(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、スポット溶接箇所の近傍に生ずる応力集中を考慮して、スポット溶接位置の配置を適切化することが可能なスポット溶接方法、スポット溶接装置及びスポット溶接プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るスポット溶接方法は、鉄道車両構体を構成する第1の部材と第2の部材とを
、スポット溶接装置を用いてスポット溶接によって接合するスポット溶接方法であって、
スポット溶接装置の算出手段が、第1の部材と第2の部材とをスポット溶接する予定位置の第1〜第n(nは2以上の自然数)の配列をそれぞれ示す第1〜第nのスポットレイアウトデータに基づいて、各予定位置における応力をそれぞれ算出する第1の工程と、
スポット溶接装置の選択手段が、第1の工程で算出された各応力の大きさを比較した結果に基づいて、第1〜第nのスポットレイアウトデータから応力集中の小さい一つのスポットレイアウトデータを選択する第2の工程と、第2の工程で選択されたスポットレイアウトデータが示す予定位置に従って、第1の部材と第2の部材とをスポット溶接する第3の工程とを有
し、第2の工程では、スポット溶接装置の選択手段が、第m(mは1〜nの自然数)のスポットレイアウトデータの各予定位置における応力の大きさのうち最大値を第mの値としたときに、第mの値のうち最小値を示すスポットレイアウトデータを一つのスポットレイアウトデータとして選択する。
【0006】
本発明に係るスポット溶接方法では、複数のスポットレイアウトデータのそれぞれについて、各予定位置における応力をそれぞれ算出している。続いて、算出された各応力の大きさを比較した結果に基づいて、複数のスポットレイアウトデータから応力集中の小さい一つのスポットレイアウトデータを選択している。そのため、この選択されたスポットレイアウトデータに従って、第1の部材と第2の部材とをスポット溶接することにより、スポット溶接箇所の近傍に生ずる応力集中を考慮して、スポット溶接位置の配置を適切化できる。
また、本発明に係るスポット溶接方法では、第mの値のうち最小値を示すスポットレイアウトデータを一つのスポットレイアウトデータとして選択している。そのため、複数のスポットレイアウトデータのうち、応力集中が最も小さいスポットレイアウトデータを選択できる。
【0008】
第1の部材は鉄道車両構体を構成する側梁であり、第2の部材は鉄道車両構体を構成するドアフレームであってもよい。
【0009】
第1の部材は鉄道車両構体を構成する外板であり、第2の部材は鉄道車両構体を構成する長尺状部材であってもよい。
【0010】
第3の工程では、第1の部材と第2の部材とをインダイレクトスポット溶接してもよい。
【0011】
本発明に係るスポット溶接装置は、鉄道車両構体を構成する第1の部材と第2の部材とをスポット溶接によって接合する溶接ロボットを制御するスポット溶接装置であって、第1の部材と第2の部材とをスポット溶接する予定位置の第1〜第n(nは2以上の自然数)の配列をそれぞれ示す第1〜第nのスポットレイアウトデータを記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶された第1〜第nのスポットレイアウトデータに基づいて、各予定位置における応力をそれぞれ算出する算出手段と、算出手段が算出した各応力の大きさを比較した結果に基づいて、第1〜第nのスポットレイアウトデータから応力集中の小さい一つのスポットレイアウトデータを選択する選択手段と、選択手段が選択したスポットレイアウトデータが示す予定位置に従って、第1の部材と第2の部材とをスポット溶接するように溶接ロボットを制御する制御手段とを備え
、選択手段は、第m(mは1〜nの自然数)のスポットレイアウトデータの各予定位置における応力の大きさのうち最大値を第mの値としたときに、第mの値のうち最小値を示すスポットレイアウトデータを前記一つのスポットレイアウトデータとして選択する。
【0012】
本発明に係るスポット溶接装置では、算出手段が、複数のスポットレイアウトデータのそれぞれについて、各予定位置における応力をそれぞれ算出する。選択手段が、算出手段によって算出された各応力の大きさを比較した結果に基づいて、複数のスポットレイアウトデータから応力集中の小さい一つのスポットレイアウトデータを選択する。そのため、制御手段が、この選択されたスポットレイアウトデータに従って、第1の部材と第2の部材とをスポット溶接するように溶接ロボットを制御することにより、スポット溶接箇所の近傍に生ずる応力集中を考慮して、スポット溶接位置の配置を適切化できる。
【0013】
本発明に係るスポット溶接プログラムは、鉄道車両構体を構成する第1の部材と第2の部材とをスポット溶接によって接合する溶接ロボットを制御するスポット溶接プログラムであって、コンピュータを、第1の部材と第2の部材とをスポット溶接する予定位置の第1〜第n(nは2以上の自然数)の配列をそれぞれ示す第1〜第nのスポットレイアウトデータを記憶させる記憶手段と、記憶手段に記憶された第1〜第nのスポットレイアウトデータに基づいて、各予定位置における応力をそれぞれ算出する算出手段と、算出手段が算出した各応力の大きさを比較した結果に基づいて、第1〜第nのスポットレイアウトデータから応力集中の小さい一つのスポットレイアウトデータを選択する選択手段と、選択手段が選択したスポットレイアウトデータが示す予定位置に従って、第1の部材と第2の部材とをスポット溶接するように溶接ロボットを制御する制御手段と、として機能させ
、選択手段は、第m(mは1〜nの自然数)のスポットレイアウトデータの各予定位置における応力の大きさのうち最大値を第mの値としたときに、第mの値のうち最小値を示すスポットレイアウトデータを一つのスポットレイアウトデータとして選択する。
【0014】
本発明に係るスポット溶接プログラムでは、複数のスポットレイアウトデータのそれぞれについて、各予定位置における応力をそれぞれ算出する算出手段として、コンピュータを機能させる。算出手段によって算出された各応力の大きさを比較した結果に基づいて、複数のスポットレイアウトデータから応力集中の小さい一つのスポットレイアウトデータを選択する選択手段として、コンピュータを機能させる。そのため、この選択されたスポットレイアウトデータに従って、第1の部材と第2の部材とをスポット溶接するように溶接ロボットを制御する制御手段としてコンピュータを機能させることにより、スポット溶接箇所の近傍に生ずる応力集中を考慮して、スポット溶接位置の配置を適切化できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、スポット溶接箇所の近傍に生ずる応力集中を緩和して鉄道車両構体の強度向上を図ることが可能なスポット溶接方法、スポット溶接装置及びスポット溶接プログラムを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好適な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0018】
図1を参照して、本実施形態に係るスポット溶接システム1の構成について説明する。スポット溶接システム1は、鉄道車両構体を構成する各種部材をスポット溶接するためのシステムであり、スポット溶接装置10と、溶接ロボット20とを備える。
【0019】
スポット溶接装置10は、コンピュータにより構成され、溶接ロボット20を制御して、溶接ロボット20に2つの部材をスポット溶接せしめる。スポット溶接装置10は、データ記憶部11と、データ処理部12と、駆動制御部13とを有する。
【0020】
データ記憶部11は、ROM、RAM、ハードディスクなどの各種記憶媒体により構成される。データ記憶部11は、複数のスポットレイアウトデータ(本実施形態においては4つのスポットレイアウトデータ)、鉄道車両構体をモデル化したCADデータ、初期条件データ、及び、本実施形態に係るスポット溶接プログラムを記憶する。詳しくは後述するが、スポットレイアウトデータは、鉄道車両構体を構成する一の部材と他の部材とをスポット溶接する予定位置の配列を示す位置データである。
【0021】
データ処理部12は、CPUにより構成される。データ処理部12は、データ記憶部11に記憶されている複数のスポットレイアウトデータに基づいて、スポット溶接の各予定位置における応力を算出する。データ処理部12は、算出された各応力の大きさを比較した結果に基づいて、複数のスポットレイアウトデータから一つのスポットレイアウトデータを選択する。データ処理部12は、選択したスポットレイアウトデータの各予定位置及び鉄道車両構体をモデル化したCADデータから、溶接ロボット20が鉄道車両構体をスポット溶接すべき実際の位置の2次元座標データを生成する。
【0022】
駆動制御部13は、CPU及び通信装置により構成される。駆動制御部13は、データ処理部12が生成した2次元座標データに基づいて溶接ロボット20に信号を出力し、溶接ロボット20の位置決め動作及び溶接動作を制御する。すなわち、駆動制御部13は、溶接ロボット20のオフラインティーチングを行う。
【0023】
溶接ロボット20は、インダイレクト方式でスポット溶接を行う溶接ロボットである。溶接ロボット20は、駆動制御部13から受信した信号に基づいて、位置決め動作及び溶接動作を行う。溶接ロボット20は、本体21と、スポット溶接電極用アクチュエータ22と、コンタクト電極用アクチュエータ23と、位置決めアクチュエータ24とを備える。本体21は、駆動制御部13から受信した信号を、スポット溶接用アクチュエータ22、コンタクトガン用アクチュエータ23、及び位置決めアクチュエータ24に送信する。
【0024】
スポット溶接電極用アクチュエータ22は、本体21の側面21aに取り付けられている。スポット溶接電極用アクチュエータ22は、本体21が有するアクチュエータ(図示せず)により、
図1における矢印A方向(Z方向、鉛直方向)において往復移動可能である。そのため、本体21は、スポット溶接電極用アクチュエータ22の鉛直方向における位置決めを行う。
【0025】
スポット溶接電極用アクチュエータ22は、水平方向(Y方向)に延びるエアシリンダ22a(
図4参照)と、水平方向(Y方向)において突出するようにエアシリンダ22aの先端に取り付けられたスポット溶接電極22b(
図4参照)とを有する。スポット溶接電極22bは、エアシリンダ22aにより、
図1における矢印B方向(Y方向、水平方向)に往復移動可能である。
【0026】
コンタクト電極用アクチュエータ23は、本体21の側面21aに取り付けられている。コンタクト電極用アクチュエータ23は、水平方向(Y方向)に延びるエアシリンダ23a(
図4参照)と、鉛直方向(Z方向)上向きに突出するようにエアシリンダ23aの先端に取り付けられたコンタクト電極23b(
図4参照)とを有する。コンタクト電極23bは、エアシリンダ23aにより、
図1における矢印C方向(Z方向、鉛直方向)に往復移動可能である。
【0027】
位置決めアクチュエータ24は、本体21を
図1における矢印D方向(X方向、水平方向)に往復移動させる。位置決めアクチュエータ24は、スポット溶接電極用アクチュエータ22及びコンタクト電極用アクチュエータ23が延びる方向(Y方向)と直交するように水平方向(X方向)に沿って延びる。位置決めアクチュエータ24は、本体21の水平方向における位置決めを行う。
【0028】
続いて、鉄道車両構体を構成する各種部材をスポット溶接システム1によりスポット溶接する方法について説明する。
図2(a)に示されるように、鉄道車両構体30は、屋根構体31と、側構体32と、台枠33と、妻構体34とが互いに接合されて構成され、乗客を収容する空間を内部に有する箱型形状をなしている。鉄道車両構体30は、例えばステンレス製である。
【0029】
側構体32には、ドア用開口部35が長手方向に沿って交互に設けられている。ドア用開口部35の周囲には、鉄道車両の外側面を構成する外板パネル36が設けられている。ドア用開口部35の周縁部には、ドアフレーム37が設けられている。ドア用開口部35及びドア枠部材37で構成される出入口部38には、ドア39が設置されている。
【0030】
以下では、
図2(b)に示されるように、台枠33の一部である側梁33aとドアフレーム37の下部37a(ドアフレーム下部37a)とをスポット溶接システム1によりスポット溶接する方法を、一例として説明する。側梁33aは、一方向に沿って延びる矩形状のウェブ板33bと、ウェブ板33bの幅方向における両端に一体的に設けられた一対のフランジ板33cとを有する。そのため、側梁33aは、断面C字形状を呈する。
【0031】
ドアフレーム下部37aは、一方向に沿って延びる矩形状のウェブ板37bと、ウェブ板37bの幅方向における一端に一体的に設けられたフランジ板37cとを有する。そのため、ドアフレーム下部37aは、断面L字形状を呈する。フランジ板37cは、ウェブ板37bの長手方向における略中央に位置する。フランジ板37cの長さは、ウェブ板37bの長さよりも短い。
【0032】
側梁33aとドアフレーム下部37aとのスポット溶接は、ウェブ板33b,37b同士が接すると共にフランジ板37cが一方のフランジ板33cに載った状態で、行われる。なお、
図2(b)において、ウェブ板33bに描かれた丸印と、ウェブ板37bに描かれた丸印とが破線で繋がっているのは、これらの丸印の位置においてウェブ板33b,37b同士がスポット溶接により接合されていることを示す。
【0033】
スポット溶接にあたり、まず、スポット溶接装置10のデータ処理部12は、データ記憶部11からスポット溶接プログラムを読み出して、スポット溶接処理を開始する。次に、データ処理部12は、側梁33a及びドアフレーム下部37aをそれぞれモデル化したCADデータと、初期条件データとを、データ記憶部11から読み出す(
図3のステップS1)。
【0034】
初期条件データは、側梁33aとドアフレーム下部37aとがスポット溶接で接合されていると仮定した部材モデルの両端における変位量である。この変位量は、鉄道車両構体30の全体モデルに最大垂直荷重を付加したときの解析結果に基づいて得られる。
【0035】
続いて、データ処理部12は、第1のスポットレイアウトデータをデータ記憶部11から読み出す(
図3のステップS2)。第1のスポットレイアウトデータは、ウェブ板33b,37b同士をスポット溶接する予定位置の第1の配列を示す位置データである。第1の配列は、
図4(a)に示されるように、所定間隔で長手方向に並ぶスポット溶接の予定位置が2列存在している。スポット溶接の予定位置の位置座標を(X,Z)の直交座標系で表したとき、第1のスポットレイアウトデータは、(1,1)、(1,3)、(3,1)、(3,3)、(5,1)、(5,3)、(7,1)、(7,3)となる。
【0036】
続いて、データ処理部12は、CADデータ、初期条件データ及び第1のスポットレイアウトデータに基づいて、各予定位置における応力を算出する(
図3のステップS3)。具体的には、データ処理部12は、第1のスポットレイアウトデータで示される予定位置で、側梁33aとドアフレーム下部37aとがスポット溶接のみで接合されていると仮定した部材モデルの両端に、初期条件データによる変位量を設定し、ウェブ板33bでのフォン・ミーゼス(Von-Mises)応力分布を計算する。次に、データ処理部12は、計算した応力分布から、各予定位置の座標におけるフォン・ミーゼス応力の大きさを取得する。従って、データ処理部12は、座標とフォン・ミーゼス応力の大きさとの組(X座標,Z座標,応力値)を解析データとして、予定位置ごとに得る。
【0037】
続いて、データ処理部12は、全てのスポットレイアウトデータの解析が終了したか否かについて判断する(
図3のステップS4)。本実施形態では、第2〜第4のスポットレイアウトデータの解析がまだ終了していないため、ステップS2に戻り、データ処理部12は、第2のスポットレイアウトデータをデータ記憶部11から読み出し(
図3のステップS2)、同様に応力の解析を行う(
図3のステップS3)。本実施形態では、この処理を第3及び第4のスポットレイアウトデータについても繰り返す。
【0038】
第2のスポットレイアウトデータは、ウェブ板33b,37b同士をスポット溶接する予定位置の第2の配列を示す位置データである。第2の配列は、
図4(b)に示されるように、ウェブ板37bの端部において第1の配列よりもスポット溶接の予定位置が密集していると共に、ウェブ板37bの隅部近傍においてスポット溶接の予定位置が存在していない。スポット溶接の予定位置の位置座標を(X,Z)の直交座標系で表したとき、第2のスポットレイアウトデータは、(1,1)、(2,1)、(2,2)、(3,1)、(3,2)、(3,3)、(4,1)、(4,2)、(4,3)、(5,1)、(5,2)、(5,3)、(7,1)、(7,3)となる。
【0039】
第3のスポットレイアウトデータは、ウェブ板33b,37b同士をスポット溶接する予定位置の第3の配列を示す位置データである。第3の配列は、
図4(c)に示されるように、ウェブ板37bの端部において第1の配列よりもスポット溶接の予定位置が密集しているが、ウェブ板37bの隅部近傍において第2の配列よりもスポット溶接の予定位置が少ない。スポット溶接の予定位置の位置座標を(X,Z)の直交座標系で表したとき、第3のスポットレイアウトデータは、(1,1)、(2,1)、(3,1)、(3,2)、(4,1)、(4,2)、(4,3)、(5,1)、(5,2)、(5,3)、(7,1)、(7,2)、(7,3)となる。
【0040】
第4のスポットレイアウトデータは、ウェブ板33b,37b同士をスポット溶接する予定位置の第4の配列を示す位置データである。第4の配列は、
図4(d)に示されるように、所定間隔で長手方向に並ぶスポット溶接の予定位置が1列存在している。スポット溶接の予定位置の位置座標を(X,Z)の直交座標系で表したとき、第1のスポットレイアウトデータは、(1,1)、(3,1)、(5,1)、(7,1)となる。
【0041】
続いて、データ処理部12は、予定位置ごとに得られた各解析データに基づいて、第1〜第4のスポットレイアウトデータから応力集中が最も小さいスポットレイアウトデータを選択する(
図3のステップS5)。例えば、第1のスポットレイアウトデータの予定位置ごとに得られたフォン・ミーゼス応力の大きさの最大値と、第2のスポットレイアウトデータの予定位置ごとに得られたフォン・ミーゼス応力の大きさの最大値と、第3のスポットレイアウトデータの予定位置ごとに得られたフォン・ミーゼス応力の大きさの最大値と、第4のスポットレイアウトデータの予定位置ごとに得られたフォン・ミーゼス応力の大きさの最大値とを比較して、これらの最大値が最も小さいスポットレイアウトデータを選択する。
【0042】
続いて、データ処理部12は、選択したスポットレイアウトデータの各予定位置及びCADデータから、溶接ロボット20が鉄道車両構体をスポット溶接すべき実際の位置の2次元座標データを生成する(
図3のステップS6)。続いて、駆動制御部13は、データ処理部12が生成した2次元座標データに基づいて溶接ロボット20に信号を出力し、溶接ロボット20の位置決め動作及び溶接動作を制御して、側梁33aとドアフレーム下部37aとのスポット溶接を行う(
図3のステップS7)。
【0043】
具体的には、溶接ロボット20は、本体21及び位置決めアクチュエータ24により、スポット溶接電極22bのXZ平面における位置決めを行う。次に、溶接ロボット20は、エアシリンダ22a,23aを動作させ、
図5に示されるように、エアシリンダ22aによりスポット溶接電極22bをウェブ板37bに押しつけると共に、エアシリンダ23aによりコンタクト電極23bをウェブ板33bに押しつける。次に、溶接ロボット20は、電極22b、23b間に電圧を印加する。これにより、電流が、スポット溶接電極22b、ウェブ板37b、ウェブ板33b、フランジ板33c及びコンタクト電極23bの順に流れ、ウェブ板33b,37b同士が接合される。
【0044】
以上のような本実施形態においては、複数のスポットレイアウトデータのそれぞれについて、各予定位置における応力をそれぞれ算出している。続いて、算出された各応力の大きさを比較した結果に基づいて、複数のスポットレイアウトデータから一つのスポットレイアウトデータを選択している。具体的には、第1〜第4のスポットレイアウトデータについて、予定位置ごとに得られたフォン・ミーゼス応力の大きさの最大値をそれぞれ求め、これらの4つの最大値のうち最も小さい値を示すスポットレイアウトデータを選択している。この選択されたスポットレイアウトデータに従って、側梁33aとドアフレーム下部37aとをスポット溶接することにより、スポット溶接箇所の近傍に生ずる応力集中を考慮して、スポット溶接位置の配置を最適化できる。その結果、スポット溶接箇所の近傍に生ずる応力集中を緩和して、鉄道車両構体30の強度向上を図ることが可能となる。
【0045】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態では側梁33aとドアフレーム下部37aとをスポット溶接する方法を説明したが、これに限られず、鉄道車両構体30を構成する各種部材をスポット溶接する場合に本発明を適用することができる。例えば、本発明を用いて、外板と長尺状部材とをスポット溶接してもよい。より具体的には、例えば、側外板と補強部材又は骨部材とのスポット溶接や、屋根部材と垂木部材とのスポット溶接や、妻外板と端梁又は補強部材とのスポット溶接が挙げられる。
【0046】
本発明は、抵抗スポット溶接や、レーザスポット溶接に広く適用することができる。抵抗スポット溶接としては、例えば、ダイレクト方式や、本実施形態で説明したインダイレクト方式などを採用することができる。
【0047】
本実施形態では、データ処理部12がフォン・ミーゼス応力を計算したが、これに代えて主応力またはせん断応力を計算してもよい。
【0048】
本実施形態では、各電極22b,23bをエアシリンダ22a,23aで駆動していたが、他の駆動手段を用いて各電極22b,23bを駆動してもよい。他の駆動手段としては、サーボモータ及びボールねじの組み合わせや、リニアアクチュエータなどが挙げられる。ただし、エアシリンダ22a,23aは緩衝作用を有するので、エアシリンダ22a,23aを用いてスポット溶接を行うと爆飛が起こりにくくなり、好ましい。
【0049】
スポット溶接の打点回数を計数し、打点回数が所定の閾値を超えたか否かを判定するようにしてもよい。このようにすると、各電極22b,23bの摩耗による交換時期を把握できる。
【0050】
鉄道車両構体30はその長手方向における中央部分が最も撓むので、側梁33aとドアフレーム下部37aとをスポット溶接する本実施形態では、鉄道車両構体30の長手方向における中央近傍に位置する側梁33a及びドアフレーム下部37aをモデル化すると好ましい。