(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992719
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】タイヤ空気圧異常検出装置
(51)【国際特許分類】
G01M 17/02 20060101AFI20160901BHJP
【FI】
G01M17/02 B
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-95252(P2012-95252)
(22)【出願日】2012年4月19日
(65)【公開番号】特開2013-221905(P2013-221905A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】本間 恵太
【審査官】
北川 創
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭59−128479(JP,U)
【文献】
特開2000−230878(JP,A)
【文献】
特開2004−347514(JP,A)
【文献】
特開2006−266439(JP,A)
【文献】
特開平08−229754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00 − 17/02
B62D 65/00 − 65/18
B60C 25/00 − 25/20
G01M 1/00 − 1/38
B60C 19/00 − 19/12
B60B 31/00 − 31/06
B60B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両生産工程において車輪のタイヤ空気圧の異常を検出するタイヤ空気圧異常検出装置であって、
固定側受けと、押動手段による所定の押圧力で押動移動する可動側受けとによって車輪を挟持クランプする車輪クランプ手段を有し、
前記可動側受けの移動位置を検出する可動側受け位置検出手段と、
該可動側受け位置検出手段により検出される車輪クランプ時の可動側受けの移動位置と予め設定されたタイヤ空気圧規定値との比較結果に基づいてタイヤ空気圧異常を検出する異常検出手段と、を備え、
前記車輪クランプ手段は、バランスウェイト装着装置の反転装置であることを特徴とするタイヤ空気圧異常検出装置。
【請求項2】
車両生産工程において車輪のタイヤ空気圧の異常を検出するタイヤ空気圧異常検出装置であって、
固定側受けと、押動手段による所定の押圧力で押動移動する可動側受けとによって車輪を挟持クランプする車輪クランプ手段を有し、
前記可動側受けの移動位置を検出する可動側受け位置検出手段と、
該可動側受け位置検出手段により検出される車輪クランプ時の可動側受けの移動位置と予め設定されたタイヤ空気圧規定値との比較結果に基づいてタイヤ空気圧異常を検出する異常検出手段と、を備え、
前記車輪クランプ手段は、搬送工程に配置されたことを特徴とするタイヤ空気圧異常検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ空気圧異常検出装置に関し、特に車両生産工程において車輪のタイヤ空気圧の異常を検出するタイヤ空気圧異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用の車輪は、タイヤマウンティング装置を用いてタイヤのビード部をホイールのリム部に装着し、このタイヤに圧力調整した圧力空気を供給してタイヤを膨らませる。このタイヤ空気圧が調整された車輪は、更にホイールにバランスウェイトを取り付けることで回転バランスが調整される。この回転バランスを調整した車輪が車体組立ラインに供給されて車体に取り付けられる。
【0003】
このホイールに装着されたタイヤに圧縮空気を供給する空気注入装置の一例として特許文献1がある。特許文献1の空気注入装置110は、
図6に模式的に示すように、ホイール101を押さえるホイールシールリング111と、タイヤ103とリム102との間に隙間gを形成するようにタイヤ103を押圧するタイヤ押え112と、ホイールシールリング111とタイヤ押え112とで区画された空間115及び隙間gを介してタイヤ103内に空気を注入する空気注入手段113と、タイヤ空気圧を間接的に検出する内圧検出手段114を備える。このように構成された空気注入装置110において、ホイールシールリング111がホイール101を押え、タイヤ押え112がタイヤ103とリム102との間に隙間gを形成するようにタイヤ103を押圧すると共に、空気注入手段113によりホイールシールリング111とタイヤ押え112とで区画された空間115及び隙間gを介してタイヤ103に空気を注入し、内圧検出手段114で検出した圧力に基づいて目標タイヤ圧に設定する。
【0004】
また、車輪にバランスウェイトを取り付けるバランスウェイト装着装置は、例えば特許文献2に開示されるように、リム裏面の開口部が上方に向いた状態でリム裏面にバランスウェイトを取り付けた後、反転機によって車輪を反転させ、リム裏面の開口部が下方を向いた状態でバランスウェイトをホイールに装着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−129714号公報
【特許文献2】特開2006−266439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、タイヤ空気圧が規定圧に設定された車輪は、例えばホイールのリム部とタイヤのビード部に微細なごみが噛みあったり、タイヤにピンホールがあったりするとタイヤ空気圧が低下することがある。
【0007】
このタイヤ空気圧の低下による異常が生じても、完成車検査時のブレーキテストやサイドスリップテストなどの各種台上テストを行うまでは発見されなかった。この完成車検査時にタイヤ空気圧の異常が発見されると、通常のタイヤ取付工程以外の場所で車体から不具合の車輪を外して、再度タイヤ空気圧が調整された車輪を車体に組み付けなければならず、その作業に多大な作業工数が必要となる。
【0008】
そこで、本発明者は、車両生産工程において車輪のタイヤ空気圧が調整された後、車輪にバランスウェイトを取り付けて回転バランスを調整するバランスウェイト装着工程において、バランスウェイト装着装置に設けられた反転装置により固定側押さえと可動側押さえで車輪をクランプして反転する際に、車輪を押圧する可動側押さえのストローク量が車輪のタイヤ空気圧の変化に相応して種々変化することに着目し、タイヤ空気圧の異常を検出することを見出した。
【0009】
従って、かかる点に鑑みなされた本発明の目的は、車両生産工程において車輪を押圧してクランプする可動側押さえの移動位置の変化に基づいてタイヤ空気圧の異常を検出するタイヤ空気圧異常検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する請求項1に記載のタイヤ空気圧異常検出装置は、車両生産工程において車輪のタイヤ空気圧の異常を検出するタイヤ空気圧異常検出装置であって、固定側受けと、押動手段による所定の押圧力で押動移動する可動側受けとによって車輪を挟持クランプする車輪クランプ手段を有し、前記可動側受けの移動位置を検出する可動側受け位置検出手段と、該可動側受け位置検出手段により検出される車輪クランプ時の可動側受けの移動位置と予め設定されたタイヤ空気圧規定値との比較結果に基づいてタイヤ空気圧異常を検出する異常検出手段と、を備え、
前記車輪クランプ手段は、バランスウェイト装着装置の反転装置であることを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、車両生産工程において車輪のタイヤ空気圧の異常を検出するタイヤ空気圧異常検出装置であって、固定側受けと、押動手段による所定の押圧力で押動移動する可動側受けとによって車輪を挟持クランプする車輪クランプ手段を有し、前記可動側受けの移動位置を検出する可動側受け位置検出手段と、該可動側受け位置検出手段により検出される車輪クランプ時の可動側受けの移動位置と予め設定されたタイヤ空気圧規定値との比較結果に基づいてタイヤ空気圧異常を検出する異常検出手段と、を備え、前記車輪クランプ手段は、搬送工程に配置されたことを特徴とする。
【0011】
これによると、固定側受けと押動手段により押動付勢される可動側受けを有する車輪クランプ手段に、可動側受け位置検出手段及び異常検出手段を付加する簡単な構成でタイヤ空気圧異常検出装置を構成できる。車両生産工程で押動手段により所定の押圧力で押動移動する可動側受けで車輪を押動して車輪を挟持クランプした際の可動側受けの移動位置と予め設定されたタイヤ空気圧規定値とを比較することでタイヤ空気圧異常が検出できる。
【0012】
これにより、生産工程においてタイヤ空気圧が調整された後にタイヤ空気圧の異常が検出でき、その後の工程において異常なタイヤ空気圧の車輪が車体に組み付けられる不具合を未然に防止できる。
【0015】
また、請求項
1及び請求項
2は、タイヤ空気圧異常検出装置の具体的配置を示すもので、請求項
1はバランスウェイト装着装置の反転装置に配置し、請求項
2は搬送装置に配置したものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、固定側受けと押動手段により押動付勢される可動側受けを有する車輪クランプ手段に、可動側受け位置検出手段及び異常検出手段を付加する簡単な構成でタイヤ空気圧異常検出装置を構成できる。車両生産工程で押動手段により所定の押圧力で押動移動する可動側受けで車輪を押動して車輪を挟持クランプした際の可動側受けの移動位置と予め設定されたタイヤ空気圧規定値とを比較することでタイヤ空気圧異常が検出できる。これにより、生産工程においてタイヤ空気圧が調整された後にタイヤ空気圧の異常が検出でき、タイヤ空気圧が異常な車輪が車体に組み付けられる不具合が未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】タイヤ空気圧異常検出装置の平面構成説明図である。
【
図3】模式的に可動側タイヤ受けを示す
図2のIII矢視図である。
【
図4】タイヤ空気圧異常検出装置の動作フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、車輪のタイヤ空気圧異常検出装置の一実施の形態をバランスウェイトをホイールに取り付けるバランスウェイト装着装置の反転装置に配置した例を
図1乃至
図5を参照して説明する。
【0019】
図1は車両生産工程図であり、車輪組立工程S1においてタイヤマウンティング装置によりタイヤ103のビード部をホイール101のリム部102に装着し、工場空気源から供給された圧縮空気を圧力調整した圧力空気を供給してタイヤ103を膨らませる。このタイヤ空気圧が規定圧に設定された車輪は搬送工程S2において搬送コンベヤ等に搭載されてバランスウェイト装着装置に搬送され、次のバランスウェイト装着工程S3においてバランスウェイト装着装置によりバランスウェイトをホイール101に装着して車輪の回転バランスを調整する。そして、回転バランスが調整された車輪は搬送工程S4において搬送コンベヤ等により車体組立ライン搬送され、車輪組付工程S5で車体に組み付けられる。
【0020】
図2は、バランスウェイト装着装置において車輪100の裏表にバランスウェイトを装着するために車輪100を挟持クランプして反転する反転装置1及びタイヤ空気圧異常検出装置10の平面構成図、
図3は模式的に示す
図2のIII矢視図である。
【0021】
車輪クランプ手段である反転装置1は、バランスウェイト装着装置に配置された固定側受け2と、この固定側受け2に対して接離する方向に延在する一対のガイドレール4を有し、ガイドレール4に沿って固定側受け2に対して接離方向に移動可能に保持される可動側受け5を備える。固定側受け2に車輪100のタイヤ102が当接する固定側タイヤ受け3を設ける一方、可動側受け5に固定側タイヤ受け3と対向してタイヤ103に当接する円筒状の可動側タイヤ受け6が互いに離反して一対設けられる。
【0022】
更に、可動側受け5を固定側タイヤ受け3と可動側タイヤ受け6との間で車輪100を押圧してクランプする押圧位置と、仮想線5a及び6aで示すように可動側受け5及び可動側タイヤ受け6が固定側受け2及び固定側タイヤ受け3から大きく離反して車輪100をアンクランプする退避位置との間で移動せしめる押動手段、本実施の形態ではエアシリンダによって構成されるクランプシリンダ7を有する。クランプシリンダ7は、ロッド7aが可動側受け5に連結され、伸長側圧力室7A及び収縮側圧力室7Bに選択的に圧力空気を供給することで伸長或いは収縮動作して可動側タイヤ受け6を押圧位置及び退避位置に移動する。
【0023】
クランプシリンダ7の伸長側圧力室7A及び収縮側圧力室7Bが電磁弁等の圧力空気供給切換弁8を介在して圧力空気供給源となるエア供給タンク9に連結する。このエア供給タンク9には、工場空気源から供給される圧縮空気を予め設定された圧力に圧力調整した圧力空気が貯留される。そして、圧力空気供給切換弁8の切り換えによりエア供給タンク9から調圧された圧力空気をクランプシリンダ7の伸長側圧力室7A或いは収縮側圧力室7Bに選択的に供給する。伸長側圧力室7Aに圧力空気を供給することでクランプシリンダ7が伸長して可動側受け5を押圧位置方向に移動し、収縮側圧力室7Bに圧力空気を供給することでクランプシリンダ7が収縮して可動側受け5が退避位置方向に移動をする。
【0024】
ここで、予め設定された設定圧力の圧力空気をクランプシリンダ7の伸長側圧力室7Aに供給して所定の押圧力で押動付勢される可動側タイヤ受け6と固定側タイヤ受け3との間において車輪100に所定の押圧力を付与して挟持クランプすると、クランプされる車輪100のタイヤ空気圧が大きいときにはタイヤ102の撓み変形が小さく、
図2に示す固定側タイヤ受け5と可動側タイヤ受け6との間の距離Aの変動が小さくクランプシリンダ7のストローク量が比較的小さく、可動側受け5のストローク量Sが小さい。一方、タイヤ空気圧が小さいときにタイヤ102の撓み変形が大きく固定側タイヤ受け3と可動側タイヤ受け6との間の距離Aの変動が大きくクランプシリンダ7のストローク量が比較的大きくなり、可動側受け5のストローク量Sが大きくなる。即ち、可動側受け5の移動位置とタイヤ空気圧とは相関し、可動側受け5の移動位置と予め設定されたタイヤ空気圧との相関によって車輪100のタイヤ空気圧が検知できる。
【0025】
このように構成された反転装置1にタイヤ空気圧異常検出装置10が配置される。タイヤ空気圧異常検出装置10は、車輪100をクランプした時の可動側受け5の移動位置を検出する可動側受け位置検出手段となる計測シリンダ11を備える。計測シリンダ11はロッド11aの先端が可動側受け5に連結され、可動側受け5の移動に伴うロッド11aの伸縮移動によって可動側受け5の移動位置を検知する。計測シリンダ11は異常検出手段12と接続されており、計測データを異常検出手段12に出力する。異常検出手段12は、計測シリンダ11からの計測データと予め設定された車両の仕様におけるタイヤ空気圧異常判定データDとを照合して比較の結果に基づいて車輪100のタイヤ空気圧が規定値か否か、即ちタイヤ空気圧の異常を検出をし、表示装置13に表示する。
【0026】
例えば、タイヤ空気圧異常判定データDは、予め設定されたタイヤ空気圧規定値の上限値の圧力空気を注入した車輪100を、設定された圧力空気をクランプシリンダ7の伸長側圧力室7Aに供給して可動側タイヤ受け6と固定側タイヤ受け3の間で挟持クランプした際の可動側受け5の移動位置を計測シリンダ11で計測した計測値をタイヤ空気圧規定値の空気圧上限値L1と設定し、タイヤ空気圧規定値の下限値の圧力空気を注入した車輪100を、設定された圧力空気をクランプシリンダ7の伸長側圧力室7Aに供給して所定の押圧力で可動側タイヤ受け6と固定側タイヤ受け3との間で挟持クランプした時の可動側受け5の移動位置を計測シリンダ11で計測した計測値を空気圧下限値L2と設定する。
【0027】
一方、判定対象となる車輪100を、設定された圧力空気をクランプシリンダ7の伸長側圧力室7Aに供給して所定の押圧力で押動付勢された可動側タイヤ受け6と固定側タイヤ受け3で挟持クランプした時の可動側受け5の移動位置を計測シリンダ11で計測した計測値を検知値LTとする。この検知値LTとタイヤ空気圧異常判定データDと照合して比較し、その結果に基づいて検知値LTが空気圧上限値L1と空気圧下限値L2の範囲(空気圧上限値L1≧検知値LT≧空気圧下限値L2)か、否かを判定する。これら、空気圧上限値L1及び空気圧上限値L2は、車両の仕様及び車輪10の仕様によって種々設定される。
【0028】
次に、
図4に示す動作フローを参照して作動を説明する。
【0029】
車輪搬入工程S11において、
図2に可動側受け5及び可動側タイヤ受け5が仮想線5a、6aで示されるように退避位置に保持された状態で反転装置1の固定側タイヤ受け3と可動側タイヤ受け6aとの間に、車輪組立工程S1において組み立てられ、タイヤ空気圧が規定圧に設定された車輪100をタイヤ103が固定側タイヤ受け3に当接した状態で搬入する。
【0030】
しかる後、車輪クランプ工程S12において圧力空気供給切換弁8を切り換えて設定圧力に設定されたエア供給タンク9からの圧力空気をクランプシリンダ7の伸長側圧力室7Aに供給する。伸長側圧力室7Aへの圧力空気の供給に伴ってクランプシリンダ7が伸長して可動側受け5が退避位置から押圧位置に向けて移動して可動側タイヤ受け6が車輪100のタイヤ103に押圧して固定側タイヤ受け3と可動側タイヤ受け6とにより所定の押圧力で挟持クランプする。このとき固定側タイヤ受け3と一対の可動側タイヤ受け6とにより押圧してクランプされた車輪100はタイヤ103に供給されたタイヤ空気圧に相応して撓み変形する。
【0031】
一方、ストローク位置検出工程S13においてタイヤ103の歪み変形に伴う可動側受け5の移動位置を計測シリンダ11により検知し、その検知値LTが計測データとして異常検出手段12に逐次送られる。
【0032】
固定側タイヤ受け3と可動側タイヤ受け6により所定の押圧力でクランプした後、そのクランプによりタイヤ空気圧の変化が抑制されて安定する所定時間、例えば3秒経過した後にタイヤ空気圧照合工程S14に移行し、タイヤ空気圧照合工程において異常検出手段12により計測データの検知値LTと予め設定された対応する車両及び車輪の仕様におけるタイヤ空気圧異常判定データDとを照合する。この照合に基づいてタイヤ空気圧異常判定工程S15において検知値LTとタイヤ空気圧規定値とを比較し、比較結果に基づいて検知値LTが空気圧規定値の空気圧上限値L1と空気圧下限値L2の範囲(空気圧上限値L1≧検知値LT≧空気圧下限値L2)か、否かを判定する。
【0033】
この判定が範囲外(空気圧上限値L1<検知値LT<空気圧下限値L2)においてNG、即ち検知値LTが空気圧上限値L1と空気圧下限値L2の範囲外でありタイヤ空気圧が過剰または過少であり、タイヤ空気圧が異常であると判定したときには、異常表示工程S16において表示装置13に異常を表示すると共に警報を発し、作業者に知らせる。これにより作業者が車輪のタイヤ空気圧が異常であることをチェックし、異常リセット操作により反転装置1の作動を中止する中止工程S17に移行して圧力空気供給切換弁8を切り換え、クランプシリンダ7の収縮側圧力室7Bに圧力空気を供給してクランプシリンダ7を収縮して可動側受け5を退避位置に移動させて車輪100をアンクランプし、車輪搬出工程S18に移行して車輪100を搬出する。
【0034】
一方、タイヤ空気圧異常判定工程S15で比較結果に基づいてOK、即ち検知値LTがタイヤ空気圧規定値の空気圧上限値L1と空気圧下限値L2の範囲(空気圧上限値L1≧検知値LT≦空気圧下限値L2)と判定したときにはバランスウェイト装置による通常の作動を実行する。
【0035】
従って、本実施の形態によると、固定側受け2とクランプシリンダ7の伸縮によって押動する可動側受け5とを備え、クランプシリンダ7によって押動する可動側受け5と固定側受け2とで車輪100をクランプして車輪100を反転する反転装置1に、可動側受け5の移動位置を検知する計測シリンダ11を設けると共に、車輪100を押圧してクランプする可動側受け5の移動位置を計測シリンダ11で検知して異常検出手段12においてその検知した計測値LTと予め設定されたタイヤ空気圧判定データDのタイヤ空気圧規定値との比較結果によりタイヤ空気圧の異常を判定する簡単な構成によってタイヤ空気圧異常検出装置10が構成できる。また、この異常検出手段は安価なPCによって構成でき、既存の反転装置1を変更することなく計測シリンダ11及び異常検出手段12を付加する簡単な構成であり、製造コストやランニングコストの増大を招くことなくタイヤ空気圧検知装置を構成することができる。
【0036】
更に、生産工程においてタイヤ102に圧力空気を供給してタイヤ空気圧が調整された後で、かつ車輪100を車体組立ラインに供給する前のバランスウェイト装着工程において車輪100のタイヤ空気圧の異常が検知でき、車体組立工程においてタイヤ空気圧が異常な車輪が車体に取り付けられる不具合の発生が未然に防止できる。これにより、従来行われていた完成車検査時にタイヤ空気圧異常の発見によるタイヤ取付工程以外の場所で車体から不具合のタイヤ組付体を外して、再度タイヤ組立体を車体に組み付ける等の作業がなくなり作業工数の大幅な低減が可能になり生産コストの低減が得られる。
【0037】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば上記実施の形態では押動手段としてエアシリンダによって構成されるクランプシリンダを用いたが、油圧シリンダによって構成することができる。上記実施の形態では車輪101のタイヤ102を押圧する可動側タイヤ受け6を円筒状に形成したが、
図5に示すように円筒状のタイヤ受部6Aの周囲に環状に突出する当接部6Bを複数形成することで、車輪100をクランプする際、タイヤ103を当接部6Bが局部的に当接して押圧することでタイヤ103との接触面積が小さくなりタイヤ103の撓みが増大して、可動側受け5のストローク量を増大させることもできる。可動側受け位置検出手段においても計測シリンダに限定される他の種々の計測手段によって構成することができる。
【0038】
また、押動手段及び異常検出手段等によって構成されるタイヤ空気圧異常検出装置10は、バランスウェイト装着装置の反転装置1に限らず、タイヤ空気圧が調整された車輪100をクランプする搬送装置やバランスウェイト装着装置からベルトコンベヤ等に移載する移載装置等の搬送装置に配設することもできる。
【符号の説明】
【0039】
1 反転装置(車輪クランプ手段)
2 固定側受け
3 固定側タイヤ受け
5 可動側受け
6 可動側タイヤ受け
7 クランプシリンダ(押動手段)
7A 伸長側圧力室
7B 収縮側圧力室
9 エア供給タンク
10 タイヤ空気圧異常検出装置
11 計測シリンダ(可動側受け位置検出手段)
12 異常検出手段
100 車輪
101 ホイール
103 タイヤ