(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992802
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】シート貼付装置及び貼付方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20160901BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/304 622P
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-244954(P2012-244954)
(22)【出願日】2012年11月7日
(65)【公開番号】特開2014-93493(P2014-93493A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101188
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 義雄
(72)【発明者】
【氏名】木村 浩二
(72)【発明者】
【氏名】毛受 利彰
【審査官】
梶尾 誠哉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−16147(JP,A)
【文献】
特開2011−210858(JP,A)
【文献】
特開2011−61137(JP,A)
【文献】
特開2012−59985(JP,A)
【文献】
特開2011−222843(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0000654(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0064696(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に環状の凸部が設けられるとともに、当該凸部の内側に薄肉部が形成された被着体に接着シートを貼付するシート貼付装置において、
前記凸部の内周面に連なる薄肉部の一方の面に対向させて接着シートを相対配置するシート支持手段と、
前記薄肉部の他方の面から当該薄肉部を接着シートに押圧する第1押圧手段とを備え、
前記第1押圧手段は、前記薄肉部を変形させて当該薄肉部と前記凸部とを分断することで、当該分断された薄肉部に前記接着シートを貼付することを特徴とするシート貼付装置。
【請求項2】
前記接着シートを押圧して前記薄肉部の一方の面の一部に接着シートを貼付する第2押圧手段を備えたことを特徴とする請求項1記載のシート貼付装置。
【請求項3】
前記凸部の内周に沿って前記薄肉部に分断促進部を形成する分断促進部形成手段を含み、当該分断促進部を起点として前記薄肉部と凸部とが分断されることを特徴とする請求項1又は2記載のシート貼付装置。
【請求項4】
外周に環状の凸部が設けられるとともに、当該凸部の内側に薄肉部が形成された被着体に接着シートを貼付するシート貼付方法において、
前記凸部の内周面に連なる薄肉部の一方の面に対向させて接着シートを相対配置する工程と、
前記薄肉部の他方の面から当該薄肉部を接着シートに押圧するとともに、薄肉部を変形させて当該薄肉部と前記凸部とを分断し、当該分断された薄肉部に前記接着シートを貼付する工程とを含むことを特徴とするシート貼付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシート貼付装置及び貼付方法に係り、更に詳しくは、必要部分と不要部分とを分断し、必要部分に接着シートを貼付することのできるシート貼付装置及び貼付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ(以下、単に、「ウエハ」と称する場合がある)等の被着体は、極薄に研削された状態で種々の処理が施されているため、その際に薄肉部が破損してしまわないように、外周に環状の凸部を設けて補強部としての機能をもたせている。
外周に環状の凸部が設けられたウエハは、例えば、特許文献1に開示された装置によって接着シートが貼付され、特許文献2に開示された凸部除去装置によって凸部が除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−38880号公報
【特許文献2】特開2011−159798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような構成では、薄肉部への接着シートの貼付と、薄肉部と凸部との分断とが別々の装置を用いて行われるため、設備が大型化するという不都合を招来する。
【0005】
[発明の目的]
本発明の目的は、設備が大型化することを防止することができるシート貼付装置及び貼付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、外周に環状の凸部が設けられるとともに、当該凸部の内側に薄肉部が形成された被着体に接着シートを貼付するシート貼付装置において、前記凸部の内周面に連なる薄肉部の一方の面に対向させて接着シートを相対配置するシート支持手段と、前記薄肉部の他方の面から当該薄肉部を接着シートに押圧する第1押圧手段とを備え、前記第1押圧手段は、前記薄肉部を変形させて当該薄肉部と前記凸部とを分断することで、当該分断された薄肉部に前記接着シートを貼付する、という構成を採っている。
【0007】
本発明において、前記接着シートを押圧して前記薄肉部の一方の面の一部に接着シートを貼付する第2押圧手段を備えた構成を採ることができる。
【0008】
また、前記凸部の内周に沿って前記薄肉部に分断促進部を形成する分断促進部形成手段を含み、当該分断促進部を起点として前記薄肉部と凸部とが分断される、という構成を採ることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、外周に環状の凸部が設けられるとともに、当該凸部の内側に薄肉部が形成された被着体に接着シートを貼付するシート貼付方法において、前記凸部の内周面に連なる薄肉部の一方の面に対向させて接着シートを相対配置する工程と、前記薄肉部の他方の面から当該薄肉部を接着シートに押圧するとともに、薄肉部を変形させて当該薄肉部と前記凸部とを分断し、当該分断された薄肉部に前記接着シートを貼付する工程とを含む、という手法を採っている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、薄肉部と凸部とを分断するとともに、薄肉部に接着シートを貼付する構成であるため、設備が大型化することを防止することができる。
また、第2押圧手段を設けた構成によれば、予め接着シートを薄肉部に貼付しておくことができ、凸部から分断された薄肉部が接着シートの予期せぬ位置に貼付されてしまうことを防止することができる。
更に、分断促進部形成手段を設けた構成によれば、薄肉部の分断位置を明らかにしておくことができ、薄肉部が予期せぬ位置で分断されてることを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
なお、本実施形態において基準となる図を挙げることなく、例えば、上、下、左、右、または、前、後といった方向を示した場合は、全て
図1を正規の方向(付した番号が適切な向きとなる方向)から観た場合を基準とし、上、下、左、右方向が紙面に平行な方向であり、前が紙面に直交する手前方向、後が紙面に直交する奥方向とする。
【0013】
シート貼付装置10は、外周に環状の凸部WF1が設けられるとともに、当該凸部WF1の内側に薄肉部WF2が形成された被着体としてのウエハWFに接着シートASを貼付する装置であって、ウエハWFを支持する支持手段11と、凸部WF1の内周面に連なる薄肉部WF2の一方の面(上面)に対向させて接着シートASを相対配置するシート支持手段12と、前記薄肉部WF2の他方の面(下面)から当該薄肉部WF2を接着シートASに押圧する第1押圧手段15と、接着シートASを押圧して凸部WF1の内面に連なる薄肉部WF2の一方の面(上面)の一部に接着シートASを貼付する第2押圧手段16と、凸部WF1の内周に沿って薄肉部WF2に分断促進部WF3(
図2参照)を形成する分断促進部形成手段17と、を備えて構成されている。
【0014】
前記支持手段11は、駆動機器としての回動モータDMと、回動モータDMの出力軸DM1に支持された駆動機器としての直動モータLM1と、直動モータLM1の出力軸LM1Aに支持されるとともに、複数の貫通孔20Aと、上面外周側にゴムやシリコーン樹脂等からなる粘性を有する摩擦係合部材21とを有するテーブル20とにより構成されている。
【0015】
前記シート支持手段12は、回動モータDMを支持する底壁22と、上面に接着シートASが貼付されたリングフレームRFを載置する載置面23Aを備えた周壁23とを有する下部ケース14Aにより構成されている。
【0016】
前記第1押圧手段15は、底壁22側から配管28を介して空気やガス等の気体を供給可能なタービンや加圧ポンプ等の加圧手段25により構成されている。
【0017】
前記第2押圧手段16は、駆動機器としての直動モータLM2の出力軸LM2Aに支持された上部ケース14Bと、上部ケース14Bから配管33を介して空気やガス等の気体を供給可能なタービンや加圧ポンプ等の加圧手段30と、配管33を介して空気やガス等の気体を吸引可能な減圧ポンプや真空エジェクタ等の減圧手段31と、加圧手段30と減圧手段31を配管33に対して切り替える切替弁34とにより構成されている。
【0018】
前記分断促進部形成手段17は、駆動機器としてのリニアモータLM3と、当該リニアモータLM3の出力軸LM3Aに支持され、レーザを照射するレーザ照射手段37とにより構成されている。
【0019】
次に、本実施形態におけるシート貼付方法について説明する。
【0020】
図1に示されるように、下部ケース14Aと上部ケース14Bとが離間した状態で、図示しない搬送手段によって、ウエハWFの凸部WF1の下部が摩擦係合部材21に接触するように当該ウエハWFがテーブル20に移載される。
次に、分断促進部形成手段17がリニアモータLM3を駆動し、
図2に示されるように、レーザ照射手段37を薄肉部WF2の外周縁上に位置させ、レーザを照射すると同時に、支持手段11が回動モータDMを駆動し、ウエハWFを平面内で回転させる。これにより、薄肉部WF2の組織が部分的に脆質化され、薄肉部WF2の外周縁に環状の分断促進部WF3が形成される。
【0021】
次いで、
図3に示されるように、図示しない搬送手段によって、リングフレームRFに支持された接着シートASが周壁23の載置面23Aに載置され、薄肉部WF2の一方の面に対向させて接着シートASを相対配置する。その後、第2押圧手段16がリニアモータLM2を駆動し、上部ケース14Bを下降させて当該上部ケース14Bと周壁23の載置面23AとでリングフレームRFを挟み込み、上部ケース14BとリングフレームRFと接着シートASとで閉塞された空間SPを形成する。
【0022】
次に、第2押圧手段16が切替弁34及び加圧手段30を駆動し、
図4に示されるように、上部ケース14Bと接着シートASとの間の圧力を所定の圧力になるまで上昇させ、接着シートASを押圧して接着シートASを薄肉部WF2の一部に貼付する。
【0023】
その後、第1押圧手段15が加圧手段25を駆動し、空間SP内の圧力を上昇させると、貫通孔20Aを介してテーブル20とウエハWFとの間の圧力も上昇する。そして、上部ケース14Bと接着シートASとの間の圧力と空間SP内の圧力とが釣り合った時点で、第2押圧手段16が切替弁34及び減圧手段31を駆動し、加圧手段25の加圧度合いに合わせて上部ケース14Bと接着シートASとの間の圧力を低下させる。これにより、
図5に示されるように、薄肉部WF2が変形し、分断促進部WF3にせん断力が付与され、分断促進部WF3を起点に薄肉部WF2と凸状部WF1とが分断された後、
図6に示されるように、薄肉部WF2全面に接着シートASが貼付される。
【0024】
次いで、第1及び第2押圧手段15、16が加圧手段25及び減圧手段31の駆動を停止し、第2押圧手段16がリニアモータLM2を駆動し、上部ケース14Bを上昇させた後、接着シートASを介してリングフレームRFに一体化された薄肉部WF2は図示しない搬送手段によって、別の工程に搬送され、凸状部WF1は図示しない除去手段により除去される。その後、上記同様の動作が繰り返される。
【0025】
従って、このような実施形態によれば、薄肉部WF2と凸状部WF1とを分断するとともに、薄肉部WF2に接着シートASを貼付する構成であるため、設備が大型化することを防止することができる。
【0026】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施形態に対し、形状、位置若しくは配置等に関し、必要に応じて当業者が様々な変更を加え、以下に示す種々の構成を採用することができる。
【0027】
例えば、第1押圧手段15及び第2押圧手段16に、接着シートASや薄肉部WF2に相対するゴムシートを設け、エア供給によってゴムシートを膨出させることで接着シートAS及び薄肉部WF2に押圧力を付与する構成としてもよい。
【0028】
更に、第1押圧手段15は、テーブル20の上面から出没可能で、薄肉部WF2の下面に当接可能な当接部材を設け、当該当接部材を上昇させ、薄肉部WF2を凸状部WF1から分断するとともに、薄肉部WF2の一方の面を接着シートASに押圧して貼付する構成としてもよい。
また、第2押圧手段16は、上部ケース14Bの下面から出没可能で、減圧ポンプや真空エジェクタ等の吸引手段によって接着シートASを吸引可能な吸着部材を設け、当該吸着部材を下降させて接着シートASを薄肉部WF2に押圧して貼付した後、吸着部材で接着シートASを吸着した状態で当該吸着部材を上昇させる構成してもよい。なお、第2押圧手段16は、設けなくてもよい。
【0029】
更に、分断促進部形成手段は、切断刃、エアカッタ、水力カッタ等の切断手段によって薄肉部WF2に切り込みや溝等を形成するように構成することもできる。なお、分断促進部形成手段は、設けなくてもよい。
【0030】
また、前記駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダ及びロータリシリンダ等のアクチュエタ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる(実施形態で例示したものと重複するものもある)。
【0031】
更に、本発明における接着シートASおよび被着体の材質、種別、形状等は、特に限定されることはない。例えば、接着シートASは、感圧接着性、感熱接着性等の接着形態に限定されることはなく、感熱接着性の接着シートASが採用された場合は、当該接着シートを加熱する適宜な加熱手段を設ければよい。また、このような接着シートは、例えば、接着剤層だけの単層のもの、基材シートと接着剤層との間に中間層を有するもの、基材シートの上面にカバー層を有する等3層以上のもの、更には、基材シートを接着剤層から剥離することのできる所謂両面接着シートのようなものであってもよく、両面接着シートは、単層又は複層の中間層を有するものや、中間層のない単層又は複層のものであってよい。また、被着体としては、例えば、食品、樹脂容器、シリコン半導体ウエハや化合物半導体ウエハ等の半導体ウエハ、回路基板、光ディスク等の情報記録基板、ガラス板、鋼板、陶器、木板または樹脂板等、任意の形態の部材や物品なども対象とすることができる。なお、接着シートASを機能的、用途的な読み方に換え、例えば、情報記載用ラベル、装飾用ラベル、保護シート、ダイシングテープ、ダイアタッチフィルム、ダイボンディングテープ、記録層形成樹脂シート等の任意の形状の任意のシート、フィルム、テープ等を前述のような任意の被着体に貼付するができる。
さらに、接着シートASをリングフレームRFに支持させることなく載置面23A上に載置する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0032】
10 シート貼付装置
12 シート支持手段
15 第1押圧手段
16 第2押圧手段
17 分断促進部形成手段
AS 接着シート
WF 半導体ウエハ(被着体)
WF1 凸部
WF2 薄肉部
WF3 分断促進部