(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記作業者の安全帯が第1と第2のランヤードを連結した2丁掛けとされ、両ランヤードの各フックが、ロープセットの各ロープ部の接続部と、2本の棒材の連結部のそれぞれに係脱自在にされる請求項1に記載の高所作業用の転落防止装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の転落防止装置には以下の問題点がある。
(1)最初に屋根面上にアンカーを設置するとき、
図14に示す如く、屋根面の外周の足場から手の届く範囲にしかアンカーを設置できない。足場が屋根面の外周の一辺に沿ってしか配置できない場合は、親綱を足場面に沿ってしか張れず、安全帯のD環に連結したランヤードを親綱に掛けた作業者の行動範囲(立位での安全帯D環可動範囲)が
図14に示す如く、足場面の近傍の限定されてしまう。
【0007】
(2)親綱を緩みなく張ってしまうと、
図15に示す如く、作業者の転落荷重よりも遥かに大きな張力が親綱及びアンカーにかかる。逆に、親綱を大きく緩ませて張ってしまうと、作業者の落下高さが増えて、転落荷重自体が大きくなってしまう。従って、親綱の緊張程度を管理して張る必要がある。
【0008】
特許文献2に記載の転落防止装置は、屋根面の傾斜が平らか又は非常に緩やかな場合にしか使えず、傾斜の急な屋根面には適用できない。
【0009】
本発明の課題は、高所作業用の転落防止装置及びその施工方法において、屋根面等の高所作業面の傾斜にかかわらず、該高所作業面に簡易に転落防止具を設置し、高所作業面上での作業者の行動範囲を広くとることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、高所作業用の転落防止装置において、2本の棒材とロープセットからなる転落防止具を有し、2本の棒材の各一端部が連結部で連結され、それらの棒材の各他端部に設けた各固定部が高所作業面に固定可能にされ、ロープセットを構成する中央ロープ部の一端部が2本の棒材の連結部に連結され、ロープセットを構成する両側ロープ部の各一端部のそれぞれが一方の棒材の固定部と他方の棒材の固定部のそれぞれに連結されるとともに、中央ロープ部と両側ロープ部の各他端部とが互いに接続され、ロープセットを構成する中央ロープ部と両側ロープ部の各他端部の接続部に、作業者の安全帯に連結されたランヤードのフックが係脱自在に取着されてなるようにしたものである。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において更に、前記作業者の安全帯が第1と第2のランヤードを連結した2丁掛けとされ、両ランヤードの各フックが、ロープセットの各ロープ部の接続部と、2本の棒材の連結部のそれぞれに係脱自在にされるようにしたものである。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において更に、前記2本の棒材の連結部がヒンジからなるようにしたものである。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれかに係る発明において更に、前記2本の棒材の連結部と各固定部のそれぞれに、リングキャッチ掛けが設けられてなるようにしたものである。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれかに係る発明において更に、前記ロープセットの各ロープ部の接続部に、リングキャッチが設けられてなるようにしたものである。
【0015】
請求項6に係る発明は、請求項1に記載の高所作業用の転落防止装置を用いた施工方法であって、作業者が、足場から高所作業面に転落防止具を設置した後、安全帯に連結されたランヤードのフックをロープセットの各ロープ部の接続部に掛け、高所作業面に上がる施工方法である。
【0016】
請求項7に係る発明は、請求項2に記載の高所作業用の転落防止装置を用いた施工方法であって、作業者が、足場から高所作業面に転落防止具を設置した後、安全帯に連結された第1ランヤードのフックをロープセットの各ロープ部の接続部に掛け、高所作業面に上がり、更に、高所作業面上で、安全帯に連結された第2ランヤードのフックを2本の棒材の連結部に掛けた後、第1ランヤードのフックをロープセットの各ロープ部の接続部から外し、高所作業を行なう施工方法である。
【0017】
請求項8に係る発明は、請求項7に係る発明において更に、前記高所作業面の足場から離れる方向に沿う奥行きが長いとき、作業者が、高所作業面上の奥側位置に新たな転落防止具を設置し、安全帯に連結された第1と第2のランヤードの各フックをロープセットの各ロープ部の接続部、又は2本の棒材の連結部に掛け、高所作業を行なうようにしたものである。
【発明の効果】
【0018】
(請求項1)
(a)2本の棒材の各固定部を高所作業面に固定することで、該高所作業面の傾斜にかかわらず、それらの2本の棒材とロープセットからなる転落防止具を該高所作業面に簡易に設置できる。
【0019】
(b)転落防止具を高所作業面に固定するとき、2本の棒材の固定部は足場から手の届く位置で確実に固定し、2本の棒材の連結部、及び該連結部に連結されたロープセットは足場から手の届かない位置にまで延在するように設置できる。足場が高所作業面の外周の一辺に沿ってしか配置できない場合であっても、高所作業面の足場から手が届かない深い位置にまで転落防止具を設置でき、高所作業面上での作業者の転落防止を図りながらの行動範囲が足場面近傍に限定されず、広くとることができる。
【0020】
(c)ロープセットにおける中央ロープ部と両側ロープ部の各1本との交差角度を鋭角に設定することにより、作業者の転落時の落下荷重が各ロープ部に及ぼす張力を小さくし、ひいては各ロープ部の断面を小さくする等によって軽量化を図ることができる。
【0021】
(d)上述(c)により、ロープセットの各ロープ部から2本の棒材の連結部や固定部に作用する力を小さくできる。従って、2本の棒材の断面を小さくしてその軽量化を図り、或いは2本の棒材の連結部(ヒンジ)や固定部の軽量化を図ることができる。
【0022】
(請求項2)
(e)作業者の安全帯が第1と第2のランヤードを連結した2丁掛けとされ、両ランヤードの各フックが、ロープセットの各ロープ部の接続部と、2本の棒材の連結部のそれぞれに係脱自在にされる。作業者は、高所作業面上で、第1と第2のランヤードのいずれか一方のフックが、2本の棒材の連結部とロープセットの各ロープ部の接続部の一方に既に掛けられている状態で、第1と第2のランヤードの他方のフックを、2本の棒材の連結部とロープセットの各ロープ部の接続部の他方に新たに掛け、その後、既に掛けられていた一方のフックを2本の棒材の連結部とロープセットの各ロープ部の接続部の一方から外す。これにより、作業者はそれらの第1と第2のランヤードのいずれかが必ず、2本の棒材の連結部とロープセットの各ロープ部の接続部のいずれかに掛けられた状態を保って高所作業できるものになり、転落防止の確実を図ることができる。
【0023】
(請求項3)
(f)2本の棒材の連結部がヒンジからなる。棒材をヒンジでつないでトラス構造とすることで、棒材には軸力のみが働き、曲げモーメントが作用しなくなる。これにより、棒材の断面が曲げ強さを必要としなくなり、例えばアルミのパイプを採用する等によって軽量化できる。
【0024】
(g)棒材をヒンジでつないでトラス構造とすることで、棒材のヒンジとは反対側の固定部の位置を自由に変位でき、当該固定部を高所作業面の任意の位置に固定できる。
【0025】
(請求項4)
(h)2本の棒材の連結部と各固定部のそれぞれに、リングキャッチ掛けが設けられる。ロープセットの各ロープ部をそれらのリングキャッチ掛けに簡易に連結できる。また、安全帯に連結したランヤードのフックを、2本の棒材の連結部に設けたリングキャッチ掛けに簡易に係脱できる。
【0026】
(請求項5)
(i)ロープセットの各ロープ部の接続部に、リングキャッチが設けられる。安全帯に連結したランヤードのフックを、ロープセットの各ロープ部の接続部に設けたリングキャッチに簡易に係脱できる。
【0027】
(請求項6)
(j)作業者が、足場から高所作業面に転落防止具を設置した後、安全帯に連結されたランヤードのフックをロープセットの各ロープ部の接続部に掛け、高所作業面に上がる。作業者は、転落防止を図られながら、高所作業面に上がることができる。
【0028】
(請求項7)
(k)作業者が、足場から高所作業面に転落防止具を設置した後、安全帯に連結された第1ランヤードのフックをロープセットの各ロープ部の接続部に掛け、高所作業面に上がり、更に、高所作業面上で、安全帯に連結された第2ランヤードのフックを2本の棒材の連結部に掛けた後、第1ランヤードのフックをロープセットの各ロープ部の接続部から外し、高所作業を行なう。作業者は、転落防止を図られながら、高所作業を行なうことができる。
【0029】
(請求項8)
(l)前記高所作業面の足場から離れる方向に沿う奥行きが長いとき、作業者が、高所作業面上の奥側位置に新たな転落防止具を設置し、安全帯に連結された第1と第2のランヤードの各フックをロープセットの各ロープ部の接続部、又は2本の棒材の連結部に掛け、高所作業を行なう。作業者は、高所作業面の奥行きの深い位置でも、転落防止を図られながら、高所作業を行なうことができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1〜
図4に示した高所作業用の転落防止装置100は、2本の棒材10、10とロープセット20からなる
図5に示す如くの転落防止具100Aを有する。尚、
図1はロープセット20の各ロープ部21、22を高所作業面としての屋根面1に接するように置いた状態を示している。
【0032】
2本の棒材10、10は、
図5に示す如く、それらの一端部が連結部11で連結され、それらの各他端部に設けた各固定部12、12が屋根面1に固定可能にされる。
【0033】
2本の棒材10、10の連結部11は、
図6に示す如く、各棒材10の一端部にボルト結合された連結ブラケット11A、11Aをボルト11Bによりピン結合したヒンジ11Cからなる。そして、連結部11は、一方の連結ブラケット11Aに設けたリングキャッチ掛け11Rを備える。連結部11のリングキャッチ掛け11Rには、ロープセット20の後述する中央ロープ部21の一端部のリングキャッチ21Rが係脱自在にされるとともに、作業者の安全帯30に後述する如くに連結された第1と第2のランヤード31、32の各フック31H、32Hが選択的に係脱自在にされる。
【0034】
2本の棒材10、10の各固定部12は、
図7に示す如く、各棒材10の他端部にボルト結合された固定ブラケット12Aからなり、該固定ブラケット12Aが屋根面1の所望の位置にボルト締結(ピン接合)されて固定される。そして、各固定部12は、固定ブラケット12Aに設けたリングキャッチ掛け12Rを備える。固定部12のリングキャッチ掛け12Rには、ロープセット20の後述する両側ロープ部22、22の各一端部のリングキャッチ22R、22Rが係脱自在にされる。
【0035】
ロープセット20は、
図8に示す如く、中央ロープ部21と両側ロープ部22、22とからなる。中央ロープ部21の一端部に設けたリングキャッチ21Rが2本の棒材10、10の連結部11に設けたリングキャッチ掛け11Rに連結される。また、両側ロープ部22、22の各一端部に設けたリングキャッチ22R、22Rのそれぞれが一方の棒材10の固定部12に設けたリングキャッチ掛け12Rと他方の棒材10の固定部12に設けたリングキャッチ掛け12Rのそれぞれに連結される。更に、中央ロープ部21と両側ロープ部22、22の各他端部とが互いに接続され、その接続部23にリングキャッチ23Rが横移動することのないように固く結ばれて設けられる。ロープセット20のリングキャッチ23Rには、作業者の安全帯30に連結された第1と第2のランヤード31、32の各フック31H、32Hが選択的に係脱自在にされる。
【0036】
作業者の安全帯30は、
図2、
図4に示す如く、D環31A、32Aを介して第1と第2のランヤード31、32を連結した2丁掛けとされる。両ランヤード31、32の各フック31H、32Hが、ロープセット20の各ロープ部21、22の接続部23に設けたリングキャッチ23Rと、2本の棒材10、10の連結部11に設けたリングキャッチ掛け11Rのそれぞれに選択的に係脱自在に取着される。第2ランヤード32は伸縮調節器を備える。
【0037】
尚、転落防止装置100において、
図1のR1は、立位の作業者に装備した安全帯30に連結した第1ランヤード31のD環31Aの屋根面1上における可動範囲である。
図3のR2は、立位の作業者に装備した安全帯30に連結した第2ランヤード32のD環32Aの屋根面1上における可動範囲である。
【0038】
しかるに、転落防止装置100を用いた施工方法にあっては、
図9、
図10に示す如く、作業者が、足場Aから屋根面1に転落防止具100Aを設置した後、安全帯30に連結された第1ランヤード31のフック31Hをロープセット20の各ロープ部21、22の接続部23に掛けて屋根面1に上がる。更に、屋根面1上で、安全帯30に連結された第2ランヤード32のフック32Hを2本の棒材10、10の連結部11に掛けた後、第1ランヤード31のフック31Hをロープセット20の各ロープ部21、22の接続部23から外し、高所作業を行なう。即ち、下記(1)〜(4)の如くである。
【0039】
(1)作業者は、屋根面1における足場Aに沿う一辺の両端部に設置済の2個のねじ止め穴2に、転落防止具100Aの2本の棒材10、10の各固定部12の固定ブラケット12Aをボルト締結(ピン接合)する(
図9(A)、(B))。
【0040】
(2)作業者は、安全帯30に連結された第1ランヤード31のフック31Hを、ロープセット20の各ロープ部21、22の接続部23のリングキャッチ23Rに掛ける。作業者は第1ランヤード31で転落防止を図りながら、屋根面1に上がる(
図9(C))。
【0041】
(3)作業者は、屋根面1上で、安全帯30に連結された第2ランヤード32のフック32Hを、2本の棒材10、10の連結部11のリングキャッチ掛け11Rに掛ける(
図10(A))。
【0042】
(4)作業者は、第1ランヤード31のフック31Hをロープセット20の各ロープ部21、22の接続部23のリングキャッチ23Rから外し、第2ランヤード32にて転落防止を図りながら、屋根面1上で高所作業する(
図10(B))。作業者が屋根面1から降りるときには、上記(1)〜(4)の逆手順で転落防止を図りながら、屋根面1から降りる。
【0043】
屋根面1の足場Aから離れる方向に沿う奥行きが長いときには、
図11〜
図13に示す如く、作業者が、屋根面1上の奥側位置に新たな転落防止具100Aを増設するように設置し、安全帯30に連結された第1と第2のランヤード31、32の各フック31H、32Hを、ロープセット20の各ロープ部21、22の接続部23、又は2本の棒材10、10の連結部11に掛け、高所作業を行なう。即ち、上記(1)〜(4)に続く、下記(1)〜(11)の如くである。
【0044】
(5)作業者は、屋根面1において上記(1)で既設のねじ止め穴2よりも奥側に、新たな転落防止具100Aのための2個のねじ止め穴2を新設する(
図11(A))。この2個のねじ止め穴2は、上記(1)で設置済の転落防止具100Aのための既設の2個のねじ止め穴2に対し、該設置済の転落防止具100Aにおける2本の棒材10、10のヒンジ11Cを中心とする点対称位置に設定される。
【0045】
(6)作業者は、新たな転落防止具100Aを屋根面1の上に持ち込み、該新たな転落防止具100Aにおける2本の棒材10、10の各固定部12の固定ブラケット12Aを上記(5)で新設した2個のねじ止め穴2にボルト締結する(
図11(B))。
【0046】
(7)作業者は、新たなロープセット20をもう1つ用意する。この新たなロープセット20の中央ロープ部21に設けたリングキャッチ21Rを上記(1)で既設の2本の棒材10、10の連結部11に設けたリングキャッチ掛け11Rに連結する。更に、この新たなロープセット20の両側ロープ部22、22に設けたリングキャッチ22R、22Rを、上記(1)で既設の2本の棒材10、10の各固定部12、12に設けたリングキャッチ掛け12Rに掛ける(
図11(C))。
【0047】
(8)作業者は、安全帯30の連結された第2ランヤード32の長さを、伸縮調節器にて、第1ランヤード31と同じ長さに縮める。そして、第1ランヤード31のフック31Hを新たなロープセット20の接続部23に設けたリングキャッチ23Rに掛ける(
図2(A))。
【0048】
(9)作業者は、安全帯30に連結された第2ランヤード32のフック32Hを上記(1)で設置済みの転落防止具100Aにおける2本の棒材10、10の連結部11のリングキャッチ掛け11Rから外す。そして、この第2ランヤード32のフック32Hを新たな転落防止具100Aにおけるロープセット20の接続部23に設けたリングキャッチ23Rに掛ける(
図12(B))。
【0049】
(10)作業者は、安全帯30に連結された第1ランヤード31のフック31Hを新たなロープセット20の接続部23に設けたリングキャッチ23Rから外す。そして、この第1ランヤード31のフック31Hを新たな転落防止具100Aにおける2本の棒材10、10の連結部11のリングキャッチ掛け11Rに掛ける(
図12(C))。
【0050】
(11)作業者は、安全帯30に連結された第2ランヤード32のフック32Hを新たな転落防止具100Aにおけるロープセット20の接続部23に設けたリングキャッチ23Rから外し、この第2ランヤード32のフック32Hを該新たな転落防止具100Aにおける2本の棒材10、10の連結部11のリングキャッチ掛け11Rに掛ける。そして、この第2ランヤード32の長さを、伸縮調節器にて、元の長さに戻す。更に、第1ランヤード31のフック31Hを新たな転落防止具100Aにおける2本の棒材10、10の連結部11のリングキャッチ掛け11Rから外し、第2ランヤード32にて転落防止を図りながら、屋根面1上で高所作業する(
図13)。更に、上記(5)〜(11)を繰り返すことにより、奥行きがどんなに長い屋根面1であっても、その全面に転落防止装置100を設置できる。
【0051】
作業終了後には、作業者は上記(1)〜(11)の逆手順で転落防止を図りながら、屋根面1から降りる。
【0052】
以下、転落防止具100Aを構成する2本の棒材10、10の長さ、ロープセット20の各ロープ部21、22の長さ、及び安全帯30のランヤード31、32の長さの関係について説明する。
【0053】
(A)安全帯30の第1ランヤード31のフック31Hをロープセット20の接続部23に設けたリングキャッチ23Rに掛けた状態で、手を伸ばして第2ランヤード32のフック32Hを2本の棒材10、10の連結部11のリングキャッチ掛け11Rに掛けられるように、2本の棒材10、10の長さ、ロープセット20の各ロープ部21、22の長さ、及び安全帯30のランヤード31、32の長さの関係が設定される。
【0054】
(B)ランヤード31、32の長さは、以下の条件を満たすように設定される。ここで、ランヤード31、32の長さをL1、L2、作業者の立位におけるD環31A、32Aの高さをK、ロープセット20の接続部23のリングキャッチ23Rから屋根面1の端部までの距離をE1、E2(E2は昇降時における足場Aからの距離)、2本の棒材10、10の連結部11のリングキャッチ掛け11Rから屋根面1の端部までの距離をPとする。
【0055】
但し、85kg砂袋の落下高さ1700mmの衝撃荷重が8.0kN以下であることから、作業者の許容落下高さJを1700mm以下とする。
【0056】
(B-1)第1ランヤード31の長さ(
図1、
図2)
i)J=K+(L1−E1)≦1700mm
ii)E2≦900mm程度(足場A上から片手を伸ばしてD環31Hをロープセット20の接続部23のリングキャッチ23Rに掛けられる距離)
iii)E2≦L1
【0057】
(B-2)第2ランヤード32の長さ(
図3、
図4)
i)J=K+(L2−P)≦1700mm
【0058】
転落防止具100Aを上記(A)、(B)の如くに設定するとき、足場Aの上から安全帯30の第1と第2のランヤード31、32のフック31H、32Hをロープセット20の接続部23に設けたリングキャッチ23Rに掛けることができ、足場A〜屋根面1の間を安全に移動できる。また、作業者の落下衝撃荷重を一定値以下に制限できる。
【0059】
本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)2本の棒材10、10の各固定部12を屋根面1に固定することで、該屋根面1の傾斜にかかわらず、それらの2本の棒材10、10とロープセット20からなる転落防止具100Aを該屋根面1に簡易に設置できる。
【0060】
(b)転落防止具100Aを屋根面1に固定するとき、2本の棒材10、10の固定部12は足場Aから手の届く位置で確実に固定し、2本の棒材10、10の連結部11、及び該連結部11に連結されたロープセット20は足場Aから手の届かない位置にまで延在するように設置できる。足場Aが屋根面1の外周の一辺に沿ってしか配置できない場合であっても、屋根面1の足場Aから手が届かない深い位置にまで転落防止具100Aを設置でき、屋根面1上での作業者の転落防止を図りながらの行動範囲が足場面近傍に限定されず、広くとることができる。
【0061】
(c)ロープセット20における中央ロープ部21と両側ロープ部22の各1本との交差角度を鋭角に設定することにより、作業者の転落時の落下荷重が各ロープ部21、22に及ぼす張力を小さくし、ひいては各ロープ部21、22の断面を小さくする等によって軽量化を図ることができる。
【0062】
(d)上述(c)により、ロープセット20の各ロープ部21、22から2本の棒材10、10の連結部11や固定部12に作用する力を小さくできる。従って、2本の棒材10、10の断面を小さくしてその軽量化を図り、或いは2本の棒材10、10の連結部11(ヒンジ11C)や固定部12の軽量化を図ることができる。
【0063】
(e)作業者の安全帯30が第1と第2のランヤード31、32を連結した2丁掛けとされ、両ランヤード31、32の各フック31H、32Hが、ロープセット20の各ロープ部21、22の接続部23と、2本の棒材10、10の連結部11のそれぞれに係脱自在にされる。作業者は、屋根面1上で、第1と第2のランヤード31、32のいずれか一方のフック31H、32Hが、2本の棒材10、10の連結部11とロープセット20の各ロープ部21、22の接続部23の一方に既に掛けられている状態で、第1と第2のランヤード31、32の他方のフック31H、32Hを、2本の棒材10、10の連結部11とロープセット20の各ロープ部21、22の接続部23の他方に新たに掛け、その後、既に掛けられていた一方のフック31H、32Hを2本の棒材10、10の連結部11とロープセット20の各ロープ部21、22の接続部23の一方から外す。これにより、作業者はそれらの第1と第2のランヤード31、32のいずれかが必ず、2本の棒材10、10の連結部11とロープセット20の各ロープ部21、22の接続部23のいずれかに掛けられた状態を保って高所作業できるものになり、転落防止の確実を図ることができる。
【0064】
(f)2本の棒材10、10の連結部11がヒンジ11Cからなる。棒材10、10をヒンジ11Cでつないでトラス構造とすることで、棒材10、10には軸力のみが働き、曲げモーメントが作用しなくなる。これにより、棒材10、10の断面が曲げ強さを必要としなくなり、例えばアルミのパイプを採用する等によって軽量化できる。
【0065】
(g)棒材10、10をヒンジ11Cでつないでトラス構造とすることで、棒材10、10のヒンジ11Cとは反対側の固定部12の位置を自由に変位でき、当該固定部12を屋根面1の任意の位置に固定できる。
【0066】
(h)2本の棒材10、10の連結部11と各固定部12のそれぞれに、リングキャッチ掛け11R、12Rが設けられる。ロープセット20の各ロープ部21、22をそれらのリングキャッチ掛け11R、12Rに簡易に連結できる。また、安全帯30に連結したランヤード31、32のフック31H、32Hを、2本の棒材10、10の連結部11に設けたリングキャッチ掛け11Rに簡易に係脱できる。
【0067】
(i)ロープセット20の各ロープ部21、22の接続部23に、リングキャッチ23Rが設けられる。安全帯30に連結したランヤード31、32のフック31H、32Hを、ロープセット20の各ロープ部21、22の接続部23に設けたリングキャッチ23Rに簡易に係脱できる。
【0068】
(j)作業者が、足場Aから屋根面1に転落防止具100Aを設置した後、安全帯30に連結されたランヤード31、32のフック31H、32Hをロープセット20の各ロープ部21、22の接続部23に掛け、屋根面1に上がる。作業者は、転落防止を図られながら、屋根面1に上がることができる。
【0069】
(k)作業者が、足場Aから屋根面1に転落防止具100Aを設置した後、安全帯30に連結された第1ランヤード31のフック31Hをロープセット20の各ロープ部21、22の接続部23に掛け、屋根面1に上がり、更に、屋根面1上で、安全帯30に連結された第2ランヤード32のフック32Hを2本の棒材10、10の連結部11に掛けた後、第1ランヤード31のフック31Hをロープセット20の各ロープ部21、22の接続部23から外し、高所作業を行なう。作業者は、転落防止を図られながら、高所作業を行なうことができる。
【0070】
(l)前記屋根面1の足場Aから離れる方向に沿う奥行きが長いとき、作業者が、屋根面1上の奥側位置に新たな転落防止具100Aを設置し、安全帯30に連結された第1と第2のランヤード31、32の各フック31H、32Hをロープセット20の各ロープ部21、22の接続部23、又は2本の棒材10、10の連結部11に掛け、高所作業を行なう。作業者は、屋根面1の奥行きの深い位置でも、転落防止を図られながら、高所作業を行なうことができる。
【0071】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、本発明の実施において、作業者の安全帯は1つのランヤードのみを連結されて備えるものでも良い。