特許第5992613号(P5992613)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992613
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】コーティングされた天井タイル
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/86 20060101AFI20160901BHJP
【FI】
   E04B1/86 T
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-516045(P2015-516045)
(86)(22)【出願日】2013年5月23日
(65)【公表番号】特表2015-528862(P2015-528862A)
(43)【公表日】2015年10月1日
(86)【国際出願番号】US2013042405
(87)【国際公開番号】WO2013184376
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2016年5月18日
(31)【優先権主張番号】13/490,937
(32)【優先日】2012年6月7日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512127109
【氏名又は名称】ユーエスジー・インテリアズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー・ケイ・ヤン
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3914528(JP,B2)
【文献】 実公昭52−031545(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/04
E04B 1/74 − 1/99
E04C 2/16
B32B 5/00 − 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
寸法安定性を高めたコーティングされた天井タイルであって、
ベース天井タイルが、表側及び表側に対向する裏側を有
前記表側は、天井タイルが室内に設置される場合に部屋の居住者から見える側であり、前記表側にはコーティング塗膜が形成されておらず、
前記裏側には、00〜1000マイクロメートルの厚さの薄いコーティング塗膜が形成され、
該薄いコーティング塗膜は、硫酸カルシウム二水和物結晶のかみ合っているマトリックスを含み、音を吸収して室内に音が跳ね返らないようにしながら下垂を低減させたものであることを特徴とするコーティングされた天井タイル。
【請求項2】
前記コーティング塗膜は、100〜400マイクロメートルの厚さに形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のコーティングされた天井タイル
【請求項3】
前記ベース天井タイルは、鉱物綿繊維を含むことを特徴とする請求項1に記載のコーティングされた天井タイル。
【請求項4】
前記コーティングされた天井タイルは、揮発性有機化合物含まないことを特徴とする請求項1に記載のコーティングされた天井タイル。
【請求項5】
予め用意された寸法安定性を高めた天井タイルであって、
前記裏側に設けられた薄いコーティング塗膜は、コーティングされた天井タイルの下垂を少なくとも10%以上低減したものであることを特徴とする請求項1に記載のコーティングされた天井タイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱物綿天井タイルの下垂を低減したコーティングされた天井タイルに係り、より詳しくは、吸音性を維持しながら下垂を低減するために天井タイルの裏側に石膏系コーティングコーティングされた天井タイルに関する
【背景技術】
【0002】
本発明は、吸音または天井パネルに関する。吸音パネル、天井タイルまたは天井パネルの別名でも知られる吸音タイルは、すばやく設置され、安価で、軽量である天井を提供するものとして建築業界において周知である。タイルは、充填剤および結合剤のスラリーから、最も多くは注型工程またはフェルト化工程のいずれかによって調製される。
【0003】
このようなスラリーの水フェルト化において、充填剤、結合剤および他の原料の分散系は、FourdrinierまたはOliver式脱水用マット成形機の物などの、動く、多孔質の支持体上に流し入れる。分散系は、最初に重力によって、次いで真空吸着の方法によって脱水する。湿性ベースマットを加熱した対流式乾燥炉内で乾燥し、乾燥した材料を所望の寸法に切断し、場合によっては塗料などを用いて上塗りして、吸音タイルおよびパネルを製造する。
【0004】
吸音タイルは、米国特許第1769519号に記載されているような湿式パルプモールドまたは注型工程によっても作される。タイルの本体を成形または注型するために、繊維、充填剤、着色剤および結合剤を含む成形組成物が調製される。この混合物は紙または金属箔で覆われている適切なトレイ上に置かれ、次いで組成物はスクリードバーまたはローラーを用いて所望の厚さにスクリードされる。細長い亀裂などの装飾的な表面は、スクリードバーまたはローラーによって提供され得る。次いでパルプで満たされたトレイを炉内に置き、組成物を乾燥または硬化させる。乾燥したシートをトレイから取り出し、所望の厚さを得るために、およびゆがみを防止するために片面または両面を処理して滑面を提供してもよい。次いでシートは、所望のサイズのタイルに切断される。
【0005】
鉱物綿は、しばしば天井タイル内の繊維として用いられる。場合によっては、鉱物綿は再生紙繊維などのセルロース繊維と組み合わせられる。天井タイルパネルの強度は、繊維が結合剤の作用と共に織り合わさることから生じる。これらの機構はそれ自体の重さに耐える天井タイルを生じるが、タイルは、経時(年)的にあるいは高温および/または高湿にさらされる場合に下垂やすい。
【0006】
天井タイルが通常、水平位置に設置されることも、下垂が生じやすい原因ある。これは重力の影響を倍加させる。タイルの端部は支持されているが、タイルの中央部は、タイルを構成する鉱物綿マトリックスの完全性によってのみ定位置に保持されている。経時的に、重力は織り合わされた鉱物綿繊維を引き離す傾向があり、マトリックスを弱体化させ寸法安定性を減少させる。天井タイルがそれらの上の断熱材の重さに耐える場合、または浴室内などで温度および湿度の変動を受ける場合は、タイルにおける不体裁な下垂が成長し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
天井タイルにおける下垂は、本コーティングされた天井タイルおよび天井タイルにおける下垂を減少する方法によって低減される。焼石膏および水が混合され、約100マイクロメートルから約1000マイクロメートルの薄層のコーティング塗膜としてベース天井タイルの裏側に塗布するためのスラリーを形成する。このコーティング塗膜は、1ミリメートル未満の厚さの層として塗布される場合でも消音における著しい損失を伴わず寸法安定性を維持するのに有効であることが分かっている。コーティング塗膜は、凝結時間調整剤などのいくつかの任意の成分を含んでいてもよい。
【0008】
漆喰またはジョイントコンパウンドなどの建築材料への石膏系化合物の塗布は、それらの消音性を維持する能力については分かっていない。凝結石膏は、通常は十分に硬く、音を反響する。塞がれた部屋において、これは室内で発生する音を反響するので、室内の雑音を増大するであろう。しかし、出願者は、ベース天井タイルの裏側に薄層として塗布する場合に、コーティング塗膜材料が天井タイルの吸音性を維持することを見出した。コーティング塗膜の薄さは、コーティングされた天井タイルによって音が吸収され、塞がれた部屋の中に跳ね返らないようにする。これほど薄いコーティング塗膜が、下垂が低減されたコーティングされた天井タイルへの十分な支持を提供することができることは驚きである。
【0009】
コーティング塗膜の形成は、任意の既知の手段によっていかなるベース天井タイルまたは吸音パネルの裏側への塗布も容易になされる。一部の実施形態において、コーティング塗膜はタイル上に噴霧されて形成される。他の実施形態において、コーティング塗膜はタイル上にスクリードされて形成される。コーティング塗膜を塗布形成する他の任意の方法には、ベース天井タイルの裏のフラッドコーティング、または石膏スラリーを用いてベースパネルの裏側にローラー塗布することが含まれる。
【0010】
この方法は、表側および表側に対向する裏側を有するベース天井タイルからコーティングされた天井タイルを作する。コーティング塗膜は、硫酸カルシウム二水和物結晶のかみ合っマトリックスを含、約100マイクロメートルから約1000マイクロメートルの厚さベース天井タイルの裏側に塗布されて形成される。また、コーティング塗膜をるためのスラリーに凝結時間調整剤が加えられる場合、凝結時間調整剤の残滓が、石膏マトリックス内の隙間内部に存在する。スラリー中の硫酸カルシウム半水和物は水和されて硫酸カルシウム二水和物結晶マトリックスを形成するので、凝結時間分子の残滓には、コーティングスラリー中に存在するイオン、分子、微粒子、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
スラリーの調製、ベース天井タイルへのその塗布および得られるコーティングされた天井タイルが、ベース天井タイルの裏側にスラリーを噴霧する観点から記述される。ただし、これは天井タイルの下垂を低減する方法の一実施形態であり、限定を意図しない。本出願において用いられる場合、ベース天井タイルは、コーティングされた天井タイルが室内に設置される場合に部屋の居住者から見える表側を有する。ベース天井タイルの裏側は、表側に対向する側であり、通常は設置される時にスタッド、断熱材または他の支持基板材料に面する。必須ではないが、ベース天井タイルの表側は、タイルの裏側よりも滑らかな仕上げをしばしば有する。
【0012】
ベース天井タイルは、任意の吸音タイルであってよい。一部の実施形態において、ベース天井タイルは、注型またはフェルト化工程によって作成されるが、ベースタイルを調製する任意の工程を用いてよい。適したベース天井タイルの例には、Frost(登録商標)、Glacier(登録商標)およびArctic ClimaPlus(登録商標)注型吸音パネルならびにRadar(登録商標)、Olympic II(登録商標)またはCross−Fissured湿式フェルト化天井タイルが含まれる。本発明のコーティング塗膜は、垂直パネルまたは他の吸音パネルに塗布して形成してもよいが、パネルが使用される方法に起因して、通常、これらの用途においては下垂は生じない。
【0013】
一部の実施形態において、ベース天井タイルは、繊維、結合剤および上記で述べた通りの他の成分のスラリーをフェルト化することにより得てもよい。繊維には、これに限定されないが、鉱物綿繊維、ガラス繊維、有機ポリマー繊維、セルロース繊維およびそれらの混合物が含まれる。本記述の残りの部分に関して、ベース天井タイルはコーティング塗膜形成よりも前に完成した生成物であり、ベース天井タイルが得られる工程は重要ではないことが想定される。
【0014】
以降、「スラリー」はコーティングスラリーを指す。スラリーの作後、スラリーは、コーティング塗膜形成するために用いられ得る任意のコーティング方法により約100マイクロメートルから約1000マイクロメートルの厚さでベース天井タイルに塗布される。一部の実施形態において、コーティング塗膜の厚さは約100マイクロメートルから約400マイクロメートルである。さらに他の実施形態は、コーティング塗膜の厚さが約100マイクロメートルから約200マイクロメートルまたは約400マイクロメートルから約1000マイクロメートルであることを特徴とする。
【0015】
硫酸カルシウム半水和物またはスタッコの別名でも知られる焼石膏は、コーティング塗膜の主要成分であり、結合剤として働く。一部の実施形態において、スラリーに加えられる約50%から約100%の固形物は、アルファ型またはベータ型のいずれかの焼石膏であるが、焼石膏の量は固形物の約10%から約100%の範囲であってよい。結合剤は、ホルムアルデヒド化合物を含めた揮発性の有機成分を含まない。
【0016】
任意の凝結時間調整剤は、焼石膏を水和させるために必要な時間を変更するよう作用する。凝結反応は、硫酸カルシウム半水和物を、水との水和により、石膏の別名でも知られる硫酸カルシウム二水和物に変質させる。凝結時間調整剤がそれによって機能する、少なくとも2つの機構がある。凝結調整剤は、誘導時間を変更し得る。これは、非常に低速の反応により特徴づけられる化学反応の初期の部分である。凝結時間調整剤は、誘導時間を延長するまたは短縮するために選択され得る。誘導時間の後に、反応速度が加速する。凝結調整剤は、誘導時間の後に続く反応の速度を増加または減少するためにも選択してよい。
【0017】
凝結促進剤、凝結遅延剤またはそれらの組み合わせは、凝結時間調整剤として選択され得る。組み合わせは、水和反応の開始を遅延するが、一旦開始されると反応速度を加速することが有益な状況において用いられる。例えば、ノズルを有する噴霧器を用いて塗布される場合、石膏マトリックスの粒子は、ノズルまたはノズル内に堆積し得る。十分な石膏が堆積した場合、噴霧器を詰まらせる場合があり、それによってノズルを掃除または交換できるように製造ラインを停止する必要が生じる。誘導時間の調整は、噴霧器の目詰まり、タイルへのコーティングの付着の失敗またはスラリーがゆっくり凝結して硬化することを可能にする生産ラインの時間の長期化を防止し得る。
【0018】
凝結遅延剤は、水和反応の最初の開始を、スラリーが噴霧器またはスラリー塗布装置を通過した後まで遅延させる必要がある場合に用いられる。一部の実施形態において、凝結遅延剤は、誘導時間をスラリーが噴霧器を通過するまで長期化するために選択されるが、反応時間を短縮させる凝結遅延剤を用いることも考慮される。有用な凝結遅延剤の例には、クエン酸、酢酸、酒石酸、ポリアクリル酸塩ポリマー、コポリマー、誘導体およびそれらの共役塩基カルボン酸塩などのカルボン酸化合物が含まれる。他の凝結遅延剤には、リン酸およびヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)などのモノおよびポリホスホン化合物、ならびにピロリン酸塩、メタリン酸塩およびオルトリン酸塩などの共役塩基モノおよびポリリン酸化合物が含まれる。これらは、噴霧器を凝結石膏が無く維持するのに必要な量で用いられる。少なくとも一実施形態において、凝結遅延剤は、スラリー固形物の重量に基づいて約0.001%から約1%の量で用いられる。
【0019】
スラリーが噴霧器を通過した後、水和反応を促進するために凝結促進剤を加えることは有利であり得る。凝結促進剤は、約0.001%から約1%の量で用いられる。本出願において特に記載のない限り、量、割合または比率は、固形物の重量を基準として与えられる。適した凝結促進剤の例には、天然の粉末石膏または砂糖などの澱粉と共に挽かれた粉末石膏のいずれかとして、硫酸カルシウム二水和物粒子が含まれる。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第2078199号に記載されているHRAは、砂糖と共に挽かれた粉末石膏である。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3573947号に記載されている、別の促進剤、CSAは、砂糖コーティングが粉末石膏の表面上に溶解するようにさらに加熱されたHRAである。他の凝結促進剤には、硫酸アルミニウム塩、塩化亜鉛および硫酸亜鉛塩などのアルミニウム塩および亜鉛塩が含まれる。
【0020】
スラリーを作成し、水和反応を開始するために、焼石膏に水が加えられる。流動性スラリーを作成するためまたはスラリーに選択された塗布方法に適した粘稠度を与えるために、十分な水が加えられるべきである。一部の実施形態は、水を加えて約40から約90の粘稠度を達成する。焼石膏スラリーの「粘稠度」は、焼石膏100グラム当たりに用いられる水のグラム数として定義される。他の実施形態において、粘稠度は約50から約70まで異なる。
【0021】
いくつかの任意の成分も、スラリー中に存在していてよい。これらの成分が乾性成分である場合、それらは水への追加よりも前に焼石膏などの他の乾性原料に加えてよい。あるいは、それらを湿性スラリー中の他の成分と混合してもよい。任意の液状成分を、他の液状成分と混合するか、またはスラリーに直接加えてもよい。
【0022】
コーティングの流動特性は、場合によってはレオロジー改質剤を用いて変更される。例えば、非常に薄いコーティングを天井タイルの裏側に塗布できるようにスラリーの流動性を増加することは、望ましい場合がある。レオロジー改質剤の例には、分散剤または界面活性剤が含まれる。用いられる場合、レオロジー改質剤は、焼石膏の乾燥重量に基づいて約0.01から約0.5%の量で用いられる。他の実施形態において、分散剤は、同基準で約0.05%から約0.2%の量で用いられる。
【0023】
ポリカルボン酸塩分散剤は、石膏スラリーの粘度を減少するために用いられる。ポリカルボン酸塩分散剤には、1種または複数のカルボン酸塩またはカルボン酸の繰返し単位が含まれる。適した繰返し単位の例は、ビニル基、アクリル酸基、マレイン酸基などである。有用なコポリマーは、ポリマー鎖の長さに沿って任意の順序で配列され得る2つ以上の繰返し単位を含むポリマーである。分散剤は、好ましくは櫛形分岐状ポリカルボン酸ポリエーテルである。この配列において、長鎖の繰返し単位は、1つまたは複数のより短い繰返し単位によって分離される。供給材料に適した分散特性を有する任意のポリカルボン酸塩は、本発明において使用可能である。
【0024】
具体的には好ましいポリカルボン酸塩は、少なくとも3つの繰返し単位、アクリル酸単位、マレイン酸繰返し単位および長鎖ポリエーテル繰返し単位を有する。この種のポリカルボン酸塩は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6777517号に開示されており、これ以降「2651型分散剤」と呼ぶ。2651型分散剤は、粉砕機器を通過する時のスラリーの粘度を減少するのに特に効果的であることが分かっている。これらの分散剤は、MELFLUX 2641、MELFLUX 2651およびMELFLUX 3L(BASF Construction Polymers GmbH、独国トロストベルク)と言う名前で市販されている。高い分散効果は、用いられる分散剤の量の減少を可能にする。ポリカルボン酸塩成分は比較的高価であるので、これは工程の経済性に有益である。任意の櫛形分岐状ポリカルボン酸塩はこの工程において役立つであろうことが予期される。他の有用な市販されている分散剤には、MELFLUX 1641(BASF Construction Polymers GmbH、独国トロストベルク)が含まれる。
【0025】
完成した天井タイルの密度を変更するために、場合によっては密度調整剤がスラリーに加えられる。一部の実施形態において、密度調整剤は、コーティング塗膜の密度を減少し、それによってタイル全体の重量を減少する軽量充填剤である。密度調整剤の例には、膨張パーライトおよび膨張バーミキュライトが含まれる。密度調整剤は、存在する場合、乾燥固体重量に基づいて約1%から約10%の量で用いられる。少なくとも一実施形態は、密度調整剤をスラリーへの追加よりも前に焼石膏と混合する。
【0026】
裏側のコーティング塗膜のスラリーを調製するために各種成分混合される。一部の実施形態においては、スラリーを調製するためにピンミキサーなどの高速ミキサーが用いられる。釘やピンと似ている突起が、回転シリンダーに取り付けられている。シリンダーが勢いよく回転する時に、ミキサー内部に乱流が発生し、全ての成分を均質なスラリーに組み込む。
【0027】
いくつかの方法のいずれかは、本コーティング塗膜形成するのに役立つ。ベース天井タイルの裏側にコーティングスラリーを噴霧するのに従来型の噴霧器を用いてよい。一部の実施形態において、スラリーは、ローラーを用いてベースタイルの裏側に塗布される。さらに他の実施形態は、ベース天井タイルの裏側にそれをコートするスラリーを充満(flood)させる。さらに別の実施形態において、焼石膏スラリーは、ベース天井タイルの裏側にスクリードされる。焼石膏スラリーを特定の厚さに塗布する任意の塗布方法を用いてよく、本コーティング塗膜形成されるような多数の追加的なコーティング方法が当業者に明らかになるであろう。
【0028】
焼石膏スラリーを噴霧するための特殊化したスラリー吹き付け機も開発されている。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6273345号に記載されているこうした機械の1つにおいて、凝結促進剤は、噴射ノズルから出た後、スラリーと接触して水和反応を速める。凝結可能なスラリーを噴霧するためのスラリー吹き付け機には、加圧されたスラリーの供給を受け取るために構成され、供給端部および供給端部と向かい合った出口端部を有する主流路が含まれる。第1の圧縮気体注入口は、供給端部と出口端部間に介在して配置され、かつ第1の加圧された気体の供給をスラリーに導入するための流路と流体連通し、第2の加圧された気体注入口は、第1の注入口よりも出口端部に接近して配置され、かつ第2の加圧された気体の供給をスラリーに導入するための流路と流体連通する。補助剤の加圧された供給は、第2の気体の注入口にブレンドされた気体を提供するために、第2の加圧された気体の注入口と流体連通して提供される。流路を通るスラリーの流れならびに流路への第1および第2の気体の流れを制御するために、少なくとも1つの弁が提供される。出口端部からのスラリーの加圧された排出よりも前に、第1の気体がスラリーに注入され、ブレンドされた気体は第1の気体の注入口と出口端部との間のスラリーおよび第1の加圧された気体と混合される。
【0029】
裏側のコーティングスラリーの塗布後、凝結および乾燥させてもよい。コーティングスラリーは、室温で凝結する。しかし、商用の凝結においては、コーティングされた天井タイルを炉または窯内で加熱し、コーティング塗膜の石膏マトリックスの隙間に存在し得る余分な水を追い出すことが望ましい場合がある。
【0030】
コーティングされた生成物には、かみ合って結晶質のマトリックスを形成する硫酸カルシウム二水和物結晶の薄いコーティング塗膜が含まれる。凝結時間調整剤の残滓は、マトリックスの隙間に残り得る。凝結時間調整剤の「残滓」には、凝結時間調整剤の小粒子、それらの分子全体または解離もしくは凝結時間調整剤の反応の生成物が含まれる。例えば、凝結時間調整剤が硫酸アルミニウムなどのイオン性化合物である場合、化合物の解離はマトリックス内にアルミニウムイオンを残す可能性がある。他の凝結時間調整剤は、触媒として働き、凝結時間調整剤との相互作用によって変化せず、分子全体または粒子としてコーティング塗膜内に存在するであろう。
【実施例1】
【0031】
天井タイルの背面に焼石膏の薄いコーティング塗膜を使用する構想を、3インチ×24インチ(7.6cm×61.0cm)のベース天井タイルの細片を用いて試験した。全ての試験細片に水を噴霧してそれらを湿らせた。下表1において、試料1〜4は、乾燥焼石膏粉末を振りかけ、30メッシュスクリーンを通して篩にかけ、次いで水を噴霧してコーティングスラリーを形成した。試料5〜8は、焼石膏を水と混合することにより作したコーティングスラリーを使用した。コーティングスラリーを、この群のそれぞれの試料細片の背面にスクリードした。コーティングされた試料1〜8は、試験に先立って1時間凝結させた。4つの細片は、対照試料としてコーティング無しのままにした(試料9〜12)。
【0032】
試料の試験には、試験細片を温度および湿度が制御されたチャンバー内に置くことが含まれた。細片を、裏側(ある場合はコーティングされた側)をチャンバーの上部に向けて、3インチ(7.6cm)の辺の側で縦方向に支持した。チャンバー内部の条件を、湿度95%で104°F(40℃)に12時間維持し、次いで湿度50%で温度を70°F(21℃)に下げ、12時間維持した。試験細片を、上述の3つのサイクルにかけた。
【0033】
【表1】
【0034】
上記データは、ベース天井タイルの裏側の非常に薄い漆喰コーティング塗膜が、タイルの動きの量を制限することにおいて効果的であり、それによって下垂を低減することを例示している。コーティング塗膜無しの対照試料は、試験の3つのサイクル後の動きが平均で1.77インチ(44.9cm)であった。あらゆるコーティングされた試料の最大の動き合計を有する、コーティングされた試料の試料8は、0.232インチのみの動きが測定された。動きは、パネルの表面上にあるピストンの垂直位置を測定するゲージを用いて測定した。完全な平面度は、「0」として定義される。測定は、試験中に、試料がピストンの重さではなくその自重で下垂していたことを保証するために試験の前後に行う。
【0035】
さらには、本試験は、ベース天井タイルをコーティングする方法が、コーティングされた天井タイルの下垂に抵抗する能力の、あったとしても僅かな変化を生じたことを示す。例えば、試料1および6は、それぞれ、噴霧乾燥およびスクリードすることにより塗布される、ほぼ同じコーティング塗膜の重量を有する。両試料は、試験細片の非常に僅かな動きを生じた。細片の動きは、細片のコーティングに用いる方法よりも、試料のコーティング塗膜の厚さに依存するように思われた。
【実施例2】
【0036】
粉末混合物を、2000グラムのベータ型焼石膏(#2 Moulding Plaster、USG Corporation、イリノイ州シカゴ)を6グラムのHRA凝結促進剤と混合することにより調製した。400グラムの粉末混合物を240グラムの水と混合してコーティングスラリーを作成した。コーティングに先立って、それぞれの試験パネルを約73gの水でプリウェットした。それぞれの試験パネルは、手動のコーティングシステムを用いてコーティングスラリーで下表IIに示されるレベルにコーティングされた、2フィート×4フィート(61cm×122cm)いっぱいのベース天井タイルパネルであった。試験パネルを室温で凝結させ、30分で脆性凝結のように見えた。「脆性凝結(brittle set)」は、「硬質凝結(hard set)」の別名でも知られる。これはスラリーがもはや柔軟ではないが、動くのではなく壊れるか折れる時点である。この時点でコーティング塗膜は、ほぼ完全な機械的強度を達成していた。コーティング塗膜の厚さは、平均155マイクロメートルであると見積もられた。コーティング塗膜の厚さは、天井パネル基板表面が滑らかおよび均一ではないので、計算された見積もりであった。厚さは、試料の小領域において共焦点顕微鏡法によって測定した。1平方フィート当たりのコーティング塗膜の重量に対する厚さの比を測定し、1平方フィート当たりのコーティング塗膜の重量を用いてひと続きの試料の残りのコーティング塗膜の厚さを計算するために用いた。
【0037】
試験パネルを温度および湿度が制御された環境に置いた。70°F(21℃)および湿度50%から、相対湿度90%で温度を70°Fから100°F(37.8℃)に上げて12時間維持し、次いで湿度50%で70°F(21℃)に下げて12時間維持した。細片の動きを測定する前にこのサイクルを3回繰り返した。動きは実施例1のように測定した。
【0038】
【表2】
【0039】
コーティング塗膜の無い試料2−6から2−8と比較して、コーティングされた試料2−1から2−5の動きは著しく減少した。本実施例は、効果がフルサイズの天井タイルパネルに当てはまることを立証した。
【実施例3】
【0040】
本実施例においては、細片の裏のワイヤー筋模様が耐下垂性能に寄与するかどうかを見るために、コーティング塗膜を試験細片試料の滑らかな側または表側に形成した。試料は、0.14グラムのHRA凝結促進剤が加えられた400グラムの焼石膏から作した。このスタッコに、240グラムの水を加えて焼石膏スラリーを形成した。3インチ×24インチ(7.6cm×61.0cm)の細片をコーティングして固まるまで凝結させた。細片を、実施例1および2で用いた試験チャンバー内にコーティング側を上にして置き、完全なサイクルの前後に測定した。
【0041】
70°F(21.1℃)および湿度50%から、温度および湿度を100°F(37.8℃)で湿度90%に上げ、12時間維持した。次いで温度を70°F(21.1℃)および湿度50%に下げ、そこでさらに12時間維持した。これらの温度および湿度を合計3サイクル繰り返した。
【0042】
【表3】
【0043】
試験細片3−1から3−4までの下垂耐性は、実施例1のコーティングされた細片の下垂耐性と同等であった。これは、細片の裏のワイヤー筋模様または天井タイル表面の滑らかな仕上げのどちらも下垂耐性に著しく寄与はしていないことを裏付ける。
【実施例4】
【0044】
比較例
試験細片は、滑らかな表面仕上げにコーティング塗膜形成して実施例3のように調製した。試験チャンバー内に置いた時にコーティング塗膜をチャンバー内の下方に向けた。次いで本試料を前の実施例と同じ試験サイクルにかけた。
【0045】
試験サイクルの終わりに、試験細片は、前の実施例のコーティングされていない細片と凡そ同じ下垂を実証した。本試験は、コーティング塗膜が、タイルの表側ではなく、天井タイルの裏側に形成された場合にのみ有効であることを立証した。
【0046】
上記実施例は、コーティング塗膜の無いベース天井タイルと比較したコーティングされた天井タイルおよび下垂を低減する方法を実証する。ワイヤー筋模様を有する天井タイルの使用は、コーティングされた天井タイルおよび下垂を低減する方法の能力への影響がないことを示した。ベース天井タイルの裏側にコーティング塗膜形成することの重要性は、実施例4において示された。
【0047】
天井タイルにおいて下垂を低減する方法および改善されたコーティングされた天井タイルの特定の実施形態が示され記述されたが、より広範な態様における、ならびに下記の特許請求の範囲に記述される本発明から逸脱することなく、変更や修正がなされ得ることを当業者は理解されたい。