特許第5992816号(P5992816)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社IHIエアロスペースの特許一覧

<>
  • 特許5992816-保持解放機構 図000002
  • 特許5992816-保持解放機構 図000003
  • 特許5992816-保持解放機構 図000004
  • 特許5992816-保持解放機構 図000005
  • 特許5992816-保持解放機構 図000006
  • 特許5992816-保持解放機構 図000007
  • 特許5992816-保持解放機構 図000008
  • 特許5992816-保持解放機構 図000009
  • 特許5992816-保持解放機構 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992816
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】保持解放機構
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/64 20060101AFI20160901BHJP
【FI】
   B64G1/64 B
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-270018(P2012-270018)
(22)【出願日】2012年12月11日
(65)【公開番号】特開2014-113938(P2014-113938A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】星野 剛
【審査官】 諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02511991(EP,A1)
【文献】 特開平04−039200(JP,A)
【文献】 特開昭57−014200(JP,A)
【文献】 米国特許第03098132(US,A)
【文献】 特開2012−192863(JP,A)
【文献】 特表2006−500522(JP,A)
【文献】 特開2002−25698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/64
F42B 15/36
F41F 3/055
F16B 2/00 − 2/26
H01R 13/633
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線の解放経路に沿って一方向に移動する移動部材と、
移動部材を前記一方向へ付勢する付勢手段と、
位置が固定され、もしくは移動部材が付勢される付勢力と同じ強さで前記一方向の反対方向に付勢手段により付勢される固定部材と、
解放経路に交わらずに直交する第1回転軸と、
一端が移動部材に連結し他端が第1回転軸に連結する外リンクと、
外リンクと同じ長さであり一端が固定部材に連結し他端が第1回転軸に連結する内リンクと、
内リンクの両端と外リンクの両端とが同一の平面上にあるときに、各一端を中心とする内リンクと外リンクとの回転を制御するデバイスと、を備え、
デバイスは、移動部材と固定部材との結合を保持するときに内リンクの両端と外リンクの両端とを解放経路に直交しない同一の平面上に維持し、
前記結合を解放するときに内リンクの両端と外リンクの両端とを解放経路に直交する同一の平面上に回転させる、ことを特徴とする保持解放機構。
【請求項2】
外リンクの前記一端が連結され解放経路に平行な外枠側面と、移動部材に固定され解放経路に直交する外枠上面と、外枠上面に平行な外枠下面とを有する外枠と、
内リンクの前記一端が連結され外枠側面に平行な内枠側面と、外枠下面に平行な内枠下面とを有し、固定部材に直接的もしくは間接的に固定される内枠と、を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の保持解放機構。
【請求項3】
付勢手段は、内枠下面と外枠下面との間に配置され外枠下面を一方向へ付勢し内枠下面を一方向の反対方向へ付勢するバネである、ことを特徴とする請求項2に記載の保持解放機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強固に結合を保持し、火工品を使用せずに、その結合を解放する保持解放機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、人工衛星をロケットで打ち上げる場合、ロケットと人工衛星の間に設置されたコネクタの結合を保持したまま、ロケットを打ち上げる。そして、ロケットから人工衛星を分離する前に、予めコネクタの結合を外す。
【0003】
しかし、ロケットを打ち上げる際には、強い振動荷重がコネクタにかかる。そのため、コネクタの結合は強固にしておく必要がある。しかも、保持した結合を、必要なタイミングで確実に解放しなければならない。
このような結合の保持機構と解放機構とを兼ね備えたものを保持解放機構という。
【0004】
図1は、従来の保持解放機構の説明図である。(A)は、分離ナット2の動作前の説明図であり、(B)は、分離ナット2の動作後の説明図である。(C)は、ワイヤカッタ12の説明図であり、(D)は、(C)のA−A矢視図である。(E)は、トグルリンク機構22の動作前の説明図であり、(F)は、トグルリンク機構22の動作後の説明図である。
従来から、分離ナット2、ワイヤカッタ12、もしくはトグルリンク機構22が、保持解放機構として使用されている。これらの保持解放機構は、非特許文献1に開示されている。
【0005】
図1(A)と図1(B)に示すように、分離ナット2は、三分割になっているナット4をリング6で固縛しているものである。そして、分離ナット2は、火薬8の爆発圧力でそのリング6を引き抜くことにより、ナット4の固縛を解除し、ボルト10を解放する。
【0006】
図1(C)と図1(D)に示すように、ワイヤカッタ12は、細いワイヤ14で結合を保持する。そして、火薬8の爆発圧力でカッタブレード16を高速に運動させてワイヤ14を切断することにより、ワイヤカッタ12は結合を解放する。
【0007】
図1(E)と図1(F)に示すように、トグルリンク機構22は、高倍力機構として使用されるトグル機構24と小さなケーブル26の張力とを組み合わせたものである。そして、ワイヤカッタ12でケーブル26を切断してケーブル26の張力をなくすことにより、トグルリンク機構22はトグル機構24を作動させる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】社団法人日本機械学会著作兼発行者、機械工学便覧 応用システム編 γ11 宇宙機器・システム、初版1刷、2007年1月31日発行、第108〜109頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、ロケットを打ち上げる際には強い振動荷重がコネクタにかかる。そのため、コネクタは強固に結合しておく必要がある。
しかし、強い振動荷重がかかるとケーブル26が切断されたり延びたりするおそれがあることから、大きな力を保持するにはトグルリンク機構22が不向きであることが、従来から知られている(非特許文献1)。そのため、コネクタの保持解放にトグルリンク機構22を使用できなかった。
【0010】
また、分離ナット2は火工品であり、出力が高い。しかし、火工品は扱いに法律上の制約が多く、作業時に人払いをする必要があるため、分離ナット2をコネクタの保持解放機構として使用しにくかった。
そして、火工品は発火させると1度しか使用できないため、実物を使用して作動を確認できなかった。しかも、火工品は高価であるため製造費用が高くなってしまった。
【0011】
同様に、ワイヤカッタ12やトグルリンク機構22も火工品を使用するため、コネクタの保持解放機構としては使用しにくかった。
【0012】
また、コネクタの結合が強固にされているため、直接的に結合を解放するには十数トンから数十トンもの高い出力が必要である。
そのため、火工品の代わりに電磁弁等のデバイスを使用しようとすると、高出力に伴いデバイスが大型化し、大がかりな電源が必要になる。そのため、設備が大きくなりすぎるため、保持解放機構としてデバイスを使用できなかった。
【0013】
また、十数トンから数十トンもの力で圧縮しているばね等の弾性体のピンやキー溝を外すときには、少なくとも数トンもの摩擦力が生じる。
しかし、数トンもの高い出力を得られるような装置は、ロケットの先端に設置するには大きくなりすぎてしまう。
そのため、圧縮した弾性体を固定するのに、ピンやキー溝を使用できなかった。
【0014】
本発明は上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち本発明の目的は、低出力のデバイスの作動でも強固に結合を保持し、火工品を使用せず、低出力のデバイスの作動をきっかけとして確実に結合を解放できる保持解放機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、直線の解放経路に沿って一方向に移動する移動部材と、
移動部材を前記一方向へ付勢する付勢手段と、
位置が固定され、もしくは移動部材が付勢される付勢力と同じ強さで前記一方向の反対方向に付勢手段により付勢される固定部材と、
解放経路に交わらずに直交する第1回転軸と、
一端が移動部材に連結し他端が第1回転軸に連結する外リンクと、
外リンクと同じ長さであり一端が固定部材に連結し他端が第1回転軸に連結する内リンクと、
内リンクの両端と外リンクの両端とが同一の平面上にあるときに、各一端を中心とする内リンクと外リンクとの回転を制御するデバイスと、を備え、
デバイスは、移動部材と固定部材との結合を保持するときに内リンクの両端と外リンクの両端とを解放経路に直交しない同一の平面上に維持し、
前記結合を解放するときに内リンクの両端と外リンクの両端とを解放経路に直交する同一の平面上に回転する、ことを特徴とする保持解放機構が提供される。
【発明の効果】
【0016】
上述した本発明の保持解放機構によれば、デバイスが内リンクの両端と外リンクの両端とを解放経路に直交しない同一の平面上に維持するとき、すなわち内リンクと外リンクの一端を第1回転軸に対して同じ向きに揃え、内リンクと外リンクを平行にし、さらにデバイスがそれらを解放経路に直交させないように維持するとき、外リンクに生じる回転力と内リンクに生じる回転力とが吊り合い、移動部材と固定部材との結合を保持できる。
【0017】
詳細に説明すると、移動部材にかかる付勢力は、外リンクの一端を一方向に付勢する。外リンクの他端が第1回転軸と内リンクを介して固定部材に連結し、固定部材はその位置が固定されるか、もしくは、移動部材が付勢される付勢力と同じ強さで前記一方向の反対方向に付勢手段により付勢されるので、外リンクの他端には一方向の反対方向への反作用力がかかる。
それにより、外リンクの一端を一方向へ付勢し他端を反対方向へ付勢する回転力が外リンクに生じる。
【0018】
一方、内リンクの他端は第1回転軸を介して外リンクの他端により一方向へ付勢される。しかし内リンクの一端は固定部材に連結されているので、内リンクの一端に反対方向への反作用力がかかる。
それにより、内リンクの一端を反対方向へ付勢し他端を一方向へ付勢する回転力が内リンクに生じる。
【0019】
外リンクと内リンクは平行であるため解放経路に対する傾きが同じであり、長さも同じである。
また、外リンクの一端にかかる作用力と内リンクの他端にかかる作用力は、移動部材にかかる付勢力と同じ方向にかかり、同じ強さである。同様に、外リンクの他端にかかる反作用力と内リンクの一端にかかる反作用力は、移動部材にかかる付勢力と反対の方向にかかり、強さが同じである。
そのため、外リンクに生じる回転力と内リンクに生じる回転力は、回転する向きが逆であり、強さが同じである。
【0020】
ゆえに、外リンクに生じる回転力と内リンクに生じる回転力とが吊り合うため、平行な内リンクと外リンクをそれらの一端を中心に回転させる力は付勢手段の付勢力から生じない。つまり、外リンクと内リンクをそれらの一端を中心に回転させるのに必要な力は、付勢手段の付勢力の大小に影響を受けない。
そのため平行な内リンクと外リンクがそれらの一端を中心に回転するのを、付勢力の大小に関わらず小さな力で防ぐことができる。
したがって、本発明の保持解放機構はこの構成により、低出力のデバイスの作動でも内リンクの両端と外リンクの両端とを解放経路に直交しない同一の平面上に維持でき、強固に結合を保持できる。
【0021】
一方、デバイスが内リンクの両端と外リンクの両端とを解放経路に直交する同一の平面上に回転するとき、すなわち第1回転軸に対して同じ向きに一端を有する平行な内リンクと外リンクを解放経路に直交させたとき、移動部材と固定部材との結合を解放できる。
【0022】
詳細に説明すると、上述したように、外リンクの他端には反対方向への反作用力がかかり、内リンクの他端には一方向への作用力がかかっている。
平行な内リンクと外リンクが解放経路に直交すると、外リンクの他端にかかる反作用力と内リンクの他端にかかる作用力が吊り合い、それらの力が外リンクと内リンクの他端にかからなくなる。それにより、外リンクと内リンクに生じていた回転力は消失する。
【0023】
一方、外リンクの一端には一方向への作用力がかかり、内リンクの一端には反対方向への反作用力がかかっている。そのため、外リンクと内リンクの一端はこれらの力にそれぞれ牽引され、移動部材と固定部材との結合が解放する。
【0024】
上述したように、外リンクと内リンクをそれらの一端を中心に回転させるのに必要な力は、付勢手段の付勢力の大小に影響を受けないので、付勢手段の付勢力が大きくても、平行な内リンクと外リンクをそれらの一端を中心に小さな力で回転させることができる。
したがって、平行な内リンクと外リンクを解放経路に直交する位置までデバイスの小さな力で回転させるだけで、移動部材と固定部材との結合を容易に解放させることができる。
【0025】
このように、本発明の保持解放機構はコネクタの結合を直接牽引して解放し得る力より小さな力であっても、平行な内外リンクの回転を制御できる。そのため、移動部材と固定部材の結合を解放するトリガとして、低出力の小型のデバイスを使用できる。
【0026】
また、本発明の保持解放機構の構成は火工品を必要としない。そのため、実物を使用して作動確認を行うことができる。さらに、火工品を使用しないことから、法律上の制約がなく扱いやすい。その上、火工品が無いため製造費用が安価である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】従来の保持解放機構の説明図である。
図2】本発明の第1実施形態の保持解放機構の動作説明図である。
図3】本発明の第1実施形態の保持解放機構の結合を保持する原理の説明図である。
図4】本発明の第1実施形態の保持解放機構の結合を解放する原理の説明図である。
図5】本発明の第2実施形態の保持解放機構が結合を解放しているときの斜視図である。
図6】本発明の第2実施形態の保持解放機構が結合を保持しているときの斜視図である。
図7図5のG−G矢視図である。
図8】デバイスが内リンクの両端と外リンクの両端とを解放経路に直交する同一の平面上に維持するときの図6のH−H矢視図である。
図9図6のH−H矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0029】
[第1実施形態]
図2は、本発明の第1実施形態の保持解放機構28の動作説明図である。(A)、(C)、及び(E)は、本発明の第1実施形態の保持解放機構28を横から見た図であり、(B)、(D)、及び(F)はそれらを上から見た図である。(A)は結合を解放しているときの図であり、(B)は(A)のX−X矢視図である。(C)はデバイス62が内リンク34の両端34a,34bと外リンク32の両端32a,32bとを解放経路46に直交する同一の平面上に維持するときの図であり、(D)は(C)のY−Y矢視図である。また、(E)は結合を保持しているときの図であり、(F)は(E)のZ−Z矢視図である。
【0030】
本発明による保持解放機構28は、互いに結合可能な2つの結合部材40(移動部材42、固定部材44)と、移動部材42を解放経路46に沿って一方向へ付勢する付勢手段60と、解放経路46に交わらずに直交する第1回転軸50と、内リンク34と外リンク32(以下、内外リンク30)と、デバイス62とを備える。そして、本発明による保持解放機構28は、移動部材42と固定部材44との結合を保持し解放する。
【0031】
なお、本発明で、「結合」とは、結合部材40の物理的な結合だけでなく、電気的な接続も含む。また、以下に内リンク34の両端34a,34bと外リンク32の両端32a,32bとが同一平面上に維持される時の内外リンク30を「平行な内外リンク30p」とする。さらに、内リンク34の両端34a,34bと外リンク32の両端32a,32bが含まれる平面が解放経路46に直交する位置を解放始動位置Mとする。
【0032】
移動部材42は、互いに結合可能な結合部材40の一方であり、固定部材44と結合する。そして、本発明の移動部材42は、付勢手段60に付勢されて、直線の解放経路46に沿って一方向に移動する。
なお、解放経路46は解放時の移動部材42の直線状の軌跡である。解放経路46は、移動部材42が解放経路46に沿って直線状に移動できれば、移動部材42を直接牽引するレールが無くてもよい。
【0033】
固定部材44は、互いに結合可能な結合部材40の他方であり、移動部材42と結合する。
また固定部材44は、図2に示すように、その位置を固定されている。もしくは固定部材44は、移動部材42が付勢される付勢力Kと同じ強さで前記一方向の反対方向に付勢手段60により付勢されてもよい。
固定部材44の位置が固定されていない場合に移動部材42と固定部材44との結合を解放すると、付勢手段60により双方の結合部材40が互いに逆の方向に移動する。
【0034】
第1回転軸50は、解放経路46に交わらずに直交する回転軸である。内リンク34の他端34bと外リンク32の他端32bとが、揺動自在に第1回転軸50に連結する。
【0035】
外リンク32は、一端32aが移動部材42に連結し、他端32bが第1回転軸50に連結する。
なお、外リンク32と移動部材42の連結は、解放経路46に交わらずに直交し外リンク32に直交する回転軸を介した軸着であることが好ましい。もしくは、外リンク32に直交するその回転軸が、外リンク32または移動部材42に固定され、他方がその回転軸に揺動自在に軸着してもよい。しかし、これに限らず、外リンク32が移動部材42に対して揺動自在であれば、いかなる連結方法でもよい。
【0036】
内リンク34は、外リンク32と同じ長さのリンクである。また、内リンク34は、一端34aが直接的もしくは間接的に固定部材44に連結し、他端34bが第1回転軸50に連結する。
第1実施形態の内リンク34は、固定部材44に直接連結される。
なお、内リンク34と固定部材44の連結は、解放経路46に交わらずに直交し内リンク34に直交する回転軸を介した軸着であることが好ましい。もしくは、内リンク34に直交するその回転軸が、内リンク34または固定部材44に固定され、他方がその回転軸に揺動自在に軸着してもよい。しかし、これに限らず、内リンク34が固定部材44に対して揺動自在であれば、いかなる連結方法でもよい。
【0037】
また、外リンク32と第1回転軸50の連結と、内リンク34と第1回転軸50の連結も揺動自在な軸着であることが好ましい。しかし、これに限らず、外リンク32に第1回転軸50が固定され、内リンク34の他端34bが第1回転軸50に揺動自在に軸着してもよい。
同様に、内リンク34に第1回転軸50が固定され、外リンク32の他端32bが第1回転軸50に揺動自在に軸着していてもよい。
【0038】
付勢手段60は、移動部材42を前記一方向へ付勢する。図2において、一方向は右に向かう方向である。
また、付勢手段60は、固定部材44の位置が固定されていないときには、移動部材42が付勢される付勢力Kと同じ強さで前記一方向の反対方向(図2の左方向)に固定部材44を付勢する。その場合、付勢手段60は、一端を移動部材42に固定し他端を固定部材44に固定するバネやアクチュエータが好ましい。
しかしそれに限らず、付勢手段60は、一方向へ移動部材42を付勢し、それと同じ強さで反対方向へ固定部材44を付勢できれば、どのようなものでもよい。
【0039】
デバイス62は、内リンク34の両端34a,34bと外リンク32の両端32a,32bとが同一の平面上にあるときに、各一端34a,32aを中心とする内リンク34と外リンク32との回転を制御する。
デバイス62は、解放始動位置Mまで平行な内外リンク30pを移動させるねじりバネ102と、ねじりバネ102の回転力に打ち勝つ出力がある回転阻止機構104であることが好ましい。
【0040】
ねじりバネ102は、一端102aを結合部材40に固定し、他端102bが第1回転軸50に引っ掛かり、平行な内外リンク30pを付勢することが好ましい。
【0041】
回転阻止機構104は、小型の電源を利用する低出力のアクチュエータであることが好ましい。
しかし、これに限らず、ねじりバネ102の回転力に打ち勝つ出力で平行な内外リンク30pの回転を阻止できるものであればその他のものでもよい。
【0042】
なお、デバイス62の構成はこれに限らず、モータやアクチュエータであってもよい。すなわち、デバイス62は解放始動位置Mまで平行な内外リンク30pを移動させる機構であれば、その他のものでもよい。
【0043】
次に、本実施形態を使用し、本発明の保持機構の原理について説明する。
図3は、本発明の第1実施形態の保持解放機構の結合を保持する原理の説明図である。(A)と(B)は図2(F)のB−B矢視図であり、(C)と(D)は図2(F)のC−C矢視図である。また、(A)と(C)は、リンクにかかる作用力と反作用力の説明図であり、(B)と(D)はリンクにかかる回転力の説明図である。なお、説明を分かりやすくするため、図3ではデバイス62を省略する。
【0044】
図2(A)と図2(B)のように結合が解放している移動部材42と固定部材44との結合を保持するときには、まず、図2(C)と図2(D)のように内リンク34の一端34aと外リンク32の一端32aとを揃える。それにより、内リンク34の他端34bと外リンク32の他端32bが第1回転軸50に連結していることから、内リンク34の両端34a,34bと外リンク32の両端32a,32bとが解放経路46に直交する同一の平面上に配置される。そのため、移動部材42と固定部材44との距離が最も短くなり、それらが結合する。
【0045】
その後、図2(E)と図2(F)に示すように、内リンク34の一端34aと外リンク32の一端32aを中心として内外リンク30を回転させる。次いで、ねじりバネ102の他端102bを第1回転軸50に引っ掛け、平行な内外リンク30pを解放始動位置Mまで回転させるように付勢する。同時に、平行な内外リンク30pが解放始動位置Mまで回転しないように回転阻止機構104を駆動し、第1回転軸50を押さえ、回転阻止機構104で平行な内外リンク30pの回転を阻止する。
それにより、デバイス62が内リンク34の両端34a,34bと外リンク32の両端32a,32bとを解放経路46に直交しない平面上に維持し、移動部材42と固定部材44との結合を保持する。
【0046】
こうすることで、図3(A)に示すように、移動部材42を一方向に付勢する付勢力Kは、外リンク32の一端32aを一方向に付勢する。つまり、外リンク32の一端32aには一方向への作用力Rがかかる。外リンク32の他端32bが第1回転軸50と内リンク34を介して固定部材44に連結し、固定部材44はその位置が固定されるか、もしくは、移動部材42が付勢される付勢力Kと同じ強さで前記一方向の反対方向に付勢手段60により付勢されるので、外リンク32の他端32bには一方向の反対方向への反作用力Sがかかる。
それにより、図3(B)に示すように、外リンク32の一端32aを一方向へ付勢し他端32bを反対方向へ付勢する回転力Pが外リンク32に生じる。
【0047】
一方、内リンク34の他端34bは第1回転軸50を介して外リンク32の他端32bにより一方向へ付勢される。つまり、図3(C)に示すように一方向への作用力Tが他端34bにかかる。しかし内リンク34の一端34aは固定部材44に連結されているので、内リンク34の一端34aに反対方向への反作用力Uがかかる。
それにより、図3(D)に示すように内リンク34の一端34aを反対方向へ付勢し他端34bを一方向へ付勢する回転力Qが内リンク34に生じる。
【0048】
外リンク32と内リンク34は平行であるため解放経路46に対する傾きが同じであり、長さも同じである。
また、外リンク32の一端32aにかかる作用力Rと内リンク34の他端34bにかかる作用力Sは、移動部材42にかかる付勢力Kと同じ方向にかかり、同じ強さである。同様に、外リンク32の他端32bにかかる反作用力Sと内リンク34の一端34aにかかる反作用力Uは、移動部材42にかかる付勢力Kと反対の方向にかかり、強さは同じである。
そのため、外リンク32に生じる回転力Pと内リンク34に生じる回転力Qは、回転する向きが逆であり、強さが同じである。
【0049】
ゆえに、外リンク32に生じる回転力Pと内リンク34に生じる回転力Qとが吊り合うため、平行な外リンク32と内リンク34をそれらの一端32a,34aを中心に回転させる力は付勢手段60の付勢力Kから生じない。つまり、外リンク32と内リンク34をそれらの一端32a,34aを中心に回転させるのに必要な力は、付勢手段60の付勢力Kの大小に影響を受けない。
そのため平行な外リンク32と内リンク34がそれらの一端32a,34aを中心に回転するのを、付勢力Kの大小に関わらず小さな力で防ぐことができる。
【0050】
したがって、本発明の保持解放機構28は、移動部材42と固定部材44とをボルト等で直接結合しなくても、内リンク34の両端34a,34bと外リンク32の両端32a,32bとが解放経路46に直交しない平面上に配置するだけで、低出力のデバイス62の作動でも移動部材42と固定部材44との結合を強固に保持できる。
【0051】
次に、本発明の保持解放機構28の解放の原理を説明する。
図4は、本発明の第1実施形態の保持解放機構の結合を解放する原理の説明図である。
(A)は図2(D)のD−D矢視図であり、(B)は図2(D)のE−E矢視図である。また、(C)は図2(B)のF−F矢視図である。なお、説明を分かりやすくするため、図4ではデバイス62を省略する。
【0052】
本発明の保持解放機構28は、デバイス62が内リンク34の両端34a,34bと外リンク32の両端32a,32bとを解放経路46に直交する同一の平面上に回転するとき、すなわち第1回転軸50に対して同じ向きに一端32a,34aを有する平行な外リンク32と内リンク34をデバイス62が解放経路46に直交させたとき、移動部材42と固定部材44との結合を解放する。
【0053】
本発明の保持解放機構28を解放させるときには、図2(E)と図2(F)に示すように解放経路46に直交しない平面上に配置される内リンク34の両端34a,34bと外リンク32の両端32a,32b、すなわち平行な内外リンク30pを、内リンク34の一端34aと外リンク32の一端32aを中心として回転させ、図2(C)と図2(D)に示すように平行な内外リンク30pを解放経路46に直交させる。
【0054】
具体的には、第1回転軸50を押さえていた回転阻止機構104を駆動し、平行な内外リンク30pの回転阻止を解除する。すると、ねじりバネの付勢力Nが第1回転軸50にかかり、平行な内外リンク30pが解放始動位置Mまで回転する。
それにより、内リンク34の両端34a,34bと外リンク32の両端32a,32bが含まれる平面が解放経路46に直交する。
【0055】
詳細に説明すると、上述したように、外リンク32の他端32bには反対方向への反作用力Sがかかり、内リンク34の他端34bには一方向への作用力Tがかかっている(図3(A)と図3(C)参照)。
平行な外リンク32と内リンク34が解放経路46に直交すると、図4(A)と図4(B)に示すように外リンク32の他端32bにかかる反作用力Sと内リンク34の他端34bにかかる作用力Tが吊り合い、それらの力が外リンク32と内リンク34の他端34bにかからなくなる。それにより、外リンク32と内リンク34に生じていた回転力P,Qは消失する。
【0056】
一方、図4(C)に示すように、外リンク32の一端32aには一方向への作用力Rがかかり、内リンク34の一端34aには反対方向への反作用力Uがかかっている。そのため、外リンク32と内リンク34の一端32a,34aはこれらの力にそれぞれ牽引され、移動部材42と固定部材44との結合が解放する。
【0057】
上述したように、外リンク32と内リンク34をそれらの一端32a,34aを中心に回転させるのに必要な力は、付勢手段60の付勢力Kの大小に影響を受けないので、付勢手段60の付勢力Kが大きくても、平行な外リンク32と内リンク34をそれらの一端32a,34aを中心に小さな力で回転させることができる。
したがって、平行な外リンク32と内リンク34を解放経路46に直交する位置まで小さな力で回転させるだけで、容易に移動部材42と固定部材44との結合を解放させることができる。
【0058】
このように、本発明の保持解放機構28はコネクタの結合を直接牽引して解放し得る力より小さな力であっても、平行な内外リンク30pの回転を制御できる。そのため、移動部材42と固定部材44の結合を解放するトリガとして、低出力の小型のデバイス62を使用できる。
【0059】
また、本発明の保持解放機構28の構成はこの構成により、火工品を必要とせずに移動部材42と固定部材44の結合を解放できる。そのため、実物を使用して作動確認を行うことができる。さらに、火工品を使用しないことから、法律上の制約がなく扱いやすい。その上、火工品が無いため製造費用が安価である。
【0060】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の保持解放機構28を説明する。
図5は、本発明の第2実施形態の保持解放機構28が結合を解放しているときの斜視図である。
図6は、本発明の第2実施形態の保持解放機構28が結合を保持しているときの斜視図である。
図7は、図5のG−G矢視図である。
図8は、デバイス62が内リンク34の両端34a,34bと外リンク32の両端32a,32bとを解放経路46に直交する同一の平面上に維持するときの図6のH−H矢視図である。
図9は、図6のH−H矢視図である。
【0061】
第2実施形態の結合部材40は宇宙空間に打ち上げるロケット70と人工衛星72の間に設置された電気のコネクタである。そして、第2実施形態の移動部材42と固定部材44は、コネクタのジャックとプラグである。人工衛星72とロケット70は、ロケット70のフライト中には結合されている。宇宙空間にロケット70が到達した後に人工衛星72とロケット70との結合が分離されるが、その分離より前にコネクタの結合は解放される必要がある。
第2実施形態の保持解放機構28は、このコネクタのジャックとプラグの結合を保持し、またその結合を解放するものである。
【0062】
第2実施形態のコネクタは、保持解放機構28にジャックが固定されており、人工衛星72から張り出したブラケット72aにプラグが固定されている。
すなわち、移動部材42がジャックであり、固定部材44がプラグである。
【0063】
図7に示すように固定部材44は、人工衛星72から張り出したブラケット72aにボルト72bで固定されている。固定部材44には、ボルト72bで固定するためのフランジ44bが付いていることが好ましい。
固定部材44は、移動部材側に突き出た凸部44aを有する。固定部材44の凸部44aは、固定部材側の面に設けられた移動部材42の凹溝42aに嵌合する。
凸部44aを凹溝42aに嵌合させた状態でロケット70がフライトする間、保持解放機構28は、コネクタにかかる強い振動荷重に耐えてその結合を保持しなければならない。
【0064】
凸部44aが凹溝42aに嵌合し結合するというコネクタの構造から分かるように、固定部材側と反対の側へ移動部材42を牽引することにより、コネクタの結合が解放される。
そのため、第2実施形態の解放経路46は、凸部44aの外側面44cと凹溝42aの内側面42cに平行な直線である。
なお、以下、第2実施形態で、移動部材42を固定部材側と反対の側へ牽引する方向を、一方向とする。図6〜7に表す一方向は、下向きの方向である。
【0065】
第2実施形態の保持解放機構28は、外枠80と内枠90を備える。
【0066】
図5図7に示すように外枠80は、外リンク32の前記一端32aが連結され解放経路46に平行な外枠側面82と、移動部材42に固定され解放経路46に直交する外枠上面84と、外枠上面84に平行な外枠下面86とを有する。
外枠側面82は、互いに平行で向かい合った左右2枚の側面であることが好ましい。
そして、外枠80は、2枚の外枠側面82、外枠上面84、及び外枠下面86で囲まれ、矩形に開口した中空を有する枠であることが好ましい。
【0067】
外枠上面84の外側には、凹溝42aを上側(すなわち、固定部材側)に開口した移動部材42が固定される。
また、外枠上面84の内側には、心棒100の上端100aが取り付けられている。心棒100は、解放経路46と平行であり、外枠80の中空を縦断する。そして、心棒100の下端100bは外枠下面86に固定される。
【0068】
第2実施形態の外リンク32は、第1実施形態と同様に、一端32aが移動部材42の外枠側面82に揺動自在に連結し、他端32bが第1回転軸50に連結する。
なお、外リンク32は、左右両方の外枠側面82に連結されていることが好ましい。
【0069】
また、第2実施形態の外リンク32と外枠80の連結も、解放経路46に交わらずに直交し外リンク32に直交する回転軸を介した軸着であることが好ましい。もしくは、外リンク32に直交するその回転軸が、外リンク32または外枠80に固定され、他方がその回転軸に揺動自在に軸着してもよい。しかし、これに限らず、外リンク32が外枠80に対して揺動自在であれば、いかなる連結方法でもよい。
【0070】
内枠90は、内リンク34の前記一端34aが連結され外枠側面82に平行な内枠側面92と、外枠下面86に平行な内枠下面94とを有し、固定部材44に直接的もしくは間接的に固定される。
第2実施形態の内枠90は、内枠側面92に一体形成された支持部材96を有する。支持部材96は、外枠80の開口から、ロケット70の壁面側に突き出ており、ロケット70に固定される。
なお、コネクタの解放時には、ロケット70と人工衛星72が結合されていることから、内枠90は、支持部材96、ロケット70、人工衛星72、及びブラケット72aを介し、固定部材44に間接的に固定される。
【0071】
また、第2実施形態の内枠下面94には、心棒100が貫通する孔94aが開いている。この構造により、心棒100は常に内枠下面94に開いた孔94aに沿って移動する。
【0072】
なお、外枠下面86に心棒100が貫通する孔が空き、外枠下面86を貫通してロケット70に固定されていれば、内枠90の内枠下面94に心棒100が固定されていてもよい。
【0073】
内リンク34は、外リンク32と同じ長さのリンクである。内リンク34の前記一端34aは内枠側面92に連結され、他端34bは第1回転軸50に連結する。
なお、第2実施形態の内リンク34と内枠90の連結も、解放経路46に交わらずに直交し内リンク34に直交する回転軸を介した軸着であることが好ましい。もしくは、内リンク34に直交するその回転軸が、内リンク34または内枠90に固定され、他方がその回転軸に揺動自在に軸着してもよい。しかし、これに限らず、内リンク34が内枠90に対して揺動自在であれば、いかなる連結方法でもよい。
【0074】
第2実施形態の保持解放機構28では、内枠側面92から心棒100までの距離と外枠側面82から心棒100までの距離とがそれぞれ内枠下面94と外枠下面86によって固定される。それにより、心棒100から外枠側面82までの距離が常に一定に保たれる。そのため、移動部材42を直接牽引するレールが無くても、心棒100が常に内枠下面94に開いた孔94aに沿って移動することにより解放経路46に沿って移動部材42を移動させることができる。
【0075】
なお、内枠90は、互いに平行で向かい合う左右2枚の内枠側面92を備えることが好ましい。また、内リンク34も、左右両方の内枠側面92に設けられていることが好ましい。
【0076】
第2実施形態の第1回転軸50は、内リンク34の他端34bと外リンク32と他端32bとが揺動自在に連結する。
第2実施形態の第1回転軸50は、左右両方の内リンク34と外リンク32とに連結していることが好ましい。これにより、解放経路46に交わらずに直交する向きに第1回転軸50を常に維持することができる。
【0077】
なお、外リンク32と第1回転軸50の連結と、内リンク34と第1回転軸50の連結の方法は、第1実施形態と同様である。
【0078】
第2実施形態の付勢手段60は、内枠下面94と外枠下面86との間に配置されたバネである。
バネは、外枠下面86を一方向へ付勢し内枠下面94を一方向の反対方向へ付勢する。
【0079】
本実施形態の内枠90は、支持部材96がロケット70に固定されているので、外枠下面86にかかるバネの付勢力Kにより外枠80のみが一方向へ移動する。
しかし、これに限らず、外枠80と内枠90の双方の位置が固定されていなくてもよい。その場合、付勢手段60に付勢されて、外枠80は一方向へ移動し、内枠90は一方向の反対方向へ移動する。
なお、バネは、らせん状に心棒100に巻き付いていることが好ましいが、その他の構成でもよい。
【0080】
また、第2実施形態のデバイス62は、ねじりバネ102と回転阻止機構104を備える。
【0081】
ねじりバネ102は、平行な内外リンク30pを解放始動位置Mまで回転させるように第1回転軸50を付勢する。ねじりバネ102は、一端102aを内枠下面94に固定し、他端102bを第1回転軸50に引っ掛けて平行な内外リンク30pを付勢するものが好ましい。
【0082】
また、回転阻止機構104は、ねじりバネ102の付勢力Nで平行な内外リンク30pが回転しないように第1回転軸50を押さえる。
上述したように、平行な外リンク32と内リンク34をそれらの一端32a,34aを中心に回転させる力は付勢手段60の付勢力Kから生じない。したがって、ねじりバネ102の付勢力Nを押さえるのに足る出力が回転阻止機構104にあれば、平行な内外リンク30pの回転を阻止できる。
回転阻止機構104は、低出力の電源で作動する小型のデバイス62やアクチュエータであることが好ましい。
【0083】
しかし、本実施形態のデバイス62は、この構成に限らず、平行な内外リンク30pを解放始動位置Mまで回転できる機構であれば、どのようなものでもよい。例えばデバイス62は、モータやアクチュエータでもよい。
【0084】
次に、第2実施形態の保持解放機構28の使用方法を説明する。
コネクタの結合を保持するときには、図5図7のように離れている内リンク34の一端34aと外リンク32の一端32aとを、図8に示すように第1回転軸50に対して同じ向きに平行に揃える。内リンク34と外リンク32の他端34b,32bが第1回転軸50に連結していることから、それにより、内リンク34の両端34a,34bと外リンク32の両端32a,32bとが解放経路46に直交する平面上に配置される。そのため、移動部材42と固定部材44との距離が最も短くなり、それらが結合する。
【0085】
それと同時に、外枠下面86が一方向の反対方向(図5図9の上方向)へ移動して、内枠下面94との距離が最も短くなる。それにより、内枠下面94と外枠下面86とでバネを挟み圧縮する(図8)。
【0086】
その後、図6図9に示すように内リンク34の一端34aと外リンク32の一端32aを中心として第1回転軸50を上または下に回転させる。それにより、内リンク34の両端34a,34bと外リンク32の両端32a,32bとを解放経路46に直交しない同一の平面上に配置できる。そして、平行な内外リンク30pを解放経路46に直交させないように、回転阻止機構104で第1回転軸50を押さえる。つまり、回転阻止機構104が平行な内外リンク30pの回転を阻止することで、内リンク34の両端34a,34bと外リンク32の両端32a,32bとを解放経路46に直交しない同一の平面上に維持する。
【0087】
第1実施形態と同様に、移動部材42を一方向に付勢する付勢力Kから外リンク32に生じる回転力Pと内リンク34に生じる回転力Qとが吊り合うため、回転阻止機構104が低出力であっても平行な内外リンク30pの回転を阻止できる。したがって、低出力のデバイス62でも外枠80の移動を防ぐことができ、移動部材42と固定部材44の結合を保持できる(図3参照)。
【0088】
コネクタの結合を解放するときには、図8に示すように回転阻止機構104を駆動し、回転阻止を解除する。そうすると、ねじりバネ102の付勢力Nが働き、平行な内外リンク30pが一端32a,34aを中心に解放始動位置Mまで回転する。
【0089】
平行な内外リンク30pが解放始動位置Mまで回転すると、第1実施形態と同様に、外枠下面86を一方向へ押すバネの付勢力Kから生じる外リンク32の他端32bにかかる反作用力Sと内リンク34の他端34bにかかる作用力Tが吊り合い、それらの力が外リンク32と内リンク34の他端32b,34bにかからなくなる。そして、外リンク32と内リンク34に生じていた回転力P,Qは消失する(図4参照)。
【0090】
一方、外枠下面86を一方向へ押すバネの付勢力Kから、外リンク32の一端32aには一方向への作用力Rがかかり、内リンク34の一端34aには反対方向への反作用力Uがかかっている(図4参照)。そのため、外リンク32と内リンク34の一端32a,34aはこれらの力にそれぞれ牽引され、図5図7に示すように外枠80が内枠下面94の孔94aに沿って一方向へ移動する。
それにより外枠80が、移動部材42を一方向へ牽引し、コネクタの結合を解放する。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0091】
上述した本発明の保持解放機構28によれば、デバイス62が、内リンク34の両端34a,34bと外リンク32の両端32a,32bとを解放経路46に直交しない同一の平面上に維持するとき、すなわち内リンク34と外リンク32の一端32aを第1回転軸50に対して同じ向きに揃え、内リンク34と外リンク32を平行にし、さらにそれらを解放経路46に直交させないように維持するとき、上述したように外リンク32に生じる回転力Pと内リンク34に生じる回転力Qとが吊り合う。そのため、平行な外リンク32と内リンク34をそれらの一端32a,34aを中心に回転させる力は付勢手段60の付勢力Kから生じない。つまり、外リンク32と内リンク34をそれらの一端32a,34aを中心に回転させるのに必要な力は、付勢手段60の付勢力Kの大小に影響を受けない。
【0092】
そのため平行な外リンク32と内リンク34がそれらの一端32a,34aを中心に回転するのを、付勢力Kの大小に関わらずデバイス62の小さな力で防ぐことができる。
したがって、本発明の保持解放機構28はこの構成により、低出力のデバイス62でも移動部材42と固定部材44との結合を強固に保持できる。
【0093】
一方、デバイス62が内リンク34の両端34a,34bと外リンク32の両端32a,32bとを解放経路46に直交する同一の平面上に回転するとき、すなわち第1回転軸50に対して同じ向きに一端32a,34aを有する平行な外リンク32と内リンク34を回転させ、解放経路46に直交させたとき、外リンク32と内リンク34の一端32a,34aが一方向への作用力Rと反対方向への反作用力Uにそれぞれ牽引され、移動部材42と固定部材44との結合が解放する。そして、外リンク32に生じる回転力Pと内リンク34に生じる回転力Qとが吊り合うので、移動部材42と固定部材44の結合を直接解放するのに必要な力よりも小さな力で、平行な内外リンク30pを回転できる。
【0094】
したがって、低出力のデバイス62の小さな力で平行な内外リンク30pを解放経路46に直交する位置まで回転させるだけで、容易に移動部材42と固定部材44との結合を解放させることができる。
【0095】
このように、本発明の保持解放機構28はコネクタの結合を直接牽引して解放し得る力より小さな力であっても、平行な内外リンク30pの回転を制御できる。そのため、移動部材42と固定部材44の結合を解放するトリガとして、低出力の小型のデバイス62を使用できる。
【0096】
また、本発明の保持解放機構28の構成は火工品を必要としない。そのため、実物を使用して作動確認を行うことができる。さらに、火工品を使用しないことから、法律上の制約がなく扱いやすい。その上、火工品が無いため製造費用が安価である。
【0097】
なお本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0098】
2 分離ナット、4 ナット、6 リング、8 火薬、10 ボルト、
12 ワイヤカッタ、14 ワイヤ、16 カッタブレード、
22 トグルリンク機構、24 トグル機構、26 ケーブル、
28 保持解放機構、
30 内外リンク、30p 平行な内外リンク、
32 外リンク、32a 外リンクの一端、32b 外リンクの他端、
34 内リンク、34a 内リンクの一端、34b 内リンクの他端、
40 結合部材、42 移動部材、42a 凹溝、42c 凹溝の内側面、
44 固定部材、44a 凸部、44b フランジ、44c 凸部の外側面、
46 解放経路、50 第1回転軸、
60 付勢手段、62 デバイス、70 ロケット、
72 人工衛星、72a ブラケット、72b ボルト、
80 外枠、82 外枠側面、84 外枠上面、86 外枠下面、
90 内枠、92 内枠側面、94 内枠下面、94a 孔、96 支持部材、
100 心棒、100a 心棒の上端、100b 心棒の下端、
102 ねじりバネ、102a ねじりバネの一端、102b ねじりバネの他端、
104 回転阻止機構、
K 移動部材にかかる付勢力、
M 解放始動位置、N ねじりバネの付勢力、
P 外リンクに生じる回転力、Q 内リンクに生じる回転力、
R 外リンクの一端にかかる一方向への作用力、
S 外リンクの他端にかかる反対方向への反作用力、
T 内リンクの他端にかかる一方向への作用力、
U 内リンクの一端にかかる反対方向への反作用力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9