特許第5992314号(P5992314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992314
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】モジュラー測定プローブ
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/012 20060101AFI20160901BHJP
【FI】
   G01B5/012
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-275034(P2012-275034)
(22)【出願日】2012年12月17日
(62)【分割の表示】特願2008-193408(P2008-193408)の分割
【原出願日】2008年7月28日
(65)【公開番号】特開2013-76708(P2013-76708A)
(43)【公開日】2013年4月25日
【審査請求日】2012年12月17日
【審判番号】不服2014-15805(P2014-15805/J1)
【審判請求日】2014年8月8日
(31)【優先権主張番号】07252959.7
(32)【優先日】2007年7月26日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】07253647.7
(32)【優先日】2007年9月13日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391002306
【氏名又は名称】レニショウ パブリック リミテッド カンパニー
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(74)【復代理人】
【識別番号】100124604
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 勝久
(72)【発明者】
【氏名】ティム プレスティッジ
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン ポール フーガ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン エドワード ラマーズ
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート ケルステン キャンベル
【合議体】
【審判長】 中塚 直樹
【審判官】 樋口 信宏
【審判官】 酒井 伸芳
(56)【参考文献】
【文献】 特開平5−26601(JP,A)
【文献】 特表2006−514275(JP,A)
【文献】 特表平9−507918(JP,A)
【文献】 特表2002−541444(JP,A)
【文献】 特表平3−502603(JP,A)
【文献】 実開昭63−139515(JP,U)
【文献】 実開昭64−8605(JP,U)
【文献】 実開昭63−200707(JP,U)
【文献】 実開平6−51910(JP,U)
【文献】 特開平6−76140(JP,A)
【文献】 特開2009−47689(JP,A)
【文献】 特表2006−511860(JP,A)
【文献】 特表2000−506027(JP,A)
【文献】 特開平6−230885(JP,A)
【文献】 特開平8−233619(JP,A)
【文献】 特開2004−236984(JP,A)
【文献】 特開2009−53187(JP,A)
【文献】 特開2009−80102(JP,A)
【文献】 特表2004−522961(JP,A)
【文献】 特表2009−507240(JP,A)
【文献】 特表2005−502035(JP,A)
【文献】 特表2006−522931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/012
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースモジュールに取り外し可能に取り付けることのできるスタイラスモジュールを備えた測定プローブであって、
前記スタイラスモジュールは、筺体と、前記筺体に移動可能に取り付けられたスタイラスホルダとを備え、
前記ベースモジュールは、座標位置決め装置に装着可能であり、前記筺体に対する前記スタイラスホルダの移動を示す測定データを生成するための測定部を備え、
前記スタイラスモジュールは、前記スタイラスモジュールを所定量使用した後に、機能しなくなる故障部を内蔵し、それによって、前記ベースモジュールの稼動寿命より短く、かつ前記スタイラスモジュールの測定精度が低下するほど当該スタイラスモジュール内部の移動部品が磨耗する前に、所定の稼働寿命が設定されることを特徴とする測定プローブ。
【請求項2】
前記スタイラスモジュールは、前記故障部として、少なくとも1つのバッテリを備えることを特徴とする請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項3】
前記少なくとも1つのバッテリは、前記スタイラスモジュール内に永久的に一体化されることを特徴とする請求項2に記載の測定プローブ。
【請求項4】
前記所定の稼働寿命は、前記少なくとも1つのバッテリのバッテリ容量によって決定されることを特徴とする請求項2または3のいずれかに記載の測定プローブ。
【請求項5】
前記スタイラスモジュールは、前記スタイラスホルダと永久的に一体化されるスタイラスを備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の測定プローブ。
【請求項6】
前記スタイラスモジュールは、前記スタイラスホルダと前記筺体の間の相対移動を示す1つまたは複数のたわみ信号を提供する1つまたは複数のセンサを備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の測定プローブ。
【請求項7】
使用に際して、前記1つまたは複数のたわみ信号は、前記ベースモジュールの前記測定部に送られ、前記測定部は、前記1つまたは複数のたわみ信号から前記測定データを生成するように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の測定プローブ。
【請求項8】
前記故障部は、前記スタイラスモジュールの少なくとも1つの構成要素が、特定の量の使用後に、機械的に機能しなくなるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の測定プローブ。
【請求項9】
前記スタイラスモジュールは、前記故障部として、前記スタイラスホルダを前記筺体に装着するたわみ機構を備えたことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の測定プローブ。
【請求項10】
前記たわみ機構は、前記筺体上に設けられる第1の位置決め要素と、前記スタイラスホルダ上に設けられる第2の位置決め要素とを備え、前記第1および第2の位置決め要素は協働して、前記スタイラスホルダを前記筺体に対する繰り返し可能な位置に配置し、前記たわみ機構はまた、前記第1および第2の位置決め要素を接触させるようにするための付勢部材を備えたことを特徴とする請求項9に記載の測定プローブ。
【請求項11】
前記第1および第2の位置決め要素はまた、導電経路の一部を形成し、それにより、ある第1の位置決め要素が、ある第2の位置決め要素から離れたとき、前記導電経路は切断されるようになり、前記ベースモジュールの前記測定部は、前記導電経路を監視するように、および前記導電経路が切断した場合、トリガ信号の形態で測定データを生成するように構成されていることを特徴とする請求項10に記載の測定プローブ。
【請求項12】
前記たわみ機構が、特定の量の使用後に、突発的に機能しなくなるように構成されていることを特徴とする請求項9ないし11のいずれかに記載の測定プローブ。
【請求項13】
前記ベースモジュールは、測定データが無線リンク上のリモートプローブのインターフェースに送られることを可能にする無線通信部を備えたことを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の測定プローブ。
【請求項14】
前記スタイラスモジュールは、第1の運動学的装着部を備え、前記ベースモジュールは、第2の運動学的装着部を備え、前記第1および第2の運動学的装着部は協働して、前記スタイラスモジュールを前記ベースモジュールに対する繰り返し可能な位置に配置することを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の測定プローブ。
【請求項15】
測定プローブのためのスタイラスモジュールであって、
前記スタイラスモジュールは、筺体と、前記筺体に移動可能なように取り付けられているスタイラスホルダとを備え、
前記スタイラスモジュールは、前記筺体に対する前記スタイラスホルダの移動を示す測定データを生成するための測定部を備える、関連するベースモジュールに取り付けることができ、
前記スタイラスモジュールは、前記スタイラスモジュールを所定量使用した後に、機能しなくなる故障部を内蔵し、それによって、前記ベースモジュールの稼動寿命より短く、かつ前記スタイラスモジュールの測定精度が低下するほど当該スタイラスモジュール内部の移動部品が磨耗する前に、所定の稼働寿命が設定されることを特徴とするスタイラスモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械などで使用するための測定プローブに関し、より詳細には、モジュラー測定プローブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な測定プローブが知られている。例えば、スタイラスが物体に接触すると、スタイラスホルダが、プローブ本体内の関連するシートから外れる運動学的機構を備えるタッチトリガプローブが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、この運動学的機構の外れは、「接触」ないしトリガの信号が生成されることを可能にする電気回路を遮断する。このようなタッチトリガプローブの代替としては、ひずみゲージなどを使用してスタイラスのたわみを測定し、特定の量のスタイラスのたわみが生じたとき、スタイラスのたわみの測定を行い、またはトリガ信号を出すこともまた知られている。
【0003】
工作機械の場合、一般に、測定プローブは、電気回路およびたわみ可能なスタイラス機構が内蔵されている単一の、機械的に堅牢な、プローブ本体の形態で設けられる。スタイラスは、通常、例えば、ネジ山によってプローブ本体のスタイラスホルダ機構に取り外し可能に取り付けることができ、それにより、種々のスタイラスを種々の測定タスクに使用することが可能になり、また、摩耗または破損したスタイラスを交換することが可能になる。工作機械環境では、無線リンク上の関連するプローブのインターフェースと通信するバッテリ駆動の測定プローブを設けることは一般的である。そのような無線(RF)測定プローブの一例は、RMP60という製品名で、レニショウ(Renishaw plc)から入手することができる。また、様々なアダプタや延長棒によって、スタイラスを取り付け可能なプローブモジュールを、無線(RF)通信部およびデータ処理の電子部を内蔵するプローブ本体から延長した距離に配置することが可能なRMP60測定プローブのモジュラーバージョンも知られている。このようなモジュラーシステムは、アクセスし難い部品を測定する能力を向上させるように設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4153998号明細書
【特許文献2】国際公開第03/021182号パンフレット
【特許文献3】欧州特許出願第07252959.7号明細書
【特許文献4】国際公開第2004/057552号パンフレット
【特許文献5】欧州特許第293036号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、ベースモジュールに取り外し可能に取り付けできるスタイラスモジュールを備えた測定プローブが提供され、スタイラスモジュールは、筺体と、筺体に移動可能に取り付けられたスタイラスホルダとを備え、ベースモジュールは、座標位置決め装置に装着可能であり、筺体に対するスタイラスホルダの移動を示す測定データを生成するための測定部を備え、スタイラスモジュールは、内蔵故障モードを有し、それによって、実質的な所定の稼働寿命を有することを特徴とする。
【0006】
このように、本発明は、数値制御工作機械などの座標位置決め装置で使用するためのモジュールすなわち複数部品の測定プローブを提供するものである。測定プローブのベースモジュールは、座標位置決め装置に装着できるものであり、例えば、工作機械のスピンドル内に、および/または工作機械のベッドもしくはテーブルに装着することができる。また、ベースモジュールは、トリガ信号あるいはスタイラスのたわみ情報などの測定データを生成するための測定部を含んでいる。好ましくはベースモジュールに直接また繰り返し取り付けることができるスタイラスモジュールは、筺体に移動可能に取り付けられたスタイラスホルダを含み、それにより、スタイラスホルダに装着されているスタイラスがたわむことによって、スタイラスホルダが筺体に対して相対的に移動することができる。また、本発明の測定プローブのスタイラスモジュールは、内蔵故障モードを有し、それによって、実質的な所定の稼働寿命を有する。つまり、スタイラスモジュールは、所定の量の時間または使用後に、機能しなくなるように、または動作不能になるように構成されている少なくとも1つの構成要素を含んでいる。
【0007】
本発明によるモジュラー構成を提供することには、構成要素の大部分がユニタリプローブ筺体内に含まれている前述したタイプの従来技術の測定プローブと比較していくつかの利点がある。具体的には、本発明のモジュラー測定プローブにより、測定プローブのほとんどの、または好ましくはすべての移動部品が、スタイラスモジュール内に組み込まれることが可能になる。このように、測定プローブの動作中、機械的摩耗や裂傷を受けるのは、スタイラスモジュールの構成要素である。これに対し、ベースモジュールは、いかなる甚大な機械的摩耗も受けない測定プローブの部品を含むように構成され、したがって、はるかに長い稼働寿命を有する。例えば、ベースモジュールは、必要な測定データを生成するために、スタイラスたわみの未処理の信号を分析する測定部の処理電子部に加えて、周波数ホッピング方式RF通信ユニットなど、比較的複雑な通信部を含むことができる。スタイラスモジュールは、いくつかの電子部を含むことが可能であるが、好ましくは測定プローブを実装するのに必要な比較的高価な電子部をまったく含まないものである。このようにして、スタイラスモジュールは、比較的低価格の(例えば、使い捨て可能または消耗可能な)モジュールとして提供することができる。
【0008】
以上概要を述べたように、本発明の測定プローブのスタイラスモジュールは内蔵故障モードを有し、それにより、実質的な所定の稼働寿命を有するようになる。より詳細に後述するように、スタイラスモジュールは、ある量を使用した後使い尽くされる、測定プローブに電力を供給するための1つまたは複数のバッテリを含むことができる。このような実施形態では、内蔵故障モードはバッテリの消耗に起因し、稼働寿命はバッテリ容量によって決定される。あるいは、同じく詳細が後述されるように、スタイラスモジュールの部品は、ある量を使用した後に、機械的に機能しなくなるように構成することもできる。
【0009】
このような故障モードを設けることにより、製造業者は、スタイラスモジュールの予測寿命をあらかじめ設定し、または制御することが可能になる。スタイラスモジュールの故障後には、測定プローブは、新規のスタイラスモジュールとベースモジュールを組み合わせることによって、復活させることができる。このように、本発明は、その測定精度が低下するほど内部の移動部品が摩耗する前に、故障するように構成されたスタイラスモジュールを提供することが可能である。これによって、確実に測定精度が維持される。さらには、本発明によりまた、製造業者は、単体の測定プローブと比べてかなり割引価格で、モジュラー測定プローブを初期に販売すること、およびスタイラスモジュールを継続して販売することにより、このような初期の割引を行う費用を取り戻すことが可能になる。また、これは、安価な前払い費用でユーザがプローブ技術を採用することを可能とし、それによって、それらの製造工程におけるプローブ技術の利点に確信を持つことができないユーザに利点をもたらすものである。
【0010】
測定プローブは、好ましくはバッテリで動作するものである。スタイラスモジュールは、少なくとも1つのバッテリを備えると有利である。ベースモジュールがスタイラスモジュールに取り付けられている場合、スタイラスモジュールの少なくとも1つのバッテリは、電力をベースモジュールに供給するので好適である。つまり、スタイラスモジュールは、使用中に、ベースモジュールの測定部と、いずれかの無線通信部とに電力を供給する電力源を備えることができる。これによって、ベースモジュールは、バッテリにアクセスするために周期的に開放される必要のあるいかなる種類のバッテリ室をも必要としない永久的に密閉されたユニットとして形成されることが可能になる。いかなる種類のバッテリ室開口部もないことは、バッテリ交換中にデバイスに入る冷却剤、切りくず、あるいは他の汚染物質に起因する損傷から、ベースモジュールの構成要素を保護することに役立つ。なお、スタイラスモジュールがすべての必要な電力をベースモジュールに供給することは好ましいが、ベースモジュールが、必要に応じて、1つまたは複数のバッテリを含むこともできる。例えば、ベースモジュールは、特定の電気的構成要素(例えば、メモリチップなど)に継続的に電力を供給するために、1つまたは複数の長寿命バッテリを含むことができる。好都合には、小電流だけがベースモジュール内に備えられる任意のバッテリから常に取り出され、それによって、確実に、ベースモジュールの稼働寿命がこのようなバッテリによってそれほど制限されなくなる。いずれのベースモジュールバッテリも、例えば、スタイラスモジュールによって供給される電力を使用して、再充電可能とすることもできる。
【0011】
好ましくは、スタイラスモジュールの少なくとも1つのバッテリは、スタイラスモジュール内に永久的に一体化される。つまり、スタイラスモジュールの1つまたは複数のバッテリは、スタイラスモジュールと一体化して提供または形成可能であり、好ましくはスタイラスモジュールから取り外しできないものである。少なくとも1つのバッテリは、スタイラスモジュールの少なくとも一部分を不可逆的損傷なしに、スタイラスモジュールの筺体から取り外すことができないことは好都合である。例えば、スタイラスモジュールは、バッテリが内部に含まれている成型プラスチック筺体を含むことができる。このような例では、バッテリの取り外しは、プラスチック筺体を物理的に破壊または切開することによってのみ可能とすることができ、そのような破壊などによって、スタイラスモジュールの強度が低下し、切りくず、冷却剤、および他の汚染物質がそれを通じて入る可能性のある開口部が形成される。このように、測定プローブは、特定のスタイラスモジュールで、そのモジュールのバッテリが消耗するまでのみ、動作することができる。その時点で、スタイラスモジュールは廃棄され、交換用スタイラスモジュールがベースモジュールと組み合わせられて、動作可能な測定プローブを提供する。また、このような専用バッテリを設けることによって、スタイラスモジュールのサイズを、標準サイズのバッテリを維持するためのバッテリ室を有するスタイラスモジュールと比べて抑えることが可能になる。逆に、特定のサイズのスタイラスモジュール内に貯蔵可能な電力の量を最大にすることを可能にする特注バッテリを提供してよい。
【0012】
好都合には、測定プローブは、スタイラスモジュールの1つまたは複数のバッテリが残り少なくなると、合図するためのインジケータを含むものである。インジケータは、可視式および/または可聴式とすることができる。例えば、測定プローブは、低バッテリ警告を与える1つまたは複数のLED、および/または「ビー」という警告音を出すラウドスピーカを含むことができる。好ましくは、バッテリ監視回路および/または低バッテリインジケータが、取り付けられているスタイラスモジュールが近いうちに交換が必要になるという警告を発するために、ベースモジュールの一部として設けられる。
【0013】
使用に際しては、スタイラスモジュールは好ましくはスタイラスを含む。スタイラスの遠位端部すなわち物体に接触する端部は、ルビーボールもしくは機械の設定キューブを担持することができる。スタイラスは、スタイラスホルダに取り外し可能うに取り付けることができ、例えば、スタイラスの近位端部は、スタイラスホルダに形成される相補的ネジ凹部との係合部内にねじ込み可能であるネジ山を含むことができる。このように、スタイラスモジュールに取り付けられているスタイラスは、必要に応じて、変更することができる。
【0014】
好都合には、スタイラスモジュールは、スタイラスホルダと一体化されたスタイラスを含む。つまり、スタイラスは、通常の使用では、スタイラスホルダから取り外しできないスタイラスモジュールの一部として設けられる。このように、スタイラスに対する損傷がどのようなものであっても、それによって、スタイラスだけを交換するのではなく、スタイラスモジュール全体を交換することが必要となる。
【0015】
スタイラスモジュールに一体化されたスタイラスを設けることにより、スタイラスモジュールを、ベースモジュールへ取り付ける前に、適切に較正することが可能となる。つまり、新規スタイラスが測定プローブに初めて取り付けられるとき通常必要となる現場測定プローブ較正工程は、スタイラスがすでに取り付けられているスタイラスモジュールを設けることによって回避することができる。例えば、筺体に対するスタイラスの中立位置は、スタイラスモジュールの製造中、適切に中心に合せること、すなわち「治具で処理する」ことができる。また、スタイラスモジュールが機械的シーティング構成を含む場合、スタイラスを中立位置に戻すために加えられるバネ力は、スタイラスモジュールの製造中に、必要に応じて設定することができる。このように、損傷したスタイラスは、新規スタイラスモジュールをベースモジュールに取り付けることによって交換される。
【0016】
測定プローブは、スタイラスホルダと筺体の間の相対移動を示す1つまたは複数のたわみ信号を提供する1つまたは複数のセンサを含むことは有利な点である。例えば、1つまたは複数のセンサは、ひずみゲージ、静電容量センサ、光センサなどを含むことができる。好ましくは、1つまたは複数のセンサはスタイラスモジュールの一部として組み込まれたものである。あるいは、1つまたは複数のセンサは、ベース部内に配置でき、取り付けられているスタイラスモジュールの筺体に対するスタイラスホルダのあらゆる移動を検知するように構成することができる。例えば、ベースモジュール内に設けられる光センサは、スタイラスホルダに取り付けられている反射素子の移動を検知するように構成することができる。
【0017】
使用に際して、1つまたは複数のセンサによって生成される1つまたは複数のたわみ信号は、ベースモジュールの測定部に伝えられると好都合である。測定部は、1つまたは複数のたわみ信号から必要な測定データを生成するように構成されることは有利な点である。例えば、測定部は、たわみ信号をひずみセンサまたは静電容量センサなどの複数のセンサから、測定プローブのデカルト座標(a、b、c)で示されるスタイラス先端のたわみ値に変換するプロセッサを含むことができる。あるいは、測定部は、スタイラスが特定の量以上たわんでいることが測定されたときに出されるトリガ信号の形態で、測定データを生成することができる。
【0018】
スタイラスモジュールは、スタイラスホルダを筺体に装着するたわみ機構を備えることは有利な点である。好適には、外部から加えられる力がないとき、たわみ機構によって、スタイラスホルダは、反復可能な中立またはゼロ位置内に付勢される。バッテリがスタイラスモジュールの一体型部品として設けられる場合、スタイラスモジュールの筺体は、筺体にアクセスしようとするあらゆる試みが、たわみ機構に不可逆的損傷を与えるように構成することができる。例えば、バッテリのケーシングは、バッテリを取り外そうとする試みが、たわみ機構を妨害するようにたわみ機構を提供する構造の一部を形成することが可能である。このように、バッテリが消耗した後にスタイラスモジュールを使用することを回避することが可能となる。
【0019】
好ましくは、たわみ機構は、公知の運動学的シート構成の形態をとるものである。したがって、たわみ機構は、筺体上に設けられる第1の位置決め要素と、スタイラスホルダ上に設けられる第2の位置決め要素とを備え、第1および第2の位置決め要素は協働して、スタイラスホルダを筺体に対する繰り返し可能な位置に配置するものである。たわみ機構はまた、スプリング機構など、第1および第2の位置決め要素を接触させるように付勢するための付勢装置を備えることは好都合である。好ましい実施形態では、第1の位置決め要素は、それぞれがv字形シートを提供する3対のボールを含むことができ、第2の位置決め要素は、ボールに係合し、それによって、スタイラスホルダを、シート上で支持する3つのローラを含むことができる。
【0020】
測定プローブは、スタイラスホルダのある第1の位置決め要素が、関連する筺体の第2の位置決め要素から外れるようになったときに、トリガ信号が出される、いわゆる抵抗タッチトリガプローブを含むことができる。第1および第2の位置決め要素は導電経路の一部を形成し、それにより、ある第1の位置決め要素が、ある第2の位置決め要素と離れたときに、導電経路が故障するようすることは有利な点である。このような構成では、ベースモジュールの測定部は、導電経路の抵抗を監視するように、および導電経路が故障した場合、トリガ信号の形態で測定データを生成するように構成されていると好都合である。測定部は、誤トリガなどの可能性を低下させるために、例えば、特許文献2に記載される公知のデータ処理電子部を含むことができる。
【0021】
先に概要を述べたように、本発明のスタイラスモジュールの稼働寿命は、機械的故障モードをそのモジュール内に組み込むことによってあらかじめ設定される。スタイラスモジュールの少なくとも1つの構成要素は、ある量使用した後に、機械的に機能しなくなるように構成されていると有利である。このような故障モードを実行するために、たわみ機構は、ある量の使用後に、突発的に機能しなくなるように構成できることは好都合である。突発的に機能しなくなるというのは、たわみ機構がある量の使用では正常に動作し、次いで、完全に機能しなくなることを意味する。このように、突発的な故障は、スタイラスモジュールの測定性能が、完全に機能しなくなるまで時間と共に次第に低下する進行性の故障と対比されるべきものである。突発的な故障モードを実装するため、スタイラスモジュールは、切れたりせん断されるまでに特定の回数、屈曲または動作可能なスプリングの弱い区分など、折れやすく、脆弱な、またはせん断可能な部品を含むことができる。
【0022】
上述した機械的故障モードを設ける代わりに、またはそれに加えて、あらかじめプログラムされたまたは電子的な故障モードが、スタイラスモジュール内に組み込まれてもよい。例えば、スタイラスモジュールは、特定の量および/または時間のスタイラスモジュールの使用後に、スタイラスモジュールの正常動作を抑制する非活動化部(それによって、スタイラスモジュールを動作不能にする)を含む電子回路を備えることができる。装置使用モジュールが、非活動化部によって読まれることが可能な、適切な測定プローブ使用情報(例えば、トリガ計数値)を保存するスタイラスモジュールの一部として設けることもできる。このような非活動化構成に関するさらなる詳細は、特許文献3に基づいて優先権を主張する出願人の同時係属中の出願において見出すことができる。
【0023】
スタイラスモジュールは、複数の内蔵の故障モードを備えることができる。前述したバッテリおよび/または電子的故障モードは、機械的故障モードとの組合せで使用できると有利である。例えば、機械的故障モードは、特定の量の使用後(例えば、約10,000トリガを超えた後)に、機械的に機能しなくなる(例えば、スタイラスのたわみ機構の一部としての)構成要素を含むことによって実施することができる。その場合、電子的故障モードは、このような機械的故障が起きる前(例えば、8,000トリガの後)に、スタイラスモジュールの動作を止めるように構成することができる。このように、必要に応じて、間近に迫ったスタイラスモジュール故障の適切な警告がユーザに与えることができる。このような構成では、機械的故障モードが進行中の動作を止める前に、ユーザが電子部に独断で何らかの干渉をし、またユーザが電子部をリセットすることによって、短期の、予測不可能な量のスタイラスモジュールの追加の使用が可能になる。また、進行中の機械的故障モードが、このような構成で使用することができる。
【0024】
測定プローブは、無線デバイスであってよい。その場合、ベースモジュールの測定部によって生成されるすべての、またはいくつかの測定データは、無線(例えば、RFまたは光)リンクを介して、関連するインターフェースまたはコントローラに送ることができる。ベースモジュールは、このような測定データが無線リンク上のリモートプローブのインターフェースに送られることを可能にする無線通信部を備えることは好都合である。無線通信部は、また、関連するプローブのインターフェースから情報を受け取るように構成可能であり、例えば、測定プローブの動作指令を、プローブのインターフェースを介して、測定プローブに送ることができる。無線リンクは、例えば特許文献4に記載の周波数ホッピング方式のスペクトラム拡散リンクとすることができる。
【0025】
スタイラスモジュールは、ベースモジュールに直接また繰り返し取り付けることができる。あるいは、中間延長結合部を、ベースモジュールとスタイラスモジュールの間に配置することができる。スタイラスモジュールは、第1の運動学的装着部を備え、ベースモジュールは、第2の運動学的装着部を備え、第1および第2の運動学的装着部が協働して、ベースモジュールに対してスタイラスモジュールを繰り返し可能な位置に配置すると好都合である。スタイラスモジュールとベースモジュールはそれぞれ、ベースモジュールがスタイラスモジュールに取り付けられているとき、スタイラスモジュールとベースモジュールの間の複数の電気接続を可能にする複数の相補的電気接点を含むと好都合である。電力および/または電気信号は、このような電気接点を介して、ベースモジュールとスタイラスモジュールの間で授受することができる。
【0026】
測定プローブは、スピンドルに装着されたプローブとして、および/またはテーブルトップに装着されたプローブとして使用するよう構成することができる。例えば、ベースモジュールは、工作機械のスピンドル内に保持可能な軸部を備えること、またはその軸部に取り付けることができる。スピンドルに装着可能な測定プローブは、その遠位端部に取り付けられたボールを有するスタイラスを備えたスタイラスモジュールとの組合せで使用されると好都合である。あるいは、ベースモジュールは、工作機械のベッドへの取り付けを可能にする取り付け機構(例えば、運動学的または磁気装着)を含むことができる。機械設定チップ(例えば、キューブ)を備えるスタイラスモジュールは、このようなテーブルトップに装着されたベースモジュールと共に使用することができる。測定プローブを工作機械で使用することを本明細書では詳細に説明しているが、本発明の測定プローブは、任意の位置測定装置で使用することができる。例えば、本発明の測定プローブは、専用の座標測定機(CMM)などで使用することができる。
【0027】
本発明の第2の態様によれば、測定プローブのためのスタイラスモジュールが提供され、スタイラスモジュールは、筺体と、筺体に移動可能に取り付けられたスタイラスホルダとを備える。スタイラスモジュールは、筺体に対するスタイラスホルダの移動を示す測定データを生成するための測定部を備えた、関連するベースモジュールに取り付けることができる。スタイラスモジュールは、内蔵故障モードを有し、それによって、実質的な所定の稼働寿命を有することを特徴とする。
【0028】
本発明の別の態様によれば、ベースモジュールとスタイラスモジュールを備えた、バッテリで動作する測定プローブが提供され、ベースモジュールは測定回路を備え、スタイラスモジュールは、ワークピースに接触するスタイラスが取り付け可能であるたわみ可能なスタイラスホルダを備え、スタイラスモジュールは、ベースモジュールがスタイラスモジュールに取り付けられているとき、ベースモジュールの測定回路に電力を供給する少なくとも1つのバッテリを組み込んでいることを特徴とする。
【0029】
本発明の別の態様によれば、スタイラスを備えるスタイラスモジュールが提供され、スタイラスモジュールは、少なくとも1つのバッテリを備えることを特徴とする。
【0030】
本発明の別の態様によれば、筺体に取り付けられているスタイラスホルダを備えるスタイラスモジュールが提供され、スタイラスモジュールは、内蔵故障モードを有し、それによって、実質的な所定の稼働寿命を有する。スタイラスホルダは、たわみ機構によって筺体に取り付けられ、たわみ機構は、実質的な所定量の使用後に、突発的に機能しなくなるように構成されていると好都合である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】従来技術の測定プローブを示す図である。
図2】一体型バッテリを含むスタイラスモジュールを有する本発明のモジュラー測定プローブを示す図である。
図3】機械的故障モードを有する本発明の別のモジュラー測定プローブを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、単なる一例として、添付の図面を参照して、本発明を説明する。
【0033】
図1を参照すると、工作機械のための従来技術の無線測定プローブが示される。図示の測定プローブは、RMP60という製品名で、本件特許出願人、Wotton−under−edge、Gloucestershire、UKから市販されている。
【0034】
測定プローブは、工作機械のスピンドル内に受け入れられることが可能な軸部4に取り付けられているプローブ本体2を備える。スタイラス6の近位端部は、ネジ山接続部10によってプローブ本体2のスタイラスホルダに取り外し可能に取り付けられている。スタイラス6の遠位端部すなわちチップは、ワークピースに接触するルビーボール12を備える。
【0035】
測定プローブは、もともと特許文献1に記載されているタイプのバネ荷重の運動学的構成によって、スタイラスホルダがプローブ本体に取り付けられているタッチトリガプローブである。バネ荷重の運動学的構成により、スタイラスホルダとプローブ本体のシートとの間に6つの点の接点が設けられ、それにより、スタイラスホルダは、繰り返し可能な「中立」またはホーム位置に保持される。バネ荷重の運動学的構成により、スタイラスは、ワークピースの表面に接触したとき、プローブ本体に対してたわむことが可能になる一方、スプリングによって、スタイラスが自由空間内にあるときはいつでも、機構が再び着座することを確実にする。導電経路が接点全体に延び、この回路全体の抵抗がプローブの電子部によって測定される。したがって、1つのまたは複数の運動学的点の接点が外れることにより、回路抵抗の測定可能な変動が生じる。回路の抵抗を分析し、物体との接触によってスタイラスがたわむときはいつでもトリガ信号を生成するため、プロセッサが測定プローブの一部として設けられ、これはより詳細に特許文献2に記載されている。
【0036】
測定プローブの電子部はバッテリ駆動であり、密閉されたバッテリ室14がプローブ本体2の一部として設けられる。また、周波数ホッピング方式無線周波数通信ユニットが、トリガ信号データを、関連するリモートプローブのインターフェース(図示せず)に無線で伝送するために、プローブ本体2の中に設けられる。インターフェースと通信するために使用される周波数ホッピング方式プロトコルは、より詳細には特許文献4に記載されている。
【0037】
一般には、工作機械の従来技術の測定プローブは、図1に示すタイプの単一の、ユニタリのプローブ本体として提供される。しかし、2つの部分、モジュールの測定プローブシステムを提供することも知られている。このようなシステムは、現在、RMP60Mという製品名で、本件特許出願人から入手可能である。このようなモジュラーシステムでは、測定プローブは、互いに繰り返し可能に取り付けることができる2つの別個のモジュールに分割される。これは、図1に示したプローブ本体2を2つの部分、例えば、第1の区分2aおよび第2の区分2bに分割することと考えてよい。第1の区分2aは、バネ荷重の運動学的構成を含むプローブモジュールであり、第2の区分2bは、バッテリ室ならびに関連する測定および通信の電子部を含むプローブベースである。さらにまた、異なる長さの延長棒を、プローブベースとプローブモジュールの間にはめ込み、スタイラスの長さを増すことなしに、プローブの有効長を増やすことができる。このタイプのモジュラー構成により、過度に長いスタイラスの使用を必要とせずに、非モジュールの、より短い測定プローブではアクセスできない部品機能を検査することが可能になる。
【0038】
図2を参照すると、本発明のモジュラー測定プローブを示している。測定プローブは、ベースモジュール20と、スタイラスモジュール22とを備える。
【0039】
スタイラスモジュール22は、スタイラスホルダ24がスプリング28によってスタイラスモジュール筺体のシート26と接触するようにされた、公知のタイプのバネ荷重の運動学的構成を備える。スタイラスホルダは、また、一体型の、取り外しできない、ワークピースに接触するスタイラス30と、バッテリ34とを備える。スタイラスは、スタイラスホルダに永久的に接着(例えば、糊づけまたは溶接)でき、またはスタイラスとスタイラスホルダは、単一の構成要素として、共に形成することができる。スタイラスの中立位置と、スプリング28によって作用する再着座力は、製造中に設定される。製造中の中立位置と再着座力の設定は、タッチトリガプローブには好ましいが、スタイラスモジュールがアナログプローブを含む場合には、代わりに、スタイラスオフセット値が測定可能になる。
【0040】
スタイラスモジュール22は一体型スタイラスを有するが、スタイラスが(例えば、標準のネジ山接続によって)取り外し可能なように取り付けできるスタイラスホルダを設けることも可能である。これにより、スタイラスの交換が可能になるが、スタイラスモジュールの中立位置を再較正し、および/またはスタイラス交換後に、再着座力を調整する必要がユーザに生ずることになる。また、スタイラスモジュール22は、製造後に、スタイラスモジュールの様々な内部構成要素へのアクセスを防ぐために密閉されている外部ケーシング32を備える。この密閉はまた、使用中、スタイラスモジュール内への流体(例えば、冷却剤)が流出することを防止するのには十分なものである。
【0041】
ベースモジュール20は、スタイラスモジュールのバネ荷重による運動学的構成の接点全体にもたらされる電気回路の抵抗を監視するように構成されている測定部36を備える。したがって、測定部36は、物体接触が検出されたときはいつでも、トリガ信号を生成し、このトリガ信号は、関連するプローブのインターフェース42へと前方伝送するための周波数ホッピング方式RF通信部40に送られる。RF通信部および関連するインターフェースは、任意の適切な通信プロトコルを実装することが可能であり、例えば、特許文献4に記載されているプロトコルを使用することができる。また、ベースモジュールの20も、密閉された外部筺体33を備え、その中に含まれる電子的構成要素への損傷を防いでいる。
【0042】
スタイラスモジュール22は、ベースモジュール20に対して取り外し可能に取り付けることができる。具体的には、運動学的ないし疑似運動学的接続が、スタイラスモジュール22とベースモジュール20の間に与えられ、それにより、スタイラスモジュール22とベースモジュール20は、互いに対して繰り返し可能に装着することができる。運動学的配置を行うためには、3つの突出ボール44がベースモジュール20上に設けられ、また、3つの相補的溝部46がスタイラスモジュール22上に形成される(1つのボールと1つの溝部のみが図2には示されていることに留意されたい)。また、ネジ山接続部48は、接続後に、ベースモジュール20とスタイラスモジュール22との係合を維持するために設けられている。スタイラスモジュールとベースモジュールの間に繰り返し可能な物理的接続を行うための多数の代替技術を、当業者であれば知っていることに留意されたい。例えば、特許文献5に記載されているタイプの結合部を使用することができる。
【0043】
複数の第1の電気接点50が、ベースモジュール20上に設けられ、相補的な第2の電気接点52が、スタイラスモジュール22上に設けられる。スタイラスモジュールおよびベースモジュールが互いに取り付けられているとき、第1の電気接点50および第2の電気接点52により、電力が、スタイラスモジュール22のバッテリ34からベースモジュール20の電気的構成要素(すなわち、測定部36および無線通信部40)に送られることが可能になる。同様に、ベースモジュールの測定部分36に、スタイラスモジュールのバネ荷重の運動学的構成の接点全体にもたらされる電気回路の抵抗を測定することを可能にするために、導電経路がベースモジュールとスタイラスモジュールの間に設けられることが可能である。また、本例は、複数の電気接続部がベースモジュールとスタイラスモジュールの間に設けられることが可能な単なる一例を説明しており、決して、限定しているとみなすべきではない。当業者なら、代替として、または加えて、必要な電気接続部を構築するために使用可能な1つまたは複数の相補的電気コネクタの提供など、多数の代替技術が分かるであろう。
【0044】
使用に際して、スタイラスモジュール22とベースモジュール20は係合される。前述したように、スタイラスモジュール22は、製造中にバネ力およびスタイラスの中立位置が設定されている密閉されたユニットである。ベースモジュールとスタイラスモジュールの間の運動学的接続により、モジュールの相対位置はまた、正確に規定される。したがって、必要に応じて較正チェックを行うことが可能であるが、使用前に、測定プローブのいかなる種類の較正を行う必要性もユーザには生じない。
【0045】
また、スタイラスモジュール22とベースモジュール20とを物理的に係合することにより、これらのモジュール間に必要な電気接続部も構築される。その場合、ベースモジュール20の電子部は、スタイラスモジュール22のバッテリ34によって電力供給される。現時点では、測定プローブは、従来の測定プローブと同じやり方で動作することが可能である。例えば、測定プローブは、工作機械のスピンドル内に保持可能であり、そのプローブを使用して、ワークピースを検査することが可能である。任意のスタイラス30のたわみが、結果的に測定部分36によってトリガ信号を生成し、その信号は、通信部40を介して、プローブのインターフェース42に送られる。次いで、プローブのインターフェースは、トリガ信号を工作機械の数値コントローラの適切な入力部に送ることができる。
【0046】
スタイラスモジュール22のバッテリ34は有限容量を有し、ベースモジュール20の電子部によってバッテリ34から出される電力量は、測定プローブの使用量に左右されることになる。典型的なバッテリは、数100時間にわたって、ベースモジュール20の電子部に継続的に電力供給することが予想できる。しかし、典型的には、測定プローブは、機械加工の動作の間に行われる検査工程のために、断続的に使用されるだけである。したがって、測定プローブは、測定が行われていない場合には、ベースモジュール20の大部分の電子部が電力ダウンされる待機モードを含むことができる。その場合、測定プローブは、知られている様々な方法で、すなわち、例えば、軸部スイッチによって、回転ターンオンスイッチによって、または、プローブのインターフェースを使用する無線ターンオン技術によって、待機モードから覚醒することができる。典型的なバッテリは、個々の待機モードと関連する電力消費に応じて、数百日にわたって、このような待機モードに電力供給することが可能になる。
【0047】
したがって、バッテリ34の貯蔵容量は、特定の、または所定量の測定プローブの使用を可能にするために、製造業者によって選択可能なものである。つまり、スタイラスモジュールは、バッテリの故障が生じる前に、有限の、所定の稼働寿命を有する。スタイラスモジュールの稼働寿命は、プローブの使用の典型的な量と、必要とされる稼働日数との概算に基づくことができる。バッテリ34が空になり、またはバッテリが供給することの可能な電力が許容可能レベルより下がった後には、測定プローブの動作は停止する。バッテリ34は、スタイラスモジュールと一体に形成され、そのモジュールから取り外し不可能であり、したがって、ユーザは、バッテリ34にアクセスすること、およびそのバッテリを交換することができない。そうではなく、消耗したスタイラスモジュールは、廃棄され、または製造業者にリサイクルするために返却されなくてはならない。新規スタイラスモジュールが、測定動作を継続するために、前述したように、まったく較正を行う必要性なしに、ベースモジュール20に取り付けることができる。
【0048】
ベースモジュール20は、スタイラスモジュールのバッテリ34内に維持される電力を査定するためのバッテリ状況監視デバイス60を含むことができる。バッテリの状況は、ベースモジュール20上に設けられた1つまたは複数のLEDによって、ユーザに伝えることができる。例えば、バッテリが良い状態である場合は緑色、バッテリが消耗間近な場合は琥珀色、およびバッテリが消耗した場合、またはもう間もなく消耗しそうな場合は赤色であるLEDインジケータを設けることができる。また、バッテリ状況の情報は、無線リンクを介して、インターフェース42に送ることができる。このタイプのバッテリモニタは、交換用スタイラスモジュールが間もなく必要になるという事前警告をユーザに与える。
【0049】
図2には示していないが、スタイラスモジュール22は、単にスタイラスモジュール内に配置され、または密閉されているだけでなく、スタイラスモジュールの一体型部品として実際に設けられるバッテリを含むことができる。例えば、バッテリは、スタイラスホルダの再着座をもたらすバネと係合可能であり、それにより、バッテリを取り外そうとするどのような試みにも、再調整されるべきバネ力が必要になる。あるいは、バッテリケーシングは、バッテリの取り外しには、リセットされるべきスタイラスの中立位置が必要となるようにスタイラスホルダが係合する着座機構の一部を形成することが可能である。このように、ユーザによる(例えば、スタイラスモジュールのケーシングを壊して開けることによる)バッテリの交換は、ケーシングに損傷を与えるだけでなく、結果的にスタイラスモジュールの再較正の必要が生じることになる。
【0050】
先の例では、最小量の電子部を含むスタイラスモジュールを説明したが、追加の電子的構成要素が、必要に応じて、スタイラスモジュール内に含まれることが可能であることに留意されたい。例えば、スタイラスモジュールは、それ自体、バッテリ寿命を監視するための回路および/またはスタイラスのたわみデータを処理するために使用される少なくともいくつかの回路を含むことができる。
【0051】
なお、本発明は、前述したタイプのバネ荷重の運動学的構成を含むスタイラスモジュールにまったく限定されない。測定プローブは、任意のタイプのスタイラスのたわみ測定機構を含むことができる。例えば、ひずみゲージまたは光センサを使用して、スタイラスのたわみを測定することができる。同様に、本発明は、スタイラスのたわみが特定の閾値を超えたとき、トリガ信号を出すタッチトリガプローブにまで及ぶだけでなく、スタイラス位置を示す座標データが生成されるいわゆるアナログプローブまたは走査プローブに同様に適用することができる。さらには、スタイラスホルダのたわみを測定するセンサは、必ずしも、スタイラスモジュールの一部として設けられる必要はない。そうではなく、ベースモジュールが、関連するスタイラスモジュールのスタイラスホルダのたわみを監視するセンサ(例えば、1つまたは複数の光センサ)を含むことができる。
【0052】
先の例には、データをプローブのインターフェースに伝送するためのRF部が含まれる。RF通信リンクを述べているが、測定プローブは、他のタイプの無線(例えば光)通信システムを含んでもよい。さらには、代替として、ハードワイヤード構成が設けられることもできる。
【0053】
本明細書に述べている測定プローブは、スピンドルに装着するための軸部に取り付け可能なものである。あるいは、測定プローブは、機械設定動作が行われることを可能にするために、テーブルに装着できるものである。種々のタイプのスタイラス(例えば、異なる長さのスタイラス、異なるチップを有するスタイラスなど)を含む多様なスタイラスモジュールを提供することができる。また、単一タイプのベースモジュールに適合する複数の異なるスタイラスモジュールが提供可能であり、その場合、ユーザは、個々のタスクに必要なスタイラスモジュールを選択するだけでよい。
【0054】
図3を参照すると、ベースモジュール120およびスタイラスモジュール122を含む本発明の他の測定プローブが図示される。取り付け機構は、明確にするために図3には示していないが、ベースモジュールおよびスタイラスモジュールは、図2を参照して前述したのと同じように、取り外し可能に、および繰り返し可能に、互いに対して取り付けることができる。
【0055】
ベースモジュール120は、測定部124、バッテリ126およびRF通信部128を備える。スタイラスモジュール122は、たわみ機構134によって接続されている筺体130と、スタイラスホルダ132とを備える。スタイラスホルダ132は、それから突出している一体型スタイラス136を有する。したがって、たわみ機構134によって、スタイラス136とスタイラスホルダ132とは、筺体130に対して移動することが可能となる。使用に際して、筺体130に対するスタイラスホルダ132の移動が検出され、スタイラスが特定の量を超える量たわむときはいつでも、トリガ信号が測定部124によって生成される。次いで、RF通信部128は、このようなトリガ信号をリモートプローブのインターフェース(図示せず)に送る。
【0056】
たわみ機構134は、また、特定量の使用後に、突発的に機能しなくなる構成要素を有するように構成されている。したがって、スタイラスモジュール134のたわみ機構は、パチンと切れるかまたはせん断されるまでに、特定の回数、屈曲または移動可能なスプリングの弱い区分など、折れやすく、脆弱な、またはせん断可能な部品を含むことができる。先に概要を述べたように、たわみ機構の突発的な故障は、使用により、結果的に性能が次第に低下することになる進行性の故障モードよりはむしろ好ましい。たわみ機構134の部品の機械的故障について説明したが、スタイラスモジュールのいかなる適切な部品も、必要な機械的故障をもたらし得ることに留意されたい。
【0057】
図3には示していないが、スタイラスモジュール122は、特定の数の測定結果が得られた後に、および/または特定の量の経過時間後に、スタイラスモジュールの動作を抑制する電子的非活動化部を含むこともできる。このような電子的故障モードは、機械的故障モードとの組合せで使用することができる。例えば、スタイラスモジュールの寿命は、ハードウェア(例えば、スタイラスのたわみモジュール)に組み込まれている突発的または進行性の故障モードによって、最終的には制限され得るが、典型的には機械的故障が起こる前に動作を抑制する電子的故障モードを提供することもできる。このように、間近に迫ったスタイラスモジュール故障の適切な警告がユーザに提供可能であり、機械的故障モードが継続中の動作を止める前には、ユーザによる電子部に対する独断的な干渉、またはユーザによる電子部のリセットによってのみ、短く、かつ予測不可能な量の追加のスタイラスモジュールの使用が可能になる。また、前述したバッテリ故障モードも、類似の理由により、機械的故障モードとの組合せで使用可能である。
【0058】
先の例は、本発明の好ましい実施形態を例示するためにのみ意図されていることに留意すべきである。当業者は、本発明により提供可能である多数の代替デバイスを認識するであろう。
図1
図2
図3