(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
流出口が開設されたボディと、前記ボディの下側に配置されると共にこのボディとの間に濾過室を画成する濾材を備えるオイルストレーナにおいて、前記濾材の下面が当該オイルストレーナの下面をなすと共に勾配を有し、前記濾過室に面する前記ボディの内面が、前記流出口側が低くなるような勾配をもって形成されたことを特徴とするオイルストレーナ。
【背景技術】
【0002】
自動車の自動変速機等におけるオイルの循環系統に装着されるオイルストレーナとして、従来から
図18に示すようなものが知られている。
【0003】
すなわちこの種のオイルストレーナは、流入口101aを有するロアケース101と、前記流入口101aとは平面方向に異なる位置に開口した流出口102aを有するアッパーケース102を外周フランジ101b,102b同士で振動溶着したケース100の内部空間に、この内部空間をロアケース101側(流入口101a側)の下部室S1とアッパーケース102側(流出口102a側)の上部室S2に仕切るように不織布等からなるシート状の濾材103を配置した構造を備える(例えば下記の特許文献1参照)。
【0004】
このオイルストレーナは、オイルパン200内に設置され、アッパーケース102に設けた流出口102aが不図示のオイルポンプの吸入口へ延びるサクションホース201に接続される。このためオイルパン200内のオイル(エンジンオイル)Oは、流入口101aからケース100内の下部室S1に流入し、濾材103を上部室S2へ通過して濾過された後、流出口102aからサクションホース201を経てオイルポンプへ吸入される。
【0005】
ところが、自動変速機の内部では歯車等によってオイルが高速で掻き回されるので、オイルパン200内のオイルOは多くの微細な気泡ABを含んでおり、この気泡ABは、時間が経てば比重差によって油面へ浮上して消滅するものであるが、一部はロアケース101の外周フランジ101bの下側に溜まったり、オイルOと共に下部室S1に流入して濾材103の下面に溜まったりする。そして濾材103の下面に溜まった気泡ABは、オイルポンプへのオイルOの流れを妨げるので油量が不足してしまうばかりでなく、濾材103を通過した気泡ABがオイルポンプへ流れると、ポンプ内で圧縮されることによってこの気泡がつぶれ、そのときに発生する衝撃波によりオイルポンプがダメージを受ける問題も指摘される。
【0006】
また、特許文献1では、気泡ABを抜きやすくするためにケース100の外周フランジ101bに切欠を設けており、このような切欠は、ロアケース101の外周フランジ101bの下に溜まった気泡ABを抜くことはできるが、濾材103の下面に溜まった気泡ABは抜くことができない。
【0007】
一方、オイルに消泡剤(抗泡剤)を添加することによる気泡対策も知られているが、消泡剤を多量に添加するとオイルの性能が悪化する問題があった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係るオイルストレーナの第一の実施の形態を示す使用状態の断面図である。
【
図2】本発明に係るオイルストレーナの第二の実施の形態を示す使用状態の断面図である。
【
図3】本発明に係るオイルストレーナの第二の実施の形態を示す下面図である。
【
図4】本発明に係るオイルストレーナの第二の実施の形態における濾材の被固定部のシール性及び強度を高めるための変更例を示す使用状態の断面図である。
【
図5】本発明に係るオイルストレーナの第二の実施の形態における濾材の被固定部のシール性及び強度を高めるための、他の変更例を示す使用状態の断面図である。
【
図6】本発明に係るオイルストレーナの第二の実施の形態において、不織布からなる濾材の本体部の強度を高めるための変更例を示す下面図である。
【
図7】本発明に係るオイルストレーナの第二の実施の形態において、不織布からなる濾材の本体部の強度を高めるための他の変更例を示す下面図である。
【
図8】本発明に係るオイルストレーナの第二の実施の形態において、不織布からなる濾材の本体部の強度を高めるためのさらに他の変更例を示す下面図である。
【
図9】本発明に係るオイルストレーナの第三の実施の形態を示す使用状態の断面図である。
【
図10】第三の実施の形態で使用される押さえ部材を示す斜視図である。
【
図11】濾過室に入り込んだ気泡がボディの内面に滞留した状態を示す断面図である。
【
図12】本発明に係るオイルストレーナの第四の実施の形態を示す使用状態の断面図である。
【
図13】本発明に係るオイルストレーナの第四の実施の形態を傾斜して使用した状態の断面図である。
【
図14】本発明に係るオイルストレーナの第五の実施の形態を示す使用状態の断面図である。
【
図15】本発明に係るオイルストレーナの第六の実施の形態を示す使用状態の断面図である。
【
図16】親油性を、フィルムに対する水の接触角(濡れ角度)で代用して説明するための図である。
【
図17】濾過試験の方法を概略的に示す説明図である。
【
図18】従来のオイルストレーナを示す使用状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るオイルストレーナの好ましい実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。まず
図1は第一の実施の形態を示すものである。
【0021】
図1に示す第一の実施の形態のオイルストレーナ1は、流出口12が開設されたボディ11と、このボディ11の下側に配置されると共にこのボディ11との間に濾過室Sを画成する濾材13を備える。
【0022】
ボディ11は合成樹脂材又は金属で成形されたものであって、伏皿形のケース部11aと、その周壁11bの下端から外周側かつ上方へ折り返されるように形成された取付鍔部11cからなり、流出口12は、ケース部11aの中央に円筒状に形成されている。
【0023】
濾材13は、耐熱性及び親油性の高い不織布からなるものや、金属メッシュからなるもの、あるいは耐熱性及び親油性の高い多孔板などが採用可能であって、濾過室Sを下側から覆うように配置された平坦な本体部13aと、その外周からほぼ直角に立ち上がり、ボディ11の取付鍔部11cの外周面に固定された被固定部13bを有するものである。すなわちこの濾材13は、本体部13aが当該オイルストレーナ1の下面をなすように設けられている。
【0024】
また濾材13は、不織布からなるものである場合、その被固定部13bがボディ11の取付鍔部11cとその外周に振動溶着などにより一体化された固定環14との間に挟持された状態で固定され、金属メッシュからなるものである場合、その被固定部13bは図示の形状に予備成形され、ボディ11の取付鍔部11cの外周面に嵌着又はカシメ固定される。
【0025】
このオイルストレーナ1は、オイルパン内に貯留するオイル(エンジンオイル)Oに浸漬され、非水平に設置されるものであって、その設置状態では濾材13の本体部13aの下面が当該オイルストレーナ1の下面をなすと共に適度な勾配を有しており、ボディ11に開設された流出口12が不図示のオイルポンプの吸入口へ延びるサクションホース2に接続される。このため、オイルパン内のオイルOは、オイルポンプの駆動によって濾材13で濾過されながら濾過室Sへ流入し、流出口12からサクションホース2を介してオイルポンプへ吸入されるようになっている。
【0026】
ここで、オイルパン内のオイルOには、不図示の自動変速機内での撹拌により生じた多くの気泡ABを含んでおり、この気泡ABは、オイルOが濾過室Sへ流入する過程で濾材13の本体部13aで捕捉されるが、上述の構成を備えるオイルストレーナ1によれば、濾材13の本体部13aはオイルストレーナ1の下面をなすと共に適度な勾配を有するため、捕捉された気泡ABは、傾斜した濾材13の本体部13aの下面を相対的に上側となる方向へ浮力によって移動し、その端部から浮上してオイルストレーナ1から離れる。このため、濾材13の本体部13aの下面に気泡ABが滞留するのを有効に防止することができる。
【0027】
したがって、濾材13の本体部13aの下面に気泡ABが滞留することによるオイルOの濾過流量の減少、ひいてはオイルポンプへのオイルOの流量の減少や、気泡ABが濾材13を通過してオイルOと共にオイルポンプへ流れることによるオイルポンプへの悪影響を防止することができる。またこのため、オイルに消泡剤(抗泡剤)を多量に添加する必要もなくなるので、オイルの性能悪化を防止することができる。
【0028】
次に
図2は、本発明に係るオイルストレーナの第二の実施の形態を示す断面図、
図3は同じく下面図である。
【0029】
図2及び
図3に示す第二の実施の形態のオイルストレーナ1において、
図1に示す第一の実施の形態と異なるところは、濾材13本体部13aが不織布からなるものにおいて、その外周の被固定部13bが、ゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)からなることにある。この実施の形態において、被固定部13bは
請求項4に記載された拘束部に相当するものであり、ゴム状弾性材料によって断面形状が略L字形の屈曲形状に成形されると共に、不織布からなる濾材13の本体部13aの外周縁に一体的に接合されている。そしてこの被固定部13bは
図1と同様、ボディ11の取付鍔部11cとその外周に振動溶着などにより一体化された固定環14との間に挟持された状態で密着固定されている。
【0030】
上記構成のオイルストレーナ1は、第一の実施の形態と同様、設置状態において濾材13の本体部13aの下面が当該オイルストレーナ1の下面をなすと共に適度な勾配を有することによって、気泡ABの滞留を防止するものである。
【0031】
そして濾材13の本体部13aは不織布からなるものであるのに対し、その外周の被固定部13bはゴム状弾性材料によって断面略L字形に成形されたものであるため、ボディ11の取付鍔部11cとその外周に一体的に設けられた固定環14との間にしっかり固定され、所要のシール性及び強度を確保することができる。また、本体部13aが不織布からなるものは、その繊維の一部が分離してコンタミとなることがあるが、ゴム状弾性材料からなる被固定部13bを本体部13aの外周縁に一体的に接合することによって、このようなコンタミの発生を抑制することができる。
【0032】
図4は、上述した第二の実施の形態における濾材13の被固定部13bのシール性及び強度を一層高めるための変更例を示すものである。
【0033】
この例では、ゴム状弾性材料からなる被固定部13bの上端部にビード13cを形成する一方、ボディ11の周壁11bの下端部にビード状鍔部11dを形成し、その外周側に配置されて振動溶着等によって前記周壁11bに一体に設けた固定環14と前記ビード状鍔部11dとの間で、濾材13の被固定部13bのビード13cを密接状態に嵌合させている。したがって、被固定部13bの一層優れたシール性及び強度を確保することができる。
【0034】
また
図5は、上述した第二の実施の形態における濾材13の被固定部13bのシール性及び強度を一層高めるための、他の変更例を示すものである。
【0035】
この変更例は、濾材13の被固定部13bが、不織布からなる本体部13aの外周部に、ゴム状弾性材料を含浸させることによって成形したものである。そしてこの被固定部13bは、
図2と同様断面略L字形に成形され、ボディ11の取付鍔部11cとその外周に振動溶着などにより一体化された固定環14との間に挟持された状態で密着固定されている。
【0036】
このようにすれば、濾材13は、本体部13aと被固定部13bの接合強度が高いものとなるので、不織布からなる本体部13aからのコンタミの発生を一層確実に抑制することができる。
【0037】
また
図6〜
図8は、それぞれ上述した第二の実施の形態における濾材13において、不織布からなる本体部13aの強度を高めるための変更例を示すものである。
【0038】
このうち
図6に示す例は、不織布からなる濾材13の本体部13aに、ゴム状弾性材料を含浸することによる拘束部13dを格子点状に形成したものである。好ましくは、拘束部13dの間隔は本体部13aにおける不織布の繊維長さより短いものとする。濾材13の本体部13aの不織布は、繊維長さが短いものや、繊維の絡まりだけで形成されているものがあるが、
図6に示す構成によれば、被固定部13bによる繊維の拘束に加えて、本体部13aに、繊維長さより短い間隔で形成された拘束部13dが不織布の繊維を拘束するので、繊維の脱落によるコンタミの発生を防止することができる。
【0039】
また、
図7に示す例は、不織布からなる濾材13の本体部13aに、その外周の被固定部13bから連続して、ゴム状弾性材料を含浸することによる複数の拘束部13dを互いに平行な直線状に形成したものである。不織布には繊維の方向性を有するものがあり、このような場合、
図7に示す拘束部13dは、繊維の方向と直交するように、かつ繊維長さより短い間隔で形成することによって不織布の繊維を確実に拘束するので、繊維の脱落によるコンタミの発生を防止することができる。
【0040】
また、
図8に示す例は、不織布からなる濾材13の本体部13aに、その外周の被固定部13bから連続して、ゴム状弾性材料を含浸することによる複数の拘束部13dを格子状に形成したものである。この例でも、拘束部13dの間隔を繊維長さより短い間隔で形成することによって不織布の繊維を確実に拘束することができる。
【0041】
そして、
図6〜
図8に示すいずれの例も、拘束部13dは被固定部13bと同時に成形することができ、被固定部13bと同じ材質及び厚さでも異なる材質及び厚さでも良い。また、濾材13の本体部13aが不織布以外のもの、例えば織布やメッシュ状のものについても同様に拘束部13dを形成することができる。
【0042】
次に
図9は、本発明に係るオイルストレーナの第三の実施の形態を示す断面図である。
【0043】
すなわち
図9に示す第三の実施の形態のオイルストレーナ1は、流出口12が開設されたボディ11と、このボディ11の下側に配置されると共にこのボディ11との間に濾過室Sを画成する濾材13と、濾過室S内に配置されて濾材13を下方へ膨出させる押さえ部材15とを備える。
【0044】
押さえ部材15は、その上端部が、ボディ11のケース部11aの下面中央部に、流出口12の下端に位置して固定されている。そしてこの押さえ部材15の高さは、ケース部11aの周壁11bの高さよりも高く、したがって外周の被固定部13bがボディ11の取付鍔部11cに固定された濾材13は、濾過室Sを下側から覆う本体部13aの中央部が下方へ押し出されて膨出した形状に支持されている。また、押さえ部材15は
図10に示すように複数の流通窓15aが開設された筒形の枠状をなしており、濾材13の本体部13a及び濾過室Sから流出口12へのオイルの流れを妨げない構造となっている。
【0045】
上述の構成を備える第三の実施の形態のオイルストレーナ1によれば、オイルパン内に略水平に設置された状態であっても、濾材13の本体部13aは、押さえ部材15によって中央が下方へ膨出した形状に支持されることによって、軸対称の勾配を有する形状となっている。このため、オイルOが濾材13の本体部13aを通過して濾過室Sへ流入する過程で捕捉された気泡ABは、軸対称に傾斜した本体部13aの下面を相対的に上側となる外周側へ向けて浮力によって移動し、外周端部から浮上してオイルストレーナ1から離れるので、濾材13の本体部13aの下面に気泡ABが滞留するのを有効に防止することができる。そして濾材13の本体部13aを通過したオイルOは、濾過室Sから押さえ部材15の流通窓15a及び押さえ部材15の内周を経由して、あるいは直接押さえ部材15の内周を経由して、流出口12からサクションホース2を介してオイルポンプへ吸入される。
【0046】
ここで、例えば先に説明した
図1に示す第一の実施の形態や、
図2に示す第二の実施の形態などにおいては、僅かな気泡ABが濾材13の本体部13aを通過して濾過室Sへ入り込んだ場合、この気泡ABは、
図11に示すように、非水平に設置されたボディ11の伏皿形のケース部11aの内面に溜まる懸念がある。そして
図12に示す第四の実施の形態は、このような懸念を解消するものである。
【0047】
すなわち
図12に示す第四の実施の形態のオイルストレーナ1は、中央に流出口12が開設された平板部11e及びその外周端からほぼ直角に立ち上がった突縁部11fからなるボディ11と、このボディ11の下側に配置されると共にこのボディ11との間に濾過室Sを画成する濾材13と、濾過室S内に配置されて濾材13を下方へ膨出させる押さえ部材15とを備える。
【0048】
押さえ部材15は、その上端部が、ボディ11の平板部11eの下面中央部に、流出口12の下端に位置して固定されている。そして外周の被固定部13bがボディ11の突縁部11fに固定された濾材13は、濾過室Sを下側から覆う本体部13aの中央部が下方へ押し出されて膨出したテント形に支持されている。なお、押さえ部材15は先に説明した
図10と同様のものである。
【0049】
上述の構成を備える第四の実施の形態のオイルストレーナ1も第三の実施の形態と同様、オイルパン内に略水平に設置された状態であっても、濾材13の本体部13aは、押さえ部材15によって中央が下方へ膨出したテント形に支持されることによって、軸対称の勾配を有する。このため、オイルOが濾材13の本体部13aを通過して濾過室Sへ流入する過程で捕捉された気泡ABは、軸対称に傾斜した本体部13aの下面を相対的に上側となる外周側へ向けて浮力によって移動し、外周端部から浮上してオイルストレーナ1から離れるので、濾材13の本体部13aの下面に気泡ABが滞留するのを有効に防止することができる。そして濾材13の本体部13aを通過したオイルOは、濾過室Sから押さえ部材15の流通窓15a及び押さえ部材15の内周を経由して、あるいは直接押さえ部材15の内周を経由して、流出口12からサクションホース2を介してオイルポンプへ吸入される。
【0050】
しかもこの形態によれば、濾過室Sの上面がボディ11の平板部11eによって形成されているため、僅かな気泡ABが濾材13の本体部13aを通過して濾過室Sへ入り込んでも、この気泡ABは濾過室Sには溜まりにくいものとなる。
【0051】
また
図13に示すように、このオイルストレーナ1が斜めに取り付けられることによってボディ11の平板部11eが非水平となっている場合は、もし僅かな気泡ABが濾材13の本体部13aを通過して濾過室Sへ入り込むことがあっても、この気泡ABは浮力によって非水平の平板部11eの下面を相対的に上側となる方向へ移動し、そこから、濾材13の本体部13aを僅かずつ通過してオイルストレーナ1の外部へ出て行くので、濾過室Sには溜まりにくくなる。
【0052】
図14は、本発明に係るオイルストレーナの第五の実施の形態を示す断面図である。
【0053】
すなわちこの実施の形態のオイルストレーナ1は、ボディ11が、中央の円筒状の流出口12と、この流出口12側が低くなるような勾配を有する斜板部11g及びその外周端からほぼ直角に立ち上がった突縁部11fからなるものであり、その他の部分は
図12に示す第四の実施の形態と同様に構成されている。
【0054】
上述の構成を備える第五の実施の形態のオイルストレーナ1も第三及び第四の実施の形態と同様、オイルパン内に略水平に設置された状態であっても、濾材13の本体部13aは、押さえ部材15によって中央が下方へ膨出した軸対称の勾配を有するため、オイルOが濾材13の本体部13aを通過して濾過室Sへ流入する過程で捕捉された気泡ABは、軸対称に傾斜した本体部13aの下面を相対的に上側となる外周側へ向けて浮力によって移動し、外周端部から浮上してオイルストレーナ1から離れるので、濾材13の本体部13aの下面に気泡ABが滞留するのを有効に防止することができる。
【0055】
また、もし僅かな気泡ABが濾材13の本体部13aを通過して濾過室Sへ入り込むことがあっても、濾過室Sの上面を画成するボディ11の斜板部11gは流出口12側が低くなるような勾配をもっているので、濾過室Sに入り込んだ気泡ABは、浮力によって濾過室Sにおける外周部S
Oへ移動し、そこから、濾材13の本体部13aを僅かずつ通過してオイルストレーナ1の外部へ出て行くので、オイルストレーナ1を
図13のように斜めに取り付けなくても、気泡ABが流出口12側へ移動しにくくなり、気泡ABがオイルOと共にオイルポンプへ流れることによるオイルポンプへの悪影響を防止することができる。
【0056】
さらに
図15は、本発明に係るオイルストレーナの第六の実施の形態を示す断面図である。
【0057】
この実施の形態のオイルストレーナ1は、上述した第五の実施の形態において、濾過室S内に、流出口12の下方に位置して配置されて濾材13を下方へ膨出させる押さえ部材15を、流通窓15aが下側に偏在して開設された構造としたものである。この場合、押さえ部材15の上部壁面15bは
請求項3に記載の邪魔板に相当する。
【0058】
すなわちこの構成によれば、上述したようなボディ11の斜板部11gの作用に加え、押さえ部材15の流通窓15aが下側に偏在して開設されたことによって、この押さえ部材15の上部壁面15bが気泡ABに対する邪魔板となるので、濾材13を通過して濾過室S内に入り込んだ気泡ABは流出口12内へ移動しにくくなり、気泡ABがオイルOと共にオイルポンプへ流れることによるオイルポンプへの悪影響を一層確実に防止することができる。
【0059】
また、
図9に示す第三の実施の形態及び
図12に示す第四の実施の形態も、押さえ部材15を、
図15と同様に流通窓15aが下側に偏在して開設された構造とすることができる。
【0060】
なお、第三〜第六の実施の形態も、第二の実施の形態と同様、濾材13の被固定部13bが、不織布からなる本体部13aの外周部に、ゴム状弾性材料を含浸させることによって成形されたものとし、あるいは本体部13aに格子点状、帯状、格子状などの拘束部13dを形成しても良い。
【0061】
また、図示の各実施の形態においては、先に説明したとおり、濾材13には耐熱性及び親油性の高い不織布からなるものや、金属メッシュからなるもの、あるいは耐熱性及び親油性の高い多孔板などが好適に採用可能である。
【0062】
そしてこのうち、濾材13を不織布からなるものとする場合は、この不織布は親油性の高い不織布、例えばPE(Polyethylene)、PS(Polystyrene)、PP(Polypropylene)、炭素繊維、PET(Polyethylene
terephthalate)繊維とPP−PE芯鞘構造の繊維を混合した繊維からなる不織布を用いたものが良い。PP−PE芯鞘構造の繊維は、1本1本の繊維の中心部がPP、外周部がPEの二重構造になっている。
【0063】
ここで「親油性が高い」とは、フィルムに対する水の接触角(濡れ角度)で代用し、この濡れ角度が70°以上の場合に、このフィルムは親油性が高いと定義する。また、濡れ角度とは、
図16に示すように、フィルムfの表面に水滴wを載せたときに、フィルムfの表面と交わる水滴wの縁の表面に対する接線が、フィルムfの表面に対してなす角度θのことである。
【0064】
なお、油の接触角を水の濡れ性で代用できることは、臨界表面張力の考えで説明することができる。すなわち、次式;
Wa=cosθ=1+b(γc−γL)
Wa:付着仕事(単位面積の固体表面から液体を引き離す仕事)
θ:接触角
γc:固体の表面張力
γL:液体の表面張力
において、親油性が大きい(固体表面に対する油の付着仕事が大きい)とは、固体の表面張力が油と同等に小さいこと、すなわち固体の表面張力γcと液体(油)の表面張力γLの差(γc−γL)が小さいということであり、言い換えれば水との表面張力との差が大きいということであり、したがってcosθが小さいということであり、水との接触角θが大きいということである。たとえば、液体をパラフィン油→水に置き換える場合について説明すると、パラフィン油の表面張力は26dyne/cmであるのに対し、水の表面張力は72dyne/cmであるため、油対比でγcとγLの差が大きく、すなわち接触角θが大きい(濡れ性が小さい)ことを示す。
【0065】
濾材13を耐熱性及び親油性の高い多孔板からなるものとする場合は、この多孔板は、炭化ケイ素(SiC)などの非酸化物セラミックス粒子の焼結多孔板からなり、空孔率が30%以上のものが用いられる。多孔板の厚みは0.5〜3.0mmであることが好ましい。厚みが0.5mm未満では強度が不足し、3.0mm超ではオイルの濾過流量が不十分となるからである。また、多孔板の孔径は0.1〜10μmのものが用いられる。孔径が0.1μm未満ではオイルの濾過流量が不十分となり、10μm超では強度が不足するからである。
【0066】
オイルストレーナの濾材としては、従来から、通常はエキスパンドメタル等の金網や有機繊維の不織布が用いられているが、濾材が金網からなるものである場合は、オイルが高温となった場合の濾材の耐熱性が確保される反面、目開きが大きいため気泡が通過してしまいやすく、また金網がステンレス鋼からなる場合、ステンレス鋼は親油性が不十分であるため、濾材表面に気泡が溜まるとオイルの濾過が妨げられるおそれがある。
【0067】
これに対し、濾材13が炭素繊維の不織布や非酸化物セラミックス粒子の焼結多孔板など耐熱性及び親油性の高い多孔板からなる場合は、オイルに対する濾材13の濡れ性が良くなるのでオイルが優先的に透過できる。このため、オイル中に気泡が大量に含まれる場合であっても、オイルの濾過が妨げられにくくなり、オイルポンプへのオイルの供給油量の不足を防止することができる。
【0068】
次に、本発明のオイルストレーナの性能試験を行った結果について説明する。
【0069】
この試験は、
図17に示すように、容器501と、その外部に設置した透明な観測容器502との間で、オイルポンプ503を用いてオイルOを循環させ、容器501内のオイルに、ホモジナイザ504を用いてその振動子504aによりキャビテーションの気泡を発生させ、容器501から観測容器502へ向かうオイルOを、容器501内に設置したオイルストレーナ505によって濾過した場合と、オイルストレーナ505を取り付けない場合とで、観測容器502への気泡の流入の有無を観察した。なお、参照符号506は観測用のカメラ、参照符号507はオイルストレーナ505(濾材)による圧力損失を計測することによって通油性を確認するための負圧計である。
【0070】
オイルストレーナ505の濾材には、表1に示すような特性を有する親油性不織布を用いた。また、オイルポンプ503によるオイルの流量は2.2〜2.3L/minであった。
【表1】
【0071】
試験結果、オイルストレーナ505を取り付けたものは、観測容器502内のオイルOには気泡が殆ど存在せず、オイルストレーナ505を取り付けないものは、観測容器502内のオイルOが大量の気泡によって白濁していた。
【0072】
次に、オイルストレーナ505の濾材に親油性不織布を用いた場合と非親油性不織布を用いた場合とで効果を比較した。具体的には、実施例として、PET繊維とPP−PE芯鞘構造の繊維を混合した繊維からなる不織布を濾材として用い、比較例として、濾材に、PET繊維単体からなる非親油性不織布を用いた。
【0073】
この比較試験結果、水接触角が70°以上のPE、PS、PP、炭素繊維からなる不織布、あるいはPET繊維とPP−PE芯鞘構造の繊維を混合した繊維からなる不織布を濾材として用いたものは、観測容器502内のオイルOは透明で気泡が殆ど見られず、通油性も良好であったが、水接触角が70°未満であるPET繊維単体からなる非親油性不織布を用いた比較例は、観測容器502内のオイルOに気泡の混在による白濁が確認された。したがって水接触角が70°以上である親油性不織布を用いた実施例は気泡除去性及び通油性に優れていることが確認された。
【0074】
したがって、本発明に係るオイルストレーナの濾材13に、親油性を有する不織布又はセラミックス多孔板を用いることでオイル中の気泡除去効果が向上するので、濾材13の下面に気泡ABが滞留することによるオイルOの濾過流量の減少を防止することができ、しかも親油性を有する不織布又はセラミックス多孔板は通油性に優れているため、オイルOの所要の流量を確保することができる。
【0075】
また上述の試験結果から、PET繊維単体では親油性が低くても、これにPP−PE芯鞘構造の繊維を混合した不織布を濾材として用いたものは、観測容器502内のオイルOは透明で気泡が殆ど見られなかったことから、親油性の低い繊維であっても、親油性の高いPE、PS、PP、炭素繊維等と混合することで、優れた気泡除去性及び通油性を得られることがわかった。