(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照し、本発明に係る有機発光ダイオード表示装置及びその製造方法を説明する。
【0029】
図2は、本発明に係る有機発光ダイオード表示装置における一つの画素領域に対する回路図である。
【0030】
図2に示すように、有機発光ダイオード表示装置には、互いに交差して副画素領域(SP)を定義するゲート配線(GL)、データ配線(DL)及びパワー配線(PL)が設けられる。そして、副画素領域(SP)には、スイッチング薄膜トランジスタ(Ts)、駆動薄膜トランジスタ(Td)、ストレージキャパシタ(Cst)、発光ダイオード(Del)が設けられる。
【0031】
スイッチング薄膜トランジスタ(Ts)は、ゲート配線(GL)及びデータ配線(DL)に接続され、駆動薄膜トランジスタ(Td)及びストレージキャパシタ(Cst)は、スイッチング薄膜トランジスタ(Ts)とパワー配線(PL)との間に接続される。発光ダイオード(Del)は、駆動薄膜トランジスタ(Td)に接続される。
【0032】
かかる有機発光ダイオード表示装置が映像を表示する動作を説明する。ゲート配線(GL)に印加されたゲート信号によってスイッチング薄膜トランジスタ(Ts)がターンオンすると、データ配線(DL)に印加されたデータ信号がスイッチング薄膜トランジスタ(Ts)を通じ、駆動薄膜トランジスタ(Td)のゲート電極及びストレージキャパシタ(Cst)の一電極に印加される。
【0033】
駆動薄膜トランジスタ(Td)は、ゲート電極に印加されたデータ信号によってターンオンする。その結果、データ信号に比例する電流がパワー配線(PL)から駆動薄膜トランジスタ(Td)を通じて発光ダイオード(Del)に流れ、発光ダイオード(Del)は、駆動薄膜トランジスタ(Td)を通じて流れる電流に比例する輝度に発光する。
【0034】
そのとき、ストレージキャパシタ(Cst)は、データ信号に比例する電圧で充電され、一フレームの間、駆動薄膜トランジスタ(Td)のゲート電極の電圧が一定に維持されるようにする。
【0035】
したがって、有機発光ダイオード表示装置は、ゲート信号及びデータ信号によって希望する映像を表示することができる。
【0036】
かかる有機発光ダイオード表示装置の有機発光ダイオードDは、陽極の第1電極と、正孔輸送層と、発光物質層と、電子輸送層と、陰極の第2電極とを備えるが、発光効率の向上のため、前記第1電極と前記正孔輸送層の間に位置する正孔注入層と、前記電子輸送層と前記第2電極の間に位置する電子注入層とを更に備えることができる。また、前記発光物質層は、互いに異なる物質からなる第1及び第2発光物質層の二層構造を有することもできる。
【0037】
そのとき、前記正孔輸送層、前記発光物質層及び前記電子輸送層の三重項エネルギーの大きさが発光効率に大きく影響を与える。即ち、前記発光物質層とそれに隣接する層との間の三重項エネルギーの大きさが、発光効率において重要要素である。
【0038】
図3a及び
図3bは、有機発光ダイオードにおけるエネルギー準位による発光効率の限界を説明するための図面である。
【0039】
図3aに示すように、発光物質層(EML)と正孔輸送層(HTL)を備えて構成される有機発光ダイオードにおいて、前記発光物質層(EML)を構成するホスト物質の三重項エネルギー(T1)が前記正孔輸送層(HTL)を構成する物質の三重項エネルギー(T2)より大きい場合、陽極から注入された正孔と陰極から注入された電子が前記発光物質層(EML)で結合して形成されるエキシトンのエネルギーが、前記発光物質層(EML)から前記正孔輸送層(HTL)に遷移する。それによって、発光効率が低下する。
【0040】
かかるエネルギー遷移は、電子輸送層を構成する物質の三重項エネルギーが前記発光物質層(EML)を構成するホスト物質の三重項エネルギー(T1)より小さい場合においても発生する。
【0041】
即ち、前記エキシトンは発光物質層(EML)内に留まって発光しなければならないが、エキシトンが発光物質層(EML)に十分に留まることができず、正孔輸送層(HTL)にエネルギー遷移が発生するため、有機発光ダイオード素子の発光効率が低下する。
【0042】
また、
図3bに示すように、第1発光物質層(EML1)と、第2発光物質層(EML2)と、正孔輸送層(HTL)とを備えて構成される有機発光ダイオードにおいて、前記正孔輸送層(HTL)に隣接した前記第1発光物質層(EML1)を構成するホスト物質の三重項エネルギー(T1)が前記正孔輸送層(HTL)を構成する物質の三重項エネルギー(T2)より大きい場合、陽極から注入された正孔と陰極から注入された電子が前記第1発光物質層(EML1)で結合して形成されるエキシトンのエネルギーが、前記第1発光物質層(EML1)から前記正孔輸送層(HTL)に遷移し、それによって発光効率が低下する。
【0043】
また、前記第1発光物質層(EML1)を構成するホスト物質の三重項エネルギー(T1)が前記第2発光物質層(EML2)を構成するホスト物質の三重項エネルギー(T3)より大きい場合、陽極から注入された正孔と陰極から注入された電子が前記第1発光物質層(EML1)で結合して形成されるエキシトンのエネルギーが、前記第1発光物質層(EML1)から前記第2発光物質層(EML2)に遷移し、それによって発光効率が低下する。
【0044】
発光物質層が、前記第1及び第2発光物質層(EML1、EML2)の積層された二層構造を有する場合に、エキシトンは前記正孔輸送層(HTL)に隣接した前記第1発光物質層(EML1)で殆ど形成されるため、前記第1発光物質層(EML1)にエキシトンが十分に留まることができず、前記第2発光物質層(EML2)に遷移する。その結果、希望する発光特性を得ることができない。
【0045】
したがって、本発明においては、エキシトンが形成されて発光領域となる発光物質とそれに隣接した層の三重項エネルギーを調節することにより、エキシトンを発光領域に十分に留まらせることを目的とする。また、それにより、有機発光ダイオードの発光効率を向上させる。
【0046】
図4は、本発明の第1実施例に係る有機発光ダイオードの概略的な断面図である。
【0047】
図4に示すように、本発明の第1実施例に係る有機発光ダイオードDは、陽極の第1電極110と、前記第1電極110と離隔する陰極の第2電極130と、前記第1電極110と第2電極130の間に位置する発光物質層123(EML)と、前記発光物質層123と前記第1電極110の間に位置する正孔輸送層122(HTL)とを備える。
【0048】
そのとき、前記発光物質層123を構成するホスト物質は第1三重項エネルギーを有し、前記正孔輸送層122を構成する物質は前記第1三重項エネルギーより大きい第2三重項エネルギーを有する。例えば、前記第2三重項エネルギーは前記第1三重項エネルギーより0.1eV以上大きくても良い。
【0049】
したがって、陽極の前記第1電極110から注入された正孔と陰極の前記第2電極130から注入された電子が前記発光物質層123で結合して形成されるエキシトンのエネルギーは、前記正孔輸送層122に遷移せず、前記発光物質層123内に十分に留まり、発光する。その結果、有機発光ダイオードDの発光効率が向上する。
【0050】
即ち、本発明の第1実施例に係る有機発光ダイオードにおけるエネルギー準位を説明するための
図5を参照すると、発光物質層(EML)は第1三重項エネルギー(T1)を有し、正孔輸送層(HTL)は前記第1三重項エネルギー(T1)より大きい第2三重項エネルギー(T2)を有する。前記発光物質層(EML)と前記正孔輸送層(HTL)の三重項エネルギーの差はエネルギーバリアとなり、前記発光物質層(EML)のエキシトンエネルギーが前記正孔輸送層(HTL)に遷移することを防止または減少させる。
【0051】
例えば、前記発光物質層123のホスト物質は、下記化学式1で表される物質であっても良い(三重項エネルギー=2.66eV)。
【0052】
【化1】
【0053】
また、前記正孔輸送層122の物質は、下記化学式2または化学式3で表される物質であっても良い。
【0054】
【化2】
【0055】
【化3】
【0056】
前記化学式2及び化学式3の正孔輸送層物質は、高い三重項エネルギー(化学式2の物質の三重項エネルギー=2.80eV、化学式3の物質の三重項エネルギー=2.82eV)を有し、正孔輸送特性も優れている。したがって、正孔輸送特性が低下することなく、発光物質層123から正孔輸送層122にエキシトンエネルギーが遷移することを防止または減少させることにより、発光効率を大きく向上させることができる。
【0057】
再び
図4を参照すると、前記有機発光ダイオードDは、前記発光物質層123と前記第2電極130の間に位置する電子輸送層124(ETL)と、前記正孔輸送層122と前記第1電極110の間に位置する正孔注入層121(HIL)と、前記電子輸送層124と前記第2電極130の間に位置する電子注入層125(EIL)とを更に備えることができる。
【0058】
前記電子輸送層124を構成する物質の三重項エネルギーも前記発光物質層のホスト物質の三重項エネルギー(
図5のT1)より大きいと、前記発光物質層123のエキシトンエネルギーが前記電子輸送層124に遷移することを防止または減少させることができる。
【0059】
しかし、発光物質層123における発光領域は、前記正孔輸送層122側に偏って形成されるため、前記電子輸送層124に遷移するエキシトンエネルギーは、前記正孔輸送層122に遷移するエキシトンエネルギーより小さい。一方、前記電子輸送層124を構成する物質の三重項エネルギーが増加すると電子輸送特性が低下する傾向がある。したがって、前記電子輸送層124を構成する物質の三重項エネルギーは、前記発光物質層123を構成するホスト物質の三重項エネルギー(T1)との関係に制限を設けない。
【0060】
図6は、本発明の第2実施例に係る有機発光ダイオードの概略的な断面図である。
【0061】
図6に示すように、本発明の第2実施例に係る有機発光ダイオードDは、陽極の第1電極210と、前記第1電極210と離隔する陰極の第2電極230と、前記第1電極210と前記第2電極230の間に位置する第1発光物質層223a(EML1)と、前記第1発光物質層223aと前記第1電極210の間に位置する正孔輸送層222(HTL)と、前記第1発光物質層223aと前記第2電極230の間に位置する第2発光物質層223b(EML2)とを備える。
【0062】
そのとき、前記第1発光物質層223aを構成する第1ホスト物質は第1三重項エネルギーを有し、前記正孔輸送層222を構成する物質は前記第1三重項エネルギーより大きい第2三重項エネルギーを有する。また、前記第2発光物質層223bを構成する第2ホスト物質は前記第1三重項エネルギーより大きい第3三重項エネルギーを有する。例えば、前記第2及び第3三重項エネルギーのそれぞれは、前記第1三重項エネルギーより0.1eV以上大きくても良い。
【0063】
前述のように、陽極の前記第1電極210から注入された正孔と陰極の前記第2電極230から注入された電子は前記第1発光物質層223aで結合し、エキシトンを形成する。即ち、前記第1発光物質層223aが発光領域となり、前記第2発光物質層223bは補助発光物質層として働く。
【0064】
前記正孔輸送層222物質の第2三重項エネルギーと前記第2発光物質層223bの第2ホスト物質の第3三重項エネルギーが、発光領域である前記第1発光物質層223aの第1ホスト物質の第1三重項エネルギーより大きいため、前記第1発光物質層223aで形成されたエキシトンのエネルギーは、前記正孔輸送層222と前記第2発光物質層223bに遷移せず、前記第1発光物質層223a内に十分に留まり、発光する。その結果、有機発光ダイオードDの発光効率が向上する。
【0065】
本発明の第2実施例に係る有機発光ダイオードにおけるエネルギー順位を説明するための
図7を参照すると、第1発光物質層(EML1)は第1三重項エネルギー(T1)を有し、正孔輸送層(HTL)は前記第1三重項エネルギー(T1)より大きい第2三重項エネルギー(T2)を有する。また、第2発光物質層(EML2)は前記第1三重項エネルギー(T1)より大きい第3三重項エネルギー(T3)を有する。
【0066】
前記第1発光物質層(EML1)と前記正孔輸送層(HTL)及び前記第2発光物質層(EML2)との三重項エネルギーの差はエネルギーバリアとなり、前記第1発光物質層(EML1)のエキシトンエネルギーが前記正孔輸送層(HTL)及び前記第2発光物質層に遷移することを防止または減少させる。
【0067】
例えば、前記第1発光物質層223aのホスト物質は、前記化学式1で表される物質であっても良く、前記正孔輸送層222の物質は、前記化学式2または化学式3で表される物質であっても良い。
【0068】
また、前記第2発光物質層223bのホスト物質は、前記化学式2または化学式3で表される物質であっても良い。
【0069】
再び
図6を参照すると、前記有機発光ダイオードDは、前記第2発光物質層223bと前記第2電極230の間に位置する電子輸送層224(ETL)と、前記正孔輸送層222と前記第1電極210の間に位置する正孔注入層221(HIL)と、前記電子輸送層224と前記第2電極230の間に位置する電子注入層225(EIL)とを更に備えることができる。
【0070】
図8は、本発明の実施例に係る有機発光ダイオード表示装置の概略的な断面図である。
【0071】
図8に示すように、有機発光ダイオード表示装置100は、第1及び第2基板101、160と、第1基板101の上部に設けられるスイッチング薄膜トランジスタ(不図示)と、駆動薄膜トランジスタ(Td)と、発光ダイオードDとを備える。前記第1基板101と前記第2基板160の間の前面には、シール材150を設けることができる。前記第1基板101及び前記第2基板160は互いに向かい合い、離隔している。
【0072】
互いに向かい合い、離隔する第1及び第2基板101、160は複数の画素領域Pを含む。第1基板101は下板、TFT基板またはバックプレーンと呼ばれ、第2基板160はカプセル化基板と呼ばれることもある。
【0073】
具体的に、第1基板101の上部にはゲート配線(不図示)が第1方向に延長して設けられ、前記駆動薄膜トランジスタ(Td)のゲート電極102が設けられる。ゲート配線及びゲート電極102の上部にはゲート絶縁膜104が設けられる。
【0074】
図面に示していないが、前記ゲート配線から延長するスイッチング薄膜トランジスタのゲート電極は、前記第1基板101上に設けられる。
【0075】
前記ゲート電極102に対応するゲート絶縁膜104の上部には半導体層106が設けられる。前記半導体層106は酸化物半導体層であっても良い。その場合、前記酸化物半導体層を保護するためのエッチング防止層(不図示)を設けることができる。また、スイッチング薄膜トランジスタのゲート電極にも対応して半導体層が設けられる。
【0076】
前記半導体層106の両端にはそれぞれソース電極108とドレイン電極109が設けられる。ゲート絶縁膜104の上部にはゲート配線と交差し、複数の画素領域を定義するデータ配線(不図示)が設けられる。また、前記データ配線と平行に離隔するパワー配線(不図示)が設けられ、前記ソース電極108をパワー配線に接続することができる。
【0077】
図面に示していないが、スイッチング薄膜トランジスタの半導体層の両端にソース電極及びドレイン電極が設けられる。そのとき、スイッチング薄膜トランジスタのソース電極はデータ配線に接続し、スイッチング薄膜トランジスタのドレイン電極は駆動薄膜トランジスタのゲート電極に接続することができる。
【0078】
ゲート電極102と、酸化物半導体層106と、ソース電極108と、ドレイン電極109は、駆動薄膜トランジスタ(Td:driving thin film transistor)を構成する。
【0079】
スイッチング薄膜トランジスタ及び駆動薄膜トランジスタ(Td)の上部には保護層140が設けられ、前記保護層140は前記ドレイン電極109を露出するドレインコンタクトホール143を含む。
【0080】
そして、前記保護層140の上部には第1電極110が設けられるが、第1電極110はドレインコンタクトホール142を介し、ドレイン電極109に接続される。
【0081】
前記保護層140上には、前記第1電極110の縁部を覆うバンク144が設けられる。前記バンク144は、第1電極110の中央部を露出する開口部を含む。
【0082】
バンク144の上部には開口部を介して第1電極110と接触する発光層120が設けられ、発光層120の上部には第2電極130が設けられる。
【0083】
第1電極110と、発光層120と、第2電極130は発光ダイオードDを構成する。前記第1及び第2電極120、130に電圧が印加されると、前記発光層120から光が放出され、前記第1電極110または前記第2電極130を通じて映像が表示される。前記第1電極110はアノードであり、前記第2電極130はカソードであっても良い。
【0084】
前記第2電極130の上部にはシール材150が設けられる。前記シール材150により、第1及び第2基板101、160が貼り合わされ、外部からの水分や汚染物質を防止すると共に外部からの衝撃を吸収する働きをする。
【0085】
図4に示すように、前記有機発光層120は、発光物質層123と、前記発光物質層123と前記第1電極110の間に位置する正孔輸送層122とを備えることができる。
【0086】
そのとき、前記発光物質層123を構成するホスト物質は第1三重項エネルギーを有し、前記正孔輸送層122を構成する物質は前記第1三重項エネルギーより大きい第2三重項エネルギーを有する。
【0087】
一方、
図6に示すように、有機発光層120は記第1発光物質層223a(EML1)と、前記第1発光物質層223aと前記第1電極210の間に位置する正孔輸送層222(HTL)と、前記第1発光物質層223aと前記第2電極230の間に位置する第2発光物質層223b(EML2)を備えることができる。
【0088】
そのとき、前記第1発光物質層223aを構成する第1ホスト物質は第1三重項エネルギーを有し、前記正孔輸送層222を構成する物質は前記第1三重項エネルギーより大きい第2三重項エネルギーを有する。また、前記第2発光物質層223bを構成する第2ホスト物質は前記第1三重項エネルギーより大きい第3三重項エネルギーを有する。
【0089】
かかる構造により、エキシトンエネルギーが発光領域である発光物質層123から正孔輸送層122に遷移したり、第1発光物質層223aから正孔輸送層222または第2発光物質層223bに遷移したりすることが防止される。したがって、有機発光ダイオードDの発光効率が向上し、有機発光ダイオード表示装置100の消費電力が減少する効果を奏する。
【0090】
一方、有機発光ダイオードは、陽極と陰極の間に電荷生成層が設けられる。前記陽極と前記電荷生成層との間及び前記電荷生成層と前記陰極との間にそれぞれ正孔輸送層と第1及び/または第2発光物質層が設けられる構造を有することができる。本発明において正孔輸送層を構成する物質の三重項エネルギーと第1及び/または第2発光物質層のホスト物質の三重項エネルギーの関係は、前記のような構造にも適用できる。
【0091】
以下、様々な比較例と実験例を通じ、本発明の有機発光ダイオードの特性を説明する。
【0092】
比較例1
ガラス基板上にインジウム・チン・オキサイド(ITO)を蒸着して第1電極を形成し、第1電極上に下記化学式4で表される物質(HAT−CN)を用いて正孔注入層(50Å)を形成した。
【0093】
次に、前記化学式2で表される物質(HTL1)を用いて正孔輸送層(400Å)を形成し、前記化学式2で表される物質をホスト物質(HOST1)にし、下記化学式5で表される物質(Dopant1)をドープして第1発光物質層(150Å)を形成した。その後、前記HOST1に下記化学式6で表される物質(Dopant2)をドープし、第2発光物質層(150Å)を形成した。
【0094】
次に、下記化学式7で表される物質を用いて電子輸送層(250Å)を形成し、LiFとAlをそれぞれ用いて正孔注入層(10Å)と第2電極を形成した。
【0095】
比較例2
比較例1と同一構造に形成するが、正孔輸送層を下記化学式8で表される物質(HTL2)で形成した。
【0096】
実験例1
比較例1と同一構造に形成するが、第1発光物質層を前記化学式1で表される物質(HOST2)で形成した。
【0097】
前記比較例1・2及び実験例1における素子の正孔輸送層(HTL)物質と、それの三重項エネルギー(T)と、第1及び第2発光物質層(EML1、EML2)のホスト物質と、それの三重項エネルギー及び素子の外部量子効率(EQE)を表1に記載した。
【0098】
【表1】
【0099】
表1で分かるように、正孔輸送層物質と、第1発光物質層のホスト物質と、第2発光物質層のホスト物質とが同じ三重項エネルギーを有する場合(比較例1)と比較すると、正孔輸送層物質が第1発光物質層のホスト物質より小さい三重項エネルギーを有する場合(比較例2)、発光効率が減少するが、正孔輸送層物質が第1発光物質層のホスト物質より大きい三重項エネルギーを有する場合(実験例1)、発光効率が増加した。
【0100】
比較例3
ガラス基板上にITOを蒸着して第1電極を形成し、第1電極上にHAT−CNを用いて正孔注入層(50Å)を形成した。
【0101】
次に、前記化学式1で表される物質(HTL3)を用いて正孔輸送層(400Å)を形成し、HOST2にDopant1をドープして第1発光物質層(150Å)を形成した。その後、前記HOST2に前記Dopant1をドープし、第2発光物質層(150Å)を形成した。
【0102】
次に、下記化学式7で表される物質を用いて電子輸送層(250Å)を形成し、LiFとAlをそれぞれ用いて正孔注入層(10Å)と第2電極を形成した。
【0103】
実験例2
比較例3と同一構造に形成するが、第2発光物質層でDopant1のドープ濃度を12%にした。
【0104】
実験例3
実験例2と同一構造に形成するが、第2発光物質層でDopant1のドープ濃度を20%に増加させた。
【0105】
実験例4
実験例3と同一構造に形成するが、第2発光物質層の厚さを200Åに増加させた。
【0106】
前記比較例3及び実験例2・3・4における素子の正孔輸送層(HTL)物質と、それの三重項エネルギー(T)と、第1及び第2発光物質層(EML1、EML2)のホスト物質と、それの三重項エネルギー及び素子の外部量子効率(EQE)を表2に記載した。
【0107】
【表2】
【0108】
表2で分かるように、正孔輸送層物質と、第1発光物質層のホスト物質と、第2発光物質層のホスト物質とが同じ三重項エネルギーを有する場合(比較例3)と比較すると、第2発光物質層のホスト物質が第1発光物質層のホスト物質より大きい三重項エネルギーを有する場合(実験例2・3・4)、発光効率が増加した。また、ドープ率や第2発光物質層の厚さが変わっても三重項エネルギーの関係により、発光効率の増加は保たれた。
【0109】
比較例4
ガラス基板上にITOを蒸着して第1電極を形成し、第1電極上にHAT−CNを用いて正孔注入層(50Å)を形成した。
【0110】
次に、HTL3を用いて正孔輸送層(400Å)を形成し、前記化学式3で表される物質をホスト物質(HOST3)にし、Dopant1をドープして第1発光物質層(150Å)を形成した。その後、前記HOST3にDopant1をドープし、第2発光物質層(150Å)を形成した。
【0111】
次に、下記化学式7で表される物質を用いて電子輸送層(250Å)を形成し、LiFとAlをそれぞれ用いて正孔注入層(10Å)と第2電極を形成した。
【0112】
実験例5
比較例4と同一構造に形成するが、第2発光物質層にHOST1を使用し、その厚さを200Åに増加させた。
【0113】
実験例6
実験例5と同一構造に形成するが、第2発光物質層でDopant1のドープ濃度を12%に減少させた。
【0114】
前記比較例4及び実験例5・6における素子の正孔輸送層(HTL)物質と、それの三重項エネルギー(T)と、第1及び第2発光物質層(EML1、EML2)のホスト物質と、それの三重項エネルギー及び素子の外部量子効率(EQE)を表3に記載した。
【0115】
【表3】
【0116】
表3で分かるように、正孔輸送層物質と、第2発光物質層のホスト物質が第1発光物質層のホスト物質より小さい三重項エネルギーを有する場合(比較例4)と比較すると、第2発光物質層のホスト物質が第1発光物質層のホスト物質より大きい三重項エネルギーを有してもその差が小さければ(実験例5)、発光効率は大きく増加しない(減少分は厚さ変化によるもの)。
【0117】
また、ドープ濃度を変化しても(実験例6)、発光効率は変化しない。
【0118】
比較例5
ガラス基板上にITOを蒸着して第1電極を形成し、第1電極上にHAT−CNを用いて正孔注入層(50Å)を形成した。
【0119】
次に、HTL2を用いて正孔輸送層(400Å)を形成し、HOST2にDopant1をドープして発光物質層(300Å)を形成した。
【0120】
次に、下記化学式7で表される物質を用いて電子輸送層(250Å)を形成し、LiFとAlをそれぞれ用いて正孔注入層(10Å)と第2電極を形成した。
【0121】
完成した素子の外部量子効率は、23.3%であった。
【0122】
実験例7
比較例5と同一に素子を形成するが、正孔輸送層をHTL1で形成した。
【0123】
完成した素子の外部量子効率は、25.8%であった。
【0124】
比較例5の素子においては、正孔輸送層物質の三重項エネルギー(2.60eV)が発光物質層のホスト物質の三重項エネルギー(2.66eV)より小さい一方、実験例7の素子においては、正孔輸送層物質の三重項エネルギー(2.82eV)が発光物質層のホスト物質の三重項エネルギー(2.66eV)より大きい。その結果、素子の外部量子効率が約10.7%向上した。
【0125】
即ち、正孔輸送層を、発光物質層のホスト物質より大きい三重項エネルギーを有する物質で形成することにより、発光物質層のエキシトンエネルギーが発光物質層に遷移することが防止され、または減少し、素子の発光効率が向上した。
【0126】
【化4】
【0127】
【化5】
【0128】
【化6】
【0129】
【化7】
【0130】
【化8】
【0131】
上記においては本発明の望ましい実施例を参照して説明したが、特許請求の範囲に記載した本発明の精神及び要旨を逸脱しない範囲内で種々に変更し、実施できることは、該当技術分野の通常の知識を有する者にとって自明である。