特許第5992800号(P5992800)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992800
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】床付き布わく
(51)【国際特許分類】
   E04G 5/08 20060101AFI20160901BHJP
【FI】
   E04G5/08 D
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-243150(P2012-243150)
(22)【出願日】2012年10月16日
(65)【公開番号】特開2014-80845(P2014-80845A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年10月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000167233
【氏名又は名称】光洋機械産業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上田 実
(72)【発明者】
【氏名】西川 勇輔
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−336756(JP,A)
【文献】 特開2009−035878(JP,A)
【文献】 実開平07−023144(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の本体部と、
この本体部の長手方向に沿う両側端縁から下方向に延出する側壁部と、
前記各側壁部の下端から水平方向の内側に向けて延出する底壁部と、
前記各底壁部の先端から上方向に延出する立ち上がり部とを一体的に形成した床材が少なくとも一つ備えられた床付き布わくであって、
前記床材の前記底壁部に水抜き用の孔が形成され、
前記水抜き用の孔は、
前記床材の長手方向の中央に想定される前記長手方向と直交する仮想中央線を外れた近傍位置に形成されていることを特徴とする、床付き布わく。
【請求項2】
前記水抜き用の孔は、前記両側の底壁部にそれぞれ形成され、
前記仮想中央線を境にして互いに反対側に形成されている、請求項1に記載の床付き布わく。
【請求項3】
前記水抜き用の孔は、前記両側の底壁部にそれぞれ形成され、
前記仮想中央線を基準にして同一側に形成されている、請求項1に記載の床付き布わく。
【請求項4】
前記床材の長手方向の両端部には、前記床材の端部を補強するためのはり材が設けられ、
前記床材の底壁部であって前記はり材の近傍に、他の水抜き用の孔がそれぞれ形成されている、請求項1ないし3のいずれかに記載の床付き布わく。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建築現場等で組み立てられる仮設足場においてそれに用いられる床付き布わくに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マンション等の建築物における新築、増改築又は改修工事(塗装、タイル貼り、防水補修又はひび補修等)が実施される建築現場においては、建築物の周囲に現場作業者が高所作業を行うための仮設足場が組み立てられる。仮設足場としては、例えば鳥居型の建枠や筋交い等で構成される枠組足場や、各部材の連結にくさびが用いられるくさび緊結式足場等が知られている。
【0003】
これらの仮設足場では、現場作業者が作業及び歩行するための仮設足場板として床付き布わく(例えば特許文献1参照)が用いられ、その一例を図6に示す。床付き布わくAは、仮設足場の一部としての腕木材(図略)間に掛け渡すように設けられ、長尺状の第1床材1及び第2床材2と、これらの床材1,2を並設するためにそれらの端部同士にそれぞれ取付けられた2つの第1はり材3及び第2はり材4と、各床材1,2の端部に取付けられ腕木材に掛止するための複数のつかみ部材5と、床材1,2の長手方向に沿う側端部同士を連結する複数の補鋼部材6とによって構成されている。
【0004】
床材1,2は、補強のために長手方向に沿う両側端部が内側に巻き込むように折り返されて形成されている。すなわち、床付き布わくAを底面側から見た図7に示すように、各床材1,2の側端部は、平面状の本体部11の端縁から下方向に延出された側壁部12と、側壁部12の下端から水平方向の内側に向けて延出された底壁部13と、さらに底壁部13の先端から上方向に延出された立ち上がり部14とを有する。なお、図7は、第2はり材4及びつかみ部材5を省略している。
【0005】
しかしながら、上記床付き布わくAが例えば屋外に置かれていると、雨等に晒されて上記底壁部13の内側表面に雨水が溜まることがある。そのため、仮設足場の組立時や解体時又は床付き布わくAの運搬時に、溜まった雨水が現場作業者にかかることがある。また、溜まった雨水をそのまま放置しておくと、錆が発生する。そのため、底壁部13や床材1,2、はり材3,4及び補鋼部材6の一部が部分的に腐食し、床付き布わくAの強度に影響を及ぼすことがある。
【0006】
特に、床付き布わくAでは、現場作業者がその表面を歩行したり荷物を置いたりすると、床付き布わくAに応力が加わり、経年的に長手方向の中央部が若干撓み、その状態が維持されるようになる。中央部が撓むと、雨水がより溜まりやすくなり、上記したように現場作業者に雨水がかかったり、強度に影響を及ぼすといった不具合がより顕著となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−152984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、中央部が経年変化で撓んだとしても底壁部における水を適切に除去することのできる床付き布わくを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によって提供される床付き布わくは、長尺状の本体部と、この本体部の長手方向に沿う両側端縁から下方向に延出する側壁部と、前記各側壁部の下端から水平方向の内側に向けて延出する底壁部と、前記各底壁部の先端から上方向に延出する立ち上がり部とを一体的に形成した床材が少なくとも一つ備えられた床付き布わくであって、前記床材の前記底壁部に水抜き用の孔が形成され、前記水抜き用の孔は、前記床材の長手方向の中央に想定される前記長手方向と直交する仮想中央線を外れた近傍位置に形成されていることを特徴としている。
【0010】
本発明の床付き布わくにおいて、前記水抜き用の孔は、前記両側の底壁部にそれぞれ形成され、前記仮想中央線を境にして互いに反対側に形成されているとよい。
【0011】
本発明の床付き布わくにおいて、前記水抜き用の孔は、前記両側の底壁部にそれぞれ形成され、前記仮想中央線を基準にして同一側に形成されているとよい。
【0012】
本発明の床付き布わくにおいて、前記床材の長手方向の両端部には、前記床材の端部を補強するためのはり材が設けられ、前記床材の底壁部であって前記はり材の近傍に、他の水抜き用の孔がそれぞれ形成されているとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、床材の底壁部に形成される水抜き用の孔は、床材の長手方向の中央に想定される仮想中央線を外れた近傍位置に形成されている。床材は、現場作業者が歩行したり荷物を置いたりすることにより、経年的に長手方向中央が下方に若干撓むようになるので、底壁部に溜まる水は、床材の長手方向中央に常時集まるようになり、床材の長手方向中央の近傍位置に形成された水抜き孔から確実に落下する。したがって、底壁部における水を適切に除去することができるので、錆や腐食を防止することができ、強度上の問題を生じさせることがない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る床付き布わくの底面図である。
図2図1に示す床付き布わくの部分側面図である。
図3図1に示す床付き布わくの部分底面図である。
図4】応力が加わったときの床付き布わくを説明するための図である。
図5】変形例の床材を示す部分底面図である。
図6】従来の床付き布わくを示す斜視図である。
図7】従来の床付き布わくを裏側から見た部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0016】
本発明に係る床付き布わくは、図6及び図7に示す床付き布わくAとその外観が同様のため、以下の説明では再び図6及び図7を参照し、同一機能の部材においては同符号を用いて説明する。ただし、本発明の床付き布わくAは、細部の構成において従来の床付き布わくと異なっている。
【0017】
図1は、本発明に係る床付き布わくAの底面図であり、図2は、床付き布わくAの部分側面図である。床付き布わくAは、建築工事現場等の仮設足場において現場作業者が作業を行ったり歩行したりするために用いられる部材である。床付き布わくAは、例えば仮設足場の一部材として平行配置された2つの腕木材(図略)間に掛け渡されて敷設される。
【0018】
床付き布わくAは、図1及び図6に示すように、長尺状の第1床材1及び第2床材2を有している。両床材1,2は、これらの上面同士がほぼ面一になるように配されている。床材1,2の表面には、下側に凹部となる溝条7(図1参照)やパンチング孔(図略)等が形成されている。溝条7は、床材1,2を補強するためのものである一方、パンチング孔は、現場作業者の歩行時の滑り止めとして機能する。
【0019】
各床材1,2は、例えば鋼板からなり、その補強のために長手方向に沿う側端部が一体的に内側に巻き込まれるように折り返されて形成されている。すなわち、第1及び第2床材1,2は、図7に示したように、平板状の本体部11と、本体部11の長手方向に沿う端縁から下方向に延出された側壁部12と、側壁部12の下端から水平方向の内側に向けて延出された底壁部13と、底壁部13の端縁から上方向に延出された立ち上がり部14とを備えている。
【0020】
床付き布わくAの短手方向に沿う両端部には、第1及び第2床材1,2を並設させるための第1はり材3及び第2はり材4がそれぞれ嵌合されて設けられている。各はり材3,4は、断面視で略コの字状に形成されており、長手方向の幅が、並設された第1及び第2床材1,2の短手方向同士の幅よりやや短くなるように形成されている。第1及び第2はり材3,4は、例えば第1及び第2床材1,2の端部において溶接されて取付けられている。第1及び第2はり材3,4は、側面視で開口側に極わずかに広がるようにテーパ状に形成されている。
【0021】
また、床付き布わくAの短手方向に沿う両端部の外側には、一対のつかみ部材5がそれぞれ設けられている。各つかみ部材5は、腕木材(図略)にそれぞれ掛止され、床付き布わくAを隣り合う腕木材間同士に配置させるためのものである。これらつかみ部材5は、図2に示すように、第1及び第2床材1,2の側部内側に例えばリベット8止めされて設けられている。
【0022】
また、各床材1,2のそれぞれには、長手方向と直交する方向に延び、底壁部13同士を連結する第1ないし第3補鋼部材6a,6b,6cが所定の間隔を隔てて設けられている(図1及び図6参照)。第1補鋼部材6aは、各床材1,2の長手方向の第1はり材3寄りに配され、第2補鋼部材6bは、上記長手方向のほぼ中央に配され、第3補鋼部材6cは、上記長手方向の第2はり材4寄りに配されている。各補鋼部材6のそれぞれは、両端がやや幅広に形成され、第1及び第2床材1,2の底壁部13において溶接等で取付けられている。なお、補鋼部材6は、図1及び図6に示した位置に取付けられていなくてもよく、あるいは床材1の長さによって全く取付けられていなくてもよい。
【0023】
本実施形態においては、第1及び第2床材1,2の底壁部13に複数の水抜き孔9が形成されている。水抜き孔9は直径約7mmの略真円状に形成され、特に、図1及び図3に示すように、第1及び第2床材1,2の長手方向の中央に設定される仮想中央線Cから外れた近傍位置に形成されている。
【0024】
より詳細には、複数の水抜き孔9は、第1ないし第4水抜き孔9a〜9dによって構成されている。第1水抜き孔9aは、第1床材1の外側の底壁部13において仮想中央線Cの近傍の第1はり材3寄りの位置に形成されている。第2水抜き孔9bは、第1床材1の内側の底壁部13において仮想中央線Cの近傍の第2はり材4寄りの位置に形成されている。すなわち、第1及び第2水抜き孔9a,9bは、第1床材1の底壁部13において仮想中央線Cを境にして互いに反対側に形成されている。
【0025】
また、第3水抜き孔9cは、第2床材2の内側の底壁部13において仮想中央線Cの近傍の第1はり材3寄りの位置に形成されている。第4水抜き孔9dは、第2床材2の外側の底壁部13において仮想中央線Cの近傍の第2はり材4寄りの位置に形成されている。すなわち、第3及び第4水抜き孔9c,9dは、第2床材2の底壁部13において仮想中央線Cを境にして互いに反対側に形成されている。
【0026】
本実施形態の床付き布わくAでは、上記に示すように、複数の水抜き孔9が仮想中央線Cを外れた近傍位置に形成されているため、底壁部13における水をより適切に除去することができる。
【0027】
すなわち、床付き布わくAでは、現場作業者が繰り返しその上を歩行したり荷物を置いたりするので、経年的な影響を受ける。具体的には、床付き布わくAは、長尺状の第1及び第2床材1,2の両端部に設けられたつかみ部材5が仮設足場の腕木材に掛止されて用いられるので、床付き布わくA上を現場作業者が繰り返し歩行したり荷物を置いたりすると、図4に示すように、第1及び第2床材1,2の中央部に繰返し応力Fが加わる。また、床付き布わくAを経年的に使用すると、中央部には自重が生じる。そのため、床付き布わくAの中央部が常時下方に若干撓んだ状態になる。
【0028】
そのため、底壁部13における水は、撓んだ床付き布わくAの中央に向かって常時集まるようになり、床付き布わくAの仮想中央線Cの近傍位置に形成された水抜き孔9から効果的に落下する。
【0029】
したがって、床付き布わくAでは、底壁部13に雨水等が溜まることを防止することができるので、仮設足場の組立時や解体時にこの床付き布わくAを使用したとき、あるいは床付き布わくAを運搬したときに、底壁部13における雨水等が現場作業者にかかることを確実に防止することができる。また、底壁部13の表面に雨水等が溜まることにより錆が生じ、床材2、はり材3又は補鋼部材6が部分的に腐食し、これらに強度上の問題が生じることを回避することができる。
【0030】
また、この床付き布わくAによれば、水抜き孔9は、仮想中央線Cの近傍位置に形成されており、仮想中央線C上には形成されていない。すなわち、床付き布わくA上を現場作業者が歩行すると、その長手方向においては仮想中央線C上に上記した応力Fが最も加わり、床材1,2の裏面には引張応力が生じることになる。しかしながら、本実施形態では、仮想中央線Cを外れた近傍位置に水抜き孔9が形成されることにより、上記引張応力をこれらの水抜き孔9に多少とも分散させることができる。そのため、床材1,2の強度が低下するといったことを可能な限り回避することができる。
【0031】
また、本実施形態では、水抜き孔9は、仮想中央線Cを境にして互いに反対側に形成されているので、引張応力の分散方向が反対方向になり、床材1,2の強度低下を防止することができる。
【0032】
なお、本実施形態では、図1に示すように、上記の水抜き孔9の他に、第1及び第2床材1,2の長手方向の両端部であって第1及び第2はり材3,4の近傍に、複数の他の水抜き孔10が補助的に形成されている。
【0033】
他の水抜き孔10が形成されていることにより、例えば床付き布わくAを用いて仮設足場を組み立てるときやそれを解体するとき、あるいは床付き布わくAを運搬するときに、床付き布わくAが傾けられた場合でも、いずれか側の他の水抜き孔10から底壁部13における水を自然に流れ落ちさせることができ、底壁部13の水を確実に除去することができる。
【0034】
図5は、水抜き孔の形成位置の変形例を示す図である。例えば第1床材1では、第2水抜き孔9bは、上記した形成位置とは異なり、仮想中央線Cの近傍の第1はり材3寄りの位置に形成されている。すなわち、第1及び第2水抜き孔9a,9bは、第1床材1の底壁部13において仮想中央線Cを基準にして同一側に形成されている。また、第2床材2では、第3水抜き孔9cは、上記した形成位置とは異なり、仮想中央線Cの近傍の第2はり材4寄りの位置に形成されている。すなわち、第3及び第4水抜き孔9c,9dは、第2床材2の底壁部13において仮想中央線Cを基準にして同一側に形成されている。その他の構成については、上記した実施形態と同様である。
【0035】
この変形例においても、第2及び第3水抜き孔9b,9cが床付き布わくAの仮想中央線Cの近傍位置に形成されているため、底壁部13における雨水等を適切に落下させることができる。
【0036】
なお、本発明の範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。例えば上記実施形態における床付き布わくAを構成する床材1,2、はり材3,4、つかみ部材5及び補鋼部材6等の各部材の数、形態、大きさ及び構造等は、上記実施形態に限るものではなく適宜設計変更可能である。例えば、床材の数は一つでもよいし、三つ以上でもよい。また、床材1,2を構成する本体部11、側壁部12、底壁部13及び立ち上がり部14も適宜設計変更可能である。
【0037】
また、水抜き孔9の数、形成位置等は、床付き布わくAの強度を損なわず適切に水を落下させることができるものであれば、上記した実施形態に限るものではない。例えば、水抜き孔9は、一つの床材のいずれか一方の底壁部13のみに形成されていてもよい。また、水抜き孔9の形状は、略真円状に限らず、略楕円形状あるいは他の形状であってもよく、孔による亀裂を生じさせることなく孔を介して水が流れ落ちる形状であるならば、その形状を問うものではない。
【符号の説明】
【0038】
1 第1床材
2 第2床材
3 第1はり材
4 第2はり材
5 つかみ部材
6 補鋼部材
6a 第1補鋼部材
6b 第2補鋼部材
6c 第3補鋼部材
9 水抜き孔
9a 第1水抜き孔
9b 第2水抜き孔
9c 第3水抜き孔
9d 第4水抜き孔
10 他の水抜き孔
11 本体部
12 側壁部
13 底壁部
14 立ち上がり部
A 床付き布わく
C 仮想中央線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7