特許第5992905号(P5992905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992905
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】抗菌剤コーティングされた医療用物品
(51)【国際特許分類】
   A61L 29/00 20060101AFI20160901BHJP
   A61L 31/00 20060101ALI20160901BHJP
   A61B 7/02 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
   A61L29/00 E
   A61L31/00 C
   A61B7/02 B
【請求項の数】6
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2013-512215(P2013-512215)
(86)(22)【出願日】2011年5月25日
(65)【公表番号】特表2013-529118(P2013-529118A)
(43)【公表日】2013年7月18日
(86)【国際出願番号】US2011037966
(87)【国際公開番号】WO2011150103
(87)【国際公開日】20111201
【審査請求日】2014年5月26日
(31)【優先権主張番号】61/348,157
(32)【優先日】2010年5月25日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/348,044
(32)【優先日】2010年5月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】マヒューザ ビー.アリ
(72)【発明者】
【氏名】ナイヨン ジン
(72)【発明者】
【氏名】バレリ リライン
(72)【発明者】
【氏名】プランニャ ブイ.ナガーカー
(72)【発明者】
【氏名】キャロライン エム.イリタロ
(72)【発明者】
【氏名】ナンシー エス.レンホフ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ティー.ショルツ
(72)【発明者】
【氏名】ランジャニ ブイ.パーササラシー
【審査官】 山中 隆幸
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−508480(JP,A)
【文献】 特表2003−503157(JP,A)
【文献】 特表2009−543895(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/036465(WO,A1)
【文献】 特開昭61−187867(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0252647(US,A1)
【文献】 特表2008−543602(JP,A)
【文献】 特開平03−196810(JP,A)
【文献】 特開平11−269448(JP,A)
【文献】 特表2011−523667(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/113438(WO,A1)
【文献】 特表平07−502053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00− 33/00
C08F 20/00−220/70
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性要素を含む第1ペンダント基と、
非極性要素を含む第2ペンダント基と、
第1有機ケイ素要素を含む第3ペンダント基と、を含む複数のペンダント基を有するビニルポリマーを含む、コーティング組成物と、
患者に接触する側の第1表面、及び第2表面を有するエラストマー第1基材を含み、該基材は前記コーティング組成物でコートされた状態のものである、医療機器と、を含む物品であって、
前記カチオン性要素が、第四級アミン要素、プロトン化した第三級アミン要素、及びプロトン化した第二級アミン要素からなる群から選択され、
前記ビニルポリマーが前記第1表面に耐久的に接着し、
前記組成物が無機充填剤を本質的に含まず、
前記コーティング組成物が付着され、かつ前記コーティング組成物中に存在する追加の遊離シランで硬化されており、かつ前記追加の遊離シランが、6〜22個の炭素原子の少なくとも1つの直鎖又は分枝鎖アルキルを有する第四級アンモニウムシラン又はプロトン化した第三級アミノシランである、物品。
【請求項2】
カチオン性要素を含む第1ペンダント基と、
非極性要素を含む第2ペンダント基と、
第1有機ケイ素要素を含む第3ペンダント基と、を含む複数のペンダント基を有するビニルポリマーを含む、コーティング組成物と、
体液に接触する側の第1表面、及び第2表面を有するエラストマー基材であって、該基材は前記コーティング組成物でコートされた状態のものである、基材と、を含む物品であって、
前記カチオン性要素が、第四級アミン要素、プロトン化した第三級アミン要素、及びプロトン化した第二級アミン要素からなる群から選択され、
前記ビニルポリマーが前記第1表面に耐久的に接着し、
前記組成物が無機充填剤を本質的に含まず、
前記コーティング組成物が付着され、かつ前記コーティング組成物中に存在する追加の遊離シランで硬化されており、かつ前記追加の遊離シランが、6〜22個の炭素原子の少なくとも1つの直鎖又は分枝鎖アルキルを有する第四級アンモニウムシラン又はプロトン化した第三級アミノシランである、物品。
【請求項3】
前記コーティング組成物が接着促進成分を更に含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の物品。
【請求項4】
コーティングされた物品の製造方法であって、
第1カチオン性要素を含む第1ペンダント基と、
非極性要素を含む第2ペンダント基と、
第1有機ケイ素要素を含む第3ペンダント基と、を含む複数のペンダント基を有するビニルポリマーを含み、無機充填剤を本質的に含まない、第1コーティング組成物の形成工程と、
前記ポリマーを第1基材の第1表面に接着するのに好適な条件下で、前記第1コーティング組成物を前記第1表面と接触させる工程と、を含み、
前記第1基材が医療機器のエラストマー構成要素を含み、
前記第1コーティング組成物が付着され、かつ前記第1コーティング組成物中に存在する追加の遊離シランで硬化されており、かつ前記追加の遊離シランが、6〜22個の炭素原子の少なくとも1つの直鎖又は分枝鎖アルキルを有する第四級アンモニウムシラン又はプロトン化した第三級アミノシランである、コーティングされた物品の製造方法。
【請求項5】
コーティングされた物品の製造方法であって、
第1カチオン性要素を含む第1ペンダント基と、
非極性要素を含む第2ペンダント基と、
第1有機ケイ素要素を含む第3ペンダント基と、を含む複数のペンダント基を有するビニルポリマーを含み、無機充填剤を本質的に含まない、第1コーティング組成物の形成工程と、
前記ポリマーを第1基材の第1表面に接着するのに好適な条件下で、前記第1コーティング組成物を前記第1表面と接触させる工程と、を含み、
前記第1基材が体液接触するエラストマー基材を含み、
前記第1コーティング組成物が付着され、かつ前記第1コーティング組成物中に存在する追加の遊離シランで硬化されており、かつ前記追加の遊離シランが、6〜22個の炭素原子の少なくとも1つの直鎖又は分枝鎖アルキルを有する第四級アンモニウムシラン又はプロトン化した第三級アミノシランである、コーティングされた物品の製造方法。
【請求項6】
コーティングを含む医療機器物品であって、前記コーティングが、
遊離シラン要素と、
第1の第四級アンモニウム要素を含む第1ペンダント基と、
第1有機ケイ素要素を含む第2ペンダント基と、を含む複数のペンダント基を有するビニルポリマーと、を含む組成物から誘導され、
前記ビニルポリマーが該物品の表面に耐久的に接着され、
前記組成物が付着され、かつ前記組成物中に存在する前記遊離シラン要素で硬化されており、かつ前記遊離シラン要素が、6〜22個の炭素原子の少なくとも1つの直鎖又は分枝鎖アルキルを有する第四級アンモニウムシラン又はプロトン化した第三級アミノシランである、医療機器物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許仮出願第61/348,044号及び同第61/348,157号(共に2010年5月25日出願)の利益を主張するものであり、各々の開示内容全体が本明細書に参考として組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
操作者が触れる、又はヒト組織と接触することを意図する表面は、それ故に、皮膚及び粘膜組織上で典型的又は偶発的に見られる微生物に曝される。特に懸念されるのは、組織と長時間接触することになり、細菌がコロニーを作り、増殖し、かつ潜在的にバイオフィルムを形成し得る表面である。これらの表面は感染症を引き起こすことで知られる。例えば、自然開口部又は人工開口部に挿入される静脈アクセスカテーテル、尿道カテーテル、気管内チューブ、経鼻胃管、栄養チューブ及びその他のデバイスは、患者に対して非常に深刻な影響をもたらし得る感染症を引き起こすリスクがある。バイオフィルムは、生体材料及び宿主組織の表面に典型的にしっかりと接着された細胞外高分子マトリックス内に入った、構造化微生物集団である。細菌性バイオフィルムは、様々な異なる適用範囲、つまり医療機器、食品加工及びその他産業用途における濾過システム、海洋構造物のコーティング、並びにその他防汚用途において、水性流体及び体液に長期間曝される材料の開発において重要な問題である。バイオフィルム中に生息する細菌は、「遊離」病原体と比べて、宿主防衛、及び抗生物質又は抗菌剤処理に対する抵抗性がかなり高く、それにより、留置する及びその他組織に接触するデバイスの使用中の感染可能性が高まる。
【0003】
バイオフィルムは、カテーテル関連尿路感染症(CAUTI)及び人工呼吸関連肺炎(VAP)において重要な役割を果たすと考えられる。CAUTIは、院内感染(HAI)の最も多くを占め、院内血流感染の2番目に多い原因である。VAPは、全てのHAIのうち死亡率が最も高く、VAP患者のおおよそ15%が死亡する。VAPは、治療が最も高額なHAIでもあり(発症あたり$20,000〜$50,000)、尿道カテーテルを長期間有する患者の発症率は25%〜40%である。
【0004】
例として、そして理論に束縛されるものではないが、尿道カテーテル表面上のバイオフィルム形成は、以下のように進行することができる。1)まずカテーテル表面に尿道周囲の皮膚上に元来存在する細菌(このうち一部はウレアーゼ産生菌である)がコロニー形成し、カテーテルが挿入されると、尿道の上皮表面とカテーテルとの間で膀胱内に移動できる。これらの細胞のカテーテル表面への吸着は、大部分が吸着されたタンパク質からなる有機コンディショニングフィルムの形成により促進され得る。2)主に細菌性エキソポリサッカライドのマトリックスによって包まれた細菌性バイオフィルムの集団が形成される。尿路感染症(UTI)の一次的な原因であるバイオフィルム形成性先駆細菌は、典型的には表皮ブドウ球菌、大腸菌、又はフェカリス菌であり、大腸菌はCAUTIの原因として非常に重要である。カテーテル挿入時間が長いと、緑膿菌、P.ミラビリス、及び肺炎桿菌など他の種が現れる。これら後半では、カテーテルが定位置にある限り、抗生物質による治療はより難しい。3)ウレアーゼを産生可能な細菌種を含んで成長するバイオフィルムが存在すると、尿素に対するウレアーゼの作用により尿のpHの上昇につながる。4)尿がアルカリ性になるにつれ、カテーテル表面上で成長しているバイオフィルムマトリックス内にリン酸カルシウム及びリン酸マグネシウムアンモニウムの結晶が沈殿し、蓄積される。5)アルカリ性尿中の結晶形成、及びバイオフィルムの成長が継続すると、深刻な外皮形成と、最終的にはデバイスの閉塞につながり、患者への再カテーテル挿入(re-catherization)を余儀なくさせる。したがって、カテーテル上のコロニー形成及びバイオフィルム形成の予防は、CAUTI並びに血流感染(BSI)の予防において大きな役割を果たし得る。
【0005】
抗菌性薬物送達システムの組成物又はその利用のいずれかにより、本質的に抗菌性である表面を提供する試みが行われてきた。これらの表面は、1)送達システムとして用いるとき、抗菌剤、つまり活性物質が、医療用物品の耐用期間が終わる前にかなり使い果たされ得る、2)死細胞、尿道中の高有機負荷、及びその他吸着した生体材料が表面の抗菌特性を遮蔽するため、表面の抗菌特性が最終的に弱まる、及び3)カテーテル材料中、又は外部コーティング中の抗菌剤が十分に溶出されない、という大きな3つの理由により、バイオフィルム形成を抑えるには効果が不十分である場合がある。
【0006】
したがって、ある医療機器、及び特に湿潤な哺乳類組織と接触するものの表面は、適切な水分量、温度、栄養素、及び受容表面が利用できるために繁殖し伝搬する細菌類、真菌類、藻類、及びその他単細胞微生物(microrganisms)にとって、好適な生息地を提供する。これらの生物が代謝すると、副生成物である化学物質を産生する。これら化学物質は、毒素及び/又は発熱原である場合がある。したがって、これらの微生物、並びにその代謝産物は、軽微な組織炎症から、より重篤な毒性反応及び疾患までに至る重大な健康リスクをユーザーにもたらす場合がある。
【0007】
更に問題を複雑にしているのは、多くの静脈アクセスカテーテル、尿道カテーテル、気管内チューブ、経鼻胃管及びその他患者接触デバイスが、可撓性であり、かつ多くの場合にエラストマープラスチック製であることである。更に、挿入及び使用の間、これらデバイスを繰り返し動かしたり曲げたりすることがある。このような表面に接着させるのは非常に難しい場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
微生物による物品のコロニー形成を予防する平易な手段、及び/又は可撓性であるエラストマーの基材に対して耐久的に接着する形で表面に配置されるようになる生存微生物数を低減する手段に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
哺乳類皮膚又は粘膜(muscosal)組織又は内部組織と意図的に接触される表面上の生存微生物数を制御する一般的な必要性を考慮して、本開示は、いくつかの実施形態において、可撓性の及び/又はエラストマーの表面に結合するコーティングを形成するために使用できる抗菌性ポリマー組成物を提供する。抗菌性ポリマーは、適用される物品に他の望ましい特性(例えば、抗接着性、潤滑性、つまり挿入を容易にするための摩擦係数の低さ、表面エネルギーの増加など)を付与する化学的要素を含んでよい。これらカチオン性シランは、接着された実質的に非浸出性組成物の抗菌活性を好ましくは付与し、又は改善する。いくつかの実施形態では、ポリマーの構成成分は、その光学的透明特性によって選択してよい。
【0010】
したがって、一態様では、本開示は物品を提供する。物品は、複数のペンダント基を有するビニルポリマーを含むコーティング組成物と、患者接触第1表面及び第2表面を有するエラストマー第1基材を含む医療機器と、を含んでよい。ペンダント基は、カチオン性要素を含む第1ペンダント基と、非極性要素を含む第2ペンダント基と、第1有機ケイ素要素を含む第3ペンダント基と、を含んでよい。ビニルポリマーは、患者接触第1表面に耐久的に接着することができる。コーティング組成物は、無機充填剤を本質的に含まなくてよい。
【0011】
物品の任意の上記実施形態では、カチオン性要素は、第四級アミン要素、プロトン化した第三級アミン要素、及びプロトン化した第二級アミン要素からなる群から選択されてよい。任意の上記実施形態では、有機ケイ素要素はオルガノシラン又はオルガノシランエステルを含む。
【0012】
任意の上記実施形態では、コーティング組成物を付着させ、コーティング組成物中に存在する追加の遊離シランで硬化できる。いくつかの実施形態では、追加の遊離シランは、6〜22個の炭素原子の少なくとも1つの直鎖又は分枝鎖アルキルを有する第四級アンモニウムシラン又はプロトン化した第三級アミノシランであってよい。任意の上記実施形態では、コーティング組成物は接着促進成分を更に含んでよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、カルボキシレート又はアルコキシレート化学基を含むペンダント基を含まなくてよい。
【0014】
任意の上記実施形態では、ビニルポリマーにおいて、カチオン性アミンモル当量と有機ケイ素モル当量との比は、約0.1:1〜約10:1であってよい。任意の上記実施形態では、ポリマー上のカチオン性基、並びに存在する任意のカチオン性第四級アミノ、プロトン化した第三級アミノ、又はプロトン化した第二級アミノシランに由来の非浸出性カチオン性アミンの合計濃度は、1当量のカチオン性当たりで少なくとも300グラムの不揮発性コーティング組成物であってよく、かつ1当量のカチオン性基当たりで3000グラム以下の不揮発性コーティング組成物であってよい。任意の上記実施形態では、コーティング組成物中に存在するポリマーと任意の遊離シラン上のシラン官能基とに由来するコーティング組成物のシラン当量は、1当量のシラン当たりで少なくとも200グラムの不揮発性コーティング組成物であってよく、かつ1当量のシラン基当たりで4000グラム以下の不揮発性コーティング組成物であってよい。
【0015】
任意の上記実施形態では、少なくとも1つのペンダント要素はフッ素化合物を含んでよい。いくつかの実施形態では、第2ペンダント基はフッ素化合物を含んでよい。
【0016】
任意の上記実施形態では、有機ポリマーが接着される患者接触表面は、ガラス、金属、金属酸化物、セラミックス、又はポリマーの表面であってよい。任意の上記実施形態では、第1基材は、第1表面上に耐久性金属酸化物層を更に含んでよい。
【0017】
任意の上記実施形態では、第1基材の第2表面は第2基材に接着されてよい。いくつかの実施形態では、第1基材は、化学結合、熱結合、接着剤、機械的締結具、又は前述の任意の組み合わせにより第2基材に接着されてよい。任意の上記実施形態では、医療機器は、内視鏡、気管内チューブ、血管内カテーテル、尿道カテーテル、創傷包帯、聴診器のダイアフラム、聴診器の管部、人工呼吸器のチューブ、患者の栄養チューブ、外科用ドレーン、及びその他の哺乳類組織との接触を意図した平坦な、管状の又は成形された可撓性の医療機器を含む。
【0018】
別の態様では、本開示は物品を提供する。物品は、複数のペンダント基を有するビニルポリマーを含むコーティング組成物と、体液接触第1表面及び第2表面を有するエラストマー第1基材を含む医療機器と、を含んでよい。ペンダント基は、カチオン性要素を含む第1ペンダント基と、非極性要素を含む第2ペンダント基と、第1有機ケイ素要素を含む第3ペンダント基と、を含んでよい。ビニルポリマーは、体液接触第1表面に耐久的に接着することができる。コーティング組成物は、無機充填剤を本質的に含まなくてよい。
【0019】
任意の上記実施形態の物品では、カチオン性要素は、第四級アミン要素、プロトン化した第三級アミン要素、及びプロトン化した第二級アミン要素からなる群から選択されてよい。任意の上記実施形態では、有機ケイ素要素はオルガノシラン又はオルガノシランエステルを含む。
【0020】
任意の上記実施形態では、コーティング組成物を付着させ、コーティング組成物中に存在する追加の遊離シランで硬化できる。いくつかの実施形態では、追加の遊離シランは、6〜22個の炭素原子の少なくとも1つの直鎖又は分枝鎖アルキルを有する第四級アンモニウムシラン又はプロトン化した第三級アミノシランであってよい。任意の上記実施形態では、コーティング組成物は接着促進成分を更に含んでよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、カルボキシレート又はアルコキシレート化学基を含むペンダント基を含まなくてよい。
【0022】
任意の上記実施形態では、ビニルポリマーにおいて、カチオン性アミンモル当量と有機ケイ素モル当量との比は、約0.1:1〜約10:1であってよい。任意の上記実施形態では、ポリマー上のカチオン性基、並びに存在する任意のカチオン性第四級アミノ、プロトン化した第三級アミノ、又はプロトン化した第二級アミノシランに由来の非浸出性カチオン性アミンの合計濃度は、1当量のカチオン性基当たりで少なくとも300グラムの不揮発性コーティング組成物であってよく、1当量のカチオン性基当たりで3000グラム以下の不揮発性コーティング組成物であってよい。任意の上記実施形態では、コーティング組成物中に存在するポリマー上のシラン官能性基と任意の遊離シラン上のシラン官能基とに由来するコーティング組成物のシラン当量は、1当量のシラン当たりで少なくとも200グラムの不揮発性コーティング組成物であってよく、かつ1当量のシラン基当たりで4000グラム以下の不揮発性コーティング組成物であってよい。
【0023】
任意の上記実施形態では、少なくとも1つのペンダント要素はフッ素化合物を含んでよい。いくつかの実施形態では、第2ペンダント基はフッ素化合物を含んでよい。
【0024】
任意の上記実施形態では、有機ポリマーが接着される体液接触表面は、ガラス、金属、金属酸化物、セラミックス、又はポリマーの表面であってよい。任意の上記実施形態では、第1基材は、第1表面上に耐久性金属酸化物層を更に含んでよい。
【0025】
任意の上記実施形態では、第1基材の第2表面は第2基材に接着されてよい。いくつかの実施形態では、第1基材は、化学結合、熱結合、接着剤、機械的締結具、又は前述の任意の組み合わせにより第2基材に接着されてよい。
【0026】
更に別の態様では、本開示はコーティングされた物品の製造方法を提供する。この方法は、複数のペンダント基を有するビニルポリマーを含むコーティング組成物を形成する工程と、ポリマーを第1表面に接着するのに好適な条件下で、コーティング組成物を第1基材の第1表面と接触させる工程と、を含んでよい。この複数のペンダント基は、第1カチオン性要素を含む第1ペンダント基と、非極性要素を含む第2ペンダント基と、第1有機ケイ素要素を含む第3ペンダント基と、を含んでよい。この組成物は、無機充填剤を本質的に含まなくてよい。第1基材は、医療機器のエラストマー構成要素を含んでよい。本方法の任意の実施形態では、第1コーティング組成物を形成する工程は、溶媒中でのビニルポリマーの乳濁液又は分散液を形成する工程を含んでよい。本方法の任意の上記実施形態では、ビニルポリマーは、第3ペンダント基が非極性要素を含む第3ペンダント基を更に含んでよい。本方法の任意の上記実施形態では、第1コーティング組成物を形成する工程は、硬化過程のシランの加水分解及び/又は縮合反応を促進する触媒化合物を含む第1コーティング組成物を形成する工程を更に含んでよい。本方法の任意の上記実施形態では、第1コーティング組成物を形成する工程は、接着促進剤を含む第1コーティング組成物を形成する工程を更に含んでよい。本方法の任意の上記実施形態では、第1コーティング組成物を形成する工程は、遊離の第2カチオン性シラン要素及び/又は第2カチオン性要素を含む第1コーティング組成物を形成する工程を更に含んでよい。任意の上記実施形態では、この方法は、第1コーティング組成物を表面と接触させる工程の後に、表面をすすぐ工程を更に含んでよい。任意の上記実施形態では、この方法は、第1基材を第2基材に結合する工程を更に含んでよい。任意の上記実施形態では、この方法は、第1コーティング組成物を第1基材の第1表面と接触させる工程に先立ち、第2コーティング組成物を第1基材の第1表面と接触させる工程を更に含んでよい。更に別の態様では、本開示は、本方法の任意の上記実施形態に従って製造された物品を提供する。
【0027】
更に別の態様では、本開示はコーティングされた物品の製造方法を提供する。この方法は、複数のペンダント基を有するビニルポリマーを含むコーティング組成物を形成する工程と、ポリマーを第1表面に接着するのに好適な条件下で、コーティング組成物を第1基材の第1表面と接触させる工程と、を含んでよい。この複数のペンダント基は、第1カチオン性要素を含む第1ペンダント基と、非極性要素を含む第2ペンダント基と、第1有機ケイ素要素を含む第3ペンダント基と、を含んでよい。この組成物は、無機充填剤を本質的に含まなくてよい。第1基材は、体液接触するエラストマー基材を含んでよい。本方法の任意の実施形態では、第1コーティング組成物を形成する工程は、溶媒中でのビニルポリマーの乳濁液又は分散液を形成する工程を含んでよい。本方法の任意の実施形態では、ビニルポリマーは、第3ペンダント基が非極性要素を含む第3ペンダント基を更に含んでよい。本方法の任意の実施形態では、第1コーティング組成物を形成する工程は、硬化過程のシランの加水分解及び/又は縮合反応を促進する触媒化合物を含む第1コーティング組成物を形成する工程を更に含んでよい。本方法の任意の実施形態では、第1コーティング組成物を形成する工程は、接着促進剤を含む第1コーティング組成物を形成する工程を更に含んでよい。本方法の任意の実施形態では、第1コーティング組成物を形成する工程は、遊離の第2カチオン性シラン要素及び/又は第2カチオン性要素を含む第1コーティング組成物を形成する工程を更に含んでよい。任意の実施形態では、この方法は、第1コーティング組成物を表面と接触させる工程の後に、表面をすすぐ工程を更に含んでよい。任意の実施形態では、この方法は、第1基材を第2基材に結合する工程を更に含んでよい。任意の実施形態では、この方法は、第1コーティング組成物を第1基材の第1表面と接触させる工程に先立ち、第2コーティング組成物を第1基材の第1表面と接触させる工程を更に含んでよい。更に別の態様では、本開示は、本方法の任意の実施形態に従って製造された物品を提供する。
【0028】
更に別の態様では、本開示はコーティングを含む医療機器物品を提供する。このコーティングは、遊離シラン要素と、複数のペンダント基を有するビニルポリマーとを含む組成物から誘導できる。ペンダント基は、第1の第四級アンモニウム要素を含む第1ペンダント基と、第1有機ケイ素要素を含む第2ペンダント基と、を含んでよい。ビニルポリマーは、表面に耐久的に接着することができる。任意の実施形態では、組成物は無機充填剤を本質的に含まなくてよい。任意の実施形態では、遊離シランは第四級アンモニウムシランであってよい。任意の実施形態では、遊離の第四級アンモニウムシランは、第四級アミンに結合される少なくとも1つの直鎖又は分枝鎖のC8〜C22アルキル基を含んでよい。
【0029】
「好ましい」及び「好ましくは」という語は、特定の状況下で特定の効果をもたらしうる本発明の実施形態のことを指して言う。しかしながら、同じ、又は他の状況下において他の実施形態が好ましい場合もある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の引用は、他の実施形態が有用ではないことを示唆するものではなく、他の実施形態を本発明の範囲から除外することを目的とするものではない。
【0030】
本明細書で使用するところの「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」及び「1つ以上の」は、互換可能に使用される。したがって、例えば、「a」ケイ酸塩含有基材を含む物品は、その物品が「1つ以上の」ケイ酸塩含有基材を含み得ることを意味するものと解釈され得る。
【0031】
用語「及び/又は」は、1つ若しくは全ての列挙した要素、又は列挙した要素のいずれかの2つ以上の組み合わせを意味する。
【0032】
また、本明細書における端点による数の範囲の記載には、その範囲に含まれる全ての数が含まれる(例えば、1〜5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5、などが含まれる)。
【0033】
本発明の上記の「課題を解決するための手段」は、本発明が開示する各実施形態又はあらゆる実施例を説明することを意図したものではない。以下の説明は、実例となる実施形態をより詳細に例示するものである。本明細書にわたっていくつかの箇所で、実施例の一覧を通してガイダンスを提供するが、実施例は様々な組合せにおいて使用できる。それぞれの場合において記載される一覧はあくまで代表的な群として与えられるものであって、排他的な一覧として解釈されるべきものではない。
【発明を実施するための形態】
【0034】
複数の異なるペンダント基を含有し得る高分子材料が提供される。本明細書で用いるとき「ペンダント基」は、ポリマーの主要な骨格鎖の一部ではない基を指す。高分子材料及び高分子材料を含有する組成物の製造方法もまた提供される。加えて、高分子材料を含有するコーティングを有する物品が提供される。コーティング中では、かかる高分子材料は、多くの場合、架橋されている。コーティングは、抗菌性、非浸出性、耐久的抗菌性、可撓性であるエラストマーの基材に対する耐久的接着性、非水溶性、摩耗耐性、又はこれらの任意の組み合わせであることができる。
【0035】
本発明の実施形態を詳細に説明する前に、本発明はその応用において、下記の説明文に記載されるか又は付属の図面に示される構成の細部及び要素の配置に限定されないものである点は理解されるべきである。本発明には他の実施形態が可能であり、本発明は様々な方法で実施又は実行することが可能である。また、本明細書で使用する用語及び専門用語は、説明を目的としたものであり、発明を限定するものとして見なされるべきでない点は理解されるべきである。本明細書における、「including(含む、有する)」、「comprising(備える、有する、含む)」、「containing(含有する、含む)」、又は「having(有する)」及びこれらの変形の使用は、その後に列記される項目及びその均等物、並びに更なる項目を包含するものとする。特に特定又は限定されないかぎり、「支持された」及び「結合された」なる用語並びにその変形は広義の意味で用いられ、直接的及び間接的な支持及び結合の両方を包含するものである。他の実施形態が利用されてもよく、また、構造的又は論理的な変更が、本開示の範囲から逸脱することなくなされ得ることを理解されたい。更に、「前方」、「後方」、「上」、「下」といった用語は、各要素の互いに対する関係を説明するためにのみ用いられるものであり、装置の特定の向きを説明すること、装置に必要とされる若しくは求められる向きを指示又は示唆すること、又は本明細書に記載される発明が、使用時にどのように使用、装着、表示、又は配置されるかを特定することを目的とするものでは決してない。
【0036】
用語「患者接触表面」は、哺乳類の皮膚、組織、体液、自然の若しくは人工の身体開口部(例えば、静脈内アクセス開口部、外科的開口部)又は体腔への接触が意図される医療機器の表面を意味する。
【0037】
用語「抗菌性」は、微生物を殺菌する、又は微生物の成長を阻害する材料を指す。
【0038】
用語「カチオン性」又は「カチオン性基」は、第四級アミン基、プロトン化した第三級アミン基、及びプロトン化した第二級アミン基などの正電荷を有するアミン基を指す。これらの基は、1以上の負電荷を有する任意の好適な対イオンであってよい、負に帯電した対イオンを付随し得ると理解される。典型的な対イオンとして、ハライド、有機カルボキシレート、サルフェート、及びα−及びβ−ヒドロキシ酸を含むホスフェート、サルフェート、メトサルフェート、アルキルサルフェート、ホスフェートなどが挙げられる。
【0039】
用語「シラン」は、ケイ素原子に結合した4つの基を有する化合物を指す。すなわち、シランはケイ素含有基を有する。
【0040】
用語「アルコキシシリル」は、ケイ素原子と直接結合したアルコキシ基を有する、ケイ素含有基を指す。例えばアルコキシシリルは、式−Si(OR)(Rx)であってよく、式中、Rはアルキルであり、各Rxは独立してヒドロキシ、アルコキシ、アルキル、ペルフルオロアルキル、アリール、アラルキルであり、又はシリコーンの一部である。
【0041】
用語「エステル等価物」は、熱的及び/又は触媒的にR’’OHによって置換可能なシランアミド(RNR’Si)、シランアルカノエート(RC(O)OSi)、Si−O−Si、SiN(R)−Si、SiSR及びRCONR’Siなどの基を意味する。R及びR’は独立して選択され、これらとして水素、アルキル、アリールアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、並びにアルコキシアルキル、アミノアルキル、及びアルキルアミノアルキルなどの置換類縁体を挙げることができる。R’’はR及びR’と同じであってよいが、Hであってはならない。
【0042】
用語「ヒドロキシルシリル」は、ケイ素原子と直接結合したヒドロキシル基を有する、ケイ素含有基を指す。例えばヒドロキシルシリルは、式−Si(OH)(Rx)であってよく、式中、Rxはアルキル、ペルフルオロアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ、ヒドロキシルであり、又はシリコーンの一部である。ヒドロキシシリル基を有する化合物は、多くの場合、「シラノール」と呼ばれる。シラノールはシランの部分集合である。
【0043】
用語「シリコーン」又は「シロキサン」は、ケイ素−酸素−ケイ素の連結基を含有する部分を指す。任意の他の適した基がケイ素原子に結合し得る。このような連結は、第1シラン(例えば、第1アルコキシシリル基又は第1ヒドロキシシリル基などの、第1ケイ素含有基)と第2シラン(例えば、第2アルコキシシリル基又は第2ヒドロキシシリル基などの、第2ケイ素含有基)との反応からもたらされ得る。いくつかの実施形態では、シリコーンは「シリコーンネットワーク」の一部分である。シリコーンネットワークは、第1シラン(すなわち、第1ケイ素含有基)が、第2シラン(例えば、第2ケイ素含有基)と、第3シラン(例えば、第3アルコキシシリル基又は第3ヒドロキシシリル基などの第3ケイ素含有基)とで反応して、あるいは第1シラン(例えば、第1ケイ素含有基)が、第2シラン(例えば、第2ケイ素含有基)と、第3シラン(例えば、第3ケイ素含有基)と、第4シラン(例えば、第4アルコキシリル基又は第4ヒドロキシシリル基などの第4ケイ素含有基)とで反応して得られる。
【0044】
本明細書で使用するとき、表現「複数のペンダント基を有する高分子材料」、「多数のペンダント基を有する高分子材料」、又は類似の表現は、少なくとも3種の異なるペンダント基を有する高分子材料を指すために互換的に使用される。多数のペンダント基には、(1)カチオン性基を含有する第1ペンダント基、(2)非極性基を含有する第2ペンダント基、及び(3)オルガノシラン基を有する第3ペンダント基が含まれる。多数のペンダント基を有する高分子材料は、多数のオルガノシラン基の縮合反応により架橋することができる。更に本高分子材料は、シラノール基、又は好ましくは複数のシラノール基などの金属水酸化物基を含む表面に共有結合され得る。
【0045】
本明細書で使用するとき、用語「体液接触基材」は、血液、尿、糞便、唾液、創傷滲出物、髄液などが挙げられるがこれらに限定されない哺乳類の体液と1回以上接触し得る任意の表面を指す。例として、カテーテルなどの使い捨て医療機器、並びに患者の体温計などの耐久性表面、ベッドレール、呼び出しボタン、ドアノブ、壁、カーテン、トレイ、サプライカート、静注用ポンプ、リード線、無影灯、シンク、手術室又は集中治療室で使用される医療機器、などの病室中で接触が多い表面が挙げられる。
【0046】
本明細書で用いるとき、用語「非浸出」は、以下に記載する抗菌剤浸出試験手順により測定するとき、水性液体と接触中に抗菌性組成物がポリマーコーティングされた組成物から実質的に拡散されない又は消失しないことを意味する。
【0047】
本明細書で使用するとき、「遊離シラン」は、ビニル基を含まず、故にビニルポリマー主鎖と反応できないシラン化合物を指す。ただし遊離シランは、ビニルポリマー上のシランペンダント基と反応できる。いくつかの実施形態では、「遊離シラン」は抗菌特性を有してよい。代表的な抗菌性遊離シランは、米国特許第5,013,459号(第7段30行目から第9段9行目まで)に見出すことができ、その全体は参考として本明細書に組み込まれる。
【0048】
本開示は概して、抗菌剤コーティングを含む医療機器と、抗菌剤コーティングを含むかかる機器の製造方法とを目的とする。機器の多くは患者接触表面を更に含む。いくつかの実施形態では、基材は可撓性の又はエラストマーの基材を含む。
【0049】
本明細書で用いるとき、可撓性は、手で容易に90度曲げられる材料を指す。典型的には、その材料に目に見える損傷を与えずに、3回以上連続して手で容易に180度折り畳むことができる。
【0050】
本明細書で用いるとき、「エラストマー」又は「エラストマーの」は、可逆的に少なくとも25%延ばせる材料を指す。好ましいエラストマーは、可逆的に少なくとも50%延ばせるものである。この程度まで引き伸ばすと、エラストマーは30秒未満で元の長さにほぼ完全に(例えば95%)回復する。
【0051】
抗菌性ポリマー:
本開示は、抗菌性ポリマーを提供する。抗菌性ポリマーは、好適な水性又は有機溶媒中で、ポリマー内で1つ以上の機能的な目的を果たす化学基を含むモノマーを反応させることにより形成される。
【0052】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるように、抗菌性ポリマーを基材上にコーティング(例えばフィルム又は層として)できる。ポリマーは、ポリマー(例えば、タッチパネルの表面上)と接触する微生物を死滅又は阻止できる抗菌活性を有する。抗菌活性は、例えば、JIS−Z 2801(Japanese Industrial Standards;Japanese Standards Association;Tokyo,Japan)などの標準化された抗菌力耐性検査法を用いて試験できる。いくつかの実施形態では、ポリマーは更に摩耗耐性特性を有してよい。比較的硬い表面にコーティングされるときのポリマーの摩耗耐性特性は、ASTM試験法D 7027.26676を用いて試験できる。
【0053】
本開示のポリマーは、得られるポリマーを可溶化(solublize)する、又は分散液を作製する任意の好適な溶媒(例えば有機溶媒)中に形成される。好適な有機溶媒は、約200℃以下の沸点を有し、溶媒の特性を実質的に損なわずにごく少量(<10%、w/w)の酸性化水と混合できる。酸性化水を溶媒に加えると、シラン基の完全な加水分解を促進し、ポリマー内及びポリマーと基材との間の−Si−O−Si−結合の形成が最適化される。これにより、基材上の抗菌剤コーティングの耐久性が改善される結果になる。好ましくは、溶媒の引火点は100℃以下である。好適な有機溶媒の非限定例として、アルコール(例えば、イソプロピルアルコール、メタノール)、MEK、アセトン、DMF、DMAC(ジメチルアセトアミド)、エチルアセテート、THFなどが挙げられる。モノマーを溶媒と混合し、反応させて抗菌性ポリマーを形成する。好適なモノマーとして、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、ビニルモノマー、及びオレフィンモノマーの誘導体が挙げられる。モノマーは、重合反応後にポリマー主鎖からのペンダントになる化学基を含む。ペンダント基として、第1カチオン性基、任意の非極性基、及び第1オルガノシラン基(例えばトリメトキシシリルプロパン)が挙げられる。
【0054】
構造(I)に示すポリマーは、本開示に従って、アクリレート又はオレフィンモノマーから作製された抗菌性ポリマーの一部を表したものである。
【0055】
【化1】
【0056】
本開示のポリマーは、抗菌活性を有するペンダント基を含む。抗菌活性を有する基は、ポリマーをコーティングする物品に望ましい特性を選択してよい。例えば、抗菌性基は、実質的な光学的透明度(すなわち、狭帯域又は広帯域の波長にわたって高い光透過性、低ヘイズ)又は低摩擦係数を有するポリマーを提供するために選択されてよい。これらの特性は、当業者により、例えば本明細書に開示される方法で容易に測定できる。構造(I)の代表的なポリマーでは、第1カチオン性ペンダント基はカチオン性部分Rを含み、R=H又はCHであり、
=COO、CO、C〜C12アルキル、アリールであり、
=以下の式
−(CH−N(R)(R)(R)(X)(式中、
n=1〜3(すなわち、C〜Cのアルキル基)であり、
、R、及びRは独立してアルキル(C〜C22)、アリール、又は環状構造を形成する化学基の組み合わせであり、R、R、及びRのうち最大2つがHであってよく、
X=Cl、Br、N(SOCF、BF、OSO、OSOCF、OSOCHであるを有するカチオン性基であるモノマーから誘導できる。
【0057】
は、参考として本明細書に組み込まれる米国特許第5408022号に開示されるような別の抗菌性第四級アンモニウム基から選択されてもよい。
【0058】
第1カチオン性ペンダント基は、ポリマーに結合した抗菌剤の殺菌活性部が水に不溶性である(すなわち、ポリマーが水性組成物と接触するとき抗菌剤が非浸出である)ように、ポリマーに結合(例えば共有結合)される。好適な抗菌性カチオン性化合物として、任意のプロトン化した第二級アミン、プロトン化した第三級アミン、又は少なくとも1つのC〜C22直鎖又は分枝鎖アルキル若しくはアルケニル基を有する第四級アミンが挙げられる。本開示の組成物中の第四級アミン基として、本明細書に記載されるようなポリマー中のペンダント基である第四級アミン基、並びに遊離の第四級アミン基を挙げてよい。
【0059】
ポリマー及び/又は抗菌性シランにおける好適な抗菌性カチオン性要素の非限定例として、ヘキサデシルジメチルエチルアミン、オクタデシルジメチルエチルアミン、ヘキサデシルジメチルプロピルアミン、ヘキサデシルジメチルアミン(hexadecydimethylamine)塩酸塩、ラウリルジメチルアミン臭化水素酸塩、及びオクタデシルジメチルプロピルアミンが挙げられる。
【0060】
構造(I)の代表的なポリマーにおいて、非極性ペンダント基は非極性部分Rを含み、Rが、非置換又は置換アルキル基(C〜C22)、アリール基、ペルフルオロアルキルスルホンアミド、ペルフルオロアルキルスルホン、ペルフルオロアルキルカルボキサミド、対応する化学式:Rff(Xn1及び(Xn1ff2(Xn1)(式中、Rffはフルオロアルキルであり、Rff2はフルオロアルキレンであり、Qは価数が少なくとも2の連結基であり、共有結合、アルキレン、アリーレン、アラルキレン、アルカリレン基、O、N、及びSなどのヘテロ原子を任意選択で、並びにカルボニル又はスルホニル、及びこれらの組み合わせなどのヘテロ原子含有官能基を任意選択で含有する直鎖又は分枝鎖又は環状含有連結基からなる群から選択され、Xは(メタ)アクリル、−SH、アリル、又はビニル基から選択されるフリーラジカル反応性基であり、n1は独立して1〜3である)であるフリーラジカル反応性フルオロアルキル又はフルオロアルキレン基含有相溶化剤の類であるモノマーから誘導できる。典型的なQ基として、−SON(R)CHCH−、−SON(CHCH−、−(CH−、−CHO(CH−、及び−C(O)NRCHCH−(式中、RはH又は1〜4個の炭素原子の低級アルキルであり、mは1〜6である)が挙げられる。好ましくは、フルオロアルキル又はフルオロアルキレン基はペルフルオロアルキル又はペルフルオロアルキレン基である。これらの基準に合致し、本発明に有用な代表的非限定的ペルフルオロブチル−置換アクリレート相溶化剤として、1つ以上のCSON(CH)CHCHOC(O)CH=CH、CSON(CHCHOC(O)CH=CH、又はCSON(CH)CHCHOC(O)C(CH)=CHが挙げられる。コーティング層の組成物中で使用できる好ましいフルオロアルキル−置換モノマーの非限定的な一例は、Lancaster Synthesis(Windham,New Hampshire)から入手可能な(1H,1H,2H,2H)−ペルフルオロデシルアクリレートである。コーティング層の組成物中で更に使用できるその他多くのペルフルオロアルキル部分を有する(メタ)アクリル化合物は、米国特許第4,968,116号(Hulme−Loweら)及び米国特許第5,239,026号(ペルフルオロシクロヘキシルメチルメタクリレートを含む)(Babiradら)に言及されており、参考として本明細書に組み込まれる。これらの基準に合致し、使用可能なその他のフッ素化合物である(メタ)アクリレートとして、例えば、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサンジオールジアクリレート及びω−ヒドロ2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルアクリレート(H−C−CHO−C(O)−CH=CH)が挙げられる。単独で、又は混合物として使用できるその他のフッ素化合物である(メタ)アクリレートは、米国特許第6,238,798号(Kangら)に記載されており、参考として本明細書に組み込まれる。
【0061】
使用可能なその他のモノマーは、フルオロアルキル−又はフルオロアルキレン−置換チオール又はポリチオールである。この種のモノマーの非限定例として、1つ以上のCSON(CH)CHCHOC(O)CHSH、CSON(CH)CHCHOC(O)CHCHSH、CSON(CH)CHCHSH、及びCSON(CH)CH(OC(O)CHSH)CHOC(O)CHSHが挙げられる。
【0062】
別の好ましい実施形態として、コーティング組成物には、少なくとも1つの一価のポリ(ヘキサフルオロプロピレンオキシド)(HFPO)部分を持つ1つ以上のマルチ−オレフィン性化合物、及び任意選択で相溶化剤、例えば、CSON(CH)CHCHOC(O)CH=CH、CSON(CHCHOC(O)CH=CH、又はCSON(CH)CHCHOC(O)C(CH)=CH、アルコール、オレフィン、チオール又はポリチオールなどのフルオロアルキル−又はフルオロアルキレン−置換モノ又はマルチ−アクリレートがフルオロポリマー硬化性組成物に添加される。チオール又はポリチオール類の相溶化剤の非限定例として、1つ以上のCSON(CH)CHCHOC(O)CHSH、CSON(CH)CHCHOC(O)CHCHSH、CSON(CH)CHCHSH、及びCSON(CH)CH(OC(O)CHSH)CHOC(O)CHSHが挙げられる。
【0063】
実施例で用いられるとき、特に断りのない限り、「HFPO−」は、メチルエステルF(CF(CF)CFO)CF(CF)C(O)OCHの末端基F(CF(CF)CFO)CF(CF)−(式中、「a」の平均は約6.8であり、メチルエステルは1,211g/モルの平均分子量を有する)を指し、その開示が参考として本明細書に組み込まれる米国特許第3,250,808号(Mooreら)で報告される方法に従って、分別蒸留による精製を用いて調製できる。
【0064】
少なくとも1つの一価のポリ(ヘキサフルオロプロピレンオキシド)(HFPO)部分を持つモノ−又はマルチ−オレフィン性化合物は、好ましくはマルチアクリレートの形態である。これらの材料は、式:RfpeQ(X)のものであり、式中、Rfpeは一価のHFPO部分の残基であり、Qはアルキレン、アリーレン、アリーレン−アルキレン、又はアルキレン−アリーレン基を含む連結基であり、O、N、及びSなどのヘテロ原子を含有してよい直鎖又は分枝鎖連結基を含んでよく、Xはメタ(アクリル)、アリル、又はビニル基から選択されるフリーラジカル反応性基であり、nは2〜3である。典型的なQ基として、−(CH−、−CHO(CH−、及び−C(O)NRCHCH−(式中、RはH又は1〜4個の炭素原子の低級アルキルであり、mは1〜6である)が挙げられる。
【0065】
少なくとも1つの一価のポリ(ヘキサフルオロプロピレンオキシド)(HFPO)部分を持つマルチ(メタ)アクリル化合物の一種は、2004年5月7日に出願された「Fluoropolyether Polyacryl Compounds」という表題の米国特許仮出願第60/569,351号(整理番号59795US002)(この開示は参考として本明細書に組み込まれる)に記載される化合物を含む。
【0066】
少なくとも1つの一価のポリ(ヘキサフルオロプロピレンオキシド)(HFPO)部分を持つその他のモノ−及びマルチ−(メタ)アクリル化合物は、2004年5月7日に出願された「Polymerizable Compositions,Methods Of Making The Same,And Composite Articles Therefrom」という表題の米国特許出願第10/841,792号(この開示は参考として本明細書に組み込まれる)に記載される、HFPOアミン誘導体のマルチアクリレートとのマイケル付加物である化合物を含む。
【0067】
任意の非極性ペンダント基は、抗菌性ポリマーの相対的疎水性を高める化学基である。非極性ペンダント基は、ポリマーの表面エネルギーに影響を与える能力によって選択される。特に、非極性ペンダント基は、低表面エネルギーポリマーを付与するよう選択される。また、硬表面(例えばガラス)上にポリマーがコーティングされると、非極性ペンダント基はポリマーの耐引っかき性を高めることもできる。好適な非極性基の非限定例として、直鎖又は分枝鎖アルカン(例えば、イソオクタン、イソブタン)、アルカリル、アラルキル、及び芳香族基が挙げられる。
【0068】
構造(I)の代表的なポリマーでは、第1オルガノシランペンダント基はシロキサン部分Rを含み、
=(CH)m−Si(OR10であり、
m=1〜6(すなわち、C〜Cのアルキル基)であり、
10=C〜Cのアルキル基であるモノマーから誘導できる。
【0069】
第1オルガノシランペンダント基としてケイ素含有基が挙げられる。このペンダント基は、抗菌性高分子材料を架橋し、抗菌性高分子材料を基材に結合し、第2オルガノシランを抗菌性ポリマーに結合し、又はポリマーに前述の結合形態の任意の組み合わせを実行する能力を付与することができる。好適なオルガノシランペンダント基の非限定例は、メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン中にあるプロピルトリメトキシシラン基である。
【0070】
構造(I)は、異なるペンダント基を有する3つの連続するモノマーを含む代表的な抗菌性ポリマーの一部を示しているが、本開示の抗菌性ポリマーは、重合反応及び/又は重合反応条件における各モノマー単位の割合によって影響されるモノマーサブユニット(a、b、c、及び任意選択でd)の数及び順序を有する、ランダムコポリマーであることが理解されるであろう。
【0071】
本開示の抗菌性ポリマーは、カチオン性、非極性、及びオルガノシランのペンダント基に加え、任意選択で極性要素を含む第4のペンダント基を含むことができる。極性ペンダント基は、抗菌性ポリマーを特定の基材に接着させる接着特性を付与する。極性ペンダント基が抗菌性ポリマーの基材への接着を促進するので、これにより有利に基材上ポリマーの耐久性を改善できる。いくつかの実施形態では、極性ペンダント基はポリマーの抗菌活性を強化できる。好適な極性ペンダント基として、例えば、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、及びアルコール基が挙げられる。
【0072】
いくつかの実施形態では、本開示の抗菌性ポリマーは、カルボキシレート又はアルコキシレート化学基を含むペンダント基を含まない。
【0073】
本開示の抗菌性ポリマーは、有機溶媒中でペンダント基を含むモノマーを反応させることにより合成できる。この反応に好適なモノマーとして、例えば、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、アクリルアミド(acylamide)及びメタクリルアミドモノマー、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。この反応に好適なその他のモノマーとして、ビニルモノマー及びオレフィンモノマーが挙げられる。
【0074】
モノマーは、重量パーセントに基づき、反応中で様々な比率で混合してよい。いくつかの実施形態では、カチオン性ペンダント基を含むモノマーは、反応してポリマーを形成するモノマーの約20%〜約80%を構成してよい。いくつかの実施形態では、カチオン性ペンダント基を含むモノマーは、反応してポリマーを形成するモノマーの20%超を構成してよい。いくつかの実施形態では、カチオン性ペンダント基を含むモノマーは、反応してポリマーを形成するモノマーの30%超を構成してよい。いくつかの実施形態では、カチオン性ペンダント基を含むモノマーは、反応してポリマーを形成するモノマーの40%超を構成してよい。いくつかの実施形態では、カチオン性ペンダント基を含むモノマーは、反応してポリマーを形成するモノマーの50%超を構成してよい。いくつかの実施形態では、カチオン性ペンダント基を含むモノマーは、反応してポリマーを形成するモノマーの60%超を構成してよい。いくつかの実施形態では、カチオン性ペンダント基を含むモノマーは、反応してポリマーを形成するモノマーの70%超を構成してよい。いくつかの実施形態では、カチオン性ペンダント基を含むモノマーは、反応してポリマーを形成するモノマーの70%〜80%を構成してよい。一部のカチオン性モノマーは非荷電状態で反応する場合もあるが、重量%の算出はカチオン性形態に基づく。例えば、第三級アミンアクリレートは、第三級アミンとして反応され、続いて酸によりプロトン化され得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、非極性ペンダント基を含むモノマーは、反応してポリマーを形成するモノマーの約20%〜約60%を構成してよい。いくつかの実施形態では、非極性ペンダント基を含むモノマーは、反応してポリマーを形成するモノマーの20%超を構成してよい。いくつかの実施形態では、非極性ペンダント基を含むモノマーは、反応してポリマーを形成するモノマーの30%超を構成してよい。いくつかの実施形態では、非極性ペンダント基を含むモノマーは、反応してポリマーを形成するモノマーの30%〜40%を構成してよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、オルガノシランペンダント基を含むモノマーは、反応してポリマーを形成するモノマーの約1%〜約20%を構成してよい。いくつかの実施形態では、オルガノシランペンダント基を含むモノマーは、反応してポリマーを形成するモノマーの2%超を構成してよい。いくつかの実施形態では、オルガノシランペンダント基を含むモノマーは、反応してポリマーを形成するモノマーの5%超を構成してよい。いくつかの実施形態では、オルガノシランペンダント基を含むモノマーは、反応してポリマーを形成するモノマーの10%超を構成してよい。いくつかの実施形態では、オルガノシランペンダント基を含むモノマーは、反応してポリマーを形成するモノマーの15%超を構成してよい。いくつかの実施形態では、オルガノシランペンダント基を含むモノマーは、反応してポリマーを形成するモノマーの15%〜20%を構成してよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、抗菌性ポリマーの調製に用いられる反応混合物は、少なくとも20%のカチオン性ペンダント基を含むモノマー、少なくとも20%の非極性ペンダント基を含むモノマー、及び少なくとも2%のオルガノシランペンダント基を含むモノマーを含む。
【0078】
モノマーは有機溶媒中で混合され、ポリマー形成に好適な条件下で反応される。例えば、反応混合物を窒素パージし、他の溶存気体を除去してよい。いくつかの実施形態では、反応混合物を密封し、加熱し、例えば、少なくとも99.5%のモノマーが十分に重合する時間混合(例えば65℃で混合)してよい。いくつかの実施形態では、追加の反応開始剤(例えば、DuPont(Wilmington,Delaware,USA)からVazo−67の商品名で入手可能な2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル))を混合物に加えて、元の混合物中の任意の未反応モノマーと反応させてよい。モノマーの反応程度は、例えば、混合物中の固体パーセントを算出することにより決定できる。抗菌性ポリマーは、典型的には約25重量パーセント(wt%)に調製された組成物を含む。
【0079】
抗菌性遊離シラン要素:
本発明の特定の好ましい実施形態では、コーティング組成物は更に、コーティングプロセス及び硬化プロセス中にそれ自体と及び/又はポリマーのオルガノシラン要素と反応できる遊離抗菌性シラン要素を含む。好適な抗菌性アミン及び第四級アンモニウム塩シランは、それぞれの全体が参考として組み込まれる米国特許第5,408,022号、同第5,569,732号、及び同第5,013,459号に開示されている。
【0080】
シランは以下の一般式を有する。
【0081】
【化2】
【0082】
一般的には、これらの材料はシランの第四級アンモニウム塩であることに留意しなければならない。本発明の範囲内のほとんどのシランは既知のシランであり、このようなシランを開示する参考文献は非常に多い。このような参考文献の1つ、その全体が参考として本明細書に組み込まれる米国特許第4,259,103号では、ある基材の表面を抗菌性にするシランの使用について説明している。その全体が参考として本明細書に組み込まれる英国特許第1,433,303号は、塗料などに用いて抗菌効果を付与する特定のシランで処理した充填剤の使用を示している。A.J.Isquith,E.A.Abbott and P.A.Walters,Applied Microbiology,Vol.24,No.6,Dec.,1972,pages 859〜863などの多くの公表文献がこのようなシランを開示している。
【0083】
本発明の目的には、シランをそのままで用いることができ、又は溶媒又は水性溶媒の溶液で用いることができる。シランをそのままで用いるとき、本発明のプロセスは、好ましくは少量の水が多少存在する系中で実施する。少量の水が多少存在する系を造ることができない場合、水溶性又は水分散性(water-dispersable)のシランの低分子量加水分解物を使用できる。重要であるのは、生成物の一部であるシランによって生じる任意の効果の耐久性は、シラン分子が表面とある程度反応することを必要とするということである。シランに限っていえば、最も反応性が高い種は、シランに存在するアルコキシ基の加水分解により形成される≡SiOHである。≡SiOH基は、表面と反応し、シランを表面に結合する傾向がある。
【0084】
本発明に好ましいのは、少量の水を多少含有する反応性表面である。「反応性」とは、表面が、本発明のシランの加水分解により生成する一部のシラノールと反応する一部の基を含有する必要があることを意味する。
【0085】
本発明のシラン中のRは、1〜4個の炭素原子のアルキル基である。したがって、本発明でRとして有用であるのは、メチル、エチル、プロピル、及びブチルラジカルである。上記式において、ROはRであってもよい。Rは水素であってもよく、つまりシラノール体、すなわち加水分解物を示す。aの値は0、1又は2であり、R’はメチル又はエチルラジカルである。これらアルキルラジカルが存在するために、先行技術では、対応する溶媒で材料を安定化させる必要があると教示している。したがって、例えばメトキシ基はメタノールを必要とし、エトキシ基はエタノールを必要とする。
【0086】
本発明の目的においてR’’は、1〜4個の炭素原子のアルキレン基である。したがって、R’’は、メチレン、エチレン、プロピレン、及びブチレンなどのアルキレン基であり得る。R’’’、R’’’’、及びRは、1〜18個の炭素のアルキルラジカル、−CH、−CHCHOH、−CHOH、及び−(CHNHC(O)Rviからなる基からそれぞれ独立して選択され、xは2〜10の値を有し、Rviは1〜12個の炭素原子を有するペルフルオロアルキルラジカルである。Xはクロライド、ブロマイド、フロライド、アイオダイド、アセテート又はトシレートである。
【0087】
本発明に好ましいのは、以下の一般式のシランである。
【0088】
【化3】
【0089】
Rはメチル又はエチルであり、aはゼロの値を有し、R’’はプロピレンであり、R’’’はメチル又はエチルであり、R’’’’及びRvは1〜18個の炭素原子を含有するアルキル基から選択され、ここで少なくとも1つのかかる基は9個以上の炭素原子であり、xはクロライド、アセテート又はトシレートのいずれかである。
【0090】
本発明の範囲内の特定のシランは、以下の式で表される。
【0091】
(CHO)Si(CH(CH1837Cl
(CHO)Si(CH(CH1837Br
(CHO)Si(CH(C1021CHCl
(CHO)Si(CH(C1021CHBr
(CHO)Si(CH(CH1837Cl
(CHO)SiCHCHCH(CCl
(CHO)SiCHCHCH(CBr
(CHO)SiCHCHCH(CHCl
(CHO)SiCHCHCH(C13Cl
(CHSi(CH(CH1225Cl
(CHSi(CH(C1021CHCl
(CHSi(CH(CH1837Cl
(CHO)Si(CH(CHCl
(CO)Si(CH(CH1837Cl
(CHO)Si(CH(CHCHCl
(CHO)Si(CH(CHCHCHOHCl
【0092】
【化4】
【0093】
好適なプロトン化した第三級アミンは米国特許第5,408,022号に記載されている。
【0094】
好適なプロトン化した第二級アミンとして、C〜C18アミノプロピルメタクリルアミド、C〜C18アミノエチルメタクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
接着促進成分:
本開示による抗菌剤コーティングの製造方法の任意の実施形態では、1つ以上の接着促進成分をプロセス中で用いてよい。好適な接着促進成分として、反応してSi−O−Si結合及び脱離基(例えばアルコキシ基)を形成できるシラン基を有するオルガノシラン化合物が挙げられる。
【0096】
接着促進成分は、別のオルガノシラン化合物(例えば本開示の未反応オルガノシラン化合物)、オルガノシラン含有ポリマー(例えば本開示の抗菌性ポリマー)、及び/又はケイ酸含有の基材(例えばポリシロキサン)とSi−O−Si結合を形成することができる。接着促進成分は、AlOxなどのその他金属酸化物表面との反応可能性も有する。有利には、接着促進成分は、抗菌性分子あたりの(基材への)付着点の数を増やすことにより、抗菌剤コーティングの改善された接着を促進させる。更に、接着促進成分は、抗菌性ポリマー分子あたりの分子内結合数及び/又は抗菌性ポリマーと基材との間の結合数を増やすことにより、抗菌剤コーティングの改善された耐久性を高める。
【0097】
好ましい接着促進成分は、本開示のコーティング組成物中のオルガノシラン化合物間のSi−O−Si結合の形成促進に加え、基材と本開示の抗菌性ポリマー組成物との間の界面接着を増加させる接着促進剤としても使用できる。
【0098】
好適な接着促進成分の非限定例として、N−2(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、及びN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシランが挙げられる。3−メルカプトプロピルトリアルコキシシランなどのメルカプトシランを同様に使用できる。本開示を考慮すると、その他の好適な接着促進成分が当業者には明らかであろう。
【0099】
その他の好適な接着促進成分は、その全体が参考として本明細書に組み込まれる米国特許公開第US 2008/0064825号に開示されている。例えば、アミノ置換オルガノシランエステル(例えばアルコキシシラン)は好ましい接着促進成分である。本開示の抗菌性物品は、アミノ置換オルガノシランエステル又はエステル等価物と、そのシランエステル又はエステル等価物との組み合わせで反応性のある複数の極性官能基を有する抗菌性ポリマーとを反応させることにより作製できる。アミノ置換オルガノシランエステル又はエステル等価物は、少なくとも1つのエステル又はエステル等価基、好ましくは2つ、又はより好ましくは3つの基をケイ素原子上に有する。エステル等価物は、当業者には周知であり、シランアミド(RNR’Si)、シランアルカノエート(RC(O)OSi)、Si−O−Si、SiN(R)−Si、SiSR及びRCONR’Siなどの化合物が挙げられる。これらエステル等価物はまた、例えばエチレングリコール、エタノールアミン、エチレンジアミン及びこれらのアミドから誘導されたものなどの環式化合物であってもよい。R及びR’は本明細書の定義「エステル等価物」と定義される。
【0100】
3−アミノプロピルアルコキシシランは、加熱により環化することが周知であり、これらRNHSi化合物は本発明で有用であろう。好ましくは、アミノ置換オルガノシランエステル又はエステル等価物は、境界面における結合を妨げ得る脱離残基がないように、エステル基、例えばメタノールとして容易に揮発するメトキシを有する。アミノ置換オルガノシランは少なくとも1つのエステル等価物を有さなくてはならず、例えば、トリアルコキシシランであってよい。
【0101】
例えば、アミノ置換オルガノシランは、式:ZNH−L−SiX’X’’X’’’(式中、Zは水素、アルキル、又はアミノ置換アルキルを含む置換アルキルであり、Lは二価の直鎖C1〜12アルキレンであり、又はC3〜8シクロアルキレン、3〜8員環のヘテロシクロアルキレン、C2〜12アルケニレン、C4〜8シクロアルケニレン、3〜8員環のヘテロシクロアルケニレン若しくはヘテロアリーレン単位を含んでよい)を有してよい。Lは、1つ以上の二価の芳香族基又はヘテロ原子基で割り込みされてよい。芳香族基は複素環式芳香族を含んでよい。ヘテロ原子は好ましくは窒素、イオウ又は酸素である。Lは、C1〜4アルキル、C2〜4アルケニル、C2〜4アルキニル、C1〜4アルコキシ、アミノ、C3〜6シクロアルキル、3〜6員環のヘテロシクロアルキル、単環式アリール、5〜6員環のヘテロアリール、C1〜4アルキルカルボニルオキシ、C1〜4アルキルオキシカルボニル、C1〜4アルキルカルボニル、ホルミル、C1〜4アルキルカルボニルアミノ、又はC1〜4アミノカルボニルで任意選択で置換される。Lは更に、−O−、−S−、−N(Rc)−、−N(Rc)−C(O)−、−N(Rc)−−−C(O)−O−、−O−C(O)−N(Rc)−、−N(Rc)−C(O)−N(Rd)−、−O−C(O)−、−C(O)−O−、又は−O−C(O)−O−で任意選択で割り込みされる。各Rc及びRdは独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシアルキル、アミノアルキル(第一級、第二級又は第三級)、又はハロアルキルであり、各X’、X’’及びX’’’はC1〜18アルキル、ハロゲン、C1〜8アルコキシ、C1〜8アルキルカルボニルオキシ、又はアミノ基であるが、ただし少なくとも1つのX’、X’’、及びX’’’が不安定な基である。更に、X’、X’’及びX’’’の任意の2つ、又は全ては共有結合により結合されてよい。アミノ基はアルキルアミノ基であってよい。アミノ置換オルガノシランの例として、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、及び3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピル−トリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(SILQUEST A−1110)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(SILQUEST A−1100)、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(SILQUEST A−1120)、SILQUEST A−1130、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(SILQUEST A−2120)、ビス−(γ−トリエトキシシリルプロピル)アミン(SILQUEST A−1170)、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリブトキシシラン、6−(アミノヘキシルアミノプロピル)トリメトキシシラン、4−アミノブチルトリメトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、p−(2−アミノエチル)フェニルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、テトラエトキシシラン及びそれらのオリゴマー、メチルトリエトキシシラン及びそれらのオリゴマー、DYNASYLAN 1146などのオリゴマー性アミノシラン、3−(N−メチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル(aminoethyl))−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、及び3−アミノプロピルジメチルエトキシシランが挙げられる。
【0102】
追加の「前駆体」化合物、例えばビス−シリル尿素[RO)Si(CH)NR]C=Oも、まず熱的に解離することによりアミンを遊離するアミノ置換オルガノシランエステル又はエステル等価物の例である。アミノシランの量は、官能性ポリマーに対して0.01重量%〜10重量%、好ましくは0.03重量%〜3重量%、及びより好ましくは0.1重量%〜1重量%である。
【0103】
いくつかの実施形態では、接着促進成分を、本明細書に開示されるような第1オルガノシラン及び液晶シランを含むコーティング混合物に添加し、本明細書に記載されるようなSi−O−Si結合の形成を促進する条件下で基材(例えばポリシロキサン基材)と接触させ得る。コーティング混合物を本明細書に記載されるような好適な基材と接触させ得る。その結果、接着促進成分中のシラン基により、第1オルガノシラン分子を別の第1オルガノシラン分子(任意選択でポリマー構造の構成要素であってよい)、カチオン性オルガノシラン(例えば、その全体が参考により本明細書に組み込まれる米国特許第6,504,582号に開示される液晶シラン)分子(任意選択でポリマー構造の構成要素であってもよい)又は基材に結合でき、あるいは接着促進成分中のシラン基により、液晶シラン分子を別の液晶シラン分子(任意選択でポリマー構造の構成要素であってよい)又は基材に結合できる。
【0104】
いくつかの実施形態では、接着促進成分を、第1カチオン性要素を含む第1ペンダント基と、非極性要素を含む第2ペンダント基と、続いてオルガノシラン又はオルガノシランエステル要素を含む第3ペンダント基と、を含む複数のペンダント基を有するポリマーを含むコーティング混合物に添加できる。任意選択で、コーティング混合物は更に、本明細書に記載されるような第1オルガノシランを含んでよい。コーティング混合物を好適な基材と接触させ、本明細書に記載されるように加熱して、Si−O−Si結合の形成を促進できる。
【0105】
代替的実施形態では、1つ以上の接着促進成分を有機溶媒に溶解し、本明細書に記載されるような好適な基材(例えばポリシロキサン基材)上にコーティングして第1コーティングを形成できる。溶媒を蒸発により除去した後には、基材は、その上に接着促進成分がコーティングされた層(すなわち、「プライマー層」つまり「接着促進」層)を含む。続いて、有機溶媒中に本開示の任意の抗菌性ポリマーを含む組成物をそのプライマー層上にコーティングできる。溶媒を蒸発により除去した後には、基材は、今回は2つの層、「プライマー層」及び抗菌性ポリマー層を含む。ここで2つのコーティングされた層を含む基材を加熱し(例えば、約120℃に約3分間〜約15分間)てSi−O−Si結合の形成を促進し、これによりポリマーを基材に共有結合させる。
【0106】
触媒:
本開示による抗菌剤コーティングの製造方法の任意の実施形態では、1つ以上の触媒をプロセス中で用いてよい。好適な触媒として、Si−O−Si結合の形成を促進する任意の化合物が挙げられる。好適な触媒の非限定例として、酸(例えば、鉱酸又は有機酸)、塩基(例えば、有機塩基)、錫オクトアート、及び1,8−ジアザビシクロウンデセン(DBU)が挙げられる。任意の実施形態では、触媒を抗菌性成分、及び存在する場合接着促進成分と共に、本明細書に記載される第1コーティング組成物に添加してよい。
【0107】
使用する際、触媒を、本明細書に記載される第1コーティング組成物、第2コーティング組成物、第1混合物及び/又は第2混合物に溶解してよい。典型的には、任意のコーティング組成物中の触媒の最終濃度は比較的低い(例えば、約0.04重量パーセント)。触媒の濃度は、架橋反応を触媒するために十分高い一方で、望ましくない場合には、コーティングの光学的特性(例えば色)への干渉を実質的に避け、及び/又はコーティング混合物の保存寿命への影響を避ける必要があると、当業者には認識されるであろう。
【0108】
基材及び物品:
本開示の抗菌性ポリマーは、コーティングとして様々な基材に適用できる。有用な基材として、例えば、非ケイ酸塩セラミックス材料(例えば、炭化物、ホウ化物、窒化物)、ガラスなどのケイ酸質材料、及びケイ質セラミックス材料(例えば、ケイ化物)、金属(例えば、ステンレス鋼、チタン、金、銀、クロム、コバルト、タンタル(tantulum)並びに、例えば、整形外科用インプラントに用いられるコバルト−クロム合金及びチタン合金などのこれら金属の合金、及びこれら金属と他の金属との合金)、並びに/又は金属酸化物を含む層を含む、及び/又はこれらの層でコーティングしてよい可撓性の及び/又はエラストマーの物品が挙げられる。基材は、熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーのいずれかである高分子材料で作られるフィルム、シート、チューブ、線維などであってよい。代表的なポリマー基材として、任意選択で可塑化(plactisized)された熱可塑性及び熱硬化性ポリマーが挙げられるがこれらに限定されず、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フルオロポリマー、ポリアミド、ポリエーテル、エポキシ、ポリ塩化ビニル及び可塑化ポリ塩化ビニル、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、スチレン−ブタジエン(butadene)スチレン及びスチレン−イソプレンスチレンなどのブロックコポリマー、Kraton Polymersから入手可能なこれらの水素添加変性物、メタロセンポリオレフィン、レーヨンポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリルコポリマーなどのポリスチレンコポリマー、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、アクリル酸及びアクリルコポリマー、ポリアクリルアミド、及びポリウレタン、2剤硬化型ポリジメチルシロキサン(polydiemthylsiloxanes)などのシリコーン、天然ゴムラテックス、ポリイソプレン、ニトリルゴムなど、並びにこれらのブレンド及びこれらの積層体を含むこれらの組み合わせが挙げられる。好適な分解性(degradeable)ポリマー基材として、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0109】
基材を用いて、様々な有用な物品(例えば、物品の部品、一部、又は全体として)を製造できる。基材の表面は、例えば、実質的に平坦な面、輪郭形成された面、微細複製構造、及び前述のうち任意の2つ以上の組み合わせなど、1つ以上の様々な表面形状を備えてよい。物品(例えば医療機器)は、通常使用の間に、微生物学的に汚染されている物と意図的に又は偶然に接触し得る様々な表面を備える。好適な物品は、医療環境(例えば、治療室、カウンター、ベッドレール、用具及び聴診器(例えば、聴診器のダイアフラム及び/又は管部を含む)などの患者ケア用機器、並びに、静脈アクセスカテーテル、経鼻胃管、シャント、鼓膜切開用チューブ、子宮内器具、尿道カテーテル、患者の栄養チューブ、人工呼吸器のチューブ、気管内チューブ、及びその他の哺乳類組織との接触を意図した平坦な、管状又は成形された可撓性医療機器などの留置用医療機器)で見ることができる。本開示による抗菌性組成物でコーティングされ得るその他の非限定的代表的医療機器として、コンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜、創傷包帯、眼帯、薬物送達用貼付剤などの活性物質の持続放出性材料、心臓弁、代用血管、カテーテル、人工臓器、整形外科用インプラント、封入化生体埋め込み、例えば膵島、代用骨などのプロテーゼ用材料などの手術中に使用できる成型物、若しくは診断用成型物、膜、又は生物医学的器具若しくは装置が挙げられる。
【0110】
抗菌剤コーティングされた物品の調製方法:
本開示は、本開示の抗菌性ポリマーを基材上にコーティングする方法を提供する。溶媒(例えば、水性溶媒、有機溶媒)中に抗菌性ポリマーを含む組成物(例えば反応混合物)を基材と接触させることができる。溶媒を蒸発させ、抗菌性ポリマーを基材上にコーティング形態で残すことができる。いくつかの実施形態では、接触工程の前及び/又はその間に基材を加熱し、溶媒の蒸発を早めることができる。好ましくは、ポリマー又はポリマーがコーティングされている基材の構成要素の機能を低下させない温度まで基材を加熱する。ポリマー組成物をガラス基材上で接触させるのに好適な温度は、室温〜約120℃である。温度を高くすると、ポリマー組成物からの有機溶媒の除去が早まることは、当業者により認識されるであろう。
【0111】
いくつかの実施形態では、希釈した組成物を用いて基材上に抗菌性ポリマーをコーティングする前に、抗菌性ポリマーを1wt%〜約20wt%の最終濃度まで有機溶媒などの溶媒で希釈する。いくつかの実施形態では、希釈した組成物を用いて基材上に抗菌性ポリマーをコーティングする前に、抗菌性ポリマーを1wt%〜約5wt%の最終濃度まで有機溶媒で希釈する。ポリマーを希釈するための好適な有機溶媒は、150℃を下回る引火点を有し、エーテル、ケトン、エステル、及びアルコール、例えば、イソプロピルアルコールが挙げられる。
【0112】
任意の実施形態では、十分な抗菌活性を有するために、ポリマー上のカチオン性基、並びに存在する任意のカチオン性第四級アミノ、プロトン化した第三級アミノ、又はプロトン化した第二級アミノシランに由来の非浸出性カチオン性アミンの合計濃度は、1当量のカチオン性基当たりで少なくとも300グラムの不揮発性コーティング組成物であり、かつ1当量のカチオン性基当たりで3000グラム以下の不揮発性コーティング組成物であり、より好ましくは1当量のカチオン性基当たりで2000グラム未満の不揮発性コーティング組成物であり、更により好ましくは1当量のカチオン性基当たりで1500グラム未満の不揮発性コーティング組成物であり、更により好ましくは1当量のカチオン性基当たりで1000グラム未満の不揮発性コーティング組成物である。いくつかの実施形態では、ポリマー上のカチオン性基、並びに存在する任意のカチオン性第四級アミノ、プロトン化した第三級アミノ、又はプロトン化した第二級アミノシランに由来の非浸出性カチオン性アミンの合計濃度は、1当量のカチオン性基当たりで少なくとも約575グラムの不揮発性コーティング組成物〜1当量のカチオン性基当たりで約925グラムの不揮発性コーティング組成物である。これらの組成物は、十分な抗菌活性を有利に提供する。
【0113】
十分な接着性及び非水溶性(非浸出)特性を提供するために、前記コーティング組成物中に存在する、ポリマー上のシラン官能基と任意の遊離シラン上のシラン官能基とに由来するコーティング組成物のシラン当量は、1当量のシラン基当たりで少なくとも200グラム(好ましくは少なくとも300グラム)の不揮発性コーティング組成物であり、かつ1当量シラン基当たりで4000グラム以下の不揮発性コーティング組成物である。いくつかの実施形態では、コーティング組成物中に存在する、ポリマー上のシラン官能基と任意の遊離シラン上のシラン官能基とに由来するコーティング組成物のシラン当量は、1当量のシラン当たりで少なくとも約143グラム〜約2484グラムの不揮発性コーティング組成物である。これらの組成物は、ポリマーの十分な架橋を有利に促進し、組成物の基材への接着性、基材上のコーティングの耐久性、及び浸出耐性を提供する。
【0114】
一実施形態では、抗菌性ポリマーをコーティングした表面の調製方法は、溶媒中に抗菌性ポリマーを含む第1コーティング組成物を形成する工程を含む。ポリマーは、本明細書に開示するように、複数のモノマーを好適な溶媒(例えば、イソプロピルアルコールなどの有機溶媒)中で混合することにより形成できる。いくつかの実施形態では、溶媒の比較的わずかの部分(例えば3%)を酸性化水で構成してよい。反応混合物中の酸性化水は、組成物中のシラン基の間、及び組成物中のシラン基と活性シランを含む基材との間の結合を促進できる。任意選択で、抗菌性ポリマーの形成後、基材と接触させる前に上述のようにポリマー組成物を希釈してよい。
【0115】
本方法は、第1コーティング組成物を遊離の第2カチオン性化合物及び/又は遊離の第2オルガノシラン化合物と混合する任意工程を含んでよい。好適な第2カチオン性化合物は、米国特許第6,504,583号に記載されており、例えばN,N−ジメチル−N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)−1−オクタデカンアミニウムクロリド(CAS番号27668−52−6)などの抗菌性シラン処理化第四級アミン化合物が挙げられる。好適な第2オルガノシラン化合物は加水分解性基を含み、シラン処理化化合物間の架橋、及び/又はシラン処理化化合物とケイ酸塩含有基材との間の架橋の形成を促進できる。好適な第2オルガノシラン化合物の例として、アルキルハライドオルガノシラン化合物及びトリメトキシシリル化合物(例えば、3−クロロプロピルトリメトキシシラン)が挙げられる。
【0116】
本方法は、第1表面及び第2表面を有する第1基材を提供する工程を更に含む。典型的には、第1表面は本明細書に記載される患者接触表面である。
【0117】
本方法は、抗菌性ポリマーと第1表面との間の接着を促進するのに好適な条件下で、第1コーティング組成物を第1基材の第1表面と接触させる工程を更に含む。はじめに、遊離抗菌性オルガノシランを任意選択で含み得る第1コーティング組成物を第1基材の第1表面に適用する。第1基材は、本明細書で開示される任意の好適な基材であってよい。いくつかの実施形態では、第1基材の第1表面はコーティング(例えば、ポリマー又はガラス基材などの基材上のケイ酸塩含有コーティング)を有してよい。いくつかの実施形態では、第1基材はガラス、ポリマーフィルム、又はダイヤモンド様ガラス材料であってよい。好適なダイヤモンド様ガラス材料は、それぞれの全体が参考により本明細書に組み込まれる米国特許第6,696,157号、同第6,015,597号、及び同第6,795,636号、並びに米国特許公開第US 008/196664号に記載されている。
【0118】
第1コーティング組成物は、例えば、ワイピング、ブラッシング、ディップコーティング、カーテンコーティング、グラビアコーティング、キスコーティング、スピンコーティング、及び吹き付けなどの当該技術分野において既知の様々なプロセスにより基材に適用してよい。
【0119】
第1コーティング組成物を基材と接触させる工程は、抗菌性ポリマー及び/又は遊離カチオン性オルガノシラン(存在する場合)の第1基材の第1表面への接着を促進する条件下で、組成物を接触させる工程を更に含む。第1コーティング組成物が溶解及び/又は懸濁されている溶媒が蒸発する間及びその後において、第1コーティング組成物の構成成分は互いに、及び任意選択で第1基材の第1表面上の活性シラン基と反応し始め、Si−O−Si結合を形成することが、当業者には理解されるであろう。この反応は、周囲温度(約23℃)で比較的ゆっくりと進行する。第1基材を加熱することで、抗菌性ポリマー組成物中のシラン基と、第1基材の表面上のシラン基(存在する場合)との間の架橋共有結合の形成を促進できる。したがって、特定の実施形態では、Si−O−Si結合の形成は、コーティングされた第1基材を昇温状態に曝す任意工程により加速され得る。理論に束縛されるものではないが、その他の力(例えば、疎水性相互作用、静電相互作用、水素結合、粘着)も、第1基材の第1表面への抗菌性コーティング組成物の構成成分の接着を促進できる。
【0120】
一般には、ポリマー組成物と接触させている間に第1基材をより高い温度に曝すと、溶媒が蒸発し、ポリマーが第1基材に接着する時間が短くて済む。しかし、接触工程はシロキサン結合の解離温度を下回る温度で実施しなくてはならない。例えば、いくつかの実施形態では、接触工程を周囲温度付近(20〜25℃)で約10分間〜約24時間実施できる。いくつかの実施形態では、接触工程を約130℃で約30秒間〜約3分間実施できる。接触工程の条件は、基材上のポリマーコーティングの特性に大きく影響し得る。例えば、室温で24時間接触させた(「硬化させた」)ポリマーは、約130℃で約3分間硬化させたポリマーよりもある程度疎水性が高くなり得る。いくつかの実施形態では、コーティングの疎水性は、第1基材の第1表面上のポリマーコーティングの耐久性と関連する。
【0121】
いくつかの実施形態(示さず)では、本方法は、任意選択で、コーティングの表面への界面接着のためのプライマー処理、プラズマエッチング、コロナによる第1基材の表面の前処理工程を含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、本方法は、任意選択で、コーティングの第1基材の表面への界面接着を更に改善するための加熱、又はUV、IRプラズマ(IR plasma)、Eビームなどの照射によるコーティングの後処理工程を含む。これらの処理はポリマー間の架橋を促進でき、並びに第1表面とポリマー間の共有結合を促進できることにより、第1基材の表面上のコーティングの耐久性(durabililty)を改善する。第1基材を昇温状態に曝す場合、本方法は基材の冷却工程を含んでよい。典型的には、基材を室温まで冷却する。
【0123】
いくつかの実施形態では、本方法は、任意選択で第1基材を第2基材に結合する工程を含む。第1コーティング組成物又は第1混合物を第1基材と接触させる工程の前又は後に、第1基材を第2基材に結合させてよい。第2基材は、本明細書に記載される任意の好適な基材であってよい。例えば、第2基材はポリマー層であってよく、第1基材はガラス又はダイヤモンド様コーティングであってよく、第1基材が第2基材上にコーティングされた後にポリマーを第1基材に適用してよい。代替的実施形態では、第1基材は、フィルムの一方の主表面上に接着剤を有するポリマーフィルムであってよい。この代替的実施形態では、ポリマー組成物を接着剤の反対側のフィルム主表面に適用してよく、続いて、ポリマーコーティングされた接着剤フィルムを、接着剤を介して、例えばガラス又はポリマー層などの第2基材に結合してよい。
【0124】
いくつかの実施形態では、本方法は第1基材に層を適用する工程を更に含む。第1基材は、本明細書に記載される層が適用され得る任意の好適な基材であってよい。この層は、金属酸化物(例えば、シリカ、ジルコニウム、アルミニウム、錫、アンチモンのオキシド、又は前述の金属酸化物の任意の2つ以上の組み合わせ又は混合物)を含んでよい。当業者には既知の方法で層を適用してよい。基材にケイ酸塩含有層を適用する非限定例は、米国特許第7,294,405号の実施例1に記載されており、ここではギラツキ防止ハードコートケイ酸塩含有層をガラス基材に適用している。これらの実施形態では、本方法は、例えば上記のように溶媒中にビニルポリマーを含む第1コーティング組成物を形成する工程を更に含む。任意選択で、これらの実施形態は、第1コーティング組成物に第2カチオン性化合物を添加する工程を含んでよい。本方法は、第1コーティング組成物をコーティングされた層に接触させる工程を更に含む。第1コーティング組成物は、例えば本明細書に記載のコーティング方法など任意の好適なコーティング方法で適用され得る。第1コーティング組成物をコーティングされた層と接触させる工程は、コーティングされた層への組成物の接着を促進するのに好適な条件下で(例えば、ビニルポリマーを第1基材に接着するために本明細書に記載の条件を用いて)、第1コーティング組成物をコーティングされた層と接触させる工程を更に含む。任意選択で、第1コーティング組成物を第1基材と接触させる工程は、ビニルポリマーコーティングされた基材を化学線及び/又は電離放射線(例えば、紫外線、Eビーム、プラズマなど)で処理する工程を更に含んでよい。この処理はポリマー間の架橋を促進でき、かつポリマーと基材との間の共有結合を促進できることにより、基材の表面上のコーティングの耐久性を改善する。
【0125】
本明細書に開示される方法の任意の実施形態では、本開示の抗菌性ポリマー組成物の適用工程に先立つ基材の前処理は、ポリマーと基材(例えば、ケイ塩含有材料)との間の結合を改善できることに留意すべきである。基材の前処理として、例えば、揮発性溶媒(例えば、水、イソプロピルアルコール)中への基材の浸漬、及び/又は揮発性溶媒を用いた基材の拭き取りを挙げてよい。任意選択で、溶媒は、例えば水酸化カリウムなどの塩基性化合物の組成物を更に含んでよい。いくつかの実施形態では、溶媒を塩基性化合物の組成物で飽和させてよい。
【0126】
特に、約30℃〜約200℃(好ましくは約30℃〜約150℃)で20分間〜60分間基材を加熱する工程を含む前処理は、ポリマーと基材との間の結合を改善できる。
【0127】
いくつかの実施形態では、抗菌剤コーティングが適用される直前に基材を加熱する前処理により、コーティングと基材との間に改善された結合(例えば、コーティングの耐久性により測定されるように)が得られる。この改善された結合は、基材上のポリマー層の非常に高い耐久性につながり得る。理論に束縛されるものではないが、加熱による基材の前処理は、基材(例えばケイ塩含有材料)の表面に存在する過剰な水分及びその他不純物(例えば有機残基)を除去し、表面シラン基が、本明細書で開示されるコーティング組成物中のシラン処理化ポリマー及び/又は化合物と反応する能力をより大にすると考えられる。
【0128】
コーティングされた物品の抗菌剤浸出試験手順:
本開示の抗菌性ポリマーコーティングは耐久性がある(すなわち、実質的に非浸出性である)。以下の方法を用いて、本開示のポリマーコーティングされた物品からの拡散性抗菌剤活性の放出を試験できる。
【0129】
表面上の抗菌性ポリマーの非浸出性は、「Standard Test Method for Determining the Antimicrobial Activity of Immobilized Antimicrobial Agents Under Dynamic Contact Conditions」という表題のASTM E2149−01、第12項による阻害ゾーン試験を用いて証明できる。阻害ゾーンは、抗菌性が有効な抗菌剤源からの距離をミリメートルで表す。好ましくは、ゾーンが≦3mm、より好ましくはゾーンが≦1mm、更により好ましくはゾーンが0mmである。
【0130】
実施形態
【0131】
実施形態Aは、
カチオン性要素を含む第1ペンダント基と、
非極性要素を含む第2ペンダント基と、
第1有機ケイ素要素を含む第3ペンダント基と、を含む複数のペンダント基を有するビニルポリマーを含む、コーティング組成物と、
患者接触第1表面及び第2表面を有するエラストマー第1基材を含む医療機器と、を含む物品であって、
そのビニルポリマーが患者接触第1表面に耐久的に接着し、
その組成物が無機充填剤を本質的に含まない、物品である。
【0132】
実施形態Bは、そのカチオン性要素が、第四級アミン要素、プロトン化した第三級アミン要素、及びプロトン化した第二級アミン要素からなる群から選択される、実施形態A(embodiment 1)に記載の物品である。
【0133】
実施形態Cは、有機ケイ素要素がオルガノシラン又はオルガノシランエステルを含む、実施形態A又はBに記載の物品である。
【0134】
実施形態Dは、コーティング組成物が付着され、かつそのコーティング組成物中に存在する追加の遊離シランで硬化される、実施形態A〜Cのいずれか1つに記載の物品である。
【0135】
実施形態Eは、追加の遊離シランが、6〜22個の炭素原子の少なくとも1つの直鎖又は分枝鎖アルキルを有する第四級アンモニウムシラン又はプロトン化した第三級アミノシランである、実施形態Dに記載の物品である。
【0136】
実施形態Fは、組成物が接着促進成分を更に含む、実施形態A〜Eのいずれか1つに記載の物品である。
【0137】
実施形態Gは、ポリマーが、カルボキシレート又はアルコキシレート化学基を含むペンダント基を含まない、実施形態A〜Fのいずれか1つに記載の物品である。
【0138】
実施形態Hは、ビニルポリマーにおいて、カチオン性アミンモル当量と有機ケイ素モル当量との比が、約0.1:1〜約10:1である、実施形態A〜Gのいずれか1つに記載の物品である。
【0139】
実施形態Iは、ポリマー上のカチオン性基、並びに存在する任意のカチオン性第四級アミノ、プロトン化した第三級アミノ、又はプロトン化した第二級アミノシランに由来の非浸出性カチオン性アミンの合計濃度は、1当量のカチオン性基当たりで少なくとも300グラムの不揮発性コーティング組成物であり、かつ1当量のカチオン性基当たりで3000グラム以下の不揮発性コーティング組成物である、実施形態A〜Hのいずれか1つに記載の物品である。
【0140】
実施形態Jは、コーティング組成物中に存在する、ポリマー上のシラン官能基と任意の遊離シラン上のシラン官能基とに由来するコーティング組成物のシラン当量は、1当量のシラン当たりで少なくとも200グラムの不揮発性コーティング組成物であり、かつ1当量のシラン基当たりで4000グラム以下の不揮発性コーティング組成物である、実施形態A〜Iのいずれか1つに記載の物品である。
【0141】
実施形態Kは、少なくとも1つのペンダント要素がフッ素化合物を含む、実施形態A〜Jのいずれか1つに記載の物品である。
【0142】
実施形態Lは、第2ペンダント基がフッ素化合物を含む、実施形態Kに記載の物品である。
【0143】
実施形態Mは、ビニルポリマーの接着される患者接触表面が、ガラス、金属、金属酸化物、セラミックス、又はポリマーの表面である、実施形態A〜Lのいずれか1つに記載の物品である。
【0144】
実施形態Nは、ポリマーの表面が可撓性ポリマーの表面を含む、実施形態Mに記載の物品である。
【0145】
実施形態Oは、第1基材が、第1表面上に耐久性の金属酸化物層を更に含む、実施形態A〜Nのいずれか1つに記載の物品である。
【0146】
実施形態Pは、金属酸化物層が、ケイ素、ジルコニウム、アルミニウムの酸化物、又は前述の金属酸化物の任意の2種以上の組み合わせを含み、ビニルポリマーがその金属酸化物層に接着される、実施形態Oに記載の物品である。
【0147】
実施形態Qは、第1基材の第2表面が第2基材に接着される、実施形態A〜Pのいずれか1つに記載の物品である。
【0148】
実施形態Rは、第1基材が、化学結合、熱結合、接着剤、機械的締結具、又は前述の任意の組み合わせにより第2基材に接着される、実施形態Qに記載の物品である。
【0149】
実施形態Sは、医療機器が、内視鏡、気管内チューブ、血管内カテーテル、尿道カテーテル、創傷包帯、聴診器のダイアフラム、聴診器の管部、聴診器のチェストピース、人工呼吸器のチューブ、患者の栄養チューブ、外科用ドレーン、及び哺乳類組織との接触を意図した、その他の平坦な、管状又は成形された可撓性医療機器を含む、実施形態A〜Rのいずれか1つに記載の物品である。
【0150】
実施形態Tは、
カチオン性要素を含む第1ペンダント基と、
非極性要素を含む第2ペンダント基と、
第1有機ケイ素要素を含む第3ペンダント基と、を含む複数のペンダント基を有するビニルポリマーを含む、コーティング組成物と、
体液接触第1表面及び第2表面を有する体液接触するエラストマー基材と、を含む物品であって、
そのビニルポリマーが体液接触第1表面と耐久的に接着し、
その組成物が無機充填剤を本質的に含まない、物品である。
【0151】
実施形態Uは、カチオン性要素が、第四級アミン要素、プロトン化した第三級アミン要素、及びプロトン化した第二級アミン要素からなる群から選択される、実施形態Tに記載の物品である。
【0152】
実施形態Vは、有機ケイ素要素がオルガノシラン又はオルガノシランエステルを含む、実施形態T又は実施形態Uに記載の物品である。
【0153】
実施形態Wは、コーティングが付着され、かつ組成物中に存在する追加の遊離シランで硬化される、実施形態T〜Vのいずれか1つに記載の物品である。
【0154】
実施形態Xは、その追加の遊離シランが、6〜22個の炭素原子の少なくとも1つの直鎖又は分枝鎖アルキルを有する第四級アンモニウムシラン又はプロトン化した第三級アミノシランである、実施形態Wに記載の物品である。
【0155】
実施形態Yは、組成物が接着促進成分を更に含む、実施形態T〜Xのいずれか1つに記載の物品である。
【0156】
実施形態Zは、ポリマーが、カルボキシレート又はアルコキシレート化学基を含むペンダント基を含まない、実施形態T〜Yのいずれか1つに記載の物品である。
【0157】
実施形態AAは、ビニルポリマーにおいて、カチオン性アミンモル当量と有機ケイ素モル当量との比が、約0.1:1〜約10:1である、実施形態T〜Zのいずれか1つに記載の物品である。
【0158】
実施形態BBは、ポリマー上のカチオン性基、並びに存在する任意のカチオン性第四級アミノ、プロトン化した第三級アミノ、又はプロトン化した第二級アミノシランに由来の非浸出性カチオン性アミンの合計濃度は、1当量のカチオン性基当たりで少なくとも300グラムの不揮発性コーティング組成物であり、かつ1当量のカチオン性基当たりで3000グラム以下の不揮発性コーティング組成物である、実施形態T〜AAのいずれか1つに記載の物品である。
【0159】
実施形態CCは、コーティング組成物中に存在する、ポリマー上のシラン官能基と任意の遊離シラン上のシラン官能基とに由来するコーティング組成物のシラン当量は、1当量のシラン当たりで少なくとも200グラムの不揮発性コーティング組成物であり、かつ1当量のシラン基当たりで4000グラム以下の不揮発性コーティング組成物である、実施形態T〜BBのいずれか1つに記載の物品である。
【0160】
実施形態DDは、少なくとも1つのペンダント要素がフッ素化合物を含む、実施形態T〜CCのいずれか1つに記載の物品である。
【0161】
実施形態EEは、第2ペンダント基がフッ素化合物を含む、実施形態DDに記載の物品である。
【0162】
実施形態FFは、ビニルポリマーが接着される患者接触表面が、ガラス、金属、金属酸化物、セラミックス、又はポリマーの表面である、実施形態T〜EEのいずれか1つに記載の物品である。
【0163】
実施形態GGは、ポリマーの表面が可撓性ポリマーの表面を含む、実施形態FFに記載の物品である。
【0164】
実施形態HHは、第1基材が、第1表面上に耐久性の金属酸化物層を更に含む、実施形態T〜GGのいずれか1つに記載の物品である。
【0165】
実施形態IIは、その金属酸化物層が、ケイ素、ジルコニウム、アルミニウムの酸化物、又は前述の金属酸化物の任意の2種以上の組み合わせを含み、ビニルポリマーがその金属酸化物層に接着される、実施形態HHに記載の物品である。
【0166】
実施形態JJは、第1基材の第2表面が第2基材に接着される、実施形態T〜IIのいずれか1つに記載の物品である。
【0167】
実施形態KKは、第1基材が、化学結合、熱結合、接着剤、機械的締結具、又は前述の任意の組み合わせにより第2基材に接着される、実施形態JJに記載の物品である。
【0168】
実施形態LLは、コーティングされた物品の製造方法であって、
第1カチオン性要素を含む第1ペンダント基と、
非極性要素を含む第2ペンダント基と、
第1有機ケイ素要素を含む第3ペンダント基と、を含む複数のペンダント基を有するビニルポリマーを含み、無機充填剤を本質的に含まない、第1コーティング組成物の形成工程と、
ポリマーを第1表面に接着するのに好適な条件下で、第1コーティング組成物を第1基材の第1表面と接触させる工程と、を含み、
第1基材が医療機器のエラストマー構成要素を含む、コーティングされた物品の製造方法である。
【0169】
実施形態MMは、コーティング用第1コーティング組成物を形成する工程が、接着促進成分を含む第1コーティング組成物を形成する工程を含む、実施形態LLに記載の方法である。
【0170】
実施形態NNは、第1コーティング組成物を形成する工程が、溶媒中でのビニルポリマーの乳濁液又は分散液を形成する工程を含む、実施形態LL又は実施形態MMに記載の方法である。
【0171】
実施形態OOは、第1コーティング組成物を形成する工程が、硬化過程のシランの加水分解及び/又は縮合反応を促進する触媒化合物を含む第1コーティング組成物を形成する工程を更に含む、実施形態LL〜NNのいずれか1つに記載の方法(article method)である。
【0172】
実施形態PPは、第1コーティング組成物を形成する工程が、接着促進剤を含む第1コーティング組成物を形成する工程を更に含む、実施形態LL〜OOのいずれか1つに記載の方法である。
【0173】
実施形態QQは、第1コーティング組成物を形成する工程が、遊離の第2カチオン性シラン要素及び/又は第2カチオン性要素を含む第1コーティング組成物を形成する工程を更に含む、実施形態LL〜PPのいずれか1つに記載の方法である。
【0174】
実施形態RRは、第1コーティング組成物を表面と接触させる工程の後に、表面を浸漬する及び/又はすすぐ工程を更に含む、実施形態LL〜QQのいずれか1つに記載の方法である。
【0175】
実施形態SSは、第1基材を第2基材に結合させる工程を更に含む、実施形態LL〜RRのいずれか1つに記載の方法である。
【0176】
実施形態TTは、第1コーティング組成物を第1基材の第1表面と接触させる工程に先立ち、第2コーティング組成物を第1基材の第1表面と接触させる工程を更に含む、実施形態LL〜SSのいずれか1つに記載の方法である。
【0177】
実施形態UUは、コーティングされた物品の製造方法であって、
第1カチオン性要素を含む第1ペンダント基と、
非極性要素を含む第2ペンダント基と、
第1有機ケイ素要素を含む第3ペンダント基と、を含む複数のペンダント基を有するビニルポリマーを含み、無機充填剤を本質的に含まない、第1のコーティング組成物の形成工程と、
ポリマーを第1基材の第1表面に接着するのに好適な条件下で、第1コーティング組成物を第1表面と接触させる工程と、を含み、
第1基材が体液接触するエラストマー基材を含む、コーティングされた物品の製造方法である。
【0178】
実施形態VVは、第1コーティング組成物を形成する工程が、接着促進成分を含む第1コーティング組成物を形成する工程を含む、実施形態UUに記載の方法である。
【0179】
実施形態WWは、第1コーティング組成物を形成する工程が、溶媒中でのビニルポリマーの乳濁液又は分散液を形成する工程を含む、実施形態UU又は実施形態VVに記載の方法である。
【0180】
実施形態XXは、第1コーティング組成物を形成する工程が、触媒化合物を含む第1コーティング組成物を形成する工程を更に含む、実施形態UU〜WWのいずれか1つに記載の方法である。
【0181】
実施形態YYは、第1コーティング組成物を形成する工程が、接着促進剤を含む第1コーティング組成物を形成する工程を更に含む、実施形態UU〜XXのいずれか1つに記載の方法である。
【0182】
実施形態ZZは、第1コーティング組成物を形成する工程が、遊離の第2カチオン性シラン要素及び/又は第2カチオン性要素を含む第1コーティング組成物を形成する工程を更に含む、実施形態UU〜YYのいずれか1つに記載の方法である。
【0183】
実施形態AAAは、第1コーティング組成物を表面と接触させる工程の後に、その表面を浸漬する及び/又はすすぐ工程を更に含む、実施形態UU〜ZZのいずれか1つに記載の方法である。
【0184】
実施形態BBBは、第1基材を第2基材に結合させる工程を更に含む、実施形態UU〜AAAのいずれか1つに記載の方法である。
【0185】
実施形態CCCは、第1コーティング組成物を第1基材の第1表面と接触させる工程に先立ち、第2コーティング組成物を第1基材の第1表面と接触させる工程を更に含む、実施形態UU〜BBBのいずれか1つに記載の方法である。
【0186】
実施形態DDDは、実施形態UU〜CCCのいずれか1つに記載の方法によって製造された物品である。
【0187】
実施形態EEEは、コーティングを含む医療機器物品であって、このコーティングが、
遊離シラン要素と、
第1の第四級アンモニウム要素を含む第1ペンダント基と、
第1有機ケイ素要素を含む第2ペンダント基と、を含む複数のペンダント基を有するビニルポリマーと、を含む組成物から誘導され、
そのビニルポリマーが表面に耐久的に接着される、医療機器物品である。
【0188】
実施形態FFFは、組成物が実質的に無機充填剤を含まない、実施形態EEEに記載の医療機器物品である。
【0189】
実施形態GGGは、遊離シランが第四級アンモニウムシランである、実施形態EEE又は実施形態FFFに記載の医療機器物品である。
【0190】
実施形態HHHは、遊離の第四級アンモニウムシランが、その第四級アミンに結合される少なくとも1つの直鎖又は分枝鎖C8〜C22アルキル基を含む、実施形態GGGに記載の医療機器物品である。
【0191】
本発明は、以下の非制限的な実施例の参照により更に説明される。他に指定のない限り、全ての部及び百分率は重量部として表される。
【実施例】
【0192】
本発明について以下の実施例でより具体的に説明するが、本発明の範囲内での多数の修正及び変形が当業者には明らかとなるため、以下の実施例は例示のみを目的としたものである。特に注釈がない限り、以下の実施例において記載する全ての部、割合及び比率は重量を基準としたものであり、又、実施例において使用する全ての試薬は、下記の化学薬品供給業者から得られた若しくは入手可能なものであり、従来の技法によって合成されてもよい。
【0193】
以下の実施例で用いた試薬の一覧を表1に示す。
【0194】
【表1】
【0195】
シラン1、2及び3は3つの異なる供給源による同一の化学物質(CAS# 27668−52−6)である。
【0196】
DMAEMA−C16Brモノマーの合成
オーバーヘッド凝縮器、機械的攪拌器、及び温度プローブを装着した清潔な反応器に、918重量部のアセトン、807部のC1633Br、415.5部のDMAEMA、2.0部のBHT、及び2.0部のMEHQを投入した。このバッチを150rpmで攪拌し、反応スキーム全体にわたって混合ガス(90/10 O/N)を溶液中にパージした。混合物を74℃に18時間加熱した。ガスクロマトグラフィー(GC)での分析用にサンプルを採取し、これにより>98%の反応物質の所望の生成物への変換が明らかになった。この時点で、918部のEtOAcを超高速で攪拌しながらゆっくりと加えた。白色の固体が沈殿し始めた。加熱をやめ、混合物を室温まで冷却した。反応沈殿物を濾過により回収し、白色の固体物質を200部の冷EtOAcで洗浄した。固体物質を40℃の真空オーブン内で8時間乾燥させた。乾燥生成物を核磁気共鳴(NMR)分光法で分析したところ、純度>99.9%のDMAEMA−C16Brモノマーの存在が明らかになった。
【0197】
抗菌性ポリマー(AMP)の合成
清潔な反応瓶内で、モノマー(例えば、50部のDMAEMA−C16Brモノマー、10部のA−174モノマー、及び40部のIOAモノマー)を0.5部のVazo−67及び300部のIPAと混合した。混合物を乾燥窒素で3分間パージした。反応瓶を密封し、65℃に予め加熱した水浴中に混合しながら置いた。反応混合物を混合しながら65℃で17時間加熱した。粘稠な反応混合物の固体%を分析し、IPA中25固体%であることがわかった。残留するモノマーの反応を>99.5%完了まで進めるため、更に0.1部のVazo−67を混合物に追加し、この溶液をパージして密封した。瓶を混合しながら65℃の水浴中に置き、8時間加熱した。固体%の算出からわかるように、99.5%超のモノマーの変換が達成された。実施例のポリマーをこのプロセスによって調製した。ポリマーの表記(例えば、「p(DMAEMA−C16Br/A−174/IBMA)」は、反応混合物中で用いたモノマーの組み合わせを意味する。ポリマーは、カチオン性アミン当量がカチオン性アミン1当量当たり925.1gのポリマー、及びシラン(有機ケイ素)当量がSi(シラン)1当量当たり2484gのポリマーである。
【0198】
実施例1 抗菌性ポリマーコーティングされた医療グレードのエラストマー材料の調製及び抗菌活性の証明(2時間接触)
【0199】
実施例1の目的は、シリコーンシート上に処方物をコーティングし、カテーテル上又は低表面エネルギーの他のエラストマー医療機器上のコーティングを模擬し、これらのコーティングの抗菌性能を評価することとした。コーティング処方を表2に従って調製した。
【0200】
Silastic(登録商標)Q7−4840、生物医学グレードシリコーンゴムキットのシリコーンシート、0.02インチ(510マイクロメートル)厚NRV M/M 40D、30.5cm×30.5cm(12インチ×12インチ)をSpecialty Manufacturing,Inc.(Saginaw,MI)から入手した。12.7cm×7.6cm(5インチ×3インチ)の寸法の矩形をこのシートから切り出し、表2に示す処方のコーティング基材として用いた。
【0201】
サンプルコーティングプロセス:
各処方500μLを、12.7cm×7.6cm(5インチ×3インチ)の矩形のシリコーンシート上にピペットで取り、表面を均一に覆うように広げた。サンプルを15分間室温で放置した。過剰の溶液を流した。次にサンプルを、120℃で15分間オーブン内にて乾燥させた。続いて、サンプルをDI水中で十分にすすぎ、室温で一晩放置した。各サンプルから直径1.6cm(5/8インチ)の寸法の円形パンチ穴を4つ切り取り、微生物学的試験に供した。微生物学的試験に先立ち、非コーティングシリコーンシート対照であるサンプル7をIPA中で洗浄し、120℃で15分間加熱し、続いてDI水中で十分にすすぎ、室温で一晩放置した。
【0202】
微生物学的試験−2時間殺菌時間試験:
JIS Z 2801の試験方法(Japan Industrial Standards;Japanese Standards Association;Tokyo,JP)を用い、軽微な修正を加えて抗菌ポリマーコーティングされたケイ素基材の抗菌活性を評価した。トリプシンソイブロス(TSB)中で黄色ブドウ球菌ATCC 25923の一晩(O/N)培養を開始し、37℃で18〜24時間増殖させた。O/N培養液の1:10希釈液をリン酸緩衝水(PBW)で調製した。シリコーンシートが薄いため、支持体としての滅菌カバーガラス上に、コーティングされたシリコーンシートの直径1.6cmの切り抜き円を置いた。100μLの量の希釈細菌液をコーティング上に置いた。サンプルとカバーガラス/シリコーンを滅菌ペトリ皿内に置き、この皿を濡らしたペーパータオルと共にプラスチック製の保存袋に入れ、続いてこの袋(bac)を28℃のインキュベーターに2時間置いた。0時間及び2時間の時点で、サンプルを20mLのD/E(Dey−Engley)中和培養液に入れ、2分間超音波処理してから、細菌の回収のため1分間ボルテックス(ミキサーで混合)した。0時間及び2時間の時点でプレーティング(平板培養)を行った。0時間において、サンプル1〜7の全てについて、サンプルあたり1回の繰り返しでプレーティングした。2時間において、サンプル1〜7の全てについて、3M AEROBIC PETRIFILM上で未希釈から4回希釈まで、サンプルあたり3回の繰り返しでプレーティングした。5.63logの量の細菌を使用量対照として用いた。細菌を中和し、上記のようにプレーティングして、回収できた最大数の細菌を明らかにした。サンプル7は未コーティングサンプルであるため、非活性物質対照とした。このサンプルから細菌を回収し、使用量対照と突き合わせた。加えて、0分間の細菌添加に先立ち、全てのサンプルを5分間中和してプレーティングした。ASTM1054 E1054−08、Standard Test Methods for Evaluation of Inactivators of Antimicrobial Agentsにあるように、「0時」のこれらサンプルも中和確認として用いた。サンプルは、使用量対照と同様の値を示し、「0時」には殺菌作用が得られなかったことを示した。2時間目のサンプルでは、サンプルと2時間接触し、その後上記のように中和及びプレーティングした細菌が残っていた。
【0203】
【表2】
【0204】
AMP:p(DMAEMA−C16Br/IOA/A174)50/40/10−イソプロピルアルコール中25%。
【0205】
サンプル7は未コーティングシリコーンシート(対照)とした。
【0206】
この実施例について、計算した組成物のカチオン当量及びシラン当量(eqwt)を以下に示す。
【0207】
【表3】
【0208】
実施例2 コーティングされた抗菌性ポリマーの抗菌活性の証明(15分間接触)
実施例2のサンプルを以下の表3に記載するように調製した。実施例1で用いたシリコーンシートを温水で洗浄し、石鹸(VWR Softcideハンドソープカタログ# 56700−124)でこすり洗いし、温かい水道水ですすぎ、最終的にDI水ですすいだ。12.7cm×10.2cm(5インチ×4インチ)のサンプル片を切り取り、1000μLの溶液を表面上に広げた。サンプルを15分間室温で放置し、120℃で15分間加熱して乾燥させ、最終的に室温で一晩置いた。サンプルをDI水ですすぎ、微生物学的試験用に直径1.6cm(5/8インチ)の円形パンチ穴を切り取った。
【0209】
微生物学的試験−15分間殺菌時間試験:
JIS Z 2801の試験方法(Japan Industrial Standards;Japanese Standards Association;Tokyo,JP)を用い、軽微な修正を加えて抗菌ポリマーコーティングされたケイ素基材の抗菌活性を評価した。トリプシンソイブロス(TSB)中で黄色ブドウ球菌ATCC 25923の一晩(O/N)培養を開始し、37℃で18〜24時間増殖させた。シリコーンシートが薄いため、支持体としての滅菌カバーガラス上に、コーティングされたシリコーンシートの直径1.6cmの切り抜き円を置いた。100μLの希釈細菌液をコーティング上に置いて、サンプルとカバーガラス/シリコーンを滅菌ペトリ皿内に置き、この皿を濡らしたペーパータオルと共にプラスチック製の保存袋に入れ、続いてこの袋を28℃のインキュベーターに15分間置いた。0分間及び15分間の時点で、サンプルを20mLのD/E中和培養液に入れ、2分間超音波処理してから、細菌の回収のため1分間ボルテックスした。0分間及び15分間の時点でプレーティングを行った。各時間において、サンプル1〜7の全てについて、3M AEROBIC PETRIFILM上で未希釈から4回希釈まで、サンプルあたり2回の繰り返しでプレーティングした。5.31logの量の細菌を使用量対照として用いた。細菌を中和し、上記のようにプレーティングして、回収できた最大数の細菌を明らかにした。サンプル8は未コーティングサンプルであるため、非活性物質対照とした。このサンプルから細菌を回収し、使用量対照と突き合わせた。細菌をサンプルに加え、サンプルを直ちに中和及びプレーティングすることにより、「0分」時のサンプルを得た。サンプルは、使用量対照と同様の値を示し、「0分」時には殺菌作用が得られなかったことを示した。15分目のサンプルでは、サンプルと15分間接触し、その後上記のように中和及びプレーティングした細菌が残っていた。使用量対照に対して、特定の時点の値を差し引くことによりlog減少を算出した。
【0210】
【表4】
【0211】
サンプル8は未コーティングシリコーンシート(対照)とした。
【0212】
サンプル5:Sn(Oct)の代わりに1,8−ジアザビシクロ−5,4,0−ウンデカ−7−エン(DBU)を用いた。
【0213】
この実施例について、計算した組成物のカチオンeqwt及びシランeqwtを以下に示す。
【0214】
【表5】
【0215】
実施例3(15分間殺菌時間;二重コーティング)
実施例1で用いたシリコーンシートを、実施例1及び2と同様の方法で以下の表4に記載の処方によりコーティングした。ただしこの実施例では、1000μLの各処方を12.7cm×10.2cm(5インチ×4インチ)のシリコーンシートに添加し、室温で15分間放置した。続いて各サンプルについて、2回目の量である1000μLの同一処方をシリコーンシートに添加し、再度室温で15分間放置した。次にサンプルを120℃で10分間乾燥させた。コーティングは、表面全体にわたって均一であるように見えた。最終的に、コーティングされたサンプルを室温で一晩放置した。
【0216】
調製したサンプルを99mLのリン酸緩衝水(Butterfield’s Phosphate−Buffered Dilution Water)中に19時間浸漬する前及び後に、コーティングの耐久性について観察を行った。サンプル4、6、7及び8は、リン酸緩衝水処理前及び後に、15分間の殺菌能についても評価した。実施例2に記載するように微生物学的試験を実施した。15分の時点で、2回繰り返しサンプルを試験した。使用量対照に対する差し引きによりlog減少を算出した。
【0217】
AMPコーティングの耐久性試験は、PBW処理前及び後のコーティングを肉眼で観察することにより実施した。サンプルを以下の定義によるコーティング評価に割り当てた。
【0218】
【表6】
【0219】
【表7】
【0220】
サンプル8は未コーティングシリコーンシート(対照)とした。
【0221】
サンプル5:Sn(Oct)の代わりに1,8−ジアザビシクロ−5,4,0−ウンデカ−7−エン(DBU)を用いた。
【0222】
コーティング可撓性試験:
シリコーンシート基材表面上のコーティングの可撓性について、実施例3のサンプル1〜7を試験した。サンプル1〜7の処方でコーティングされた12.7cm×10.2cm(5インチ×4インチ)のシリコーンシート各1枚を、中心軸に沿ってシートを折り曲げ、反対側の縁部が触れる、つまり一方の縁部が反対側の縁部まで180°曲がるように半分にシートを折り畳むことにより、手を用いて屈曲させた。次に、各シートを反対方向に360°背面に屈曲させた。実施例3のサンプル1〜7各1枚につき、この360°屈曲試験を5回繰り返した。サンプル1〜7の全てがコーティングの一体性を維持していた、つまりこれらのサンプルのコーティングには、亀裂、剥離、又はいかなる応力の痕跡もなかった。なお、サンプル2のコーティング(ある場合)はほんの僅かであった。
【0223】
実施例4
LITTMANN聴診器のダイアフラムサンプル(パーツ番号78−8078−2797−3、3M Company(St.Paul,MN)から入手可能なLITTMANN Classic II SE and Cardiology III聴診器用)を温水、続いてDI水で洗浄した。サンプルを、表5に記載の各処方500μLでコーティングし、室温で15分間放置した。サンプルを120℃で10分間加熱し、次に室温で一晩放置した。サンプルをDI水で洗い、5/8インチ(1.6cm)の円形片に切り取り、微生物学的試験に供した。
【0224】
微生物学的試験を実施例2と同様に実施した。15分間及び2時間の時点において、1サンプルあたり2回繰り返した。使用量対照に対して、特定の時点の値を差し引くことによりlog減少を算出した。使用量対照は平均5.48log、標準偏差0.07であった。保存物は平均7.06log、標準偏差1.44であった。
【0225】
調製したサンプルを99mLのリン酸緩衝水(Butterfield’s Phosphate−Buffered Dilution Water)中に21時間浸漬する前及び後に、実施例3と同様に実施例4のコーティングの耐久性について観察を行った。
【0226】
【表8】
【0227】
サンプル8は未コーティングの聴診器のダイアフラム(対照)とした。
【0228】
サンプル5として、Sn(Oct)の代わりに1,8−ジアザビシクロ−5,4,0−ウンデカ−7−エン(DBU)を用いた。
【0229】
コーティング可撓性試験:
LITTMANN聴診器のダイアフラム(エポキシ)表面上のコーティングの可撓性について、実施例4のサンプル1〜7を試験した。調製したサンプルを99mLのPBWに21時間浸漬した後、実施例4のサンプル1〜7の処方でコーティングされたダイアフラム材料各1つを、中心軸に沿ってダイアフラム材料を折り曲げ、反対側の縁部を折り曲げて90°の角度を作るようにシートを折り畳むことにより、手を用いて屈曲させた。次に、各サンプルを反対方向に180°屈曲させた。実施例4のサンプル1〜7各1枚につき、この180°屈曲試験を5回繰り返した。サンプルのダイアフラム材料の基材が実施例3のシリコーンシートよりも硬い材料で作られているため、実施例4のコーティングされたダイアフラムサンプルは、実施例3のように360°に屈曲できなかった。実施例4のサンプル1〜7の全てがコーティングの一体性を維持していた、つまりこれらのサンプルのコーティングには、亀裂、剥離、又はいかなる応力の痕跡もなかった。なお、サンプル2のコーティング(ある場合)はほんの僅かであった。
【0230】
以上、発明者によって予見される複数の具体的な実施形態を参照して本発明を説明し、その実施を可能とする説明文が与えられた。しかしながら、現時点において予見され得ない改変を含む、本発明の実体的でない改変は、これらの実施形態の均等物を構成しうるものである。したがって本発明の範囲は、本明細書に記載された詳細及び構造によって限定されるべきものではなく、以下の請求項及びその均等物によってのみ限定されるべきである。
本発明の実施態様の一部を以下に記載する。
[項目1]
カチオン性要素を含む第1ペンダント基と、
非極性要素を含む第2ペンダント基と、
第1有機ケイ素要素を含む第3ペンダント基と、を含む複数のペンダント基を有するビニルポリマーを含む、コーティング組成物と、
患者接触第1表面及び第2表面を有するエラストマー第1基材を含む医療機器と、を含む物品であって、
前記ビニルポリマーが前記患者接触第1表面に耐久的に接着し、
前記組成物が無機充填剤を本質的に含まない、物品。
[項目2]
前記カチオン性要素が、第四級アミン要素、プロトン化した第三級アミン要素、及びプロトン化した第二級アミン要素からなる群から選択される、項目1に記載の物品。
[項目3]
前記有機ケイ素要素が、オルガノシラン又はオルガノシランエステルを含む、項目1又は2に記載の物品。
[項目4]
前記コーティング組成物が付着され、かつ前記コーティング組成物中に存在する追加の遊離シランで硬化される、項目1〜3のいずれか一項に記載の物品。
[項目5]
前記追加の遊離シランが、6〜22個の炭素原子の少なくとも1つの直鎖又は分枝鎖アルキルを有する第四級アンモニウムシラン又はプロトン化した第三級アミノシランである、項目4に記載の物品。
[項目6]
前記組成物が接着促進成分を更に含む、項目1〜5のいずれか一項に記載の物品。
[項目7]
前記ポリマーが、カルボキシレート又はアルコキシレート化学基を含むペンダント基を含まない、項目1〜6のいずれか一項に記載の物品。
[項目8]
前記ビニルポリマーにおいて、カチオン性アミンモル当量と有機ケイ素モル当量との比が、約0.1:1〜約10:1である、項目1〜7のいずれか一項に記載の物品。
[項目9]
前記ポリマー上のカチオン性基、並びに存在する任意のカチオン性第四級アミノ、プロトン化した第三級アミノ、又はプロトン化した第二級アミノシランに由来の非浸出性カチオン性アミンの合計濃度は、1当量のカチオン性基当たりで少なくとも300グラムの不揮発性コーティング組成物であり、かつ1当量のカチオン性基当たりで3000グラム以下の不揮発性コーティング組成物である、項目1〜8のいずれか一項に記載の物品。
[項目10]
前記コーティング組成物中に存在する、ポリマー上のシラン官能基と任意の遊離シラン上のシラン官能基とに由来するコーティング組成物のシラン当量は、1当量のシラン当たりで少なくとも200グラムの不揮発性コーティング組成物であり、かつ1当量のシラン基当たりで4000グラム以下の不揮発性コーティング組成物である、項目1〜9のいずれか一項に記載の物品。
[項目11]
少なくとも1つの前記ペンダント要素がフッ素化合物を含む、項目1〜10のいずれか一項に記載の物品。
[項目12]
前記第2ペンダント基がフッ素化合物を含む、項目11に記載の物品。
[項目13]
前記ビニルポリマーの接着される前記患者接触表面が、ガラス、金属、金属酸化物、セラミックス、又はポリマーの表面である、項目1〜12のいずれか一項に記載の物品。
[項目14]
前記ポリマーの表面が可撓性ポリマーの表面を含む、項目13に記載の物品。
[項目15]
前記第1基材が、前記第1表面上に耐久性の金属酸化物層を更に含む、項目1〜14のいずれか一項に記載の物品。
[項目16]
前記金属酸化物層が、ケイ素、ジルコニウム、アルミニウムの酸化物、又は前述の金属酸化物の任意の2種以上の組み合わせを含み、前記ビニルポリマーが前記金属酸化物層に接着される、項目15に記載の物品。
[項目17]
前記第1基材の前記第2表面が第2基材に接着される、項目1〜16のいずれか一項に記載の物品。
[項目18]
前記第1基材が、化学結合、熱結合、接着剤、機械的締結具、又は前述の任意の組み合わせによって前記第2基材に接着される、項目17に記載の物品。
[項目19]
前記医療機器が、内視鏡、気管内チューブ、血管内カテーテル、尿道カテーテル、創傷包帯、聴診器のダイアフラム、聴診器の管部、聴診器のチェストピース、人工呼吸器のチューブ、患者の栄養チューブ、外科用ドレーン、及び哺乳類組織との接触を意図した、その他の平坦な、管状の又は成形した可撓性医療機器を含む、項目1〜18のいずれか一項に記載の物品。
[項目20]
カチオン性要素を含む第1ペンダント基と、
非極性要素を含む第2ペンダント基と、
第1有機ケイ素要素を含む第3ペンダント基と、を含む複数のペンダント基を有するビニルポリマーを含む、コーティング組成物と、
体液接触第1表面及び第2表面を有する体液接触するエラストマー基材と、を含む物品であって、
前記ビニルポリマーが前記体液接触第1表面と耐久的に接着し、
前記組成物が無機充填剤を本質的に含まない、物品。
[項目21]
前記カチオン性要素が、第四級アミン要素、プロトン化した第三級アミン要素、及びプロトン化した第二級アミン要素からなる群から選択される、項目20に記載の物品。
[項目22]
前記有機ケイ素要素が、オルガノシラン又はオルガノシランエステルを含む、項目20又は21に記載の物品。
[項目23]
前記コーティングが付着され、かつ前記組成物中に存在する追加の遊離シランで硬化される、項目20〜22のいずれか一項に記載の物品。
[項目24]
前記追加の遊離シランが、6〜22個の炭素原子の少なくとも1つの直鎖又は分枝鎖アルキルを有する第四級アンモニウムシラン又はプロトン化した第三級アミノシランである、項目23に記載の物品。
[項目25]
前記組成物が接着促進成分を更に含む、項目20〜24のいずれか一項に記載の物品。
[項目26]
前記ポリマーが、カルボキシレート又はアルコキシレート化学基を含むペンダント基を含まない、項目20〜25のいずれか一項に記載の物品。
[項目27]
前記ビニルポリマーにおいて、カチオン性アミンモル当量と有機ケイ素モル当量との比が、約0.1:1〜約10:1である、項目20〜26のいずれか一項に記載の物品。
[項目28]
前記ポリマー上のカチオン性基、並びに存在する任意のカチオン性第四級アミノ、プロトン化した第三級アミノ、又はプロトン化した第二級アミノシランに由来の非浸出性カチオン性アミンの合計濃度は、1当量のカチオン性基当たりで少なくとも300グラムの不揮発性コーティング組成物であり、かつ1当量のカチオン性基当たりで3000グラム以下の不揮発性コーティング組成物である、項目20〜27のいずれか一項に記載の物品。
[項目29]
前記コーティング組成物中に存在する、ポリマー上のシラン官能基と任意の遊離シラン上のシラン官能基とに由来するコーティング組成物のシラン当量は、1当量のシラン当たりで少なくとも200グラムの不揮発性コーティング組成物であり、かつ1当量のシラン基当たりで4000グラム以下の不揮発性コーティング組成物である、項目20〜28のいずれか一項に記載の物品。
[項目30]
少なくとも1つの前記ペンダント要素がフッ素化合物を含む、項目20〜29のいずれか一項に記載の物品。
[項目31]
前記第2ペンダント基がフッ素化合物を含む、項目30に記載の物品。
[項目32]
前記ビニルポリマーが接着される前記患者接触表面が、ガラス、金属、金属酸化物、セラミックス、又はポリマーの表面である、項目20〜31のいずれか一項に記載の物品。
[項目33]
前記ポリマーの表面が可撓性ポリマーの表面を含む、項目32に記載の物品。
[項目34]
前記第1基材が、前記第1表面上に耐久性の金属酸化物層を更に含む、項目20〜33のいずれか一項に記載の物品。
[項目35]
前記金属酸化物層が、ケイ素、ジルコニウム、アルミニウムの酸化物、又は前述の金属酸化物の任意の2種以上の組み合わせを含み、前記ビニルポリマーが前記金属酸化物層に接着される、項目34に記載の物品。
[項目36]
前記第1基材の前記第2表面が第2基材に接着される、項目20〜35のいずれか一項に記載の物品。
[項目37]
前記第1基材が、化学結合、熱結合、接着剤、機械的締結具、又は前述の任意の組み合わせにより前記第2基材に接着される、項目36に記載の物品。
[項目38]
コーティングされた物品の製造方法であって、
第1カチオン性要素を含む第1ペンダント基と、
非極性要素を含む第2ペンダント基と、
第1有機ケイ素要素を含む第3ペンダント基と、を含む複数のペンダント基を有するビニルポリマーを含み、無機充填剤を本質的に含まない、第1コーティング組成物の形成工程と、
前記ポリマーを第1基材の第1表面に接着するのに好適な条件下で、前記第1コーティング組成物を前記第1表面と接触させる工程と、を含み、
前記第1基材が医療機器のエラストマー構成要素を含む、コーティングされた物品の製造方法。
[項目39]
コーティング用第1コーティング組成物を形成する工程が、接着促進成分を含む第1コーティング組成物を形成する工程を含む、項目38に記載の方法。
[項目40]
第1コーティング組成物を形成する工程が、溶媒中でのビニルポリマーの乳濁液又は分散液を形成する工程を含む、項目38又は項目39に記載の方法。
[項目41]
前記第1コーティング組成物を形成する工程が、硬化過程のシランの加水分解及び/又は縮合反応を促進する触媒化合物を含む第1コーティング組成物を形成する工程を更に含む、項目38〜40のいずれか一項に記載の方法。
[項目42]
前記第1コーティング組成物を形成する工程が、接着促進剤を含む第1コーティング組成物を形成する工程を更に含む、項目38〜41のいずれか一項に記載の方法。
[項目43]
第1コーティング組成物を形成する工程が、遊離の第2カチオン性シラン要素及び/又は第2カチオン性要素を含む第1コーティング組成物を形成する工程を更に含む、項目38〜42のいずれか一項に記載の方法。
[項目44]
前記第1コーティング組成物を前記表面と接触させる工程の後に、前記表面を浸漬する及び/又はすすぐ工程を更に含む、項目38〜43のいずれか一項に記載の方法。
[項目45]
前記第1基材を第2基材に結合させる工程を更に含む、項目38〜44のいずれか一項に記載の方法。
[項目46]
前記第1コーティング組成物を前記第1基材の前記第1表面と接触させる工程に先立ち、第2コーティング組成物を前記第1基材の前記第1表面と接触させる工程を更に含む、項目38〜45のいずれか一項に記載の方法。
[項目47]
コーティングされた物品の製造方法であって、
第1カチオン性要素を含む第1ペンダント基と、
非極性要素を含む第2ペンダント基と、
第1有機ケイ素要素を含む第3ペンダント基と、を含む複数のペンダント基を有するビニルポリマーを含み、無機充填剤を本質的に含まない、第1コーティング組成物の形成工程と、
前記ポリマーを第1基材の第1表面に接着するのに好適な条件下で、前記第1コーティング組成物を前記第1表面と接触させる工程と、を含み、
前記第1基材が体液接触するエラストマー基材を含む、コーティングされた物品の製造方法。
[項目48]
第1コーティング組成物を形成する工程が、接着促進成分を含む第1コーティング組成物を形成する工程を含む、項目47に記載の方法。
[項目49]
第1コーティング組成物を形成する工程が、溶媒中でのビニルポリマーの乳濁液又は分散液を形成する工程を含む、項目47又は項目48に記載の方法。
[項目50]
前記第1コーティング組成物を形成する工程が、触媒化合物を含む第1コーティング組成物を形成する工程を更に含む、項目47〜49のいずれか一項に記載の方法。
[項目51]
前記第1コーティング組成物を形成する工程が、接着促進剤を含む第1コーティング組成物を形成する工程を更に含む、項目47〜50のいずれか一項に記載の方法。
[項目52]
第1コーティング組成物を形成する工程が、遊離の第2のカチオン性シラン要素及び/又は第2のカチオン性要素を含む第1コーティング組成物を形成する工程を更に含む、項目47〜51のいずれか一項に記載の方法。
[項目53]
前記第1コーティング組成物を前記表面と接触させる工程の後に、前記表面を浸漬する及び/又はすすぐ工程を更に含む、項目47〜52のいずれか一項に記載の方法。
[項目54]
前記第1基材を第2基材に結合させる工程を更に含む、項目47〜53のいずれか一項に記載の方法。
[項目55]
前記第1コーティング組成物を前記第1基材の前記第1表面と接触させる工程に先立ち、第2コーティング組成物を前記第1基材の前記第1表面と接触させる工程を更に含む、項目47〜54のいずれか一項に記載の方法。
[項目56]
項目38〜55のいずれか一項に記載の方法によって製造された物品。
[項目57]
コーティングを含む医療機器物品であって、前記コーティングが、
遊離シラン要素と、
第1の第四級アンモニウム要素を含む第1ペンダント基と、
第1有機ケイ素要素を含む第2ペンダント基と、を含む複数のペンダント基を有するビニルポリマーと、を含む組成物から誘導され、
前記ビニルポリマーが表面に耐久的に接着される、医療機器物品。
[項目58]
前記組成物が実質的に無機充填剤を含まない、項目57に記載の医療機器物品。
[項目59]
前記遊離シランが第四級アンモニウムシランである、項目57又は項目58に記載の医療機器物品。
[項目60]
前記遊離の第四級アンモニウムシランが、前記第四級アミンに結合される少なくとも1つの直鎖又は分枝鎖のC8〜C22アルキル基を含む、項目59に記載の医療機器物品。