【実施例】
【0023】
実施例1
メソ多孔性シリカの製造:4.0gのエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー(商品名:プルロニック(Pluronic)P123)を、30.0gの水と120.0gの塩酸(2mol/L)との混合溶液中に溶解し、均一に撹拌した後、そこに8.4gのオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を添加した。次に、この混合物を35℃で24時間撹拌し、熱水反応釜に移し、ここで温度を100℃で24時間維持した。冷却した後、この混合物を4000回転/分で遠心分離し、95℃で乾燥し、次に、550℃で、空気雰囲気中で、2時間か焼した。このようにしてメソ多孔性シリカが得られた。
【0024】
(1)0.3gのメソ多孔性シリカ、および、0.3gのマグネシウム粉末を高温炉に置いた。アルゴンと水素とのガス混合物中で(水素含量は、5体積%であった)、温度を650℃に高め、温度を7時間維持し、その後この混合物をそのまま冷却した。次に、この材料を25mlの塩酸(2mol/L)に投入し、12時間撹拌した。4000回転/分で4回遠心分離し、80℃で12時間真空乾燥した後、多孔性ケイ素基材が得られた。
【0025】
(2)多孔性ケイ素基材を高温炉に置き、ここで温度をアルゴン雰囲気中で900℃に高めた。次に、アセチレンを、アルゴンによって炉に運搬し(ここでアルゴンとアセチレンとの体積比は5:1であり、全体の流速は300ml/分であった)、温度を4時間維持した。アセチレンを分離した後、多孔性ケイ素基材の表面上に炭素コーティング層が形成され、このようにしてリチウムイオン電池のためのケイ素−炭素複合材料の負極材料が得られた。
【0026】
多孔性ケイ素基材の形態および構造は、
図1で示した通りであった。粒子は、長さおよそ600nmおよび直径およそ400nmのほぼ円柱形であり、基材は、多孔質構造を示す。
図2に示される細孔の粒度分布曲線から、細孔のサイズは約40nmであり、細孔容積は0.56cm
3/gであり、比表面積は78.5m
2/gであることが示される。
図3は、多孔性ケイ素基材と炭素コーティング層との境界面のTEM画像を示す。ケイ素結晶面(111)は
図3で観察することができ、この面の間隙は0.31nmであった。炭素コーティング層は、無定形炭素からなり、且つ、その厚さはおよそ7nmであった。炭素コーティング層は、40.0質量%を占めていた。ケイ素が多結晶構造を有することは、
図3における電子線回折画像で観察することができる。画像中で最小の直径を有する多結晶の回折リングは、ケイ素の(111)結晶面に相当する。
【0027】
このようにして製造されたリチウムイオン電池のためのケイ素−炭素複合材料の負極材料を、リチウムイオン電池に組み立て、それに対して充放電試験を行った。
図4は、最初の3サイクルの充放電曲線を示す。
図5は、最初の40サイクルの容量対サイクル数を示す。充放電の初期クーロン効率は、72.0%であった。0.2Cのレートにおける40サイクル後の可逆容量は、1509mAh/gであり、容量保持率は、90.1%であった。0.05C、0.2C、0.5C、1C、4C、8C、および、15Cのレートで試験を行ったところ、本発明のリチウムイオン電池のためのケイ素−炭素複合材料の負極材料は、
図6で観察されるように、1583mAh/g、1556mAh/g、1370mAh/g、1290mAh/g、877mAh/g、598mAh/g、および、474mAh/gの可逆容量を示した。この材料の電気化学的特性は、従来のケイ素−炭素複合材料よりも優れていた。
【0028】
実施例2
メソ多孔性シリカの製造:3.0gのプルロニックP123を、22.5gの水、3.0gの1−ブタノール、および90.0gの塩酸(2mol/L)の混合溶液中に溶解し、均一に撹拌した後、そこに6.3gのTEOSを添加した。次に、この混合物を35℃で24時間撹拌し、熱水反応釜に移し、ここで温度を100℃で24時間維持した。冷却した後、この混合物を4000回転/分で遠心分離し、100℃で乾燥し、次に、600℃で、空気雰囲気中で、2時間か焼した。このようにしてメソ多孔性シリカが得られた。
【0029】
(1)0.4gのメソ多孔性シリカ、および、0.4gのマグネシウム粉末を、アルゴン雰囲気中で高温炉に置き、温度を700℃に高め、温度を6時間維持し、その後この混合物をそのまま冷却した。次に、この材料を30mlの塩酸(2mol/L)に投入し、12時間撹拌した。4000回転/分で4回遠心分離し、80℃で12時間真空乾燥した後、多孔性ケイ素基材が得られた。
【0030】
(2)多孔性ケイ素基材を高温炉に置き、ここで温度を窒素雰囲気中で800℃に高めた。次に、トルエンを、窒素によって炉に運搬し(窒素の流速は、800ml/分であった)、温度を2時間維持した。トルエンを分離した後、多孔性ケイ素基材の表面上に炭素コーティング層が形成され、このようにしてリチウムイオン電池のためのケイ素−炭素複合材料の負極材料が得られた。
【0031】
この多孔性ケイ素基材は、多結晶構造を有しており、平均粒度は、2.4μmであり、細孔の平均サイズは、35nmであり、細孔容積は、0.61cm
3/gであり、比表面積は、73.3m
2/gであった。
図7は、このリチウムイオン電池のためのケイ素−炭素複合材料の負極材料のTEM画像を示す。
図7(a)から、この材料は、多孔質構造を有することが観察できる。
図7(b)は、多孔性ケイ素基材と炭素コーティング層との境界面を示す。結晶面(111)は
図7(b)で観察することができ、この面の間隙は0.31nmであった。炭素コーティング層は、無定形炭素からなり、且つ、5nmの厚さを有する。炭素コーティング層は、25.6質量%を占める。
【0032】
このようにして製造されたリチウムイオン電池のためのケイ素−炭素複合材料の負極材料を、リチウムイオン電池に組み立て、それに対して充放電試験を行った。充放電の初期クーロン効率は、75.2%であった。40サイクル後の可逆容量は、1325mAh/gであり、容量保持率は、73.7%であった。
【0033】
実施例3
メソ多孔性シリカの製造:4.0gのプルロニックP123を、30.0gの水、4.0gの1−ブタノール、および、120.0gの塩酸(2mol/L)の混合溶液中に溶解し、均一に撹拌した後、そこに8.4gのTEOSを添加した。次に、この混合物を35℃で24時間撹拌し、熱水反応釜に移し、ここで温度を100℃で24時間維持した。冷却した後、この混合物を4000回転/分で遠心分離し、100℃で乾燥し、次に、600℃で、空気雰囲気中で、2時間か焼した。このようにしてメソ多孔性シリカが得られた。
【0034】
(1)0.4gのメソ多孔性シリカ、および、0.4gのマグネシウム粉末を高温炉に置いた。アルゴンと水素とのガス混合物中で(水素含量は5体積%であった)、温度を750℃に高め、温度を7時間維持し、その後この混合物をそのまま冷却した。次に、この材料を30mlの塩酸(2mol/L)に投入し、12時間撹拌した。4000回転/分で4回遠心分離し、80℃で12時間真空乾燥した後、多孔性ケイ素基材が得られた。
【0035】
(2)多孔性ケイ素基材を高温炉に置き、ここで温度をアルゴン雰囲気中で900℃に高めた。次に、アセチレンを、アルゴンによって炉に運搬し(ここでアルゴンとアセチレンとの体積比は4:1であり、全体の流速は250ml/分であった)、温度を3時間維持した。アセチレンを分離した後、多孔性ケイ素基材の表面上に炭素コーティング層が形成され、このようにしてリチウムイオン電池のためのケイ素−炭素複合材料の負極材料が得られた。
【0036】
この多孔性ケイ素基材は、多結晶構造を有しており、平均粒度は、2.5μmであり、細孔の平均サイズは、32nmであり、細孔容積は、0.64cm
3/gであり、比表面積は、73.0m
2/gであった。
図8に、形態構造を示す。リチウムイオン電池のためのケイ素−炭素複合材料の負極材料は、無定形炭素からなり、且つ、6nmの厚さを有する34.6質量%の炭素コーティング層を含んでいた。
【0037】
このようにして製造されたリチウムイオン電池のためのケイ素−炭素複合材料の負極材料を、リチウムイオン電池に組み立て、それに対して充放電試験を行った。充放電の初期クーロン効率は、72.2%であった。40サイクル後の可逆容量は、1570mAh/gであり、容量保持率は、84.8%であった。
【0038】
実施例4
メソ多孔性シリカの製造:2.0gのプルロニックP123を、15gの水、および、60.0gの塩酸(2mol/L)の混合溶液中に溶解し、均一に撹拌した後、そこに4.2gのTEOSを添加した。次に、この混合物を35℃で24時間撹拌し、熱水反応釜に移し、ここで温度を100℃で24時間維持した。冷却した後、この混合物を5000回転/分で遠心分離し、90℃で乾燥し、次に、650℃で、空気雰囲気中で、2時間か焼した。このようにしてメソ多孔性シリカが得られた。
【0039】
(1)0.35gのメソ多孔性シリカ、および、0.35gのマグネシウム粉末を、アルゴン雰囲気中で高温炉に置き、温度を700℃に高め、温度を6時間維持し、その後この混合物をそのまま冷却した。次に、この材料を30mlの塩酸(2mol/L)に投入し、12時間撹拌した。5000回転/分で4回遠心分離し、80℃で12時間真空乾燥した後、多孔性ケイ素基材が得られた。
【0040】
(2)多孔性ケイ素基材を高温炉に置き、ここで温度を窒素雰囲気中で770℃に高めた。次に、トルエンを、窒素によって炉に運搬し(窒素の流速は、1000ml/分であった)、温度を1時間維持した。トルエンを分離した後、多孔性ケイ素基材の表面上に炭素コーティング層が形成され、このようにしてリチウムイオン電池のためのケイ素−炭素複合材料の負極材料が得られた。
【0041】
この多孔性ケイ素基材は、多結晶構造を有しており、平均粒度は、700nmであり、細孔の平均サイズは、23nmであり、細孔容積は、0.42cm
3/gであり、比表面積は、78.1m
2/gであった。このリチウムイオン電池のためのケイ素−炭素複合材料の負極材料は、無定形炭素からなり、且つ、4nmの厚さを有する18.3質量%の炭素コーティング層を含んでいた。
【0042】
このようにして製造されたリチウムイオン電池のためのケイ素−炭素複合材料の負極材料を、リチウムイオン電池に組み立て、それに対して充放電試験を行った。充放電の初期クーロン効率は、76.5%であった。40サイクル後の可逆容量は、1825mAh/gであり、容量保持率は、83.6%であった。
【0043】
実施例5
メソ多孔性シリカの製造:3.5gのプルロニックP123を、26.3gの水、および、105.0gの塩酸(2mol/L)の混合溶液中に溶解し、均一に撹拌した後、そこに7.4gのTEOSを添加した。次に、この混合物を35℃で24時間撹拌し、熱水反応釜に移し、ここで温度を100℃で24時間維持した。冷却した後、この混合物を5000回転/分で遠心分離し、80℃で乾燥し、次に、600℃で、空気雰囲気中で、2時間か焼した。このようにしてメソ多孔性シリカが得られた。
【0044】
(1)0.3gのメソ多孔性シリカ、および、0.3gのマグネシウム粉末を高温炉に置いた。アルゴンと水素とのガス混合物中で(水素含量は10体積%であった)、温度を700℃に高め、温度を7時間維持し、その後この混合物をそのまま冷却した。次に、この材料を25mlの塩酸(2mol/L)に投入し、12時間撹拌した。5000回転/分で4回遠心分離し、80℃で12時間真空乾燥した後、多孔性ケイ素基材が得られた。
【0045】
(2)0.2gの多孔性ケイ素基材、および、0.7gのポリ塩化ビニルを、15mlのテトラヒドロフラン中に分散した。この混合物を、超音波処理および撹拌によって均一に分散した。次に、テトラヒドロフランを蒸発させ、この材料を高温炉に移し、ここで温度をアルゴン雰囲気中で900℃に高め、その温度を2時間維持した。ポリ塩化ビニルを分離した後、多孔性ケイ素基材の表面上に炭素コーティング層が形成され、このようにしてリチウムイオン電池のためのケイ素−炭素複合材料の負極材料が得られた。
【0046】
この多孔性ケイ素基材は、多結晶構造を有しており、平均粒度は、650nmであり、細孔の平均サイズは、24nmであり、細孔容積は、0.43cm
3/gであり、比表面積は、77.8m
2/gであった。このリチウムイオン電池のためのケイ素−炭素複合材料の負極材料は、無定形炭素からなり、且つ、6nmの厚さを有する31.4質量%の炭素コーティング層を含んでいた。
【0047】
このようにして製造されたリチウムイオン電池のためのケイ素−炭素複合材料の負極材料を、リチウムイオン電池に組み立て、それに対して充放電試験を行った。充放電の初期クーロン効率は、74.1%であった。初期のリチウムのインターカレーション能は、1855mAh/gであり、初期のリチウムのデインターカレーション能は、1374mAh/gであった。
【0048】
実施例6
メソ多孔性シリカの製造:2.0gのプルロニックP123を、15.0gの水、2.0gの1−ブタノール、および、60.0gの塩酸(2mol/L)の混合溶液中に溶解し、均一に撹拌した後、そこに4.2gのTEOSを添加した。次に、この混合物を35℃で24時間撹拌し、熱水反応釜に移し、ここで温度を100℃で24時間維持した。冷却した後、この混合物を6000回転/分で遠心分離し、100℃で乾燥し、次に、550℃で、空気雰囲気中で、2時間か焼した。このようにしてメソ多孔性シリカが得られた。
【0049】
(1)0.35gのメソ多孔性シリカ、および、0.35gのマグネシウム粉末を高温炉に置いた。アルゴン雰囲気中で、温度を650℃に高め、温度を7時間維持し、その後この混合物をそのまま冷却した。次に、この材料を30mlの塩酸(2mol/L)に投入し、12時間撹拌した。6000回転/分で4回遠心分離し、80℃で12時間真空乾燥した後、多孔性ケイ素基材が得られた。
【0050】
(2)0.2gの多孔性ケイ素基材、および、0.4gのポリアクリロニトリルを、10mlのジメチルホルムアミド中に分散した。この混合物を、超音波処理および撹拌によって均一に分散した。次に、ジメチルホルムアミドを蒸発させ、この材料を高温炉に移し、ここで温度を窒素雰囲気中で900℃に高め、その温度を2時間維持した。ポリアクリロニトリルを分離した後、多孔性ケイ素基材の表面上に炭素コーティング層が形成され、このようにしてリチウムイオン電池のためのケイ素−炭素複合材料の負極材料が得られた。
【0051】
この多孔性ケイ素基材は、多結晶構造を有しており、平均粒度は、2.5μmであり、細孔の平均サイズは、34nmであり、細孔容積は、0.66cm
3/gであり、比表面積は、72.8m
2/gであった。このリチウムイオン電池のためのケイ素−炭素複合材料の負極材料は、無定形炭素からなり、且つ、4nmの厚さを有する20.9質量%の炭素コーティング層を含んでいた。
【0052】
このようにして製造されたリチウムイオン電池のためのケイ素−炭素複合材料の負極材料を、リチウムイオン電池に組み立て、それに対して充放電試験を行った。充放電の初期クーロン効率は、64.0%であった。初期のリチウムのインターカレーション能は、1242mAh/gであり、初期のリチウムのデインターカレーション能は、795mAh/gであった。
【0053】
実施例7
メソ多孔性シリカの製造:3.0gのプルロニックP123を、22.5gの水、3.0gの1−ブタノール、および、135.0gの塩酸(2mol/L)の混合溶液中に溶解し、均一に撹拌した後、そこに9.5gのTEOSを添加した。次に、この混合物を35℃で24時間撹拌し、熱水反応釜に移し、ここで温度を100℃で24時間維持した。冷却した後、この混合物を5000回転/分で遠心分離し、80℃で乾燥し、次に、650℃で、空気雰囲気中で、2時間か焼した。このようにしてメソ多孔性シリカが得られた。
【0054】
(1)0.45gのメソ多孔性シリカ、および、0.45gのマグネシウム粉末を高温炉に置いた。アルゴン雰囲気中で、温度を750℃に高め、温度を6時間維持し、その後この混合物をそのまま冷却した。次に、この材料を30mlの塩酸(2mol/L)に投入し、12時間撹拌した。5000回転/分で4回遠心分離し、80℃で12時間真空乾燥した後、多孔性ケイ素基材が得られた。
【0055】
(2)0.3gの多孔性ケイ素基材、および、0.95gのポリ塩化ビニルを、10mlのテトラヒドロフラン中に分散した。この混合物を、超音波処理および撹拌によって均一に分散した。次に、テトラヒドロフランを蒸発させ、この材料を高温炉に移し、ここで温度をアルゴン雰囲気中で900℃に高め、その温度を4時間維持した。ポリ塩化ビニルを分離した後、多孔性ケイ素基材の表面上に炭素コーティング層が形成され、このようにしてリチウムイオン電池のためのケイ素−炭素複合材料の負極材料が得られた。
【0056】
この多孔性ケイ素基材は、多結晶構造を有しており、平均粒度は、2.6μmであり、細孔の平均サイズは、33nmであり、細孔容積は、0.65cm
3/gであり、比表面積は、72.9m
2/gであった。このリチウムイオン電池のためのケイ素−炭素複合材料の負極材料は、無定形炭素からなり、且つ、6nmの厚さを有する29.3質量%の炭素コーティング層を含んでいた。
【0057】
このようにして製造されたリチウムイオン電池のためのケイ素−炭素複合材料の負極材料を、リチウムイオン電池に組み立て、それに対して充放電試験を行った。充放電の初期クーロン効率は、67.2%であった。初期のリチウムのインターカレーション能は、1291mAh/gであり、初期のリチウムのデインターカレーション能は、867mAh/gであった。
【0058】
実施例8
メソ多孔性シリカの製造:4.0gのプルロニックP123を、30.0gの水、および、120.0gの塩酸(2mol/L)の混合溶液中に溶解し、均一に撹拌した後、そこに8.4gのTEOSを添加した。次に、この混合物を35℃で24時間撹拌し、熱水反応釜に移し、ここで温度を100℃で24時間維持した。冷却した後、この混合物を5000回転/分で遠心分離し、80℃で乾燥し、次に、550℃で、空気雰囲気中で、2時間か焼した。このようにしてメソ多孔性シリカが得られた。
【0059】
(1)0.35gのメソ多孔性シリカ、および、0.4gのマグネシウム粉末を高温炉に置いた。アルゴンと水素とのガス混合物中で(水素含量は、10体積%であった)、温度を700℃に高め、温度を7時間維持し、その後この混合物をそのまま冷却した。次に、この材料を30mlの塩酸(2mol/L)に投入し、12時間撹拌した。5000回転/分で4回遠心分離し、80℃で12時間真空乾燥した後、多孔性ケイ素基材が得られた。
【0060】
(2)0.25gの多孔性ケイ素基材、および、0.5gのポリアクリロニトリルを、15mlのジメチルホルムアミド中に分散した。この混合物を、超音波処理および撹拌によって均一に分散した。次に、ジメチルホルムアミドを蒸発させ、この材料を高温炉に移し、ここで温度を窒素雰囲気中で900℃に高め、その温度を4時間維持した。ポリアクリロニトリルを分離した後、多孔性ケイ素基材の表面上に炭素コーティング層が形成され、このようにしてリチウムイオン電池のためのケイ素−炭素複合材料の負極材料が得られた。
【0061】
この多孔性ケイ素基材は、多結晶構造を有しており、平均粒度は、600nmであり、細孔の平均サイズは、24nmであり、細孔容積は、0.44cm
3/gであり、比表面積は、77.7m
2/gであった。このリチウムイオン電池のためのケイ素−炭素複合材料の負極材料は、無定形炭素からなり、且つ、4nmの厚さを有する21.3質量%の炭素コーティング層を含んでいた。
【0062】
このようにして製造されたリチウムイオン電池のためのケイ素−炭素複合材料の負極材料を、リチウムイオン電池に組み立て、それに対して充放電試験を行った。充放電の初期クーロン効率は、72.0%であった。初期のリチウムのインターカレーション能は、1263mAh/gであり、初期のリチウムのデインターカレーション能は、910mAh/gであった。
【0063】
比較例1
0.15gのナノケイ素粉末(粒度:50〜150nm)、および、0.45gのポリ塩化ビニルを、10mlのテトラヒドロフラン中に分散した。この混合物を、超音波処理および撹拌によって均一に分散した。次に、テトラヒドロフランを蒸発させ、この材料を高温炉に移し、ここで温度を窒素と水素とのガス混合物(水素含量は、5体積%である)中で900℃に高め、温度を2時間維持した。ポリ塩化ビニルを分離して冷却した後、細孔を有さないケイ素−炭素複合材料が得られた。炭素コーティング層は、28.8質量%を占め、無定形炭素からなり、且つ、6nmの厚さを有していた。
【0064】
このようにして製造されたケイ素−炭素複合材料を、リチウムイオン電池に組み立て、それに対して充放電試験を行った。
図9は、最初の40サイクルの容量対サイクル数曲線を示す。充放電の初期クーロン効率は、78.0%であった。初期可逆容量は、1194mAh/gであり、40サイクル後の可逆容量は、186mAh/gであり、従って容量保持率は、わずか15.6%であった。
【0065】
比較例2
メソ多孔性シリカの製造:2.0gのプルロニックP123を、15.0gの水、2.0gの1−ブタノール、および、60.0gの塩酸(2mol/L)の混合溶液中に溶解し、均一に撹拌した後、そこに4.2gのTEOSを添加した。次に、この混合物を35℃で24時間撹拌し、熱水反応釜に移し、ここで温度を100℃で24時間維持した。冷却した後、この混合物を5000回転/分で遠心分離し、90℃で乾燥し、次に、650℃で、空気雰囲気中で、2時間か焼した。このようにしてメソ多孔性シリカが得られた。
【0066】
(1)0.35gのメソ多孔性シリカ、および、0.35gのマグネシウム粉末を高温炉に置いた。アルゴンと水素とのガス混合物中で(水素含量は、5体積%であった)、温度を700℃に高め、温度を6時間維持し、その後この混合物をそのまま冷却した。次に、この材料を30mlの塩酸(2mol/L)に投入し、12時間撹拌した。5000回転/分で4回遠心分離し、80℃で12時間真空乾燥した後、多孔性ケイ素基材が得られた。
【0067】
この多孔性ケイ素基材は、多結晶構造を有しており、平均粒度は、2.5μmであり、細孔の平均サイズは、34nmであり、細孔容積は、0.66cm
3/gであり、比表面積は、72.8m
2/gであった。炭素コーティング層は形成されなかった。
【0068】
このようにして製造されたケイ素−炭素複合材料を、リチウムイオン電池に組み立て、それに対して充放電試験を行った。
図10は、最初の40サイクルの容量対サイクル数曲線を示す。充放電の初期クーロン効率は、81.1%であった。初期可逆容量は、2837mAh/gであり、40サイクル後の可逆容量は、1554mAh/gであり、従って容量保持率は、わずか54.8%であった。
【0069】
比較例1の多孔質構造を有さないケイ素−炭素複合材料と比較すると、本発明のリチウムイオン電池のための多孔質構造および炭素コーティング層を有するケイ素−炭素複合材料は、より優れたサイクル性能を有することがわかった。これは、多孔質構造の均一な分布に起因しており、このような均一な分布は、リチウムのインターカレーションおよびデインターカレーション過程中における体積の影響を効果的に軽減し、電極構造の安定性を改善することができる。
【0070】
比較例2の炭素コーティング層を有さない多孔性ケイ素材料と比較すると、本発明のリチウムイオン電池のための多孔質構造および炭素コーティング層を有するケイ素−炭素複合材料は、より優れたサイクル性能を有することがわかった。これは、炭素コーティング層に起因しており、このようなコーティング層は、導電率を改善し、電極の導電性ネットワークを維持する。