特許第5992313号(P5992313)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992313
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】用紙搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 11/30 20060101AFI20160901BHJP
   B41J 11/32 20060101ALI20160901BHJP
   B41J 11/34 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
   B41J11/30
   B41J11/32
   B41J11/34
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-273098(P2012-273098)
(22)【出願日】2012年12月14日
(65)【公開番号】特開2014-117840(P2014-117840A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110217
【氏名又は名称】トッパン・フォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097560
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼橋 寛
(72)【発明者】
【氏名】池田 政澄
【審査官】 西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−217140(JP,A)
【文献】 実開平01−118947(JP,U)
【文献】 実開昭60−123245(JP,U)
【文献】 特開平01−197260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/00−11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マージナル孔を備える用紙に対して、当該用紙のマージナル孔をピン付きベルトに嵌合させ、回動自在な用紙押え部で押えて搬送する樹脂製の搬送トラクタを有し、当該搬送トラクタが用紙の幅方向調整用の調整軸に摺動自在に取り付けられる用紙搬送装置であって、
前記調整軸上で前記搬送トラクタと共に摺動自在であり、当該搬送トラクタの前記用紙押え部を開放位置で回動止めさせる延出部が形成されたトラクタ補助部を有することを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項2】
請求項1記載の用紙搬送装置であって、前記搬送トラクタは前記用紙押え部と共に前記用紙を挾持するベルト支持部を備えるもので、前記トラクタ補助部に当該ベルト支持部と係合する係合部が形成されることを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項3】
請求項1記載の用紙搬送装置であって、前記搬送トラクタは前記用紙押え部と共に前記用紙を挾持するベルト支持部を備えるもので、前記トラクタ補助部に前記ピン付きベルトを回避しつつ当該ベルト支持部の底部を載置させる段差載置部が形成されることを特徴とする用紙搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マージナル孔を有する用紙を搬送する搬送トラクタを備える用紙搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば大量の印刷物を作製する場合、連続用紙を搬送させて印刷を行うことが一般的であり、連続用紙には搬送させるために幅方向両側にマージナル孔が形成されたマージナル部が後に断裁廃棄され、若しくはそのままとなるものとして設けられ、ピン付きの搬送ベルトにより当該マージナル孔にピンを嵌合させてベルト回転させることで用紙搬送する搬送トラクタが用いられている。このような搬送トラクタの大部分は樹脂により成形されることから、特に回動部分の摩耗等による悪影響を回避する必要がある。
【0003】
図5に、従来の搬送トラクタの説明図を示す。図5に示す搬送トラクタは、特許文献1に開示されている用紙送りトラクタであり、ここでは概略を説明する。図5(A)において、用紙送りトラクタ101は、本体フレーム102に蓋体103が回動自在に取り付けられて、本体フレーム102に対して補助フレーム104がピン付きベルトを支持しながら当該本体フレーム102とにより当該ピン付きベルトを回転自在に挾持している構成である。
【0004】
本体フレーム102及び補助フレーム104には、ピン付きベルト105を回転させるための断面角状の駆動軸を受ける駆動軸受孔104Aが形成されると共に、用紙幅方向に用紙送りトラクタ101を用紙幅方向に位置調整させる調整軸を受ける調整軸受孔104Bが形成されている。本体フレーム102には、特許文献1では蓋体103が回動自在に軸支されているが、ここでは2つのつがい部106A,106Bで回動自在とし、当該蓋体103に対してコイルバネ107が懸架される。また、本体フレーム102には調整軸に対して調整後に固定する固定部(固定レバー108)が設けられている。
【0005】
上記蓋体103は、把持部111が形成され、ピン付きベルト105に対応する部分が開口されている。特許文献1では、この開口部分の周囲に紙押え板が取り付けられているが、ここでは、紙押え板を設けない場合として対向面となる押え面112A,112Bを紙押えの役割とさせる。
【0006】
このような用紙送りトラクタ101は、図示しない駆動軸及び調整軸に取り付け、適宜調整軸上で位置調整した後に、連続用紙121のマージナル部123に形成されたマージナル孔122A(122Bは対向側として図示していない)をピン付きベルト105のピンに嵌合させることで用紙セットする。
【0007】
そして、図5(B)に示すように、蓋体103を用紙側に回動させることで補助フレーム104との間で用紙121を挾持した状態とさせ、駆動軸を回転させることでピン付きベルト105が回転されて当該用紙121が搬送されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平01−118947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記用紙送りトラクタ101は、本体フレーム102に対して蓋体103を回動自在とさせるつがい部106A,106Bには、切り込み部分が形成されており、当該切り込み部分の当接状態で図5(B)に示す状態から図5(A)に示す蓋体103を立設した状態とさせている。
【0010】
しかしながら、上記のような用紙送りトラクタ101は、その大部分が樹脂により成形されており、蓋体103の開状態、閉状態を繰り返すうちにつがい部106A,106Bの切り込み部分が摩耗することにより、又は、作業者の力の入れ過ぎにより、図5(C)に示すようにコイルバネ107の付勢力で反り返る状態となり、その勢いで作業者に思わぬ衝撃を与えてしまうと共に、作業性が悪くなるという問題がある。
【0011】
そこで、本発明は上記課題に鑑みなされたもので、用紙押え部の開放時の力の入れ過ぎや繰り返し開閉による摩耗によっても作業者に衝撃を与えず、作業性の悪化を防止する用紙搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1の発明では、マージナル孔を備える用紙に対して、当該用紙のマージナル孔をピン付きベルトに嵌合させ、回動自在な用紙押え部で押えて搬送する樹脂製の搬送トラクタを有し、当該搬送トラクタが用紙の幅方向調整用の調整軸に摺動自在に取り付けられる用紙搬送装置であって、前記調整軸上で前記搬送トラクタと共に摺動自在であり、当該搬送トラクタの前記用紙押え部を開放位置で回動止めさせる延出部が形成されたトラクタ補助部を有する構成とする。
【0013】
請求項2,3の発明では、「前記搬送トラクタは前記用紙押え部と共に前記用紙を挾持するベルト支持部を備えるもので、前記トラクタ補助部に当該ベルト支持部と係合する係合部が形成される」構成であり、
「前記搬送トラクタは前記用紙押え部と共に前記用紙を挾持するベルト支持部を備えるもので、前記トラクタ補助部に前記ピン付きベルトを回避しつつ当該ベルト支持部の底部を載置させる段差載置部が形成される」構成である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、マージナル孔を備える用紙をピン付きベルトに嵌合させ、回動自在な用紙押え部で押えて搬送する樹脂製の搬送トラクタが用紙の幅方向調整用の調整軸に摺動自在に取り付けられ、調整軸上で搬送トラクタと共に摺動自在なトラクタ補助部に形成した延出部で用紙押え部を開放位置で回動止めさせる構成とすることにより、用紙押え部の開放時の力の入れ過ぎや繰り返し開閉による摩耗によってもトラクタ補助部の延出部で常に用紙押えの開放位置で回動止めさせることから、作業者に衝撃を与えず、作業性の悪化を防止することができるものである。
【0015】
請求項2,3の発明によれば、トラクタ補助部に、ベルト支持部に係合する係合部を形成し、又は、ピン付きベルトを回避しつつ当該ベルト支持部の底部を載置させる段差載置部を形成することにより、搬送トラクタを調整軸上でトラクタ補助部と共に調整移動させる際に当該搬送トラクタの調整軸との遊び間隙によるガタツキを防止して円滑な移動を行わせることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る用紙搬送装置の概念構成図である。
図2図1の搬送トラクタ及びトラクタ補助部の組立状態の説明図である。
図3図1の搬送トラクタ及びトラクタ補助部の軸移動及び用紙押え部の開状態の説明図である。
図4】本発明に係る用紙搬送装置におけるトラクタ補助部の他の形状の説明図である。
図5】従来の搬送トラクタの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図により説明する。
図1に、本発明に係る用紙搬送装置の概念構成図を示す。図1(A)において、用紙搬送装置11は、左右対称に搬送トラクタ12A,12Bが配置され、それぞれの搬送トラクタ12A,12Bにトラクタ補助部13A,13Bが組み合わされる(詳細は後述する)。
【0018】
用紙搬送装置11は、搬送される連続用紙の幅方向に幅調整軸14及びトラクタ駆動軸15が懸架され、それぞれ搬送トラクタ12A,12Bを貫通させ、幅調整軸14は搬送トラクタ12A,12Bに組み合わされたトラクタ補助部13A,13Bをも貫通させる。当該幅調整軸14及びトラクタ駆動軸15に対して、その軸方向に搬送トラクタ12A,12B及びトラクタ補助部13A,13Bを摺動自在としている。
【0019】
そして、搬送される用紙は、連続用紙21であり、幅方向の両側にマージナル部22A,22Bが設けられ、それぞれのマージナル部22A,22Bにはマージナル孔23が後述の搬送トラクタ12A,12Bのピン付きベルトのピンピッチで形成されたものである。用紙搬送に関しては前述の図5と同様である。
【0020】
以下、搬送トラクタ及びトラクタ補助部は左右同一なので、一方の搬送トラクタ12A及びトラクタ補助部13Aを主に説明する。図1(B)に示す搬送トラクタ12A(12B)の構成は、図5において説明した従前の用紙送りトラクタと略同一である。すなわち、ベース板32は図5の本体フレーム102に相当し、以下、用紙押え部33は図5の蓋体103に、ベルト支持部34は補助フレーム104に、ピン付きベルト35は図5のピン付きベルト105に、つがい部36A,36Bは図5のつがい部106A,106Bに、コイルバネ37は図5のコイルバネ107に、軸固定レバー38は図5のロック部材108に、駆動軸受孔43は図5の駆動軸受孔104Aに、調整軸受孔44は図5の調整軸受孔104Bに相当する。
【0021】
また、用紙押え部33において、把持部41は図5の把持部111、用紙押え面42A,42Bは図5の用紙押え面112A,112Bに相当する。一方、ベルト支持部34は、図5の補助フレーム104とはその形状を異ならせ、箱状として対向する搬送トラクタ側を開放としたものである。この場合、側板34A及びその上下一部分が後述のトラクタ補助部13Aの規制部(55)と係合する役割をなす。すなわち、ベース板32とベルト支持部34との間でピン付きベルト35を位置させ、閉状態の用紙押え部33の用紙押え面42A,42Bと共にベルト支持部34の上面で用紙21を挾持状態とするものである。
【0022】
上記トラクタ補助部13A(13B)は、図1(C)に示すように、底板51の両側に「コ」の字状に対向側板52A,52Bが一体的に立設状態で形成され、底板51より距離をもって上記幅調整軸を通す軸受孔が形成されて調整軸受部53A,53Bが設けられる。この対向側板52A,52B間に搬送トラクタ12Aが位置される。対向側板52Aには延出部であるストッパレバー54が一体的にに立設状態で形成され、当該ストッパレバー54の一部を適宜傾斜させた形状としている。また、対向側板52Bの一端から対向側板52A側に向かって係合部である規制部55が一体的に形成されたものである。
【0023】
ここで、図2に、図1の搬送トラクタ及びトラクタ補助部の組立状態の説明図を示す。まず、図2(A)において、トラクタ補助部13Aの対向側板52A,52B間に搬送トラクタ12Aを位置させる。そして、図2(B)に示すように、規制部55をベルト支持部34の内部側面34Aに沿って入り込ませることで組み合わせている。この場合、ベース板32の図示しない調整軸受孔、ベルト支持部34の調整軸受孔44と、トラクタ補助部13Aに形成されている調整軸受部53A,53Bとが同位置となる。これによって、搬送トラクタ12Aのベルト支持部34とトラクタ補助部13Aとが係合規制状態となる。
【0024】
なお、トラクタ補助部13Aの底板51と搬送トラクタ12Aの底面とは、少なくともピン付きベルト35のピンが当たらないように距離を設けている。この意味では規制部55がトラクタ補助部13Aの搬送トラクタ12Aへの組み合わせ時の位置合わせの役割をも果たしている。
【0025】
そこで、図3に、図1の搬送トラクタ及びトラクタ補助部の軸移動及び用紙押え部の開状態の説明図を示す。上記搬送トラクタ12Aとトラクタ補助部13Aとが組み合わされた図2(B)の状態で、図3(A)に示すように、ベース板32の図示しない調整軸受孔、ベルト支持部34の調整軸受孔44及びトラクタ補助部13Aの調整軸受部53A,53Bに幅調整軸14が貫通される。また、ベース板32の図示しない駆動軸受孔及びベルト支持部34の駆動軸受孔43にトラクタ駆動軸15が貫通される。このとき、軸固定レバー38は回転によって当然に固定開放状態とされている。
【0026】
ここで、作業者がストッパレバー54を持ち、トラクタ補助部13Aと共に搬送トラクタ12Aを幅調整軸14上を摺動させる(トラクタ駆動軸15上でも摺動される)。このとき、トラクタ補助部13Aの規制部55とベルト支持部34とが係合規制状態であることから、当該搬送トラクタ12Aの調整軸14との遊び間隙よる破線矢印で示すようなガタツキ(回転ガタツキ)を防止して円滑な移動を行わせることができるものである。そこで、用紙21の幅に応じた位置まで移動させたときに軸固定レバー38を回転させて軸固定させるものである。
【0027】
そして、作業者が把持部41を持って用紙押え部33を開放状態とさせるべく回動させると、当該用紙押え部33はストッパレバー54を越えては回動せずに開放位置に停止されるものである。この状態で前述の図5(A)に示すように、用紙21のマージナル孔23をピン付きベルト35のピンに嵌合させ、用紙押え部33を回動させて閉状態とさせることで用紙搬送ができる状態となり、トラクタ駆動軸15を回転駆動させることでピン付きベルト35の回転により用紙搬送が行われるものである。なお、搬送トラクタ12Aの幅調整軸14上での位置調整のための摺動を、図3(B)に示す用紙押え部33を開放状態とさせた状態で行ってもよい。
【0028】
このように、用紙押え部33の開放時の力の入れ過ぎや繰り返し開閉による摩耗によってもトラクタ補助部13A(13B)の延出部54で常に用紙押えの開放位置で回動止めさせることから、作業者に衝撃を与えず、作業性の悪化を防止することができるものである。
【0029】
次に、図4に、本発明に係る用紙搬送装置におけるトラクタ補助部の他の形状の説明図を示す。図4(A)において、トラクタ補助部13Aは、図1に示す規制部55に代えて、底板51に段差を設けて2段とした形状としたものである。すなわち、図1に示す底板51と同等位置の本体底板51Aより1段上げた段差載置部である規制底板51Bを形成させた形状として対向側板52Bを縦寸法で短くしたものである。この場合、本体底板51Aがピン付きベルト35のを回避させる位置となる。
【0030】
そして、搬送トラクタ12Aを対向側板52A,52B間に挿入し、図4(B)に示すように、ベルト支持部34の底部の一部を規制底板51B上に載置させ、ベース板32の図示しない調整軸受孔、ベルト支持部34の調整軸受孔44と、トラクタ補助部13Aに形成されている調整軸受部53A,53Bとを同位置とさせるものである。
【0031】
トラクタ補助部13A(13B)を上記形状とすることによっても、トラクタ補助部13Aで搬送トラクタ12Aを幅調整軸14上を摺動させる際、トラクタ補助部13Aの規制底板51Bと載置されたベルト支持部34の底部との接触で搬送トラクタ12Aの調整軸14との遊び間隙よるガタツキ(回転ガタツキ)を防止して円滑な移動を行わせることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の用紙搬送装置は、搬送用のマージナル孔が形成された用紙を搬送させる搬送トラクタ及びこれを用いた装置の製造産業及びこれを使用する印刷産業等に利用可能である。
【符号の説明】
【0033】
11 用紙搬送装置
12 搬送トラクタ
13 トラクタ補助部
14 幅調整軸
15 トラクタ駆動軸
21 連続用紙
22 マージナル部
23 マージナル孔
32 ベース板
33 用紙押え部
34 ベルト支持部
35 ピン付きベルト
36 つがい部
37 コイルバネ
38 軸固定レバー
41 把持部
42 用紙押え面
43 駆動軸受孔
44 調整軸受孔
51 底板
51A 本体底板
51B 規制底板
52 対向側板
53 調整軸受部
54 ストッパレバー
55 規制部
図1
図2
図3
図4
図5