特許第5992812号(P5992812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5992812-表皮一体発泡成形品の製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992812
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】表皮一体発泡成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 39/24 20060101AFI20160901BHJP
   B29C 39/10 20060101ALI20160901BHJP
   C08J 9/30 20060101ALI20160901BHJP
   B29K 105/04 20060101ALN20160901BHJP
   B29L 31/58 20060101ALN20160901BHJP
【FI】
   B29C39/24
   B29C39/10
   C08J9/30CFF
   B29K105:04
   B29L31:58
【請求項の数】5
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2012-264375(P2012-264375)
(22)【出願日】2012年12月3日
(65)【公開番号】特開2014-108574(P2014-108574A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】100141221
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 和明
(74)【代理人】
【識別番号】100091764
【弁理士】
【氏名又は名称】窪谷 剛至
(74)【代理人】
【識別番号】100103366
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 礼至
(72)【発明者】
【氏名】田畑 毅
【審査官】 田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−31410(JP,A)
【文献】 特開2003−334828(JP,A)
【文献】 特開2006−206793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 39/24
B29C 39/10
C08J 9/30
B29K 105/04
B29L 31/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールを主成分とする第1の原料に圧力を加えながら、強制的に攪拌することなく炭酸ガスを溶かして炭酸ガス混入液を生成する第1の工程と、
イソシアネートを主成分とする第2の原料と前記炭酸ガス混入液とを高圧発泡機内で衝突混合させてウレタン発泡させる第2の工程と、
前記第2の行程により生成されたウレタン発泡剤を、表皮一体発泡成形品の表皮内に加圧状態で注入する第3の工程と、を備え、前記第3の工程は、縫製により成形された表皮を成形金型内にセットし、前記表皮内に前記ウレタン発泡剤を注入することを特徴とする表皮一体発泡成形品の製造方法。
【請求項2】
前記表皮は、ヘッドレスト又はアームレストの表皮である請求項1記載の表皮一体発泡成形品の製造方法。
【請求項3】
前記表皮は、車載用工業製品として利用される表皮である請求項2記載の表皮一体発泡成形品の製造方法。
【請求項4】
炭酸ガスの溶け込み量を0.2〜2%に制御することを特徴とする請求項1記載の表皮一体発泡成形品の製造方法。
【請求項5】
前記第1の原料に3〜10Mpaの圧力を加えながら前記炭酸ガスと溶かすことを特徴とする請求項1記載の表皮一体発泡成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、ヘッドレストやアームレスト等の車載用工業製品として利用される表皮一体発泡成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用軟質ウレタンフォームの低密度成形品を得るために、発泡剤として水とフロンガスを併用した方法が知られている。しかしながら、発泡剤として水とフロンガスを組み合わせて使用する製法は、フロンガスがオゾン層を破壊するという環境問題がある。
そこで、フロンガスを利用しない技術として、特開平11−293027号公報があり、この公報に記載されたポリウレタンフォームの製造方法は、ヘッドレストやアームレスト等の表皮一体発泡成形品の製造に利用される。
この製造方法に適用される製造装置では、三つの貯留槽が利用され、第一貯留槽には、ポリウレタン樹脂の製造のための一方の原材料であるポリイソシアネートを主成分とする液状原料が貯留される。第二貯留槽には、ポリウレタン樹脂の製造のためのもう一方の原材料であるポリオールを主成分とする液状原料が貯留される。第三貯留槽には、主成分であるポリオールおよび有機金属系触媒、発泡剤その他の副材の含有率が上記第二原料と同等となるように調製された液状原料(但し、第3級アミン系触媒は添加しない。)を当該第三貯留槽に連通する供給管を介して供給する。ここで、第三貯留槽にはガスローディング装置が装備されており、第三貯留槽に貯留する原料に炭酸ガスをほぼ飽和状態に至る程度にまで混合することができる。
そして、第一貯留槽、第二貯留槽および第三貯留槽からそれぞれ所定の流量で各給液管を介してミキシングヘッドの混合室に各々別個に供給する。而して、当該混合室内に高圧で噴出されて瞬時に攪拌混合された混合原料をそのままミキシングヘッド先端部に設けられた放出口から外部(例えば成形型内)に放出する。その後、放出された混合原料中のポリオール成分とポリイソシアネート成分との重合反応(重付加反応)が泡化反応とともに開始されるため、当該混合原料から所望する形状のポリウレタンフォームが生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−293027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述したポリウレタンフォームの製造方法では、第三貯留槽に貯留する原料に炭酸ガスをほぼ飽和状態に至る程度にまで混合する際に、第三貯留槽内で攪拌されているので、そのためガスが放出されるので、第三貯留槽には、ガス抜き弁が必要になる。
【0005】
本発明は、ポリオールを主成分とする第1の原料に圧力を加えながら炭酸ガスを溶かして炭酸ガス混入液を生成する際に、ガスの発生を抑制するようにした表皮一体発泡成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリオールを主成分とする第1の原料に圧力を加えながら、強制的に攪拌することなく炭酸ガスを溶かして炭酸ガス混入液を生成する第1の工程と、
イソシアネートを主成分とする第2の原料と前記炭酸ガス混入液とを高圧発泡機内で衝突混合させてウレタン発泡させる第2の工程と、
前記第2の行程により生成されたウレタン発泡剤を、表皮一体発泡成形品の表皮内に加圧状態で注入する第3の工程と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この表皮一体発泡成形品の製造方法においては、ポリオールを主成分とする第1の原料に圧力を加えながら、強制的に攪拌することなく炭酸ガスを溶かして炭酸ガス混入液を生成する第1の工程と、
イソシアネートを主成分とする第2の原料と前記炭酸ガス混入液とを高圧発泡機内で衝突混合させてウレタン発泡させる第2の工程と、
前記第2の行程により生成されたウレタン発泡剤を、表皮一体発泡成形品の表皮内に加圧状態で注入する第3の工程と、を備え、前記第3の工程は、縫製により成形された表皮を成形金型内にセットし、前記表皮内に前記ウレタン発泡剤を注入する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ポリオールを主成分とする第1の原料に圧力を加えながら炭酸ガスを溶かして炭酸ガス混入液を生成する際に、ガスの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る表皮一体発泡成形品の製造方法に適用する製造装置の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る表皮一体発泡成形品の製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0011】
図1に示されるように、表皮一体発泡成形品(ヘッドレストやアームレスト等の車載用工業製品)の製造方法では、ポリオールを主成分とする第1の原料1と、イソシアネートを主成分とする第2の原料2とが利用される。第1の原料1は、貯留タンク3に格納され、第2の原料2は、貯留タンク4に格納される。
【0012】
貯留タンク3内の第1の原料1と、炭酸ガス5は、ミキサ6内に供給される。このミキサ6内では、第1の原料1に圧力を加えながら、強制的に攪拌することなく炭酸ガス5を溶かして炭酸ガス混入液7を生成する。
【0013】
このとき、第1の原料1に3〜10Mpaの圧力を加えながら炭酸ガス5と溶かす。この炭酸ガス混入液7は、貯留タンク8内に供給され、この貯留タンク8内では、加圧状態で炭酸ガス5の溶け込み量が0.2〜2%に制御され、貯留タンク8内には、炭酸ガス混入液7が貯留されている。
【0014】
貯留タンク8内の炭酸ガス混入液7と貯留タンク4内の第2の原料2とポンプ10,11によって高圧発泡機12内で衝突混合させてウレタン発泡剤13を生成させる。その後、ウレタン発泡剤13を注入ヘッド14から、成形金型内にセットされた表皮(縫製により成形されている)内に加圧状態で注入する。
【0015】
ウレタン発泡剤13は、注入時には、一気に大気に解放されるため気圧が低下することにより溶解していた炭酸ガス5が大気圧になると同時に気化(膨張)する。この膨張力でウレタン発泡剤13の発泡倍率を稼ぐことができ、その結果、表皮内で生成される軟質ポリウレタンフォームの低密度化を容易に図ることができる。なお、この表皮は、縫製により成形されている。
【0016】
ここで利用される炭酸ガスは、ナフサから石油などを生成する段階で大気へ放出する予定の炭酸ガスを回収してボンベに充填されており、わざわざ炭酸ガスを工業的に生成していない。
【0017】
炭酸ガスやフロンガスを使用しないで、水などの化学反応のみに頼る発泡では軟質ポリウレタンフォームが表皮内で生成できるまでのクリームタイムに数秒かかる。
【0018】
これに対して、この実施形態に係る炭酸ガス発泡では、クリームタイムを限りなくゼロに近づけることができ、その結果、ウレタン発泡剤13が表皮内で液状の状態の時間が短いため、表皮の縫合部分(針穴、はぎ合わせ)からウレタン発泡剤13が染み出し難い。なお、クリームタイムとは、A液(炭酸ガスが溶かし込まれた炭酸ガス混入液7)とB液(第2の原料2)との混合を始めてから反応混合液がクリーム状に白濁して立ち上がり始めるまでの時間を言う。
【符号の説明】
【0019】
1…第1の原料 2…第2の原料 3,4,8…貯留タンク 5…炭酸ガス 6…ミキサ 7…炭酸ガス混入液 9…炭酸ガス混入液 10,11…ポンプ 12…高圧発泡機 13…ウレタン発泡剤 14…注入ヘッド
図1