特許第5992715号(P5992715)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992715
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】イオン発生装置
(51)【国際特許分類】
   H01T 23/00 20060101AFI20160901BHJP
   A61L 9/22 20060101ALI20160901BHJP
   H01T 19/04 20060101ALI20160901BHJP
   H05F 3/04 20060101ALN20160901BHJP
【FI】
   H01T23/00
   A61L9/22
   H01T19/04
   !H05F3/04 D
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-86070(P2012-86070)
(22)【出願日】2012年4月5日
(65)【公開番号】特開2013-218807(P2013-218807A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077780
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 泰甫
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【弁理士】
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】轉法輪 徳子
(72)【発明者】
【氏名】湯川 正吾
(72)【発明者】
【氏名】北平 真人
(72)【発明者】
【氏名】原田 茂幸
【審査官】 出野 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−123917(JP,A)
【文献】 特開2008−108521(JP,A)
【文献】 特開2009−266664(JP,A)
【文献】 特開2004−319358(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/108331(WO,A1)
【文献】 特開2002−025791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 23/00
A61L 9/22
H01T 19/04
H05F 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンを発生するための放電電極と放電電極に高電圧を供給する高電圧発生回路部とがハウジングに収容され、ハウジングに、発生したイオンを放出するための放出口が形成され、シールドケースが放出口を除いてハウジングの外面を覆い、高電圧発生回路部にハウジングからはみ出るように接触端子が取り付けられ、シールドケースの内面が接触端子に接触して、シールドケースが高電圧発生回路部に接続されて誘導電極として機能し、放出されたイオンがシールドケースに付着しないように、イオンが放出口から放出される空間に面したシールドケースの外面が絶縁部により覆われたことを特徴とするイオン発生装置。
【請求項2】
高電圧発生回路部は、高圧トランスを有し、シールドケースが高圧トランスの2次側に接続されたことを特徴とする請求項1記載のイオン発生装置。
【請求項3】
シールドケースがコンデンサを介して接地接続されたことを特徴とする請求項1または2記載のイオン発生装置。
【請求項4】
高圧トランスの1次側と2次側との間にコンデンサが介装されたことを特徴とする請求項3記載のイオン発生装置。
【請求項5】
放電電極がノイズ低減素子を介して高電圧発生回路部に接続されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のイオン発生装置。
【請求項6】
シールドケースに、放出口に通じる通過口が形成され、ハウジングの放出口の周縁に、外側に向かって突出するリブが形成され、リブがシールドケースの通過口の内周面を覆うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のイオン発生装置。
【請求項7】
絶縁部は、シールドケースの通過口の周辺を覆うことを特徴とする請求項6記載のイオン発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロナ放電により空気中にイオンを発生するイオン発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コロナ放電によりイオンを発生するイオン発生装置は、放電電極と誘導電極とを有する。安定したコロナ放電を行うためには、放電電極と誘導電極との距離を高い精度で維持することが要求される。そこで、誘導電極をなくせば、この問題を解消できる。特許文献1に、放電電極の周囲に設けられる構成部品を誘導電極として利用したイオン発生装置が記載されている。このイオン発生装置では、放電電極を保持する回路基板といった保持体が高圧発生回路に接続され、保持体が誘導電極として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−96555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のイオン発生装置では、放電電極と保持体との間に高電圧が印加されるので、電磁ノイズが発生し、周囲の電気機器に悪影響を及ぼすおそれがある。この電磁ノイズの影響を抑制するために、放電電極や保持体は、金属製の外装ケースに収容されている。しかし、発生したイオンが金属製の外装ケースに吸着され、放出されるイオンが減ってしまう。
【0005】
本発明は、上記に鑑み、放電電極の周辺の部材を誘導電極として利用しながら、イオンの放出量の低減を図るイオン発生装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、イオンを発生するための放電電極と放電電極に高電圧を供給する高電圧発生回路部とがハウジングに収容され、ハウジングに、発生したイオンを放出するための放出口が形成され、ハウジングがシールドケースに覆われ、シールドケースが高電圧発生回路部に接続されて誘導電極として機能するものである。そして、放出されたイオンがシールドケースに付着しないように、イオンが放出される空間に面したシールドケースの外面が絶縁部により覆われている。
【0007】
放電電極の周辺にあるシールドケースを誘導電極とすることにより、別部材の誘導電極を設ける必要がなくなる。そして、放電電極とシールドケースとの間に高電圧が印加されると、イオンが発生し、イオンは放出口からハウジングの放出口から放出される。ハウジングを覆うシールドケースは絶縁部に覆われているので、シールドケースにイオンが吸着されることはない。
【0008】
シールドケースに、放出口に通じる通過口が形成され、ハウジングの放出口の周縁に、外側に向かって突出するリブが形成され、リブがシールドケースの通過口の内周面を覆う。したがって、リブが、シールドケースの通過口の内周面を覆う絶縁部として機能する。これにより、シールドケースの内周面に、通過するイオンは吸着されない。
【0009】
絶縁部は、シールドケースの通過口の周辺を覆う。シールドケースの通過口の周辺は、イオンが放出される空間に面する。しかし、この周辺を絶縁部により覆うことにより、シールドケースはイオンが放出される空間に露出せず、シールドケースへのイオンの吸着を防げる。
【0010】
高電圧発生回路部は、高圧トランスを有し、シールドケースが高圧トランスの2次側に接続される。そして、シールドケースがコンデンサを介して接地接続される。このコンデンサは高圧トランスの1次側と2次側との間に介装される。ノイズ対策のためにグランドに接続されるシールドケースを誘導電極として利用することができる。また、コンデンサにより、1次側と2次側との間に流れる不要な電流をカットでき、ノイズの低減効果を高めることができる。
【0011】
放電電極がノイズ低減素子を介して高電圧発生回路部に接続される。放電電極に流れるノイズ電流を低減でき、電磁ノイズの発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、シールドケースを誘導電極として利用することにより、誘導電極用の部材を削減でき、装置の小型化にもなる。また、シールドケースの外面が絶縁部により覆われるので、発生したイオンがシールドケースに吸着されて消失することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のイオン発生装置の外観を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図、(d)は背面図
図2】イオン発生装置の内部構造を示し、(a)は上から見た断面図、(b)は横から見た断面図、(c)はハウジングの放出口近傍の断面図、(d)は放出口の拡大断面図
図3】イオン発生装置の分解斜視図
図4】イオン発生装置の電気回路の概略図
図5】ダクトに取り付けられたイオン発生装置を示し、(a)は装着図、(b)は絶縁部があるときのイオンの動きを示す図、(c)は絶縁部がないときのイオンの動きを示す図
図6】イオン発生装置の他の形態の電気回路の概略図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態のイオン発生装置を図1〜3に示す。イオン発生装置は、イオンを発生するイオン発生素子1と、イオン発生素子1に高電圧を供給する高電圧発生回路部2と、これらを収容するハウジング3とを有する。ハウジング3は、樹脂により箱型に形成され、ハウジング3の前面に、イオン発生素子装着用の開口4が形成され、後面は開放されている。イオン発生素子1が開口4においてハウジング3に装着される。高電圧発生回路部2はハウジング3に内装される。
【0015】
イオン発生素子1は、放電電極5を有する。放電電極5は針状の電極とされ、回路基板7に正負の放電電極5がそれぞれ実装される。回路基板7がハウジング3の開口4に嵌め込まれ、回路基板7の外周部分がハウジング3に接着されて、回路基板7が装着される。
イオンの放出口12が形成された放電カバー11が、イオン発生素子1を覆うように被せられ、ハウジング3に接着されて取り付けられる。樹脂製の放電カバー11がハウジング3に一体化される。すなわち、放電カバー11は、ハウジング3の一部となり、ハウジング3に円形の放出口12が形成されたことになる。放電カバー11の周囲がシール部材13により囲まれる。イオン発生装置がダクトに取り付けられたとき、シール部材13はダクトの壁面に密着して空気の漏れを塞ぐ。なお、図中、14は取付用の固定足である。
【0016】
ハウジング3は、装置から漏洩する電磁ノイズを低減するために、導電性を有するシールドケースである外装ケース15に覆われている。金属製の外装ケース15は、放出口12を除いてハウジング3の外面を覆う。
【0017】
高電圧発生回路部2は、高圧トランス8、コネクタ9、電子部品等が実装された制御基板10を有する。制御基板10は、ハウジング3に収容され、ハウジング3の内壁に設けられた基板保持部20により支持される。
【0018】
高電圧発生回路部2の制御基板10とイオン発生素子1の回路基板7とは、複数の接続端子21によって電気的に接続される。そして、高圧トランス8と正負の放電電極5とが接続端子21を通じて電気的に接続される。高圧トランス8は、導電性のシールドキャップに覆われている。
【0019】
高電圧発生回路部2の制御基板10は、プリントパターンおよび電子部品の導電端子、コネクタ9の接続導電端子を除いて、充填樹脂22によりハウジング3内に密封されている。このモールドによって、高電圧発生回路部2の耐湿絶縁性が確保される。充填樹脂22の充填時に、イオン発生素子1の回路基板7は、充填樹脂22が漏れないようにハウジング3の開口4を密封している。
【0020】
図4に示すように、高電圧発生回路部2は、高圧トランス8を駆動する電源回路25を備えている。制御基板10に実装された電源回路25は電源入力用のコネクタ9に接続され、商用電源等の外部電源26に接続されたコネクタ9から電源回路25に電源が供給される。
【0021】
電源を供給された電源回路25は動作して、高電圧発生のための発振信号を出力する。電源回路25からの発振信号を受けて駆動した高圧トランス8は、高電圧を発生して、正の放電電極5および負の放電電極5に高電圧を出力する。
【0022】
正の放電電極5および負の放電電極5は、ダイオード27,28を通じて高圧トランス8の2次側コイルの一方の出力端子に接続される。正の放電電極5に接続されるダイオード27は負の放電電極5に接続されるダイオード28とは逆向きに配されている。
【0023】
図2に示すように、外装ケース15は、制御基板10に取り付けられた接触端子29に接触している。外装ケース15は、接触端子29を通じて高電圧発生回路部2に接続され、誘導電極として機能する。図4に示すように、外装ケース15は、高圧トランス8の2次側コイルの他方の出力端子に接続され、放電電極5と外装ケース15との間に高電圧が印加される。
【0024】
また、外装ケース15は、高電圧発生回路部2を通じて接地接続され、外装ケース15はアースされる。外装ケース15は、コンデンサ30を介して高圧トランス8の1次側コイルと電源回路25との中間点に接続される。これにより、高圧トランス8の1次側と2次側とがコンデンサ30を介して接続される。
【0025】
外装ケース15は、金属製の前ケース15aと後ケース15bとに分割されている。後ケース15bは、前面が開放された箱型に形成され、ハウジング3を収容する。後ケース15bの後面に、コネクタ用の開口31が形成されている。前ケース15aは、蓋型に形成され、放電カバー11を取り付けたハウジング3の前面を覆う。放電カバー11を覆う前ケース15aの一部が前側に突出して、突出部32が形成される。突出部32に、各放出口12に通じる一対の円形の通過口33が形成される。
【0026】
ハウジング3の放出口12の周縁に、環状のリブ35が形成されている。リブ35は、前側(外側)に向かって突出するように形成され、外装ケース15の突出部32よりも前側に突出している。外装ケース15の通過口33は放出口12よりも大径とされ、リブ35が通過口33に嵌め込まれ、通過口33の内周面がリブ35に密着している。すなわち、通過口33の内周面は、リブ35に覆われる。
【0027】
外装ケース15の突出部32の周囲に、シール部材13が設けられる。シール部材13は、突出部32を取り囲むように、ゴム等の弾性材料により枠状に形成される。シール部材13は、外装ケース15に貼り付けられ、イオン発生装置がダクト等に取り付けられたとき、ダクトと外装ケース15との隙間を塞いで空気の漏れを防ぐ。
【0028】
ここで、外装ケース15は、放出されたイオンが吸着しないように、絶縁部により覆われている。外装ケース15の突出部32が電気絶縁性を有する被覆シート36により覆われる。この被覆シート36が絶縁部とされる。樹脂製の被覆シート36に、通過口33に対応して2つの孔37が形成され、被覆シート36は、通過口33の周辺を覆うように、突出部32の前面に貼着される。リブ35が被覆シート36と面一となる、あるいは被覆シート36よりも前側に突出するように、被覆シート36の厚さが設定される。
【0029】
また、外装ケース15の通過口33の内周面は、電気絶縁性を有するハウジング3のリブ35により覆われている。このリブ35も絶縁部として機能する。
【0030】
次に、本イオン発生装置の組立手順を図3に基づいて説明する。まず、最初にハウジング3の開口4に、イオン発生素子1の回路基板7が接着されて取り付けられる。ハウジング3の開口4を覆うように、放電カバー11がハウジング3の前面に接着されて取り付けられる。次に、ハウジング3の後面を上にして、ハウジング3に制御基板10が挿入される。制御基板10は基板保持部20に支持される。このとき、接触端子29の先端が、ハウジング3に形成された切欠き40から外部にはみ出した状態となる。また、イオン発生素子1の回路基板7に取り付けられた接続端子21が制御基板10のスルーホールに嵌り、接続端子21が制御基板10にはんだ付けされる。
【0031】
続いてハウジング3に上方から充填樹脂22が注入される。充填樹脂22の硬化後、前ケース15aがハウジング3の前面に被せられ、後ケース15bもハウジング3の後面から被せられる。後ケース30bの側面には固定片41が形成されており、ハウジング3の固定足14に形成された貫通孔42に固定片41が差し込まれる。固定片41が前ケース15aの側面と重なり、ねじ43により固定される。これによって、前ケース15aと後ケース15bとが合体して、1つの外装ケース15となる。外装ケース15の内面に接触端子29が接触し、外装ケース15がグランドに導通することにより、外装ケース15による電磁ノイズの低減の効果が得られる。
【0032】
外装ケース15の前ケース15aの突出部32の前面に被覆シート36が貼り付けられる。突出部32の周りにおいて、前ケース15aにシール部材13が貼り付けられる。
【0033】
上記のように組み立てられたイオン発生装置は、空気調和機等の電気機器に組み込まれる。電気機器に、発生したイオンを送風によって室内に放出するための送風路が設けられ、図5に示すように、送風路を形成するダクト44にイオン発生装置が装着される。
【0034】
ダクト44の周壁に、取付口45が形成され、取付口45にハウジング3の放電カバー11が嵌め込まれる。シール部材13がダクト44の外壁に密着して、ハウジング3とダクト44との隙間が塞がれ、ダクト44から外部への空気の漏れを防止することができる。
【0035】
ハウジング3の放電カバー11の前面がダクト44の内部に臨み、放出口12がダクト44と連通する。このとき、被覆シート36がダクト44の内部に露出して、外装ケース15がダクト44に臨まないように隠される。なお、放電カバー11の前面は、ダクト44の周壁よりもわずかに内部に突出している。したがって、被覆シート36に覆われた突出部32の前面はダクト44の内部に位置する。
【0036】
イオン発生装置が駆動すると、高電圧発生回路部2が動作して、高圧トランス8の作動により放電電極5と誘導電極である外装ケース15との間に高電圧が印加される。各放電電極5の先端でコロナ放電が生じる。各放電電極5の先端では、正イオンおよび負イオンが発生する。正の放電電極5では、負イオンがダイオード27を通って流れ、正イオンだけが放出される。負の放電電極5では、正イオンがダイオード28を通って流れ、負イオンだけが放出される。
【0037】
発生する電磁ノイズを低減するために設けられる外装ケース15を誘導電極とすることにより、別部材の電極を設ける必要がなくなる。これにより、部材の削減や組立工数の削減となり、コストを低減できる。しかも、別部材の誘導電極がなくなるので、ハウジング3の放出口の近辺をコンパクトにでき、イオン発生装置の小型化を図れる。
【0038】
また、放出口12からハウジング3内に導電性の異物が混入しても、放電電極5の周囲は絶縁物しかないので、放電電極5が短絡することがなくなり、イオン発生装置の故障を防止できる。さらに、水の浸入や結露があっても同様に短絡を防止できる。
【0039】
高圧トランス8の1次側と2次側とがコンデンサ30を介して接続されることにより、放電に伴う交流電流だけを直結することができ、異常時に1次側に流れる高周波電流の直流成分をカットすることが可能となって、異常時に2次側に直流成分が流れることを防いで安全性を高めることができる。また、交流成分を2次側に流さずに、グランド(GND)に流すことができ、輻射ノイズの発生を低減できる。
【0040】
電磁ノイズの発生を低減するために、図6に示すように、放電電極5がノイズ低減素子50を介して高電圧発生回路部2に接続される。ノイズ低減素子50は、電流制限素子あるいはコイルとされ、各放電電極5とダイオード27,28との間に介装される。なお、電流制限素子は、抵抗などとされる。ノイズ低減素子50により、放電電極5に流れるノイズ電流を低減でき、電磁ノイズの発生を抑制できる。なお、図中、高圧トランス8の1次側と2次側との間にコンデンサ30が介装されていないが、ここにコンデンサ30を配してもよい。
【0041】
上記の放電電極5から発生したイオンは、放出口12からダクト44内に放出される。ダクト44内の送風により、イオンは運ばれ、ダクト44の出口から高濃度のイオンを含んだ風が吹き出される。
【0042】
ここで発生する正イオンは、水素イオン(H)の周囲に複数の水分子が付随したクラスターイオンであり、H(HO)(mは0または任意の自然数)として表される。また負イオンは、酸素イオン(O)の周囲に複数の水分子が付随したクラスターイオンであり、O(HO)(nは0または任意の自然数)として表される。
正イオンおよび負イオンの両極性のイオンを放出する場合には、空気中の正イオンであるH(HO)(mは0または任意の自然数)と、負イオンであるO(HO)(nは0または任意の自然数)とが略同等量発生する。両イオンが空気中を浮遊するカビ菌やウィルスの周りを取り囲んで付着し、その際に生成される活性種の水酸化ラジカル(・OH)の作用により、浮遊カビ菌などを除去することが可能となる。
【0043】
図5(b)に示すように、ダクト44に面した外装ケース15の突出部32には、被覆シート36が設けられているので、イオンに接触する外装ケース15の前面は電気的に絶縁される。そのため、放出口12から放出されたイオンは外装ケース15に吸着されない。図5(c)に示すように、被覆シート36がない場合、外装ケース15の前面は、外部に露出する。放出されたイオンの一部が外装ケース15の電荷に引かれて外装ケース15の前面に吸着される。そのため、ダクト44から出るイオンが減少する。実験によると、約1割のイオンが外装ケース15に吸着されるという結果が得られた。しかし、被覆シート36を設けることにより、外装ケース15にイオンが吸着されることはなく、放出されるイオンの減少を防止でき、ダクト44から出るイオンを十分に確保できる。
【0044】
このように、外装ケース15におけるイオンに接触する可能性のある外面が露出することがないように、被覆シート36を設けることが重要である。そこで、外装ケース15の通過口33の端面も覆うように被覆シート36を貼り付けてもよい。また、被覆シート36は、外装ケース15全面に設ける必要はない。すなわち、ハウジング3の放出口12から放出されたイオンが付着する可能性がある外装ケース15の外面だけに被覆シート36を設ければよい。例えば、突出部32の前面がダクト44に臨む場合、突出部32の前面に被覆シート36が設けられる。ただし、ハウジング3全体がダクト44内に配置される場合には、シールドケース33の全面を被覆シート36で覆うことが必要となる。
【0045】
以上のように、ハウジング3を機能的に覆うことができない部分を除いて、外装ケース15で覆うことができるので、制御基板や電子部品に対して電磁ノイズの低減対策を行うよりも簡単に電磁ノイズを抑えることが可能となる。したがって、放電を伴う装置や高電圧発生回路部を有する小型のイオン発生装置において応用できるとともに、これらのイオン発生装置を空気調和機、空気清浄機、冷蔵庫、掃除機等の電気機器や自動車等の乗物といった各種の製品に搭載する際にも電磁ノイズを抑制することが可能になる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正および変更を加え得ることは勿論である。絶縁部として、塗装により絶縁膜を形成してもよい。イオンが接触する可能性のあるシールドケースの表面に電気絶縁性材料を塗布したり、吹き付けたりすることにより、絶縁膜が形成される。
【0047】
また、ハウジングにリブを設けなくてもよい。この場合、シールドケースの通過口の端面が露出する。そこで、通過口の端面にも被覆シート等の絶縁部を設ける。
【符号の説明】
【0048】
1 イオン発生素子
2 高電圧発生回路部
3 ハウジング
4 開口
5 放電電極
8 高圧トランス
11 放電カバー
12 放出口
15 外装ケース
25 電源回路
27 ダイオード
28 ダイオード
30 コンデンサ
32 突出部
33 通過口
35 リブ
36 被覆シート
50 ノイズ低減素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6