特許第5992610号(P5992610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5992610電気機械的調整装置を動作させる装置及び方法
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  • 特許5992610-電気機械的調整装置を動作させる装置及び方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992610
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】電気機械的調整装置を動作させる装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 7/28 20160101AFI20160901BHJP
   H02H 7/085 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
   H02P7/28 Z
   H02H7/085 Z
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-513056(P2015-513056)
(86)(22)【出願日】2013年4月5日
(65)【公表番号】特表2015-521021(P2015-521021A)
(43)【公表日】2015年7月23日
(86)【国際出願番号】EP2013057183
(87)【国際公開番号】WO2013178388
(87)【国際公開日】20131205
【審査請求日】2014年11月19日
(31)【優先権主張番号】102012209073.8
(32)【優先日】2012年5月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508018598
【氏名又は名称】ジョンソン コントロールズ メタルズ アンド メカニズムス ゲーエムベーハー アンド カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ライマン、 ミヒャエル
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−039958(JP,A)
【文献】 特開平11−089268(JP,A)
【文献】 特開2006−101655(JP,A)
【文献】 特開2006−64437(JP,A)
【文献】 特開2008−187858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 7/28
H02H 7/085
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータ駆動器装置(4)を有する電気機械的調整装置(2)を動作させるべく、制御ユニット(3)が前記調整装置(2)の機械的端ストッパ到達を確認し並びに前記電気モータ駆動器装置(4)を開ループ及び/又は閉ループで制御する手段として設けられる装置であって、
ひとたび前記調整装置(2)が前記機械的端ストッパに到達すると、前記電気モータ駆動器装置(4)において前記制御ユニット(3)により所定時間又は所定移動距離だけ即時に回転方向の反転を自動的に作動し、
前記調整装置(2)は、前記機械的端ストッパの領域から出るように動き、機械的ジャムによって適用される機械的応力から解放された状態において停止に至る装置。
【請求項2】
前記制御ユニット(3)は、前記電気モータ駆動器装置(4)が停止に至ったことを確認する手段を含む請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電気モータ駆動器装置(4)が停止に至ったことを確認する手段としてモータ電流センサが設けられる請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記電気モータ駆動器装置(4)が停止に至ったことを確認する手段として、固定子に固定されたホールセンサと回転子に固定された送信機ホイールとを含むセンサ配列体(6)が前記電気モータ駆動器装置(4)に設けられる請求項1又は2に記載の装置。
【請求項5】
電気モータ駆動器装置(4)及び制御ユニット(3)を有する電気機械的調整装置(2)を動作させる方法であって、
ひとたび前記調整装置(2)が機械的端ストッパに到達すると、前記電気モータ駆動器装置(4)において所定時間又は所定移動距離だけ回転方向の反転が自動的に作動され
前記調整装置(2)は、前記機械的端ストッパの領域から出るように動き、機械的ジャムによって適用される機械的応力から解放された状態において停止に至る方法。
【請求項6】
モータ電流が所定のしきい値を超過すると、前記電気モータ駆動器装置(4)が停止に至ったことが確認される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記電気モータ駆動器装置(4)が停止に至ったことの指示としてセンサ配列体(6)のセンサ信号が存在しないことが確認される請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記電気モータ駆動器装置(4)に逆極性の電圧が供給され又は回転磁界の反転が作動される請求項5から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記所定移動距離は移動距離センサ(7)によって確認される請求項5から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記電気モータ駆動器装置(4)の動作中、前記電気モータ駆動器装置(4)が停止に至ったことが、前記制御ユニット(3)により所定時間間隔で監視又は確認される請求項5から9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1及び5それぞれのプリアンブルに係る電気機械的調整装置を動作させる装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来型の電気機械的調整駆動器は、ひとたび調整駆動器が機械的端ストッパに到達したときに機械的ジャムを防止するような機械的態様で設計する必要がある。電気駆動器がスイッチオフにされ、なにも問題がなければ、電気駆動器が引き続いて停止位置から反対方向に戻るように動かされる。可動部材同士が応力を及ぼし合うこと及び付着摩擦に起因する硬直又は不動状態は、電気機械的調整駆動器の機械的ジャムと記述することができる。こうした応力及び付着摩擦の程度が電気駆動器の駆動出力を超過すると、電気駆動器を機械的端ストッパから出すように動かすことはもはや不可能である。
【0003】
特許文献1は、特に自動車のシート調整装置である調整装置のジャム防止について記載する。調整装置はモータ駆動器と及び制御ユニットを有する。制御ユニットは、ジャム事象を監視するべく少なくとも以下の動作分類を行うように具体化される。すなわち、a)調整装置が硬直しているか、b)物体が詰まっているか、c)調整装置が端ストッパと接触しているか、d)突然の反作用が識別されるかである。ここで、決定基準はモータ駆動器の確認済み特性変数から導出され、この基準が、調整装置の支配的状態を上記動作分類の一つに割り当てるべく使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−526693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、先行技術に対して改善された装置を与えること、及び電気機械的調整装置を動作させる改善された方法を与えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
電気機械的調整装置を動作させる装置及び方法に関し、上記課題は、請求項1及び5それぞれに記載の特徴によって解決される。
【0007】
本発明のさらなる有利な進展が従属項の主題である。
【0008】
電気モータ駆動器装置を有する電気機械的調整装置を動作させる装置の場合、電気モータ駆動器装置を開ループ又は閉ループで制御するべく制御ユニットが設けられる。本発明によれば、ひとたび調整装置が機械的端ストッパに到達すると、電気モータ駆動器装置の回転方向を制御ユニットによって、所定時間又は所定移動距離だけ自動的に反転することができる。その結果、調整装置は機械的端ストッパから出るように動き、機械的応力のない状態で停止するようになる。結果的に電気機械的調整装置は機械的ジャムが確実に防止され、後の電気モータ駆動器装置の始動が容易となる。
【0009】
制御ユニットは便宜上、電気モータ駆動器装置が停止に至ったことを確認する手段を含む。その結果、電気モータ駆動器装置が停止に至ったことを確実に確認することができる。
【0010】
有利な実施形態では、モータ電流を測定する電流センサが、電気モータ駆動器装置が停止に至ったことを確認する手段として設けられる。モータ電流の所定のしきい値が超過されたことが検出されると、電気モータ駆動器装置が停止に至ったが確認されてその情報が制御ユニットへ送られる。このタイプのモータ電流測定により、電気モータ駆動器装置が停止に至ったことを追加のセンサ技術なしで確認することができる。
【0011】
さらなる有利な実施形態では、固定子に固定されたホールセンサと回転子に固定された送信機ホイールとを含むセンサ配列体が、電気モータ駆動器装置が停止に至ったことを確認する手段として当該電気モータ駆動器装置に配列される。センサ配列体のセンサ信号が存在しないことが、電気モータ駆動器装置が停止に至ったことの指示として確認される。このタイプのセンサ配列体により、電気モータ駆動器装置が停止に至ったことを確実に確認することに加えて、電気機械的調整装置の移動距離も確認することができる。
【0012】
さらなる有利な実施形態では、電気モータ駆動器装置には、回転方向又は回転磁界を反転させるべく逆極性の電圧が供給される。この態様により、ブラシを含む直流モータとして具体化される電気モータ駆動器装置の回転方向の簡単かつ迅速な反転を行うことができる。
【0013】
有利な実施形態では、電気モータ駆動器装置の所定移動距離が、移動距離センサによって確認される。
【0014】
特に好ましい実施形態では、電気モータ駆動器装置が停止に至ったことが、制御装置によって電気モータ駆動器装置の動作中に所定時間間隔で監視又は確認される。この態様により、電気モータ駆動器装置が停止に至ったことが確認された場合に即時に回転方向の反転を作動することができる。電気機械的調整装置の個々の部材は相対的に動き合うので、問題となる摺動領域は摺動摩擦状態にある。結果的に、機械的端ストッパ領域における機械的ジャム事象が確実に回避される。このタイプの機械的ジャム事象は、電気モータ駆動器装置が停止に至った結果、付着摩擦がもたらされる場合にのみ生じるからである。
【0015】
添付の模式的な図面を参照して本発明がさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】電気モータ駆動器装置及び制御ユニットを有する電気機械的調整装置を動作させる装置のブロック図を模式的に例示する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、電気機械的調整装置2を動作させる装置1のブロック図を模式的に例示する。装置1は制御ユニット3を含む。
【0018】
電気機械的調整装置2は、従来型の電気機械的調整装置として具体化され、電気モータ駆動器装置4及び機械的アクチュエータ組付体5を含む。これらは機械的に結合されてハウジング(これ以上詳細には例示せず)に一緒に配列されるのが好ましい。この態様により、容易に組み付け可能な構造ユニットが形成される。
【0019】
例えば、電気モータ駆動器装置4は、従来型の直流モータとして具体化される。
【0020】
機械的アクチュエータ組付体5は、一のギヤ、複数のギヤの組み合わせ、枢動レバー等として具体化される。
【0021】
制御ユニット3は、従来型の電子制御ユニットとして具体化され、電気モータ駆動器装置4を従来型の継電器接点又は従来型の半導体ブリッジ回路によって制御する。
【0022】
半導体ブリッジ回路は制御ユニット3に統合され、特に金属酸化物半導体電界効果型トランジスタのような個々のパワートランジスタにより、又は完全一体化モータ出力段の形態で、具体化することができる。
【0023】
制御ユニット3の部材の数は、このタイプの完全一体化モータ出力段の使用により著しく低減される。
【0024】
制御ユニット3は、電気機械的調整装置2に配列され又はそのハウジング内に統合されるのが好ましい。
【0025】
制御ユニット3は、電気モータ駆動器装置4が停止に至ったことを確認する手段を含む。
【0026】
第1実施形態では、電気モータ駆動器装置4が停止に至ったことを確認する手段として、従来型のモータ電流測定が行われる。
【0027】
モータ電流測定は、第1実施形態において、直列接続された測定抵抗の電圧降下を参照して行われる。当該抵抗はシャントとも記述される。
【0028】
第2実施形態では、モータ電流測定は、半導体ブリッジ回路のパワートランジスタの電圧降下を参照して行うことができる。
【0029】
第3実施形態では、電気モータ駆動器装置4の給電線を取り巻く磁界を測定することによってモータ電流測定を行うことができる。給電線内で送られるモータ電流の磁気効果が確認される。
【0030】
第1実施形態の変形例では、電気モータ駆動器装置4のモータ電流が所定のしきい値を超過すると、制御ユニット3は電気モータ駆動器装置4が停止に至ったことを確認する。モータ電流の所定のしきい値は制御ユニット3に格納され、又は当該制御ユニットによって設定することができる。このタイプのモータ電流測定により、電気モータ駆動器装置4が停止に至ったことを追加のセンサ技術なしで確認することができる。
【0031】
代替実施形態の変形例では、モータ電流の測定が行われる。モータ電流の測定値がデジタル化されて制御ユニット3により従来型の態様で評価される。
【0032】
例えば、通常は電気モータ駆動器装置4の整流過程によりもたらされる電流変化がモータ電流に存在しないことに基づいて電気モータ駆動器装置4が停止に至ったことを確認することができる。
【0033】
モータ電流信号を変調する整流過程の数を数えることによって電気機械的調整装置2の移動距離を確認することができる。
【0034】
さらなる代替実施形態では、モータ電流のデジタル化された測定値が、従来型の態様の周波数分析及び/又はスペクトル分析によって評価される。この態様により、電気モータ駆動器装置4が停止に至ったことが確認される。
【0035】
有利な代替実施形態では、固定子に固定されたホールセンサと回転子に固定された送信機ホイールとを含むセンサ配列体6が、電気モータ駆動器装置4に配列される。当該センサが、電気モータ駆動器装置4が停止に至ったことを確認する手段である。センサ配列体6のセンサ信号が存在しないことが、電気モータ駆動器装置4が停止に至ったことの指示として確認される。このタイプのセンサ配列体6により、電気モータ駆動器装置4が停止に至ったことを確実に確認することに加えて、電気機械的調整装置2の移動距離も確認することができる。
【0036】
一つの可能な実施形態では、電気モータ駆動器装置4が停止に至ったことを確認する複数の手段が組み合わされる。その結果、電気モータ駆動器装置4が停止に至ったことを確認する可能性を冗長化することができる。この態様により、電気モータ駆動器装置4が停止に至ったことを確認する手段の故障確率が低減される。
【0037】
詳細に例示されない代替実施形態では、センサ配列体6を、例えば誘導型センサのような従来型の移動距離又は位置センサから形成することができる。
【0038】
方法の実行中、ひとたび調整装置2が機械的端ストッパに到達すると、電気モータ駆動器装置4の回転方向の反転が、所定時間又は所定移動距離だけ自動的に作動される。その結果、調整装置2は機械的端ストッパの領域から出るように動き、機械的応力が存在しない状態で停止に至る。結果的に電気機械的調整装置2は機械的ジャムが確実に防止され、後の電気モータ駆動器装置4の始動が容易となる。
【0039】
調整装置の機械的端ストッパ到達は、電気モータ駆動器装置4が停止に至ったことを確認することによって検出される。
【0040】
ひとたび調整装置が機械的端ストッパに到達すると、電気モータ駆動器装置4には、その実施形態に応じて、回転方向を反転するべく逆極性の電圧が供給され又は回転磁界が反転される。この態様により、ブラシを含む直流モータとして具体化される電気モータ駆動器装置4の回転方向の簡単かつ迅速な反転を行うことができる。
【0041】
第1実施形態の変形例では、制御ユニット3に格納され又は当該制御ユニットにより設定可能な所定時間だけ電気モータ駆動器装置4に逆極性の電圧が供給され又は回転磁界が反転される。
【0042】
代替実施形態の変形例では、所定移動距離だけ電気モータ駆動器装置4に逆極性の電圧が供給され又は回転磁界が反転される。所定移動距離は制御ユニット3に格納され、又は当該制御ユニットによって設定することができ、及び第1実施形態においてセンサ配列体6の信号から決定することができる。
【0043】
代替的実施形態では、電気モータ駆動器装置4の所定移動距離は、別個の移動距離センサ7によって確認される。この移動距離センサ7は、電気モータ駆動器装置4に又は機械的アクチュエータ組付体5に配列することができる。
【0044】
特に好ましい実施形態では、電気モータ駆動器装置4の動作中、電気モータ駆動器装置4が停止に至ったことを、制御ユニット3によって所定時間間隔で連続的に監視又は確認することができる。この態様により、電気モータ駆動器装置4が停止に至ったことが確認された場合に即時に回転方向の反転を作動することができる。電気機械的調整装置2の個々の部材が互いに相対的に動く慣性力の結果、問題となる摺動領域は摺動摩擦状態にある。結果的に、機械的端ストッパ領域における機械的ジャム事象が、電気モータ駆動器装置4の回転方向を即時に反転させることによって確実に回避される。このタイプの機械的ジャム事象は、電気モータ駆動器装置4と当該駆動器装置に結合された機械的アクチュエータ組付体5とが停止するに至った結果、付着摩擦がもたらされる場合にのみ生じるからである。
【符号の説明】
【0045】
1 装置
2 電気機械的調整装置
3 制御ユニット
4 電気モータ駆動器装置
5 機械的アクチュエータ組付体
6 センサ配列体
7 移動距離センサ
図1