(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992605
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】織物柔軟剤活性組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
D06M 13/463 20060101AFI20160901BHJP
D06M 13/368 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
D06M13/463
D06M13/368
【請求項の数】14
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-510712(P2015-510712)
(86)(22)【出願日】2013年4月24日
(65)【公表番号】特表2015-517610(P2015-517610A)
(43)【公表日】2015年6月22日
(86)【国際出願番号】EP2013058427
(87)【国際公開番号】WO2013167376
(87)【国際公開日】20131114
【審査請求日】2015年12月9日
(31)【優先権主張番号】12166976.6
(32)【優先日】2012年5月7日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ハンス−ユルゲン ケーレ
(72)【発明者】
【氏名】ウルリケ コトケ
(72)【発明者】
【氏名】ディアク クッパート
(72)【発明者】
【氏名】ディートマー トロイマー
(72)【発明者】
【氏名】クアト ザイデル
(72)【発明者】
【氏名】アクセル オイラー
【審査官】
斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−009397(JP,A)
【文献】
特開2005−232637(JP,A)
【文献】
国際公開第97/025398(WO,A1)
【文献】
国際公開第2004/060854(WO,A1)
【文献】
米国特許第05880299(US,A)
【文献】
特開2003−277334(JP,A)
【文献】
特開2009−150036(JP,A)
【文献】
米国特許第05637743(US,A)
【文献】
米国特許第05916863(US,A)
【文献】
特表2007−537362(JP,A)
【文献】
米国特許第06180594(US,B1)
【文献】
特表2001−522417(JP,A)
【文献】
特表2003−534467(JP,A)
【文献】
国際公開第01/042412(WO,A1)
【文献】
特表2001−524616(JP,A)
【文献】
米国特許第06995131(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07B 31/00 − 63/04
C07C 1/00 − 409/44
C11D 1/00 − 19/00
D06M 13/00 − 15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
織物柔軟剤活性組成物であって、
a)少なくとも1種のトリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルスルフェート脂肪酸エステル65〜98質量%、
b)前記組成物の全アミン価7〜20mgKOH/gを提供する量の少なくとも1種のトリス(2−ヒドロキシエチル)アミン脂肪酸エステル、および
c)メタノール1〜1500ppm
を含む前記組成物。
【請求項2】
メタノール10〜800ppmを含む、請求項1に記載の織物柔軟剤活性組成物。
【請求項3】
前記トリス(2−ヒドロキシエチル)アミン脂肪酸エステルを、前記組成物の全アミン価8〜13mgKOH/gを提供する量で含む、請求項1または2に記載の織物柔軟剤活性組成物。
【請求項4】
前記トリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルスルフェート脂肪酸エステルおよび前記トリス(2−ヒドロキシエチル)アミン脂肪酸エステルが、同一の脂肪酸部分を有している、請求項1から3までのいずれか1項に記載の織物柔軟剤活性組成物。
【請求項5】
前記トリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルスルフェート脂肪酸エステルが、脂肪酸部分の窒素に対する平均モル比1.4〜2.0を有している、請求項1から4までのいずれか1項に記載の織物柔軟剤活性組成物。
【請求項6】
前記トリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルスルフェート脂肪酸エステルの脂肪酸部分に相当する前記脂肪酸が、0.5〜120のヨウ素価を有している、請求項1から5までのいずれか1項に記載の織物柔軟剤活性組成物。
【請求項7】
前記トリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルスルフェート脂肪酸エステルの脂肪酸部分が、16〜18個の炭素原子の平均鎖長を有している、請求項1から6までのいずれか1項に記載の織物柔軟剤活性組成物。
【請求項8】
前記トリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルスルフェート脂肪酸エステルが、ポリ不飽和脂肪酸部分10モル%未満を含んでいる、請求項1から7までのいずれか1項に記載の織物柔軟剤活性組成物。
【請求項9】
エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールのC1〜C4アルキルモノエーテル、およびプロピレングリコールのC1〜C4アルキルモノエーテルから選択される溶媒を35質量%までさらに含む、請求項1から8までのいずれか1項に記載の織物柔軟剤活性組成物。
【請求項10】
トリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルスルフェート脂肪酸エステル65〜98質量%、およびメタノール1〜1500ppmを含む織物柔軟剤活性組成物の製造方法であって、少なくとも1種のトリス(2−ヒドロキシエチル)アミン脂肪酸エステルを、反応混合物が全アミン価7〜20mgKOH/gを有するまで、ジメチルスルフェートのアミン窒素に対するモル比0.79〜0.94でジメチルスルフェートと反応させる前記方法。
【請求項11】
前記トリス(2−ヒドロキシエチル)アミン脂肪酸エステルを、ジメチルスルフェートと60〜95℃の温度で反応させる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記トリス(2−ヒドロキシエチル)アミン脂肪酸エステルが、脂肪酸部分の窒素に対する平均モル比1.4〜2.0を有する、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記トリス(2−ヒドロキシエチル)アミン脂肪酸エステルの脂肪酸部分が、0.5〜120のヨウ素価を有している、請求項10から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記トリス(2−ヒドロキシエチル)アミン脂肪酸エステルの脂肪酸部分が、16〜18個の炭素原子の平均鎖長を有している、請求項10から13までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルスルフェート脂肪酸エステルを含み、かつメタノールの含有量が低い織物柔軟剤活性組成物、およびこのような組成物の製造方法に関する。
【0002】
2つの疎水性の長鎖炭化水素部分を有する第四級アンモニウム塩は、織物柔軟剤活性物として幅広く使用されている。1分子あたり平均2つの脂肪酸部分とエステル化されるアルカノールアミンの第四級アンモニウム塩は、一般的に、エステル四級化物(ester quats)と呼ばれ、その生分解性を理由に、主に、従来のアルキル第四級アンモニウム化合物と置き換えられている。
【0003】
トリエタノールアミンの脂肪酸エステルのジメチルスルフェートによる四級化により製造されるトリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルスルフェート脂肪酸エステルは、織物柔軟剤活性物として幅広く使用されている。ジメチルスルフェートは、発がん物質の可能性があるため、四級化は、ジメチルスルフェートの完全な変換およびアミンの高い変換率を達成するために実施される。この方法で製造されるトリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルスルフェート脂肪酸エステルが、予想外に大量のメタノールを含むことが現在判明している。トリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルスルフェート脂肪酸エステル柔軟剤活性物が、20年以上使用されてきたにもかかわらず、この組成物においてメタノールの含有量が高いことは、これまで気づかれないままであった。
【0004】
メタノールが毒性であり、作業場の危険を示すため、したがって、メタノールの含有量が低いトリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルスルフェート脂肪酸エステルを含む織物柔軟剤活性組成物を提供する必要がある。前記組成物の容易な製造方法も必要である。
【0005】
トリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルスルフェート脂肪酸エステルを含み、かつメタノールの含有量が低い織物柔軟剤活性組成物は、ジメチルスルフェートの完全な変換で従来技術の方法よりも高い全アミン価が達成される反応条件で、トリエタノールアミンの脂肪酸エステルをジメチルスルフェートと反応させて製造できることが判明している。
【0006】
したがって、本発明は、織物柔軟剤活性組成物であって、
a)少なくとも1種のトリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルスルフェート脂肪酸エステル65〜98質量%、
b)前記組成物の全アミン価7〜20mgKOH/gを提供する量の少なくとも1種のトリス(2−ヒドロキシエチル)アミン脂肪酸エステル、および
c)メタノール1〜1500ppm
を含む前記組成物を対象とする。
【0007】
さらに、本発明は、トリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルスルフェート脂肪酸エステル65〜98質量%、およびメタノール1〜1500ppmを含む織物柔軟剤活性組成物の製造方法を対象としており、ここで、少なくとも1種のトリス(2−ヒドロキシエチル)アミン脂肪酸エステルは、反応混合物が全アミン価7〜20mgKOH/gを有するまで、ジメチルスルフェートのアミン窒素に対するモル比0.79〜0.94でジメチルスルフェートと反応させる。
【0008】
本発明の織物柔軟剤活性組成物は、少なくとも1種のトリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルスルフェート脂肪酸エステルを65〜98質量%含んでいる。この組成物は、さらに、少なくとも1種のトリス(2−ヒドロキシエチル)アミン脂肪酸エステルを、前記組成物の全アミン価7〜20mgKOH/g、好ましくは8〜13mgKOH/g、より好ましくは9〜12mgKOH/gを提供する量で含んでいる。全アミン価は、American Oil Chemists SocietyのTf 2a−64法に準拠する、過塩素酸による非水滴定により測定され、試料1gあたりのmgKOHとして算出される。
【0009】
前記トリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルスルフェート脂肪酸エステルの脂肪酸部分は、純粋な脂肪酸または一般式RCOOH(式中、Rは、炭化水素基である)の脂肪酸の混合物に由来してよい。この炭化水素基は、分岐しているか、または分岐していなくてよく、分岐していないのが好ましい。前記トリス(2−ヒドロキシエチル)アミン脂肪酸エステルの脂肪酸部分は、同一もしくは異なる脂肪酸または脂肪酸の混合物に由来していてよい。前記トリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルスルフェート脂肪酸エステルおよび前記トリス(2−ヒドロキシエチル)アミン脂肪酸エステルは、同一の脂肪酸部分を有しているのが好ましい。
【0010】
前記トリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルスルフェート脂肪酸エステルは、一般式CH
3N
+(CH
2CH
2OH)
2(CH
2CH
2OC(=O)R)CH
3OSO3-のモノエステル、一般式CH
3N
+(CH
2CH
2OH)(CH
2CH
2OC(=O)R)
2CH
3OS
O3-のジエステル、および一般式CH
3N
+(CH
2CH
2OC(=O)R)
3CH
3OS
O3-のトリエステルを含んでいてよく、前記式中、Rは、脂肪酸部分RCOOの炭化水素基である。前記トリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルスルフェート脂肪酸エステルは、脂肪酸部分の窒素に対する平均モル比1.4〜2.0、より好ましくは1.5〜1.8を有しているのが好ましい。前記モル比は、リンスサイクル(rinse cycle)織物柔軟剤における高い柔軟性能を提供するものである。
【0011】
前記トリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルスルフェート脂肪酸エステルの脂肪酸部分に相当する脂肪酸は、0.5〜120、より好ましくは1〜50、より好ましくは30〜45のヨウ素価を有しているのが好ましい。ヨウ素価は、ISO3961の方法により測定される、脂肪酸100gの二重結合の反応により消費されるヨウ素の量(g)である。
【0012】
前記トリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルスルフェート脂肪酸エステルの脂肪酸部分は、16〜18個、より好ましくは16.5〜17.8個の炭素原子の平均鎖長を有しているのが好ましい。平均鎖長は、脂肪酸の混合物中の個々の脂肪酸の重量分率を基に算出されるものである。分岐鎖脂肪酸の場合、鎖長は、炭素原子の最長の連続した鎖を示す。
【0013】
好ましいヨウ素価および平均鎖長は、融点に関して前記織物柔軟剤組成物の優れた加工性、およびリンスサイクル織物柔軟剤における粘度および高い織物柔軟効率の好適な組合せを提供する。
【0014】
必要な平均鎖長およびヨウ素価を提供するため、脂肪酸部分は、飽和および不飽和脂肪酸の両方を含む脂肪酸の混合物に由来してよい。不飽和脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸であるのが好ましい。前記トリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルスルフェート脂肪酸エステルは、好ましくは10質量%未満、より好ましくは6質量%未満の多価不飽和脂肪酸部分を含んでいる。好適な飽和脂肪酸の例は、パルミチン酸およびステアリン酸である。好適な一価不飽和脂肪酸の例は、オレイン酸およびエライジン酸である。不飽和脂肪酸部分の二重結合のシス−トランス比は、55:45より高いのが好ましく、65:35よりも高いのがより好ましい。多価不飽和脂肪酸部分の割合は、−CH=CH−CH
2−CH=CH−構造の1つの二重結合を選択的に水素化するが、一価不飽和の炭化水素基の二重結合は選択的に水素化しない、選択的接触水素化(touch hydrogenation)により低下することができる。
【0015】
本発明による織物柔軟剤活性組成物は、この組成物の質量に対して1〜1500ppm、好ましくは10〜800ppmのメタノールも含んでいる。このメタノールの含有量は、トリス(2−ヒドロキシエチル)アミン脂肪酸エステルとジメチルスルフェートとの反応により製造される、同様の量のトリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルスルフェート脂肪酸エステルを含む、先行技術の織物柔軟剤組成物よりも低い。前記組成物のメタノール含有量は、メタノールの公知量の添加による校正を用いるヘッドスペースGLC分析によって測定することができる。前記織物柔軟剤組成物は、正確なヘッドスペースGLC分析のために粘度を低下させるため、好適な溶媒、例えば、ジメチルホルムアミドで希釈されているのが好ましい。本発明の織物柔軟剤活性組成物におけるメタノールの比較的低い含有量は、作業の安全措置の必要性、ならびに生成物の標識化および分類の必要条件を低減し、前記組成物の引火点を、従来技術の組成物と比べて高める。
【0016】
本発明の織物柔軟剤活性組成物は、さらに、1種以上の追加の有機溶媒を含んでいてよい。この組成物は、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールのC
1〜C
4アルキルモノエーテルおよびプロピレングリコールのC
1〜C
4アルキルモノエーテルから選択される溶媒を35質量%まで含んでいるのが好ましい。追加の溶媒の量は、最も好ましくは5〜20質量%である。より好ましい溶媒は、エタノール、1−プロパノールおよび2−プロパノールであり、エタノールまたは2−プロパノールが最も好ましく、特に2−プロパノールが好ましい。
【0017】
本発明の織物柔軟剤活性組成物は、少なくとも1種のトリス(2−ヒドロキシエチル)アミン脂肪酸エステルを、反応混合物が全アミン価7〜20mgKOH/gを有するまで、ジメチルスルフェートのアミン窒素に対するモル比0.79〜0.94でジメチルスルフェートと反応させる本発明の方法により製造することができる。全アミン価は、American Oil Chemists SocietyのTf 2a−64の方法に準拠して過塩素酸による非水滴定により測定することができ、試料1gあたりのmgKOHとして算出されるものである。前記反応は、前記範囲の所望の全アミン価が達成された時点で、温度を下げることで終了させることができる。前記反応は、実質的にすべてのジメチルスルフェートが反応するまで続けられるのが好ましい。
【0018】
ジメチルスルフェートのアミン窒素に対する前記範囲のモル比を選択すること、および7〜20mgKOH/gの全アミン価が達成されるまで前記反応を実施することによって、ジメチルスルフェートの高い変換率がもたらされ、同時に1500ppmを超える量のメタノールの形成が回避される。
【0019】
ジメチルスルフェートのアミン窒素に対するモル比は、0.85〜0.90の範囲で選択されるのが好ましい。前記トリス(2−ヒドロキシエチル)アミン脂肪酸エステルは、60〜95℃、より好ましくは70〜90℃の温度でジメチルスルフェートと反応させるのが好ましい。この反応は、反応混合物が、8〜13mgKOH/g、最も好ましくは9〜12mgKOH/gの全アミン価を有するまで実施されるのが好ましい。前記トリス(2−ヒドロキシエチル)アミン脂肪酸エステルは、いずれの圧力、例えば、周囲圧力または低圧でジメチスルフェートと反応させてよい。前記トリス(2−ヒドロキシエチル)アミン脂肪酸エステルとジメチルスルフェートとの反応は、追加の溶媒の存在下に実施されてよいが、溶媒を追加しないで実施されるのが好ましい。
【0020】
本発明の方法で使用されるトリス(2−ヒドロキシエチル)アミン脂肪酸エステルは、脂肪酸部分の窒素に対する平均モル比1.4〜2.0、より好ましくは1.5〜1.8を有しているのが好ましい。トリス(2−ヒドロキシエチル)アミン脂肪酸エステルの脂肪酸部分は、0.5〜120、より好ましくは1〜50のヨウ素価を有しているのが好ましい。前記トリス(2−ヒドロキシエチル)アミン脂肪酸エステルの脂肪酸部分は、16〜18個、より好ましくは16.5〜17.8個の炭素原子の平均鎖長を有しているのが好ましい。
【0021】
トリス(2−ヒドロキシエチル)アミン脂肪酸エステル開始材料は、トリエタノールアミンの脂肪酸または脂肪酸混合物によるエステル化、減圧でのエステル化の間に形成された水を除去することで製造されるのが好ましい。このようにして製造されたトリス(2−ヒドロキシエチル)アミン脂肪酸エステルは、さらなる精製をしないで使用することができる。所望のヨウ素価、平均鎖長および脂肪酸部分の窒素に対するモル比は、脂肪酸または脂肪酸混合物の選択、およびエステル化反応で使用されるトリエタノールアミンの脂肪酸に対するモル比により簡単に適合させることができる。前記エステル化は、160〜210℃の温度にて、周囲圧力で、水の理論量60〜80%が除去されるまで蒸留して、実施されるのが好ましい。その場合、圧力は、段階的に20〜50mbarの範囲で最終圧力までに下げられ、前記反応は、1〜10mgKOH/g、より好ましくは2〜5mgKOH/gの酸価が達成されるまで続けられる。
【0022】
本発明を、以下の例により説明するが、これは、決して本発明の範囲を限定するものではない。
【0023】
例
例1:
市販のトリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルスルフェート獣脂脂肪酸エステルのメタノール含有量
第1表は、ヘッドスペースGCにより測定された、市販のトリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルスルフェート獣脂脂肪酸エステルのメタノール含有量を示している。
【0024】
【表1】
【0025】
例2:
トリス(2−ヒドロキシエチル)アミン獣脂脂肪酸エステルの製造
ヨウ素価38およびトリエタノールアミン1115g(7.47モル)を有する獣脂脂肪酸3513g(12.82モル)の混合物を、撹拌しながら190℃に加熱して、この反応混合物から水を蒸留した。この温度で2時間後、圧力を段階的に20mbarに下げ、前記混合物を190℃および20mbarでさらに3時間撹拌した。その後、前記反応混合物を60℃に冷却した。生じたトリス(2−ヒドロキシエチル)アミン獣脂脂肪酸エステルは、酸価3.6mgKOH/g、および全アミン価95.2mgKOH/gを有していた。
【0026】
トリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルスルフェート獣脂脂肪酸エステルの製造
例3:
ジメチルスルフェート167.7g(1.33モル)を、少量ずつ撹拌しながら、
例2のトリス(2−ヒドロキシエチル)アミン獣脂脂肪酸エステル818g(1.387モル)に加え、反応混合物を冷却して70〜90℃の範囲の温度を保った。すべてのジメチルスルフェートを添加した後、前記反応混合物を1時間80〜90℃で撹拌した。その後、2−プロパノール109.5gを加えて、前記混合物を均一になるまで撹拌した。生じた組成物は、全アミン価3.4mgKOH/gを有しており、この組成物の質量に対してメタノール4450ppmを含んでいた。
【0027】
例4:
例3を、ジメチルスルフェート160.44g(1.272モル)、
例2のトリス(2−ヒドロキシエチル)アミン獣脂脂肪酸エステル808.8g(1.369モル)、および2ープロパノール107.47gを使用して繰り返した。生じた組成物は、全アミン価6.0mgKOH/gを有しており、この組成物の質量に対して、メタノール3000ppmを含んでいた。
【0028】
例5:
例3を、ジメチルスルフェート144.55g(1.146モル)、
例2のトリス(2−ヒドロキシエチル)アミン獣脂脂肪酸エステル755.4g(1.282モル)、および2−プロパノール100.0gを使用して繰り返した。生じた組成物は、全アミン価8.9mgKOH/gを有しており、この組成物の質量に対してメタノール1400ppmを含んでいた。
【0029】
例6:
例3を、ジメチルスルフェート135.1g(1.072モル)、
例2のトリス(2−ヒドロキシエチル)アミン獣脂脂肪酸エステル780.1g(1.324モル)、および2−プロパノール102.0gを使用して繰り返した。生じた組成物は、全アミン価17.2mgKOH/gを有しており、この組成物の質量に対してメタノール155ppmを含んでいた。
【0030】
例3および例4(本発明によらない)ならびに例5および例6(本発明による)は、織物柔軟剤組成物のメタノール含有量が、トリス(2−ヒドロキシエチル)アミン脂肪酸エステルのジメチルスルフェートに対する正しいモル比を選択すること、および反応混合物の全アミン価7〜20mgKOH/gになるように四級化を実施することによって制御され得ることを明らかにしている。
【0031】
例7(比較):
特許US6,995,131の第43欄37〜53行に記載の、部分的に水素化されたキャノーラ脂肪酸に由来するアシル基を有するジ(アシルオキシエチル)(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルスルフェートの製造を繰り返した。生じた組成物は、この組成物の質量に対してメタノール5500ppmを含んでいた。