【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、セメント分散性(減水性)等の性能に優れたセメント混和剤として使用できる重合体について種々検討したところ、不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)と、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を必須とするセメント混和剤用ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体であって、上記高分子鎖(A)及び上記高分子鎖(B)が、高分子鎖(A)、高分子鎖(B)、高分子鎖(A)の順で結合部位(X)を介して結合した構造を有し、上記高分子鎖(B)における上記ポリアルキレングリコール系構成単位のオキシアルキレン基の平均付加モル数が25以上である構造を有する共重合体が、シンプルな構造にもかかわらずセメント分散性(減水性)やスランプフロー等の特性に優れ、セメント混和剤として好適に用いることができる重合体となることを見出した。
更に、本発明者らは、不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)と、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を必須とするポリアルキレングリコール系ブロック共重合体であって、上記高分子鎖(A)及び上記高分子鎖(B)が、高分子鎖(A)、高分子鎖(B)、高分子鎖(A)の順で結合部位(X)を介して結合した構造を有し、上記高分子鎖(B)における上記ポリアルキレングリコール系構成単位のオキシアルキレン基の平均付加モル数が70以上である構造を有する共重合体が、シンプルな構造にもかかわらずセメント分散性(減水性)やスランプフロー等の特性に優れ、セメント混和剤として好適に用いることができ、また、無機微粒子を分散させる分散剤としても好適に用いることが出来ることを見出した。
【0008】
すなわち本発明のセメント混和剤用ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)と、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を必須とするセメント混和剤用ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体であって、
上記セメント混和剤用ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、
上記高分子鎖(A)及び上記高分子鎖(B)が、高分子鎖(A)、高分子鎖(B)、高分子鎖(A)の順で結合部位(X)を介して結合した構造を有し、
上記高分子鎖(B)における上記ポリアルキレングリコール系構成単位のオキシアルキレン基の平均付加モル数が25以上であることを特徴とする。
また、本発明のポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)と、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を必須とするポリアルキレングリコール系ブロック共重合体であって、
上記ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、
上記高分子鎖(A)及び上記高分子鎖(B)が、高分子鎖(A)、高分子鎖(B)、高分子鎖(A)の順で結合部位(X)を介して結合した構造を有し、
上記高分子鎖(B)における上記ポリアルキレングリコール系構成単位のオキシアルキレン基の平均付加モル数が70以上であることを特徴とする。
以下、本明細書中において、単に「本発明」又は「本発明の共重合体」という場合には本発明のセメント混和剤用ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体と本発明のポリアルキレングリコール系ブロック共重合体に共通する事項を意味するものとする。
また、本発明のセメント混和剤用ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体と発明のポリアルキレングリコール系ブロック共重合体に共通する技術的特徴については本発明のセメント混和剤用ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体の説明で説明することとする。本発明のポリアルキレングリコール系ブロック共重合体の説明においては、本発明のセメント混和剤用ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体と異なる技術的特徴について説明する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0009】
<セメント混和剤用ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体>
本発明のセメント混和剤用ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)と、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を必須とするセメント混和剤用ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体であって、
上記セメント混和剤用ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、
上記高分子鎖(A)及び上記高分子鎖(B)が、高分子鎖(A)、高分子鎖(B)、高分子鎖(A)の順で結合部位(X)を介して結合した構造を有し、
上記高分子鎖(B)における上記ポリアルキレングリコール系構成単位のオキシアルキレン基の平均付加モル数が25以上であることを特徴とする。
【0010】
本発明のセメント混和剤用ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体の一例として、下記一般式(1)の構造を有する共重合体が挙げられる。
【0011】
【化1】
(式中、X
1及びX
2は、同一又は異なって、有機残基を表す。AOは、同一又は異なって、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表す。R
1は、夫々同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のアルケニル基を表す。R
2、R
3、R
4、R
5は、少なくとも一つが−COOM
1であり、R
2、R
3、R
4、R
5は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、−(CH
2)zCOOM
2(−(CH
2)zCOOM
2は、COOM
1またはその他の−(CH
2)zCOOM
2と無水物を形成していてもよい)を表し、zは0〜2の整数を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、25以上の数である。m
1及びm
2は、不飽和カルボン酸系単量体単位の平均導入モル数を表す。)
【0012】
上記一般式(1)において中央に示されている−O−(AO)n−は、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)を構成するポリオキシアルキレン基末端の酸素原子及びポリオキシアルキレン基である。nはポリアルキレングリコール系構成単位のオキシアルキレン基の平均付加モル数を示している。
上記ポリオキシアルキレン基の両側に位置するX
1、X
2は結合部位でありX
1、X
2を介して不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)がポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)の両端に結合している。
m
1、m
2はそれぞれ不飽和カルボン酸系単量体単位の平均導入モル数を示している。
以下、不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)、及び、結合部位(X)について説明する。
【0013】
<不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)>
上記不飽和カルボン酸系単量体単位は、単量体(a)(以下、単に「単量体(a)」ともいう。)に由来する構成単位である。
なお、上記不飽和カルボン酸系単量体単位は、単量体(a)に由来するのと同じ構造の構成単位となるのであれば、他の単量体に由来する構成単位を変性したものであってもよい。
単量体(a)としては、例えば、下記式(2):
【0014】
【化2】
【0015】
(式中、R
2、R
3、R
4、R
5は、少なくとも一つが−COOM
1であり、R
2、R
3、R
4、R
5は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、−(CH
2)zCOOM
2(−(CH
2)zCOOM
2は、COOM
1またはその他の−(CH
2)zCOOM
2と無水物を形成していてもよい)を表し、zは0〜2の整数を表す。M
1及びM
2は同一又は異なって、水素原子、一価金属、二価金属、三価金属、第4級アンモニウム基、又は、有機アミン基を表す。)で示される化合物が好適である。
なお、上記単量体(a)由来の構成単位とは、重合反応によって一般式(2)で示される単量体(a)の重合性二重結合が開いた構造(二重結合(C=C)が、単結合(−C−C−)となった構造)に相当する。
上記単量体(a)が一般式(1)に示す共重合体となったときに、C=C二重結合に結合した少なくとも一つのカルボキシル基又はその塩(−COOM
1)の位置は特に限定されるものではない。一般式(1)におけるX
1又はX
2に結合する炭素原子に結合する置換基(R
4、R
5)の位置であってもよいし、一般式(1)におけるR
1に結合する炭素原子に結合する置換基(R
2、R
3)の位置であってもよい。各単量体単位ごとにおける(−COOM
1)の位置はR
2、R
3、R
4、R
5のうちのどの位置であってもよい。
【0016】
上記一般式(2)において、M
1及びM
2で表される基としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等の一価金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属原子等の二価金属原子;アルミニウム、鉄等の三価金属原子が挙げられる。また、有機アミン基としては、例えば、エタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基や、トリエチルアミン基等が挙げられる。
【0017】
上記一般式(2)で示される不飽和カルボン酸系単量体の具体例としてはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸系単量体、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのジカルボン酸系単量体、これらのジカルボン酸無水物及びこれらの塩(例えば、一価金属、二価金属、三価金属、第4級アンモニウムまたは有機アミンの塩)が挙げられる。
中でも、重合性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸及びこれらの塩が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの塩が特に好ましい。
また、これらの単量体は2種以上併用してもよい。
【0018】
本発明の共重合体において、上記不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)における不飽和カルボン酸系単量体単位の平均導入モル数としては、共重合体全体で20以上であることが好適である。
以下、不飽和カルボン酸系単量体単位の平均導入モル数の値とは、本発明の共重合体1モル中に含まれる、共重合体全体における不飽和カルボン酸系単量体単位の平均導入モル数を意味する。
一般式(1)においては不飽和カルボン酸系単量体単位の平均導入モル数をm
1、m
2で示しており、不飽和カルボン酸系単量体単位の平均導入モル数が共重合体全体で20以上であるということは、m
1+m
2の値が20以上であるということとなる。
上記平均導入モル数の下限値は、より好ましくは25であり、さらに好ましくは30である。好ましい上限値としては500であり、より好ましくは300であり、さらに好ましくは100である。
上記平均導入モル数を20以上とすることにより、上記共重合体に不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)に基づく性能を充分に発揮させることが可能となる。
また、上記平均導入モル数が500を超える場合には、共重合体全体における不飽和カルボン酸系単量体の導入量が多くなり、その結果セメントを分散させるポリアルキレングリコール系構成単位が少なくなりすぎるためにセメント分散性能が低下することになる。適切に不飽和カルボン酸系単量体単位とポリアルキレングリコール系構成単位の比率を設定する必要がある。
【0019】
一般式(1)におけるR
1は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のアルケニル基を表す。
R
1は不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)の重合停止末端に当たる部位である。
【0020】
<ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)>
ポリアルキレングリコール(以下、ポリアルキレングリコールをPAGともいう)系構成単位による高分子鎖(B)は、ポリアルキレンオキシドから構成される高分子鎖である。
上記高分子鎖(B)は、炭素数2〜18のアルキレンオキシドから構成される高分子鎖(ポリアルキレンオキシド)であることが好ましい。
より好ましくは、炭素数2〜8のアルキレンオキシドであり、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシド、トリメチルエチレンオキシド、テトラメチレンオキシド、テトラメチルエチレンオキシド、ブタジエンモノオキシド、オクチレンオキシド等が挙げられる。また、ジペンタンエチレンオキシド、ジヘキサンエチレンオキシド等の脂肪族エポキシド;トリメチレンオキシド、テトラメチレンオキシド、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、オクチレンオキシド等の脂環エポキシド;スチレンオキシド、1,1−ジフェニルエチレンオキシド等の芳香族エポキシド等を用いることもできる。
【0021】
上記ポリアルキレングリコール系構成単位を構成するアルキレンオキシドとしては、本発明のポリアルキレングリコール系ブロック共重合体に求められる用途等に応じて適宜選択することが好ましく、例えば、セメント混和剤成分の製造のために用いる場合には、セメント粒子との親和性の観点から、炭素数2〜8程度の比較的短鎖のアルキレンオキシド(オキシアルキレン基)が主体であることが好適である。より好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等の炭素数2〜4のアルキレンオキシドが主体であることであり、更に好ましくは、エチレンオキシドが主体であることである。
【0022】
ここでいう「主体」とは、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)が2種以上のアルキレンオキシドにより構成されるときに、全アルキレンオキシドの存在数において、大半を占めるものであることを意味する。「大半を占める」ことを全アルキレンオキシド100モル%中のエチレンオキシドのモル%で表すとき、50〜100モル%が好ましい。これにより、本発明のポリアルキレングリコール系ブロック共重合体がより高い親水性を有することとなる。より好ましくは60モル%以上であり、更に好ましくは70モル%以上、特に好ましくは80モル%以上、最も好ましくは90モル%以上である。
【0023】
上記ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)が2種以上のアルキレンオキシドにより構成される場合は、2種以上のアルキレンオキシドがランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態で付加したものであってもよい。
【0024】
上記ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)としてはまた、炭素数3以上のアルキレンオキシドを含む場合には、本発明の共重合体にある程度の疎水性を付与することが可能となるため、上記共重合体をセメント混和剤に使用した場合には、セメント粒子に若干の構造(ネットワーク)をもたらし、セメント組成物の粘性やこわばり感を低減することができる。その一方で、炭素数3以上のアルキレンオキシドを導入し過ぎると、上記共重合体の疎水性が高くなり過ぎることから、かえってセメント粒子を分散させる性能が充分とはならないおそれがある。このため、全アルキレンオキシド100質量%に対する炭素数3以上のアルキレンオキシドの含有量は、30質量%以下であることが好ましい。より好ましくは25質量%以下であり、更に好ましくは20質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以下である。
なお、上記共重合体に求められる用途によっては、炭素数3以上のアルキレンオキシドを含まない態様が好ましい場合もある。
【0025】
ここで、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)と、不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)は、結合部位の構造によっては加水分解により切断されることがある。耐加水分解性の向上が必要な場合、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)の末端に炭素数3以上のオキシアルキレン基を導入することが好ましい。
上記炭素数3以上のオキシアルキレン基としては、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基、アルキルグリシジルエーテル残基等が挙げられる。中でも、製造の容易さからオキシプロピレン基、オキシブチレン基が好ましい。
上記炭素数3以上のオキシアルキレン基の導入量としては、求められる耐加水分解性の程度によるが、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)の両末端に対して、導入量が50モル%以上であることが好ましい。より好ましくは100モル%以上であり、更に好ましくは150モル%以上であり、特に好ましくは200モル%以上である。
【0026】
本発明のセメント混和剤用ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体においては、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)におけるアルキレンオキシドの平均繰り返し数(オキシアルキレン基の平均付加モル数)としては、25以上である。
一般式(1)においてはアルキレンオキシドの平均繰り返し数をnで示している。
nを25以上の数とすることにより、本発明のセメント混和剤用ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体にポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)に基づく性能を充分に発揮させることが可能となる。
【0027】
本発明のセメント混和剤用ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体において、オキシアルキレン基の平均付加モル数の上限値は特に限定されるものではないが、好ましくは1000であり、より好ましくは800であり、さらに好ましくは500であり、さらに好ましくは300であり、さらに好ましくは200であり、さらに好ましくは150である。また、下限値は好ましくは50、さらに好ましくは75、さらに好ましくは100、さらに好ましくは120である。
上記平均繰り返し数が1000を超える場合には、上記共重合体を製造するために使用する原料化合物の粘性が増大したり、反応性が充分とはならない等、作業性の点で好適なものとはならないおそれがある。
なお、上記アルキレンオキシドの平均繰り返し数(オキシアルキレン基の平均付加モル数)とは、本発明の共重合体が有するポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)1モル中において付加しているアルキレンオキシドのモル数の平均値を意味する。
【0028】
<結合部位(X)>
本発明の共重合体における結合部位(X)としては、不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)とポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とを化学的に安定に結合し得る構造を有する部位であればその構造は特に限定されるものではない。
上記結合部位の好ましい構造としては、重合反応に用いられる連鎖移動剤となる構造に由来する有機残基が挙げられる。
一般式(1)においては結合部位としての有機残基をX
1、X
2で示している。
結合部位(X)の例としては、(i)硫黄原子を含む結合部位、(ii)アゾ開始剤由来の結合部位、(iii)リン原子を含む残基由来の結合部位、(iv)その他の構造由来の結合部位等が挙げられる。
結合部位として複数箇所存在する有機残基の構造はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0029】
(i)硫黄原子を含む結合部位
硫黄原子を含む結合部位としては、例えば、下記式(3):
【0030】
【化3】
【0031】
[式中、R
6は有機残基であり、好ましくは、炭素数1〜18の直鎖または分岐鎖アルキレン基、フェニル基、アルキルフェニル基、ピリジニル基、チオフェン、ピロール、フラン、チアゾールなどの芳香族基、またはメルカプトカルボン酸残基(ただし、水酸基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン基、スルホニル基、ニトロ基、ホルミル基などで一部置換されていてもよい。)]で示される構造が挙げられる。
上記硫黄原子を含む結合部位の中でも、特に下記式(4):
【0032】
【化4】
【0033】
[式中、R
7はメルカプトカルボン酸残基であり、好ましくは、炭素数1〜18の直鎖または分岐鎖アルキレン基、フェニル基、アルキルフェニル基、ピリジニル基、チオフェン、ピロール、フラン、チアゾールなどの芳香族基(ただし、水酸基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン基、スルホニル基、ニトロ基、ホルミル基などで一部置換されていてもよい。)]で示される構造が好ましい。
【0034】
上記式(3)で示される構造のR
6はポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)と結合する部位であり、硫黄原子(S)は不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)と結合する部位である。
上記式(4)で示される結合部位の一端の構造(式(4)の左側の結合)は、メルカプトカルボン酸のカルボキシル基とポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)の末端のヒドロキシル基との間で脱水エステル化反応を起すことによって得られる。
上記エステル化反応により得られたチオールエステルを連鎖移動剤として、ラジカル重合開始剤を用いて不飽和モノカルボン酸系単量体(a)をブロック重合させることができ、その結果として上記式(4)に示す構造の結合部位となる。
メルカプトカルボン酸の例としては、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトイソ酪酸、11−メルカプトウンデカン酸等が挙げられる。これらの中でも3−メルカプトイソ酪酸、3−メルカプトプロピオン酸が好ましい。
【0035】
(ii)アゾ開始剤由来の結合部位
アゾ開始剤由来の結合部位としては、アゾ基を含む重合開始剤(アゾ開始剤)に由来する部位であり、例えば、下記式(5)に示すようなアゾ開始剤に由来する構造が挙げられる。
【0036】
【化5】
【0037】
[式中、R
8は、互いに独立して、炭素数1〜20のアルキレン基(上記アルキレン基は、アルキル基、アルケニル基、水酸基、シアノ基、カルボキシル基、アミノ基などで一部置換されていてもよい。)、カルボニル基またはカルボキシル基であるか、あるいは、炭素数1〜20のアルキレン基(上記アルキレン基は、アルキル基、アルケニル基、水酸基、シアノ基、カルボキシル基、アミノ基などで一部置換されていてもよい。)がカルボニル基またはカルボキシル基に結合した基であり、R
9は、互いに独立して、炭素数1〜20のアルキル基、カルボキシ置換(炭素数1〜10の)アルキル基、フェニル基または置換フェニル基であり、R
10は、互いに独立して、シアノ基、アセトキシ基、カルバモイル基または(炭素数1〜10のアルコキシ)カルボニル基である。]で示される繰り返し単位を有するアゾ開始剤が挙げられる。
より好ましくは、下記式(6)で示されるアゾ開始剤が挙げられる。
【0038】
【化6】
【0039】
上記式(6)で示されるアゾ開始剤としては、その末端がポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とエステル結合により予め結合した構造であることが好ましい。
その具体例としては、和光純薬工業株式会社から市販されている高分子アゾ開始剤VPEシリーズ、例えば、VPE−0401(数平均分子量約2.5〜4万、ポリエチレンオキシド部分の分子量約4,000、オキシエチレン基の平均付加モル数n=90)、VPE−0601(数平均分子量約2.5〜4万、ポリエチレンオキシド部分の分子量約6,000、オキシエチレン基の平均付加モル数n=135)などが挙げられる。
【0040】
上記式(5)、(6)で示されるアゾ開始剤由来の結合部位としての有機残基Xの構造は、下記式(7)、(8)で示す構造となる。
【0041】
【化7】
【0042】
[式中、R
8、R
9、R
10は式(5)におけるR
8、R
9、R
10と同様である]
【0043】
【化8】
式(8)におけるカルボニル基の炭素がポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)と結合する側である。
【0044】
(iii)リン原子を含む残基由来の結合部位
リン原子を含む結合部位としては、例えば、下記式(9):
【0045】
【化9】
【0046】
[式中、Yは有機残基を表す。M
3は金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す]で示される構造が挙げられる。
Yはポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)と結合する部位であり、Yと結合する次亜リン酸(塩)のリン原子は、不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)と結合する部位である。
【0047】
上記有機残基としては、炭素数2〜30の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基や、炭素数6〜30の2価の芳香族基(フェニレン基、アルキルフェニレン基、及び、ピリジン、チオフェン、ピロール、フラン、チアゾール由来の2価の基等)等が挙げられ、例えば、水酸基、アミノ基、アセチルアミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン基、スルホニル基、ニトロ基、ホルミル基等の置換基で一部置換されていてもよい基が好ましい。
これらの中でも、より好ましくは、炭素数2〜18の2価の有機残基及びそれらの一部が水酸基で置換されたものであり、更に好ましくは、炭素数2〜8の直鎖状又は分岐状アルキレン基及びそれらの一部が水酸基で置換されたものである。
【0048】
次亜リン酸塩は、次亜リン酸と、金属、アンモニア又は有機アミンのいずれかとによって形成される塩が好ましい。金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属等が好ましい。有機アミンとしては、炭素数1〜18のアルキルアミン、ヒドロキシアルキルアミン、ポリアルキレンポリアミン等が挙げられる。これらの中でも、ナトリウム、カリウム、アンモニア、トリエタノールアミンによって形成される塩が好ましい。
【0049】
(iv)その他の構造由来の結合部位
その他の構造由来の結合部位の具体例としては、以下のような連鎖移動剤由来の結合部位が挙げられる。これらのうち、硫黄原子を有するものは、上記(i)硫黄原子を含む結合部位にも含まれる。
例えば、ポリアルキレングリコールの末端の−OH基に、ハロゲン化亜鉛を用いて、チオ酢酸、チオ安息香酸などのチオカルボン酸を反応させた後、アルカリ加水分解を行うことにより、−OH基を−SH基に変換した化合物;ポリアルキレングリコールとチオ酢酸との存在下、アゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)とトリフェニルホスフィンとを反応させた後、アルカリ加水分解を行うことにより、ポリアルキレングリコールの末端の−OH基を−SH基に変換した化合物;ポリアルキレングリコールの末端の−OH基に、臭化アリルなどのハロゲン化アリルをSN2反応させてポリアルキレングリコールの末端をアリル化した化合物;ポリアルキレングリコールの末端にアリル基などの二重結合を有する化合物に、チオ酢酸、チオ安息香酸などのチオカルボン酸を付加させた後、アルカリ加水分解を行うことにより、−SH基に変換した化合物;
これらの化合物(連鎖移動剤)は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0050】
<セメント混和剤用ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体>
不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)と、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を必須とする、本発明に係るセメント混和剤用ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体のうち、特に好ましい構造は、下記式(10)又は(11)で示す構造である。
【0051】
【化10】
【0052】
[式中、R
2は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、25以上の数である。m
1、m
2はそれぞれ不飽和カルボン酸系単量体単位の平均導入モル数を表す。]
【0053】
上記構造は、一般式(1)における、不飽和モノカルボン酸系単量体がアクリル酸又はメタクリル酸、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖がポリエチレングリコール鎖、結合部位(X)が、3−メルカプトイソ酪酸に由来する硫黄原子を含む結合部位である構造である。
【0054】
【化11】
【0055】
[式中、R
2は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、25以上の数である。m
1、m
2はそれぞれ不飽和カルボン酸系単量体単位の平均導入モル数を表す。]
【0056】
上記構造は、一般式(1)における、不飽和モノカルボン酸系単量体がアクリル酸又はメタクリル酸、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖がポリエチレングリコール鎖、結合部位(X)が、3−メルカプトプロピオン酸に由来する硫黄原子を含む結合部位である構造である。
なお、上記式(10)及び(11)において、不飽和カルボン酸系単量体単位のR
2及びCOOH基の位置は末端の水素原子側に描いているが、各単量体単位ごとにおけるR
2及びCOOH基の位置は硫黄原子側に位置していてもよい。上記式(10)及び(11)で示す構造では、単量体単位ごとにR
2及びCOOH基の位置が水素原子側であるか硫黄原子側であるかがランダムに決定される。
【0057】
本発明のセメント混和剤用ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体としては、その取り扱い性や、上記重合体をセメント混和剤用途に使用した場合のセメント組成物の保持性等を考慮すると、重量平均分子量(Mw)が100万以下であることが好適である。より好ましくは50万以下、更に好ましくは30万以下、さらに好ましくは20万以下、さらに好ましくは15万以下、さらに好ましくは10万以下、さらに好ましくは5万以下である。また、セメント混和剤用途に用いる場合、ある程度セメント粒子に吸着した方が性能を発揮しやすく、Mwが大きいほど吸着力が大きくなるという観点から、Mwは1000以上であることが好ましい。より好ましくは5000以上であり、更に好ましくは1万以上であり、特に好ましくは2万以上、最も好ましくは、3万以上である。
また、数平均分子量(Mn)が、50万以下であることが好ましい。より好ましくは25万以下、更に好ましくは15万以下、さらに好ましくは10万以下、さらに好ましくは75000以下、さらに好ましくは35000以下である。また、1000以上であることが好ましい。より好ましくは2500以上であり、更に好ましくは5000以上であり、特に好ましくは10000以上であり、最も好ましくは、15000以上である。
なお、化合物の重量平均分子量、数平均分子量は、後述するゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)分析法により求めることができる。
【0058】
<共重合体の製造方法>
本発明の共重合体の製造方法の一例として、メルカプトカルボン酸に由来する硫黄原子を含む結合部位を有する共重合体を製造する場合について以下に説明する。
【0059】
本発明に係る共重合体は、両末端にヒドロキシル基末端を有するポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)を準備し、上記ヒドロキシル基末端に対してメルカプトカルボン酸のカルボキシル基を反応させてエステル化反応を行う工程(エステル化反応工程)によりチオールエステルを得て、上記チオールエステルを連鎖移動剤として、ラジカル重合開始剤を用いて不飽和モノカルボン酸系単量体をブロック重合させる工程(ブロック重合工程)を行うことにより製造することができる。
このような共重合体の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0060】
<エステル化反応工程>
エステル化反応工程では、両末端にヒドロキシル基末端を有するポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)のヒドロキシル基末端とメルカプトカルボン酸のカルボキシル基を反応させてエステル結合を生成し、下記式(12)で示すチオールエステルを得る。
以下では、下記構造のチオールエステルをPAGチオール化合物ともいう。
【0061】
【化12】
【0062】
[式中、AOは同一又は異なって、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表す。R
7はメルカプトカルボン酸残基であり、好ましくは、炭素数1〜18の直鎖または分岐鎖アルキレン基、フェニル基、アルキルフェニル基、ピリジニル基、チオフェン、ピロール、フラン、チアゾールなどの芳香族基(ただし、水酸基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン基、スルホニル基、ニトロ基、ホルミル基などで一部置換されていてもよい。)]
【0063】
上記PAGチオール化合物は、その取り扱い性や、上記化合物を用いて製造した重合体をセメント混和剤用途に使用した場合のセメント組成物の粘性等を考慮すると、重量平均分子量(Mw)が50万以下であることが好適である。より好ましくは30万以下、更に好ましくは10万以下、特に好ましくは5万以下、最も好ましくは、3万以下である。また、セメント混和剤用途に用いる場合、ある程度Mwが大きい方が分散性が大きくなるという観点から、Mwは100以上であることが好ましい。より好ましくは300以上であり、更に好ましくは500以上であり、特に好ましくは1000以上、最も好ましくは、2000以上である。
また、数平均分子量(Mn)が、50万以下であることが好ましい。より好ましくは30万以下、更に好ましくは10万以下、特に好ましくは5万以下、最も好ましくは、3万以下である。また、100以上であることが好ましい。より好ましくは300以上であり、更に好ましくは500以上であり、特に好ましくは1000以上であり、最も好ましくは、2000以上である。
なお、化合物の重量平均分子量、数平均分子量は、後述するゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)分析法により求めることができる。
【0064】
上記PAGチオール化合物は、メルカプトカルボン酸由来のメルカプト基を有することに起因して、ラジカル重合反応の連鎖移動剤として作用するものであり、ラジカル重合反応を用いた種々の重合体の製造に好適に用いることができる。
【0065】
<ブロック重合工程>
上述したように、上記PAGチオール化合物は、連鎖移動剤としての機能を有するものであり、この化合物を連鎖移動剤として用いて不飽和モノカルボン酸系単量体成分をラジカル重合することにより、本発明のポリアルキレングリコール系ブロック共重合体を簡便かつ効率的に、低コストで製造できる。
【0066】
上記一般式(12)で表されるPAGチオール化合物を連鎖移動剤として用いて、重合体を製造する場合、PAGチオール化合物の硫黄原子(S)を介して不飽和モノカルボン酸系単量体成分が次々に付加して重合体部分が形成され、このようにして形成される重合体が主成分として生成することになる。
【0067】
上記重合反応にはまた、通常の連鎖移動剤を併用してもよい。使用可能な連鎖移動剤としては、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、2−メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系連鎖移動剤;イソプロピルアルコール等の2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸及びその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸及びその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等)の低級酸化物及びその塩等の親水性連鎖移動剤が挙げられる。
【0068】
上記連鎖移動剤としてはまた、疎水性連鎖移動剤を使用することもできる。疎水性連鎖移動剤としては、例えば、ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル等の炭素数3以上の炭化水素基を有するチオール系連鎖移動剤が好適に使用される。
【0069】
上記PAGチオール化合物以外に上記連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は、適宜設定すればよいが、不飽和モノカルボン酸系単量体成分の総量100モルに対し、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.25モル以上、更に好ましくは0.5モル以上であり、また、好ましくは20モル以下、より好ましくは15モル以下、更に好ましくは10モル以下である。
【0070】
単量体(a)の重合率を向上させるためには、単量体(a)のカルボキシル基の中和率を適切に設定することが重要である。単量体(a)の重合率向上のためにはカルボキシル基をできるだけ中和しない方が好ましい。しかしながら、カルボキシル基の中和率が低い場合、酸型のカルボキシル基とポリアルキレングリコール系構成単位の酸素原子が水素結合し、水不溶性の中間体を形成することがあり、その結果として単量体(a)の重合率が低下することがある。また、単量体(a)のカルボキシル基の中和率を上げすぎた場合、単量体(a)の重合性が低下するので、その結果として単量体(a)の重合率が低下する。
単量体(a)のカルボキシル基の中和率は好ましくは0〜50mol%、さらに好ましくは3〜40mol%、さらに好ましくは5〜30mol%である。
【0071】
上記重合反応は、必要に応じてラジカル重合開始剤を使用し、溶液重合や塊状重合等の方法により行うことができる。溶液重合は、回分式でも連続式でも又はそれらの組み合わせでも行うことができ、その際に使用される溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族又は脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物等が挙げられる。中でも、例えば、セメント混和剤用途のように水溶液として使用されることが多い用途に用いる場合には、水溶液重合法によって重合することが好適である。
【0072】
上記溶液重合のうち、水溶液重合では、水溶性のラジカル重合開始剤を用いることが、重合後に不溶成分を除去する必要がないので好適である。例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物、2,2’−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩等の環状アゾアミジン化合物、2−カルバモイルアゾイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物、2,4’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}等のアゾアミド化合物、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)と(アルコキシ)ポリエチレングリコールとのエステル等のマクロアゾ化合物等の水溶性アゾ系開始剤が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。中でも、アゾアミジン化合物系開始剤が好適である。
【0073】
この際、亜硫酸水素ナトリウム等のアルカリ金属亜硫酸塩、メタ二亜硫酸塩、次亜燐酸ナトリウム、モール塩等のFe(II)塩、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物、ヒドロキシルアミン塩酸塩、チオ尿素、L−アスコルビン酸(塩)、エリソルビン酸(塩)等の促進剤(還元剤)を併用することもできる。例えば、過酸化水素と有機系還元剤との組み合わせが可能であり、有機系還元剤としては、L−アスコルビン酸(塩)、L−アスコルビン酸エステル、エリソルビン酸(塩)、エリソルビン酸エステル等を好適に用いることができる。これらのラジカル重合開始剤や促進剤(還元剤)はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、上記促進剤(還元剤)の使用量は、特に限定されるものではないが、例えば、併用する重合開始剤の総量を100モルとすると、好ましくは10モル以上、より好ましくは20モル以上、更に好ましくは50モル以上であり、また、好ましくは1000モル以下、より好ましくは500モル以下、更に好ましくは400モル以下である。
【0074】
また低級アルコール類、芳香族若しくは脂肪族炭化水素類、エステル類又はケトン類を溶媒とする溶液重合や塊状重合では、ラジカル重合開始剤として、例えば、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ナトリウムパーオキシド等のパーオキシド;t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物、2,4’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}等のアゾアミド化合物、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)と(アルコキシ)ポリエチレングリコールとのエステル等のマクロアゾ化合物等のアゾ系開始剤等の1種又は2種以上を使用することができる。中でも、後述するようにアゾ系開始剤が好適である。なお、この際、アミン化合物等の促進剤を併用することもできる。
更に水と低級アルコール混合溶媒を用いる場合には、上記の種々のラジカル重合開始剤、又は、上記ラジカル重合開始剤と促進剤との組合せの中から適宜選択して用いることができる。
【0075】
上記ラジカル重合開始剤の使用量としては、PAGチオール化合物や不飽和モノカルボン酸系単量体成分の態様や量に応じて適宜設定すればよいが、ラジカル重合開始剤が重合に供する不飽和モノカルボン酸系単量体成分に対して少なすぎると、ラジカル濃度が低すぎて重合反応が遅くなるおそれがあり、また逆に多すぎると、ラジカル濃度が高すぎて、硫黄原子に起因する重合反応より不飽和モノカルボン酸系単量体成分からの重合反応が優先し、本発明のポリアルキレングリコール系ブロック共重合体の収率を高めることができないおそれがある。したがって、上記ラジカル重合開始剤の使用量は、不飽和モノカルボン酸系単量体成分の総量100モルに対し、好ましくは0.001モル以上、より好ましくは0.01モル以上、更に好ましくは0.1モル以上、特に好ましくは0.2モル以上、更に特に好ましくは1モル以上、最も好ましくは5モル以上であり、また、好ましくは50モル以下、より好ましくは20モル以下、更に好ましくは10モル以下、更により好ましくは5モル以下、特に好ましくは2モル以下、最も好ましくは1モル以下である。
【0076】
上記重合反応において、重合温度等の重合条件としては、用いられる重合方法、溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤により適宜定められるが、重合温度としては、0℃以上であることが好ましく、また、150℃以下であることが好ましい。より好ましくは30℃以上であり、更に好ましくは50℃以上である。また、より好ましくは120℃以下であり、更に好ましくは100℃以下である。
【0077】
また上記不飽和モノカルボン酸系単量体成分の反応容器への投入方法は特に限定されるものではなく、全量を反応容器に初期に一括投入する方法;全量を反応容器に分割又は連続投入する方法;一部を反応容器に初期に投入し、残りを反応容器に分割又は連続投入する方法のいずれであってもよい。なお、ラジカル重合開始剤や連鎖移動剤は、反応容器に初めから仕込んでもよく、反応容器へ滴下してもよく、また、目的に応じてこれらを組み合わせてもよいが、本発明のポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、上記PAGチオール化合物の全量を反応容器に初期に一括投入しておき、そこに、不飽和モノカルボン酸系単量体成分を連続的に投入する方法により製造されることが好ましい。このような方法で製造すると、得られる重合体がセメント混和剤として用いたときにセメントの流動性をより向上させることができるものとなる。
【0078】
上記重合反応においてはまた、所定の分子量の重合体を再現性よく得るために、重合反応を安定に進行させることが好適である。そのため、溶液重合では、使用する溶媒の25℃における溶存酸素濃度を5ppm以下(好ましくは0.01〜4ppm、より好ましくは0.01〜2ppm、更に好ましくは0.01〜1ppm)の範囲に設定することが好ましい。なお、溶媒に不飽和モノカルボン酸系単量体成分を添加した後に窒素置換等を行う場合には、不飽和モノカルボン酸系単量体成分をも含んだ系の溶存酸素濃度を上記範囲内とすることが適当である。
【0079】
上記溶媒の溶存酸素濃度の調整は、重合反応槽で行ってもよく、予め溶存酸素量を調整したものを用いてもよい。溶媒中の酸素を追い出す方法としては、例えば、下記の(1)〜(5)の方法が挙げられる。
(1)溶媒を入れた密閉容器内に窒素等の不活性ガスを加圧充填後、密閉容器内の圧力を下げることで溶媒中の酸素の分圧を低くする。その際、窒素気流下で、密閉容器内の圧力を下げてもよい。
(2)溶媒を入れた容器内の気相部分を窒素等の不活性ガスで置換したまま液相部分を長時間激しく攪拌する。
(3)容器内に入れた溶媒に窒素等の不活性ガスを長時間バブリングする。
(4)溶媒を一旦沸騰させた後、窒素等の不活性ガス雰囲気下で冷却する。
(5)配管の途中に静止型混合機(スタティックミキサー)を設置し、溶媒を重合反応槽に移送する配管内で窒素等の不活性ガスを混合する。
【0080】
上記重合反応により得られた重合体は、水溶液状態で弱酸性以上(好ましくはpH4以上、更に好ましくはpH5以上、特に好ましくはpH6以上)のpH範囲に調整しておくことで取り扱いやすいものとすることができる。
その一方で、重合反応をpH7以上で行うと、重合率が低下すると同時に、共重合性が充分とはならず、例えば、セメント混和剤用途に用いた場合に分散性能を充分に発揮できないおそれがある。そのため、重合反応においては、酸性から中性(好ましくはpH6未満、より好ましくはpH5.5未満、更に好ましくはpH5未満)のpH領域で重合反応を行うことが好適である。このように重合系が酸性から中性となる好ましい重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物等の水溶性アゾ開始剤、過酸化水素、過酸化水素と有機系還元剤との組み合わせ等を用いることが好ましい。
【0081】
上記の重合反応により得られる反応生成物には、ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体の他、副生成物としての種々の重合体や未反応原料、原料に含まれる不純物を含むことがあるため、必要に応じて、個々の重合体を単離する工程に付してもよいが、通常、作業効率や製造コスト等の観点から、個々の重合体を単離することなく、各種用途に使用してもよい。
【0082】
<硫黄原子を含む結合部位以外の結合部位を有する共重合体の製造方法>
ここまで、メルカプトカルボン酸に由来する硫黄原子を含む結合部位を有する共重合体を製造する場合の例について説明したが、結合部位としてその他の構造を有する共重合体を製造する方法について以下に説明する。
【0083】
アゾ開始剤由来の結合部位を有する共重合体を製造する場合、出発物質として、アゾ開始剤の末端がポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とエステル結合により予め結合した構造を有するものを使用することができる。
例えば、和光純薬工業株式会社から市販されているVPE−0401(数平均分子量約2.5〜4万、ポリエチレンオキシド部分の分子量約4,000、オキシエチレン基の平均付加モル数n=90)、VPE−0601(数平均分子量約2.5〜4万、ポリエチレンオキシド部分の分子量約6,000、オキシエチレン基の平均付加モル数n=135)などが挙げられる。
アゾ開始剤の末端がポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とエステル結合により予め結合した構造を有するものは、例えば、アゾ基の両末端にカルボキシル基を有するアゾ開始剤(V−501など、和光純薬工業株式会社製)と、両末端にヒドロキシル基を有するポリアルキレングリコールとをエステル化することにより得ることもできる。エステル化の方法としては、加熱工程を行うとアゾ開始剤が分解するので、加熱工程を含まない製法が必要である。そのような製法としては、(1)アゾ開始剤に塩化チオニルを反応させて酸塩化物を合成した後、アルコキシポリアルキレングリコールを反応させてアゾ開始剤を得る方法;(2)アゾ開始剤とアルコキシポリアルキレングリコールとを、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)および必要に応じて4−ジメチルアミノピリジンを用いて、脱水縮合することによりアゾ開始剤を得る方法;などが挙げられる。
【0084】
上記アゾ開始剤を使用すれば、アゾ基が熱で分解して、ラジカルが発生し、そこから重合が開始する。それゆえ、オキシアルキレン基からなるポリアルキレンオキシド部分の両端に不飽和モノカルボン酸系単量体が次々に付加して、本発明に係るポリアルキレングリコール系ブロック共重合体が形成される。
【0085】
リン原子を含む残基由来の結合部位を有する共重合体を製造する場合、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)の末端酸素原子に炭素−炭素二重結合を有する有機残基が結合した構造を有する化合物Aに、次亜リン酸(塩)を付加させて、リン原子含有ポリアルキレングリコール系化合物を製造することが好ましい。
【0086】
なお、上記化合物Aは、公知の方法で合成することができる。
上記化合物Aは、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)に、不飽和基を有する化合物を付加させる方法によって合成してもよい。付加の形態としてはエステル化、エーテル化、アミド化など、公知の方法を用いることができる。付加させる不飽和化合物は、アルキレンオキシドに付加できるものであれば良い。
【0087】
上記化合物Aに次亜リン酸(塩)を付加反応させる工程においては、化合物Aが含有する不飽和結合1モルに対して、次亜リン酸(塩)を0.01〜100モルの割合で添加して反応させることが好ましい。上記化合物Aの反応率を高める観点からは、1モルの化合物Aに対して次亜リン酸(塩)を好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.2モル以上、さらにより好ましくは0.5モル以上である。未反応の次亜リン酸(塩)を低減する観点からは、1モルの化合物Aに対して次亜リン酸(塩)を好ましくは10モル以下、より好ましくは5モル以下、さらにより好ましくは2モル以下である。
【0088】
上記化合物Aに次亜リン酸(塩)を付加反応させる工程は、0〜200℃の温度で行うことが好ましい。より好ましくは20〜150℃、さらに好ましくは40〜120℃、さらにより好ましくは50〜100℃の温度で行うことである。
【0089】
上記化合物Aに次亜リン酸(塩)を付加反応させる工程の後、得られたリン原子含有ポリアルキレングリコール系化合物を精製することが好ましい。精製工程は、反応後の溶液を乾燥して溶媒を除去した後、精製溶媒に懸濁してろ過を行うこと、及び、抽出のいずれか又は両方により行うことができる。
精製溶媒は適宜選べばよいが、例えばTHF、アセトニトリル、クロロホルム、イソプロピルアルコール等が好ましい。
抽出溶媒は適宜選べばよいが、高極性溶媒として水、メタノール、アセトニトリル、ジオキサンなどを用いて行うことが好ましい。低極性溶媒としてジエチルエーテル、シクロヘキサン、クロロホルム、メチレンクロライドなどを用いて行うことが好ましい。
【0090】
上記化合物Aと次亜リン酸(塩)とを付加反応させる工程は、必要に応じてラジカル重合開始剤を使用し、溶媒に溶解した溶液状態で行うことができる。その際に使用される溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族又は脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物等が挙げられる。中でも、水を溶媒として用いることが好ましい。
【0091】
上記化合物Aと次亜リン酸(塩)とを付加反応させる工程を、溶媒に水を用いて行う場合には、水溶性のラジカル重合開始剤を用いることが、反応後に不溶成分を除去する必要がないので好適である。例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;t−ブチルヒドロペルオキシドなどの有機過酸化物;2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物、2,2’−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩等の環状アゾアミジン化合物、2−カルバモイルアゾイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物、2,4’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}等のアゾアミド化合物、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)と(アルコキシ)ポリエチレングリコールとのエステル等のマクロアゾ化合物等の水溶性アゾ系開始剤が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。中でも、過硫酸系開始剤が好適である。
【0092】
上記リン原子含有ポリアルキレングリコール系化合物は、連鎖移動剤としての機能を有するものであり、この化合物を連鎖移動剤として用いて不飽和モノカルボン酸系単量体をラジカル重合することで、本発明のポリアルキレングリコール系ブロック共重合体を簡便かつ効率的に、低コストで製造できる。
不飽和モノカルボン酸系単量体をラジカル重合させる工程は、PAGチオール化合物を連鎖移動剤として使用するブロック重合工程と同様にして行うことが出来るため、その詳細な説明は省略する。
【0093】
本発明のセメント混和剤用ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、上述したように極めて高度のセメント分散性能を発揮できる。このように、上記セメント混和剤用ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体を含むセメント混和剤もまた、本発明の1つである。
上記セメント混和剤は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物に加えて用いることができ、このような上記セメント混和剤を含んでなるセメント組成物もまた、本発明の1つである。
【0094】
上記セメント組成物としては、セメント、水、細骨材、粗骨材等を含むものが好適であり、セメントとしては、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩、及びそれぞれの低アルカリ形);各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント);白色ポルトランドセメント;アルミナセメント;超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント);グラウト用セメント;油井セメント;低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント);超高強度セメント;セメント系固化材;エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の1種以上を原料として製造されたセメント)等の他、これらに高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏を添加したもの等が挙げられる。
上記骨材としては、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材等が挙げられる。
【0095】
上記セメント組成物の1m
3あたりの単位水量、セメント使用量及び水/セメント比(質量比)としては、例えば、単位水量100〜185kg/m
3、使用セメント量200〜800kg/m
3、水/セメント比(質量比)=0.1〜0.7とすることが好適であり、より好ましくは、単位水量120〜175kg/m
3、使用セメント量250〜800kg/m
3、水/セメント比(質量比)=0.2〜0.65とすることである。このように、本発明のポリアルキレングリコール系ブロック共重合体を含むセメント混和剤は、貧配合から富配合に至るまでの幅広い範囲で使用可能であり、高減水率領域、すなわち、水/セメント比(質量比)=0.15〜0.5(好ましくは0.15〜0.4)といった水/セメント比の低い領域でも使用可能であり、更に、単位セメント量が多く水/セメント比が小さい高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m
3以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。
【0096】
本発明のセメント混和剤としては、高減水率領域においても流動性、保持性及び作業性をバランスよく高性能で発揮でき、優れた作業性を有することから、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品(プレキャストコンクリート)用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等にも有効に使用することが可能であり、更に、中流動コンクリート(スランプ値が22〜25cmの範囲のコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50〜70cmの範囲のコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効である。
【0097】
上記セメント混和剤をセメント組成物に使用する場合、その配合割合としては、本発明の必須成分であるポリアルキレングリコール系ブロック共重合体が、固形分換算で、セメント質量の全量100質量%に対して、0.01〜10質量%となるように設定することが好ましい。0.01質量%未満では性能的に充分とはならないおそれがあり、逆に10質量%を超えると、その効果は実質上頭打ちとなり経済性の面からも不利となるおそれがある。より好ましくは0.02〜8質量%であり、更に好ましくは0.05〜6質量%である。
【0098】
上記セメント混和剤としてはまた、他のセメント添加剤と組み合わせて用いることもできる。他のセメント添加剤としては、例えば、以下に示すようなセメント添加剤(材)等の1種又は2種以上を使用することができる。中でも、オキシアルキレン系消泡剤や、AE剤を併用することが特に好ましい。
なお、セメント添加剤の添加割合としては、上記ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体の固形分100質量部に対し、0.0001〜10質量部とすることが好適である。
【0099】
(1)水溶性高分子物質:ポリアクリル酸(ナトリウム)、ポリメタクリル酸(ナトリウム)、ポリマレイン酸(ナトリウム)、アクリル酸・マレイン酸共重合物のナトリウム塩等の不飽和カルボン酸重合物;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオキシエチレンあるいはポリオキシプロピレンの重合体又はそれらの共重合体;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の非イオン性セルロースエーテル類;酵母グルカンやキサンタンガム、β−1,3グルカン類(直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、一例を挙げれば、カードラン、パラミロン、パキマン、スクレログルカン、ラミナラン等)等の微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリアクリルアミド;ポリビニルアルコール;デンプン;デンプンリン酸エステル;アルギン酸ナトリウム;ゼラチン;分子内にアミノ基を有するアクリル酸の共重合体及びその四級化合物等。
【0100】
(2)高分子エマルジョン。
(3)遅延剤:グルコン酸、リンゴ酸又はクエン酸、及び、これらの、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン等の無機塩又は有機塩等のオキシカルボン酸並びにその塩;グルコース、フラクトース、ガラクトース、サッカロース;ソルビトール等の糖アルコール;珪弗化マグネシウム;リン酸並びにその塩又はホウ酸エステル類;アミノカルボン酸とその塩;アルカリ可溶タンパク質;フミン酸;タンニン酸;フェノール;グリセリン等の多価アルコール;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等のホスホン酸及びその誘導体等。
【0101】
(4)早強剤・促進剤:塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の可溶性カルシウム塩;アルカノールアミン;アルミナセメント;カルシウムアルミネートシリケート等。
(5)鉱油系消泡剤:燈油、流動パラフィン等。
(6)油脂系消泡剤:動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物等。
(7)脂肪酸系消泡剤:オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物等。
(8)脂肪酸エステル系消泡剤:グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックス等。
【0102】
(9)オキシアルキレン系消泡剤:(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン−2−エチルヘキシルエーテル、炭素数12〜14の高級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキルエーテル類;ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、3−メチル−1−ブチン−3−オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類;ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド等。
【0103】
(10)アルコール系消泡剤:オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類等。
(11)アミド系消泡剤:アクリレートポリアミン等。
(12)リン酸エステル系消泡剤:リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェート等。
(13)金属石鹸系消泡剤:アルミニウムステアレート、カルシウムオレエート等。
(14)シリコーン系消泡剤:ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油等。
(15)AE剤:樹脂石鹸、飽和又は不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、蛋白質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネート等。
【0104】
(16)その他界面活性剤:オクタデシルアルコールやステアリルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂肪族1価アルコール、アビエチルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂環式1価アルコール、ドデシルメルカプタン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する1価メルカプタン、ノニルフェノール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアルキルフェノール、ドデシルアミン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアミン、ラウリン酸やステアリン酸等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するカルボン酸に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを10モル以上付加させたポリアルキレンオキシド誘導体類;アルキル基又はアルコキシル基を置換基として有しても良い、スルホン基を有する2個のフェニル基がエーテル結合した、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類;各種アニオン性界面活性剤;アルキルアミンアセテート、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤等。
(17)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコン、パラフィン、アスファルト、ワックス等。
(18)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛等。
(19)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテル類;2−メチル−2,4−ペンタンジオール等のアルカンジオール類等。
(20)膨張材:エトリンガイト系、石炭系等。
【0105】
その他のセメント添加剤(材)として、例えば、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石膏等が挙げられる。
【0106】
<ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体>
本発明に係るポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)と、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を必須とするポリアルキレングリコール系ブロック共重合体であって、
上記ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、
上記高分子鎖(A)及び上記高分子鎖(B)が、高分子鎖(A)、高分子鎖(B)、高分子鎖(A)の順で結合部位(X)を介して結合した構造を有し、
上記高分子鎖(B)における上記ポリアルキレングリコール系構成単位のオキシアルキレン基の平均付加モル数が70以上であることを特徴とする。
【0107】
以下、本発明のポリアルキレングリコール系ブロック共重合体の技術的特徴のうち、上述した本発明に係るセメント混和剤用ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体の有する技術的特徴と異なる点について説明する。
【0108】
本発明に係るポリアルキレングリコール系ブロック共重合体では、その用途はセメント混和剤用に限定されるものではない。
本発明のポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、例えば、接着剤、シーリング剤、各種重合体への柔軟性付与成分、洗剤ビルダー等の種々の用途に好適に用いることができることに加え、セメントや石膏のような無機微粒子を含む組成物において、無機微粒子を分散させる分散剤としても好適に用いることができる。
このような本発明のポリアルキレングリコール系ブロック共重合体を含む分散剤もまた、本発明の1つである。
【0109】
本発明に係るポリアルキレングリコール系ブロック共重合体では、高分子鎖(B)における上記ポリアルキレングリコール系構成単位のオキシアルキレン基の平均付加モル数が70以上である。
オキシアルキレン基の平均付加モル数が70以上であると、上記共重合体にポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)に基づく性能をより充分に発揮させることが可能となる。より好ましくは80以上であり、さらに好ましくは100以上であり、さらに好ましくは120以上であり、さらに好ましくは150以上であり、さらに好ましくは200以上である。
また、オキシアルキレン基の平均付加モル数の上限値は特に限定されるものではないが、好ましくは1000であり、より好ましくは800であり、さらに好ましくは500であり、さらに好ましくは300であり、さらに好ましくは250である。
【0110】
本発明に係るポリアルキレングリコール系ブロック共重合体の製造方法は、本発明に係るセメント混和剤用ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体の製造方法と同様にすることができる。本発明に係るポリアルキレングリコール系ブロック共重合体を製造する場合は、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)として、アルキレンオキシドの平均繰り返し数が70以上であるものを用いる。