特許第5992604号(P5992604)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5992604ハイブリッド電気車両のエネルギー管理システムおよび燃料節約方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992604
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】ハイブリッド電気車両のエネルギー管理システムおよび燃料節約方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/14 20160101AFI20160901BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20160901BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20160901BHJP
   B60K 6/54 20071001ALI20160901BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20160901BHJP
   B60W 10/30 20060101ALI20160901BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
   B60W20/14
   B60W10/26 900
   B60K6/48ZHV
   B60K6/54
   B60W10/08 900
   B60W10/30 900
   B60L11/18 A
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-510648(P2015-510648)
(86)(22)【出願日】2012年5月8日
(65)【公表番号】特表2015-518451(P2015-518451A)
(43)【公表日】2015年7月2日
(86)【国際出願番号】EP2012001975
(87)【国際公開番号】WO2013167149
(87)【国際公開日】20131114
【審査請求日】2015年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】500277711
【氏名又は名称】ボルボ ラストバグナー アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【弁理士】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(74)【代理人】
【識別番号】100116757
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 英雄
(74)【代理人】
【識別番号】100123216
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 祐一
(72)【発明者】
【氏名】レンネヴィ,イェルケル
(72)【発明者】
【氏名】アクセルッソン,トビアス
【審査官】 田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−035349(JP,A)
【文献】 特開2012−001168(JP,A)
【文献】 特開2009−090735(JP,A)
【文献】 特開2009−196404(JP,A)
【文献】 特開2001−054202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 − 20/50
B60K 6/20 − 6/547
B60L 1/00 − 3/12
B60L 7/00 − 13/00
B60L 15/00 − 15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両駆動と回生制動のための電気機械(2)、回生エネルギーを蓄えるための蓄電装置ESS(4)および、前記電気機械(2)とは異なる車両電気補助装置(10〜20)の少なくとも1つを備えるハイブリッド電気車両(30)のエネルギー管理システム(1)であって、
回生エネルギー推定増加量が予測前方下り坂走行(32)中に回生され前記ESS(4)に蓄えられるように、前記予測前方下り坂走行(32)中での回生エネルギー推定増加量の見込みを設定するにあたり、前記ESS(4)の充電レベルを低下させる目的で、前記車両電気補助装置(10〜20)の少なくとも1つに前記ESS(4)から電力を送るためにエネルギー管理コントローラ(9)が設けられており、前記予測前方下り坂走行(32)中の回生制動で発生する回生エネルギー(43)の推定量は、前記下り坂走行(32)中に車両電気補助装置(10〜20)の少なくとも1つに電力を供給することを意図している第1の部分と、前記ESS(4)に蓄えることを意図している第2の部分とに分割することを特徴とし、
そして、前記回生エネルギー(43)の推定量の前記第2の部分が、前記ESS(4)最大許容充電容量までの推定残量(48)を超えるならば、回生エネルギー推定増加量の前記見込みを設定することを特徴とする、エネルギー管理システム(1)。
【請求項2】
回生エネルギー推定増加量の前記見込みを設定する場合は、前記予測前方下り坂走行(32)の開始地点までの、予測前方移動経路の高さ情報も考慮することを特徴とする、請求項1に記載のエネルギー管理システム(1)。
【請求項3】
前記ESS(4)の最大許容充電容量までの前記推定残量(48)は、前記予測前方下り坂走行(32)の開始地点での前記ESS(4)の推定充電状態SOCを考慮して決めることを特徴とする、請求項1または2に記載のエネルギー管理システム(1)。
【請求項4】
前記車両電気補助装置(10〜20)の少なくとも1つは、暖房システム(10)、換気システム(11)、空調システム(12)、始動バッテリー(13)、エアコンプレッサー(14)、排気物削減システム(15)、エンジン冷房システム(16)、エンジン給油システム(17)、ステアリングシステム(18)、油圧又は動力エネルギー貯蔵システム(19,20)のいずれかで構成されることを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載のエネルギー管理システム(1)。
【請求項5】
前記車両電気補助装置(10〜20)の少なくとも1つは、低電圧網(6)、特に6〜50VのDC網に接続するか、高電圧網(7)、特に100〜1000VのDC網に接続することを特徴とする、請求項に記載のエネルギー管理システム(1)。
【請求項6】
前記予測前方下り坂走行(32)は、車両前方移動経路予測システム(8)によって予測され、前記予測システム(8)は、移動経路高さ情報と組み合わせたGPS、又は移動経路高さ情報含みの移動経路認識システム、又はそれらの組み合わせのシステムで構成することができることを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載のエネルギー管理システム(1)。
【請求項7】
前記予測前方下り坂走行(32)の開始地点が前記車両から一定距離内である場合に、前記予測前方下り坂走行(32)を設定しておくことを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載のエネルギー管理システム(1)。
【請求項8】
前記ESS(4)の充電レベルを低下させる目的で、前記ESS(4)から前記車両電気補助装置(10〜20)の少なくとも1つに電気エネルギーを供給するにあたり、前記エネルギー管理コントローラ(9)は、前記車両電気補助装置(10〜20)の少なくとも1つの通常制御を無効にすることを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載のエネルギー管理システム(1)。
【請求項9】
車両駆動と回生制動のための電気機械(2)、回生エネルギーを蓄えるための蓄電装置ESS(4)及び前記電気機械(2)とは異なる車両電気補助装置(10〜20)の少なくとも1つを備えているハイブリッド電気車両(30)の燃料節約方法であって、
予測前方下り坂走行(32)中に、回生エネルギー推定増加量の見込みを設定するステップと、
回生エネルギー推定増加量は前記予測前方下り坂走行(32)中に回生され前記ESS(4)に蓄えられるように、前記ESS(4)の充電レベルを低下させる目的で、前記ESS(4)から前記車両電気補助装置(10〜20)の少なくとも1つに電力を送るステップと、
前記予測前方下り坂走行(32)中の回生制動で発生する回生エネルギー(43)の推定量は、前記下り坂走行(32)中に車両電気補助装置(10〜20)の少なくとも1つに電力を供給することを意図している第1の部分と、前記ESS(4)に蓄えることを意図している第2の部分とに分割する追加のステップと、
前記回生エネルギー(43)の推定量の前記第2の部分が、前記ESS(4)最大許容充電容量までの推定残量(48)を超えるならば、回生エネルギー推定増加量の前記見込みを設定する追加のステップと、を有することを特徴とする、燃料節約方法。
【請求項10】
前記ESS(4)の最大許容充電容量までの前記推定残量(48)は、前記予測前方下り坂走行(32)の開始地点での前記ESS(4)の推定充電状態SOCを考慮して決める追加ステップを特徴とする、請求項に記載の燃料節約方法。
【請求項11】
前記ESS(4)の充電レベルを低下させる目的で、前記ESS(4)から電気エネルギーを前記車両電気補助装置(10〜20)の少なくとも1つに供給するにあたり、前記エネルギー管理コントローラ(9)は、前記車両電気補助装置(10〜20)の少なくとも1つの通常制御を無効にすることができる追加ステップを特徴とする、請求項9または10に記載の燃料節約方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両駆動と回生制動のための電気機械、回生エネルギーを蓄えるための蓄電装置および、前記電気機械とは異なる、少なくとも1つの車両電気補助装置からなるハイブリッド電気車両のエネルギー管理システムに関する。また、本発明は、前記ハイブリッド電気車両の燃料節約方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド電気車両のエネルギー管理システムの全体的な目的は、電力消費と回生電力を管理し、全体の燃料消費量と排気物質を削減して、車両のドライバビリティを向上させることである。特許文献1は、ハイブリッド電気車両の予測エネルギー管理システムを示す。このシステムは、燃費をさらによくして排気物質をなくするために、電動機およびエンジンを操作する電力コマンドを予測運転サイクルと地形に基づき選定する。しかしながら、燃費とエンジン排気に関してさらなる改善が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0274553号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、燃費とエンジン排気に関してさらに改善をもたらす、ハイブリッド電気車両の発明によるエネルギー管理システムを提供することを目的とする。この車両は、車両駆動と回生制動のための電気機械、回生エネルギーを蓄えるための蓄電装置(ESSと称する)および、前記電気機械とは異なる車両電気補助装置を少なくとも1つ備えている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、請求項1の特徴部の機能によって達成する。ここでは、エネルギーの増加量が、予測前方下り坂走行中に、回生されて前記ESSに蓄えられるように、前記予測前方下り坂走行中での回生エネルギー増加量の見込みを設定するにあたり、前記ESSの充電レベルを低下させる目的で、エネルギー管理コントローラが、前記ESSから前記電気補助装置の少なくとも1つに電力を送るために設けられる。
【0006】
また、前記目的は、発明による、ハイブリッド電気車両の燃料節約方法によって達成する。この方法は、予測前方下り坂走行中の回生エネルギー増加量の見込みを設定するステップと、それに続いて、前記予測前方下り坂走行中にエネルギーの増加量が回生されて前記ESSに蓄えられるように、前記ESSの充電レベルを低下させる目的で、前記ESSから前記電気補助装置の少なくとも1つに電力を送るステップとで構成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によるシステムと方法は、車両の回生制動中に回生エネルギー量を増加させるための、予測前方移動経路の知的活用に基づいている。この発明による解決方法がないと、下り坂走行中にESSがフル充電になり、車両のブレーキ操作の必要性が増えるという恐れがある。さらに、本発明によるシステムでは、ESSの充電レベルを低下するための電気機械の操作を、予測の下り坂に到着するまでは必要とせず、その代わりに、前記車両電気補助装置の少なくとも1つに前記ESSから電力を送るようになっている。このように、本発明による解決方法では、移動経路に関係なく、ESSの充電レベルを低下させるための代替の解決法が得られる。また、本発明による解決方法から、ESSからの電気エネルギーを供給することによって、現在状況及びこの先の予測状況に応じ、どの電力消費装置を使用するかの選択肢を増やすことのできる複数の電気補助装置が得られる。また、この複数の電気補助装置により、十分に高い率でESSの充電レベルを低下させるのに必要となる可能性のある比較的大きな電力消費率を容易にする。
【0008】
さらに有利な点は、従属項の一つ又はいくつかの機能を実施することで実現する。前記予測前方下り坂走行中の回生制動で発生する回生エネルギーの推定量が、ESS最大許容充電容量までの推定残量を超えているならば、好ましくは、回生エネルギー増加量の見込みを設定する。回生エネルギーの推定量とESS最大許容充電容量までの推定残量を比較することで、エネルギー管理対策を決定するための効果的な手段が得られる。ESSの現在の充電状態(SOCと称する)の予測は、バッテリー管理装置によって行われる。
【0009】
前記予測前方下り坂走行中の回生制動で発生する回生エネルギーの推定量は、好ましくは、下り坂走行中に車両電気補助装置の少なくとも1つに電力を供給することを意図している第1の部分と、前記ESSに蓄えることを意図している第2の部分とに分割される。そして、前記回生エネルギーの第2の部分が、ESS最大許容充電容量までの推定残量を超えるならば、好ましくは、回生エネルギー増加量の見込みを設定する。車両電気補助装置の少なくとも1つを回生エネルギーで直接稼動すると、ESSの充電・放電時の変換ロスが軽減されるため、燃費が改善される。また、回生エネルギーを直接消費する装置の種類及び数に関して選択肢が増える。
【0010】
また、回生エネルギー増加量の前記見込みを設定する場合は、好ましくは、前記予測前方下り坂走行の開始地点までの、予測前方移動経路の高さ情報を考慮する。そうしない場合、予測下り坂前の登り経路区間中に電気機械による追加駆動を行うことが、前記予測下り坂が始まる地点でのESSの充電状態について間違った推測をもたらす可能性がある。
【0011】
ESS最大許容充電容量までの推定残量は、好ましくは、前記予測前方下り坂走行の開始地点での前記ESSの推定充電状態を考慮して決める。
【0012】
車両電気補助装置の少なくとも1つは、好ましくは、暖房システム、換気システム、空調システム、始動バッテリー、エアコンプレッサー、排気物削減システム、エンジン冷房システム、エンジン給油システム、ステアリングシステム、油圧又は動力エネルギー貯蔵システムのいずれかで構成する。
【0013】
車両電気補助装置の少なくとも1つは、好ましくは、低電圧網、特に6〜50V網に接続する。あるいは、好ましくは、高電圧網、特に100〜1000V網に接続する。この低電圧網は、比較的低電力用途に適している一方、高電圧網は、比較的高電力用途に適している。
【0014】
好ましくは、前方の下り坂走行は、車両の前方移動経路予測システムによって予測する。このシステムは、移動経路高さ情報と組み合わせたGPS、又は移動経路高さ情報含みの移動経路認識システム、又はそれらの組み合わせのシステムを備えることができる。
【0015】
好ましくは、予測の前方下り坂走行は、その開始地点が車両から一定距離内である場合に、設定する。その距離は、例えば2kmまで、好ましくは10kmまで、さらに好ましくは、20kmまでであってもよい。
【0016】
ESSの充電レベルを低下させる目的で、前記ESSから電気エネルギーを前記電気補助装置の少なくとも1つに供給するにあたり、エネルギー管理コントローラは、好ましくは、前記車両電気補助装置の少なくとも1つの通常制御を無効にする。いくつかの車両電気補助装置は、通常制御中に、周期的に作動するか、目標値を得るために作動するか、あるいは、所定の範囲にあるように作動する。しかしながら、通常運転の時間は、エネルギー管理システムが必要とする運転の時間と一致することはめったにない。したがって、エネルギー管理システムでは、通常制御を無効にできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明は、以下の図面を参照して詳細に説明する。
図1図1は、本発明によるエネルギー管理システムの模式全体図を示す。
図2図2は、本発明の第1エネルギー節約対策による簡略化した移動経路例の発明による効果を示す。
図3図3は、本発明の第2エネルギー節約対策による簡略化した移動経路例の発明による効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の様々な態様について、発明を限定しないで図示するための添付図面と併せて説明する。図面中の同様な符号は、同様な構成要素を示し、これらの態様の変更は具体的に示された態様に限定されるものではなく、本発明の他の変更したものに適用できる。
【0019】
図1は、本発明によるエネルギー管理システム1を実現するために用いるシステム模式図の例を示す。エネルギー管理システム1は、ハイブリッド電気車両(HEVと称する)用に設計されている。HEVの特徴は、通常、燃焼機関3と電気機械2による推進力を組み合わせたドライブトレインにある。開示された、本発明による実施の形態では、並列ハイブリッドドライブトレインシステムを示しており、燃焼機関3は、第1の駆動軸22を介して、回転自在に電気機械2に接離できる。続いて、電気機械2は、トランスミッション24と第2の駆動軸26を介して、回転自在に後部車輪及び車軸23に接続される。ただし、本発明は、並列ハイブリッドドライブトレインシステムに限定するものでない。直列または直並列のハイブリッドドライブトレインシステムで同様に実現できる。
【0020】
また、HEVは、パワーエレクトロニクス5を介して電気機械2と電気的に接続された蓄電システムESS4を備える。このパワーエレクトロニクス5は、ESS4及び電気機械2へ供給された電力及び、ここから受け取った電力を変換するために設けられる。パワーエレクトロニクス5は、例えば、具体的な設計によって、DC/DCコンバータ及び/又はDC/ACインバータで構成できる。ESSは、電気エネルギーを蓄えることができる、一つ又は複数のバッテリー及び/又は超コンデンサー等で構成できる。さらに、電気機械2は、発電機として作動できるようにすることで、車両の回生制動が得られる。これにより、車両の動的エネルギーは、電気エネルギーに変換される。この電気エネルギーは、エネルギー貯蔵のためにESS4に供給できるし、あるいは他の電気機器類に直接供給するために使用できる。さらに、エネルギー管理システム1は、電気機械2とは異なる車両電気補助装置を少なくとも1つ備える。車両電気補助装置とは、例えば、電気ヒータを備えた暖房システム10、電気ファンを備えた換気システム11、電動コンプレッサーを備えた空調システム12、好ましくは12、24又は48ボルトの始動バッテリー、車両圧縮空気システムの電動エアコンプレッサー14、電気ヒータを備えた排気物削減システム15、電動ポンプを備えたエンジン冷房システム16、電動ポンプを備えたエンジン給油システム17、電動ポンプを備えた電動式パワーステアリングシステム18、あるいは油圧蓄圧器またはフライホイールシステムなどの油圧又は動力エネルギー貯蔵システム19、20である。
【0021】
エネルギー管理コントローラ9は、ESS4の充電レベルを低下させるために、ある車両電気補助装置の通常制御を無効にできる。運転台及び/又は冷蔵・冷凍貨物スペースの実温度が幾分ゆっくりと変化するために、キャビン環境の変化に対するドライバーの監視は最小限になることを考慮して、エネルギー管理コントローラ9は、例えば、運転台及び/又は冷蔵・冷凍貨物スペースの暖房又は冷房を一時的に強めることを決定できる。また、エネルギー管理コントローラ9は、始動バッテリー13の充電レートを一時的に高め、エアタンクの最大圧までエアコンプレッサー14をさらに作動させ、排気物削減システム15の非計画的回生運転などを行うことを決定できる。
【0022】
開示された実施の形態による車両は、直流低電圧網6(直流低電圧バスとも称する)、直流高電圧網7(直流高電圧バスとも称する)及び前記の網6,7とつながっているDC/DCコンバータ21を備えている。高出力DC/DCコンバータは、主にパワートレインに使用の車両の低電圧網と高電圧網間とを電気的に接続する。したがって、DC/DCコンバータ21は、前記電圧網6,7間の電圧差にもかかわらず、これらの網間で電気エネルギーを転送できる。低電圧網6は、一般に、ほぼ6Vから50Vの範囲での電圧を供給し、小電力需要の用途に電力供給するのに適している。そして、高電圧網7は、一般に、ほぼ100Vから1000Vの範囲での電圧を供給し、駆動と電力回生用の電気機械2に電力を供給するために使用するパワーエレクトロニクス5などの、高電力用途に適している。開示された実施の形態では、何台かの車両電気捕助装置10〜18は、低電圧網6に接続される。一方、他の装置19,20は高電圧網7に接続される。ただし、ここでの図は例にすぎない。例えば、本システム構成で、さらに有利な面があると考えられるならば、もう一つの選択肢として、電動エアコンプレッサー14を高電圧網17に接続することができる。
【0023】
具体的には、本発明による当該システム1は、重量トラック、バスなどの重量荷車両に適しているが、乗用車などの他の車両にも使用できる。
【0024】
本発明概念は、車両の回生制動中の回生エネルギー量を増やすため、予測前方移動経路の知的活用に基づいている。この発明による解決方法がないと、回生制動をもっと利用できる間にも、ESS4がフル充電になる、すなわち、ESS4の充電状態SOCが最大許容レベルに達している、という恐れがある。それどころか、他の車両制動装置は、摩擦ブレーキ、抑制ブレーキのような電気機械2と入れ替える必要性が生じる可能性があり、そうでなければ、フル充電のESS4に蓄えることができない余分な回生電気エネルギーは、車両外部に設けられた熱素子で熱として単に消散することとなる。
【0025】
先行技術として周知である車両移動経路予測システム8、及び車両移動経路予測システム8を実現するための二つの異なった代替例を、本発明によるエネルギー管理システム1用のものとして以下に示す。第1の代替案によれば、車両移動経路予測システム8は、移動経路の高さ情報と組み合わせたGPS装置を備えることができる。このGPSは、少なくとも道路の高さ及び地理的位置を地図上に示す。第2の代案によれば、自己学習式移動経路高さ情報システムを備えた移動経路認識システムが設けられる。このような自己学習システムでは、例えば、傾きセンサー及び/又はエンジン負荷によって地図上の推定位置及び道路の傾きを登録することで、はじめにデジタルマップを構築し、そして、前記システムでは、その後の移動中に現在の移動経路を認識することで前方下り坂走行のどれもが高い確度で予測できる。
【0026】
エネルギー管理コントローラ9は、エネルギー管理システム1の中心部である。エネルギー管理コントローラ9は、ESS4の現在のSOCと共に、車両移動経路予測システム8からの情報を受け取るために設けられ、そして少なくとも、予測前方下り坂走行中の回生エネルギー増加量の見込みを設定する情報を基盤にしている。例えば、前方下り坂走行中の回生制動で発生する回生エネルギーの推定量がESS4最大許容充電容量までの推定残量を超えるならば、回生エネルギー増加量の見込みを設定できる。もちろん、前記見込みについて、予測下り坂走行の開始地点までの移動経路中に再検討することもできる。エネルギー管理コントローラ9で考慮されている車両前方の距離に対して一定の制限を設けるように、このエネルギー管理コントローラ9を設定できる。制限は、キロメートルなどの距離、又は秒などの時間で設定できる。例えば、エネルギー管理コントローラ9は、車両から2km内、又は5km内又は10km内又は20km内地点で始まる前方下り坂走行を予測するためだけに反応するように設定できる。
【0027】
ESS4最大許容充電容量までの推定残量は、ESS4の最大許容充電容量と共に、ESS4の実際の推定SOCに基づいて決定できる。さらに、ESS4最大許容充電容量までの推定残量を決定する際は、現在位置から下り坂走行の開始地点までの移動経路のルート情報もまた考慮することができる。例えば、移動経路が、現在位置と予測前方下り坂走行の開始地点との間に登り坂区間を含んでいる場合は、電気機械2による追加駆動が必要になるために、ESS4のSOCを低下させる可能性があるので、前方下り坂走行中の回生制動で発生する回生エネルギーの推定量が、ESS4最大許容充電容量までの推定残量を超えることはない。他に、ESS4最大許容充電容量までの残量を推定する場合に考慮する可能性のあるものとして、車両電気補助装置10〜20の1つ又は複数のものに対する計画又は推定電力消費量がある。
【0028】
制御・通信線25は、エネルギー管理コントローラ9と、車両移動経路予測システム8、ESS4,パワーエレクトロニクス5、DC/DCコンバータ21、及び車両電気補助装置10〜20とを接続する。この制御・通信線25は、例えばCAN(車載ネットワーク)バスなどで実現できる。
【0029】
予測前方下り坂走行中での回生エネルギー量の増加が見込まれるとして設定するにあたり、予測前方下り坂走行地点に到着する前に、ESS4の充電レベルを低下させる目的で、車両電気補助装置10〜20の少なくとも1つに前記ESS4から電力を送るために、エネルギー管理コントローラが設けられる。したがって、この電気管理対策では、当該車両が車両ブレーキを掛けてESS4をフル充電にして斜面を下る状況にならないようにして、車両の動的エネルギーが回生されESS4に蓄えられないようにする。しかしながら、本発明によるエネルギー管理システム1によって、エネルギー増加量は、回生されて前記ESS4に蓄えることができる。
【0030】
図2に、第1エネルギー節約対策による移動経路例の本発明による効果を示す。この対策では、すべての回生エネルギーはESS4を充電するために使用される。車両30が、水平移動経路31を移動し、下り坂走行32地点に近づいている。時間tの直前に、ESS4のSOCは、第1レベル33で一定であり、これは最小許容充電レベル34と最大許容充電容量35、例えば、ESS4の全充電容量の30%と60%によって、それぞれ規定される範囲内である。時間tで、エネルギー管理コントローラ9は、予測前方下り坂走行32の距離及び高さデータの推定値と共に、一定の距離36、例えば10kmから始まる、前記予測前方下り坂走行32についての情報を、車両移動経路予測システム8から受けている。前記推定下り坂データ、推定回生効率と充電効率、及びESS4の現在のSOCに基づいて、エネルギー管理コントローラ9は、予測下り坂走行32の終了地点に対応する時間tに、ESS4のSOCについて2つの推定値37、38を発生する。
【0031】
図2に実線で示している第1の推定値37は、本発明概念なしの場合の、すなわち、予測前方下り坂走行32地点に到着する前にESS4の充電レベルを低下させる目的で、前記予測前方下り坂走行32地点に到着する前に、電気補助装置の少なくとも1つにESSからの電力転送を始めない場合の、SOCの推定経過に対応している。ここで、ESS4最大許容充電容量までの推定残量48は、最大許容充電容量35と前記第1レベル33でのESS4のSOCとの差異である。
【0032】
第1の推定値37によれば、当該SOCは、予測前方下り坂走行32の開始時点に対応する時間tまで、第1のSOCレベル33で一定である。この時点で、オーバースピード運転にしない目的で、電気機械2は、車両30の回生制動によるエネルギーの回生を始める。全回生エネルギーは、推定回生効率及び充電効率を考慮して、ESS4に転送するものとする。簡単にするため、ここではSOCの推定経過は経路直線39に沿うものとする。ESS4がその後さらに充電できない時間tに、最大許容蓄電容量35に到達するものとする。
主要摩擦ブレーキ、車両補助ブレーキによって、あるいは基板上の抵抗器などの形態の電力シンクにさらに回生したエネルギーを送ることによって、時間t後に車両30をさらに制動することができる。
【0033】
図2に破線で示している第2の推定値38は、本発明概念を役立てた際の、すなわち、予測前方下り坂走行32地点に到着する前にESS4の充電レベルを低下させる目的で、前記予測前方下り坂走行32地点に到着する前に、電気補助装置の少なくとも1つにESSからの電力転送を開始した際の、SOCの推定経過に相当している。前記電気補助装置の少なくとも1つへの電気エネルギーは、図2の下降勾配直線40で示されるように、ある一定のレベルで連続的に、又は断続的に、及び/又は、変動した電気転送レートで転送される。いずれの場合も特定のESS仕様、第1レベルSOC33、ESS温度、予測前方下り坂走行32の開始地点での目標SOC41などの項目によって決まる。一方、予測前方下り坂走行32の開始地点での目標SOC41は、前記下り坂走行32中の回生エネルギーによりESS4を全推定充電43することと共に、前記予測前方下り坂走行32終了地点での目標SOC42に基づいて決定される。
【0034】
第2の推定値38によれば、当該SOCは、時間tまで直線的に減少している。この時間は予測前方下り坂走行32の開始地点に対応しており、この時点で、電気機械2は、オーバースピード運転をしない目的で、車両30の回生制動によりエネルギーの回生を開始する。全回生エネルギーは、推定回生効率及び充電効率を考慮して、ESS4に転送するものとする。ここで、当該SOCの推定経過は、経路直線44に沿うものとする。下り坂走行32地点に到着するまでにESS4のSOCが低下するため、下り坂走行32終了地点に相当する時間tまでの回生エネルギーをESS4に転送することによって、車両エネルギー効率及び燃費を向上できる。
【0035】
上述のとおり、予測前方下り坂走行中の回生制動で発生する回生エネルギーの推定量が、ESS4最大許容蓄電容量までの推定残量を超えているならば、回生エネルギー増加量の見込みを設定する。図2で、予測前方下り坂走行中の回生制動で発生する回生エネルギーの推定量は、ESS4の全推定充電43に相当する。そして、ESS4最大許容充電容量までの推定残量48は、時間tでの最大許容充電容量35と第1レベルSOC33との差異に相当する。
【0036】
加えて、さらに有利な面として、回生エネルギー増加量の見込みを設定する場合は、前記予測前方下り坂走行32の開始地点、すなわち時点tとtとの間の移動経路36までの予測前方移動経路の高さ情報を考慮することができる。図2では、この移動経路36は平面であり、電気機械2の駆動運転がないことを示している。しかし、前記移動経路36は、例えば、登り坂区間、または他の種類の移動区間を含めることができる。他の区間では電気機械2の駆動運転があるものとする。この駆動運転でESS4のSOCは低下することになり、回生エネルギー増加量の見込みの設定に影響する。
【0037】
単に本発明による回生エネルギー推定増加量を説明するためだけのものであるが、充電中のSOCの推定経過に対応している経路直線39は、時間tからtまで延びる延伸勾配線45に続いている。したがって、第1の推定値37の時間tにおけるESS4の仮想SOC46は、充電が時間tで継続することができたとすれば、推定SOCに相当している。時間tは、ESS4が、最大許容充電容量35に到達が予測された時間に相当している。ここで、本発明による回生エネルギーの推定増加量47は、時間tにおけるESS4の仮想SOC46から最大許容充電容量35を差し引くことによって求められる。第1と第2の推定値37.38の充電中のSOCの推定経過に相当している経路直線39,45同士は、簡略化のため、平行である。
【0038】
上記のとおり、全回生エネルギーは、図2に示すように、第1エネルギー節約対策に従って、ESS4を充電するために使用される。しかしながら、予測下り坂走行32中に電気機械2が回生するエネルギーの一部は、第2エネルギー節約対策に従って、直接給電するために、車両電気補助装置の少なくとも1つに送られる。直接給電の利点は、ESS4の充放電中に生じる電気的な変換ロスをなくせることである。図3は、前記第2エネルギー節約対策による移動経路例の発明効果を示す。ここでは、前記予測前方下り坂走行32中の回生制動で発生の前記回生エネルギー推定量は、分割されて、前記予測下り坂走行32中に車両電気補助装置の少なくとも1つに給電することを意図している第1の部分と、前記ESS4に蓄えることを意図している第2の部分になる。時点tとtとの間の両方の直線状のSOC経過線39,44は、それぞれ前記第1および第2の推定値に相当するが、前記第2の部分のみが関係する。例えば、前記下り坂走行32中の回生エネルギー全推定量の内、約20%に相当する第1の部分は、前記下り坂走行32中に車両電気補助装置の少なくとも1つに給電するために使用され、第2の部分49、つまり残りは、前記全推定量の約80%に相当するが、充電のためにESS4に送られる。
【0039】
前記下り坂走行32中の回生エネルギー全推定量のうちの一部のみがESS4に送られるということから、他の要素が維持されておれば、図2の第1エネルギー節約対策と比較して、ESS4の充電レートは、図3の第2エネルギー節約対策の場合低くなる。充電レートのこの差異は、図3の時刻tとtとの間の直線状SOC経過線39及び44の勾配が減少したことで確認できる。予測前方下り坂走行中32の終点で目標SOC42の低下を避けるために、前記車両電気補助装置の少なくとも1つへの電気エネルギーの転送レートも、図2の下降勾配直線40と比較して、図3で下降勾配直線40の傾斜が減少したことを示しているように下り坂部分に到着する前に、すなわち時間t以前に、また低下する。
【0040】
前記第2エネルギー節約対策によれば、回生エネルギーの推定量の第2の部分49がESS4最大許容蓄電容量までの推定残量を超えるならば、回生エネルギー増加量の見込みを設定する。ESS4最大許容蓄電容量までの推定残量48は、図3において、時間tでの最大許容蓄電容量35と第1レベルSOC33との差異に相当する。
【0041】
単に本発明による第2エネルギー節約対策によりESS4に蓄えられたエネルギーの増加量の推定量を説明するだけのものであるが、図2のものと同様に仮想SOCの経過線45,46を図3に記載する。ここで、本発明による、ESS4に蓄えられる、増加回生エネルギーの推定量50は、時間tで、ESS4の仮想SOC46から、最大許容蓄電容量35を差し引くことで求められる。
【0042】
ハイブリッド電気車両の発明による燃料節約方法についても開示する。この方法は、予測前方下り坂走行中の回生エネルギーの増加量の見込みを設定する、最初のステップで構成される。このような見込みが存在することを決定するにあたり、エネルギーの増加量が前記予測前方下り坂走行32中に回生され前記ESS4に蓄えられるように、前記ESS4の充電レベルを低下させる目的で、前記ESS4から前記電気補助装置10〜20の少なくとも1つに電力を送るステップで、前記方法はさらに構成される。
【0043】
本発明によるエネルギー管理システム1は、エネルギー管理コントローラ9、車両移動経路予測システム8、ESS4などの、機能が異なる装置によって、図1に、模式的に開示されている。なお、本システムの配置は、本発明を実施するための単に一つの実施の形態であり、他の多数のシステム配置も、等しく使用できる。さらに、図1に別々に示されている機能装置のいくつかは、添付請求項の範囲内のすべての機能を有する一台の機能装置に統合させることができる。図2及び3の予測移動経路31と推定SOC経過線37,38は、本発明を記述するために簡略化して直線で示したものにすぎない。
【0044】
請求項に記載の符号は、請求項で保護された本題の範囲を限定するものとみるべきでなく、それらの機能は、単に請求項を理解しやすくするためのものである。
【0045】
当然のことながら、本発明は、全て添付の請求項の範囲から逸脱することなく、様々な明白な点での変更が可能である。それに伴い、それらに関する図面、記述は、本来説明用のものとしてみるべきであり、限定的に解釈すべきでない。
図1
図2
図3