)
30.1〜30.5 タービン段(個体)
30.1'〜30.5' タービン段(個体)
40;40' 軸方向スラストバランスピストン
41;41' 第1のピストンチャンバー
42;42' 第2のピストンチャンバー
51;51' 第1の流体ライン
52;52' 第2の流体ライン
53 第3の流体ライン
54 第4の流体ライン
60 圧力制御デバイス
61 吸引サイド
62 供給サイド
63 原動サイド
70 サーボバルブ
80 制御デバイス
81 信号入力
82 信号出力
90 センサーデバイス
91 温度センサー
LR;LR' 長手方向
図1
図2