(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5993166
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】収納型糸立て台を備えたミシン
(51)【国際特許分類】
D05B 43/00 20060101AFI20160901BHJP
【FI】
D05B43/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-53889(P2012-53889)
(22)【出願日】2012年3月10日
(65)【公開番号】特開2013-184015(P2013-184015A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002244
【氏名又は名称】蛇の目ミシン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】横山 潮
(72)【発明者】
【氏名】武井 達男
【審査官】
新田 亮二
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−277274(JP,A)
【文献】
実開昭63−117473(JP,U)
【文献】
特開平01−198594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 1/00 − 97/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
針と釜と天秤が協働して縫目を形成するミシンにおいて、ミシン操作者側から見た前記天秤に向かって該天秤より左側に設けて、前記天板より下方で、且つ該天板の上面に開口部を備えた糸駒を収納する糸駒室と、該糸駒室内に設けられて、前記糸駒を保持する糸駒軸を備えて前記糸駒の収納位置から取出し位置に上昇移動する糸立て台と、該糸立て台が前記糸駒の収納位置において前記糸駒軸の上方位置に配設されて前記糸駒からの糸を案内する糸駒糸案内と、該糸駒糸案内と前記天秤との間の糸道として上糸を案内する上糸糸道とを備えてなることを特徴とする収納型糸立て台を備えたミシン。
【請求項2】
前記糸駒糸案内は、前記糸立て台が収納糸位置の時に前記糸駒軸の上方で前記糸駒から引き出された糸を上方位置で糸案内する位置に位置し、前記糸立て台が糸取り出し位置の時には前記開口部から退避した退避位置に位置するようにしたことを特徴とする請求項1 に記載の収納型糸立て台を備えたミシン。
【請求項3】
前記糸駒室に設けられた前記糸立て台を下方の収納位置から上方の取り出し位置に上昇させる上昇手段と、該上昇手段の付勢に抗して上方の取り出し位置から下方の収納位置に下降移動して前記糸立て台を係止する係止手段とが具備されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の収納型糸立て台を備えたミシン。
【請求項4】
前記糸駒糸案内には、前記糸立て台の収納位置での係止された状態を解除する解除手段が具備されてなることを特徴とする請求項3に記載の収納型糸立て台を備えたミシン。
【請求項5】
前記糸駒糸案内には、前記糸立て台をミシン本体の水平方向より出し入れ自在となるように出し入れ口をミシン本体の側面側の適所に設けたことを特徴とする請求項1に記載の収納型糸立て台を備えたミシン。
【請求項6】
前記糸駒糸案内の糸案内孔には外部より糸導入可能な導入溝が形成されてなることを特徴とする請求項1,2,3,4又は5に記載の収納型糸立て台を備えたミシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は糸立て台を備えたミシンに関し、特に糸立て台をミシン本体の天秤よりも左側の外郭内に収納させ、糸を安定した状態で引き出すことができる収納型糸立て台を備えたミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年家庭用のミシンの糸立て台は通常の糸駒を装着して糸道、天秤に糸かけするために、ミシン本体の上方や側方にミシン本体から突出するように配置したものが提案されている。これらは糸駒の交換は容易であるものの、ミシンの外郭寸法より外部に突出することから、糸駒を外してから、所定の場所に収納する必要がある。そのために、ミシンを再度、使用する場合に備えて、わざわざ天板カバーを閉じることなく、天板カバーを開き放した状態のままにすることもあり、ミシン保護の或いは外観性等の観点から好ましくなかった。
【0003】
このような問題点を解決するものとして、専用の糸駒に糸を少量巻いたものをカセット式とし、糸駒をミシン本体に内装するタイプのものが存在する。この種のものとして特許文献1が存在する。これによって、糸駒は、ミシン本体の外部に露出することなく、ミシンを使用しないときでも、糸駒を装着したままにしておくことがで、再度使用するときも、糸駒を所定箇所に再度設置する必要もなく、すぐに、作業に取り掛かることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−325989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記カセットタイプのものでは、糸駒のミシン本体内部に装着されるので、装着場所に制限があり、糸を専用の糸駒に少量巻き直すなどの手間が必要であり、また少量しか巻けないため、頻繁に糸巻き作業が発生する。このような状況におかれた糸駒から安定した状態で糸を供給することは困難である。ミシン本体の外部に糸駒を設置するタイプであれば、糸掛けを備えたスタンドによって、糸駒の上方から糸が円錐状の軌跡を描くようにして引き出され、これによって安定且つ乱れの無い糸の引き出しができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1では、糸駒の設置場所が極めて狭く、したがって、糸駒から糸を円錐状の軌跡で取り出すことができず、糸駒自体を回転させつつ、引き出すことになり、糸に余分な負担がかかる等の種々の問題点が存在するものであった。そこで、本発明の目的(解決しよとする技術的課題は、ミシンの外郭寸法より外部に突出しないように通常の市販の糸駒を本体内に収納式のものについて、糸立て台に装着された糸駒から糸を安定した状態で引き出すことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、針と釜と天秤が協働して縫目を形成するミシンにおいて、ミシン操作者側から見た前記天秤に向かって該天秤より左側に設けて、前記天板より下方で、且つ該天板の上面に開口部を備えた糸駒を収納する糸駒室と、該糸駒室内に設けられて、前記糸駒を保持する糸駒軸を備えて前記糸駒の収納位置から取出し位置に上昇移動する糸立て台と、該糸立て台が前記糸駒の収納位置において前記糸駒軸の上方位置に配設されて前記糸駒からの糸を案内する糸駒糸案内と、該糸駒糸案内と前記天秤との間の糸道として上糸を案内する上糸糸道とを備えてなることを特徴とする収納型糸立て台を備えたミシンとしたことにより、上記課題を解決した。
【0008】
請求項2の発明を、前記糸駒糸案内は、前記糸立て台が収納糸位置の時に前記糸駒軸の上方で前記糸駒から引き出された糸を上方位置で糸案内する位置に位置し、前記糸立て台が糸取り出し位置の時には前記開口部から退避した退避位置に位置するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の収納型糸立て台を備えたミシンとしたことにより、上記課題を解決した。
【0009】
請求項3の発明を、前記糸駒室に設けられた前記糸立て台を下方の収納位置から上方の取り出し位置に上昇させる上昇手段と、該上昇手段の付勢に抗して上方の取り出し位置から下方の収納位置に下降移動して前記糸立て台を係止する係止手段とが具備されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の収納型糸立て台を備えたミシンとしたことにより、上記課題を解決した。請求項4の発明を、前記糸駒糸案内には、前記糸立て台の収納位置での係止された状態を解除する解除手段が具備されてなることを特徴とする請求項3に記載の収納型糸立て台を備えたミシンとしたことにより、上記課題を解決した。
【0010】
請求項5の発明を、前記糸駒糸案内には、前記糸立て台をミシン本体の水平方向より出し入れ自在となるように出し入れ口をミシン本体の側面側の適所に設けたことを特徴とする請求項1に記載の収納型糸立て台を備えたミシンとしたことにより、上記課題を解決した。請求項6の発明を、前記糸駒糸案内の糸案内孔には外部より糸導入可能な導入溝が形成されてなることを特徴とする請求項1,2,3,4又は5に記載の収納型糸立て台を備えたミシンとしたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、糸駒糸案内を糸駒室の糸立て台の糸駒軸の上方位置に配設し、糸駒から糸を案内するようにした。これによって、ミシン本体に糸駒が内装されるタイプのもので、且つ糸駒の収納スペースが狭く制限されたものであっても、糸駒に巻きつけられた糸を引き出すときには、糸駒自体を回転させることなく、その引き出される糸は、略円錐状の軌跡を描き、糸駒室内で絡み付かず安定した糸送りができる。
【0012】
請求項2の発明では、糸立て台が収納糸位置の時に前記糸駒軸の上方で糸駒から引き出された糸を上方位置で糸案内すると共に、前記糸立て台が糸取り出し位置の時には前記開口部から退避した退避位置に位置する構成としたことにより、糸駒を糸駒室の開口部から装着及び取り出しの動作を円滑にでき、作業効率を良好にすることができる。
【0013】
請求項3の発明では、糸駒室に設けられた前記糸立て台を下方の収納位置から上方の取り出し位置に上昇させる上昇手段と、該上昇手段の付勢に抗して上方の取り出し位置から下方の収納位置に下降移動して前記糸立て台を係止する係止手段とが具備される構成としたことにより、係止手段の係止を解除することで、上昇手段が作動して糸立て台を上昇させることができ、糸駒室からの糸駒の出し入れを容易にできる。
【0014】
請求項4の発明では、糸駒糸案内には、前記糸立て台の収納位置での係止された状態を解除する解除手段が具備された構成にとしたことにより、係止手段のロック解除が容易にでき、糸駒の出し入れが極めて簡単且つ効率的にできる。請求項5の発明では、糸駒糸案内には、前記糸立て台はミシン本体の水平方向より出し入れ自在となるように出し入れ口をミシン本体の側面側の適所に設けたことで、糸駒糸案内を常時開口部の中間位置に固定した簡易な構成にすることができる。
【0015】
請求項6の発明では、糸駒糸案内の糸案内孔には外部より糸導入可能な導入溝が形成されたことにより、糸駒糸案内の案内孔に糸を挿通させることが容易にできる。なお、請求項1乃至請求項6において、糸駒を装着した状態でミシン本体の天板よりも下方に亘って糸駒室を設け、天板を塞ぐ天板カバーで収納することができるので、使用再開時に改めて糸立て台に糸駒をセットして糸かけをせずに使用を再開することができる。
【0016】
さらに、糸駒室はミシン本体の天秤より前方側(具体的には、操作者から見てミシンを正面の天秤より左側)に配置することでミシンの機構部分にて他の機構と干渉せず、また前方位置はミシン本体のベッド位置より突出しないため、天板カバー等が大きくならないなどの効果を得る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(A)は本発明を具備したミシンの正面略示図、(B)は本発明を具備したミシンのミシン本体先端側側面図、(C)は天板の一部省略した要部斜視図である。
【
図2】(A)はミシン本体先端側の要部縦断側面図、(B)はミシン本体先端側の要部平面図、(C)は(B)の(ア)部拡大図、(D)は開口部において糸駒糸案内を退避場所に揺動させて移動した状態の要部平面図、(E)は糸立て台が上昇手段で上昇した状態の断面図である。
【
図3】(A)は糸駒糸案内によって糸駒から糸を引き出す状態の側面図、(B)は糸駒糸案内によって糸駒から糸を引き出す状態の斜視図、(C)は糸駒から糸駒糸案内によって引き出される糸の円錐状軌跡を示す斜視図である。
【
図4】(A)は糸立て台をミシン本体の側面より水平状に取り出す状態の略示正面図、(B)は糸立て台をミシン本体の側面より水平状に取り出す状態の略示平面図、(C)は(A)の(イ)部拡大図、(D)は(C)のY1−Y1矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本発明は、主にミシン本体A,天板1,天板カバー2,糸駒室3,糸立て台4及び糸駒糸案内5とから構成される(
図1参照)。ミシン本体Aの天板1には、糸駒室3の開口部32と、糸駒糸案内5と天秤15との間の糸道として上糸を案内する上糸糸道11、その他のアタッチメント等の収納部が設けられている〔
図1(C)参照〕。天板1には、該天板1を塞ぐ天板カバー2が備わっている〔
図1(A),(B),
図2(A)参照〕。該天板カバー2は、天板1にヒンジ等を介して垂直面上を回動自在に開閉する構成となっている。
【0019】
糸駒室3は、ミシン本体Aの天秤15付近で天板1から下方に亘って設けられている。具体的には、操作者側から見てミシン本体Aの天秤15の位置よりも先端部寄り(左側)の位置に配置されている〔
図1(A)参照〕。そして、天板1の表面に糸駒室3の開口部32が位置している。糸駒室3は、略コップ形状又は円筒形状のケース部31とその上方に位置する開口部32とからなる〔
図1(C)参照〕。
【0020】
糸立て台4は、台座部41と糸駒軸42とから構成される。糸立て台4は前記糸駒室3のケース部31内に収納される。台座部41は円板状に形成され、該台座部41の直径中心位置に前記糸駒軸42が垂直に装着されている〔
図1(A),
図2(A),(E)参照〕。糸立て台4は、糸駒91のドラム部91aの直径中心に形成された軸孔91bに糸駒軸42を挿通して、糸駒91を台座部41に載置する〔
図2(A)参照〕。
【0021】
つまり、糸駒91は、軸方向が垂直となるように糸立て台4に設置され、さらに糸駒押さえ43により、糸駒室3に糸駒91を安定した状態にて収納する〔
図1(C),
図2,
図3(A),(B),
図4(C)等参照〕。前記糸駒押さえ43は、合成樹脂等にて円板状に形成され、その直径中心に押さえ用貫通孔43aが形成されている。
【0022】
該押さえ用貫通孔43aは糸駒軸42が比較的緩い圧入状態で挿入し、固定することができるようになっている。糸駒押さえ43の直径は、糸駒91の鍔部分の直径よりも大きく形成されている。そして、糸駒91は、ドラム部91aの軸方向が垂直となるように糸立て台4に設置され、糸駒室3に糸駒91を安定した状態にて収納する〔
図1(C)参照〕。
【0023】
次に、糸駒糸案内5は、前記糸駒室3の開口部32付近に装着され〔
図1(C),
図2参照〕、糸駒室3内に装着された糸駒91から引き出される糸nが円錐状の軌跡を構成するように案内する役目をなす〔
図3(C)参照〕。糸駒糸案内5は、揺動アーム部51と該揺動アーム部51の自由先端に形成された案内孔52とから構成される〔
図2(B)参照〕。また、該案内孔52には、揺動アーム部51の糸nを導入する導入溝52aが形成される。揺動アーム部51に外周に沿って糸nを移動させて導入溝52aに挿入するのみで、案内孔52に導かれる〔
図2(B),
図3(B)参照〕。
【0024】
前記案内孔52の孔の中心Pは、糸駒室3に収納された糸立て台4の軸の中心で且つ糸駒軸42の延長線L上に位置する〔
図2(B),(C)参照〕。また、糸駒室3の開口部32の直径中心でもある。糸駒糸案内5は、揺動アーム部51の自由先端側と反対側を揺動中心部53としている。
【0025】
該揺動中心部53は、糸駒糸案内5が開口部32の中心位置と開口部32から外れた退避場所12との間を揺動する構成となっている。開口部32から糸駒91を出し入れするときには、糸駒糸案内5を開口部32から外れた位置で且つ開口部32の直近の隣接する位置に形成された退避場所12に揺動移動して退避することができるようになっている〔
図2(D)参照〕。
【0026】
前記糸駒室3には、前記糸立て台4の収納位置で保持する係止手段81と、糸駒91を前記糸駒室3の開口部32から取り出せる位置まで前記糸立て台4を上昇させる上昇手段82が具備されている。 前記係止手段81は、糸駒室3を構成するケース部31の下端
箇所に具備された係止部81aと、前記糸立て台4の台座部41の下面側に形成された被係止部81bとからなる。係止部81aと被係止部81bとは、係止する構成であり、相互に係止された状態で、糸立て台4は糸駒室3の下方に収納された状態となる〔
図2(A)参照〕。
【0027】
また、上昇手段82は、前記糸立て台4の下端と、糸駒室3のケース部31の底部との間に配置され、糸立て台4を糸駒室3の開口部32の方向に上昇させ、糸立て台4に糸駒91を取り付けたり、取り外したりすることができる。そして、前記係止手段81の係止部81aと被係止部81bとが係止(ロック)状態にあるときには、前記上昇手段82の弾性力に抗して糸立て台4を糸駒室3の下方に保持される。そして、係止手段81の係止部81aと被係止部81bとの係止が解除(ロック解除)されると、上昇手段82によって、糸立て台4が糸駒室3の開口部32付近にまで上昇される〔
図2(E)参照〕。
【0028】
糸駒糸案内5には、解除手段83が具備されている。該解除手段83は、前記係止手段81の係止部81aと被係止部81bとの係止(ロック)及び解除する役目をなすものである。解除手段83は、具体的には、軸材83aとしたものであって、糸駒糸案内5の揺動アーム部51と前記係止部81aとが前記軸材83aにて連結され、糸駒糸案内5と係止部81aとが同時に揺動する構成となっている。さらに、具体的には、前記揺動アーム部51の揺動中心部53の位置に前記軸材83aが連結される。
【0029】
そして、糸駒糸案内5が退避場所12に位置しているときには、係止手段81の係止が解除され、糸立て台4が開口部32付近まで上昇し、糸駒91の取り付け及び取り外しを行うことができる〔
図2(E)参照〕。
【0030】
次に、前記糸立て台4は、ミシン本体Aの水平方向より出し入れ自在とした構成の実施形態も存在する(
図4参照)。具体的には、ミシン本体Aの水平方向より出し入れ自在となるように、ミシン本体Aの側面側の適所に出し入れ口A1をミシン本体Aに設け、扉8
5が装着されたものである〔
図4(B),(C)参照〕。
【0031】
そして、糸立て台4の水平方向の出し入れ手段84は、固定台84aと摺動板部84bとからなり、固定台84aに対して摺動板部84bが摺動自在に設けられている。具体的には固定台84aと摺動板部84bとは蟻掛けタイプとなっている〔
図4(D)参照〕。摺動板部84b上には、糸駒室3を構成するケース部31が装着され、内部に糸立て台4が収納される。糸駒91の取り付け及び取り出しは、扉85を開いて、出し入れ口A1か
ら摺動板部84bと共に糸駒室3を引き出すものである。
【0032】
本発明では、糸駒糸案内5を糸駒室3の糸立て台4の糸駒軸42の上方位置に配設し、糸駒から糸nを案内するようにしたものである。つまり、糸駒糸案内5の案内孔52の径方向の中心Pが、糸駒室3に収納された糸立て台4の直径中心で且つ糸駒軸42の延長線L上に位置するものである〔
図2(B),(C)参照〕。そして、糸駒糸案内5の案内孔52に糸駒91から引き出した糸nを通過させる。
【0033】
このような構成によって、糸駒91に巻きつけられた糸nを引き出すときには、糸駒91自体を回転させることなく、その引き出される糸nは、略円錐状の軌跡を描きつつ引き出される。したがって、糸駒室内で絡み付かず安定且つ整然とした糸送りができる。また、糸駒91は、糸立て台4の台座部41上に、糸駒押さえ43によって固定されており、糸駒91から引き出される糸nは糸駒押さえ43の外周縁に沿って円錐状の軌跡を描き、良好な状態で糸の引き出しができる(
図3参照)。
【0034】
なお、
図1のおいて符号92は、下糸ボビン、符号93は糸掛け部、符号94は案内輪である。前記糸駒91から糸駒糸案内5の案内孔52を介して引き出された糸nは、上糸糸道11上において、前記糸掛け部93,前記案内輪94を通過して、天秤15に至るものである。
【符号の説明】
【0035】
1…天板、2…天板カバー、3…糸駒室、32…開口部、4…糸立て台、
5…糸駒糸案内、52…案内孔、52a…導入溝、51…係止手段、82…上昇手段、
83…解除手段、A1…出し入れ口。