特許第5992892号(P5992892)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992892
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】画像処理装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/405 20060101AFI20160901BHJP
   H04N 1/403 20060101ALI20160901BHJP
   G06T 5/00 20060101ALI20160901BHJP
   B41J 2/52 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
   H04N1/40 B
   H04N1/40 103A
   G06T5/00 700
   B41J2/52
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-207922(P2013-207922)
(22)【出願日】2013年10月3日
(65)【公開番号】特開2015-73202(P2015-73202A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2015年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114971
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修
(72)【発明者】
【氏名】六尾 敏明
【審査官】 石田 信行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−211503(JP,A)
【文献】 特開2005−143104(JP,A)
【文献】 特開2009−253472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/405
H04N 1/403
G06T 5/00
B41J 2/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画素値を2値化して2値化後の画素値を出力画素値として出力する画像処理装置において、
注目画素および前記注目画素の周辺画素の前記入力画素値に対してフィルター処理を実行するローパスフィルターと、
前記注目画素の周辺画素の前記出力画素値に対して互いに異なるバンドパス特性でフィルター処理をそれぞれ実行する複数のバンドパスフィルターと、
エッジから前記注目画素までの距離および前記エッジのコントラストに基づき混合比率を計算する混合比率計算部と、
前記混合比率で前記複数のバンドパスフィルターの出力を混合して得られる値を前記ローパスフィルターの出力から減算して得られる値に対して量子化誤差の誤差拡散処理を行う誤差拡散部と、
前記誤差拡散処理により得られる値に対して量子化を行い前記注目画素の前記出力画素値を特定する量子化器と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
入力画素値を2値化して2値化後の画素値を出力画素値として出力する画像処理装置において、
注目画素の周辺画素の前記出力画素値と前記入力画素値との差分に対して互いに異なるバンドパス特性でフィルター処理をそれぞれ実行する複数のバンドパスフィルターと、
エッジから前記注目画素までの距離および前記エッジのコントラストに基づき混合比率を計算する混合比率計算部と、
前記混合比率で前記複数のバンドパスフィルターの出力を混合して得られる値に対して量子化誤差の誤差拡散処理を行う誤差拡散部と、
前記誤差拡散処理により得られる値に対して量子化を行い前記注目画素の前記出力画素値を特定する量子化器と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
前記複数のバンドパスフィルターは、それぞれ、2つのガウス関数の差分で得られるバンドパス特性を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記複数のバンドパスフィルターは、第1バンドパスフィルターおよび第2バンドパスフィルターを含み、
前記第2バンドパスフィルターの前記2つのガウス関数における分散値の係数は、前記第1バンドパスフィルターの前記2つのガウス関数における分散値の係数の2倍であること、
を特徴とする請求項3記載の画像処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の画像処理装置を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ある画像処理装置では、入力画素値を2値化する際に、入力画素値に対して空間的なローパスフィルターを適用して得られた値から出力画素値に対して空間的なバンドパスフィルターを適用して得られた値を減算して得られた値を誤差拡散しつつ量子化(2値化)している(例えば特許文献1,2参照)。このようにすることで、2値化後の出力ドットが、バンドパスフィルターのフィルター特性によるクラスターサイズ(出力ドットの凝集度合い)でクラスター化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−211503号公報
【特許文献2】特開2011−211511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の技術では、誤差拡散に起因するエッジ鈍りを抑制できるものの、文字、線画などのエッジ近傍のジャギーが残る可能性がある。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、出力ドットをクラスター化するとともに、エッジ近傍のジャギーを抑制する画像処理装置および画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像処理装置は、入力画素値を2値化して2値化後の画素値を出力画素値として出力する画像処理装置であり、注目画素および前記注目画素の周辺画素の前記入力画素値に対してフィルター処理を実行するローパスフィルターと、前記注目画素の周辺画素の前記出力画素値に対して互いに異なるバンドパス特性でフィルター処理をそれぞれ実行する複数のバンドパスフィルターと、エッジから前記注目画素までの距離および前記エッジのコントラストに基づき混合比率を計算する混合比率計算部と、前記混合比率で前記複数のバンドパスフィルターの出力を混合して得られる値を前記ローパスフィルターの出力から減算して得られる値に対して量子化誤差の誤差拡散処理を行う誤差拡散部と、前記誤差拡散処理により得られる値に対して量子化を行い前記注目画素の前記出力画素値を特定する量子化器とを備える。
【0007】
また、本発明に係る画像処理装置は、入力画素値を2値化して2値化後の画素値を出力画素値として出力する画像処理装置であり、注目画素の周辺画素の前記出力画素値と前記入力画素値との差分に対して互いに異なるバンドパス特性でフィルター処理をそれぞれ実行する複数のバンドパスフィルターと、エッジから前記注目画素までの距離および前記エッジのコントラストに基づき混合比率を計算する混合比率計算部と、前記混合比率で前記複数のバンドパスフィルターを混合して得られる値に対して量子化誤差の誤差拡散処理を行う誤差拡散部と、前記誤差拡散処理により得られる値に対して量子化を行い前記注目画素の前記出力画素値を特定する量子化器とを備える。
【0008】
本発明に係る画像形成装置は、上記の画像処理装置を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、出力ドットをクラスター化するとともに、エッジ近傍のジャギーを抑制する画像処理装置および画像形成装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、図1に示す画像処理装置において使用されるフィルター係数およびエッジ度を説明する図である。
図3図3は、図1に示す画像処理装置において使用されるバンドパスフィルター3,4のフィルター特性(つまりバンドパス特性)の一例を示す図である。
図4図4は、本発明の実施の形態2に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
実施の形態1.
【0013】
図1は、本発明の実施の形態1に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。図1に示す画像処理装置は、入力画素値を2値化して2値化後の画素値を出力画素値として出力し、例えば、プリンター、複写機、複合機などの画像形成装置に内蔵されている。この画像処理装置は、例えば、マイクロコンピューター、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などで実現される。入力画素値は、例えば8ビットの多階調値であって、0から1までのいずれかの値をとる。出力画素値は、0および1のいずれかの値をとる。
【0014】
図1に示す画像処理装置は、ローパスフィルター1、エッジ度算出部2、複数のバンドパスフィルター3,4、混合部5、減算器6、誤差拡散部7、および量子化器8を備える。図2は、図1に示す画像処理装置において使用されるフィルター係数およびエッジ度を説明する図である。なお、図2に示すフィルター係数および係数値Coefficientは適宜正規化される。
【0015】
ローパスフィルター1は、注目画素および注目画素の周辺画素の入力画素値に対してフィルター処理を実行する。ローパスフィルター1は、注目画素および注目画素の周辺画素(注目画素を中心とした所定画素数のウィンドウ内の画素)の入力画素値とフィルター係数との積和演算を行う。図2(A)は、ローパスフィルター1のフィルター係数の一例を示している。図2(A)において、MXdは、フィルター係数であり、dは、ウィンドウの中心となる注目画素からの距離であり、σgは、所定の標準偏差値である。
【0016】
エッジ度算出部2は、周辺画素近傍のエッジからの距離およびエッジのコントラストに基づき、0以上1以下の混合比率(エッジ度)を計算する。図2(D)は、エッジ度の計算式の一例を示している。図2(D)において、C_Ratioは、エッジ度であり、INCENTERは、注目画素の入力画素値であり、INijは、ウィンドウの中心となる注目画素の周辺画素ijの入力画素値であり、Coefficientは、注目画素からの距離に応じた係数値である。つまり、ここでは、図2(D)に示すように、エッジ度算出部2は、所定サイズのウィンドウ内において、注目画素の入力画素値と周辺画素の入力画素値との差の絶対値に対して距離に応じた係数を乗じたものの総和をエッジ度として計算している。図2(E)は、ウィンドウ内のCoefficientの値の分布の一例を示している。
【0017】
バンドパスフィルター3,4は、注目画素の周辺画素の出力画素値に対して互いに異なるバンドパス特性でフィルター処理をそれぞれ実行する。バンドパスフィルター3,4は、注目画素の周辺画素(注目画素を中心とした所定画素数のウィンドウ内の画素)の出力画素値とフィルター係数との積和演算を行う。なお、注目画素は主走査方向および副走査方向に沿って(あるいは蛇行走査で)移動させていくため、現在の注目画素より後続の画素については、出力画素値の計算が行われていない。そのため、バンドパスフィルター3,4は、注目画素の周辺画素のうち、既に導出されている出力画素値とフィルター係数との積和演算を行う。
【0018】
バンドパスフィルター3,4は、それぞれ、2つのガウス関数の差分で得られるバンドパス特性を有するDoG(Difference of Gaussian)フィルターである。
【0019】
また、この実施の形態1では、バンドパスフィルター4の2つのガウス関数における分散値の係数は、バンドパスフィルター3の2つのガウス関数における分散値の係数の2倍である。さらに、ここでは、バンドパスフィルター4の第2項のガウス関数は、バンドパスフィルター3の第1項のガウス関数と同一とされる。
【0020】
図3は、図1に示す画像処理装置において使用されるバンドパスフィルター3,4のフィルター特性(つまりバンドパス特性)の一例を示す図である。図3におけるBPF1は、バンドパスフィルター3のフィルター特性を示しており、BPF2は、バンドパスフィルター4のフィルター特性を示している。
【0021】
これにより、バンドパスフィルター3のクラスターサイズ(出力ドットの凝集度合い)が、バンドパスフィルター4のクラスターサイズより短くなる。
【0022】
図2(B)は、バンドパスフィルター3のフィルター係数の一例を示しており、図2(C)は、バンドパスフィルター4のフィルター係数の一例を示している。図2(B)および図2(C)において、MXdは、フィルター係数であり、dは、注目画素からの距離であり、σは、所定の標準偏差値である。
【0023】
混合部5は、エッジ度算出部2により得られる混合比率で複数のバンドパスフィルター3,4の出力を混合する。
【0024】
混合比率(エッジ度)は、エッジからの距離が近いほど、およびエッジのコントラストが大きいほど高い値となり、混合比率(エッジ度)をaとし、クラスターサイズの小さいバンドパスフィルター3の出力値をB1とし、クラスターサイズの大きいバンドパスフィルター4の出力値をB2とすると、混合部5は、積算器11,12および加算器13により、a×B1+(1−a)×B2を計算する。つまり、エッジからの距離が近いほど、およびエッジのコントラストが大きいほど、クラスターサイズが小さくなるように、両者が混合される。
【0025】
減算器6は、ローパスフィルター1により得られる値から、混合部5により得られる値を減算する。
【0026】
誤差拡散部7は、減算器6により得られる値に対して量子化誤差の誤差拡散処理を行う。つまり、誤差拡散部7は、減算器6の出力値と量子化器8の閾値(ここでは0)との差を後続の画素に拡散させる。
【0027】
量子化器8は、誤差拡散部7による誤差拡散処理により得られる値に対して量子化を行い、注目画素の出力画素値を特定する。ここでは、閾値を0とし、誤差拡散部7の出力が0以上であれば出力画素値を1とし、そうでなければ出力画素値を0とする。なお、量子化器8は、注目画素の入力画素値が0または1である場合には、そのまま、注目画素の出力画素値を0または1とする。
【0028】
次に、実施の形態1に係る画像処理装置の動作について説明する。
【0029】
この画像処理装置は、1つの画像について、注目画素を所定の走査パターンに沿って移動させていき、注目画素の出力画素値を順次導出していく。
【0030】
まず、注目画素およびその周辺画素の入力画素値に対して、ローパスフィルター1は、フィルター処理を行い、エッジ度算出部2は、エッジ度(混合比率)を計算する。
【0031】
他方、注目画素の周辺画素の出力画素値に対して、バンドパスフィルター3,4は、それぞれ、フィルター処理を行い、混合部5は、そのエッジ度に基づき、バンドパスフィルター3,4の出力を混合する。
【0032】
そして、減算器6は、ローパスフィルター1の演算結果と混合部5の演算結果との差を計算する。
【0033】
誤差拡散部7は、減算器6により得られる値について、量子化器8における量子化誤差を特定し、量子化誤差を所定の誤差分散パターン(Floyd-Steinberg法など)で、後続の画素に拡散させるとともに、拡散されてきた誤差を、現在の注目画素の減算器6により得られる値に加算する。
【0034】
量子化器8は、誤差拡散部7による上述の誤差拡散処理により得られる値に対して量子化を行い出力画素値を特定する。
【0035】
以上のように、上記実施の形態1によれば、エッジ度算出部2が、エッジから注目画素までの距離およびそのエッジのコントラストに対応する、注目画素のエッジ度を計算し、そのエッジ度に基づいて、バンドパス特性の異なるバンドパスフィルター3,4の出力が混合される。混合により得られた値に基づき量子化が行われる。
【0036】
これにより、エッジ近傍のクラスターサイズが小さくなるので、出力ドットをクラスター化するとともに、エッジ近傍のジャギーを抑制することが可能となる。
【0037】
実施の形態2.
【0038】
図4は、本発明の実施の形態2に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【0039】
実施の形態2では、ローパスフィルター1および減算器6を使用せず、バンドパスフィルター3,4は、注目画素の周辺画素の出力画素値と入力画素値との差分に対して互いに異なるバンドパス特性でフィルター処理をそれぞれ実行する。
【0040】
図4において、減算部21は、注目画素の周辺画素(バンドパスフィルター3,4のフィルター処理と同サイズのウィンドウ内の画素)のそれぞれについて、入力画素値と出力画素値との差分を計算し、バンドパスフィルター3,4は、その周辺画素についての差分に対して互いに異なるバンドパス特性でフィルター処理をそれぞれ実行する。
【0041】
ここで、ウィンドウ内の、後続の画素についての出力画素値は計算されていないため、その画素についての差分はゼロとする。また、差分を計算する際に、出力画素値を多階調値に変換してから差分が計算される。
【0042】
なお、実施の形態2に係る画像処理装置についての、その他の構成および動作については実施の形態1のものと同様であるため、その説明を省略する。
【0043】
なお、上述の各実施の形態は、本発明の好適な例であるが、本発明は、これらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【0044】
例えば、上記実施の形態1,2では、バンドパスフィルター3,4の数は2つであるが、3つ以上としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、例えば、画像形成装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 ローパスフィルター
2 エッジ度算出部(混合比率計算部の一例)
3,4 バンドパスフィルター
7 誤差拡散部
8 量子化器
図1
図2
図3
図4