(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992942
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】交流電動機の駆動における異常状態検出方法及び装置
(51)【国際特許分類】
H02P 29/024 20160101AFI20160901BHJP
H02P 23/14 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
H02P29/024
H02P23/14
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-56132(P2014-56132)
(22)【出願日】2014年3月19日
(65)【公開番号】特開2015-180133(P2015-180133A)
(43)【公開日】2015年10月8日
【審査請求日】2014年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(72)【発明者】
【氏名】落岩 崇
(72)【発明者】
【氏名】豊田 大輔
【審査官】
マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−002669(JP,A)
【文献】
特開平08−066087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/024
H02P 23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーボアンプ(2)からの駆動信号を複数相の動力線(3,4,5)を用いて交流電動機(1)を予め設定された設定動作により駆動するようにした交流電動機の駆動方法において、
前記各動力線(3,4,5)の何れか1相のみに設けられた電流センサ(6)のみにより時々刻々の電流値(7)を取得し、前記電流値(7)のみから時々刻々の基本周波数と基本振幅を取得することで、回転数−トルク変換回路である変換用演算部(8)のみを経て回転数(7b)とトルク(7a)からなる情報(9)を取得し、かつ、前記情報(9)のみを直接外部記憶装置(10)に記憶し、前記情報(9)は、回転数/トルク特性の比較演算部(11)にて予め記憶させている正常時の情報と異常時の情報を比較することにより、前記交流電動機(1)の正常時の駆動状態と異常時の駆動状態を比較し、前記交流電動機(1)の異常状態を前記交流電動機(1)を有する装置の動作中に検出することを特徴とする交流電動機の駆動における異常状態検出方法。
【請求項2】
サーボアンプ(2)からの駆動信号を複数相の動力線(3,4,5)を用いて交流電動機(1)を予め設定された設定動作により駆動するようにした交流電動機の駆動装置において、
前記各動力線(3,4,5)の何れか1相のみに設けられた電流センサ(6)のみにより時々刻々の電流値(7)を取得し、前記電流値(7)のみから時々刻々の基本周波数と基本振幅を取得することで、回転数−トルク変換回路である変換用演算部(8)のみを経て回転数(7b)とトルク(7a)からなる情報(9)を取得し、かつ、前記情報(9)のみを直接外部記憶装置(10)に記憶し、前記情報(9)は、回転数/トルク特性の比較演算部(11)にて予め記憶されている正常時の情報と異常時の情報を比較することにより、前記交流電動機(1)の正常時の駆動状態と異常時の駆動状態を比較し、前記交流電動機(1)の異常状態を前記交流電動機(1)を有する装置の動作中に検出することを特徴とする交流電動機の駆動における異常状態検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電動機の駆動
における異常状態検出方法及び装置に関し、特に、サーボアンプと交流電動機間の動力線に設けた電流センサからの電流値
のみにより、回転数とトルクからなる情報を取得し、この情報に基づいて交流電動機の駆動状態を検出するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の交流電動機の駆動
における異常状態検出及び制御方法としては、例えば、特許文献1及び2で提案されている構成を挙げることができる。
すなわち、特許文献1の構成の場合、図示していないが、洗濯槽を含む受け筒の振動状態を検出し、その振動が小さくなるように制御して脱水時の振動、騒音を低減することを目的として、回転ドラムを回転駆動するモータの駆動を制御する制御手段と、受け筒を支持する支持手段と、振動を検知する振動センサと、振動センサで検知した振動の出力信号をモータ制御信号として制御手段に入力する振動制御手段とを具備した洗濯機が提案されている。この洗濯機は、洗濯脱水工程において、洗濯槽を含む受け筒の振動状態を検出して、その振動量を小さくするように制御量をモータ制御電流にフィードバック制御することが可能なため、脱水時の受け筒の振動や筐体の振動を制御することで、振動の低減を実現することができる構成である。
【0003】
また、特許文献2の構成の場合、製造ラインに沿って配置され、協働して被加工物に対する加工又は処理を実施する複数の駆動系と、該複数の駆動系それぞれをフィードバック制御するための制御系とからなる製造プラントにおいて、該製造プラントの駆動系で発生する異常な稼働状態を検出する異常検出装置であって、各々の駆動系の動作状態を検知したフィードバック信号を測定する測定部と、複数の駆動系のうちの一の駆動系に対するフィードバック信号、又は当該フィードバック信号に基づいて生成され該一の駆動系を制御する駆動信号から、所定の周波数成分を抽出する周波数解析部と、周波数解析部が抽出した所定の周波数成分の振幅値に基づいて、一方の駆動系と協働する他方の駆動系で発生する異常な稼働状態を異常の発生に先立って検出する異常検出部と、を有することを特徴とする、異常検出装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−177312号公報
【特許文献2】特開2009−175937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の交流電動機の駆動
における異常状態検出及び制御方法は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、前述の各特許文献1及び2に開示された各構成の場合、電動機の回転数情報を取得するためには、エンコーダ、レゾルバ等の回転検出器から情報を収集する必要があった。しかし、例えば、エンコーダから情報を収集するためには、エンコーダから直接情報を収集するために機器本体に物理的な電気的処理を新たに施すための処理器等が必要であり煩雑で、かつ、高コストであるなどの問題があった。
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、サーボアンプと交流発電機関の動力線に設けた電流センサのみからの電流値により、回転数とトルクからなる情報を取得し、この情報に基づいて交流電動機の駆動
における異常状態を検出するようにした交流電動機の駆動
における異常状態検出方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による交流電動機の駆動
における異常状態検出方法は、サーボアンプからの駆動信号を複数相の動力線を用いて交流電動機を予め設定された設定動作により駆動するようにした交流電動機の駆動方法において、前記
各動力線
の何れか1相のみに設けられた電流センサのみにより
時々刻々の電流値を取得し、前記電流値
のみから
時々刻々の基本周波数と基本振幅を取得することで、回転数−トルク変換回路である変換用演算部
のみを経て回転数とトルクからなる情報を取得し、かつ、前記情報
のみを直接外部記憶装置に
記憶し、前記情報は、回転数/トルク特性の比較演算部にて
予め記憶させている正常時の情報と異常時の情報を比較
することにより、前記交流電動機の正常時の駆動状態と異常時の駆動状態を比較し、前記交流電動機の異常状態を前記交流電動機を有する装置の動作中に検出する方法であり、また、本発明による交流電動機の駆動
における異常状態検出装置は、サーボアンプからの駆動信号を複数相の動力線を用いて交流電動機を予め設定された設定動作により駆動するようにした交流電動機の駆動装置において、前記
各動力線
の何れか1相のみに設けられた電流センサのみにより
時々刻々の電流値を取得し、前記電流値
のみから
時々刻々の基本周波数と基本振幅を取得することで、回転数−トルク変換回路である変換用演算部
のみを経て回転数とトルクからなる情報を取得し、かつ、前記情報
のみを直接外部記憶装置に
記憶し、前記情報は、回転数/トルク特性の比較演算部にて
予め記憶されている正常時の情報と異常時の情報を比較
することにより、前記交流電動機の正常時の駆動状態と異常時の駆動状態を比較し、前記交流電動機の異常状態を前記交流電動機を有する装置の動作中に検出する構成である。
【発明の効果】
【0008】
本発明による交流電動機の駆動
における異常状態検出方法及び装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、サーボアンプからの駆動信号を複数相の動力線を用いて交流電動機を予め設定された設定動作により駆動するようにした交流電動機の駆動方
法及び構成において、前記動力線に設けられた電流センサのみにより電流値を取得し、前記電流値から変換用演算部を経て回転数とトルクからなる情報を取得し、かつ、前記情報を外部記憶装置に
記憶し、前記情報は、回転数/トルク特性の比較演算部にて正常時の情報と異常時の情報を比較して前記交流電動機の駆動状態を検出することにより、交流電動機の動作中の回転数とトルクからなる情報を取得することができるため、交流電動機の経時変化を把握でき、劣化状況を判断できる。また、異常発生時も正常時の波形と比較できるため、迅速な対応により、
交流電動機を有する装置の故障等を避けることができる。
また、前記動力線は3相よりなり、前記電流センサは前記3相のうちの何れか1相に設けられていることにより、簡単なセンサで済むことにより、極めて安価である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明による交流電動機の駆動
における異常状態検出方法及び装置を示す構成図である。
【
図2】
図1の電流センサからの電流の電流波形図である。
【
図3】
図1の電流センサからの電流から得た回転数波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明による交流電動機の駆動
における異常状態検出方法及び装置は、サーボアンプと交流電動機関の動力線に設けた電流センサからの電流値
のみにより、回転数とトルクからなる情報を取得し、この情報に基づいて交流電動機の駆動状態を検出することである。
【実施例】
【0011】
以下、図面と共に本発明による交流電動機の駆動
における異常状態検出方法及び装置の好適な実施の形態について説明する。
図1において符号1で示されるものは、サーボアンプ2に対してU相、V相及びW相の三相からなる動力線3,4,5を介して接続された交流電動機であり、前記各動力線3,4,5を介してサーボアンプ3からの駆動信号が交流電動機1に送られることにより、交流電動機1が所定の回転数で回転するように構成されている。
【0012】
前記各動力線3,4,5のうち、U相の
みの動力線3のみには、周知のクリップ形式の1個の電流センサ6のみが設けられており、この電流センサ6で取得した電流値7は、周知の数学処理変換回路からなる変換用演算部8に入力されて前記電流値7がトルク7aと回転数7bに変換される。
【0013】
前記トルク7aと回転数7bとによって情報9が形成され、この情報9は外部記憶装置10に
記憶され、この情報9が比較演算部11に入力されると共に、この比較演算部11に予め設定されている正常時の回転数・トルク特性に対して前記情報9が比較されるように構成されている。
【0014】
次に、本発明による交流電動機の駆動
における異常状態検出方法の動作について述べる。
まず、交流電動機1の計測時には、交流電動機1の動力線3の電流センサ6から時々刻々の電流値7を取得して、周知の数学処理変換回路と回転数−トルク変換回路からなる変換用演算部8を用いて回転数7bとトルク7aを取得し、かつ、その情報9を外部記憶装置10に保存して、正常時の情報と異常時の情報を比較する。
【0015】
前述の場合、用いられる数学処理変換方法は、電流波形(
図2)から時々刻々の基本周波数と基本振幅を取得することで、回転数−トルク変換回路である変換用演算部8において、回転数(
図3)と図示しないトルクを算出する。具体的方法は以下の通りとなる。まず、取得した電流値7の電流波形に対して、数学処理(ここでは、周知のウェーブレット変換)より基本周波数fと基本振幅Iを取得する。次に、計測対象の電動機の極数pより、回転数Nは、N=(120f)/pより求められる。また、同時に、トルクも求める。この際、事前に計測対象の電動機のモータ特性であるトルク定数Kを求めておく。トルクTはT=KIの関係式が成り立つため、先程求めた電流の基本振幅Iを用いてトルクTを求める。この処理を収集処理毎に実施することで、電流波形より、回転数−トルク値を算出する。
この時、用いられる数学処理はウェーブレット変換であるが、時々刻々の基本周波数と基本振幅を取得することができれば、この交換方法に限らない。
また、前述のように収集した情報
9のみは、外部記憶装置10に
直接記憶することで、この外部記憶装置10に予め記憶させている正常時の前記情報9と比較することにより、前記交流電動機1の正常時の駆動状態と、異常時の駆動状態を比較することで、交流電動機の異常状態を把握できる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明による交流電動機の駆動
における異常状態検出方法及び装置は、交流電動機に設けられた電流センサからの電流値のみを用いてトルクと回転数の正常か異常かを検出でき、従来の高価なエンコーダ等を用いることなく電動機の異常状態を検出することができる。
【符号の説明】
【0017】
1 交流電動機
2 サーボアンプ
3,4,5 動力線
6 電流センサ
7 電流値
7a トルク
7b 回転数
8 情報
10 外部記憶装置
11 比較演算部