特許第5992394号(P5992394)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992394
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】観賞魚用固形餌
(51)【国際特許分類】
   A23K 50/80 20160101AFI20160901BHJP
   A23K 20/163 20160101ALI20160901BHJP
【FI】
   A23K50/80
   A23K20/163
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-264118(P2013-264118)
(22)【出願日】2013年12月20日
(65)【公開番号】特開2015-119644(P2015-119644A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2015年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】393022746
【氏名又は名称】ジェックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(72)【発明者】
【氏名】水谷 綾
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−110964(JP,A)
【文献】 米国特許第04466982(US,A)
【文献】 特開2004−337003(JP,A)
【文献】 特開2004−008029(JP,A)
【文献】 特開昭52−016396(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/061892(WO,A1)
【文献】 特開昭62−151145(JP,A)
【文献】 特公昭44−010139(JP,B1)
【文献】 特開2001−327227(JP,A)
【文献】 特開2012−139181(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0204801(US,A1)
【文献】 特開平06−165647(JP,A)
【文献】 特開2007−125015(JP,A)
【文献】 実公昭47−030392(JP,Y1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0337030(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/00 − 50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給餌の際に給餌作業者に持たれる持ち部と観賞魚の飼育水中に浸漬される浸漬部とを有するとともに、
少なくとも前記浸漬部全体が、観賞魚が食することが可能な餌素材及びバインダーから形成されていることを特徴とする観賞魚用固形餌。
【請求項2】
前記持ち部と前記浸漬部とを含む固形餌全体が、前記餌素材及びバインダーから形成されている請求項1記載の観賞魚用固形餌。
【請求項3】
固形餌全体が棒状に形成されており、
固形餌の軸方向の一端側が前記持ち部として用いられるとともに、固形餌の軸方向の他端側が前記浸漬部として用いられる請求項2記載の観賞魚用固形餌。
【請求項4】
直径3mmの円形状の押圧面を有する押圧パンチを用い、水に浸漬する前の固形餌を前記押圧パンチの前記押圧面で固形餌の軸に垂直な方向に押圧した際に固形餌が押潰した時の押潰荷重が35〜80Nに設定されるとともに、
水に30s間浸漬した後の固形餌についての押潰荷重が2〜45Nに設定されている請求項3記載の観賞魚用固形餌。
【請求項5】
固形餌の直径が3〜15mmに設定されている請求項3又は4記載の観賞魚用固形餌。
【請求項6】
固形餌の軸方向の長さが40mm以上に設定されている請求項3〜5のいずれかに記載の観賞魚用固形餌。
【請求項7】
前記バインダーとして、アルファー化デンプン2〜5質量%、架橋デンプン2〜3質量%、及び、合成高分子系増粘剤0.1〜2質量%が用いられている請求項1〜6のいずれかに記載の観賞魚用固形餌。
【請求項8】
粒径0.5〜1.5mmの粒状の餌素材を多数、分散状態に含有している請求項1〜7のいずれかに記載の観賞魚用固形餌。
【請求項9】
固形餌のかさ密度が0.65〜0.85g/cmに設定されている請求項1〜8のいずれかに記載の観賞魚用固形餌。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金魚等の観賞魚に給餌される観賞魚用固形餌に関する。
【背景技術】
【0002】
金魚等の観賞魚用の餌として、顆粒状、ペレット状、フレーク状に形成されたものが広く用いられている。これらの餌はすべて観賞魚飼育者により水槽内の飼育水中に投入されて使用されるものである。投入された餌は観賞魚に食べられ、その様子を飼育者が見ることで観賞魚とのふれあいが得られる。
【0003】
さらに、観賞魚用の餌として、特開2007−110964号公報(引用文献1)に記載のように、餌が筒状の容器内に封入されて冷凍凍結されたものも公知である。この餌入り容器では、給餌の際に飼育者が容器の一端を切り取り、切り取った側の端を水槽内の飼育水中に浸漬し、手で容器を振盪して容器内の餌を切り取った側の端から排出分散させることで給餌するか指で絞り出して給餌する。ここで、容器はプラスチックや紙から形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−110964号公報(段落[0006]、[0009]、[図2])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記公報に記載の餌によれば、容器はプラスチックや紙から形成されているので容器に観賞魚が食い付かず、飼育者としては、容器の切り取った側の端から排出分散された餌を観賞魚が食べる様子を見ることで観賞魚とのふれあいが得られる。
【0006】
しかるに、観賞魚に餌を与える時間は、その飼育者にとってほぼ唯一の観賞魚とふれあえる時間であるが、従来の餌では、観賞魚が餌を食べている様子を見るという視覚のみにより観賞魚とのふれあいが得られていた。そのため、ふれあい度の高い餌の開発が望まれていた。
【0007】
本発明は、上述した技術背景に鑑みてなされたもので、その目的は、給餌の際において観賞魚とのふれあい度が高い観賞魚用餌を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の手段を提供する。
【0009】
[1] 給餌の際に給餌作業者に持たれる持ち部と観賞魚の飼育水中に浸漬される浸漬部とを有するとともに、
少なくとも前記浸漬部全体が、観賞魚が食することが可能な餌素材及びバインダーから形成されていることを特徴とする観賞魚用固形餌。
【0010】
[2] 前記持ち部と前記浸漬部とを含む固形餌全体が、前記餌素材及びバインダーから形成されている前項1記載の観賞魚用固形餌。
【0011】
[3] 固形餌全体が棒状に形成されており、
固形餌の軸方向の一端側が前記持ち部として用いられるとともに、固形餌の軸方向の他端側が前記浸漬部として用いられる前項2記載の観賞魚用固形餌。
【0012】
[4] 直径3mmの円形状の押圧面を有する押圧パンチを用い、水に浸漬する前の固形餌を前記押圧パンチの前記押圧面で固形餌の軸に垂直な方向に押圧した際に固形餌が押潰した時の押潰荷重が35〜80Nに設定されるとともに、
水に30s間浸漬した後の固形餌についての押潰荷重が2〜45Nに設定されている前項3記載の観賞魚用固形餌。
【0013】
[5] 固形餌の直径が3〜15mmに設定されている前項3又は4記載の観賞魚用固形餌。
【0014】
[6] 固形餌の軸方向の長さが40mm以上に設定されている前項3〜5のいずれかに記載の観賞魚用固形餌。
【0015】
[7] 前記バインダーとして、アルファー化デンプン2〜5質量%、架橋デンプン2〜3質量%、及び、合成高分子系増粘剤0.1〜2質量%が用いられている前項1〜6のいずれかに記載の観賞魚用固形餌。
【0016】
[8] 粒径0.5〜1.5mmの粒状の餌素材を多数、分散状態に含有している前項1〜7のいずれかに記載の観賞魚用固形餌。
【0017】
[9] 固形餌のかさ密度が0.65〜0.85g/cmに設定されている前項1〜8のいずれかに記載の観賞魚用固形餌。
【発明の効果】
【0018】
本発明は以下の効果を奏する。
【0019】
前項[1]では、固形餌における少なくとも浸漬部全体が餌素材及びバインダーから形成されているので、給餌の際に、給餌作業者(例:観賞魚飼育者)が固形餌の持ち部を持って固形餌の浸漬部を飼育水中に浸漬すると、観賞魚が浸漬部の表面に食い付いて浸漬部を餌として食べるようになる。そのため、給餌作業者としては、観賞魚が餌を食べている様子を見るという視覚だけではなく、更に、観賞魚が浸漬部の表面に食い付いている時の振動が浸漬部から持ち部を介して給餌作業者に伝わるという触覚からも観賞魚とのふれあいを得ることができる。これにより、給餌の際において観賞魚とのふれあい度を高めることができる。
【0020】
前項[2]では、持ち部と浸漬部とを含む固形餌全体が餌素材及びバインダーから形成されることにより、固形餌を容易に製造することができるし、固形餌全体を餌として使用することができる。
【0021】
前項[3]では、固形餌全体が棒状に形成されることにより、固形餌を更に容易に製造することができる。
【0022】
しかも、固形餌の軸方向の一端側が持ち部として用いられるとともに、固形餌の軸方向の他端側が浸漬部として用いられるので、固形餌の浸漬部が観賞魚に食べられて浸漬部が短くなるのに伴って固形餌の他端側を飼育水中に浸漬していけば、観賞魚への給餌を中断することなく連続的に給餌することができ、そのため、観賞魚とふれあう時間を中断しないで継続することができる。
【0023】
前項[4]では、水に浸漬する前の固形餌についての押潰荷重と、水に浸漬した後の固形餌についての押潰荷重とがそれぞれ所定の範囲に設定されることにより、給餌作業者が手の指先で固形餌の持ち部を摘み持った時や、浸漬部の表面に観賞魚が食い付いている時の振動で持ち部が割れるのを確実に防止することができるし、観賞魚が金魚等の餌を噛み切るための歯を持っていない種類であっても飼育水中に浸漬された固形餌の浸漬部をその表面から観賞魚が確実に食い取ることができるし、観賞魚が食い付いている時の振動で浸漬部が割れるのを確実に防止することができる。
【0024】
前項[5]では、固形餌の直径が所定の範囲に設定されることにより、給餌作業者において固形餌の持ち部を手の指先で持ち易くなるし、固形餌の浸漬部の表面に複数匹の観賞魚が同時に食い付きうるようになって高い食い付き振動が得られるし、観賞魚が食い付いている時の振動や観賞魚が浸漬部を囓ることで浸漬部が割れたり折れたりするのを確実に防止することができるし、更に、口の小さな観賞魚が浸漬部をその表面から食い取る際の引っかかりがなくなるのを確実に防止することができる。
【0025】
前項[6]では、固形餌の軸方向の長さが所定長さ以上に設定されることにより、水槽が例えば上蓋付き水槽である場合でも、給餌作業者が指先で固形餌の持ち部を摘み持って上蓋の隙間から固形餌の浸漬部を水槽内に差し入れることで浸漬部を飼育水中に浸漬することができる。そのため、給餌の際に上蓋をわざわざ取り外す必要がなく、給餌作業を容易に行うことができる。
【0026】
前項[7]では、アルファー化デンプンにより餌素材を安定的に結着することができ、架橋デンプンにより余分な糊化を抑制することができ、合成高分子系増粘剤により粘性だけではなく保水性及び吸水性を高め、飼育水中に浸漬部を浸漬した時に浸漬部が崩れにくくなるし、餌を噛み切るための歯を持たない種類の観賞魚(例:金魚)でも確実に食べることができるようになる。
【0027】
前項[8]では、所定範囲の粒径の粒状の餌素材を多数、分散状態に含有していることにより、餌を噛み切るための歯を持たない種類の観賞魚(例:金魚)でもこの粒状の餌素材を浸漬部をその表面から食い取る際の引っかかりにし得て、浸漬部を確実に食べうるものとなる。
【0028】
前項[9]では、固形餌のかさ密度が所定の範囲に設定されることにより、水に浸漬する前の固形餌についての押潰荷重と水に浸漬した後の固形餌についての押潰荷重とをそれぞれ上記所定の範囲に確実に設定することができる。
【0029】
さらに、固形餌がその浸漬部から食べられていき固形餌の持ち部の長さが短くなった場合には、当該固形餌を水槽内に投入すると飼育水の水面上に当該固形餌が浮くため、観賞魚が食べ易くなるし、食べ残しがある場合にはこれを容易に取り除くことができ、これにより、食べ残しの餌による飼育水の水質悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る観賞魚用固形餌の斜視図である。
図2図2は、同固形餌の断面の概略図である。
図3図3は、同固形餌を観賞魚に与えているときの状態を示す水槽の断面図である。
図4図4は、同固形餌についての押潰荷重の測定方法を説明するための、測定器の概略正面図である。
図5図5は、同固形餌の製造方法を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本発明の一実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0032】
本発明の一実施形態に係る固形餌1は、図1に示すように、棒状(スティック状)に形成された成形体からなるものであり、図3に示すように、水槽5内の飼育水7中を泳いでいる複数匹の観賞魚(例:金魚)8に給餌作業者20により餌として与えられるものである。なお、給餌作業者20としては通常、観賞魚8の飼育者が該当する。また本実施形態では、水槽5は上蓋6付きのものであり、飼育水7は観賞魚8の飼育に対応した水(淡水、海水等)である。
【0033】
図2に示すように、固形餌1の断面形状は略円形状である。さらに、固形餌1の断面形状及びその直径Dは、固形餌1の軸方向においてそれぞれ略一定に設定されている。
【0034】
図1及び3に示すように、固形餌1の軸方向の一端側は、観賞魚8への給餌の際に給餌作業者20の手の指先で摘み持たれる持ち部1aを構成している。固形餌1の軸方向の他端側は、観賞魚8への給餌の際に飼育水7中に浸漬される浸漬部1bを構成している。
【0035】
さらに、この固形餌1はその全体が、観賞魚8が食することが可能な餌素材2a及びそのバインダー2bから所定形状(即ち棒状)に形成されている(図2参照)。そして、この固形餌1は、固形餌1の持ち部1aが水槽5内の飼育水7の水面よりも上側で給餌作業者20に持たれ且つ固形餌1の浸漬部1bが水槽5内の飼育水7中に浸漬された状態にして、観賞魚8に給餌される。
【0036】
本実施形態における固形餌1の観賞魚8への給餌方法について詳述すると、次のとおりである。
【0037】
すなわち、図3に示すように、固形餌1の軸方向の一端側からなる持ち部1aを給餌作業者20が手の指先で摘み持ち、水槽5における上蓋6の端部に形成された切欠き窓孔6a等の隙間から、固形餌1の軸方向の他端側からなる浸漬部1bを水槽5内に差し入れて水槽5内の飼育水7中に浸漬する。これにより、観賞魚8が浸漬部1bの表面に食い付いて浸漬部1bを餌として食べるようになる。そのため、給餌作業者20としては、観賞魚8が餌を食べている様子を見るという視覚だけではなく、更に、観賞魚8が浸漬部1bの表面に食い付いている時の振動が浸漬部1bから持ち部1aを介して給餌作業者20に伝わるという触覚からも観賞魚8とのふれあいを得ることができる。これにより、観賞魚8とのふれあい度を高めることができる。
【0038】
そして、給餌作業者20は、固形餌1の浸漬部1bが観賞魚8に食べられて浸漬部1bが短くなるのに従って固形餌1の下端部(他端部)を飼育水7中に浸漬していく。こうすることにより、観賞魚8への給餌を中断することなく連続的に給餌することができ、そのため、観賞魚8とふれあう時間を中断しないで継続することができる。
【0039】
本実施形態の固形餌1では、固形餌1の持ち部1aを持って給餌作業が行われるので、給餌作業者20が手の指先で固形餌1の持ち部1aを摘み持ったときに持ち部1aが割れないような硬さでなければならない。一方、観賞魚8の中には、金魚のように、餌を噛み切るための歯を持っていない種類も存在するので、そのような種類の観賞魚8でも飼育水7中に固形餌1の浸漬部1bが浸漬された時に観賞魚8が浸漬部1bをその表面から食い取ることができるような硬さ(柔らかさ)でなければならない。そこで本発明者は、様々な実験を繰り返して調べたところ、固形餌1の硬さとして、飼育水7に浸漬する前の固形餌1についての押潰荷重と飼育水7に浸漬した後の固形餌1についての押潰荷重とをそれぞれ所定の範囲に設定することにより、このような要件を満足できることを見出した。各押潰荷重の測定方法は以下のとおりである。
【0040】
図4において、10は、固形餌1の押潰荷重を測定する測定器である。本実施形態では、測定器10としては例えば株式会社山電製「クリープメータ」を使用可能である。この測定器10は、試料台12と、先端に平坦な押圧面11aを有する円柱状押圧パンチ11などを具備している。押圧パンチ11としては、一般家庭で最も多く飼育されている観賞魚8である金魚の口の大きさになるべく対応さるため、その押圧面11aの形状が円形状であり且つ押圧面11aの直径Bが3mmのものが用いられる。
【0041】
試料台12は水平に配置されている。押圧パンチ11は試料台12の上方に押圧パンチ軸を鉛直にして配置されており、その押圧面11aは押圧パンチ軸に対して垂直に形成されている。
【0042】
飼育水7に浸漬する前の固形餌1についての押潰荷重を測定する場合には、飼育水7に浸漬する前の固形餌1を試料台12上に水平に横倒し状に載置し、この固形餌1の軸方向中間部を押圧パンチ11の押圧面11aで固形餌1の軸に垂直な方向として下方向に押圧した際に固形餌1が押潰し破断した時の荷重を「押潰荷重」として測定する。
【0043】
ここで本実施形態では、測定器10の構造上、押圧パンチ11の押圧面11aを固形餌1に向かって下降移動(矢印P1の移動方向)させるのではなく、試料台12を押圧パンチ11の押圧面11aに向かって上昇移動(矢印P2の移動方向)させることにより、固形餌1の軸方向中間部を押圧パンチ11の押圧面11aで下方向に押圧するようにしている。また、固形餌1の軸方向中間部を押圧パンチ11の押圧面11aで押圧する際の荷重速度は1mm/sに設定されている。
【0044】
飼育水7に浸漬した後の固形餌1についての押潰荷重を測定する場合には、飼育水7中に固形餌1全体を30s間浸漬して飼育水7から取り出し、この固形餌1を試料台12上に水平に横倒し状に載置する。そして、飼育水7に浸漬する前の固形餌1についての押潰荷重の測定方法と同じ測定方法によって、飼育水7に浸漬した後の固形餌1についての押潰荷重を測定する。
【0045】
ここで、固形餌1の飼育水7中への浸漬時間を30sに設定した理由は、固形餌1の浸漬部1bを飼育水7中に浸漬した時から観賞魚8が浸漬部1bに食い付いて食べはじめる時間が平均約30秒であり、この時間の時に観賞魚8が浸漬部1bを食べうる硬さになる必要があるからである。
【0046】
なお本発明では、押潰荷重の測定のために固形餌1が浸漬される液体が実際の飼育水7ではなく水道水等の通常の水であっても押潰荷重は殆ど変化しないので、押潰荷重の測定の際に固形餌1を浸漬する飼育水7として水道水等の通常の水を用いても良い。
【0047】
本発明者による実験の結果、飼育水7に浸漬する前の固形餌1についての押潰荷重が35〜80Nに設定されるとともに、飼育水7に浸漬した後の固形餌1についての押潰荷重が2〜45Nに設定されていることが望ましいことが判明した。その理由は次のとおりである。
【0048】
飼育水7に浸漬する前の固形餌1についての押潰荷重が35N以上であることにより、給餌の際に給餌作業者20が手の指先で固形餌1の持ち部1aを摘み持った時や、浸漬部1bの表面に観賞魚8が食い付いている時の振動で持ち部1aが割れるのを確実に防止することができる。さらに、この押潰荷重が80N以下であることにより、飼育水7に浸漬した後の固形餌1についての押潰荷重を2〜45Nの範囲に確実に設定することができる。
【0049】
さらに、飼育水7に浸漬した後の固形餌1についての押潰荷重が2N以上であることにより、観賞魚8が食い付いている時の振動で固形餌1の浸漬部1bが割れるのを確実に防止することができる。さらに、この押潰荷重が45N以下であることにより、観賞魚8が金魚等の餌を噛み切るための歯を持っていない種類であっても、飼育水7中に浸漬された固形餌1の浸漬部1bをその表面から観賞魚8が確実に食い取ることができるようになる。
【0050】
さらに、本発明者による実験の結果、固形餌1の直径Dは3〜15mmに設定されることが望ましいことが判明した。その理由は次のとおりである。
【0051】
固形餌1の直径Dが3mm以上であることにより、給餌作業者20において固形餌1の持ち部1aを手の指先で持ち易くなるし、固形餌1の浸漬部1bの表面に複数匹の観賞魚8が同時に食い付きうるようになって高い食い付き振動が得られるし、観賞魚8が食い付いている時の振動や観賞魚8が浸漬部1bを囓ることで浸漬部1bが割れたり折れたりするのを確実に防止することができる。さらに、固形餌1の直径Dが15mm以下であることにより、口の小さな観賞魚8が浸漬部1bをその表面から食い取る際の引っかかりがなくなるのを確実に防止することができる。特に望ましい直径Dは4〜6mmである。
【0052】
さらに、本発明者による実験の結果、固形餌1の軸方向の長さLは40mm以上に設定されることが望ましいことが判明した。その理由は次のとおりである。
【0053】
本実施形態にように水槽5が上蓋6付きのものである場合でも、図3に示すように、給餌作業者20が手の指先で固形餌1の持ち部1aを摘み持って、上蓋6の切欠き窓孔6a等の隙間から固形餌1の浸漬部1bを水槽5内に差し入れることで浸漬部1bを飼育水7中に浸漬することができる。そのため、給餌の際に上蓋6をわざわざ取り外す必要がなく、給餌作業を容易に行うことができる。
【0054】
なお、固形餌1の軸方向の長さLの上限は限定されるものではないが、固形餌1の長さLがあまりに長すぎると給餌作業が困難になったり給餌の際に固形餌1が不慮に折れたりする虞があるので、これを回避すべく、固形餌1の長さLは150mm以下(特に望ましくは100mm以下)に設定されるのが良い。
【0055】
固形餌1を形成する餌素材2a及びバインダー2bのうち餌素材2aは、観賞魚8が食することが可能で観賞魚8の生育のために必要な栄養素を含むものであり、望ましくは、大豆タンパク、とうもろこし、フィッシュミール、ほうれん草、にんじん、わかめ粉、シュリンプミール(エビ)などが混合されて用いられる。
【0056】
バインダー2bは、観賞魚8が食することが可能で餌素材2aを結着するためのものである。特に、バインダー2bとして、アルファー化デンプン2〜5質量%、架橋デンプン2〜3質量%、及び、合成高分子系増粘剤0.1〜2質量%が用いられることが望ましい。その理由は次のとおりである。
【0057】
すなわち、アルファー化デンプンにより餌素材2aを安定的に結着することができ、架橋デンプンにより余分な糊化を抑制することができ、合成高分子系増粘剤により粘性だけではなく保水性及び吸水性を高め、飼育水7中に固形餌1の浸漬部1bを浸漬した時に崩れにくく、餌を噛み切るための歯を持たない金魚等の観賞魚8でも確実に食べることができるようになる。アルファー化デンプン及び架橋デンプンとしては増粘安定剤(加工デンプン)等が用いられ、合成高分子系増粘剤としてはポリアクリル酸ナトリウム等が用いられる。
【0058】
本実施形態の固形餌1を製造する場合には、固形餌1の餌素材2a及びバインダー2bとして、例えば、大豆タンパク:10〜20質量%、とうもろこし:2〜10質量%、フィッシュミール:2〜10質量%、シュリンプミール(エビ):1〜10質量%、植物油:1〜5質量%、増粘安定剤(加工デンプン):1〜10質量%、ベーキングパウダー:1〜8質量%、グリシン:0.1〜3質量%、酢酸ナトリウム:0.1〜2質量%、増粘剤(ポリアクリル酸ナトリウム):0.1〜2質量%、残り:水をミキサー等の混練機により混練する。
【0059】
そして、図5に示すように、こうして得られた混練物をチューブ15内に装填する。このチューブ15の先端部には成形ノズル16が取り付けられるとともに、成形ノズル16の先端には断面円形状の成形口16aが形成されている。そして、チューブ15内の混練物を成形ノズル16の成形口16aからトレー17上に押し出しながら成形ノズル16を押出方向とは反対方向(矢印Qの方向)に移動させることにより、断面円形状の長尺な棒状固形餌用素材3が得られる。次いで、この素材3を所定の長さに定尺切断(その切断予定線C)して加熱乾燥することにより、所望する固形餌1が得られる。ここで、固形餌1は棒状(スティック状)であることから、このような製造方法により固形餌1を容易に製造することができる。
【0060】
また、本実施形態の固形餌1は、本発明者による実験の結果、粒径0.5〜1.5mmの粒状の餌素材2aを多数、固形餌1全体に亘って分散した状態に含有していることが望ましいことが判明した。こうすることにより、餌を噛み切るための歯を持たない金魚等の観賞魚8であっても、この粒状の餌素材2aを、浸漬部1bをその表面から食い取る際の引っかかりにし得て、浸漬部1bを確実に食べうるものとなる。
【0061】
さらに、固形餌1のかさ密度は0.65〜0.85g/cmに設定されていることが望ましい。こうすることにより、飼育水7に浸漬する前の固形餌1についての押潰荷重と飼育水7に浸漬した後の固形餌1についての押潰荷重とをそれぞれ上記所定の範囲に確実に設定することができる。しかも、固形餌1がその浸漬部1bから食べられていき固形餌1の持ち部1aの長さが短くなった場合には、当該固形餌1を水槽5内に投入すると飼育水7の水面上に当該固形餌1が浮くため、観賞魚8が食べ易くなるし、もし食べ残しがある場合にはこれを容易に取り除くことができ、これにより、食べ残しの餌による飼育水7の水質悪化を抑制することができる。固形餌1のかさ密度の上記範囲への設定は、大豆タンパクを含気処理することで容易に行うことができる。
【0062】
以上で本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々に変更可能である。
【0063】
また、本実施形態では、固形餌1全体が餌素材2a及びバインダー2bから形成されているが、本発明では、その他に例えば固形餌1における浸漬部1bだけが餌素材2a及びバインダー2bから形成されることを排除するものではない。
【0064】
さらに、本発明では、固形餌1はその断面形状が多角形状であることを排除するものではない。
【0065】
なお、本発明に係る固形餌は、水生愛玩動物として観賞魚への餌として好適に用いられるが観賞魚だけではなくその他の水生愛玩動物(例:水生カメ)への餌としても用いることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、観賞魚(例:金魚、熱帯魚、メダカ)用固形餌に利用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1:固形餌
1a:持ち部
1b:浸漬部
2a:餌素材
2b:バインダー
5:水槽
7:飼育水
10:押潰荷重の測定器
11:押圧パンチ
11a:押圧面
20:給餌作業者
図1
図2
図3
図4
図5