特許第5993009号(P5993009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5993009ディーゼルパティキュレートフィルタ及び排気ガス浄化装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5993009
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】ディーゼルパティキュレートフィルタ及び排気ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/28 20060101AFI20160901BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20160901BHJP
   B01J 23/50 20060101ALI20160901BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20160901BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
   F01N3/28 301P
   F01N3/035 A
   B01J23/50 AZAB
   B01J35/10
   B01J35/04 301L
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-525251(P2014-525251)
(86)(22)【出願日】2014年5月22日
(86)【国際出願番号】JP2014063611
(87)【国際公開番号】WO2014189115
(87)【国際公開日】20141127
【審査請求日】2016年2月25日
(31)【優先権主張番号】特願2013-107983(P2013-107983)
(32)【優先日】2013年5月22日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 希少金属代替材料開発プロジェクト「排ガス浄化向け白金族使用量低減技術開発及び代替材料開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大道 中
(72)【発明者】
【氏名】古川 孝裕
【審査官】 今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−255055(JP,A)
【文献】 特開2011−011195(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/041741(WO,A1)
【文献】 特開2012−036821(JP,A)
【文献】 特開2009−039632(JP,A)
【文献】 特開2006−159134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/02− 3/38
B01J 23/50
B01J 35/04
B01J 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタ基材の隔壁内部を排気ガスが流通するディーゼルパティキュレートフィルタにおいて、
金属酸化物又は金属複合酸化物からなる粒子状の無機多孔質体を含有し、且つ、無機多孔質層の厚さの50〜95%の厚さを有する表面凹凸部を備えた無機多孔質層を、排気ガスが流入する側の前記隔壁の表面の一部又は全部に備えたディーゼルパティキュレートフィルタであって、
前記無機多孔質層の表面凹凸部の輪郭は、表面に露出した複数の粒子状の無機多孔質体の輪郭により形成されてなるものであり、
銀及びパラジウムを含む合金が、前記無機多孔質層に含有される前記粒子状の無機多孔質体に担持された状態で存在することを特徴とするディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項2】
排気ガスの上流側を開口し、下流側が封鎖されたガス流入セルと、排気ガスの上流側が封鎖され、下流側を開口してなるガス流出セルとを、基材隔壁を介して隣接して設けてなる構成を有するフィルタ基材を備えたディーゼルパティキュレートフィルタにおいて、
金属酸化物又は金属複合酸化物からなる粒子状の無機多孔質体を含有し、且つ、無機多孔質層の厚さの50〜95%の厚さを有し、前記粒子状の無機多孔質体によって形成される表面凹凸部を備えた無機多孔質層を、前記ガス流入セルの隔壁表面の一部又は全部に備えたディーゼルパティキュレートフィルタであって、
前記無機多孔質層の表面凹凸部の輪郭は、表面に露出した複数の粒子状の無機多孔質体の輪郭により形成されてなるものであり、
銀及びパラジウムを含む合金が、前記無機多孔質層に含有される前記粒子状の無機多孔質体に担持された状態で存在することを特徴とするディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項3】
ガス流出セルの隔壁の一部又は全部に、Pt、Pd及びRhのよりなる群から選ばれる少なくとも一種類の貴金属および/または該貴金属の酸化物を、触媒活性成分として含有する貴金属触媒層を備えた請求項2に記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項4】
前記無機多孔質層の表面は、無機多孔質層の厚さの60〜95%の厚さを有する表面凹凸部を備えていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項5】
前記無機多孔質層の厚さは、100μm以下であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載のディーゼルパティキュレートフィルタを備えた排気ガス浄化装置。
【請求項7】
内燃機関から排出される排気ガスが流動するガス流通路内において、請求項1〜5の何れかに記載のディーゼルパティキュレートフィルタの上流側に、Pt、Pd及びRhのよりなる群から選ばれる少なくとも一種類の貴金属および/または該貴金属の酸化物を含む触媒構造体を備えた排気ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関、特にディーゼルエンジンから排出される排気ガスを浄化するのに用いるディーゼルパティキュレートフィルタ(「DPF」と称する)及びこれを用いた排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンから排出される排気ガスには、燃料中の硫黄分にもとづく硫酸塩や、不完全燃焼に由来するタール状の微粒子状物質(「PM」と称する)、窒素酸化物(NOx)などが含まれている。
【0003】
ディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれるPMを除去する装置として、DPFでPMを捕集し、捕集したPMを適宜タイミングで燃焼除去する排気ガス浄化装置が知られている。
このようなDPFは、通常、ハニカム構造を呈する多孔質製のフィルタ基材が骨格を為し、該基材の隔壁内部を排気ガスが流通する際に、該隔壁表面でPMを捕集するようになっている。
【0004】
ディーゼルエンジンの排気ガス用触媒に関しては、例えば次のような発明が開示されている。
例えば特許文献1(特開2003−286835号公報)には、エンジン排気ガスの排気路に、γ−アルミナにチタンおよび銀を担持した粒状またはモノリス状の脱硝触媒と酸化触媒とを直列に配置し、エンジン排気ガスを、燃料の一部を取り出した燃料還元剤の存在下に脱硝触媒に接触させ、その後、酸化触媒に接触させるエンジン排気ガスの浄化方法が開示されている。
【0005】
特許文献2(特開2006−239544号公報)には、コージェライト等の多孔質無機基材の表面に、10nm〜200nmの粒子間隙間よりなる細孔とこの細孔同士を連通させる10nm以下の粒子間隙間よりなる細孔連通孔とを有するアルミナ等の酸化物粒子からなるコート層を形成し、このコート層における細孔内に、触媒成分を担持させる構造が開示されている。
【0006】
特許文献3(特開2009−112962号公報)には、内燃機関から排出される排ガスを浄化する排ガス浄化装置であって、排ガスが流通するガス流路と、このガス流路に設けられ且つ多数の細孔が形成されたパティキュレートフィルタと、を備え、排ガスに接触する前記パティキュレートフィルタの導入面は、その略全体が、前記細孔よりも小さい孔径を有する微細孔が形成された微多孔体で被覆され、前記微多孔体は、酸素貯蔵・放出性の酸化物からなる担体と、この担体に担持されたAgを含有する触媒と、を備える排ガス浄化装置が開示されている。
【0007】
特許文献4(特開2009−85010号公報)には、内燃機関から排出される排ガスを浄化する排ガス浄化装置であって、排ガスが流通するガス流路と、このガス流路に設けられ且つ多数の細孔が形成されたパティキュレートフィルタ(DPF)と、を備え、排ガスに接触する前記パティキュレートフィルタの導入面は、その略全体が、前記細孔よりも小さい孔径を有する微細孔が形成された微多孔体で被覆されている排ガス浄化装置が開示されている。
【0008】
特許文献5(特開2011−218310号公報)には、粒子状物質を含む排ガスが流入する流入面と、浄化ガスを排出する排出面と、多孔質体からなるフィルタ基体を備えた排ガス浄化フィルタであって、前記フィルタ基体は、多孔質の隔壁と、該隔壁に囲まれたガス流路とを有し、該隔壁の表面に、前記隔壁の気孔よりも小さい気孔径の多孔質膜が設けられ、前記多孔質膜の表面の少なくとも一部に、深さが当該多孔質膜の厚さよりも浅い微小みぞが形成されていることを特徴とする排ガス浄化フィルタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−286835号公報
【特許文献2】特開2006−239544号公報
【特許文献3】特開2009−112962号公報
【特許文献4】特開2009−85010号公報
【特許文献5】特開2011−218310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
DPFを用いた触媒に関しては、PM捕集量の増加に伴ってフィルタの目詰まりが進行することで、圧損を生じるという問題を抱えていた。そこで、従来からフィルタの目詰まり対策として、一定以上の圧損が生じると、電気ヒーターやバーナーでDPFを加熱して捕集したPMを燃焼させたり、定期的に燃料を燃焼させてPMを燃焼させたりして、フィルタを再生する方法が採られてきた。
【0011】
しかしながら、従来のDPFでは、基材隔壁内部の排ガス流通経路にPMが滞留する結果、排ガスの流れが悪くなって背圧が高くなるという課題があった。
また、上記特許文献5のように、基材隔壁の表面に、前記隔壁の気孔よりも小さい気孔径の多孔質膜を設けたDPFでは、該多孔質膜の表面にPMが滞留する結果、やはり排ガスの流れが悪くなって背圧が高くなるという課題を抱えていた。
【0012】
そこで本発明は、フィルタ基材の隔壁内部を排気ガスが流通するディーゼルパティキュレートフィルタに関し、フィルタ基材の表面及び内部にPMが滞留するのを防止して、排ガスによる背圧の上昇を抑制し、PM燃焼能力を安定して発揮することができる、新たなディーゼルパティキュレートフィルタを提案せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、フィルタ基材の隔壁内部を排気ガスが流通するディーゼルパティキュレートフィルタにおいて、金属酸化物又は金属複合酸化物を含有し、且つ、無機多孔質層の厚さの50%以上の厚さを有する表面凹凸部を備えた無機多孔質層を、排気ガスが流入する側の前記隔壁の表面の一部又は全部に形成してなる構成を備えたディーゼルパティキュレートフィルタ(「DPF」と称する)を提案する。
【発明の効果】
【0014】
本発明が提案するDPFは、無機多孔質層の厚さの50%以上の厚さを有する表面凹凸部を備えているため、PMを捕捉することができるばかりか、表面凹凸部による隙間を通じて排気ガスが流れるため、排ガスによる背圧の上昇を抑制することができると共に、滞留したPM粒子の燃焼効率も向上させることができる。
この際、当該無機多孔質層に、PMの燃焼を促進する触媒(例えば銀や銀化合物)を含有させることにより、PMの燃焼をさらに促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のDPFの一例を模式的に示した斜視図である。
図2図1に示したDPFの一部を拡大して示した断面図である。
図3図1の変形例に係るDPFの一部を拡大して示した断面図である。
図4図3の変形例に係るDPFの一部を拡大して示した断面図である。
図5】本発明の排気ガス浄化装置の一例を模式的に示した断面図である。
図6】本発明に係るDPFの一例を模式的に示した断面図である。
図7】本発明のパーティキュレートフィルタ(サンプル)について、上方から撮影したSEM画像及び、該SEM画像内の水平線における無機多孔質層の凹凸高さを示した分析図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態の一例としてのディーゼルパティキュレートフィルタ(「本DPF」と称する)1について説明する。
【0017】
<本DPF>
本DPFは、フィルタ基材2における、排気ガスが流入する側の隔壁2aの表面の一部又は全部に、金属酸化物又は金属複合酸化物を含有し、かつ表面凹凸部を表面に備えた無機多孔質層5を形成してなる構成を備えたディーゼルパティキュレートフィルタである。
【0018】
本DPFは、フィルタ基材2の隔壁2a内部を排気ガスが流通することができ、この際、隔壁2aの表面の無機多孔質層5で排気ガス中のPMが捕集され、隔壁2a内部にPMが侵入するのを防ぐことができる。また、無機多孔質層5で捕集したPMは燃焼させることができる。しかもこの際、無機多孔質層5の表面の表面凹凸部における粒子間の隙間を通じて排気ガスを流すことができるため、排ガスによる背圧の上昇を抑制することができると共に、滞留したPM粒子の燃焼効率も向上させることができる。
【0019】
(基材2)
本DPFの骨格をなすフィルタ基材2は、図1及び図2に示すように、ハニカム構造を呈し、排気ガスの流動方向に連通した複数のセル3を有し、各セル3は隔壁で互いに仕切られ、隣接するセルの端部が交互に目封じされている。これにより、排気ガスの上流側を開口し、下流側が封鎖されたガス流入セル3Aと、排気ガスの上流側が封鎖され、下流側が開口してなるガス流出セル3Bとが、基材隔壁2aを介して隣接して配置してなる構成を備えたものとなっている。
【0020】
但し、本DPFのフィルタ基材2の形状は、上記のような形状に限定されるものではない。例えば、ウォールスルー型、フロースルーハニカム型、ワイヤメッシュ型、セラミックファイバー型、金属多孔体型、粒子充填型、フォーム型など、DPFとして公知の基材を採用することが可能である。
【0021】
フィルタ基材2の材質は、セラミックス等の耐火性材料や金属材料などからなる多孔質材料であればよい。
セラミック製基材の材質としては、耐火性セラミック材料、例えば炭化ケイ素(SiC)、コージライト、コージライト−アルファアルミナ、窒化ケイ素、ジルコンムライト、スポジュメン、アルミナ−シリカマグネシア、ケイ酸ジルコン、シリマナイト(sillimanite)、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト(petalite)、アルファアルミナおよびアルミノシリケート類などを挙げることができる。
金属製基材の材質としては、耐火性金属、例えばステンレス合金、Fe-Cr-Al合金、ムライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム等が挙げられる。
これらの中でも、PdによるFeの基材への浸透抑制効果の観点から、炭化ケイ素(SiC)が特に好ましい。
【0022】
セル3の形成密度は、特に限定するものではないが、基材断面1cm2当たり10〜100個のセルが形成されたものが好ましい。
【0023】
(無機多孔質層5)
無機多孔質層5は、金属酸化物又は金属複合酸化物を含有し、且つ、無機多孔質層の厚さの50%以上の厚さを有する表面凹凸部を備えた無機多孔質層であるのが好ましい。
【0024】
例えば、図1及び図2に示すフィルタ基材2であれば、ガス流入セル3Aの隔壁の表面の一部又は全部に無機多孔質層5を形成するのが好ましい。この際、ガス流入セル3Aの隔壁のうち、排気ガスが隔壁2aを通過する部分の表面に無機多孔質層5を形成すればよい。
【0025】
前記無機多孔質層5が含有する金属酸化物又は金属複合酸化物としては、アルミニウム、チタン、シリカ及びジルコニウム、セリウムからなる群より選ばれる1種以上の金属を含有する金属酸化物又は金属複合酸化物を挙げることができる。例えばシリカ、アルミナおよびチタニア化合物から成る群から選択される無機多孔質体、或いは、セリウム化合物、ジルコニウム化合物、セリア・ジルコニア複合酸化物などのOSC材からなる多孔質体を挙げることができる。
より具体的には、例えばアルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミノ−シリケート類、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−クロミアおよびアルミナ−セリアから選択される化合物からなる多孔質体を挙げることができる。
中でも、セリウム酸化物の量が5〜50重量%であるであるセリウム-ジルコニウム複合酸化物からなる無機多孔質体が特に好ましい。
また、当該無機多孔質体は、Nb、La、Fe、Y、Pr、Ba、Ca、Mg、SnおよびSrよりなる群から選ばれる少なくとも一種類の原子の酸化物を含有していてもよい。
【0026】
無機多孔質層5は、銀及びパラジウムを含む銀合金を、触媒活性成分として含有することもできる。
無機多孔質層5が、銀及びパラジウムを含む銀合金を含有すれば、無機多孔質層5に捕集されたPMを、銀の燃焼触媒作用により、より効率的に燃焼させることができる。
【0027】
この際、銀は、基材体積に対して1g/L以上含有するのが好ましく、中でも1.5g/L以上或いは10g/L以下、その中でも2.0g/L以上の割合で含有するのがさらに好ましい。
【0028】
前記銀及びパラジウムを含む銀合金において、パラジウムを該銀合金の1wt%以上含有させることで、高温時における銀の拡散をより効果的に抑制することができる。また、パラジウムの含有量が銀合金の75wt%以下であれば、銀の触媒活性効果を妨げることもない。
かかる観点から、銀とパラジウムの比率は5:1〜1:3であるのがさらに好ましい。
【0029】
前記銀合金は、銀及びパラジウムの効果を妨げない限りにおいて、銀及びパラジウム以外の元素を含有していてもよい。例えばNb、La、Fe、Y、Pr、Ba、Ca、Mg、SnおよびSrよりなる群から選ばれる少なくとも一種類の元素又はその酸化物を含有してもよい。この際、銀及びパラジウムの効果を妨げない観点から、これらの含有量は1〜35質量%とするのが好ましい。
【0030】
前記無機多孔質層5において、銀及びパラジウムを含む銀合金は、前記のような無機多孔質体に担持された状態で存在するのが好ましい。
【0031】
前記無機多孔質層5は、その他の成分、例えばバインダー成分や安定剤成分などを含んでいてもよい。
バインダー成分としては、SiO2、TiO2、ZrO2およびAl23よりなる群から選ばれる少なくとも一種類のバインダー成分を挙げることができる。
安定剤としては、例えばアルカリ土類金属やアルカリ金属を挙げることができる。中でも、マグネシウム、バリウム、ホウ素、トリウム、ハフニウム、ケイ素、カルシウム、カリウム、ナトリウム、セシウム及びストロンチウムから成る群から選択される金属のうちの一種又は二種以上を選択可能である。
【0032】
無機多孔質層5の表面には、排気ガスを流して排気ガスによる背圧の上昇を抑制するという観点から、無機多孔質層の厚さの50%以上の厚さを有する表面凹凸部を形成するのが好ましい。
表面凹凸部の厚さ(すなわち、凹部の中でも一番低い凹部の底から凸部までの高さ)が、無機多孔質層の厚さの50%以上であれば、表面凹凸部の隙間を通じて排気ガスが流れるため、背圧が高くなるのを抑制することができると共に、表面凹凸部に排ガスが流動するとため、滞留したPM粒子の燃焼効率を向上させることもできる。
かかる観点から、表面凹凸部の厚さは、無機多孔質層の厚さの50%以上であるのが好ましく、中でも60%以上、中でも65%以上、その中でも75%以上或いは95%以下であるのが好ましい。
【0033】
なお、無機多孔質層5の表面凹凸部の厚さは、上述のように凹部の中でも一番低い凹部の底(図6の最も凹)から一番高い凸部(図6の最も凸)までの高さであり、その測定に際しては、例えば株式会社キーエンス製「3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡VE−8800」を用いて測定することができる。
測定原理としては、最初に試料を水平にして上からSEM画像を撮影し、次に、試料を所定角度(θ)傾けて再度SEM画像を撮影する。このように試料をθ傾けて、観察像上で任意の測定点の移動距離を計測して任意の測定点の位置を求め、観察像から任意の測定点に相当する点を自動的に数万ポイント抽出して演算し、3D像を構築することにより、表面凹凸部の厚さを測定するものである。無機多孔質層の全体厚さは断面をSEM撮影して求めることができる。
【0034】
このような表面凹凸部を備えた無機多孔質層5を形成する方法としては、上記金属酸化物又は金属複合酸化物からなる無機多孔質体粉末と、水とを混合し、これを湿式粉砕して粉砕スラリーを得、この粉砕スラリーに、必要に応じてその他の成分、例えばバインダー成分や安定剤成分、触媒活性成分、例えば銀及びパラジウムを含む銀合金などを加えてコート組成物を調製して、これをコートし、焼成して形成することができる。
この際、スラリーを湿式粉砕する際の粉砕エネルギーを制御することで、無機多孔質層5の表面凹凸部の厚さを調整することができる。例えばボールミルを使用して粉砕する場合であれば、ボールミルの大きさ、スラリー量に対するボールミルの個数割合、回転数及び回転時間などを調整して粉砕エネルギーを制御すればよく、粉砕エネルギーを大きくすれば、無機多孔質層5の表面凹凸部の厚さを小さくすることができる。
【0035】
前記無機多孔質層5の厚さは、触媒コート後の初期圧損の観点から、100μm以下であるのが好ましく、中でも70μm以下、その中でも50μm以下の厚さを例示することができる。本発明は圧損が高くなりやすい触媒に好ましく使用され得ることから、10μm以上、その中でも20μm以上の厚さの無機多孔質層5により一層好ましく適用される。
【0036】
(貴金属触媒層6)
本DPFは、図3に示すように、さらに前記ガス流出セル3Bの隔壁の表面の一部又は全部に、Pt、Pd、Ir、Au及びRhからなる群から選ばれる少なくとも一種類の貴金属および/または該貴金属の酸化物を含む貴金属触媒層6を積層するようにしてもよい。
また、図4に示すように、貴金属触媒層6をガス流出セル3Bの隔壁の表面から内部に向けて埋設するように設けてもよいし、また、貴金属触媒層6の一部をガス流出セル3Bの隔壁の表面に設け、一部を埋設するように設けてもよい。
ガス流出セル3Bの隔壁の一部又は全部に貴金属触媒層6を設けることにより、排ガス温度を上げるために添加した燃料の未燃焼分であるCOやHCなどを、この貴金属触媒層6によって効率的に処理することができる。
但し、該貴金属触媒層6は必要に応じて設けるのが好ましく、必ず設ける必要はない。
【0037】
このように貴金属触媒層6を設けた場合、無機多孔質層5の銀が拡散して貴金属触媒層6中の貴金属と接触すると、該貴金属は即座に触媒活性を失活してしまう。しかし、本DPFにPdが入っている場合は、銀の拡散を抑制することができるため、該貴金属の失活を防止することができる。
【0038】
貴金属触媒層6中の貴金属としては、銀(Ag)よりも電気陰性度の高いRh、Pt、Pd、Ir、Auのいずれかの貴金属を単独であるいは組み合わされて採用するのが好ましい。特にRh、Pt及びPdが好ましく、これらは単独であるいは組み合わせて使用するのが好ましい。
【0039】
貴金属触媒層6中の貴金属は、多孔質基材の体積1リットルに対して、0.01g〜10g、中でも0.1g以上或いは5g以下の範囲内の量で含有されるのが好ましい。このような量で触媒が貴金属を含有することにより、排気ガスを効率的に浄化することができる。
【0040】
貴金属触媒層6において、貴金属は、無機多孔質体に担持された状態で存在するのが好ましい。
【0041】
ここで、無機多孔質体としては、例えばシリカ、アルミナおよびチタニア化合物から成る群から選択される無機多孔質体、或いは、セリウム化合物、ジルコニウム化合物、セリア・ジルコニア複合酸化物などのOSC材からなる多孔質体を挙げることができる。
より具体的には、例えばアルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミノ−シリケート類、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−クロミアおよびアルミナ−セリアから選択される化合物からなる多孔質体を挙げることができる。
【0042】
中でも、セリウム酸化物の量が5〜50重量%であるセリウム-ジルコニウム複合酸化物からなる無機多孔質体が特に好ましい。セリウム酸化物の量が50重量%を上回る場合には、高温時、例えば700℃以上の温度に加熱すると担体の比表面積が低下して、最終的に触媒の熱劣化を引き起こす傾向が生ずる。
また、当該無機多孔質体は、Nb、La、Fe、Y、Pr、Ba、Ca、Mg、SnおよびSrよりなる群から選ばれる少なくとも一種類の原子の酸化物を含有していてもよい。
【0043】
貴金属触媒層6は、その他の成分、例えばバインダー成分や安定剤成分などを含んでいてもよい。
バインダー成分としては、SiO2、TiO2、ZrO2およびAl23よりなる群から選ばれる少なくとも一種類のバインダー成分を挙げることができる。
安定剤としては、例えばアルカリ土類金属やアルカリ金属を挙げることができる。中でも、マグネシウム、バリウム、ホウ素、トリウム、ハフニウム、ケイ素、カルシウムおよびストロンチウムから成る群から選択される金属のうちの一種又は二種以上を選択可能である。
【0044】
貴金属触媒層6の厚さは、10μm〜100μmであるのが好ましい。貴金属触媒層6の厚さが大きすぎると、貴金属触媒層6中の貴金属と排気ガスとの接触機会が減るため、分解効率が低下してしまう。薄過ぎると、耐熱性が低下してしまう。かかる観点から、前記貴金属触媒層6の厚さは10μm以上或いは70μm以下であるのがさらに好ましく、中でも20μm以上或いは50μm以下であるのがより一層好ましい。
【0045】
<製法>
次に、本DPFの製造方法の一例について説明する。
【0046】
無機多孔質層5を形成する方法としては、先ず上記金属酸化物又は金属複合酸化物からなる無機多孔質体粉末と、水とを混合し、これを湿式粉砕して粉砕スラリーを得る。この粉砕スラリーに、必要に応じてその他の成分、例えばバインダー成分や安定剤成分、触媒活性成分、例えば銀及びパラジウムを含む銀合金などを加えてコート組成物を調製する。そしてこのコート組成物を、フィルタ基材表面の一部又は全部、より具体的には、例えば上記ガス流入セル3Aの隔壁の表面の一部又は全部に塗布し、乾燥する。例えば空気中、酸素富化空気などの酸化性雰囲気において、例えば400〜700℃で焼成するか還元することにより無機多孔質層5を形成すればよい。但し、このような方法に限定するものではない。
【0047】
この際、上述したように、スラリーを湿式粉砕する際の粉砕エネルギーを制御することで、無機多孔質層5の表面凹凸部の厚さを調整することができる。例えばボールミルを使用して粉砕する場合であれば、ボールミルの大きさ、スラリー量に対するボールミルの個数割合、回転数及び回転時間などを調整して粉砕エネルギーを制御すればよく、粉砕エネルギーを大きくすれば無機多孔質層5の表面凹凸部の厚さを小さくすることができる。
【0048】
なお、銀とパラジウムが溶解している銀溶液としては、例えば、銀化合物を溶媒に溶解して、銀が溶解している銀溶液を調製する一方、これにパラジウムが溶解している溶液を混合して調製すればよい。
該銀化合物としては、例えば硝酸銀、酢酸銀、フッ化銀などを用いることができ、溶媒としては、酢酸、アンモニア水などを用いることができる。
他方、パラジウムが溶解している溶液としては、例えば硝酸パラジウム溶液などを用いることができる。
【0049】
可溶性銀化合物の溶液から銀化合物を金属銀に還元して担体上に析出させることで、銀が微細粒子として担体上に付着し、銀の表面積が大きくなることが考えられる。このような効果は上記の担体粒子以外の担体粒子を用いた場合にも得られると考えられるが、上記の担体粒子を用いた場合に特に顕著である。
【0050】
この際、還元剤としては、例えば、ヒドラジン、ハイドロサルファイト、チオ硫酸ソーダ、ホルマリン、亜硝酸カリウム、亜硝酸水素カリウム、亜硝酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アンモニウム、グリコース、クエン酸第一鉄溶液、タンニン酸、ヒドラジンヒドラード、エチレンジアミン四酢酸、テトラヒドロホウ酸ナトリウム、次亜リン酸などを挙げることができる。
【0051】
なお、無機多孔質層5の形成に関しては、なるべく基材内に銀溶液が浸透しないようにするのが好ましい。銀溶液中の銀が基材内に浸透して例えばSiCなどの基材と反応すると、銀が失活するからである。但し、基材は多孔質であるため、多少は基材内に銀溶液が浸透するのはやむを得ない。
【0052】
他方、貴金属触媒層6は、貴金属が溶解している溶液中に、シリカやアルミナなどの無機多孔質体粉末を添加してスラリーを調製し、これをフィルタ基材表面の一部又は全部、より具体的には、例えば上記ガス流出セル3Bの隔壁の表面の一部又は全部に塗布し、乾燥し、焼成することにより貴金属触媒層6を形成すればよい。但し、このような方法に限定するものではない。
【0053】
<本排気ガス浄化装置>
次に、前述した本DPFを用いた排気ガス浄化装置(「本排気ガス浄化装置」と称する)について説明する。
【0054】
本排気ガス浄化装置は、例えば図5に示すように、内燃機関から排出される排気ガスが流動するガス流通路10内において、上記本DPFを配置すると共に、該本DPFの上流側に、Pt、Pd、Ir、Au及びRhよりなる群から選ばれる少なくとも一種類の貴金属および/または該貴金属の酸化物を含む第1触媒構造体11を配置し、さらにその上流側に、排気ガスの温度を調整するための加熱手段12を配置するのが好ましい。
【0055】
この際、同一ケーシング内に本DPFと第1触媒構造体11を配置するようにしてもよいし、また、別のケーシング内にそれぞれ本DPFと第1触媒構造体11を配置するようにしてもよい。
【0056】
(第1触媒構造体)
第1触媒構造体11は、例えば、多孔質セラミックス製の基材を用いて形成することができる。
多孔質セラミックス製基材は、例えばコージェライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素などで形成することができる。また、メタルハニカム基材も第一酸化触媒21の基材として有効に使用することもできる。
【0057】
この多孔質基材(メタルハニカムを含む)としては、長手方向に多数の貫通孔(セル)が形成された形態を有しており、それぞれの貫通孔が隔壁で区画されたものを好ましく使用することができる。
隔壁の厚さ(T)は、10〜300μmの範囲内にあることが好ましい。
また、この多孔質基材は、排気ガスとの接触面積が大きいことが好ましく、基材の表面積は10〜50cm2/cm3の範囲内にあることが好ましい。
このような多孔質基材の断面1cm2あたり、15〜200個のセルが形成された多孔質基材を使用することが好ましい。
【0058】
このような多孔質基材の直径は、この触媒を含有する排気ガス流路径にあわせて適宜設置することができるが、触媒を設ける部分のケーシングである排気ガス流路径(内径)の90〜98%程度の直径を有する多孔質基材が使用しやすく、しかも、排気ガスのほとんど全部が触媒と接触して排気されるので好ましい。
【0059】
この第1触媒構造体11は、Rh、Pt、Pd、Ir、Auのいずれかの貴金属を単独であるいは組み合わされて含有するものが好ましい。中でもRh、Pt、Pdが好ましく、これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0060】
これらの第1触媒構造体11には、上記のような貴金属が、多孔質基材の体積1リットルに対して、0.1〜10g、好ましくは1〜5gの範囲内の量で含有されるのが好ましい。このような量で触媒が貴金属を含有することにより、排気ガスを効率的に浄化することができる。
【0061】
多孔質基材に固着されている触媒成分は、無機多孔質体に担持された状態で存在するのが好ましい。
ここで、無機多孔質体としては、例えばシリカ、アルミナおよびチタニア化合物から成る群から選択される無機多孔質体、或いは、セリウム化合物、ジルコニウム化合物、セリア・ジルコニア複合酸化物などのOSC材からなる多孔質体を挙げることができる。
【0062】
第一酸化触媒は、さらに耐熱性を強化したアルミナやアルミナ複合酸化物を含有することができる。
【0063】
(加熱手段)
フィルタ基材1の隔壁2a内部を排気ガスが流通する際、無機多孔質層5で排気ガス中のPMが捕集される。無機多孔質層5で捕集したPMは、加熱手段12によって加熱して燃焼させることができる。
【0064】
加熱手段12としては、例えば内燃機関で使用した燃料を直接噴霧する手段などを挙げることができる。
【0065】
また、本排気ガス浄化装置は、さらにNOx処理触媒(図示なし)を後方に配置するようにしてもよい。NOx処理触媒を配置することで、NOxの大部分を処理してN2として排気することができる。
ここで使用されるNOx処理触媒は、通常使用されている尿素SCR触媒やNOx触媒を用いることができる。
【0066】
<語句の説明>
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を下記実施例及び比較例に基づいてさらに詳述する。
【0068】
(実施例1)
Al23(80質量部)に、硝酸銀水溶液及び硝酸パラジウム水溶液を含浸させ、120℃で蒸発乾固させた。これを800℃×20時間焼成し、AgとPdを合金化させてAgPd合金パティキュレート焼成粉末を得た。この際、AgPd合金におけるAgとPdのモル比率は5:1であった。
このAgPd合金パティキュレート燃焼粉末200gと、アルミナ濃度20質量%のアルミナゾル500gと、純水300gとを混合し、ボールミルで湿式粉砕し、AgPdスラリーを得た。
この際、ボールミルの条件は、アルミナ製ボールミル(大きさ5mm)、スラリー量に対するボールミルの個数割合30%、回転数20rpm、回転時間5時間で行った。
【0069】
直径143.8mm、長さ152.4mmのSiC製DPF(300セル/平方インチ、壁厚12ミル)に、該DPFの入口側から長さ方向で80%の位置まで、加熱溶解したパラフィンを含浸させ、吸引により余分なパラフィンを除液した。その後、冷却してパラフィンを硬化させた。これにより、入口側から長さ方向で80%の位置までの隔壁内の細孔をパラフィンで埋めた。空気、スラリーがセル内を流れるようにするために出口側20%のセル壁内はパラフィンを埋め込まなかった。
【0070】
DPFの出口側から減圧にして、入口側から前記AgPdスラリーを押し込み、ガス流入セルにスラリーを注入した。余剰スラリーは、吸引により取り除き、70℃で3時間乾燥後、500℃で1時間焼成してパラフィンを除去し、ガス流入セルの入口側から長さ方向で80%の位置までの隔壁表面全面に、表面凹凸部を備えた無機多孔質層を形成してなるパティキュレートフィルタ(サンプル)を得た。
この際、当該無機多孔質層の厚さは30μmであった。
【0071】
(実施例2)
実施例1において、ボールミルの条件を、アルミナ製ボールミル(大きさ5mm)、スラリー量に対するボールミルの個数割合30%、回転数30rpm、回転時間5時間に変更した以外、実施例1と同様にして、パティキュレートフィルタ(サンプル)を得た。この際、当該無機多孔質層の厚さは30μmであった。
【0072】
(実施例3)
実施例1において、ボールミルの条件を、アルミナ製ボールミル(大きさ10mm)、スラリー量に対するボールミルの個数割合30%、回転数20rpm、回転時間5時間に変更した以外、実施例1と同様にして、パティキュレートフィルタ(サンプル)を得た。この際、当該無機多孔質層の厚さは30μmであった。
【0073】
(比較例1)
実施例1において、ボールミルの条件を、アルミナ製ボールミル(大きさ20nm)、スラリー量に対するボールミルの個数割合30%、回転数40rpm、回転時間5時間に変更した以外、実施例1と同様にして、パティキュレートフィルタ(サンプル)を得た。この際、当該無機多孔質層の厚さは30μmであった。
【0074】
(比較例2)
実施例1において、ボールミルによる湿式粉砕を、ディスクミル(Retsch製ディスク)、回転数500rpm、回転時間10分に変更した以外、実施例1と同様にして、パティキュレートフィルタ(サンプル)を得た。この際、当該無機多孔質層の厚さは30μmであった。
【0075】
<コート層の表面凹凸測定およびコート層厚み>
測定装置としては、株式会社キーエンス製「3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡VE−8800」を用いて、下記条件・手順で、実施例・比較例で得たパティキュレートフィルタ(サンプル)における無機多孔質層の表面凹凸部の厚さ(凹凸高さ)を測定した。
【0076】
(測定条件)
倍率:150倍
撮影距離:16.6mm
加速電圧:2kV
検出器:2次電子検出器
雰囲気:真空
【0077】
(測定手順)
(1)実施例・比較例で得たパティキュレートフィルタ(サンプル)を、高さ1cm×横2cm×奥行2cmの大きさにサンプリングした。そのとき、無機多孔質層の表面が表面に位置するようにした。
(2)水平状態で上からSEM画像を撮影し、次に角度を5度傾けた状態でSEM画像を撮影した。
(3)撮影したSEM画像から装置付属ソフトにより、無機多孔質層の表面凹凸部の厚さを算出した。
(4)次に、サンプルをセル断面が表面(上側)にくるようにし、SEM画像を撮影した。
(5)撮影したSEM画像から装置付属ソフトにより、無機多孔質層の厚みを算出した。
(6)(3)、(4)で算出された数値より、無機多孔質層の厚みに対する表面凹凸部の厚さの割合(%)={(表面凹凸厚み)/(コート層厚み)}×100を算出した。
【0078】
<煤捕集背圧測定試験>
実施例・比較例で得たパティキュレートフィルタ(サンプル)について、下記の方法で圧損増加量(ΔkPa/hr)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0079】
2.4Lディーゼルエンジンの排気管の途中の上流側に、直径143.8mm、長さ76.2mmのコージェライト製ハニカム型酸化触媒(Pt担持量:2.4g/L、Pd担持量:0.6g/L)を設置し、その下流側に実施例・比較例で得たパティキュレートフィルタ(サンプル)を配置した。
【0080】
エンジン回転数1100rpm、負荷140Nmで1時間運転し、初期圧損(煤捕集前の圧損)から1時間運転終了後の圧損(煤捕集後の圧損)の増加量(ΔkPa/hr)の測定し、結果を表1に示した。
圧損増加量(ΔkPa/hr)=(煤捕集後の圧損‐煤捕集前の圧損)/煤堆積時間
【0081】
次のような基準で判定し、判定結果を表1に示した。
○○○:4.0ΔkPa/hr以下
○○:4.0ΔkPa/hr以上5ΔkPa/hr未満
○:5以上6.5未満
△:6.5以上8未満
×:8ΔkPa/hr以上
【0082】
【表1】
【0083】
DPF隔壁の表面に形成する無機多孔質層の表面に、無機多孔質層の厚さの50%以上の厚さを有する表面凹凸部を設けることにより、表面凹凸部による隙間を通じて排気ガスが流れるため、排ガスによる背圧の上昇を抑制することができることが分かった。同時に、滞留したPM粒子の燃焼効率も向上させることができることが分かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7