特許第5992885号(P5992885)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992885
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】スポーツ用品
(51)【国際特許分類】
   A01K 87/00 20060101AFI20160901BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20160901BHJP
   A63B 53/10 20150101ALI20160901BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
   A01K87/00 630N
   B32B15/08 H
   A63B53/10 Z
   B32B15/08 E
   B32B27/00 C
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-179905(P2013-179905)
(22)【出願日】2013年8月30日
(65)【公開番号】特開2015-47104(P2015-47104A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2015年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】西川 太
【審査官】 本村 眞也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−079669(JP,A)
【文献】 特開平10−044308(JP,A)
【文献】 特開平10−150887(JP,A)
【文献】 特開2008−073056(JP,A)
【文献】 特開2008−086241(JP,A)
【文献】 米国特許第07132130(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 87/00−87/08
A63B 53/00−53/16
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の表面に積層状態で設けられる装飾層とを備えるスポーツ用品であって、
前記装飾層は、インクジェット印刷により所定の第1の装飾形態を成して設けられる紫外線硬化型樹脂の第1の粘着層と、前記第1の粘着層上に付着されて前記第1の装飾形態を成す第1の金属材料層と、インクジェット印刷により前記第1の金属材料層の上側に所定の第2の装飾形態を成して設けられる紫外線硬化型樹脂の第2の粘着層と、前記第2の粘着層上に付着されて前記第2の装飾形態を成す第2の金属材料層とを有し、前記第2の粘着層を形成する紫外線硬化型樹脂の各ドット同士の隙間を通じて前記第1の金属材料層が露出または透過されて成る、
ことを特徴とするスポーツ用品。
【請求項2】
前記第1の金属材料層と前記第2の粘着層との間に透明層が介在されることを特徴とする請求項1に記載のスポーツ用品。
【請求項3】
前記第2の粘着層は部分的に空隙領域を有し、その空隙領域を通じて前記第1の金属材料層が露出または透過されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスポーツ用品。
【請求項4】
前記空隙領域が装飾形態を成すことを特徴とする請求項3に記載のスポーツ用品。
【請求項5】
前記第2の粘着層は、前記第1の金属材料層の一部の上側にわたって設けられることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のスポーツ用品。
【請求項6】
前記装飾層は、インクジェット印刷により前記第2の金属材料層の上側に所定の第3の装飾形態を成して設けられる紫外線硬化型樹脂の第3の粘着層と、前記第3の粘着層上に付着されて前記第3の装飾形態を成す第3の金属材料層とを更に有し、前記第3の粘着層を形成する紫外線硬化型樹脂の各ドット同士の隙間を通じて前記第2の金属材料層及び/又は前記第1の金属材料層が露出または透過されて成ることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のスポーツ用品。
【請求項7】
前記第2の金属材料層と前記第3の粘着層との間に透明層が介在されることを特徴とする請求項6に記載のスポーツ用品。
【請求項8】
前記第3の粘着層を形成する紫外線硬化型樹脂の各ドット同士の間隔は、前記第2の粘着層及び/又は第1の粘着層を形成する紫外線硬化型樹脂の各ドット同士の間隔よりも大きいことを特徴とする請求項6または請求項7に記載のスポーツ用品。
【請求項9】
前記装飾層の最外層が透明層によってコーティングされることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のスポーツ用品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線が照射されることにより硬化する紫外線硬化型樹脂(UV(ultraviolet)インクなど)を用いたインクジェット印刷により基材の表面に文字や装飾が施されて成るスポーツ用品(例えば、釣竿を含む釣具、ゴルフクラブ、ラケットなど)に関し、特に、紫外線硬化型樹脂を用いて立体的なメタリック外観を得ることができる装飾層を表面に備えて成るスポーツ用品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基材表面にインクジェット印刷により装飾等を施すことが一般に行なわれている。また、その場合に使用されるインクジェット用インクは、主に、水性、油性、溶剤系、UV系に分かれるが、とりわけ、UVインクは、無溶剤型のインクであり、速乾性・耐久性に優れ、ガラス、木材、金属、プラスチックなど、多様な素材への印刷が可能であることから、様々な分野で使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、このようなインクを用いた装飾では、立体的なメタリック外観を形成して審美性等を向上させることも行なわれており(例えば、特許文献2参照)、その場合には、例えば金属フレーク顔料を含むメタリックインクが用いられ、また、そのバインダーとして種々の樹脂(例えば、粘着性を有するプライマーなど)も用いられる。また、金属フレーク顔料を含むUVメタリックインクも知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−126399号公報
【特許文献2】特開2009−297631号公報
【特許文献2】特開2005−272568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、UVメタリックインクを用いてインクジェット印刷により立体的なメタリック外観を得ようとする場合には、幾つかの問題が伴う。
【0006】
すなわち、UVインクは、温度の違いによる粘度変化が大きいという性質を有するため、低粘度を成す状態では、そのようなUVインクに適合するインクジェット用のノズルから、インクに分散して含まれる粒径の大きい金属粉が吐出し難く、したがって、ノズルが詰まってしまうなどといった事態が起こり得る。
【0007】
また、UVメタリックインクにおいては、フレーク顔料である金属が紫外線硬化型樹脂中に存在するモノマーまたはオリゴマーの重合開始を促進させるため、インクの保存中に短期間でゲル化するという問題がある。更に、これらのインクを用いて印刷されたものは、時間経過とともに生じる金属フレークの酸化により、インク膜の金属光沢が失われる傾向がある。
【0008】
このように、金属フレーク顔料を含むUVメタリックインクを用いて立体的なメタリック外観を得ようとする場合には、これらの問題を解決するために多大な労力と高いコストを余儀なくされ、また、十分に立体的なメタリック外観を得ることが難しい。
【0009】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、紫外線硬化型樹脂を用いたインクジェット印刷により立体的なメタリック外観を十分に且つ安価に得ることができる装飾層を表面に備えるスポーツ用品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、本発明は、基材と、前記基材の表面に積層状態で設けられる装飾層とを備えるスポーツ用品であって、前記装飾層は、インクジェット印刷により所定の第1の装飾形態を成して設けられる紫外線硬化型樹脂の第1の粘着層と、前記第1の粘着層上に付着されて前記第1の装飾形態を成す第1の金属材料層と、インクジェット印刷により前記第1の金属材料層の上側に所定の第2の装飾形態を成して設けられる紫外線硬化型樹脂の第2の粘着層と、前記第2の粘着層上に付着されて前記第2の装飾形態を成す第2の金属材料層とを有し、前記第2の粘着層を形成する紫外線硬化型樹脂の各ドット同士の隙間を通じて前記第1の金属材料層が露出または透過されて成ることを特徴とする。
【0011】
上記した構成によれば、装飾層は、インクジェット印刷により設けられる紫外線硬化型樹脂の粘着層と該粘着層上に付着される金属材料層とから成る一組の層を少なくとも2つ積み重ねて構成され(装飾層は、第1の粘着層と第1の金属材料層とから成る第1の組と、第2の粘着層と第2の金属材料層とから成る第2の組とを有していればよく、その積み重ねられる組数は限定されない)、第2の粘着層を形成する紫外線硬化型樹脂の各ドット同士の隙間を通じて第1の金属材料層が露出または透過されて成るため、階層の異なる少なくとも2つの金属材料層を同一視野で観察でき、したがって、奥行きのある立体的なメタリック外観を得ることができる。
【0012】
すなわち、上記構成によれば、UVメタリックインクを用いずに、インクジェット印刷による紫外線硬化型樹脂の粘着層と、該粘着層に付着される金属材料層という別個の層を積み重ねて、下層の金属材料層を上層から見えるようにしているため、奥行きのある立体的なメタリック外観を安価に且つ十分に得ることができる。
【0013】
なお、上記構成において、「装飾」とは、文字、線図、色彩、模様(色分け模様を含む)、または、これらの結合などにより構成されて成るものであり、また、「装飾層」とは、複数の層が積層されることにより全体として前記装飾を成すようになっている層のことである。また、上記構成において、「ドット」とは、インクジェット印刷機のインクジェットノズルから吐出されて金属材料層上に打ち込まれて着弾される樹脂のそれぞれの液滴のことである。
【0014】
また、上記構成において、第2の装飾形態は、第1の装飾形態と異なることが好ましいが、同じであってもよい。また、異なる装飾形態とは、例えば、模様(文字も含む)が同じで色彩が異なる形態や、色彩が同じで模様が異なる形態など、様々な形態が考えられる。また、上記構成において、「露出」とは、途中に何らの層も介在せずに完全にむき出して現れ出る(露わになっている)状態のことであり、また、「透過」とは、透明な層などを介して透けて見えることである。
【0015】
また、上記構成において、装飾層は、インクジェット印刷により前記第2の金属材料層の上側に所定の第3の装飾形態を成して設けられる紫外線硬化型樹脂の第3の粘着層と、前記第3の粘着層上に付着されて前記第3の装飾形態を成す第3の金属材料層とを更に有し、前記第3の粘着層を形成する紫外線硬化型樹脂の各ドット同士の隙間を通じて前記第2の金属材料層及び/又は前記第1の金属材料層が露出または透過されて成ることが好ましい。
【0016】
このような構成では、階層の異なる少なくとも3つの金属材料層を同一視野で観察でき、そのため、更に奥行きのある、より立体的なメタリック外観を得ることが可能になる。この場合、第3の装飾形態は、第1及び/又は第2の装飾形態と異なることが好ましいが、同じであってもよい。また、装飾層の一部の部分(あるいは、全ての部分)において、第2の金属材料層および第1の金属材料層の両方が第3の粘着層を形成する紫外線硬化型樹脂の各ドット同士の隙間を通じて露出または透過されてもよく、あるいは、装飾層の一部の部分(あるいは、全ての部分)において、第2の金属材料層のみ或いは第1の金属材料層のみが第3の粘着層を形成する紫外線硬化型樹脂の各ドット同士の隙間を通じて露出または透過されてもよい。あるいは、これらの組み合わせによって、同一視野内で立体感に変化を持たせてもよい。
【0017】
また、上記構成において、装飾層を構成する各層の厚さは任意である。全ての層の厚さが同じであってもよく、あるいは、一部または全ての層の厚さが異なってもよい。また、装飾層を構成する各層の延在面積は、一部または全ての層で同じであってもよく或いは異なっていてもよい。層厚の変化や延在面積の変化は、前述した異なる階層の金属材料の露出または透過との相乗効果により、立体感の創出に寄与し得る。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、紫外線硬化型樹脂を用いたインクジェット印刷により立体的なメタリック外観を十分に且つ安価に得ることができる装飾層を表面に備えるスポーツ用品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のスポーツ用品の一例である、装飾層を基材表面に有する魚釣用の疑似餌(ルアー)の概略側面図である。
図2】本発明のスポーツ用品の一例である、装飾層を基材表面に有する釣竿の一部の概略側面図である。
図3】本発明のスポーツ用品の一例である、装飾層を基材表面に有するテニスラケットの概略平面図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る装飾層の積層構造を示す概略縦断面図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る装飾層の積層構造を示す概略縦断面図である。
図6】本発明の第3の実施形態に係る装飾層の積層構造を示す概略縦断面図である。
図7図5のB−B線に沿う概略横断面図である。
図8図5のA−A線に沿う概略横断面図である。
図9】本発明の第4の実施形態に係る装飾層の積層構造を示す概略縦断面図である。
図10】本発明の第5の実施形態に係る装飾層の積層構造を示す概略縦断面図である。
図11】本発明の第6の実施形態に係る装飾層の積層構造を示す概略縦断面図である。
図12】本発明の第7の実施形態に係る装飾層の積層構造を示す概略縦断面図である。
図13】本発明の第8の実施形態に係る装飾層の積層構造を示す概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明に係るスポーツ用品の実施形態について説明する。
図1ないし図3は、本発明に係るスポーツ用品の一例を示しており、図1は、装飾層を基材表面に有する魚釣用の疑似餌(ルアー)の概略側面図、図2は、装飾層を基材表面に有する釣竿の一部の概略側面図、図3は、装飾層を基材表面に有するテニスラケットの概略平面図である。
【0021】
図1に示されるルアー100は、魚の形態を模したルアー本体102と、ルアー本体102の頭部102aに設けられる糸結合部106と、ルアー本体102の腹部と尾部とに設けられた釣針104とを備え、ルアー本体102の背部には鱗の模様を成す装飾層20が設けられている。無論、ルアー本体102の背部以外の部位に装飾層20が設けられても構わない。
【0022】
図2に示される釣竿200は、例えば振出式の釣竿であり、元竿200aと、元竿20内に伸縮自在に収納可能な複数の竿杆200b、200c・・・とから成り、例えば元竿200aには文字および模様から成る装飾層20が設けられる。無論、元竿200a以外の竿杆の部位に装飾層20が設けられても構わない。
【0023】
図3に示されるテニスラケット300は、テープ等を巻回して構成されるグリップ301を具備したシャフト302と、シャフト302の先端から延び、ネット(ガット)305を編み込んだフレーム306とを有しており、シャフト302には文字および模様から成る装飾層20が設けられている。
【0024】
続いて、図4ないし図13を参照して、前記装飾層20の積層構造について詳しく説明する。
図4は、本発明の第1の実施形態に係る装飾層20の積層構造を示す概略縦断面図である。図示のように、本実施形態の装飾層20は、基材(例えば、図1のルアー100のルアー本体102の基材、図2の釣竿200の元竿200aの基材、図3のテニスラケット300のシャフト302の基材など)10の表面に積層状態で設けられる。
【0025】
装飾層20は、インクジェット印刷により所定の第1の装飾形態を成して設けられる紫外線硬化型樹脂の第1の粘着層22Aと、第1の粘着層22A上に付着されて前記第1の装飾形態を成す第1の金属材料層24Aと、インクジェット印刷により第1の金属材料層の上側に直接に或いは何らかの透明層(無色または着色)を介して(本実施形態では、直接に)所定の第2の装飾形態を成して設けられる紫外線硬化型樹脂の第2の粘着層22Bと、第2の粘着層22B上に付着されて前記第2の装飾形態を成す第2の金属材料層24Bとを有する。なお、装飾層20の最外層24Bは、本実施形態のように、無色透明層または着色透明層26によってコーティングされてもよい。この透明層26は、溶剤を含む塗料(溶剤型インク)であってもよく、または、紫外線硬化型の樹脂を含むUVインクであってもよい。
【0026】
上記積層構造において、基材10は任意の材料から成る。例えば、FRP、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、アクリル樹脂などの合成樹脂を基材10の材料として採用できる。アクリル樹脂としては、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)がある。また、合成樹脂の他には、例えばステンレス、アルミニウム、黄銅、真鍮等の金属を挙げることができる。また、無機物である、セラミック、陶器、ガラス等も採用することができる。
【0027】
粘着層22A,22Bは無色透明層または着色透明層から成ってもよく、また、粘着層22A,22Bを構成する紫外線硬化型樹脂(UV樹脂)は、紫外線が照射されることによって重合反応を起こし硬化するタイプの粘着性を有する樹脂である。具体的には、このUV樹脂は、光重合性のオリゴマー、モノマー(エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレートなど)を主成分とし、触媒としての光重合開始剤を含むとともに、顔料、その他消泡剤等の補助剤を含んでもよい。そして、このUV樹脂は、紫外線が照射されることで光重合開始剤がラジカルを発生するとともに、このラジカルがオリゴマーの重合を開始させ、このような重合反応によって硬化して印刷対象物に定着する。なお、光重合開始剤としては、様々な種類が存在するが、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、アセトフェノン系、チオキサントン系、アシルフォスフィンオキサイド系等が一般的に用いられる。
【0028】
また、金属材料層24A,24B を構成する金属材料としては、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、スズ、真鍮などが挙げられ、特に光輝性を有するものが好ましい。
【0029】
本実施形態において、粘着層22A,22Bを構成する紫外線硬化型樹脂の装飾形態は、インクジェット印刷により基板10上または第1の金属材料層24A上に印刷される。インクジェット印刷を行なうインクジェット印刷機は、図示しないが、複数の吐出ノズルを有してキャリッジにより走査方向に往復動する記録ヘッドと、キャリッジに搭載されるUV硬化用の光源とを備える。この光源は、紫外線を照射する照射手段であって、例えばLEDを採用することができる。LEDを採用することで、熱の発生を抑え、省エネにも寄与できる。無論、光源としては、LEDだけでなく、メタルハライドランプや高圧水銀ランプ等を採用することもできる。
【0030】
このようなインクジェット印刷機を用いた印刷では、インクジェット印刷機の前記記録ヘッドの前記吐出ノズルから粘着層22A(あるいは、粘着層22B)を構成する紫外線硬化型樹脂が基材10上(あるいは、第1の金属材料層24A上)に図8に示されるようにドット状に打ち込まれて着弾される。なお、図8では、上側の第2の粘着層22Bの樹脂ドット22bが実線で示されるとともに、下側の第1の粘着層22Aの樹脂ドット22aが破線で示されている。また、図8では、便宜上、下側の第1の粘着層22Aの樹脂ドット22aが部分的にのみ示されている。
【0031】
また、このようにしてドット状に着弾された紫外線硬化型樹脂の粘着層22A,22B上に金属材料層24A,24Bを配置させる方法としては、例えば、金属箔のフィルムを粘着層22A,22B上に貼り付けて押さえた後にそれを剥がすことで樹脂ドット22a,22b上に同じくドット状に金属材料24a,24bを付着させる方法が挙げられる。このようにすることで、金属材料層24A,24Bが粘着層22A,22Bの装飾形態をなぞるようになる(粘着層22A,22Bの装飾形態と金属材料層24A,24Bの装飾形態とが一致する)。なお、粘着層22A,22B上に金属材料層24A,24Bを配置させる別の方法として、例えば、粘着層22A,22Bに対して金属フレークを吹き付けることも考えられが、金属の配置方法は特に限定されない。
【0032】
最終的に、このようなドット状の樹脂の配置および金属材料の付着により、この装飾層20においては、図8に示されるように、第2の粘着層22Bを形成する紫外線硬化型樹脂の各ドット22b,22b(実線で示される)同士の隙間Sを通じて下側の第1の金属材料層24A(破線で示される第1の粘着層22Aの樹脂ドット22a上に付着された第1の金属材料層24Aの金属材料24a)が露出される(後述するように第1の金属材料層24Aと第2の粘着層22Bとの間に透明層が介在される場合には、透過される)ようになる。
【0033】
以上のように、本実施形態の装飾層20によれば、インクジェット印刷により設けられる紫外線硬化型樹脂の粘着層22A(22B)と該粘着層22A(22B)上に付着される金属材料層24A(24B)とから成る一組の層を少なくとも2つ積み重ねて構成され、第2の粘着層22Bを形成する紫外線硬化型樹脂の各ドット22b,22b同士の隙間Sを通じて第1の金属材料層24Aが露出(または透過)されて成るため、階層の異なる少なくとも2つの金属材料層24A,24Bを同一視野で観察でき、したがって、奥行きのある立体的なメタリック外観を得ることができる。すなわち、本実施形態の装飾層20によれば、UVメタリックインクを用いずに、インクジェット印刷による紫外線硬化型樹脂の粘着層22A(22B)と、該粘着層22A(22B)に付着される金属材料層24A(24B)という別個の層を積み重ねて、下層の金属材料層24Aを上層から見えるようにしているため、奥行きのある立体的なメタリック外観を安価に且つ十分に得ることができる。
【0034】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る装飾層20の積層構造を示す概略縦断面図である。図示のように、本実施形態の装飾層20は、図4に示される第1の実施形態の装飾層20の第2の金属材料層24Bの上側に直接に或いは何らかの透明層を介して(本実施形態では、直接に)、更に、インクジェット印刷により所定の第3の装飾形態を成して設けられる紫外線硬化型樹脂の第3の粘着層22Cと、第3の粘着層22C上に付着されて第3の装飾形態を成す第3の金属材料層24Cとを有して成り、第3の金属材料層24Cが無色透明層または着色透明層26によってコーティングされている。なお、各層を構成する材料およびその積層方法は第1の実施形態と同じである(以下、第3の実施形態以降も同様)。
【0035】
また、本実施形態では、図5のA−A線に沿う横断面図である図8図5のB−B線に沿う横断面図である図7とを比較すれば分かるように、第3の粘着層22Cを形成する紫外線硬化型樹脂の各ドット22c,22c同士の隙間S’(間隔)が、第2の粘着層22B及び/又は第1の粘着層22Aを形成する紫外線硬化型樹脂の各ドット22a,22a及び/又は22b,22b同士の隙間S(間隔)よりも大きく設定されている(図7では、上側の第3の粘着層22Cの樹脂ドット22cが実線で示されるとともに、下側の第1および第2の粘着層22A,22Bの樹脂ドット22a,22bが破線で部分的にのみ示されている)。このような層22C,22B(22A)間のドット間隔の相違は、例えば、印刷時における樹脂の吐出量(全打ち込み面積に対する比率)を層22C,22B(22A)間で異ならせることによって生み出すことができる。
【0036】
したがって、本実施形態の装飾層20の構成においても、第3の粘着層22Cを形成する紫外線硬化型樹脂の各ドット22c,22c(実線で示される)同士の隙間S’を通じて、下側の第2の金属材料層24B(破線で示される第2の粘着層22Bの樹脂ドット22b上に付着された第2の金属材料層24Bの金属材料24b)及び/又は第1の金属材料層24A(破線で示される第1の粘着層22Aの樹脂ドット22a上に付着された第1の金属材料層24Aの金属材料24a)が露出される(後述するように第1の金属材料層24Aと第2の粘着層22Bとの間及び/又は第2の金属材料層24Bと第3の粘着層22Cとの間に透明層が介在される場合には、透過される)ようになる。
【0037】
なお、下層の金属材料を上層の粘着層の樹脂ドット間の隙間を通じて観察できるようにするには、本実施形態のように粘着層の樹脂ドット間隔を上側の層ほど大きくすればよいが、上下の粘着層で樹脂ドット位置をずらしたり、後述するように粘着層に樹脂空隙領域(穴など)を設けるなどすることによっても上層の粘着層の隙間を通じて下層の金属材料を観察できる。
【0038】
図6は、本発明の第3の実施形態に係る装飾層20の積層構造を示す概略縦断面図である。図示のように、本実施形態の装飾層20は、図5に示される第2の実施形態の装飾層20の変形例であり、この第2の実施形態の装飾層20の積層構造に加えて、第1の金属材料層24Aと第2の粘着層22Bとの間に無色透明層または着色透明層30が介在されるとともに、第2の金属材料層24Bと第3の粘着層22Cとの間に無色透明層または着色透明層30が介在されている。介在される透明層30は、溶剤を含む塗料から成ってもよいが、溶剤流れなどによって位置ずれを引き起こさないように、UVインクなど、紫外線硬化型樹脂を含むことが好ましい。なお、それ以外の構成は図5に示される第2の実施形態の装飾層20と同じである。
【0039】
図9は、本発明の第4の実施形態に係る装飾層20の積層構造を示す概略縦断面図である。前述した各実施形態では、第1の金属材料層24A上にその全体にわたって第2の粘着層22Aが設けられていたが、本実施形態の装飾層20では、第2の粘着層22B(したがって、第2の金属材料層24B)が第1の金属材料層24Aの一部の上側にわたって設けられ、それにより、第2の粘着層22Bと第1の金属材料層24Aとの間に段部40が形成される。また、第2の金属材料層24Bをコーティングする透明層(無色または着色)26は、第2の金属材料層24Bだけでなく、装飾層20全体を覆っている。なお、それ以外の構成は図4に示される第1の実施形態の装飾層20と同じである。
【0040】
図10は、本発明の第5の実施形態に係る装飾層20の積層構造を示す概略縦断面図である。図示のように、本実施形態の装飾層20は、図4に示される第1の実施形態の装飾層20の変形例であり、第2の粘着層22B(したがって、第2の金属材料層24B)が第1の金属材料層24Aの全部ではなく一部の上側にわたって設けられ、それにより、第2の粘着層22Bと第1の金属材料層24Aとの間に段部40が形成されるとともに、第1の金属材料層24Aと第2の粘着層22Bとの間に透明層(無色または着色)30が介在されている。なお、それ以外の構成は図4に示される第1の実施形態の装飾層20と同じである。
【0041】
図11は、本発明の第6の実施形態に係る装飾層20の積層構造を示す概略縦断面図である。図示のように、本実施形態の装飾層20は、図5に示される第2の実施形態の装飾層20の変形例であり、第2の粘着層22B(したがって、第2の金属材料層24B、第3の粘着層22C、および、第3の金属材料層24Cも)が第1の金属材料層24Aの全部ではなく一部の上側にわたって設けられ、それにより、第2の粘着層22Bと第1の金属材料層24Aとの間に段部40が形成されるとともに、第3の金属材料層24Cをコーティングする透明層26が、第3の金属材料層24Cだけでなく、装飾層20全体を覆っている。なお、それ以外の構成は図5に示される第2の実施形態の装飾層20と同じである。
【0042】
図12は、本発明の第7の実施形態に係る装飾層20の積層構造を示す概略縦断面図である。図示のように、本実施形態の装飾層20は図4に示される第1の実施形態の装飾層20の変形例であり、第2の粘着層22Bは、その樹脂の一部に空隙領域(例えば穴や切り欠きなどから成ってもよい)22sを有し(したがって、第2の金属材料層24Bも空隙領域22sに対応する部分が金属材料の存在しない空隙領域24sとなっている)、その空隙領域22sを通じて第1の金属材料層24Aが露出されている(透明層26を通じて透過される)。この場合、空隙領域22sが何らかの装飾形態を成していてもよい。なお、それ以外の構成は図4に示される第1の実施形態の装飾層20と同じである。
【0043】
図13は、本発明の第8の実施形態に係る装飾層20の積層構造を示す概略縦断面図である。図示のように、本実施形態の装飾層20は図12に示される第7の実施形態の装飾層20の変形例であり、第1の金属材料層24Aと第2の粘着層22Bとの間に透明層(無色または着色)30が介在されている。なお、それ以外の構成は図13に示される第8の実施形態の装飾層20と同じである。
【0044】
以上、本発明の実施形態を説明してきたが、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、前述した装飾層20は、その一部分と他の部分とで積層数が異なっていてもよく、全体にわたって同じ積層数であってもよい。また、装飾層20は、基材10の一部にわたって或いは全体にわたって設けられてもよい。また、前述した空隙領域は、第2の粘着層だけでなく、第3の粘着層にも設けられてもよい。その場合も、空隙領域が装飾形態を成してもよい。また、第3の粘着層が第2の金属材料層の一部の上側にわたって設けられてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 基材
20 装飾層
22a,22b,22c 樹脂ドット
22s 空隙領域
22A 第1の粘着層
22B 第2の粘着層
22C 第3の粘着層
24A 第1の金属材料層
24B 第2の金属材料層
24C 第3の金属材料層
26 透明層
30 透明層
100 ルアー(スポーツ用品)
200 釣竿(スポーツ用品)
300 テニスラケット(スポーツ用品)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13