(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992788
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20160901BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20160901BHJP
H05K 3/22 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
H05K3/46 X
H05K3/46 N
H05K3/00 R
H05K3/22 C
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-217124(P2012-217124)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-3268(P2014-3268A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2015年9月28日
(31)【優先権主張番号】特願2012-118558(P2012-118558)
(32)【優先日】2012年5月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木村 茂治
【審査官】
内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−014847(JP,A)
【文献】
特開2010−050351(JP,A)
【文献】
特開2000−349435(JP,A)
【文献】
特開平09−252171(JP,A)
【文献】
特開平06−283859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H05K 1/03
H05K 3/00
H05K 3/10 〜 3/26
H05K 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のプリプレグの一方の主面に第1の銅箔および他方の主面に第2の銅箔を積層するとともに前記第1のプリプレグを硬化させることにより、前記第1のプリプレグが硬化して成る第1の絶縁層の一方の主面に前記第1の銅箔および他方の主面に前記第2の銅箔を固着する工程と、
前記第1および第2の銅箔に前記主面と平行な方向に引き伸ばす延伸加工を加えることにより、該延伸加工された前記第1および第2の銅箔により前記第1の絶縁層に前記主面と平行な方向の引っ張り応力を付与する工程と、
前記第1の銅箔を所定の配線パターンにエッチングすることにより、前記一方の主面上に前記第1の銅箔から成る第1の配線導体を形成する工程と、
前記第1の配線導体が形成された前記一方の主面に第2のプリプレグおよび該第2のプリプレグの外側主面に第3の銅箔を重ねて積層するとともに前記第2のプリプレグを硬化させることにより、前記一方の主面上に前記第2のプリプレグが硬化して成る第2の絶縁層および該第2の絶縁層の外側主面上に前記第3の銅箔を固着する工程と、
前記第1の絶縁層の他方の主面に固着された前記第2の銅箔および前記第2の絶縁層の外側主面に固着された前記第3の銅箔をエッチング除去することにより、前記第2の銅箔により前記第1の絶縁層に付与されていた前記引っ張り応力を開放する工程と、
前記第1の絶縁層に前記他方の主面から前記第1の配線導体に達する複数の第1のビアホールおよび前記第2の絶縁層に前記外側主面から前記第1の配線導体に達する複数の第2のビアホールを形成する工程と、
前記第1の絶縁層の前記他方の主面および前記第1のビアホール内に銅めっきから成る第2の配線導体を形成するとともに前記第2の絶縁層の前記外側主面および前記第2のビアホール内に銅めっきから成る第3の配線導体を形成する工程と、を行なうことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記延伸加工をウェットブラスト法を用いて行なうことを特徴とする請求項1に記載の配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の製造方法に関し、より詳細には、第1のプリプレグを硬化させて成る第1の絶縁層上に第1の配線導体を形成し、さらにその上に第2のプリプレグを積層するとともに硬化させて第2の絶縁層を形成する工程を含む配線基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、半導体素子等の電子部品を搭載するための配線基板には、その薄型化および高密度配線化が要求されことが多い。このような要求に答える配線基板を製造する方法として、第1のプリプレグを硬化させて成る第1の絶縁層の一方の主面に銅箔から成る第1の配線導体を形成した後、この一方の主面上に第1の配線導体を間に挟んで第2のプリプレグを積層するとともに硬化させて第2の絶縁層を形成し、次に第1の絶縁層の他方の主面から第1の配線導体に達する複数の第1のビアホールを形成するとともに第2の絶縁層の外側主面から第1の配線導体に達する複数の第2のビアホールを形成し、次に第1の絶縁層の他方の主面および第1のビアホール内に銅めっきから成る第2の配線導体を形成するとともに、第2の絶縁層の外側主面および第2のビアホール内に銅めっきから成る第3の配線導体を形成することにより薄型で高密度配線の配線基板を製造する方法がある。
【0003】
しかしながら、この方法によると、第1のプリプレグを硬化させて成る第1の絶縁層の一方の主面に第2のプリプレグを積層するとともに硬化させて第2の絶縁層を形成する際に、第2の絶縁層に硬化収縮が起こる。その結果、第2の絶縁層が硬化収縮しようとする力により第2の絶縁層側が凹面となる大きな反りが配線基板に発生してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−46249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、薄型で高密度配線を有する反りの小さな配線基板の製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の配線基板の製造方法は、第1のプリプレグの一方の主面に第1の銅箔および他方の主面に第2の銅箔を積層するとともに前記第1のプリプレグを硬化させることにより、前記第1のプリプレグが硬化して成る第1の絶縁層の一方の主面に前記第1の銅箔および他方の主面に前記第2の銅箔を固着する第1の工程と、
前記第1および第2の銅箔に前記主面と平行な方向に引き伸ばす延伸加工を加えることにより、該延伸加工された前記第1および第2の銅箔により前記第1の絶縁層に前記主面と平行な方向の引っ張り応力を付与する第2工程と、
前記第1の銅箔を所定の配線パターンにエッチングすることにより、前記一方の主面上に前記第1の銅箔から成る第1の配線導体を形成する第3の工程と、
前記第1の配線導体が形成された前記一方の主面に第2のプリプレグおよび該第2のプリプレグの外側主面に第3の銅箔を重ねて積層するとともに前記第2のプリプレグを硬化させることにより、前記一方の主面上に前記第2のプリプレグが硬化して成る第2の絶縁層および該第2の絶縁層の外側主面上に前記第3の銅箔を固着する第4の工程と、
前記第1の絶縁層の他方の主面に固着された前記第2の銅箔および前記第2の絶縁層の外側主面に固着された前記第3の銅箔をエッチング除去することにより、前記第2の銅箔により前記第1の絶縁層に付与されていた前記引っ張り応力を開放する第5の工程と、
前記第1の絶縁層に前記他方の主面から前記第1の配線導体に達する複数の第1のビアホールおよび前記第2の絶縁層に前記外側主面から前記第1の配線導体に達する複数の第2のビアホールを形成する第6の工程と、
前記第1の絶縁層の前記他方の主面および前記第1のビアホール内に銅めっきから成る第2の配線導体を形成するとともに前記第2の絶縁層の前記外側主面および前記第2のビアホール内に銅めっきから成る第3の配線導体を形成する第7の工程と、を行なうことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の配線基板の製造方法によれば、第2の工程において、第1の絶縁層の両主面に固着させた第1および第2の銅箔に第1の絶縁層の主面と平行な方向に引き伸ばす延伸加工を加えることにより、その延伸加工された第1および第2の銅箔により第1の絶縁層にその主面に沿った方向に引っ張り応力が付与された状態となる。その後、第4の工程において、第1の絶縁層の一方の主面上に第2のプリプレグと第3の銅箔とを重ねて積層するとともに第2のプリプレグを硬化させると、第2の絶縁層の硬化収縮により第2の絶縁層には第1の絶縁層および第3の銅箔によりその主面に沿った方向に引っ張りが付与される。その後、第5の工程において、第2および第3の銅箔をエッチング除去すると、第1の絶縁層および第2の絶縁層に付与されていた引っ張り応力が解放されて第1および第2の絶縁層が共に収縮しようとする。その結果、第1および第2の絶縁層の収縮により反ろうとする力が打ち消されて、反りの発生が低減される。したがって、反りの小さな配線基板を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1(a)〜(c)は、本発明の配線基板の製造方法の実施形態の一例を説明するための工程毎の概略断面図である。
【
図2】
図2(d)〜(g)は、本発明の配線基板の製造方法の実施形態の一例を説明するための工程毎の概略断面図である。
【
図3】
図3(h)〜(k)は、本発明の配線基板の製造方法の実施形態の一例を説明するための工程毎の概略断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の配線基板の製造方法の別の実施形態の一例を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の配線基板の製造方法における実施形態の一例を
図1〜
図3を基に説明する。
【0010】
先ず、
図1(a)に示すように、第1のプリプレグP1と、第1の銅箔F1および第2の銅箔F2とを準備する。第1のプリプレグP1は、例えばガラスクロスにエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させるとともに半硬化させて成る。第1のプリプレグP1の寸法は、例えば厚みが40μm、縦が500mm横が600mmである。また、第1の銅箔F1および第2の銅箔F2は、電解銅箔から成る。第1の銅箔F1および第2の銅箔F2の寸法は、例えば厚みが18μmであり、縦横は第1のプリプレグP1と実質的に同じ大きさである。
【0011】
次に、
図1(b)に示すように、第1のプリプレグP1の一方の主面に第1の銅箔F1を、他方の主面第2の銅箔F2を積層するとともに、第1のプリプレグP1を熱硬化させることにより、第1のプリプレグP1が硬化して成る第1の絶縁層1の一方の主面に第1の銅箔F1を固着するとともに他方の主面に第2の銅箔F2を固着する。なお、積層には例えば真空プレス装置を用い、熱硬化には例えばオーブンを用いる。なお、
図1(a),(b)で説明した工程を自ら行なう代わりに市販の両面銅張り板を用いてもよい。
【0012】
次に、
図1(c)に示すように、第1の銅箔F1および第2の銅箔F2に、絶縁層1の主面に平行な方向に引き伸ばす延伸加工を加える。このような延伸加工には、例えばベルトサンダーSが用いられる。この延伸加工により、第1の絶縁層1に、その主面と平行な方向の引っ張り応力T1が付与される。なお、延伸加工には、ベルトサンダーに限らず、ロールサンダーや圧延ロール等の他の装置を用いることもできる。ベルトサンダーを用いる場合には、#320〜#1000程度の番手の研磨ベルトを用い、両方の銅箔F1,F2に対して延伸加工を行うことが好ましい。研磨ベルトの番手が#320未満である場合、銅箔F1,F2の表面に深い研磨痕が残り、その影響で微細な配線を形成することが困難になる。また、研磨ベルトの番手が#1000を超えると、銅箔F1,F2を引き伸ばす力が弱くなり、十分な延伸加工を加えることが困難になる。
【0013】
次に、
図2(d)に示すように、第1の銅箔F1を周知のサブトラクティブ法を用いて所定の配線パターンにエッチングすることにより、絶縁層1の一方の主面に第1の配線導体2を形成する。この第1の配線導体2は、後述する第1のビアホール4および第2のビアホール5を介して後述する第2の配線導体6や第3の配線導体に接続するための複数のランドを含んでいる。ランドの直径は150μmである。
【0014】
次に、
図2(e)に示すように、第2のプリプレグP2と第3の銅箔F3とを準備する。第2のプリプレグP2は、第1のプリプレグP1と実質的に同じ材料および同じ寸法のものを用いる。また、第3の銅箔F3は、第1および第2の銅箔F1,F2と実質的に同じ材料および同じ寸法のものを用いる。なお、第2のプリプレグP2と第3の銅箔F3とを別々に準備する代わりに、第2のプリプレグP2の一方の主面に第3の銅箔F3が予め積層された片面銅箔付きのプリプレグを用いてもよい。
【0015】
次に、
図2(f)に示すように、第1の配線導体2が形成された第1の絶縁層1の一方の主面に、第2のプリプレグP2と第3の銅箔F3とを順次重ねて積層するとともに第2のプリプレグP2を熱硬化させることより、絶縁層1の一方の主面に第2のプリプレグP2が硬化して成る絶縁層3を固着するとともに、絶縁層3の外側主面に第3の銅箔F3を固着する。このとき、絶縁層3には第2のプリプレグP2が熱硬化する際に硬化収縮が起こるので、第1の絶縁層1および第3の銅箔F3から第2の絶縁3層の主面と平行な方向の引っ張り応力T2が付与される。なお、積層には例えば真空プレス装置を用い、熱硬化には例えばオーブンを用いる。
【0016】
次に、
図2(g)に示すように、第2の銅箔F2と第3の銅箔F3とをエッチング除去する。これにより、第2の銅箔F2により付与されていた引っ張り応力T1と第3の銅箔F3により付与されていた引っ張り応力T2とが開放される。その結果、第1の絶縁層1と第2の絶縁層3との両方が収縮しようとするので、反ろうとする力が打ち消されて反りの発生が低減される。したがって、本発明によれば、反りの小さな配線基板を提供することが可能となる。なお、第2および第3の銅箔F2,F3をエッチング除去する際には、第1および第2の絶縁層1,3の外周部に第2および第3の銅箔F2,F3を枠状に残しておくことが好ましい。このような枠状に残った銅箔F2,F3により、第1の絶縁層1と第2の絶縁層3との積層体における機械的な強度を補強することができるとともに、後述する第2および第3の配線導体6,7を形成する際に、電解めっき用の電荷を供給する電解めっき装置の給電端子に接続される接続電極としてこれらの残った銅箔F2,F3を使用することができる。なお、このような銅箔F2,F3を残す外周部は、配線基板とはならない捨て代領域とし、配線基板の形成後に切除する。
【0017】
次に、
図3(h)に示すように、第1の絶縁層1にその他方の主面から第1の配線導体2に達する複数の第1のビアホール4を形成するとともに、第2の絶縁層3にその外側主面から第1の配線導体2に達する複数の第2のビアホール5を形成する。ビアホール4,5は、レーザ加工により形成する。ビアホール4,5の直径は、その底部で50μm、その開口部で70μmである。ビアホール4,5を形成した後は、デスミア処理を行なう。
【0018】
次に、
図3(i)に示すように、第1の絶縁層1の他方主面および第1のビアホール4内に銅めっきから成る第2の配線導体6を形成するとともに、第2の絶縁層3の外側主面および第2のビアホール5内に銅めっきから成る第3の配線導体7を形成する。これらの配線導体6,7は、周知のセミアディティブ法を採用することにより形成する。セミアディティブ法を採用することにより、微細で高密度配線の配線導体6,7を形成することができる。
【0019】
次に、
図3(j)に示すように、第1の絶縁層1の他方の主面および第2の絶縁層3の外側主面にソルダーレジスト層8を形成する。ソルダーレジスト層8は、例えばアクリル変性エポキシ樹脂から成る感光性樹脂ペーストを第1の絶縁層1の他方の主面および第2の絶縁層3の外側主面上に塗布するとともに、周知のフォトリソグラフィー技術を採用して所定のパターンに露光および現像した後、熱硬化させることにより形成する。
【0020】
最後に、
図3(k)に示すように、配線基板10となる領域をダイシングマシーンやルータ等の切断装置を用いて切り出すことにより、薄型で高密度配線を有する反りの小さな配線基板10が製造される。
【0021】
なお、本発明は上述の実施形態の一例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。例えば、上述の実施形態の一例においては、第1の銅箔F1および第2の銅箔F2に、絶縁層1の主面に平行な方向に引き伸ばす延伸加工を加えるときにベルトサンダーSを用いたが、これに代えてウェットブラスト法を用いてもよい。ウェットブラスト法を用いることで、第1および第2の銅箔F1、F2に対して絶縁層1の主面に平行な全ての方向に対してより均一な延伸を加えることが可能となり、第1の絶縁層1に均一な引っ張り応力T3が付与される。このようなウェットブラスト法による延伸加工は、先述の
図1(a)および(b)を基に説明した工程を実施した後で、
図1(c)を基に説明した工程に代えて実施する。具体的には、
図4に示すように第1および第2の銅箔F1、F2の上下の位置にウェットブラスト用のノズルNを配置する。そして、水分に微細粉体を混入した研磨材の噴流Jをノズルから噴射することで、第1の銅箔F1および第2の銅箔F2に、第1の絶縁層1の主面に平行な方向に引き伸ばす延伸加工を加える。なお、微細粉体としては、酸化アルミや酸化ケイ素、あるいは酸化鉄や酸化チタンなどが用いられる。ウェットブラスト工法による工程が終了した後は、先述の
図2および
図3を基に説明した工程を順次実施するとよい。
【符号の説明】
【0022】
1 第1の絶縁層
2 第1の配線導体
3 第2の絶縁層
4 第1のビアホール
5 第2のビアホール
6 第2の配線導体
7 第3の配線導体
P1 第1のプリプレグ
P2 第2のプリプレグ
F1 第1の銅箔
F2 第2の銅箔
F3 第3の銅箔