(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992629
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】電解装置および電解水生成方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/46 20060101AFI20160901BHJP
【FI】
C02F1/46 A
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-537861(P2015-537861)
(86)(22)【出願日】2015年2月23日
(86)【国際出願番号】JP2015054980
(87)【国際公開番号】WO2016047160
(87)【国際公開日】20160331
【審査請求日】2015年7月30日
(31)【優先権主張番号】特願2014-192955(P2014-192955)
(32)【優先日】2014年9月22日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横田 昌広
(72)【発明者】
【氏名】太田 英男
(72)【発明者】
【氏名】千草 尚
(72)【発明者】
【氏名】松田 秀三
【審査官】
片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−070582(JP,A)
【文献】
特開平09−155349(JP,A)
【文献】
特開2009−050798(JP,A)
【文献】
特許第3500173(JP,B2)
【文献】
特表2001−514956(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02578542(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質液を流す中間室と陽極室とに区画する第1隔膜と、前記中間室と陰極室とに区画する第2隔膜と、前記第1隔膜に対向して前記陽極室に設けられた陽極と、前記第2隔膜に対向して前記陰極室に設けられた陰極と、を具備する電解槽と、
前記中間室に前記電解質液を供給する電解質液供給部と、
外部に開口する端を有し、前記中間室内を流れた電解質液を排出する排出配管と、
前記排出配管に設けられ、前記中間室内の電解質液を静水状態とする弁と、を備え、
前記電解質液供給部は、前記静水状態で前記中間室内の電解質液に静水圧を印加する水圧印加部を備え、
前記水圧印加部は、電解質液を収容するタンクと、前記タンクと前記中間室とに接続された供給配管と、前記供給配管に設けられ前記タンクから前記中間室へ送液するポンプと、前記ポンプの流出側と前記タンクとに接続され、前記ポンプから送られる電解質液の一部を前記タンクに戻す循環配管と、を備えている電解装置。
【請求項2】
前記水圧印加部は、前記循環配管に設けられ前記循環配管を流れる電解質液の流量を調整する流量調整部を備え、前記流量調整部による流量調整により、前記中間室内の水圧を調整する請求項1に記載の電解装置。
【請求項3】
前記弁は電磁弁であり、
前記電磁弁の開閉を制御するとともに、前記電磁弁の閉塞時に前記陰極および陽極に電圧を印加する制御部を更に備える請求項1に記載の電解装置。
【請求項4】
前記弁は、前記中間室内の水圧が所定値以上となった時に開放する安全弁である請求項1に記載の電解装置。
【請求項5】
前記循環配管は電磁弁を有し、前記電磁弁が開いている場合、前記安全弁が閉じていて、前記中間室内の電解質液が静水となり、前記電磁弁が閉じている場合、前記中間室の水圧が高まって前記安全弁が開き、前記中間室内の電解質液が排出される請求項4に記載の電解装置。
【請求項6】
前記電解質液供給部は、前記中間室と前記ポンプとの間で前記供給配管に設けられ、前記中間室から前記ポンプ側への電解質液の流通を規制する逆止弁を備えている請求項1に記載の電解装置。
【請求項7】
前記排出配管は、前記電解質液を外部に排水するように構成されていて、前記電解質液を再利用せずに廃棄する請求項1に記載の電解装置。
【請求項8】
前記静水圧は、前記陽極室および前記陰極室の水圧よりも高い請求項1に記載の電解装置。
【請求項9】
電解質液を流す中間室と陽極室とに区画する第1隔膜と、前記中間室と陰極室とに区画する第2隔膜と、前記第1隔膜に対向して前記陽極室に設けられた陽極と、前記第2隔膜に対向して前記陰極室に設けられた陰極とを具備する電解槽と、水圧印加部を有し、前記中間室に前記電解質液を供給する電解質液供給部と、外部に開口する端を有し、前記中間室内を流れた電解質液を排出する排出配管とを備える電解装置により電解水を生成する電解水の生成方法であって、
前記陽極室および前記陰極室に水を供給し、
前記水圧印加部に設けられた電解質液を収容するタンクと前記中間室とを接続する供給配管を介して前記タンクから前記中間室へ電解質液を供給し、
前記中間室内の電解質液を静水状態とし、
前記水圧印加部により前記中間室内の前記静水状態の電解質液に静水圧を印加し、
前記供給配管に設けられたポンプの流出側と前記タンクとを接続する循環配管を介して当該ポンプから送られる電解質液の一部を前記タンクに戻し、
前記陽極および陰極に正電圧および負電圧をそれぞれ印加する電解水の生成方法。
【請求項10】
前記循環配管に設けられた流量調整部によって前記中間室内の水圧を調整する、請求項9に記載の電解水の生成方法。
【請求項11】
任意のタイミングで弁を開放し、前記中間室内の電解質液を前記排出配管から排出するとともに、前記電解質液供給部により前記中間室に新たな電解質液を供給する請求項10又は11に記載の電解水の生成方法。
【請求項12】
前記静水状態で前記中間室内の電解質液に前記陽極室および前記陰極室の水圧よりも高い静水圧を印加する、請求項9から11のいずれか1項に記載の電解水の生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここで述べる実施形態は、電解装置および電解水生成方法に関する。
【0002】
(関連出願の引用)
本出願は、2014年9月22日に出願した先行する日本国特許出願第2014−192955号を基礎とし、その優先権の利益を求めているとともに、この日本特許出願の内容全体は引用により本出願に包含される。
【背景技術】
【0003】
従来、アルカリイオン水、オゾン水または次亜塩素酸水などを生成する装置として、3室型の電解槽を有する電解装置が用いられている。3室型の電解槽は、陽イオン交換膜および陰イオン交換膜によって、ケーシング内が陽極室、中間室および陰極室の3室に区切られる。陽極室および陰極室には、陽極および陰極がそれぞれ配置されている。たとえばこの電解装置で次亜塩素酸水を生成する場合は、中間室に電解質液として塩水を流し、陽極室と陰極室に水を流して、中間室の塩水を陰極および陽極で電解することで、陽極室に塩素ガスを発生させ、陽極室で塩素ガスと水との反応から次亜塩素酸水を生成する。同時に陰極室では水素ガスを発生させ水酸化ナトリウム水を生成するものである。
【0004】
このような電解装置では、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とでイオンの拡散性が異なり、また、陽極室および陰極室からイオン交換膜を通して中間室に物質混入があることから、中間室に電解質液を循環供給すると、中間室内の電解質液の水質、特に、pH濃度が変動する。一方で、安定したpH濃度の電解質液を供給するために、電解済みの電解質液を循環することなく廃棄する場合、電解質液の消費量が増大する。また、電解質液の消費量を低減するために、中間室への電解質液の送水を間欠的に行い、電解質液が消費したら入れ替える技術が提案されている。この場合、電解質液を貯蔵したタンクを電解槽よりも高い位置に配設し、水頭圧を利用して、中間室内の電解質液に水圧を印加している。上述した技術に関連する文献を下記に示し、内容全体を引用によりここに包含する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3500173号公報
【特許文献2】特開2012−91121号公報
【特許文献3】特開平09−70582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電解質液の送水を間欠的に行うと、停止している間は中間室に適正な水圧が印加できなくなってしまう問題がある。また、上記のように、電解質液を貯めるタンクを電解槽よりも高い位置に配置すると、電解装置全体が大きくなるという問題がある。
【0007】
本実施形態が解決しようとする課題は、安定したpHで効率良く電解を実施でき、大型化を抑制できる電解装置および電解水生成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の電解装置は、電解質液を流す中間室と陽極室とに区画する第1隔膜と、前記中間室と陰極室とに区画する第2隔膜と、前記第1隔膜に対向して前記陽極室に設けられた陽極と、前記第2隔膜に対向して前記陰極室に設けられた陰極と、を具備する電解槽と、前記中間室に前記電解質液を供給する電解質液供給部と、外部に開口する端を有し、前記中間室内を流れた電解質液を排出する排出配管と、前記排出配管に設けられ、前記中間室内の電解質液を静水状態とする弁と、を備え、前記電解質液供給部は、前記静水状態で前記中間室内の電解質液に静水圧を印加する水圧印加部を
備え、前記水圧印加部は、電解質液を収容するタンクと、前記タンクと前記中間室とに接続された供給配管と、前記供給配管に設けられ前記タンクから前記中間室へ送液するポンプと、前記ポンプの流出側と前記タンクとに接続され、前記ポンプから送られる電解質液の一部を前記タンクに戻す循環配管と、を備えている。
【0009】
上述した構成によれば、安定したpH、または、効率の良い電解実施、あるいは、大型化抑制できる電解想到および電解水生成方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る電解装置の概略的な構成図である。
【
図2】
図2は、第2の実施形態に係る電解装置の概略的な構成図である
【
図3】
図3は、第3の実施形態に係る電解装置の概略的な構成図である。
【
図4】
図4は、第4の実施形態に係る電解装置の概略的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照しながら、種々の実施形態について説明する。なお、実施形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施形態とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。なお、本願において、「静水」は、必ずしも流体が完全に静的な状態であることを要求しない。静水とは、透過することを望まないイオン物質が、イオン選択制の無い多孔質膜を、所定の時間内に、十分にわずかにしか移動しない程度に、流体の運動が穏やかであることを意味してもよく、或いは、流体の圧力が十分に小さいことを意味してもよい。また、本願において、電解水とは、電解によって生成された酸性水およびアルカリ性水等の水を言う。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電解装置1全体の構成を概略的に示す図である。
図1に示すように、電解装置1は、3室型の電解槽10を備えている。この電解槽10は、例えば、ほぼ矩形箱状のケーシングを備え、ケーシング内は、第1隔膜として例えば陰イオン交換膜13aおよび第2隔膜として例えば陽イオン交換膜13bにより、中間室18aと、中間室18aの両側に位置する陽極室18bおよび陰極室18cとに仕切られている。陽極室18b内には陰イオン交換膜13aに近接して陽極15aが設けられ、陰極室18c内に陽イオン交換膜13bに近接して陰極15bが設けられている。陽イオン交換膜13bは、陽イオンを通過させ、陰イオンを通過させない。また、陰イオン交換膜13aは、陰イオンを通過させ、陽イオンを通過させない。陽イオン交換膜13bおよび陰イオン交換膜13aは、公知の材料を使用してよい。陽極15aと陰イオン交換膜13aとの間に、不織布を挟んで配置してもよい。陰極15bと陽イオン交換膜13bとの間にも、同様に不織布を挟んで配置してもよい。
【0013】
上記電解槽10において、中間室18aは、電解質液が流入する第1流入口14aおよび中間室内を流れた電解質液を排出する第1流出口14bを有する。陽極室18bは、電解原水が流入する第2流入口12aおよび陽極室18b内を流れた電解原水を排出する第2流出口12bを有する。陰極室18cは、電解原水が流入する第3流入口16aおよび陰極室18c内を流れた電解原水を排出する第3流出口16bを有する。
【0014】
電解装置1は、電解槽10に加えて、電解槽10の中間室18aに電解質液、例えば、飽和食塩水を供給する電解質液供給部20と、陽極室18bおよび陰極室18cに電解原水、例えば、水を供給する原水供給部80と、陽極15aおよび陰極15bに正電圧および負電圧をそれぞれ印加する電源40と、電解質液供給部20および電源40の動作を制御する制御部500と、を備えている。
【0015】
原水供給部80は、水を供給する図示しない給水源と、給水源から陽極室18bおよび陰極室18cの下部に水を導き、食塩水タンク70に水を補給する給水配管80aと、陽極室18bを流れた水を陽極室18bの上部から排出する第1排水配管80bと、陰極室18cを流れた水を陰極室18cの上部から排出する第2排水配管80cと、を備えている。
【0016】
なお、給水配管80aは3枝に分岐し、一端は、陽極室18bに設けられた第2流入口12aに接続され、一端は陰極室18cに設けられた第3流入口16aに接続され、もう一端は、食塩水タンク70に設けられた流入口に接続されている。この食塩水タンク70に接続された給水配管は、図示しない電磁弁により適時食塩水タンク70に給水し、食塩水タンク70が枯渇しないように補充している。また、第1排水配管80bの一端は、陽極室18bに設けられた第2流出口12bに接続され、第2排水配管80cの一端は、陰極室18cに設けられた第3流出口16bに接続されている。
【0017】
第2流入口12aおよび第3流入口16aの上流側には図示しない流量調整部が設けられており、陽極室18bおよび陰極室18cを流れる水量が2L/分となるように調整されている。なお、標準流量が2L/分で流水した場合に、陽極室18bおよび陰極室18cの水圧が4乃至6kPaとなるように流路および配管が構成されている。
【0018】
電解質液供給部20は、飽和食塩水を生成および収容する食塩水タンク70、食塩水タンク70から中間室18aに飽和食塩水を導く供給配管20a、供給配管20a中に設けられた送液ポンプ50、送液ポンプ50と中間室18aとの間において、供給配管20aから分岐し食塩水タンク70に接続された循環配管32、循環配管32中に設けられた手動の流量調整弁200、中間室18aを流れた電解質液を排出する排出配管20b、および、排出配管20b中に設けられた電磁弁100、を備えている。供給配管20aの一端は、中間室18aに設けられた第1流入口14aに接続され、排出配管20bの一端は、中間室18aに設けられた第1流出口14bに接続されている。本実施形態において、排出配管20bの他端は、外部に開口している。電磁弁100は、制御部500により開閉制御される。
【0019】
電解質液供給部20において、食塩水タンク70、送液ポンプ50、循環配管32、流量調整弁200、および供給配管20aの一部は、中間室18aに所定の水圧を印加する水圧印加部30(
図1中の破線枠内)を構成している。
【0020】
上記のように構成された電解装置1は、送液ポンプ50を作動させて、電解質液を水圧印加部30内にて循環配管32に循環させるとともに、排出配管20bの電磁弁100を閉じて中間室18a内の電解質液を静水状態とさせ、且つ、循環配管32の流量調整弁200を適切に絞ることで循環配管32に連接した中間室18aに電解質液が静水したまま陽極室18bおよび陰極室18cを超える10kPaの水圧を印加することができる。
【0021】
中間室18a内に印加する水圧の大きさは、流量調整弁200のしぼりを調節することによって調節可能である。実施形態の電解装置1では、例えば、中間室18a内の水圧を0~20kPaの範囲で調整可能である。陰イオン交換膜13aや陽イオン交換膜13bを、陽極15aおよび陰極15bに水圧により密着させる構成の方が、電解の特性が安定するため、中間室18aの水圧は、陽極室18bおよび陰極室18cより大きくすることが望ましい。陽極室18bおよび陰極室18cは流水しているために水圧を零とすることは難しいが、本実施形態であれば、排出配管20bの電磁弁100を閉じて中間室18aの電解質液を静水させても、送液ポンプ50を稼働させて循環配管32に電解質液を循環させ、流量調整弁200により適時流水圧力を調整することで、中間室18aに適切な水圧を印加することができる。
【0022】
第1の実施形態に係る電解装置1は、電磁弁100を開くことによって、電解が十分に行われた中間室18a内の電解質液を排出して廃棄する。電解槽10において電解に供された電解質液を適時排出することによって、中間室18a内の電解質液が新鮮な電解質液と入れ替わる。そのため、実施形態の電解装置1は電解質液の水質変化の影響を受けない。電磁弁100を開閉する時間間隔は調節可能であり、電解により消費される電解質量を見込んで適時設定すればよく、解放する時間も中間室18aの体積に合わせて調節することができる。また、制御部500を更に設けることによって、電磁弁100を開閉するタイミングを設定してもよい。たとえば、電解質液の消費が進んで電解電圧値が一定値を超えたら電磁弁100を開閉して電解質液を入れ替えるようにしてもよい。
【0023】
以下、上記のように構成された電解装置1により、実際に食塩水を電解して酸性水(次亜塩素酸および塩酸)とアルカリ性水(水酸化ナトリウム)を生成する動作について説明する。
先ず電磁弁100を閉じた状態で、送液ポンプ50を作動させ、電解槽10の中間室18aに適切な水圧を印加するとともに、陽極室18bおよび陰極室18cに水を給水する。電磁弁100を閉じた状態では、中間室18aが飽和食塩水で満たされると飽和食塩水の一部は循環配管32を通って、再び塩水タンク70へ戻る。この循環配管32に循環する飽和食塩水を流量調整弁200で適時しぼることにより、循環配管32に連接した中間室18aに適切な水圧を印加することができる。実施形態では、中間室18aには10kPaがかかるように流量調整弁200を調整し、陽極室18bおよび陰極室18cには2L/分が流れて4〜6kPaが印加するように設定されている。
【0024】
続いて、電源40から正電圧および負電圧を陽極15aおよび陰極15bにそれぞれ印加する。陽極15aおよび陰
極15bへの電圧の印加は、制御部500によって制御し、もし中間室18aの電解質液を入れ替える際の水圧変動を避けたい場合は、電磁弁100を閉じると同時に電圧印加を開始し、電磁弁100を開くと同時に電圧印加を停止するようにしてもよい。
【0025】
中間室18aへ流入した食塩水において電離しているナトリウムイオンは、陰極15bに引き寄せられ、陽イオン交換膜13bを通過して、陰極室18cへ流入する。そして、陰極室18cにおいて、陰極で水が分解されて水素ガスと水酸イオンを生じ、水酸化ナトリウム水溶液を生成する。このようにして生成された水酸化ナトリウム水溶液および水素ガスは、陰極室18cの第3流出口16bから第2排出配管80cに流出する。生成された水酸化ナトリウム水溶液(アルカリ性水)は、第2排出配管80cを通って排出される。
【0026】
また、中間室18a内の食塩水中で電離している塩素イオンは、陽極15aに引き寄せられ、陰イオン交換膜13aを通過して、陽極室18bへ流入する。そして、陽極15aにて塩素ガスが発生する。その後、塩素ガスは陽極室18b内で水と反応して次亜塩素酸と塩酸を生じる。このようにして生成された酸性水(次亜塩素酸および塩酸)は、陽極室18bの第2流出口12bから第1排出配管80bを通って流出する。
【0027】
中間室18aの食塩水は、電解により消費が進んだ頃合いをみて適時電磁弁100を開いて入れ替え、破棄する。この入替のタイミングや量は、定期的に行ってもよいし、電解電圧値の上昇を検知して行ってもよい。また、入替時は電解を継続してもよいし、電解を一時停止してもよい。食塩水の排出は、電磁弁100を解放し、新たな飽和食塩水を送液ポンプ50によって中間室18aに送水し、古い食塩水を押し出すことによって行う。以上が第1の実施形態の電解装置1を使用した場合の、一連の処理の説明である。
【0028】
上記のとおり、中間室18aは、陽極室18bおよび陰極室18cと比較して水圧が高い。従って、陽イオン交換膜13bおよび陰イオン交換膜13aは、陽極15aおよび陰極15bへ押し付けられ、それぞれ、陰極15bおよび陽極15aと均一に密着しているため、電解抵抗の上昇が抑制されて安定的に電解を行うことができる。また、柔らかい膜である陽イオン交換膜13bおよび陰イオン交換膜13aは、電極と互いに常に近接するため、拡散抵抗の上昇を抑制し、低く安定した電解電圧を維持することができる。そのため、所望の濃度のアルカリ性水または酸性水を得るのに必要な電力が少なくてすむ。
【0029】
このように、第1の実施形態によれば、3室型電解槽を備える電解装置1は、電解時に電解質液を静水させつつも中間室18aに水圧が最適に印加され、かつ、消費した電解質液を適時入れ替えることが可能であり、安定したpHで効率良く電解を実施できる。また、水頭圧を利用して水圧を印加するタイプとは異なり、電解装置1は、電解質液を循環させて中間室18aに水圧を印加するため、電解装置1全体の大きさを抑制できる。
【0030】
次に、他の実施形態に係る電解装置について説明する。なお、以下に説明する他の実施形態において、前述した第1の実施形態と同一の部分には、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略し、第1の実施形態と異なる部分を中心に詳しく説明する。
【0031】
(第2の実施形態)
図2は、第2の実施形態に係る電解装置1の概略的な構成図である。第2の実施形態に係る電解装置1は、中間室18aと循環配管32との間で供給配管20aに設けられた逆止弁400を更に備えている。逆止弁400は、供給配管20aから中間室18aへの電解質液の送水を許容するとともに、中間室18aからポンプ50側への電解質液の逆流を規制する。
第2の実施形態において、電解装置1の他の構成は、第1の実施形態に係る電解装置1と同様である。
【0032】
上記構成を採用した第2の実施形態に係る電解装置1は、中間室18a内で水質が変化した電解質液が供給配管20a側に混入することを防ぐことが可能である。
【0033】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様、電解時に電解質液を静水させつつも中間室18aに水圧が最適に印加され、かつ、消費した電解質液を適時入れ替えることが可能であり、安定したpHで効率良く電解を実施できる。また、水頭圧を利用して水圧を印加するタイプとは異なり、電解装置1は、電解質液を循環させて中間室18aに水圧を印加するため、電解装置1全体の大きさを抑制できる。
【0034】
(第3の実施形態)
図3は、第3の実施形態に係る電解装置1の概略的な構成図である。第3の実施形態に係る電解装置1は、電磁弁100の代わりに、15kPaの水圧で開く安全弁300が排出配管20b中に設けられ、循環配管32中には手動弁200に加えて電磁弁350が設けられている。また、送液ポンプ50は、20kPaの水圧を印加できるものを使用する。第3の実施形態において、電解装置1の他の構成は、第1の実施形態に係る電解装置1と同様である。
【0035】
上記安全弁300は、中間室18aの水圧が15kPa以上となった時に開放する。電磁弁350が開いている状態では、循環配管32に食塩水が流れ、手動弁200により中間室18aに10kPaの水圧がかかるように調整されている。即ち、第3の実施形態に係る電解装置1は、電磁弁350が開いている状態では、安全弁300が閉じたままであり、中間室18aに10kPaの水圧が印加されたまま静水に保たれている。
【0036】
また、電磁弁350が閉じている状態では、送液ポンプ50の能力に応じた20kPaが中間室18aに印加され、排出配管20bに設けられた安全弁300が押し開かれる。その結果、中間室18a内の食塩水が排出配管20bに排出され廃棄され、同時に、新しい食塩水が中間室18aに供給される。即ち、第3の実施形態に係る電解装置1は、電磁弁350が閉じている状態では、安全弁300が開いたままであり、食塩水が中間室18aから排出され続ける。
【0037】
上の説明からわかるように、第3の実施形態では、電磁弁350を開くことによって食塩水を電解に供し、電磁弁350を閉じることによって電解に供した食塩水を廃棄することができる。
【0038】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様、電解時に電解質液を静水させつつも中間室18aの水圧が最適に印加され、かつ、消費した電解質液を適時入れ替えることが可能であり、安定したpHで効率良く電解を実施できる。また、水頭圧を利用して水圧を印加するタイプとは異なり、電解装置1は、電解質液を循環させて中間室18aに水圧を印加するため、電解装置1全体の大きさを抑制できる。
【0039】
(第4の実施形態)
図4は、第4の実施形態に係る電解装置1の概略的な構成図である。第4の実施形態に係る電解装置1は、中間室18aと循環配管32との間で供給配管20aに設けられた逆止弁400を更に備えている。逆止弁400は、供給配管20aから中間室18aへの電解質液の送水を許容するとともに、中間室18aから第1送液ポンプ50側への電解質液の逆流を規制する。第4の実施形態において、電解装置1の他の構成は、第3の実施形態に係る電解装置1と同様である。
上記構成を採用した第4の実施形態に係る電解装置1は、中間室18a内で水質が変化した電解質液が供給配管20a側に混入することを防ぐことが可能である。
【0040】
第4の実施形態によれば、第3の実施形態と同様、電解時に電解質液を静水させつつも中間室の水圧が最適に印加され、かつ、消費した電解質液を適時入れ替えることが可能であり、安定したpHで効率良く電解を実施できる。また、水頭圧を利用して水圧を印加するタイプとは異なり、電解装置1は、電解質液を循環させて中間室18aに水圧を印加するため、電解装置1全体の大きさを抑制できる。
【0041】
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0042】
たとえば、3室の電解槽10を隔てる第1隔膜および第2隔膜は、イオン交換膜である必要はない。隔膜は、透水性を制御されたろ過膜、多孔質膜を用いても良い。上記の実施形態に係る電解装置1は、中間室18a内の水圧条件を正確かつ安定的に付与できるため、透水性のある隔膜を使用した場合であっても、水圧条件を最適化させて所望の電解水を得ることができる。
【0043】
また、電解質液は食塩水以外のものでもよく、用途に応じて適時選定することができる。更にまた、生成する電解水も次亜塩素酸水や水酸化ナトリウム水に限らず、用途に応じて適時選定することができる。
【0044】
また、循環配管の流水圧力(流量)を調整する手段は、手動弁200に限定されることなく、オリフィスや透水性を制御されたフィルターを用いてもよく、また、循環配管32に流量制限部材を付けずに配管自体の径あるいは形状により流量を調整する構成としてもよい。