(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支持機構は、前記支持軸の両端部を支持する支持架台であって前記支持軸の軸心と直交する方向の回転軸線周りに回転可能に前記フレームに対し支持された支持架台を含み、
前記アクチュエータは、前記支持架台を前記回転軸線周りに回転駆動すべく前記支持架台に連結された回転式の電動モータであり、
前記駆動制御装置は、前記張力検出装置によって検出された前記プリプレグシートの幅方向における両端部の張力の張力差に基づいて前記電動モータの回転量を制御する、
ことを特徴とする請求項3に記載のプリプレグシートの供給装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記のような従来技術文献に記載の装置において、原反ロールからシート状部材を引き出したとき、シート状部材が幅方向において張力差を有する状態となっている場合がある。その理由としては種々の要因が考えられるが、その一つとして、原反ロールに巻かれているシート状部材の内部応力(残留応力)に幅方向において差が付いていることが挙げられる。特に、シート状部材が前記文献2や3に記載のプリプレグである場合、そのような傾向を有している場合が多い。
【0011】
そして、前記のように、原反ロールから引き出したシート状部材が幅方向において張力差を有していると、次のような問題が生じる。
【0012】
前記文献1に開示されているようなスリッタ巻取機の場合には、張力が低い側においてスリット(切断)が適切に行われなかったり、或いは、スリット後のシート状部材の切断端が乱れたりする状態となる。
【0013】
また、前記文献2、3に開示されているような積層装置の場合には、シート状部材が真直ぐに引き出されず、引き出されたシート状部材が蛇行した状態となるおそれがある。なお、プリプレグの積層においては、積層される各プリプレグ(シート状部材)の幅方向の位置について非常に高い精度を要求されるため、前記のような蛇行は積層において大きな問題となる。
【0014】
本発明は、前記実情を考慮したもので、原反ロールから
プリプレグシートを引き出して供給する
プリプレグシートの供給装置において、引き出された
プリプレグシートの幅方向における張力差を補正し、
プリプレグシートに施される加工に不具合を生じさせることの無いような適正な
プリプレグシートの供給を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、長尺の
プリプレグであるプリプレグシートがロール状に巻かれて構成された原反ロールから引出機構によって前記
プリプレグシートを引き出すと共に加工部において前記
プリプレグシートに加工を施す加工装置に用いられる供給装置であって、フレームに対し前記原反ロールを回転可能に支持する
プリプレグシートの供給装置を前提とする。
【0016】
そして、本発明は、前記加工が施される前の前記
プリプレグシートの幅方向に関する両端部における張力を検出する張力検出装置と、引き出される前記
プリプレグシートの経路における前記加工部よりも上流側で前記
プリプレグシートに係合する係合ローラと、前記係合ローラの両端部を支持する支持機構であって前記係合ローラの軸心を前記係合ローラが係合する前記
プリプレグシートのシート面に対し交差する方向へ傾斜可能とすべく前記フレームに対し変位可能に支持された支持機構と、前記支持機構に連結されて前記支持機構を変位させるアクチュエータと、前記張力検出装置で検出された張力に基づいて前記アクチュエータの駆動を制御する駆動制御装置と、を備えることを特徴とする。なお、前記した用語の幾つかについて以下に詳述する。
【0017】
本発明で言う「加工」とは、
プリプレグシートの形状や性質等が大きく変更されるような処理が施されるものに限らず、前記の従来技術文献のような、
プリプレグシートを縦方向にスリットして複数の幅狭の
プリプレグシートに分割することや、他の
プリプレグシートに積層して複数の
プリプレグシートからなる積層体の一部とすること等も含む。
【0018】
また、「上流側」、「下流側」は、
プリプレグシートの引き出し方向に関するものであり、「上流側」は原反ロール側であり、「下流側」はその反対側である。
【0019】
更に、「
プリプレグシートに係合する係合ローラ」については、引き出し後の
プリプレグシートに直接的に係合するものに限らず、後記の実施例のような、原反ロールの
プリプレグシートに間接的に係合するものも含む。すなわち、後記の実施例では、係合ローラは、原反ロールの巻軸(巻芯)を支持する支持軸(送出軸)であり、この支持軸は、巻軸を介して原反ロール内の
プリプレグシートに係合するものであり、この場合も「
プリプレグシートに係合する」に含まれるものとする。
【0020】
また、「シート面に対し交差する方向へ傾斜可能」については、例えば初期状態において軸心がシート面と平行である係合ローラの場合(後記の
図8の例参照)、その係合ローラをシート面と平行な面(仮想面)内で傾斜(回動)させても本願が目的とする作用(経路長の変化)は得られないため、係合ローラの傾斜方向を「シート面に対し交差する方向」としたものである。
【0021】
なお、ここで言う「傾斜可能」とは、係合ローラの傾斜によってシート面と係合ローラの軸心とが交差した状態になるという意味ではなく、(不特定の)ある時点で考えた場合、その時点におけるシート面に対し、係合ローラの軸心が交差した状態となる方向へ傾斜し得る状態で係合ローラが支持されていることを意味する。
【0022】
また、本発明の
プリプレグシートの供給装置において、該供給装置が前記原反ロールから引き出された前記
プリプレグシートを前記加工部へ向けて案内すべく前記経路を転向させるように前記
プリプレグシートを案内するガイドローラを備え、前記係合ローラが、前記ガイドロールに対し上流側において前記
プリプレグシートと係合するものとしても良い。
【0023】
更に、本発明の
プリプレグシートの供給装置においては、前記フレームに対し前記原反ロールを支持する支持軸を係合ローラとするものであっても良い。
【0024】
また、本発明の
プリプレグシートの供給装置において、前記支持機構が、前記支持軸の両端部を支持する支持架台であって前記支持軸の軸心と直交する方向の回転軸線周りに回転可能に前記フレームに対し支持された支持架台を含むものとし、前記アクチュエータを、前記支持架台を前記回転軸線周りに回転駆動すべく前記支持架台に連結された回転式の電動モータとし、前記駆動制御装置が、前記張力検出装置によって検出された前記
プリプレグシートの幅方向における両端部の張力の張力差に基づいて前記電動モータの回転量を制御するものとしても良い。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、原反ロールから引き出された
プリプレグシートに、その幅方向において前記したような張力差が存在している場合、
プリプレグシートの幅方向に関する両端部の張力が張力検出装置によって検出され、それに基づき、
プリプレグシートに係合する係合ローラがその時点におけるシート面に対し軸心が交差した状態となるように傾斜される。その結果、
プリプレグシートの幅方向において経路長が変化し、前記張力差が低減又は解消される。
【0026】
また、前記のように
プリプレグシートの幅方向において経路長を変化させるべく
プリプレグシートに係合する係合ローラを傾斜させる場合において、その係合ローラの
プリプレグシートに対する係合位置を前記ガイドローラよりも上流側(言い換えれば、原反ロール側、或いは反加工部側)とすることにより、係合ローラの傾きが変化しても、ガイドローラから加工部に至る
プリプレグシートについては一定の状態に維持されるため、係合ローラの傾きに伴う
プリプレグシートの傾きが、加工部での加工に影響を与えることはない。
【0027】
更に、原反ロールを支持する支持軸を前記係合ローラとすることにより、係合ローラの傾きが
プリプレグシートに与える影響を排除できる。
【0028】
例えば、
プリプレグシートが巻き掛けられて案内されるローラを係合ローラとした場合、前記のように
プリプレグシートの幅方向において経路長を変化させるべく、そのローラ(係合ローラ)を傾斜させた場合、その傾斜の方向や、
プリプレグシート及び係合ローラの表面の材質の関係で、係合ローラ上での
プリプレグシートの滑りが生じる場合がある。そして、そのような滑りが生じると、
プリプレグシートの経路の幅方向における位置ズレが生じ、加工部での加工に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0029】
これに対し、原反ロールを支持する支持軸を傾斜させて原反ロール自体を傾斜させる構成とすれば、支持軸と原反ロールとの間で前記のような滑りが生じることは無いため、その滑りによる影響を排除できる。
【0030】
その上、前記のように係合ローラを前記支持軸とし、係合ローラを支持する支持機構を、前記支持軸を支持する支持架台であってフレームに対し前記支持軸の軸心と直交する方向の回転軸線周りに回転可能に支持された支持架台とすることにより、前記したような係合ローラの傾きが
プリプレグシートに与える影響を排除できるという効果を得る上でより有効である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、本発明の供給装置の一例を示す正面図である。
図2(a)(b)は、
図1の右側面図、A−A線断面図である。
図3は、本発明の供給装置において、その構成の主な部分の配置関係を理解し易くするための斜視図であり、そのため
図1、
図2とは、厳密には一致していない。
図4(a)、(b)は、本発明の供給装置が適用された加工装置について、全体構成における概要を示す斜視図、側面図である。これら図を主に用いながら、以後本発明の供給装置の一実施例及びそれが適用された加工装置を説明する。
【0033】
本実施例においては、図4に示すように、本発明で言う「プリプレグシート」に相当するのは、長尺のプリプレグ(プリプレグシート)S1である。従って、そのプリプレグシートS1を巻軸R1に対しロール状に巻いて構成されたプリプレグロールRが、本発明で言う「原反ロール」に相当する。また、本実施例においては、本発明で言う「加工装置」として、スリッタ装置1(前記の背景技術の欄で言うスリッタ巻取機)が採用されており、スリッタ装置1におけるシート供給部3が本発明の「供給装置」に相当する。従って、
プリプレグシートS1を縦方向(長手方向)にスリット(切断)する処理、及び分割された各
プリプレグシートS2を巻き取る処理が、本発明で言う「
プリプレグシートに施される加工」に相当する。
なお、以後、これらの事項を前提として説明する。
【0034】
図4には前記したようにスリッタ装置1の概要が示されている。このスリッタ装置1は、プリプレグロールRを支持し且つプリプレグロールRからプリプレグシートS1を引出可能とするシート供給部3と、シート供給部3から引き出されたプリプレグシートS1に対し前記の加工を施すシート加工部2とで構成されているものとする。このシート加工部2が本発明で言う「加工部」に相当する。
【0035】
シート加工部2は、プリプレグロールRから引き出されたプリプレグシートS1(以下、「原反シート」とも言う。)をその幅方向の所定箇所において縦方向にスリットして分割するスリット部10と、分割された各プリプレグシートS1をそれぞれ独立して巻き取る巻取部20とを含む。但し、本実施例では、原反シートS1が幅方向に3分割され、各々に分割されたプリプレグシートS2(以下、「分割シート」とも言う。)がロール状に巻かれた3つのプリプレグロール24、24、24が製造されるものとする。
【0036】
スリット部10は、切断のベースとなるカッタローラ11と、分割枚数(図示の例では3枚)に応じて設けられた複数(図示の例では2枚)の円盤状のカッタ(スコアカッタ)12とを含む。
【0037】
カッタローラ11にはプリプレグシートS1が巻き掛けられ、カッタローラ11の下方に設けられた巻取部20へ向けてプリプレグシートS2を転向させている。
【0038】
スコアカッタ12は、
図4ではその支持構成を省略してあるが、シート加工部2における左右両側のフレーム間に架設された梁に対しカッタホルダを介して回転自在に支持されているものとする。また、各カッタホルダは押圧機構を含んでおり、その押圧機構により各カッタホルダがカッタローラ11側へ付勢されることにより、各スコアカッタ12はカッタローラ11に対し押圧された状態となる。そうすると、スコアカッタ12は、カッタホルダに対し回転自在に支持されているので、プリプレグシートS1の進行に伴って消極回転(従動回転)することになり、それによってプリプレグシートS1がスコアカッタ12によって縦方向に切断され、分割シートS2となる。
【0039】
このように切断された分割シートS2を巻き取る巻取部20は、前記フレーム間で回転可能に支持された複数の巻取軸21と、巻取軸21を回転駆動すべく、各巻取軸21に連結された複数の巻取用の駆動モータ(巻取モータ)22と、分割枚数に応じて設けられて巻取軸21に対して相対回転不能に支持された複数の巻取リール23とを含む。
【0040】
巻取軸21は、前後方向(シート供給部3からカッタローラ11に至るプリプレグシートS1の進行方向)に位置をずらした配置で複数(図示の例では2本)設けられている。すなわち、本実施例のスリッタ装置1では、複数の分割シートS2をそれぞれ巻き取るにあたり、隣接する分割シートS2を異なる巻取軸21(巻取リール23)で巻き取るものとなっており、そのために巻取軸21が複数設けられる。図示の例では、3枚の分割シートS2のうち、両側に位置する分割シートS2を同じ巻取軸21で巻き取り、真ん中の分割シートS2を別の巻取軸21で巻き取っている。
【0041】
また、各巻取軸21の一端には減速機(図示せず)等を介して巻取モータ22が連結されている。すなわち、巻取部20においては、巻取軸21が巻取モータ22で回転駆動されることによって巻取リール23が回転され、分割シートS2を牽引しつつ巻き取るものとなっている。従って、この巻取部20が、本発明で言う加工装置における「引出機構」に相当する。
【0042】
因みに、詳細は省略するが、巻取モータ22については、巻取リール23に巻かれた分割シートS2の巻径と巻取り時に検出された分割シートS2の張力(巻取張力)とに基づいて駆動トルクが制御される。これにより、巻取部20においては、各分割シートS2が一定の張力で巻取リール23に巻き取られる。
【0043】
以上述べたようなシート加工部2に対し
プリプレグシートS1を供給する本発明による供給装置としてのシート供給部3については、詳述すると以下の通りである。但し、以下の説明においては、
図4だけでなく、
図1〜
図3、
図5を適宜参照されたい。
【0044】
供給装置としてのシート供給部3は、主たる構成として、フレーム30と、原反ロールとしてのプリプレグロールRを支持する支持架台40と、フレーム30に対し支持架台40を回転可能に支持すると共に支持架台40を回転駆動するための回転駆動機構50と、プリプレグロールRから引き出されたプリプレグシートS1が巻き掛けられてプリプレグシートS1をシート加工部2の方へ転向させるべく案内するガイドローラ61とを含む。
【0045】
フレーム30は、シート供給部3の全体を支持するための基台部31と、幅方向(支持されるプリプレグロールRの軸心方向)の両側のそれぞれにおいて基台部31に立設された一対の支柱32、32とを含む。
【0046】
各支柱32の上端には板状の支持ブラケット33が固定されており、対向する両支持ブラケット33、33間にガイドローラ61が架設される状態で回転可能に支持される。従って、ガイドローラ61は、一対の支柱32、32間に支持ブラケット33を介して支持されている。因みに、支持ブラケット33よりも下方において、一対の支柱32、32間に梁部材35が架設されている。
【0047】
支持架台40は、梁部材35よりも下方において、回転駆動機構50(詳細は後記する。)を介し、フレーム30の基台部31に対し回転可能に支持されている。この支持架台40は、フレーム30に支持されるベース部41と、前記幅方向の両側のそれぞれにおいてベース部41に対し立設された一対の支持壁42、42とを含む。なお、ベース部41は、図示の例では、平面視において略矩形状を有しているものとする。
【0048】
支持架台40において、一対の支持壁42、42間には、プリプレグロールRを支持するための支持軸としての送出軸43が架設される。より詳しくは、各支持壁42の上端部には、送出軸43の端部を回転可能に且つ変位不能に係止する係止機構44が設けられており、この係止機構44によって送出軸43の両端部のそれぞれが係止されることにより、送出軸43は、その両端部を一対の支持壁42、42によって支持された状態で、一対の支持壁42、42間で回転可能に架設される。なお、送出軸43は、上下方向に関し支持架台40におけるベース部41の上面と平行であって、上下方向及び前後方向に関しガイドローラ61と平行に架設される。そして、この送出軸43には、プリプレグロールRが相対回転不能に支持される。
【0049】
また、一対の支持壁42、42の一方には、その外側面に取り付けられるかたちで、送出軸43を回転駆動するための送出用の駆動モータ(送出モータ)45が支持されている。送出モータ45は、その出力軸45aを前記幅方向と平行に向けた状態で前記一方の支持壁42に支持されており、出力軸45aが送出軸43の一端に連結されている。
【0050】
因みに、詳細は省略するが、送出モータ45は、プリプレグロールRからプリプレグシートS1を積極的に送り出すために送出軸43を回転駆動するものであって、プリプレグシートS1が一定速で送り出されるように、プリプレグロールRの巻径に基づいて回転速度が制御される。
【0051】
プリプレグロールRよりも下流側においてガイドローラ61は、前記のようにプリプレグロールRから引き出されたプリプレグシートS1を案内すると共に、前記幅方向におけるプリプレグシートS1の両端部の張力を検出するための張力検出装置60の一部として機能する。より詳しくは、以下の通りである。
【0052】
前記のように、ガイドローラ61は、フレーム30における一対の支柱32、32のそれぞれに固定された支持ブラケット33、33間で、支持ブラケット33を介して支持されるものであるが、各支持ブラケット33に対しては、張力検出レバー34を介して支持されている。より詳しくは、以下の通りである。
【0053】
各支持ブラケット33は、その内側面において張力検出レバー34を支持している。そして、各張力検出レバー34は、その延在方向の中間部において、軸36及び軸受37を介して支持ブラケット33に対し回動可能に支持されている。
【0054】
また、各張力検出レバー34の延在方向の一端には、その厚さ方向(前記軸36の軸心方向)に貫通する貫通孔34aが形成されている。そして、この貫通孔34aに対し軸受38の外輪が嵌挿されると共に、その軸受38の内輪に対し、ガイドローラ61の両端部に突設された軸部61aが嵌挿されることにより、ガイドローラ61が張力検出レバー34を介して支持ブラケット33に支持された状態となる。
【0055】
また、各張力検出レバー34の延在方向の他端には、張力検出器としてのロードセル62が連結される。なお、図示の例では、ロードセル62は、S字型ロードセルである。また、各ロードセル62は、その両端に取付けられた軸62aの一方が球面軸受等を介して張力検出レバー34に連結され、軸62aの他方が球面軸受62b等を介して支持ブラケット33の内側面に固定される。このように、支持ブラケット33に対し回動可能に支持された各張力検出レバー34は、ロードセル62によってその回動が支持されており、それにより、ガイドローラ61は、その両端部において、張力検出レバー34を介してロードセル62に連結されると共に、所定の位置で支持された状態となっている。
【0056】
この構成により、ガイドローラ61に対して巻き掛けられているプリプレグシートS1の張力がガイドローラ61に作用し、ガイドローラ61に作用する荷重が、各ロードセル62によって検出される。また、前記幅方向においてプリプレグシートS1に張力差が存在している場合には、各ロードセル62の検出値は、上記張力差に比例した異なるものとなる。
【0057】
図5には、前記した支持架台40を回転可能に支持する回転駆動機構50の詳細が示されている。回転駆動機構50は、フレーム30における基台部31に固定されるハウジング55と、ハウジング55の内部においてハウジング55に対し回転自在に支持された回転軸51と、回転軸51をハウジング55に対し回転自在に支持するためにハウジング55と回転軸51との間に設けられた軸受52と、回転軸51を所定量(任意角度)回転駆動するための回転量調整機構59と、所定量回転させた回転軸51を保持するためのクランプ機構56とを含む。
【0058】
図示の例では、回転量調整機構59は、ウォームギヤ機構であって、回転軸51に対して相対回転不能に固定されたウォームホイール53と、ウォームホイール53と噛み合うウォーム54とを含む。
【0059】
ウォームホイール53は、そのボス部53aが貫通孔を有し、その貫通孔に対し回転軸51が嵌挿された状態で、回転軸51の中間部に対しボス部53aにおいて相対回転不能に取付けられている。一方、ウォーム54は、その軸心方向に延在する軸部54aにおいて、軸受54cを介してハウジング55に対し回転自在に支持されている。そして、ウォーム54は、軸部54aに連続するウォーム部54bがウォームホイール53と噛み合うと共に、軸部54aがギア列58を介してアクチュエータとしての回転式の電動モータ(駆動モータ)57の出力軸57aに連結されている。なお、この駆動モータ57は、ハウジング55の側面の一面に取付けられている。
【0060】
クランプ機構56は、図示の例では、ディクスクランプ形式のクランプ機構56を採用している。このクランプ機構56は、回転軸51に対し相対回転不能に取付けられたリング状のクランプディスク81と、ハウジング55との協働でクランプディスク81を挟持してクランプディスク81に対し制動力を作用させる押圧機構82とを含む。また、押圧機構82は、クランプディスク81に対し押圧力を作用させるリング状のピストン部材84と、ハウジング55に固定されると共に回転軸51の軸線方向におけるピストン部材84の移動を案内する固定部材83と、ピストン部材84を反クランプディスク側へ付勢する圧縮スプリング85とを含む。なお、図示の例では、固定部材83は、回転軸51の軸線方向における一方側においてハウジング55のカバーを兼ねている。
【0061】
この押圧機構82について、より詳しくは、ピストン部材84は、クランプディスク81に対して回転軸51の軸線方向に平行な方向において対向するように、固定部材83とハウジング55との間に形成されたリング状の空間に対し嵌挿され、回転軸51の軸線方向に沿って移動可能に設けられている。また、圧縮スプリング85は、ピストン部材84とハウジング55との間において円周方向に間隔をおいて複数箇所に配設されており、ピストン部材84に対し反クランプディスク側への付勢力を作用させている。従って、ピストン部材84は、圧縮スプリング85の付勢力によって常時固定部材83側(反クランプディスク側)へ付勢されている。更に、固定部材83とピストン部材84との間に形成されたリング状の空間86には、ハウジング55に形成された流体供給路87から圧力流体(例えば、圧油)が供給されるようになっている。
【0062】
そして、クランプ機構56では、その作動状態において、流体供給路87から圧力流体が供給されて前記空間86における圧力流体の圧力が高められることにより、ピストン部材84が圧縮スプリング85の付勢力に抗してクランプディスク81側へ変位すると共に、クランプディスク81に対し押圧力を作用させた状態となる。その結果、クランプディスク81がピストン部材84とハウジング55とで挟持(クランプ)され、クランプディスク81が相対回転不能に取付けられた回転軸51が回転不能に保持される。
【0063】
本実施例では、支持架台40は、このような回転駆動機構50を介してフレーム30に対して支持されるものとなっている。具体的には、支持架台40は、回転駆動機構50における回転軸51の上端(回転軸51の軸線方向の他端)に固定されている。より詳しくは、
図1、
図3又は
図5に示すように、支持架台40のベース部41は梁材41aを矩形状に組み合わせて構成されており、前後の各梁材41aの上面には、それら両梁材41a、41aに掛け渡されるかたちで板状の支持板41bが固定されている。そして、支持架台40は、前記の支持板41bが、その裏面において回転駆動機構50における回転軸51の上端に固定されることにより、回転軸51に対して固定される。
【0064】
また、前記のように、この支持架台40が固定される回転軸51は、フレーム30における基台部31に載置固定される回転駆動機構50のハウジング55に対し、軸受52を介して回転可能に支持されている。従って、こららの構成により、支持架台40は、フレーム30の基台部31に対し、回転駆動機構50のハウジング55、軸受52及び回転軸51を介して回転可能に支持された状態となっている。
【0065】
なお、回転駆動機構50において、回転軸51は、鉛直方向に向けて延在する状態で、フレーム30に固定されたハウジング55に支持されている。よって、回転軸51に支持される支持架台40のベース部41(支持板41b)の上面は水平方向と平行になっており、この支持架台40によりベース部41の上面と平行に支持される係合ローラとしての送出軸43も、その軸心が水平方向に延在するものとなっている。
【0066】
また、回転軸51と支持架台40との位置関係について、前後方向に関しては、回転軸51の軸線の延長線上に、支持架台40に支持される送出軸43の軸心が位置するものとなっている。また、前記幅方向に関しては、支持架台40(送出軸43)にプリプレグロールRが装着された状態で、回転軸51の軸線の延長線上に、プリプレグロールRの中心が位置するものとなる。従って、支持架台40は、支持するプリプレグロールRが前後方向及び幅方向の中心を回転中心として回動されるように、回転軸51に対し支持されている。
【0067】
この回転軸51を含む回転駆動機構50においては、クランプ機構56が不作動状態にされると共に、駆動モータ57が駆動されることにより、その出力軸57aの回転がギア列58、ウォーム54を介してウォームホイール53に伝達され、それに伴って回転軸51が回転する。そして、駆動モータ57の駆動に伴う出力軸57aの回転量、及びギア列58の減速比並びにウォーム54とウォームホイール53との減速比に応じて、回転軸51が回転駆動され、回転軸51に連結された支持架台40(支持板41b)が回転駆動される。また、支持架台40(支持板41b)が回転駆動された後は、クランプ機構56が再び作動状態となって回転軸51が回転不能に保持されることにより、支持架台40が回転不能に保持された状態となる。
【0068】
以上で述べたように、支持架台40は、回転駆動機構50におけるハウジング55及び回転軸51を介してフレーム30に対し回動変位可能に支持されると共に、支持軸としての送出軸43を支持している。そして、支持架台40が回動変位することにより、送出軸43が回動する構成となっている。ここで、支持架台40が回動可能であるということは、送出軸43が回動可能であるということであり、送出軸43が回動可能ということは、送出軸43は、自身が係合する(巻軸R1を介して間接的に係合する)プリプレグロールR(=プリプレグロールRを形成する巻かれた状態のプリプレグシートS1)に対し、そのシート面と交差する方向へ傾斜可能であると言える。
【0069】
従って、本実施例の場合では、送出軸43(支持軸)が本発明で言う「係合ローラ」に相当し、プリプレグロールR内の
プリプレグシートS1が「係合ローラに係合する
プリプレグシート」に相当する。また、この係合ローラとしての送出軸43を支持する支持架台40、及び支持架台40を回転可能とするための回転駆動機構50における回転軸51等で構成される部分が本発明で言う「支持機構」に相当する。但し、本実施例の場合、フレーム30の基台部31に対し固定的に設けられる回転駆動機構50におけるハウジング55は、フレーム30の一部に相当する。
【0070】
また、支持架台40が固定される回転駆動機構50における回転軸51は、回転駆動機構50における駆動モータ57(回転式の電動モータ)によって回転駆動されるものであるため、本実施例では、この駆動モータ57が本発明で言う「アクチュエータ」に相当する。
【0071】
そして、プリプレグシートS1が巻き掛けられるガイドローラ61、ガイドローラ61をその両端部において支持する一対の張力検出レバー34、及び張力検出レバー34を介してガイドローラ61の両端部のそれぞれに連結される一対のロードセル62、62が、本発明で言う「張力検出装置60」の一部(機械的な構成要素)に相当する。
【0072】
また、本発明による供給装置としてのシート供給部3は、駆動モータ57の駆動を制御するための駆動制御装置70を含む。そして、
図6は、この駆動制御装置の一例を示すものである。但し、この
図6においては、駆動制御装置70に加えて張力検出装置60の一部が示されており、また、その張力検出装置60の一部には、機械的な構成要素である一対のロードセル62、62も一緒に示されている。
【0073】
なお、本実施例では、張力検出装置60は、プリプレグシートS1の幅方向における両端部の張力を検出することに加え、その検出された両端部の張力の差(張力差)を検出するものとなっている。従って、張力検出装置60は、前記張力差を検出するための構成として、両ロードセル62、62(図ではLc1、Lc2の記載有り。)からの信号に基づいて前記張力差を偏差として検出する偏差検出器63を有している。従って、本実施例における本発明で言う「張力検出装置」は、前記した機械的な構成要素としてのガイドローラ61、張力検出レバー34、ロードセル62に加え、この電気的な構成要素としての偏差検出器63を含むものとなっている。
【0074】
駆動制御装置70は、前記した張力検出装置60によって検出された前記張力差に基づいて駆動モータ57の駆動を制御する。より詳しくは、駆動制御装置70は、PID制御器71と、駆動制御器としてのドライバ72とを有し、PID制御器71は、張力検出装置60における偏差検出器63からの前記張力差としての偏差信号に基づき、PID演算により、その偏差が解消されるような、すなわち、前記張力差が零となるような前記駆動モータ57の補正回転量をPID演算によって求め、その求めた補正回転量をドライバ72へ出力する。
【0075】
なお、張力検出装置60における偏差検出器63は、両ロードセル62、62(Lc1、Lc2)からの検出信号に基づいて前記張力差(偏差)を検出するものであるが、一方のロードセル62からの検出信号を基準として偏差を求めるものとなっている。従って、偏差は、両ロードセル62、62(Lc1、Lc2)からの検出信号の大小に応じて、プラスの偏差又はマイナスの偏差として求められる。従って、偏差検出器63から駆動制御装置70におけるPID制御器71へ出力される偏差信号は、偏差量(張力差)に加え、そのような偏差の方向(プラス方向又はマイナス方向)を含むものとなっている。
【0076】
そして、PID制御器71は、そのような偏差方向と偏差量とを含む偏差信号に基づき、その偏差が解消される(零となる)ように、前記偏差方向に応じた回転方向の補正回転量をPID演算によって求め、その補正回転量に応じた駆動信号をドライバ72へ向けて出力する。このドライバ72は、駆動信号に対応して駆動モータ57を回転させる増幅回路であり、PID制御器71からの駆動信号が正であれば、駆動モータ57を所定量正転させ、負であれば駆動モータ57を所定量逆転させる。
【0077】
以上で述べたシート供給部3における構成の作用について、以下に詳述する。
【0078】
先ず、プリプレグロールRを相対回転不能に支持する送出軸43が駆動モータ57で駆動されることにより、プリプレグロールRから所定の速度でプリプレグシートS1が積極的に送り出される。一方、シート加工部2における巻取部20においては、所望の巻取張力となるようにスリット後のプリプレグシート(分割シートS2)が巻き取られている(牽引されている)。その結果として、プリプレグシートS1は、所定の張力(全体張力)を維持した状態で、シート供給部3におけるガイドローラ61に巻き掛けられて案内された状態となる。従って、ガイドローラ61に対しては、プリプレグシートS1の張力による荷重が作用した状態となる。
【0079】
但し、背景技術の欄でも述べたように、プリプレグロールR(原反ロール)に巻かれた状態のプリプレグシートS1は、部分的にではあるが内部応力(残留応力)が幅方向において差が付いた状態となっている場合があり、そのような部分は、引き出された際に幅方向において張力差を有した状態となっている。
【0080】
シート供給部3においては、ガイドローラ61の両端部のそれぞれにロードセル62が連結されているため、前記のようにプリプレグシートS1が幅方向において張力差を有する状態となっている場合には、各ロードセル62による検出値(各ロードセル62に掛かる荷重)は、その張力差に応じて異なるものとなる。
【0081】
張力検出装置60における偏差検出器63は、一方のロードセル62による検出値を基準として、両ロードセル62、62(Lc1、Lc2)からの検出信号に基づき、両ロードセル62、62による検出値の偏差を求める。この場合に、プリプレグシートS1が幅方向に張力差を有していない場合には、前記偏差が零となるため、偏差検出器63から出力される偏差信号のレベルは零となる。一方で、プリプレグシートS1が前記のように幅方向において張力差を有している場合には、それが各ロードセル62の検出値の差となって現れ、偏差検出器63から出力される偏差信号のレベルがその検出値の差(張力差)に応じたものとなる。
【0082】
駆動制御器70では、PID制御器71が、所定の補正周期毎に、偏差検出器63からの偏差信号に基づいてPID演算を行い、その演算結果に基づいて得られた駆動信号をドライバ72へ向けて出力する。そして、ドライバ72は、その駆動信号に基づいて駆動モータ57を駆動する。
【0083】
駆動モータ57(出力軸57a)が駆動制御装置70により、前記張力差に基づく偏差の方向及び偏差量に応じた回転方向及び回転量で回転駆動されることにより、プリプレグロールRを支持する支持架台40が、回転駆動機構50における回転軸51の軸線を中心として、前記回転方向及び回転量に応じて回動される。
【0084】
回転駆動機構50における回転軸51に支持される支持架台40上では、係合ローラとしての送出軸(支持軸)43は、その軸心が水平方向に延在する状態で支持されており、しかも、この軸心が、前記回転軸51の軸線の延長線(鉛直線)上に位置する状態となっている。従って、支持架台40は、送出軸43の軸心と直交する方向の回転軸線周りに回転可能にフレーム30に対して支持されている。そして、前記支持架台40の回動に伴い、送出軸43も(平面的に見て)前記回転軸51の軸線を中心に水平方向に回動する。また、送出軸43上では、プリプレグロールRが、その幅方向の中心を前記回転軸51の軸線の延長線に一致させた状態で支持されている。従って、前記の送出軸43の回動に伴い、プリプレグロールRも送出軸43と同様に回動する。
【0085】
送出軸43が回動され、それに伴ってプリプレグロールRが回動されると、プリプレグシートS1の幅方向における両端部で比較すると、プリプレグシートS1のプリプレグロールRからの離間位置からガイドローラ61までにおける、プリプレグシートS1の経路長が変化する。具体的には、前記回動により前後方向においてガイドローラ61から離間する側の端部では前記経路長が長くなり、ガイドローラ61に接近する側の端部では前記経路長が短くなる。
【0086】
これをプリプレグシートS1のシート面全体で言うと、幅方向における中央から前記離間側の端部までは経路長が長くなると共に端部に近い方が経路長がより長くなり、また、中央から前記接近側の端部までは経路長が短くなると共に端部に近い方が経路長がより短くなる。そして、この経路長の変化により、プリプレグシートS1の張力がその経路長の変化に伴って変化する。
【0087】
従って、張力検出装置60によりプリプレグシートS1が幅方向における張力差が検出された場合には、張力が高く検出された側の端部が前記接近側となる(張力の低い側が離間側となる)ようにプリプレグロールRを回動させることにより、前記張力差が補正される。
【0088】
なお、張力差が補正された後にも連続してプリプレグロールRからプリプレグシートS1が引き出されており、前記補正後に再度、プリプレグシートS1の幅方向における両端部において張力差を生じた状態が発生する場合がある。
【0089】
例えば、プリプレグシートS1において、内部応力(残留応力)が幅方向において差が付いた状態となっている部分がプリプレグロールRから引き出される際には、その部分が引き出された際にプリプレグシートS1が幅方向において張力差を有するものとなっており、それに伴って前記経路長が変更され、前記張力差が補正されるものであるが、その後にプリプレグロールRから引き出される部分が幅方向において内部応力(残留応力)に差を有していない場合には、変更された前記経路長によって張力差が発生する場合がある。また、プリプレグロールRに巻かれているプリプレグシートS1が幅方向において内部応力(残留応力)に差を有しているとしても、その差は各部分において常に一様ではないため、前記のように一旦補正したとしても、プリプレグロールRから引き出されたプリプレグシートS1が再び幅方向において張力差を有している状態となっている場合がある。この場合は、張力検出装置60において再び張力差が検出されるため、それに基づいて前記のような補正制御が行われる。
【0090】
以上では、本発明による
プリプレグシートの供給装置の一実施例について説明したが、前記実施例については、以下のような変形も可能である。
【0091】
前記実施例では、回転駆動機構50における回転軸51の回転により、支持架台40を水平方向に回動させ、それにより係合ローラとしての送出軸43(支持軸)を水平方向に回動させて前記経路長の変化を生じさせるものとしたが、本発明はこれに限らず、支持架台40(送出軸43)を水平方向と異なる方向へ回動させて前記経路長の変化を生じさせるものとしても良い。
【0092】
例えば、
図7に示すように、支持架台40Aを、その前後の一方の端部に、送出軸43を支持する一対の支持壁42、42と直交して幅方向に延在する固定壁46を有する構成にすると共に、前記実施例と同様の構成を有する回転駆動機構50Aを、縦置き(回転軸51Aの軸線が水平方向に延在する配置)の状態でフレーム30Aに支持される構成とする。
【0093】
その上で、支持架台40Aを、前記固定壁46において回転駆動機構50Aにおける回転軸51Aに対し取り付けることにより、回転駆動機構50Aを介して支持架台40Aがフレーム30Aに対し回転可能に支持された状態とする。
【0094】
また、この場合における回転駆動機構50Aに対する支持架台40Aの位置関係は、送出軸43の軸心が回転軸51Aの軸線と同じ高さ位置であって、回転軸51Aの軸線の延長線が幅方向における送出軸43の中心を通るものとなっている。
【0095】
この構成によれば、回転駆動機構50Aによる支持架台40Aの回動変位に伴い、送出軸43(プリプレグロールR)が、(正面視において)回転軸51Aの軸線周りに(回転軸51の軸線を中心として)回動変位する。そして、この構成によっても前記実施例と同様の作用・効果が得られる。
【0096】
なお、プリプレグロール(原反ロール)Rを支持する送出軸(支持軸)43を係合ローラとする場合には、前記のように、本発明で言う「係合ローラに係合する
プリプレグシート」はプリプレグロールR内のプリプレグシートS1(プリプレグロールRを構成する巻かれた状態のプリプレグシートS1)となるため、そのプリプレグシートS1は送出軸43の周囲全周に亘って存在するものとなっている。従って、送出軸43をいずれの方向に回動変位させても、送出軸43の軸心は、その変位前の前記プリプレグシートS1のシート面に対し傾斜した状態となる。従って、プリプレグロール(原反ロール)Rを支持する送出軸(支持軸)43を係合ローラとする場合は、送出軸43(支持架台40)の変位方向はいずれの方向であっても良い。
【0097】
また、前記実施例では、プリプレグロールR(原反ロール)を支持する送出軸(支持軸)43を係合ローラとしたが、本発明はこれに限らず、例えば、
図8に示す例のように、プリプレグロールRよりも下流側でプリプレグシートS1に係合する専用の係合ローラ91を設け、この係合ローラ91の両端部をフレームに対し変位可能に支持する構成としても良い。より詳しくは、以下の通りである。
【0098】
図8の構成は、ロードセル64が連結されたガイドローラ92(前記実施例のガイドローラ61に相当)の上流側に別のガイドローラ93を設けると共に、これら両ガイドローラ92、93間に、図示しないフレームに対し変位可能に支持された係合ローラ91を設けたものである。
【0099】
この係合ローラ91は、その両端の軸部91aにおいて支持台94に支持されている。因みに、支持台94は、係合ローラ91の幅方向に対向する一対の対峙壁94a、94aと、一対の対峙壁94a、94aの下端部を繋ぐ台座壁94bとを含む。従って、係合ローラ91は、両端の軸部91a、91aにおいて支持台94における一対の対峙壁94a、94aに架設された状態で支持されており、その支持台94(台座壁94b)は、前記実施例と同様の構成を有する回転駆動機構50Bであって、前記実施例と同様に横置き(回転軸の軸線が鉛直方向に延在する配置)にした状態で設けられた回転駆動機構50Bを介してフレームに支持されている。すなわち、支持台94は、フレームに対し、回転駆動機構50Bにおけるハウジング、軸受及び回転軸51Bを介して水平方向に回動変位可能に支持されている。そして、この場合は、本発明で言う「支持機構」は、前記の支持台94、回転駆動機構50Bにおける回転軸51B等で構成されたものとなる。
【0100】
そして、この係合ローラ91に対し、図示のようにプリプレグシート
S1が巻き掛けられており、係合ローラ91が回転駆動機構50Bによって回動変位されることにより、前記実施例と同様の作用・効果が得られる。なお、
図8の構成においては、係合ローラ91よりも上流側に設けられるガイドローラ93については、省略可能である。
【0101】
なお、以上で説明した例では、回転駆動機構50(50A、50B)は、駆動モータ57及びウォームギヤ機構59等を含み、駆動モータ57(出力軸57a)をギア列58、ウォームギヤ機構59を介して回転軸51(51A、51B)に連結するものとしたが、これに代えて、回転駆動機構を、回転軸51に対し直接的に連結されて回転軸51を回転駆動する直接駆動型モータ(ダイレクトドライブモータ)としても良い。
【0102】
また、前記の
図8の例のように専用の係合ローラを設ける場合には、以下の1)〜3)で説明するような構成を採用することも可能である。
【0103】
1)
図8の構成では、ロードセル64が連結されるガイドローラ92よりも上流側に係合ローラ91を設ける構成としてあるが、係合ローラ91は、そのガイドローラ92よりも下流側でプリプレグシート
S1に係合するものであっても良い。
【0104】
2)
図8の構成では、係合ローラ91は、支持台94を介して支持されており、回転駆動機構50Bのアクチュエータによって支持台94を回動変位させることにより、回動前におけるシート面に対し傾斜して交差する方向へ回動変位されるものとしたが、これに代えて、係合ローラの両端部のそれぞれがフレームに対し変位可能に支持され、係合ローラの両端部をそれぞれ別のアクチュエータにより変位させる構成としても良い。図示省略するが、より具体的な構成としては、以下のようなものが考えられる。
【0105】
例えば、係合ローラの両端部のそれぞれに対応する位置で、フレームに対し、設定された変位方向へ変位可能に支持された一対の軸支持部材を設ける。また、各軸支持部材をフレームに対し変位可能とする構成としては、設定された変位方向に延在すると共に軸支持部材の変位を案内するスライドレール等のガイド部材を、係合ローラの両側においてフレームに対し固定して設ける。また、前記のガイド部材上で軸支持部材を変位させる構成としては、アクチュエータとしての回転式の電動モータが連結されたボールねじ機構や、直動式の電動モータ(リニアモータ)等が考えられる。
【0106】
但し、この構成の場合、係合ローラの端部が変位することによる係合ローラの傾動を許容するために、軸支持部材は、ガイド部材上を変位する部分と係合ローラの軸部が連結される部分との間で回動が許容される構成となっている必要がある。また、係合ローラの傾動に伴い、水平方向における係合ローラの距離(より詳しくは、係合ローラの両軸部における両端間の水平方向における距離)が変位するため、軸支持部材に対し係合ローラの軸部がその軸線方向へ変位可能に支持されている必要がある。
【0107】
そして、この構成の場合の各アクチュエータの制御としては、前記実施例の張力差に基づく制御に代え、対応するプリプレグシート
S1の端部の検出張力値と基準値とを比較し、基準値と検出張力値との偏差に基づいて各アクチュエータの駆動を制御するものとすればよい。なお、この構成の場合、前記の軸支持部材とガイド部材との組み合わせが本発明で言う「支持機構」に相当する。
【0108】
また、以上のような係合ローラの両端部をそれぞれ別のアクチュエータにより変位させる構成については、前記実施例におけるプリプレグロールRを支持する送出軸43を係合ローラとする場合にも適用可能である。そして、その場合は、前記実施例の支持架台40は省略される。
【0109】
3)
図8の構成では、係合ローラに対しプリプレグシート
S1が巻き掛けられた状態で案内されるものとなっているが、前記のように係合ローラの両端部がそれぞれ別のアクチュエータで変位される構成の場合であれば、係合ローラは、初期状態において、その軸心がシート面と平行であってプリプレグシートS1の引き出し方向と直交する方向に延在するように配置され、単にシート面に対し当接した状態で設けられるものであっても良い。
【0110】
但し、この構成の場合、プリプレグシートS1のシート面に沿って係合ローラを変位させても、言い換えれば、軸心がプリプレグシートS1と平行な仮想平面内で変位するように係合ローラを変位させたとしても、プリプレグシートS1については、前記実施例等のように前記経路長の変化は発生し得ないため、係合ローラの変位方向については、当然ながら係合ローラの端部がシート面に対し交差する方向へ変位するものに設定される。
【0111】
また、この構成の場合、前記初期状態においては、一方のアクチュエータのみにより係合ローラの変位が行われるようにする方が好ましい。何故なら、張力の検出結果に基づいて両アクチュエータを駆動する構成とした場合、一方のアクチュエータが係合ローラの一端をシート面側へ向けて変位させると、他方のアクチュエータは係合ローラの他端をシート面から離間させるように変位させるものとなり、係合ローラが他端側においてシート面から離間した状態となるため好ましくない。従って、この構成の場合には、前記初期状態の位置に対し、反シート面側へ係合ローラの端部を変位させるようなアクチュエータの駆動が行われないようにアクチュエータの駆動を制御することが好ましい。
【0112】
なお、以上で説明した例では、本発明による
プリプレグシートの供給装置が適用される加工装置について、プリプレグシートS1のスリッタ装置1を例に挙げて述べたが、本発明が適用される加工装置はこれに限定されず、例えば、背景技術の欄で記載した前記の文献2、3に開示されているような、プリプレグシートの積層装置にも適用可能である。具体的には、以下の通りである。
【0113】
文献2のような積層装置の形式は、プリプレグシートの積層を行う積層台(レイアップテーブル)の長手方向における上流側にプリプレグシートの供給部(ロールストッカー)が設けられており、その供給部内に複数のプリプレグロールのそれぞれに対応して供給装置が設けられ、各供給装置がプリプレグロールを支持するようになっている。
【0114】
因みに、文献2の積層装置は、複数の供給装置を幅方向(前記長手方向と直交する方向)に移動可能とし、選択された供給装置が前記幅方向における前記積層台の位置に移動し、その選択された供給装置におけるプリプレグロールからプリプレグシートが引き出され、その引き出されたプリプレグシートが積層台上で積層されるものである。
【0115】
そして、このような積層装置において、前記供給部(ロールストッカー)における各供給装置として前記実施例の供給装置における構成(支持機構+回転駆動機構等)を採用することも可能であり、それにより、幅方向における張力差に起因して生じる引き出されるプリプレグシートの傾き(蛇行)が防止される。
【0116】
なお、この文献2の積層装置では、供給装置に支持されるプリプレグロールにおけるプリプレグシートの端部(切断端)をプラーヘッド(プラー)が保持し、このプラーヘッドが積層台上を移動することにより、プリプレグシートがプラーヘッドによって牽引されてプリプレグロールから引き出されるものである。従って、このプラーヘッドが、本発明で言う「引出機構」に相当する。そして、プリプレグシートの積層が、本発明で言う「加工」に相当する。
【0117】
また、この構成の場合、張力検出は、前記実施例と同様に、プリプレグロールから引き出された直後に転向させるようにプリプレグシートを案内するガイドローラ(文献2の実施例における符号(14)のガイドローラ)を用いて行うものとしても良いが、プラーヘッドにおいて行うことも可能である。
【0118】
プラーヘッドにおいて張力を検出する構成としては、例えば、プラーヘッドにおけるプリプレグシートの端部を保持するための把持ヘッドを、その幅方向における中心において鉛直方向の回転軸線周りに回転可能な状態でプラーヘッドの本体に支持される構成とし、その上で、そのプラーヘッドの本体に対する把持ヘッドの回転を張力検出器(ロードセル)で支持する(プラーヘッドの本体と把持ヘッドとを張力検出器(ロードセル)を介して連結する)構成等とする。この構成の場合、プリプレグシートに幅方向において張力差が生じている場合には、プラーヘッドによるプリプレグシートの牽引に伴い、前記幅方向の張力差によって把持ヘッドに対し回転力(回転方向の荷重)が作用するため、この回転力を張力検出器で検出することにより、前記張力差が検出されることになる。
【0119】
このように本発明における張力の検出は、前記実施例等のようにガイドローラと、ガイドローラの両端部に連結された張力検出器とを用いて行うものに限定されない。
【0120】
また、文献3における積層装置は、プリプレグロールを支持すると共に積層台上を走行する積層装置によりプリプレグシートの積層を行うものである。すなわち、自走式の積層装置自体が、その内部においてプリプレグロールを支持しており、その積層装置からプリプレグシートが引き出されるものとなっている。そして、積層においては、積層台の長手方向における一端に積層装置が位置する状態で、プリプレグロールから引き出されたプリプレグシートの端部(切断端)を積層台上で保持された状態とし、その状態で積層装置を積層台上で他端側へ向けて走行させることにより、積層装置に支持されたプリプレグロールからプリプレグシートが引き出され、積層台上でプリプレグロールが積層されるようになっている。
【0121】
この積層装置の場合、自走する積層装置の内部にプリプレグシートの供給装置を内蔵しているものであり、その内蔵される供給装置の構成として、前記実施例の供給装置における構成(支持機構+回転駆動機構等)を採用することが可能である。なお、この実施例の場合は、積層装置自体が本発明で言う「引出機構」としての機能を有して
いる。
【0122】
なお、本発明は前記実施例等に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能である。